説明

ゲルシートおよびそれを用いたシート状化粧料

【課題】主として生体に適用することで、表皮などの隣接する被着体に接触することにより、ハイドロゲルに含まれる水分や有効成分が被着体に効率よく付与され、且つ、取り扱い性にも優れたゲルシート、及び、該ゲルシートを用いたシート状化粧料を提供する。
【解決手段】アニオン性高分子化合物と水溶性2価金属塩とを用いて得られるハイドロゲルを含むゲルシートであり、該水溶性2価金属塩がアニオン性高分子化合物100部に対して50部以上用いて形成されることを特徴とするゲルシートである。該ハイドロゲルには、さらに、コラーゲン、コラーゲン分解生成物、ポリエーテル、油溶性有効成分を含むO/Wエマルションなどを含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、医薬部外品、化粧品、衛生材料、雑貨等の分野に用いられるゲルシート及びそれを用いたシート状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲルシートは、水分を多く含むゲルをシート状に成形したものであり、その高い保水性から配置した領域に持続的に水分などを供給するための種々の用途に使用することができる。
このようなゲルシートは、美容、美顔および皮膚の治療等に用いられるパック料や貼付剤、皮膚浸透成分や、消炎鎮痛成分等の有効成分の担持体、傷保護や薬剤固定化などを目的とする生体用粘着テープ、創傷被覆剤などに好適に使用しうる。これらのゲルシートは皮膚に貼着して皮膚表面を保護し、皮膚表面において保水性を付与するとともに、該ゲルシートに種々の有効成分を含有させることで、皮膚の温度を制御する、保水性を付与する、或いは、皮膚に密着させることでゲルシート中の有効成分を生体に供給するなどの機能を発現する。特に、液状成分を含有するゲルシートを皮膚に密着させた状態で経時させることによって、例えば、温度や水分量の向上を図ることで皮膚の生理作用を増大させ、この生理活性の増大により、ゲルシート中の有効成分の皮膚への浸透をより高めることもできる。
【0003】
このような作用を有するゲルシートは、従来、生体への使用を考慮して、ゲル基材としてコラーゲンやキチン、キトサン、アルギン酸、セルロース等の多糖類を構成成分として含むものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、ゲルシートの機能性向上の観点から、保湿性を向上させる目的で特定のアルキレンオキシド誘導体を用いることによりゲル基材からのブリーディング効果を促進させる技術(例えば、特許文献2参照)、あるいはポリエチレングリコールや電解質の添加により溶液滲出効果を促進する技術(例えば、特許文献3参照)が知られており、これらはいずれもゲルシート中の水分や有効成分の皮膚への浸透を向上させる目的でなされたものである。
ゲルシートに含まれる水分や有効成分を速やかに目的とする領域へ供給するためには、ゲルシートの保水性のみならず、ゲルシートが保持する水分等を隣接する被着体の所定領域に供給するための離しょう性が重要である。しかしながら、上記技術では、例えば、皮膚表面における保湿性を維持しつつ、ハイドロゲル中に含まれる有効成分等を皮膚に速やかに且つ効率よく浸透させるという観点からは、なお離しょう性が不十分であった。
【特許文献1】特開平3−81213号公報
【特許文献2】特開2005−225837号公報
【特許文献3】特開2003−183147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記事情に鑑みなされた本発明の目的は、主として生体に適用することで、表皮などの隣接する被着体に接触することにより、ハイドロゲルに含まれる水分や有効成分が隣接する被着体に効率よく付与され、且つ、取り扱い性にも優れたゲルシート、及び、該ゲルシートを用いたシート状化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意検討の結果、少なくとも水溶性2価金属塩とアニオン性高分子化合物とを含み、該水溶性2価金属塩がアニオン性高分子化合物に対して半量以上含んで形成されるハイドロゲルを用いることで上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
本発明の構成は以下に示すとおりである。
<1> アニオン性高分子化合物100質量部に対し、水溶性2価金属塩を50質量部以上用いて形成されるハイドロゲルを含むゲルシート。
<2> 前記ハイドロゲル中における水溶性2価金属塩の含有量が0.2質量%以上10質量%以下であることを特徴とする<1>に記載のゲルシート
<3> 前記ハイドロゲル中における3価以上の多価金属塩の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする<1>または<2>に記載のゲルシート。
【0006】
<4> 前記ハイドロゲルが、コラーゲン及びコラーゲン分解生成物からなる群より選択される1種以上を含有することを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載のゲルシート。
<5> 前記ハイドロゲルが、ポリエーテルを含有することを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載のゲルシート。
<6> 前記ハイドロゲルが、O/Wエマルションを含有することを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載のゲルシート。
<7> 前記ハイドロゲルが、多糖類を含有することを特徴とする<1>〜<6のいずれか1項に記載のゲルシート。
<8> 前記ハイドロゲルが、多価アルコール化合物を含有することを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1項に記載のゲルシート。
【0007】
<9> 前記ハイドロゲルの含水率が70〜95質量%であることを特徴とする<1>〜<8>のいずれか1項に記載のゲルシート。
<10> 前記ハイドロゲルを含むハイドロゲル層と、該ハイドロゲル層中、或いは、該ハイドロゲル層と隣接して設けられるシート状基材とを有することを特徴とする<1>〜<9>のいずれか1項のいずれかに記載のゲルシート。
<11> 前記ハイドロゲル層の厚みが0.4〜2mmであることを特徴とする<10>記載のゲルシート。
<12> <1>〜<11>のいずれか1項に記載のゲルシートを用いたシート状化粧料。
【0008】
本発明のゲルシートは、水溶性2価金属塩をゲル基材であるアニオン性高分子化合物100部に対し、50部以上用いて形成したハイドロゲルを含むことにより、ゲルシートを構成するハイドロゲルの離しょう性に優れる。すなわち、ゲルシートが貼付された隣接する被着体、例えば、生体に貼付された場合には、表皮との接触により角層への水分や有効成分の付与が効率的に行われる。
また、本発明のゲルシートを構成するハイドロゲルは、多量の水性成分を保持しているが、シートが柔軟で応力により変形しやすく、且つ、ゲル強度が高く取り扱い時に破損することがないため、取り扱い性に優れるとともに、表面が湿潤状態であるため、被着体との密着性に優れるものである。ここでいう被着体は、ハイドロゲルが含む水相成分、及び、そこに溶解或いは分散されて含まれる有効成分等を吸収する機能を有するものである。
【0009】
なお、本発明における離しょう性とは、ハイドロゲルに含まれる水相成分及びそこに溶解或いは分散されて含まれる各種有効成分がハイドロゲルから浸出し、隣接する被着体である生体や吸収体に移動する機能を指す。ハイドロゲル自体が十分に水性成分を保持しうるものであっても、離しょう性が低い場合には水分や有効成分を隣接する被着体、例えば、生体などに供給する機能が十分に得られないことになる。
本発明のゲルシートは離しょう性に優れるために、ハイドロゲル中に保持される水などの水相成分のみならず、水相成分に溶解、分散する有効成分、例えば、水溶性の各種有効成分、油相成分のエマルジョン粒子、ナノコロイドやナノ粒子などをもハイドロゲルから被着体に付与しうることが大きな特徴である。
本発明における離しょう性の評価は、例えば、以下のような方法で算出した離しょう率により行うことができる。
(離しょう率の測定)
ゲルシートを切断して所定サイズの試験片を作製し、試験片よりも大面積の濾紙を上下各2枚配置して試験片をはさみ、25℃相対湿度55%の雰囲気下10分間静置した際の濾紙の質量変化を測定して濾紙吸液質量を求め、下記式1により算出する(単位:質量%)。
離しょう率=(濾紙吸液質量/ゲル初期質量)×100 (式1)
このように、本発明のゲルシートは隣接する、水分や有効成分を吸収しうる被着体に対して水分や有効成分を効率的に付与することができ、持続的に水分を供給、浸透させる必要があるあらゆる用途に好適に使用しうるものであり、生体適合性、安全性に優れるため、生体に適用して水分や各種有効成分を効率的に付与する用途において特にその効果が著しい。
本発明のシート状化粧料は、上記ゲルシートを用いたものである。
【0010】
本発明において「ゲルシート」とは、ハイドロゲルを含有するシート状の成形体を指し、ハイドロゲルがシート状に成形されてなるハイドロゲル層のみからなるシートでもよく、補強、有効成分の保護、取り扱い性向上などの目的で設けられるシート状基材とハイドロゲル層とを含むシートであってもよい。この「ゲルシート」は、美容、美顔および皮膚の治療等に用いられるパック料や貼付剤、皮膚浸透成分や消炎鎮痛成分等の有効成分の担持体、傷保護や薬剤固定化などを目的とする生体用粘着テープ、創傷被覆剤などを包含するものであり、有効成分や水分の保持及び皮膚への浸透などを目的として、皮膚に直接貼り付けて使用される生体用粘着シートに好適である。この生体用粘着ゲルシートは、肌に貼付して水分や有効成分を皮膚に与えるためのパック剤などのシート状化粧料として有用である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、主として生体に適用することで、表皮などの隣接する被着体に接触することにより、ハイドロゲルに含まれる水分や有効成分が隣接する被着体に効率よく付与され、且つ、取り扱い性にも優れたゲルシート、及び、該ゲルシートを用いたシート状化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のゲルシートは、アニオン性高分子化合物、水溶性2価金属塩、及び、所望により併用される種々の添加剤や有効成分を含み、ハイドロゲル調製時における水溶性2価金属塩の配合量が、アニオン性高分子化合物100質量部に対し、50質量部以上であることを特徴とする。
以下、本発明のゲルシートに用いうる各成分について順次説明する。
【0013】
<水溶性2価金属塩>
本発明に用いる水溶性2価金属塩を形成する2価金属としては、周期表第II族のマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、あるいは遷移金属のCu2+、Fe2+、Zn2+、Mn2+が挙げられ、マグネシウムまたはカルシウムの水溶性塩が好ましく挙げられる。
本発明における水溶性とは、25℃の純水に少なくとも0.1質量%溶解しうるものを指す。
水溶性塩は無機塩、有機酸塩のいずれであってもよく、特に限定されるものではないが、例えば、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩などの無機塩、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、グルコン酸塩、などの有機酸塩、アスコルビン酸リン酸エステル塩などの有機無機複合塩が挙げられる。
これらのなかでも、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、乳酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸カルシウム、アスコルビン酸マグネシウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸カルシウムがより好ましく、塩化マグネシウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウムが特に好ましい。
【0014】
本発明のゲルシートを形成する際に使用される水溶性2価金属塩の配合量は、後述するアニオン性高分子化合物100質量部(以下、本明細書においては、「質量部」を「部」と表記することがある)に対して50部以上であることを要し、効果の観点からは、50部〜1000部が好ましく、70部〜500部がより好ましく、80部〜300部であることが特に好ましい。
また、形成されたハイドロゲル中における水溶性2価金属塩の含有量は、0.1〜5質量%が好ましく、0.2〜4質量%がより好ましく、0.5〜2質量%が特に好ましい。水溶性金属塩の割合がこの範囲にあることで、ハイドロゲルからの離しょう性が向上するとともに、取扱にすぐれたゲルシートを得ることができる。
アニオン性高分子と水溶性2価金属塩によって形成されたハイドロゲル中において水溶性2価金属塩はゲルの形成に使用され、必ずしも「塩」の状態で存在するものではないが、形成されたハイドロゲル中における水溶性2価金属塩あるいはそれに由来する化合物の含有量は、金属塩を構成する金属の量を測定し、その量から対イオンを考慮して換算することで求めることができ、この手段により、形成されたハイドロゲルの形成時に用いられる水溶性2価金属塩の量を検知することができる。
【0015】
<アニオン性高分子化合物>
本発明に用いるアニオン性高分子化合物としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、ホスホ基などから選択されるアニオン性基を分子内に有する高分子化合物であれば特に制限はなく、合成高分子であってもよいし、天然高分子であってもよい。
これらアニオン性高分子化合物は、ハイドロゲル中に1種のみを用いても、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0016】
アニオン性合成高分子化合物としては、アクリル酸(共)重合体、メタクリル酸(共)重合体、マレイン酸(共)重合体、イタコン酸(共)重合体、p−ビニル安息香酸(共)重合体、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(共)重合体、スチレンスルホン酸(共)重合体、が挙げられる。
またアニオン性天然高分子化合物としてはペクチン酸、アルギン酸、寒天、カラギーナン、フコイダン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルデキストラン、ポリグルタミン酸が挙げられ、さらには、DNA、RNAなども本発明におけるアニオン性高分子として使用することができる。
これらのうち、保水性、ゲル強度と離しょう性の両立といった観点からアクリル酸(共)重合体、アルギン酸、寒天、カラギーナン、ヒアルロン酸、ジェランガム、ネイティブジェランガム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースが好ましく、寒天、カラギーナン、ジェランガム、ネイティブジェランガム、キサンタンガムが特に好ましい。
これらアニオン性高分子化合物は、ゲル強度向上の観点から、分子量が10000〜5000000の範囲にあるものが好ましく、20000〜2000000の範囲にあるものがさらに好ましい。
【0017】
本発明のゲルシートにおいては、ハイドロゲルに対するアニオン性高分子化合物の含有量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜8質量%がより好ましく、0.2〜4質量%が特に好ましい。含有量がこの範囲にあることで、取り扱い性が良好なゲル強度を達成しうるとともに、充分な離しょう性を有するハイドロゲルを得ることができる。
このアニオン性高分子化合物と2価金属水溶性塩とを併用することで、形成されるハイドロゲル系中に弱い架橋構造を有する3次元ネットワーク構造が形成され、十分な液状成分保持性と良好な離しょう性が発現するものと考えられる。
【0018】
ハイドロゲルに含まれるアニオン性高分子化合物と水溶性2価金属塩とは、目的に応じて適宜組み合わせることが可能であるが、ゲル強度と離しょう性との両立といった観点からは、以下に示すような水溶性2価金属塩/アニオン性高分子化合物の組合せが好適なものとして挙げられるが、これらに制限されるものではない。
アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム/カラギーナン、
アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム/ジェランガム、
アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム/寒天、
アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム/キサンタンガム、
アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム/アクリル酸(共)重合体、
アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム/カルボキシメチルセルロース、
塩化マグネシウム/カラギーナン、
塩化マグネシウム/ジェランガム、
塩化マグネシウム/アクリル酸(共)重合体、
乳酸マグネシウム/カラギーナン、
乳酸マグネシウム/寒天
乳酸カルシウム/ジェランガム
アスコルビン酸カルシウム/カラギーナン
グルコン酸カルシウム/ジェランガム。
【0019】
<3価以上の多価金属塩>
本発明においては、ハイドロゲル中における、3価以上の多価金属塩の含有量は0.1質量%以下であることが、離しょう性低下抑制の観点から好ましい。
3価以上の多価金属塩としては、Al3+、Fe3+、Ti3+、Ti4+、In3+、Zr4+、Ta5+等の多価金属カチオンを含む塩が挙げられ、具体的には、カリウム明バン、アンモニウム明バン、鉄明バン、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硫酸第2鉄、水酸化第2鉄、チタンラクテート、酢酸ジルコニウム、等が挙げられる
本発明のハイドロゲルにおけるこれらの3価以上の多価金属塩の含有率は0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることが特に好ましく、不可避不純物を除いては、このような多価金属塩を含まないことが最も好ましい。3価金属塩の含有率が0.1質量%を越えると、離しょう性が低下する懸念がある。
【0020】
本発明に係るハイドロゲルは、前記アニオン性高分子化合物と水溶性2価金属塩とを用いて形成されることを要するが、所望により、ゲルシートの使用目的に応じてその他の種々の化合物を含有することができる。
以下に、本発明に係るハイドロゲル中に含まれうる他の成分について説明する。
【0021】
<ポリエーテル>
本発明のゲルシートにおいて、離しょう性を向上させることを目的としてハイドロゲル中にポリエーテルを含有することが好ましい。
ポリエーテルとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシドブロックコポリマー等が挙げられ、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとを含むブロックポリマーが特に好ましく、具体的には、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー(以下、「PEO-PPOブロックポリマー」と略称することがある)、又は、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシドブロックコポリマー(以下、「PEO-PPO-PEOブロックポリマー」と略称することがある)が特に好ましい。これらのポリエーテルはポロキサマーとして知られており、「プルロニック」、「ルトロール」(いずれも、BASF社製)、ニューポール(三洋化成工業(株)製)、エパン(第一工業製薬(株)製)、プロノン(日本油脂(株)製)等の名称にて市販品としても容易に入手可能である。
本発明に用いうるポリエーテルの重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100万であることが好ましく、5,000〜50万であることがより好ましい。
ポリエーテルを用いる場合、ハイドロゲル中に占めるポリエーテルの含有量は、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.2〜5質量%が特に好ましい。
前記ポリエーテルの含有量が上記範囲において0.05質量%以上あれば、ハイドロゲル中に添加した有効成分の皮膚浸透性向上効果が十分に得られ、また、20質量%以下であれば、保存安定性が著しく低下することを防止することができる。
【0022】
<多糖類>
本発明のゲルシートにおいて、取り扱い性の向上のためにハイドロゲル中にさらに前記アニオン性高分子化合物の例として挙げたアニオン性多糖類以外の多糖類を添加することがゲル強度向上の観点から好ましい。
本発明に用いることができる多糖類としては、例えば、中性多糖類(例えば、セルロース、アミロース、アミロペクチン、デキストラン、プルラン、イヌリン、ガラクタン、マンナン、キシラン、アラビナン、グルコマンナン、ガラクトマンナン、アガロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カードラン、キシログルカンなど)、カチオン性多糖類(キチン、キトサン、カチオン化セルロース、カチオン化デンプン、カチオン化デキストランなど)が挙げられる。
これらの中でも、増粘ゲル化作用の高い多糖類がより好ましく、グルコマンナン、ガラクトマンナン、アガロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましい。さらにそのゲル化性を向上させるためにこられの多糖類を2種以上併用しても良い。
本発明のハイドロゲルに対する多糖類の含有量は、0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜4質量%がより好ましく、0.2〜2質量%が特に好ましい。
多糖類の含有量が上記範囲であれば、ゲル強度の向上効果が得られ、取り扱い性が良好であるとともに、水性成分の離しょう性、皮膚浸透性の低下を抑制することができる。
【0023】
<多価アルコール化合物>
本発明におけるゲルシートは、有効成分の皮膚浸透性や保存安定性の観点から、ハイドロゲル中にさらに多価アルコール化合物を含有することが好ましい。
多価アルコール化合物としては、具体的には、グリセリン類(グリセリン、ジグリセリンなど)、グリコール類(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールなど)、糖類(グルコース、フラクトース、マンノース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、グルコサミン、N−アセチルグルコサミン、スクロース、ラクトース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、セロビオース、コージビオース、ソホロース、マルトトリオ―ス、ラフィノース、スタキオースなど)、糖アルコール(グリセロール、トレイロール、エリスリトール、アラビニトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、イノシトールなど)が挙げられる。前記多価アルコール化合物は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
これらのうち、本発明のゲルシートにおいては、グリセリン類またはグリコール類を用いることが好ましく、中でも、グリセリン、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ブタンジオールがより好ましい。さらには、グリセリン、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオールを用いることが特に好ましい。
本発明におけるハイドロゲル中に占める多価アルコール化合物の割合は、50質量%以下であるのが好ましく、1〜20質量%であることが特に好ましい。
本発明におけるハイドロゲル中に占める多価アルコール化合物の割合を50質量%以下とすることで、ゲル強度の低下を防止して、取扱い性を良くすることができる。
【0025】
<親水性高分子>
本発明に用いられる生体用粘着ゲルシートは、皮膚への貼付時の溶解性を損なわない限りにおいて、保湿性を向上させるために、ハイドロゲル中に公知の親水性高分子を添加することができる。また、親水性高分子は、生体用粘着ゲルシートの形状安定性の向上のために用いることもできる。
本発明において用いることができる親水性高分子としては、前記アニオン性高分子化合物および前記多糖類以外の高分子であって、親水性官能基(例えば、水酸基、カルバモイル基、アミノ基、アンモニオ基、エチレンオキシ基など)を有するものであれば、合成高分子であってもよいし、天然高分子であってもよい。これらは単独でも、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0026】
本発明に好適な、親水性基を有する合成高分子としては、例えば、ビニルアルコール(共)重合体、2−ヒドロキシエチルアクリレート(共)重合体、アクリルアミド(共)重合体、アクリロイルモルホリン(共)重合体、N−ビニルピロリドン(共)重合体、ビニルアミン(共)重合体、N、N−ジメチルジアリルアンモニウムクロリド(共)重合体、2−メタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロリド(共)重合体、ポリエチレングリコールメタクリレート(共)重合体、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
上記親水性高分子は、保湿性の点から、重量平均分子量が、1,000〜500,000であるものが好ましく、5,000〜100,000であるものがより好ましい。
また、親水性高分子の含有量は、保湿性と取り扱い性の点から、ハイドロゲルに対して、0.05〜5質量%であることが好ましく、0.1〜3質量%であることがより好ましい。
【0027】
<賦形剤>
本発明のゲルシートは、形状安定性の向上のために、ハイドロゲル中にさらに賦形剤を添加してもよい。賦形剤としては、有機または無機の微粒子が好適に使用することができる。有機微粒子としては、公知のポリスチレン粒子、ポリメタクリレート粒子、微結晶セルロースが好ましい。また無機微粒子としては、酸化チタン、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、カオリン、粘土鉱物等が好ましい。これらのうち、シリカあるいは粘土鉱物が好ましく、特に平均粒子径が200nm以下の気相法シリカ、合成スメクタイトが特に好ましい。
本発明におけるハイドロゲル中に占める賦形剤の割合は、10質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%であることが特に好ましい。
【0028】
<含水率>
本発明のゲルシートにおけるハイドロゲルの含水率は70質量%以上95質量%以下であることが好ましい。含水率がこの範囲にあることで、ハイドロゲルからの有効成分の放出効率が向上するだけでなく、貼付時の表皮への刺激性を低減させることができる。
ハイドロゲルの含水率としては70質量%以上95質量%以下が好ましく、75質量%以上95質量%以下がより好ましく、80質量%以上90質量%以下が特に好ましい。含水率が70質量%未満の場合、成分の皮膚浸透性が低下することがあり、95質量%を越えるとハイドロゲルの強度が低下するために取り扱い性が低下することがある。
ハイドロゲルの含水率は、加熱乾燥又は減圧乾燥に伴う質量減少率から測定することができる。具体的には、ゲルシートからハイドロゲルを1g取り出し、25℃にて試料の質量変化が認められなくなるまで減圧乾燥し、以下に示す式2により算出した値を前記含水率とする。
含水率(質量%)= 〔(初期質量−乾燥後質量)/初期質量〕*100・・(式2)
本明細書におけるハイドロゲルの含水率は上記方法により測定したものである。
なお、ハイドロゲルの含水率は、カールフィッシャー式、赤外線方式、あるいは電気抵抗方式の水分計により測定することもできる。また、ハイドロゲル配合液そのものがゲル化する場合は水分の配合率をゲルの含水率とすることができる。
【0029】
本発明のゲルシートは離しょう性に優れるため、前記含水率の好ましい範囲において、種々の有効成分を含有することで、そのような有効成分を目的とする被着体の所定領域、例えば、生体などへ効率よく浸透させることができる。このため、本発明のゲルシートは、有効成分の徐放性担持体や化粧料として好適に使用することができる。
有効成分は、ゲルシートの使用目的に応じて適宜選択される。以下に本発明に係るハイドロゲルが含みうる有効成分について説明するが、これらに限定されるものではない。
【0030】
<コラーゲンまたはその分解物>
本発明のゲルシートにおいて、保湿性の向上を目的としてハイドロゲル中にさらにコラーゲンまたはその分解物から選ばれる少なくともいずれかを含有することが好ましい。
ここでいうコラーゲンは特に限定されず、様々なコラーゲン抽出物が対象とされる。抽出はコラーゲン含有原料をもちいて、酸可溶化、アルカリ可溶化、中性塩可溶化、酵素可溶化などの公知の手法にておこなうことができる。コラーゲン含量原料としては、コラーゲンを含有する原料であれば何れの材料でも使用でき、脊椎動物(例えば、ウシ、ブタ、イワシ、サメ等)の皮あるいは鱗、骨、軟骨、腱、臓器が例示されるが、コラーゲン含量の高いことから、骨、軟骨、皮あるいは鱗、腱、胎盤などが好適に使用される。これらのうち、本発明に好適に使用されるコラーゲンとしては水溶性コラーゲンが好ましい。
本発明のコラーゲン分解物としては、コラーゲンをコラゲナーゼ、トリプシン、キモトリプシンのようなタンパク分解酵素や酸、アルカリで加水分解する、あるいは加熱変性により得られる。
コラーゲン分解生成物としては例えば、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン、酵素分解ゼラチン、コラーゲントリペプチド、コラーゲンジペプチド、アミノ酸(グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アセチルヒドロキシプロリン等)が挙げられる。
本発明におけるハイドロゲル中に占めるコラーゲンまたはコラーゲン分解物の含有量は、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.2〜5質量%が特に好ましい。含有量が0.05質量%以上あれば、表皮への貼付による保水性効果が得られ、また20質量%以下であれば取扱い性が良い。
【0031】
<O/W型エマルション>
本発明のゲルシートにおいて、ハイドロゲル中にO/W型エマルション(以下、O/Wエマルションと称することがある。)を含有することが好ましい。特に、油溶性の薬効成分を含有したO/W型エマルションであることが好ましい。本発明のゲルシートは離しょう性に優れるために、このような形態とすることで、油溶性の薬効成分を含有する微細なエマルションが効果的に皮膚へ浸透し、例えば美肌効果を高めることができる。
油溶性の薬効成分として、例えば脂溶性ビタミンおよびその類縁体(トコフェロール、トコトリエノール、レチノール、レチナール、カルシフェロールなど)、ステロール類(コレステロール、フィトステロールなど)、ユビキノン(CoQ10など)、さらにはスフィンゴ脂質、セラミド、オリザノール、スクワレン、スクワラン、カロテノイド等およびこれらの誘導体が好ましく、本発明においてはカロテノイドであることが特に好ましい。
【0032】
カロテノイドとしては、アクチニオエリスロール、アスタキサンチン、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、β−8’−アポ−カロテナール、β−12’−アポ−カロテナール、α−カロテン、β―カロテン、γ―カロテン、β−クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ビオレリトリン、ゼアキサンチン、フコキサンチンおよびそれらの誘導体が挙げられる。
中でもアスタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、β―クリプトキサンチンが好ましく、特に酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、美白効果が認められているアスタキサンチンが好ましい。
【0033】
なお、このO/W型エマルションには、一般にエマルション組成物の各相に含有可能な乳化剤等の他の成分を、一般に用いられる量で含有していてもよい。このような他の成分としては、多価アルコール等の本明細書中に記載の他の成分も含まれる。
O/W型エマルションの乳化粒子の体積平均粒径としては、1〜200nmであることが好ましく、1〜150nmであることが特に好ましい。
前記体積平均粒径は、市販の粒度分布計等で計測することができる。エマルションの粒径測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
【0034】
本発明における体積平均粒径範囲および測定の容易さから、本発明におけるエマルジョンの体積平均粒径測定では動的光散乱法が好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
本発明において、O/W型エマルションの体積平均粒径は、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株)製)を用いて25℃で測定した値を採用する。
前記体積平均粒径の測定方法は、油相成分の濃度が0.1〜1質量%の範囲内になるように純水で希釈を行い、測定用ガラス管を用いて測定を行う。体積平均粒径は、分散媒屈折率として1.3313(純水)、分散媒の粘度として0.8846mPs(純水)に設定して測定した時の累積(50%)値として求めることができる。
【0035】
前記O/W型エマルションの製造方法は特に限定されず、例えば、特開2005−75817号公報に記載されている方法を用いることができる。あるいは、a)水性媒体に、水溶性乳化剤を溶解させて水相を得、b)カロテノイド、トコフェロール、レシチン、及び必要に応じてその他の油脂を混合、溶解して油相を得、c)攪拌下で水相と油相を混合して、乳化分散を行い、エマルジョン組成物を得るステップからなる方法により製造することが好ましい。
【0036】
乳化分散の際、例えば、スターラーやインペラー攪拌、ホモミキサー、連続流通式せん断装置等のせん断作用を利用する通常の乳化装置を用いて乳化を行った後、高圧ホモジナイザーを通す等の方法で2種以上の乳化装置を併用することが特に好ましい。高圧ホモジナイザーを使用することで、乳化物をさらに均一な微粒子の液滴に揃えることができる。
【0037】
本発明のハイドロゲルに対するO/W型エマルションの含有量は、有効成分の効能と皮膚浸透性の点で、0.001〜10質量%であることが好ましく、0.05〜1質量%であることがより好ましい。
また、本発明のハイドロゲルにおける油溶性の薬効成分の含有量は、薬効成分により異なるが、0.0001〜10質量%が好ましく、0.005〜5質量%がより好ましい。
前記油溶性の薬効成分がカロテノイドである場合は、本発明のハイドロゲルに対して、0.0001〜0.5質量%が好ましく、0.0005〜0.1質量%がより好ましく、0.001〜0.05質量%であることが特に好ましい。カロテノイド含有量が0.0001質量%以上であれば、本発明の生体用粘着ゲルシートを皮膚に貼付した後の効果(美肌効果等)が感じられ、また0.5質量%以下であれば表皮への着色を抑えることができ不快感を生じにくい。
【0038】
<有機酸>
本発明のハイドロゲルにおいてpH調整の観点で有機酸をさらに含んでもよい。有機酸塩として、具体的には、酢酸、α−ヒドロキシ酸(例えばクエン酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、コハク酸など)、アスコルビン酸、ピロリドンカルボン酸、等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらのハイドロゲル中における含有量は、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.05〜2質量%であることがより好ましい。
【0039】
<防腐剤>
本発明の粘着ゲルシートにおいて、微生物による変質に対する対策を目的としてさらに防腐剤を含有することが好ましい。防腐剤としては、例えばフェノール、安息香酸およびその塩、サリチル酸およびその塩、パラオキシ安息香酸エステル類(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン)、2−フェノキシエタノール、デヒドロ酢酸およびその塩、ソルビン酸およびその塩、塩化アルキルアミノエチルグリシン、トリクロサン、塩化ベンザルコニウム、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また併用して使用することがより好ましい。これらのうちパラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノールが特に好ましい。
本発明における防腐剤の含有量としては、ハイドロゲル中0.01〜0.5質量%が好ましく、0.02〜0.3質量%がより好ましく、0.03〜0.2質量%が特に好ましい。
【0040】
<香料>
本発明のハイドロゲルにおいて、リラックス効果を高めるために香料を添加してもよい。香料としては、アルコール系香料、フェノール系香料、カルボン酸系香料、アミン系香料等が挙げられる。
アルコール系香料としては、青葉アルコール、3−オクテノール、9−デセノール、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ロジノール、ジメチルオクタノール、ヒドロキシシトロネロール、テトラヒドロリナロール、ラバンジュオール、ムゴール、ミセノール、テルピネオール、1−メントール(L−メントール)、ボルネオール、イソブレゴール、テトラヒドロムゴール、ボルニルメトキシシクロヘキサノール、ノボール、ファルネソール、ネロリドール、サンタロール、サンダロール、セドロール、ベチベロール、パチュリアルコール、ベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、γ−フェニルプロピルアルコール、シンナミックアルコール、アニスアルコール、α−アミルシンナミックアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、メチルフェニルカルビノール、ジメチルフェニルカルビノール、β−フェニルエチルジメチルカルビノール、β−フェニルエチルメチルエチルカルビノール、フェノキシエチルアルコール、フェニルグリコール、第3級ブチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
【0041】
また、フェノール系香料としては、オイゲノール、バニリン、ヒノキチオール等が、カルボン酸系香料としては、桂皮酸、フェニル酢酸、ヒドロ桂皮酸等が、アミン系香料としては、インドール、スカトール、2−メチルテトラヒドロキノリン、6−メチルキノリン等が挙げられる。
【0042】
<添加剤等>
本発明のゲルシートの使用目的に応じて、さらに各種の有効成分や添加剤を配合することができる。そのような有効成分や添加剤としては、以下に示すものを挙げることができる。
酸化防止剤(トコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類等)、
紫外線吸収剤(p−メトキシ桂皮酸、p−メトキシ桂皮酸オクチル、2−メトキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル等)、
pH調整剤(乳酸−乳酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、コハク酸−コハク酸ナトリウム等の緩衝剤等)、
キレート剤(フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸等)、
界面活性剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等)。
ビタミン類(ビタミンA、B、B、B、C、D、Eおよびその誘導体)、
アミノ酸類(グリシン、トリメチルグリシン、ピロリドンカルボン酸、セリン、カルニチン、γ―アミノ酪酸、タウリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、リシン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、オルニチン、バリン、ロイシン等)、
【0043】
消炎剤(グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等)、
保湿剤(尿素、カゼイン、大豆ペプチド、乳酸菌発酵代謝産物、酵母発酵代謝産物、ハチミツ、ラクトフェリン、アルブミン、加水分解エラスチン、加水分解ケラチン、加水分解シルク)、
美白剤(アスコルビン酸グルコシド、3−O−エチルアスコルビン酸、アルブチン、ヒドロキノン、コウジ酸、ルシノール、トラネキサム酸、アデノシン−1−リン酸ナトリウム、マグノリグナン、エラグ酸、レチノイド、ルチン、レゾルシノール、システイン、グルタチオン等)、
【0044】
各種抽出物(例えば、アシタバエキス、アボガドエキス、アマチャエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、アロエエキス、アンズエキス、アンズ核エキス、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、ウーロン茶エキス、エイジツエキス、エチナシ葉エキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オウレンエキス、オオムギエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、海水乾燥物、海藻エキス、加水分解エラスチン、加水分解コムギ末、加水分解シルク、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、甘草エキス、カルカデエキス、カキョクエキス、キウイエキス、キナエキス、キューカンバーエキス、グアノシン、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、クロレラエキス、クワエキス、ゲンチアナエキス、紅茶エキス、酵母エキス、ゴボウエキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、コンフリーエキス、コケモモエキス、サイシンエキス、サイコエキス、サイタイ抽出液、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、シャクヤクエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、茶エキス、チョウジエキス、チガヤエキス、チンピエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、蜂蜜、ハマメリスエキス、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビサボロール、ビワエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、プロポリス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ボタンエキス、ホップエキス、マツエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、メリッサエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ユズエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス、バーチエキス、アイリスエキス、ブドウエキス、ユリエキス、サフランエキス、ショウキュウエキス、トウガラシエキス、トウキエキス、海藻抽出物、胎盤抽出物、プラセンタエキス、カミツレエキス、ハトムギエキス、柚子種子エキス、ブドウ種子エキス、ウォータークレスエキス、月下美人エキス、ホワイトルピンエキス、ショウキョウエキス、鶏冠抽出物等)、
【0045】
賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等)
血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ−オリザノール等)、
抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等)、
抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等)。
これら有効成分は、ゲルシートの使用目的に応じて1種或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
〔ゲルシートの構成〕
本発明のゲルシートは、上述したようなハイドロゲルを含むハイドロゲル層を単層で構成したものとしてもよく、さらに他の層を有する多層構造のものとしてもよい。また、ハイドロゲルの層を複数設けてもよい。上述した各成分は、ハイドロゲル層に含まれていてもよく、可能であれば他の層に含まれていてもよい。また、ハイドロゲル層が複数の層からなる場合には、上記各成分を同一のハイドロゲル層に含有してもよく、複数の層に分けて含有してもよい。このように、ゲルシートが多層構造を構成するときは、上記各成分は、ゲルシート全体として上述した各範囲の量を含有することができる。
【0047】
<シート状基材>
ハイドロゲル層を補強し、ゲルシートのハンドリング性を向上させる目的で、ハイドロゲル層中に、或いは、ハイドロゲル層と隣接してシート状基材を設けることができる。
シート状基材は、本発明のゲルシートの形状安定性と取扱い性の向上の観点で設けることが好ましい。
【0048】
シート状基材を支持体層として用いる場合、不織布、織布、フィルム、ゲル等のシート状の公知の支持基材を用いることができる。
不織布、織布を構成する素材としては特に制限はなく、繊維としては、一般的に用いられるものが使用可能であり、セルロース、フィブロインなどの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ポリ乳酸、ポリウレタンなどの合成繊維が挙げられ、セルロース、ナイロン、ポリエステルが好適に用いられる。
本発明に好適に使用される織布または不織布としては、目付量が3g/m〜100g/mの範囲であることが好ましく、5g/m〜70g/mであることがより好ましく、5g/m〜50g/mであることが特に好ましい。目付量が上記範囲において、シート状基材の強度が取扱性に優れる範囲となり、且つ、ゲルシートの柔軟性を損なわず、貼付時の密着性が低下することがない。
【0049】
フィルムを用いる場合には、その素材は任意であり、例えば、液不透過性の単層、又は、多層のプラスチックシートなどが挙げられ、また、シートの一部或いは全面にわたって液透過用の開口部が形成されたシート、多孔質シート、メッシュ状のシートなどを用いることもできる。
厚みとしては、0.01mm〜1mm程度のものがハンドリング性の観点から好ましい。また、化粧料などに使用する場合には、以下に詳述するように透明性が高いものを用いることが好ましい場合もある。
シート状基材をハイドロゲル層中に設ける場合には、液透過性のシート、例えば、織布、不織布、多孔質シート、メッシュなどが好ましいが、片面のみに支持体として用いる場合には、液不透過性のシートや厚手の織布、不織布などを用いることができる。
【0050】
また、シート状基材をハイドロゲル層の補強層として用いる場合には、架橋ゲル(ゼラチン/グルタルアルデヒド架橋ゲル、ポリアクリル酸/多価金属イオン架橋ゲルなど)、物理ゲル(アガロースゲル、κ―カラギーナンゲルなど)、さらには親水性高分子から形成される水不溶性フィルム(キトサンフィルム、セロファン、κ−カラギーナンキャストフィルムなど)等の破断強度の高い高分子ゲルシートや親水性高分子フィルムなどの基材を使用することも可能である。
【0051】
これらのうち、本発明の粘着ゲルシートは、前記ハイドロゲルと織布または不織布とが一体化した構造を有するものであることが特に好ましい。ここで、一体化した構造とは、ハイドロゲル層の少なくとも片面に織布、不織布などの基材シートが積層して設けられ、両者がゲルシートの取扱中に剥離しない強度で密着している構造、或いは、ハイドロゲル層中に基材シートが一体不可分に内在しており、基材シートの両面にヒドロゲル層が存在する構造を指す。
【0052】
本発明のゲルシートには、使用時まで有効成分や水分の保持性維持する目的で、ハイドロゲル層の生体に適用する面に保護シートを設けることが好ましい。
保護シートとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、PETフィルム等を使用することが好ましい。中でも、厚さ500μm以下、より好ましくは、20μm〜400μmのポリエチレンフィルムまたはポリプロピレンフィルムを使用することが好ましい。
【0053】
〔ゲルシートの製造方法〕
本発明のゲルシートの製造方法は、一般に行なわれる方法に従って製造することができる。
例えば、ゲルシートがハイドロゲルのみで構成される場合には、ハイドロゲルを製造する通常の方法に従って製造することができ、具体的には、ハイドロゲルに含まれる各成分を加熱混合してゾル状物(ハイドロゲル形成用配合液)とした後に、ドクターブレード等の塗布機を用いてシート状に塗布し、続いて、常温雰囲気下に静置するか、冷却することによりゲル化を完了させて、ハイドロゲル層を成形し、ゲルシートとする方法をとることができる。
本発明のゲルシートにおけるハイドロゲル層の厚みは、一般に形状の保持性や取扱い性の観点から支持体の有無に関わらず0.4〜2mmであることが好ましく、0.5〜1.5mmであることが特に好ましい。
【0054】
支持体層を有するゲルシートを製造する場合には、例えば、シート状基材上に、上記のようにして得られたハイドロゲル層形成用溶液を塗布等し、その後は、同様にしてハイドロゲル層をシート状基材表面に積層する方法、或いは、ハイドロゲル層形成用溶液を塗布した後、ゲル化が完了する前にシート状基材を表面に積層し、その後、ゲル化を完了させて一体化する方法などをとることができる。
また、シート状基材をハイドロゲル層中に位置させる場合には、ハイドロゲルをシート状に塗布するか、或いは、型枠中に流し込んだ後、ゲル化が完了する前にシート状基材を含浸させ、その後、ゲル化を完了させる方法により得ることができる。
【0055】
なお、前記多価アルコール、O/W型エマルションなどの有効成分は、前記ハイドロゲルの製造工程中に、それぞれ別途あるいは共に添加してもよいし、ハイドロゲルの製造後に、有効成分を含有する溶液中にハイドロゲルを1〜3日程度含浸させて導入することもできる。
【0056】
また、保護シートを設ける場合には、ハイドロゲル層のみからなるゲルシートの場合、その片面或いは両面を保護シートで被覆すればよく、シート状基材とハイドロゲル層との積層構造を有する場合には、ハイドロゲル層のシート状基材が設けられていない側の表面に保護シートを積層すればよい。
【0057】
〔ゲルシートの物性〕
また、本発明の生体用粘着ゲルシートは、透明性が高いことが、皮膚へ貼付した際の外観的な違和感を軽減する観点から好ましい。
本発明のゲルシートの透明性は、ゲルシートを通した文字の判別サイズにより評価することができる。本発明のゲルシートでは、明朝体の12ポイントサイズの文字が判別可能であることが好ましく、10ポイントサイズの文字を判別できることがより好ましい。この範囲にあることで貼付時に皮膚の状態を確認し易くなる。しかしながら、外観が考慮されない使用部位に適用する場合などは、必ずしも透明である必要はない。
また、ゲルシートが透明性を必要とする場合には、ハイドロゲル層とともに用いられるシート状基材も、目付量の小さいナイロン織布、透明樹脂フィルムなどの光透過性に優れたものを選択することが好ましい。
【0058】
本発明のゲルシートを実用に供する際の形状としては特に制限はないが、テープ状でロール状に巻いた形状で提供されてもよく、一枚一枚独立した個別のシートであってもよい。個別のシートの場合、その形状は任意であり、使用目的、使用部位に応じて適宜選択され、例えば、楕円形、円形、ハート形、半円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、三角形、あるいはこれらが組み合わされた形状等が挙げられ、また、適用部位に沿った形状、使用部位により最も適切に貼り付けることができる形状を適宜設計してもよい。
例えば、生体用粘着シートとして用いる場合、ゲルシートの中心部や周辺部に位置合わせ等の目的で凸部や凹部を設ける、或いは、使用部位の形状に応じて、切り込みやくり抜き部分等を設けるなどの態様をとることができ、このような態様をとることで、適用部位における粘着シートの取り扱い性を向上させ、必要な領域における隣接する被着体との密着性を向上させることができる。
【0059】
以下、本発明のゲルシートの適用部位と形状について説明する。
本発明のゲルシートを生体に適用する場合の適用部位としては、顔(唇、頬部、目元部、目の上下部、鼻部、額部、顔全体)、腕部、脚部、胸部、腹部、背部、首部等が挙げられる。
本発明のゲルシートを生体用粘着シートとして使用する場合には、前記した形状のみならず、面積、厚み、ハイドロゲル層最表面の粘着特性等を、適用部位に応じて適宜調整すればよい。また、含有させる有効成分の種類や含有量も適宜調整することができる。
例えば、適用部位が顔全体である生体用粘着用シートを形成する場合には目、口の位置に相当する部分をくり抜き、鼻の位置に相当する部分に切り込みを入れた形状とし、さらに貼付け面積が大きいことから、粘着層の粘着力を上昇させるか、厚さを薄めにする等の調整を行うのが好ましい。また、顔用の形状を2分割し、額や目、鼻の周りに適用する上部と、口の周りからあご部に適用する下部とに分けてもよい。
【0060】
これらのゲルシートは、適用されるまでに水分や有効成分が経時的に減少することを防止するため、非通気性の素材からなる包装材料内に密閉されていてもよい。
例えば、テープ状に連続したゲルシートの場合、開閉可能な密閉容器、例えば、チャック付き非通気性シートからなる包装袋、非通気性樹脂により形成された蓋付き容器などに収納することができる。また、一枚一枚独立した個別のシートの場合には、非通気性のシートからなる開封可能な個別袋体内に密閉してもよい。このような状態で保存、流通することで使用時まで水分や有効成分を適切な状態で維持することができる。
【0061】
上記のように構成される本発明のゲルシートは、生体への密着性、保湿性、有効成分の離しょう性に優れ、取り扱い性が良好であることから、ハイドロゲル層中に含有させる成分の種類や量、ハイドロゲル層の厚みやゲルシートの剤形を選択することで、薬物を生体内へ投与する経皮吸収性医薬品の担持体としての貼付剤、美容、美顔および皮膚の治療等に用いられるパック料などのシート状化粧料、皮膚浸透成分や消炎鎮痛成分等の有効成分の担持体、傷保護や薬剤固定化などを目的とする生体用粘着テープ、創傷被覆剤などに有用である。
【0062】
〔シート状化粧料〕
本発明のシート状化粧料は、本発明のゲルシートにより構成することができる。
即ち、本発明のゲルシートに有効成分として、ビタミン類、アミノ酸類、保湿成分、美白成分、香料、防腐剤、収斂成分などを保持させて化粧料とすることができる。このシート状化粧料は、ハイドロゲル層表面を皮膚に密着させて使用するものである。
前記本発明のゲルシートは有効成分等の皮膚への浸透性および取り扱い性に優れているため、本発明のシート状化粧料は、上記のような顔に貼付して肌に潤いや薬効成分を与えるパック剤などのシート状化粧料として特に有用である。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらより限定されるものではない。なお、以下、含有量、配合量を示す「質量部」、「質量%」を、それぞれ「部」、「%」を表記することがある。
<O/Wエマルションの作製>
下記の成分を、70℃で加熱しながら1時間溶解して、水相組成物を得た。
(水相成分)
・ショ糖オレイン酸エステル ・・・15g
・モノオレイン酸デカグリセリル ・・・23g
・グリセリン ・・・500g
・純水 ・・・322g
【0064】
また、下記成分を70℃で加熱しながら1時間溶解して、油相組成物を得た。
(油相成分)
・ヘマトコッカス藻抽出物(アスタキサンチン類含有率20質量%) ・・・40g
・ミックストコフェロール ・・・10g
・レシチン(大豆由来) ・・・90g
【0065】
前記水相組成物を70℃に保ったままホモジナイザーで攪拌し(10000rpm)、そこへ上記油相組成物を添加してエマルションを得た。得られたエマルションをアルティマイザーHJP−25005(スギノマシン社製)を用いて、200MPaの圧力で高圧乳化を行った。得られたエマルションの体積平均粒径を、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株)製)を用いて25℃で測定したところ、90nmであった。
【0066】
<ハイドロゲルの作製>
表1に記載の成分のうち、前記のようにして得られたO/Wエマルションを除く成分を水中に順に添加し、80℃にて加熱・混練し、ゾル状物を得た。
なお、表1における「ハイドロゲル処方」欄に記載の数値はそれぞれの成分の含有量(単位:質量%)を表す。
このゾル状物を60℃まで冷却した後、前記O/Wエマルションを添加し、均一に攪拌した。これを0.8mm厚となる様にドクターブレードを用いて展延した後、目付量20g/mのナイロン編布を被せ、25℃で30分間静置することで、ナイロン編布をシート状基材として備え、その両面にハイドロゲル層を有する実施例1の生体用ゲルシートを得た。ハイドロゲル層の厚みは、総厚で0.8mmであった。
【0067】
【表1】

【0068】
上記表1において、プルロニックF−127(商品名)はBASF社製のポリエーテルである。
(ゲルシートの評価)
上記実施例1〜5および比較例1〜4の生体用ゲルシートを用いて、下記評価を行い、前記表1にその評価結果を併記した。なお、密着性、保湿性、皮膚バリア性、および美肌効果の各官能評価は、10人のモニターに上記実施例1〜5および比較例1〜4の生体用粘着ゲルシートを各々使用(顔に貼付)させ、その評価の平均値を表1に示した。
(1)離しょう率
上記実施例1〜5および比較例1〜4の生体用ゲルシートを、3cm×3cmサイズにカットし、これを直径9cmのアドバンテック東洋社製濾紙No.2〔JIS P3801(995年版)に規定される濾紙:125g/m、厚さ0.26mm、濾水時間80秒、吸水度80cm)を上下2枚用いてはさみ、25℃相対湿度55%の雰囲気下10分間静置した際の濾紙の質量変化を測定し質量変化を測定して濾紙吸液質量を求め、下記式1により離しょう率を算出し、同様の試験を5回繰り返した平均値を離しょう率(単位:質量%)として表1に記載した。
離しょう率=(濾紙吸液質量/ゲル初期質量)×100 (式1)
*ここでゲル初期質量は、ゲルシート試験片の質量からシート状基材であるナイロン編布の質量を除して得られる値である。
【0069】
(2)密着感
貼り付けたゲルシートが、顔の表面に沿って密着する場合をA、部分的に浮きが生じた場合をB、各部にシワができて、浮きが多数発生した場合をCとして評価した。
なお、密着感評価において、ゲルシートを皮膚に貼付する際、破損や所望されない伸張などは観察されず、このことから実施例1〜5のゲルシートは取り扱い性にも優れることがわかった。
(3)保湿性
モニター10名のゲルシート貼付前の目尻の角層水分量を角層水分量計(アサヒバイオメッド社製)におけるコンダクタンスの値にて評価した。
その後、上記実施例1〜5および比較例1〜3の生体用粘着ゲルシートを、目尻に15分間貼付して、剥離した後30分後の、目尻の角層水分量について、同様にして測定した。両者を比較し、10名の平均にてコンダクタンスが15%以上上昇していた場合をAA、10%〜15%の増加がみられた場合はA、2〜10%の増加がみられた場合をB、2%未満の変化であった場合をCとして評価した。
【0070】
(4)皮膚バリア性
肌荒れ改善機能を評価するため、以下の方法で経表皮水分蒸散量(TEWL)を測定した。
すなわち、1日15分の貼付を3日継続し、3日目の生体用粘着ゲルシート剥離直後の経表皮水分蒸散量(TEWL)を水分蒸散計(アサヒバイオメッド社製)にて測定した。テスト前に比して、TEWLが5質量%以上低下した場合をA、1〜4質量%の場合をB、変化が見られない場合をCとして評価した。
【0071】
(5)官能評価
1日15分の貼付を3日継続した際の、3日目の生体用粘着ゲルシート剥離直後の皮膚の外観についての印象にて評価を行った。明らかにキメが整ったと感じた場合をA、わずかにキメが整ったと感じた場合をB、変化が見られなかったと感じた場合をCとした。
【0072】
(6)含水率
ゲルシートからハイドロゲル層1gを取り出し、25℃にて減圧乾燥を行った。試料の質量変化が認められなくなるまで乾燥を継続し、下記に示す式2により含水率を算出した。
含水率(%)= 〔(初期質量−乾燥後質量)/初期質量〕*100 (式2)
上記の測定試験を5回繰り返して得られた値の平均値を、含水率(単位:質量%)として表1に記載した。
【0073】
表1の結果から、実施例1〜5のゲルシートは、離しょう性に優れていた。また、実用上も、肌への密着性や肌に密着させるときの取り扱い性が良好で、保湿性や皮膚のバリア性の改善効果に優れ、またキメを調える美肌効果を有することが明らかとなった。一方、離しょう性の低い比較例1〜4のゲルシートでは、特に官能評価での改善効果の実感が得られず、また保湿効果も劣るものとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性高分子化合物100質量部に対し、水溶性2価金属塩を50質量部以上用いて形成されるハイドロゲルを含むゲルシート。
【請求項2】
前記ハイドロゲル中における水溶性2価金属塩の含有量が0.2質量%以上10質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のゲルシート。
【請求項3】
前記ハイドロゲル中における3価以上の多価金属塩の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のゲルシート。
【請求項4】
前記ハイドロゲルが、コラーゲン及びコラーゲン分解生成物からなる群より選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のゲルシート。
【請求項5】
前記ハイドロゲルが、ポリエーテルを含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のゲルシート。
【請求項6】
前記ハイドロゲルが、O/W型エマルションを含有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のゲルシート。
【請求項7】
前記ハイドロゲルが、多糖類を含有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のゲルシート。
【請求項8】
前記ハイドロゲルが、多価アルコール化合物を含有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のゲルシート。
【請求項9】
前記ハイドロゲルの含水率が70〜95質量%であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のゲルシート。
【請求項10】
前記ハイドロゲルを含むハイドロゲル層と、該ハイドロゲル層中或いは該ハイドロゲル層と隣接して設けられるシート状基材と、を有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項のいずれかに記載のゲルシート。
【請求項11】
前記ハイドロゲル層の厚みが0.4〜2mmであることを特徴とする請求項10記載のゲルシート。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のゲルシートを用いたシート状化粧料。

【公開番号】特開2009−108007(P2009−108007A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284489(P2007−284489)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】