説明

ゲルシート

【課題】粉体着色材をゲルシート中に均一に分散できなかった場合でも、生産性が格段に優れ、着色度や高級感が発現でき、意図的なデザインにコントロールすることができるゲルシートの提供。
【解決手段】着色された多孔性基材3が中間基材として埋設されたゲルシート。更に粉体着色材4がゲルシート1中に併用されており、前記多孔性基材3が着色した糸を織った織布を用いており、前記多孔性基材3を上下2層に分断させることなく前記多孔性基材3の開口の中に前記粉体着色材を有しているゲルシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用パック剤として有用なゲルシートに関する。
【背景技術】
【0002】
化粧用パック剤として透明あるいは半透明のゲルシートが用いられている。これらに美的な装飾を加えて美しい外観として意匠性を高めたり、高級感を創出するために、ゲルシート中に金粉や着色粉体を加えることが行われている。
【0003】
従来、特許文献1は、透明または半透明のシート状製剤に、パール材料を配合し、美しい外観を示すシート状化粧料を提供する。パール材料として、光輝性粉体および金属蒸着フィルムが記載されている。また強度を維持し、伸縮性を持たせるために開口率の大きい織布、不織布を内在させることが好ましいとの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−29913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1は、含水ゲル層の表面に金属色を現出させる成分が、該含水ゲル層に含有されているゲルシートである。ここで金属色を現出させる成分とは、マイカに酸化チタン、酸化鉄を被覆させた酸化鉄被覆チタンマイカなどの粉体である。この粉体をゲルシート中に分散させるのが難しい。
ゲル形成組成物は比較的高粘度であり、粉体分散のため強く攪拌するとゲルシート中に気泡が入り、脱泡には長時間を要する。気泡が入らないようにゆっくり攪拌すると粉体の分散に長時間を要し、生産性が悪くなる。このように粉体状で加えると、着色粉体がゲルシート中に均一に分散できなかったり、逆に部分的な着色ができなかったりした。また分散が不十分であると着色に多量の粉体を要する。また着色粉体の添加量が十分でない場合には期待するような着色度や高級感が発現しなかった。分散状態はコントロールしにくいので意図的なデザインが困難である。
本発明の課題は、生産性が格段に優れ、着色度や高級感が発現でき、意図的なデザインにコントロールすることができるゲルシートを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明は、着色した多孔性の基材をゲルシートの中間基材としてゲルシート中に埋設することで、意図的、効果的な装飾を可能としたゲルシートを提供する。
本請求項1の発明は、着色された多孔性基材が中間基材として埋設されたゲルシートである。
本請求項2の発明は、着色された多孔性基材が着色した繊維から作成された基材である請求項1に記載のゲルシートである。
本請求項3の発明は、着色された多孔性基材が無着色の繊維から作成された基材に染色及びまたは印刷した基材である請求項1に記載のゲルシートである。
本請求項4の発明は、粉体着色材が併用された請求項1乃至3のいずれかに記載のゲルシートである。
本請求項5の発明は、着色された多孔性基材が中間基材として埋設され、かつ粉体着色材がゲルシート中に併用されており、前記基材を上下2層に分断させることなく前記基材の開口の中に前記粉体着色材を有している請求項4記載のゲルシートである。
本請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載のゲルシートを用いる化粧用ゲルパックである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のゲルシートは、着色された多孔性基材が中間基材としてゲルシート中に埋設されているので、ゲルシート中に分散させるのが難しい粉体着色材を添加したゲルシートに比べて、着色度に優れ、高級感が発現でき、デザインが意図的にコントロールできる。また、粉体着色材の分散性を気にしなくてよく生産性が格段に優れることから安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】は本発明の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一例について図に基づいて説明する。図1において、1はゲルシート、2は含水ゲル組成物、3はゲルシート1中に中間基材として埋設された着色された多孔性基材、4は粉体着色材である。
【0010】
多孔性基材
本発明において使用できる多孔性基材としては、織布(編布含む)、不織布が例示される。中でも織布が好ましい。また非着色の部分は、ゲルシート中で透明または半透明となるものが好ましく、透明となるものがより好ましい。
多孔性基材はゲル組成物からなるゲルシートを上下2層に分断させるものではない。この揚合、開口率の大きな多孔性基材としては、次式(数1)で表される1m当たりの、繊維による仮定上の遮蔽面積N(m/m)が、
0.2≦N≦2.0
の範囲内にあることが好ましい。
【0011】
(数1)
N=0.107W √ (1/dρ)
ここで、(数1)式中、Wは布状基材の単位面積当たりの重量(g/m)、dは構成する繊維のデニール繊量、ρは繊維の構成成分の密度(g/cm)である。
(数1)におけるNが0.2より小さい揚合は、着色度が不十分となったり、着色に多量の材料が必要となったり、デザイン性が制限される。また、多孔性基材の強度が十分ではなく、ゲルシートの強度向上効果も少ない。一方、Nが2.0より大きい場合には、剛性が強すぎるために柔軟性を欠き、パック材として用いた場合には皮膚への貼りつきが悪く、好ましくない。
【0012】
開口率が大きい織布又は不織布を構成する繊維としては、一般的に用いられているものが使用可能であるが、透明性や衛生管理面から、天然繊維よりは合成繊維が好ましい。
中でも好ましい素材としては、ナイロン、レーヨン及び、ポリエステル繊維が挙げられる。更に、ゲルに埋め込んだ場合に気泡が発生しにくい等の点から、マルチフィラメントタイプの繊維の場合は、一本の糸を構成する繊維の数は少ない方が好ましい。モノフィラメントタイプであることがより好ましい。
より具体的な多孔性基材としては、光の反射を変化させて光るように見える特殊な断面の糸(ブライト糸又は光沢糸)を用いて編まれた編布が好ましい。
【0013】
(着色された多孔性基材)
多孔性基材の着色方法としては、多孔性基材を構成する繊維に着色繊維を用いることができる。
繊維の着色には、繊維を着色するために用いられる一般的な染料・顔料を用いることができる。
また、無着色の多孔性基材を染色したり、印刷して着色することもできる。染色と印刷を併用してもよい。これにより、意図的な着色が可能であり、デザインの自由度が高められる。
また、繊維として着色したフィルムや金属蒸着を施したフィルムを細かくスリットし、糸状にしたものを用いてもよい。
また、化粧品で従来併用されている光輝性粉体(粉体着色材)を繊維に接着剤などを用いて付着させた繊維を用いて多孔性基材を作成してもよい。直接、光輝性粉体を多孔性基材に接着剤などを用いて付着させてもよい。
【0014】
光輝性粉体としては、例えば酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆板状シリカ、酸化チタン被覆板状アルミナ、酸化鉄被覆チタンマイカ、酸化鉄被覆雲母、板状酸化鉄、マイカ、魚燐箔、真珠殻、オキシ塩化ビスマス、金属蒸着樹脂フィルム、金属酸化物蒸着樹脂フィルム、金、アルミニウムなどの金属箔などが挙げられるが、特に酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆板状シリカ、酸化チタン被覆板状アルミナ、酸化鉄被覆雲母、板状酸化鉄、マイカ、オキシ塩化ビスマス、金属蒸着樹脂フィルムや金属酸化物蒸着樹脂フィルムの粉砕物から選ばれることが好ましい。これらの着色材料は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、酸化チタン被覆雲母の一種として、色素や酸化鉄などを併用したものも好ましく用いることができる。酸化チタン被覆雲母などの被覆粉体では被覆層の厚さは特に制限はなく、強い光沢を発するものから、わずかしか光沢を発しないものまで任意に使用可能である。
繊維に光輝性物質を付着させる場合は、繊維の重量に対して1〜50重量%の光輝性物質を付着させることが好ましい。1重量%未満であると意匠性の創出が難しくなり、50重量%以上であると強度的に弱くなり、ちぎれ易くなるため好ましくない。付着させる場合の光輝性物質の大きさは0.5μm〜2mmが好ましい。0.5μm未満であると意匠性の創出が難しくなり、2mmを超えるとゲルから光輝性物質が突出し、刺激の原因となりやすいため好ましくない。
着色された多孔性基材としては、前記の光の反射を変化させて光るように見える特殊な断面の糸(ブライト糸又は光沢糸)を編んだ編布に染料で着色したものが好ましい。より具体的には、ナイロン製のブライト糸をトリコットハーフ織りしたものにベージュ酸性染料で染色した金色スパークハーフと呼ばれる編布が好ましい。
【0015】
(粉体着色材の併用)
また、化粧品で従来使用されている粉体着色材(着色粉体)を少量添加するとさらに効果的である。中でも前記の光輝性粉体が好ましい。その添加量はシート状製剤に対して0.001〜3質量%が好ましい。少なすぎても意匠性が実感しにくくなり、多すぎるとコストが高くなる。
少量の粉体着色材を併用することで、着色基材を含む全体として意匠性や高級感が高くなるほか、不規則性により面白さが感じられる。
【実施例】
【0016】
以下、実施例を説明するが、本発明は当該実施例に限定されるものではない。なお、表1の配合量は重量部を示している。
(実施例1)
下記の表1に示す各成分をよく混合して得たゲル形成用配合液(ゲル基材としてのポリアクリル酸ナトリウム、架橋剤としてのメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、防腐剤としてのメチルパラベン、可塑剤としてのDPG(ジプロピレングリコール)およびPEG1000(ポリエチレングリコール、分子量1000)の50%水溶液、溶媒としての水を攪拌混合して作成)を、手早く100μm厚のPETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)の上に展延した。その周囲に厚み1mmのスペーサーを置き、中間基材(着色された多孔性基材)として金色スパークハーフナイロン6製編布(ナイロン6の密度は1.14g/cm、15デニールのモノフィラメントのブライト糸をトリコットハーフ織りしたものにベージュ酸性染料で染色したもの、編布目付量17g/m、N=0.44)を展延した配合液の上に乗せ、更に配合液を中間基材の上に展延し、最上部に38μm厚のPETフィルムをかぶせ、その上から平坦な金属板でプレスした。その状態で24時間室温静置して固化させ、厚み1mmのゲルシートを得た。中間基材の両側にゲルがある(中間基材がゲル中に埋設されている)ため、どちらの面からも着色を確認できる状態であった。
【0017】
(実施例2〜4)
ゲル形成用配合液を実施例1のゲル形成用配合液に下記の表1に示す着色紛体A〜C(光輝性粉体A:エンゲルハード社製「ティミカブリリアントゴールド」、光輝性粉体B:チバジャバン社製「アートデコゴールドパール」、光輝性粉体C:日本光研工業社製「プロミネンスRYH」)をさらに配合し攪拌混合したゲル形成用配合液に変更したこと以外は実施例1と同様にして厚み1mmのゲルシートを得た。
【0018】
(実施例5)(光輝性粉体なし)
中間基材(着色した多孔性基材)として、生成りのナイロン6製編布(ナイロン6の密度は1.14g/cm、15デニールのモノフィラメント糸をトリコットハーフ織りしたものにベージュ酸性染料で染色したもの、編布目付量17g/m、N=0.44)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして厚み1mmのゲルシートを得た。
【0019】
(実施例6)(ゲル種ちがい1)
ゲル形成用配合液を、下記の表1に示す着色紛体を含む各成分を配合し攪拌しながら80℃まで加熱、溶解して得たゲル形成用配合液に変更したこと以外は実施例1と同様にして厚み1mmのゲルシートを得た。
【0020】
(実施例7)(ゲル種違い2)
ゲル形成用配合液を、下記の表1に示す着色紛体を含む各成分を配合し攪拌しながら80℃まで加熱、溶解して得たゲル形成用配合液に変更したこと以外は実施例1と同様にして厚み1mmのゲルシートを得た。
【0021】
(実施例8)(光輝性粉体織り込み中間基材)
中間基材(着色された多孔性基材)として、ナイロン6製編布(ナイロン6の密度は1.14g/cm、15デニールのモノフィラメントに光輝性粉体として1mm径の酸化鉄被覆チタンマイカをフィラメントとの重量比25%で接着させた糸をトリコットハーフ織りしたもの、編布目付量17g/m、N=0.44)を中間基材として用いたこと以外は、実施例1と同様にして厚み1mmのゲルシートを得た。
【0022】
(比較例1)
比較例1は着色を施していないナイロン6製の15デニールの太さの糸をトリコット織りしたものを中間基材とした以外、実施例1と同様にして厚み1mmのゲルシートを得た。該中間基材はゲル中では視覚的にほぼ透明となる上、光輝性紛体を0.3%添加していても視覚上はまばらで認識されにくいものであった。
【0023】
【表1】

【0024】
これらの実施例・比較例で得られたゲルシートは厚み1mmで、中間基材を内在しており、その両面は、剥離可能なPET製のセパレーターでカバーされた状態である。これを顔全体を覆えるマスク状に裁断機で打抜いた後、遮光性と水蒸気バリア性に優れたアルミラミネートフィルム製のパウチ袋の中に密封して、マスク状ゲルシートパック剤を得た。
【0025】
尚、本発明で用いた官能特性評価方法は以下の通りである。
専門パネラー10名を用いて、試作品の官能特性を貼付試験で官能評価した。マスク状ゲルシートパック剤の両側のセパレーターを剥離し、顔上に15分貼り付けた後に除去する方法を用いた。評価項目としては、視覚的におもしろいと感じたか否かをアンケート形式で評価した。効果が認められない場合を0点とし、効果が認められた場合を5点とし、その間を計4段階で評価し、全員の点数の合計を以て評価結果(満点50点)とした(表2)。
従って、点数が高いほど、評価が高いことを示す。
【0026】
【表2】

【0027】
実施例1〜8は比較例1に比べて視覚的な面白さが向上し、その視覚的な心理上の期待感が発生し、様々な意匠性の演出ができた。また少量の着色材でも意匠性が高いため、低コストでの作成が可能であった。
【符号の説明】
【0028】
1 ゲルシート
2 含水ゲル組成物
3 多孔性基材
4 粉体着色材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色された多孔性基材が中間基材として埋設されたゲルシート。
【請求項2】
着色された多孔性基材が着色した繊維から作成された基材である請求項1に記載のゲルシート。
【請求項3】
着色された多孔性基材が無着色の繊維から作成された基材に染色及びまたは印刷した基材である請求項1に記載のゲルシート。
【請求項4】
粉体着色材が併用された請求項1乃至3のいずれかに記載のゲルシート。
【請求項5】
着色された多孔性基材が中間基材として埋設され、かつ粉体着色材がゲルシート中に併用されており、前記多孔性基材を上下2層に分断させることなく前記多孔性基材の開口の中に前記粉体着色材を有している請求項4記載のゲルシート。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のゲルシートを用いる化粧用ゲルパック。

【図1】
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【公開番号】特開2011−207787(P2011−207787A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75258(P2010−75258)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】