説明

ゲルベアルコールの製造方法

【課題】より経済的かつ環境汚染の少ない重金属触媒の使用を回避したゲルベアルコールの製造方法の提供。
【解決手段】R2OH[式中、R2は6〜12個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を示す]で示される脂肪アルコールを、カルボニル化合物および水酸化アルカリの存在下に縮合させて、CH3(CH2)nCHR1CH2OH[式中、R1はn−1個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を示し、nは3〜9個の炭素原子を示す]で示されるゲルベアルコールを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品用の油物質または成分の分野に関するものであり、重金属触媒を使用しないゲルベアルコール製造のための改良法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲルベアルコールは、2位で分岐し、直鎖脂肪アルコールの縮合により得られる第1級アルコールである。この生成物は、化粧品エマルジョン製造用の油成分として主に用いられる。その製造のための出発点は、通常は脂肪アルコールであり、これを第1工程において、強塩基および重金属化合物(例えば、銅または亜鉛酸化物など)の影響下に自己縮合させる。この反応条件下に、初めにアルコールが脱水されてアルデヒドを生成し、このアルデヒドがそれ自体とアルドール縮合反応し、次いでこの縮合生成物が水和されてアルコールを生成すると考えられている。これに関する概説を、例えば、Angew. Chem. 64, 212 (1952)に見ることができる。
【0003】
しかし、法的要件を満たすため、ならびに、後の使用において刺激を引き起こさないことを確実にするために、反応終了後に重金属触媒を再び分離除去しなければならないという欠点が存在する。通常、分離は洗浄とその後の蒸留によって行われ、この後者は少なからず生成物の損失を伴う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Angew. Chem. 64, 212 (1952)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、従来技術と比較して、より経済的かつ環境汚染の少ないゲルベアルコールの製造方法を提供することである。特に、本発明は、重金属触媒の使用を回避しようとし、高価につく遠心洗浄を伴わない生成物の単純な蒸留精製を保証しようとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の対象は、式(I):
【化1】

[式中、R1はn−1個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を示し、nは3〜9個の炭素原子の数を示す]
で示されるゲルベアルコールの製造方法であって、式(II):
【化2】

[式中、R2は6〜12個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を示す]
で示される脂肪アルコールを、カルボニル化合物および水酸化アルカリ金属の存在下に縮合させることを特徴とする方法である。
【0007】
驚くべきことに、重金属化合物の代替物として、カルボニル化合物(特に脂肪アルデヒド)も、特にそれを高温で添加したときに、ゲルベ反応に対して適当な触媒になることを見い出した。従って、本方法の特別の利点は、縮合反応を重金属の不存在下に同程度の収率を伴って行うことができ、仕上げ操作において洗浄を必要とせず、従ってもはや生成物の損失もないことである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
脂肪アルコール
脂肪アルコール、好ましくは、式(I)においてR2が8〜10個の炭素原子を有するアルキル基である脂肪アルコールが、縮合操作に適する。その代表例は、ヘキサノール、オクタノール、デカノールおよびこれらの混合物である。
【0009】
カルボニル化合物
触媒として使用されるカルボニル化合物はケトンであり、特に、好ましくは式(III):
【化3】

[式中、R3は6〜12個、特に8〜12個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を示す]
で示される脂肪アルデヒドである。その代表例は、ヘキサナール、オクタナール、デカナール、ドデカナールおよびこれらの混合物である。同一のアルキル基を有する脂肪アルコールおよび脂肪アルデヒドを使用するのが特に有利であることがわかった。通常のカルボニル化合物(特に脂肪アルデヒド)は、脂肪アルコールに対して、通常は0.2〜50モル%、好ましくは1〜25モル%、特に3〜10モル%の量で使用される。
【0010】
縮合
縮合反応は、自体既知の方法で行うことができる。即ち、脂肪アルコールおよび塩基を、200〜250℃、好ましくは210〜240℃の範囲の温度で加熱する。次いで、カルボニル化合物を、20〜250℃の温度で、脂肪アルコールおよび水酸化アルカリ金属の混合物に添加することができる。しかし、添加操作を高温(即ち、210〜240℃)で行うのが有利であることがわかった。また、添加速度も縮合反応に影響を与える。通常の時間は、反応速度および収率を考慮して0.1〜10時間であるが、10〜60分が推奨される。水酸化アルカリ金属の量は、脂肪アルコールに対して1〜10モル%、好ましくは3〜5モル%であってよい。好ましくは、少なくとも40重量%の水酸化ナトリウムまたは特に水酸化カリウムのアルカリ液を使用する。いずれにしても、反応平衡を生成物側に移行させるために、縮合水を連続的に留去することが推奨される。この場合に有機物質が容易に付随するので、デフレグメーターを使用するのが効果的であることがわかった。これを使用することにより、有機相を分離し、出発物質に再循環させることが可能である。次いで、洗浄工程なしに行われる後処理法は、単純な蒸留を含んでなる。これは、より少ない生成物損失およびより少ない廃水汚染を与える。
【実施例】
【0011】
実施例1
95重量%デカノール1000g(6.3モル)を、フラスコ、マントルヒーター、デフレグメーター、リービッヒ冷却管、窒素移送デバイス、および往復工程ピストンポンプを含む撹拌装置中に入れ、20℃で45重量%の水酸化カリウム溶液22.5g(0.22モル)と混合し、215℃に加熱した。加熱中に生じる水を連続的に留去した。次いで、29.6gのデカナール(デカノールに対して3モル%に相当する)を、60分以内でポンプにより計量添加し、その操作中、温度を240℃に高めた。蒸留された有機相を、相分離後に反応混合物に供給した。6時間後に反応を終了させた。生成物混合物のGC分析は、76重量%の2-オクチルドデカノールが生成したことを示した。さらに、反応混合物は、6重量%の三量体、14重量%の未反応単量体アルコール、ならびに、4重量%のC18およびC22ゲルベアルコールからなる混合ゲルベアルコールを含んでいた。生成物の精製を蒸留により行い、未反応のデカノールを初留として除去し、反応混合物に再導入した。残留物はより高分子の構成成分であった。
【0012】
実施例2
実施例1と同様に、デカノール1000g(6.3モル)を、水酸化カリウム溶液22.5(0.22モル)およびデカナール29.6gと混合し、240℃に加熱した。加熱操作中に生成した水を連続的に留去し、蒸留された有機相を相分離後に反応混合物に供給した。6時間後に反応を終了させた。生成物混合物のGC分析は、43重量%の2-オクチルドデカノールが生成したことを示した。さらに、反応混合物は、2重量%の三量体、53重量%の未反応単量体アルコール、ならびに、2重量%のC18およびC22ゲルベアルコールからなる混合ゲルベアルコールを含んでいた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、R1はn−1個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を示し、nは3〜9個の炭素原子の数を示す]
で示されるゲルベアルコールの製造方法であって、式(II):
【化2】

[式中、R2は6〜12個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を示す]
で示される脂肪アルコールを、カルボニル化合物および水酸化アルカリ金属の存在下に縮合させることを特徴とする方法。
【請求項2】
2が8〜10個の炭素原子を有するアルキル基である式(I)の脂肪アルコールを用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脂肪アルデヒドをカルボニル化合物として用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
式(III):
【化3】

[式中、R3は6〜12個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を示す]
で示される脂肪アルデヒドを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
カルボニル化合物を、脂肪アルコールに対して0.2〜50モル%の量で用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
カルボニル化合物を、20〜250℃の温度で脂肪アルコールおよび水酸化アルカリ金属の混合物に計量添加することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
カルボニル化合物を、0.1〜10時間で計量添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
水酸化アルカリ金属を、脂肪アルコールに対して1〜10モル%の量で用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
縮合生成物を、蒸留によって後に精製することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
縮合操作を、重金属触媒の不存在下に行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2012−211137(P2012−211137A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−113648(P2012−113648)
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【分割の表示】特願2002−528632(P2002−528632)の分割
【原出願日】平成13年9月11日(2001.9.11)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】