説明

ゲルマニウム含有フィルムの堆積のための二ハロゲン化ゲルマニウム(II)先駆物質

Xはハロゲン化物であり、LはC以外の付加物であり、0.5≦n≦2であるGeX−L分子が開示される。これらの分子は、GeCl−ジオキサンと比較して、低い融点および/または高い揮発性を有する。また、そのような分子の、カルコゲニド、SiGeおよびGeOフィルムといった薄膜の堆積のための使用が開示される。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
[技術分野]
半導体、光電池、LCD−TFTまたは平面パネル型装置の製造において使用するためのゲルマニウム含有先駆物質が開示される。さらに、ゲルマニウム含有先駆物質を使用した、ゲルマニウム含有フィルムを形成するための蒸着法、好ましくは熱ALDが開示される。
【0002】
[背景技術]
相変化メモリー(PCM)は、CDおよびDVDといった書き換え可能データストレージメディアにおいて一般に使用される非揮発性メモリーである。その現象は、カルコゲニド材料のアモルファス相と結晶相との間における制限のない可逆的な相変化を示す特性に基づく。これらのそれぞれの相は、異なる光学的且つ電気的特性を有する。電子機器において、これらのそれぞれの相は1ビット(0または1)に関連付けられており、このことはデータの保管を可能にする。カルコゲニド材料は種々の組成を有してよい。カルコゲニド材料は、しばしば、テルル、ゲルマニウム、アンチモンおよび/またはセレンから成る合金である。GeSbTe(GST)は、最も研究されたカルコゲニド材料の1つである。しかしながら、CVDまたはALD技術を使用したGSTフィルムの堆積が報告されているものの、適切な先駆物質および商業的なGSTの堆積に適した堆積プロセスのための研究の余地がある。
【0003】
GSTフィルムは、Ritalaおよび彼のチームによって、互いに非常に高い反応性を示すゲルマニウム、アンチモンおよびテルル先駆物質を使用して、90℃の熱ALDモードによって得られた(Ritala et al., Microelectronic Engineering 86 (2009) 1946-1949)。GeCl−ジオキサン、Te(SiEtまたはTe(SitBuMeが使用された。低い温度での堆積を可能とする反応は、Razuvaevにより既にヒントが示されており(Razuvaev et al., Organosilicon and organogermanium derivatives with silicon-metal and germanium-metal bonds, 1969, Vol. 19, Issue 3, p. 353-374)、次の通りである:
Te(SiR(g)+MCl(g)→MTe(s)+2RSiCl(g)
この文献では、フィルムの乏しい品質並びにプラズマパワーの使用という問題があり、このことは、下層に損傷を与える可能性があり、パターン化されたウエハの十分に均一な被覆ができない可能性がある。GeCl−ジオキサンの使用も問題となる可能性があり、これは、この分子が高い融点(178−189℃)および低い揮発性を有し、CVD/ALD堆積技術のための理想的な候補に決してならないためである。
【0004】
WO2009/132207(ASM International N.V.)は、Ge−TeおよびGeSbTe(GST)を含むTe含有フィルムを形成するための原子層堆積プロセスを開示している。開示されるプロセスにおいて使用されるGe含有先駆物質は、XがF、Cl、BrまたはIであるGeXおよびGeCl−ジオキサンといった付加されたGeXの誘導体を含む。GeBrおよびGeCl−ジオキサン先駆物質を使用した例示的な堆積が提供される。
【0005】
現在までに発表されている研究の殆どにおいて、フィルムの乏しい品質並びにプラズマパワーの使用という問題があり、このことは、下層に損傷を与える可能性があり、パターン化されたウエハの十分に均一な被覆ができない可能性がある。GeCl−ジオキサンの使用は、この分子が、取り扱い並びに運搬の問題を生じさせる高い融点(178−180℃)を示し、テルルおよびアンチモン分子と不適合な揮発性を示す点においても問題となりうる。
【0006】
したがって、CVDおよびALD技術によるゲルマニウム含有フィルムの堆積を可能にする材料の必要性が存在する。
【0007】
[表記法および命名法]
一定の略語、記号および用語が以下の明細書および特許請求の範囲を通して使用され、以下を含む:用語「アルキル基」は、もっぱら炭素および水素原子を含む飽和した官能基を指す。さらに、用語「アルキル基」は、直鎖、分枝鎖または環状アルキル基を指す。直鎖アルキル基の例は、限定を意味することなく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を含む。分枝鎖アルキル基の例は、限定を意味することなく、t−ブチルを含む。環状アルキル基の例は、限定を意味することなく、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を含む。
【0008】
略語「Me」はメチル基を指す;略語「Et」はエチル基を指す;略語「Pr」はプロピル基を指す;略語「nPr」は鎖状のプロピル基を指す;略語「iPr」はイソプロピル基を指す;略語「Bu」はブチル(n−ブチル)基を指す;略語「tBu」はtert−ブチル基を指す;略語「sBu」はsec−ブチル基を指す;略語「iBu」はイソ−ブチル基を指す;略語「Ph」はフェニル基を指す;略語「THF」はテトラヒドロフランを指す;略語「THP」はテトラヒドロピランを指す;略語「TMEDA」はN,N,N’,N’−テトラメチレンジアミンを指す;および、略語「NMM」はN−メチルモルフォリンを指す。
【0009】
元素の周期表に由来する元素の標準的な略語がここに使用される。元素は、その略語により言及できると理解すべきである(例えば、Geはゲルマニウムを指し、Teはテルルをさし、Sbはアンチモンを指す等)。
【0010】
ここに使用される用語「独立に」は、R基の記載に関して使用される場合、対象のR基は、同一または異なる下付き文字または上付き文字を有するその他のR基に関して独立に選択されるだけでなく、その同一のR基の任意の付加的な種に関しても独立に選択されるという意味であると理解すべきである。例えば、xが2または3である式MR(NR(4−x)において、2つまたは3つのR基は、互いに同一であってよいが同一である必要はなく、またはRもしくはRと同一であってよいが同一である必要はない。さらに、特に別記しない限り、R基の値は、異なる式において使用された場合、互いに独立していると理解すべきである。
【0011】
[概要]
次の式を有するゲルマニウム含有先駆物質であって、
GeX−L
−LはCでないという条件で、
−Xは、F、Cl、BrおよびIから成る群から独立に選択され、
−Lはルイス塩基であり、
−0.5≦n≦2、好ましくは0.75≦n≦1.25である物質が開示される。
【0012】
開示される先駆物質は1以上の以下の側面を含んでよい:
・前記ルイス塩基は、水;エーテル;ケトン;スルホキシド;一酸化炭素;ベンゼン;ジクロロメタン;THF;THP;ジグリム;ピリジン;ピペリジン;ピラジン;TMEDA;NMM;トリオキサン;HOEt;EはPまたはAsであり、RはCからCアルキル基またはPhであるER;および、EはPまたはAsであり、RはCからCアルキル基であり、RはPhであるERから成る群から選択されてよく;および
・前記先駆物質は、GeCl−(メチル−1,3−ジオキサン)、GeCl−(2,4−ジメチル−1,3−ジオキサン)、GeCl−(トリオキサン)、GeCl−(2−MeTHF)、GeCl−(THP)、GeCl−(HOEt)、GeCl−(ジグリム)、GeCl−(PEtPh、GeCl−(AsEt、GeCl−(AsiPr、GeCl−(AsnPr、GeCl−(AsnBu、GeCl−(AstBu、GeCl−(AsEtPh、GeCl−(メチルピリジン)、GeCl−(トリフルオロメチルピリジン)、GeCl−(トリメチルシリルピリジン)n、GeCl−(1−メチルピペリジン)、GeCl−(ピラジン)、GeCl−(2,6−ジメチルピラジン)、GeCl−(2−メトキシピラジン)n、GeCl−(TMEDA)、GeCl−(NMM)、GeCl−(NEt、GeBr−(メチル−1,3−ジオキサン)、GeBr−(2,4−ジメチル−1,3−ジオキサン)、GeBr−(トリオキサン)、GeBr−(THF)、GeBr−(2−MeTHF)、GeBr−(THP)、GeBr−(HOEt)、GeBr−(ジグリム)、GeBr−(PEt、GeBr−(PiPr、GeBr−(PnPr、GeBr−(PnBu、GeBr−(PEtPh、GeBr−(AsEt、GeBr−(AsiPr、GeBr−(AsnPr、GeBr−(AsnBu、GeBr−(AstBu、GeBr−(AsPh、GeBr−(AsEtPh、GeBr−(ピリジン)、GeBr−(メチルピリジン)、GeBr−(トリフルオロメチルピリジン)、GeBr−(トリメチルシリルピリジン)、GeBr−(1−メチルピペリジン)、GeBr−(ピラジン)、GeBr−(2,6−ジメチルピラジン)、GeBr−(2−メトキシピラジン)、GeBr−(TMEDA)、GeBr−(NMM)、GeBr−(NEt、GeI−(メチル−1,3−ジオキサン)、GeI−(2,4−ジメチル−1,3−ジオキサン)、GeI−(トリオキサン)、GeI−(THF)、GeI−(THP)、GeI−(2−MeTHF)、GeI−(HOEt)、GeI−(ジグリム)、GeI−(PEt、GeI−(PiPr、GeI−(PnPr、GeI−(PtBu、GeI−(PPh、GeI−(AsEt、GeI−(AsiPr、GeI−(AsnPr、GeI−(AsnBu、GeI−(AstBu、GeI−(AsPh、GeI−(AsEtPh、GeI−(ピリジン)、GeI−(メチルピリジン)、GeI−(トリフルオロメチルピリジン)、GeI−(トリメチルシリルピリジン)、GeI−(1−メチルピペリジン)、GeI−(ピラジン)、GeI−(2,6−ジメチルピラジン)、GeI−(2−メトキシピラジン)、GeI−(TMEDA)、GeI−(NMM)、GeI−(NEt、GeF−(メチル−1,3−ジオキサン)、GeF−(2,4−ジメチル−1.3−ジオキサン)、GeF−(トリオキサン)、GeF−(THF)、GeF−(2−MeTHF)、GeF−(THP)、GeF−(HOEt)、GeF−(ジグリム)、GeF−(PEt、GeF−(PiPr、GeF−(PnPr、GeF−(PnBu、GeF−(PtBu、GeF−(PPh、GeF−(PEtPh、GeF−(AsEt、GeF−(AsiPr、GeF−(AsnPr、GeF−(AsnBu、GeF−(AstBu、GeF−(AsPh、GeF−(AsEtPh、GeF−(メチルピリジン)、GeF−(トリフルオロメチルピリジン)、GeF−(トリメチルシリルピリジン)、GeF−(1−メチルピペリジン)、GeF−(α,α−ビピリジン)、GeF−(ピラジン)、GeF−(2,6−ジメチルピラジン)、GeF−(2−メトキシピラジン)、GeF−(TMEDA)、GeF−(NMM)、GeF−(NEtおよびそれらの組合せから成る群から選択されてよく、好ましくはGeCl−NMM、GeCl−メチルピリジン、GeCl−2MeTHFおよびそれらの組合せから成る群から選択されてよい。
【0013】
基体上にゲルマニウム含有フィルムを形成する方法も開示される。基体は反応器内に配置される。開示されるゲルマニウム含有先駆物質は反応器内に導入される。開示されるゲルマニウム含有先駆物質は反応し、基体上にゲルマニウム含有フィルムを形成する。開示される方法は、1以上の以下の側面を含んでよい:
・前記ゲルマニウム含有先駆物質は第2先駆物質と反応する;
・前記第2先駆物質は、テルル含有先駆物質、セレン含有先駆物質、アンチモン含有先駆物質、ビスマス含有先駆物質、インジウム含有先駆物質、ケイ素含有先駆物質およびそれらの組合せから成る群から選択される;
・前記第2先駆物質は、Te(SiMe、Te(SiEt、Te(SiiPr、Te(SitBu、Te(SitBuMe)、Te(SitBuMe、Te(GeMe、Te(GeEt、Te(GeiPr、Te(GetBu、Te(GetBuMe)、Te(GetBuMe、TeMe、TeEt、TeiPr、TetBu、Te(N(SiMeおよびそれらの組合せから成る群から選択される;
・前記第2先駆物質は、SbCl、SbCl、SbCl−L’(L’は付加物である)、SbMe、SbEt、Sb(iPr)、Sb(nPr)、Sb(tBu)、Sb(iBu)、Sb(NMe、Sb(NEt、Sb(N(SiMe、Sb(SiMe、Sb(GeMe、Sb(SiEt、Sb(GeEtおよびそれらの組合せから成る群から選択される;
・前記第2先駆物質は、SiH、Si、Si、N(SiH、SiHCl、SiCl、SiCl、SiCl、SiH(NEtそれらの組合せおよびそれらのラジカル種から成る群から選択される;
・前記ゲルマニウム含有先駆物質は共反応物と反応する;
・前記共反応物は、O、O、HO、NO、NO、アルコール、それらの組合せおよびそれらのラジカル種から成る群から選択される酸素源である;
・前記共反応物は、水素、アンモニア、アミン、イミン、ヒドラジン、シランおよびそれらの組合せから成る群から選択される還元剤である;
・前記ゲルマニウム含有フィルムは、Ge、Sb、Te、Si、Oおよびそれらの組合せを含む;
・ドーピング成分を前記ゲルマニウム含有フィルムに導入すること;
・前記ドーピング成分は、ケイ素、窒素および酸素から成る群から選択される;および
・前記基体は、金属層および金属窒化物層から成る群から選択され、好ましくはタングステン層、窒化チタン層および窒化チタンアルミニウム層から成る群から選択される。
【0014】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
半導体、光電池、LCD−TFTまたは平面パネル型装置の製造に使用してもよい方法、装置および化合物の非限定的な実施形態がここに開示される。
【0015】
低温におけるCVD/ALDプロセスによるゲルマニウム含有フィルム(例えばGeSbTe、Ge、SiGeおよびGeO)の堆積のための二ハロゲン化ゲルミレン先駆物質が開示される。開示される先駆物質はGSTフィルムに堆積した分子と同じ酸化状態であるため、そのような先駆物質の使用は現在使用される先駆物質に対する利点を提供する。さらに、ハロゲン化物配位子が低温における合金フィルムの取得を助ける可能性がある。ゲルマニウム含有フィルム堆積は、熱および/またはプラズマ増強CVD、ALD、およびパルスCVDによって実行してよい。
【0016】
Xはハロゲン化物であり、LはC以外の付加物であり、0.5≦n≦2である開示されるGeX−L先駆物質は、GeCl−ジオキサンよりも低い融点を有する。さらに、カルコゲニド、SiGe、GeOフィルムといった薄膜の堆積のためのそのような先駆物質の使用が開示される。
【0017】
開示されるゲルミレンハロゲン化物先駆物質の一般的な構造は、
GeX−L
であり、
ここにおいて、
−Xは、Cl、F、IまたはBrから選択されるハロゲン化物であり、
−Lは、C以外のルイス塩基であり、
−0.5≦n≦2であり、好ましくは0.75≦n≦1.25である。
【0018】
ルイス塩基は、得られる化合物の融点がGeCl−ジオキサンの融点よりも低くなるようにおよび/または揮発度がより高くなるように選択される。ルイス塩基は、以下から選択されてもよい:
・N、P、As、SbおよびBiを含み、3の酸化状態を有する化合物、例えば、ピリジン;ピペリジン;ピラジン;N,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン(TMEDA);N−メチルモルフォリン(NMM);EはPまたはAsであり、RはCからCアルキル基またはPhであるER;および、EはPまたはAsであり、RはCからCアルキル基であり、RはPhであるER
・O、S、SeおよびTeを含み、2の酸化状態を有する化合物、例えば、トリオキサン、置換ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、ジグリム、水、HOEtといったアルコール、エーテル、ケトン、スルホキシド;および
・一酸化炭素、ベンゼンといった芳香族炭化水素およびジクロロメタンといった分子。
【0019】
3の酸化状態を有する例示的なN−、P−、As−、Sb−またはBi−含有ルイス塩基は、ピリジン、ビピリジン(2,2−ビピリジンまたは4,4−ビピリジン)、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアルキルホスフィン(PEt、PPr、PBu、PPh、PtBuMe)、ジアルキルホスフィン(PHEt、PHBu等)、アルキルホスフィン(PHEt等)、トリアルキルアルシン(AsEt、AsPr、AsBu、AsPh、AstBuMe)、ジアルキルアルシン(AsHEt、AsHBu等)およびアルキルアルシン(AsHEt等)を含むが、これらに限定されない。N−メチルモルフォリンは酸素および窒素を含むものの、これは、化合物のN−含有基に含まれる。何故ならば、モルフォリンのエーテル特性は典型的に不活性であり、アミンが殆どの反応に関与するためである(例えば、インターネット上chemicalland21.com/ industrialchem/functional%20 Monomer/N-ETHYL%20MORPHOLINE.htmにてChemicalland21.comにより公開されるN−メチルモルフォリンを参照)。
【0020】
任意のN−、P−、As−、Sb−またはBi−含有ルイス塩基は、(例えば炭素原子に)置換基を含んでよい。より具体的には、直鎖または環状C−Cアルキル基(Me、Et、iPr、nPr、iBu、tBu、sBuを含む)を置換基として使用してよい。ある例示的な置換窒素含有化合物は、それぞれ2位、3位または4位にメチルを有するメチルピリジンおよびトリフルオロメチルピリジン、並びに2位、3位または4位にSi分子を有するトリメチルシリルピリジン(すなわち、2−メチルピリジン、3−トリフルオロメチルピリジンまたは4−トリメチルシリルピリジン)を含む。
【0021】
2の酸化状態を有する例示的な酸素含有ルイス塩基は、アルコール、酸化エチレン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメトキシメタン、テトラヒドロフラン、メトキシベンゼン、ジグリム、トリグリムおよびテトラグリムを含むがこれらに限定されないエーテルおよびケトンを包含する。
【0022】
任意のO−、S−、Se−またはTe−含有ルイス塩基は、(例えば炭素原子に)置換基を含んでよい。より具体的には、直鎖または環状C−Cアルキル基(Me、Et、iPr、nPr、iBu、tBu、sBuを含む)を置換基として使用してよい。例示的な置換環状エーテルは、2位、4位、5位または6位に生じたジオキサンのメチル置換基を有する2−メチルテトラヒドロフランおよびメチル−1,3−ジオキサン(すなわち、2−メチル−1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキサン等)を含む。
【0023】
以下の分子が、GeCl−ジオキサンよりも低い融点を示すことが既知である。
【表1】

【0024】
例示的なゲルマニウム含有先駆物質は、GeCl−(メチル−1,3−ジオキサン)、GeCl−(2,4−ジメチル−1,3−ジオキサン)、GeCl−(トリオキサン)、GeCl−(2−MeTHF)、GeCl−(THP)、GeCl−(HOEt)、GeCl−(ジグリム)、GeCl−(PEtPh、GeCl−(AsEt、GeCl−(AsiPr、GeCl−(AsnPr、GeCl−(AsnBu、GeCl−(AstBu、GeCl−(AsEtPh、GeCl−(メチルピリジン)、GeCl−(トリフルオロメチルピリジン)、GeCl−(トリメチルシリルピリジン)n、GeCl−(1−メチルピペリジン)、GeCl−(ピラジン)、GeCl−(2,6−ジメチルピラジン)、GeCl−(2−メトキシピラジン)n、GeCl−(TMEDA)、GeCl−(NMM)、GeCl−(NEt、GeBr−(メチル−1,3−ジオキサン)、GeBr−(2,4−ジメチル−1,3−ジオキサン)、GeBr−(トリオキサン)、GeBr−(THF)、GeBr−(2−MeTHF)、GeBr−(THP)、GeBr−(HOEt)、GeBr−(ジグリム)、GeBr−(PEt、GeBr−(PiPr、GeBr−(PnPr、GeBr−(PnBu、GeBr−(PEtPh、GeBr−(AsEt、GeBr−(AsiPr、GeBr−(AsnPr、GeBr−(AsnBu、GeBr−(AstBu、GeBr−(AsPh、GeBr−(AsEtPh、GeBr−(ピリジン)、GeBr−(メチルピリジン)、GeBr−(トリフルオロメチルピリジン)、GeBr−(トリメチルシリルピリジン)、GeBr−(1−メチルピペリジン)、GeBr−(ピラジン)、GeBr−(2,6−ジメチルピラジン)、GeBr−(2−メトキシピラジン)、GeBr−(TMEDA)、GeBr−(NMM)、GeBr−(NEt、GeI−(メチル−1,3−ジオキサン)、GeI−(2,4−ジメチル−1,3−ジオキサン)、GeI−(トリオキサン)、GeI−(THF)、GeI−(THP),GeI−(2−MeTHF)、GeI−(HOEt)、GeI−(ジグリム)、GeI−(PEt、GeI−(PiPr、GeI−(PnPr、GeI−(PtBu、GeI−(PPh、GeI−(AsEt、GeI−(AsiPr、GeI−(AsnPr、GeI−(AsnBu、GeI−(AstBu、GeI−(AsPh、GeI−(AsEtPh、GeI−(ピリジン)、GeI−(メチルピリジン)、GeI−(トリフルオロメチルピリジン)、GeI−(トリメチルシリルピリジン)、GeI−(1−メチルピペリジン)、GeI−(ピラジン)、GeI−(2,6−ジメチルピラジン)、GeI−(2−メトキシピラジン)、GeI−(TMEDA)、GeI−(NMM)、GeI−(NEt、GeF−(メチル−1,3−ジオキサン)、GeF−(2,4−ジメチル−1.3−ジオキサン)、GeF−(トリオキサン)、GeF−(THF)、GeF−(2−MeTHF)、GeF−(THP)、GeF−(HOEt)、GeF−(ジグリム)、GeF−(PEt、GeF−(PiPr、GeF−(PnPr、GeF−(PnBu、GeF−(PtBu、GeF−(PPh、GeF−(PEtPh、GeF−(AsEt、GeF−(AsiPr、GeF−(AsnPr、GeF−(AsnBu、GeF−(AstBu、GeF−(AsPh、GeF−(AsEtPh、GeF−(メチルピリジン)、GeF−(トリフルオロメチルピリジン)、GeF−(トリメチルシリルピリジン)、GeF−(1−メチルピペリジン)、GeF−(α,α−ビピリジン)、GeF−(ピラジン)、GeF−(2,6−ジメチルピラジン)、GeF−(2−メトキシピラジン)、GeF−(TMEDA)、GeF−(NMM)、GeF−(NEtまたはそれらの組合せを含む。
【0025】
好ましくは、ゲルマニウム含有先駆物質は、GeCl−NMM、GeCl−メチルピリジン、GeCl−2MeTHFおよびそれらの組合せである。
【0026】
GeCl−ジオキサンよりも低い融点および/または高い揮発性を示すGeX−L先駆物質(X、Lおよびnは前述の通りである)の合成はなお進行中であり、本発明の範囲は、それゆえ、上述のような分子に限定されず、物理的状態及び揮発性の所望の特性に適合する任意の分子に関する。
【0027】
開示される先駆物質は、無水THFにGeCl−ジオキサンを含む溶液にL付加物を添加し、室温で撹拌することで合成してよい。混合物をろ過し、過剰な付加物および溶媒並びにジオキサンを減圧下で蒸留により除去する。残る生成物を減圧乾燥器にて結晶化する。得られた結晶を無水ペンタンで繰り返し洗浄し、減圧乾燥する。
【0028】
あるいは、開示される先駆物質は、GeClを出発材料として使用して合成してよい。1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンをGeClに添加し、L付加物を混合物に少しずつ添加し、85℃で6時間還流する。混合物をろ過し、得られた結晶を無水ペンタンで繰り返し洗浄し、減圧乾燥する。
【0029】
ゲルマニウム含有フィルムは、当業者に既知の任意の蒸着法により開示される先駆物質を使用して堆積してよい。適切な堆積法の例は、限定を意味することなく、化学蒸着法(CVD)、低圧CVD(LPCVD)、プラズマ増強CVD(PECVD)、パルスPECVD、原子層堆積(ALD)、プラズマ増強ALD(PE−ALD)またはそれらの組合せを含む。プラズマプロセスは、直接的なまたは離れたプラズマ源を使用してよい。熱CVDまたはALD堆積法を使用してもよい。好ましくは、堆積プロセスは熱ALDである。
【0030】
開示される先駆物質は、純粋な形態か、またはエチルベンゼン、キシレン、メシチレン、デカンまたはドデカンといった適切な溶媒と混ぜた状態で供給されてよい。また、開示される先駆物質は、先駆物質のルイス塩基と同一の溶媒に溶解してよい。開示される先駆物質は、溶媒中に様々な濃度で存在してもよい。
【0031】
純粋なまたは混合された先駆物質は、蒸気の形態で反応器に導入される。蒸気の形態の先駆物質は、直接気化、蒸留といった従来の気化ステップによって純粋なまたは混合された先駆物質溶液を気化することにより製造してよく、またはバブリングにより製造してよい。純粋なまたは混合された先駆物質は、反応器に導入される前に、液体の状態で気化器に供給して、そこで気化されてよい。あるいは、純粋なまたは混合された先駆物質は、開示される先駆物質を含む容器にキャリアーガスを通すことにより、または開示される先駆物質にキャリアーガスをバブリングすることにより気化してよい。キャリアーガスは、Ar、He、Nおよびそれらの混合物を含んでよいが、これらに限定されない。また、キャリアーガスによるバブリングは、純粋なまたは混合された先駆物質溶液に存在する任意の溶解した酸素を除去してよい。次に、キャリアーガスおよび開示される先駆物質は、蒸気として反応器に導入される。
【0032】
必要であれば、開示される先駆物質を含む容器は、先駆物質が液相となり、十分な蒸気圧を有する状態となる温度まで加熱してよい。容器は、例えば約0℃から約150℃の範囲の温度に維持されてよい。容器の温度を既知の様式で調節して、気化した先駆物質の量を制御してよいと当業者は認識する。
【0033】
反応器は、堆積法が行われる装置内の任意の筐体またはチャンバーであってよく、例えば、限定を意味することなく、平行板型反応器、コールドウォール型反応器、ホットウォール型反応器、シングルウエハ反応器、マルチウエハ反応器、または、先駆物質を反応させて層を形成させるのに適した条件下におけるその他のタイプの堆積システムであってよい。
【0034】
反応器は、薄膜が堆積する1以上の基体を含む。例えば、堆積チャンバーは、25.4mmから450mmの直径を有する1から200のシリコンウエハを含んでよい。1以上の基体は、半導体、光電池、平面パネル型装置またはLCD−TFTの製造にて使用される任意の適した基体であってよい。1以上の基体は、必要な場合にゲルマニウム含有フィルムを液化するための熱源として使用してよい任意の材料を含んでよい。熱拡散を改善するために、界面を、熱源とゲルマニウム含有層との間に設けてよい。適した基体の例は、限定を意味することなく、金属層または金属窒化物層、シリコン基体、シリカ基体、窒化ケイ素基体、酸窒化ケイ素基体、タングステン基体、窒化チタン、窒化タンタルまたはそれらの組合せを含む。さらに、タングステンまたは新規の金属(例えば、白金、パラジウム、ロジウムまたは金)を含む基体を使用してよい。基体は、異なる材料に堆積した層であってよく、または以前の製造ステップに由来して既に堆積している異なる材料の1以上の層を有してよい。好ましくは、得られるフィルムがカルコゲニドフィルムである場合、ゲルマニウム含有層は、タングステン層、窒化チタン層または窒化チタンアルミニウム層.に直接堆積される。
【0035】
反応器内部の温度および圧力は、堆積プロセスに適した条件に維持される。例えば、反応器内の圧力は、堆積パラメータに要求されるように、約0.01Torrから約1,000Torr、好ましくは約0.1Torrから100Torrに維持してよい。同様に、反応器内の温度は、約10℃から約350℃、好ましくは約25℃から約200℃、およびより好ましくは約25℃から約150℃に維持されてよい。
【0036】
反応器内の少なくとも1つの基体にゲルマニウム含有フィルムを堆積させるために、ゲルマニウム含有先駆物質を1以上の共反応物および/または第2先駆物質と反応させる。
【0037】
共反応物は、酸素、オゾン、水、過酸化水素、一酸化窒素、二酸化窒素、アルコール、カルボン酸、それらの組合せまたはそれらのラジカル種といった酸素源であってよい。あるいは、共反応物は、還元ガスであってよく、例えば、水素、アンモニア、アミン、イミン、ヒドラジン、シラン(例えば、SiH、Si、Si)、Si−H結合を有するアルキルシラン(例えば、SiHMe、SiHEt)、N(SiHおよびそれらの組合せであってよい。好ましくは、共反応物は、HまたはNHである。例えば、理論に結び付けられることなく、出願人は、CVD堆積の際におけるNH還元ガスの使用により、より小さな粒子サイズを有するフィルムが製造される可能性があると信じる。
【0038】
共反応物は、共反応物をラジカルの形態に分解するために、プラズマによって処理してよい。例えば、プラズマは、約50Wから約500Wの範囲のパワーで、好ましくは約100Wから約200Wのパワーで発生させてよい。プラズマは発生させてよく、または反応器自体の内部に存在してよい。あるいは、プラズマは、一般に、反応チャンバーから離れて位置してよく、例えば離れて位置するプラズマシステムに存在してよい。当業者は、そのようなプラズマ処理に適した方法および装置を認識するだろう。例えば、背景技術において議論したように、当業者は、プラズマ処理は、高いアスペクト比を有する基体上における敏感な下層および/またはフィルム堆積には適さない可能性があると理解するだろう。フィルム特性を改善する(不純物濃度の低減、密度の増大等)ために、プラズマモードにおいてフィルム堆積が行われるかどうかに拘わらず、プラズマ処理をフィルム堆積の後に適用してもよい。この方法の不利な点は、フィルム堆積ステップが行われる場合と同様に残る(すなわち、敏感な下層の損傷および高いアスペクト比を有する基体についての不均一さ)。
【0039】
共反応物は、ゲルマニウム含有先駆物質の導入と同時に、それよりも前にまたはそれに続いて、またはこれらの導入の任意の組合せで、反応器に導入してよい。開示される先駆物質および共反応物は反応し、基体上にゲルマニウム含有フィルムが形成される。理論に結び付けられることなく、共反応物は基体の表面においてゲルマニウム含有先駆物の核形成を促進し、その結果、より高い品質のゲルマニウム含有フィルムが得られると出願人は信じている。同様に、堆積条件が許す場合、共反応物のプラズマ処理は、より低い温度にてゲルマニウム含有先駆物質と反応するために必要なエネルギーを共反応物に提供すると出願人はさらに信じている。
【0040】
第2先駆物質は、テルル含有先駆物質、セレン含有先駆物質、アンチモン含有先駆物質、ビスマス含有先駆物質、インジウム含有先駆物質、ケイ素含有先駆物質またはそれらの組合せであってよい。開示される先駆物質と同様に、第2先駆物質は、純粋な形態で、またはエチルベンゼン、キシレン、メシチレン、デカンまたはドデカンといった適切な溶媒と混ざった状態で供給されてよい。
【0041】
例示的なテルル含有先駆物質は、Te(SiMe、Te(SiEt、Te(SiiPr、Te(SitBu、Te(SitBuMe)、Te(SitBuMe、Te(GeMe、Te(GeEt、Te(GeiPr、Te(GetBu、Te(GetBuMe)、Te(GetBuMe、TeMe、TeEt、TeiPr、TetBu、Te(N(SiMeまたはそれらの組合せを含む。
【0042】
例示的なアンチモン含有先駆物質は、SbCl、SbCl、SbCl−L’(L’は付加物である)、SbMe、SbEt、Sb(iPr)、Sb(nPr)、Sb(tBu)、Sb(iBu)、Sb(NMe、Sb(NEt、Sb(N(SiMe、Sb(SiMe、Sb(GeMe、Sb(SiEt、Sb(GeEtまたはそれらの組合せを含む。
【0043】
例示的なケイ素含有先駆物質は、SiH、Si、Si、N(SiH、SiHCl、SiCl、SiCl、SiCl、SiH(NEt、それらの組合せおよびそれらのラジカル種を含む。
【0044】
理論に結び付けられることなく、開示される先駆物質と第2先駆物質との間における以下の反応がゲルマニウム含有フィルムを作り得ると出願人は信じている:
(M+GeX−L→2R+MGe+nL
ここにおいて、M=Si、GeまたはSnであり、M=S、SeまたはTeであり、各々のRは独立にアルキル基であり、X=Cl、Br、IまたはFである。同様に、出願人は、この反応が、より低い温度におけるゲルマニウム含有フィルムの堆積を提供し得ると信じている。当業者は、GeXがGeX−Lの代わりとなり得ると認識するものの、GeX化合物は、開示される蒸着法に使用するのに十分適していない。
【0045】
どのような種のフィルムを堆積させることが望ましいかに応じて、1以上の金属含有先駆物質を反応器に導入してよい。金属含有先駆物質は、Ti、Ta、Hf、Zr、Pb、Nb、Mg、Al、Sr、Y、Ba、Ca、Cu、Mn、Ru、ランタニドおよびそれらの組合せといったその他の金属源を含んでよい。金属含有先駆物質が使用される場合、基体に堆積して得られるフィルムは、少なくとも2つの異なる金属種を含んでよい。
【0046】
さらに、当該分野で基地の方法により、ケイ素、窒素または酸素といったドーピング成分を、ゲルマニウム含有フィルムに導入してよい。ドーピング成分はフィルムに拡散し、孔および空洞を塞いでよい。あるいは、ドーピング成分が、フィルムに既に存在する分子と置き換わってよい。
【0047】
開示される先駆物質および/または共反応物および/または第2先駆物質および/または金属含有先駆物質および/またはドーピング成分(以降、集合的に「反応物」と称する)が、同時に(CVD)、連続的に(ALD)またはその他の組合せで、反応器に導入されてよい。反応物は互いに混合して、反応混合物を形成し、その後混合物の形態で反応器に導入してよい。あるいは、反応物を反応チャンバーに連続的に導入し、個々の導入と導入との間において不活性ガスをパージしてよい。別の実施形態において、導入は、上述のスキームの両方からの要素を組み込んでもよい。特定のプロセスの要求(例えば、より短い堆積時間、およびフィルム均一性に対するより速いフィルム成長割合)は、種々の導入方法の適合性を決定することを、当業者は認識するだろう。
【0048】
例えば、開示される先駆物質を一度のパルスで導入してよく、2つの付加的な第2先駆物質を別のパルス[改変PE−ALD]にて一緒に導入してよい。あるいは、反応器は、開示される先駆物質の導入の前において、共反応物種を既に含んでよく、その導入の後に、任意に、共反応物種の第2の導入を行ってよい。別の実施形態において、開示される先駆物質は、連続的に反応器に導入してよく、一方、第2先駆物質、金属含有先駆物質および/またはドーピング剤をパルスによって導入してよい(パルスPECVD)。また別の実施形態において、反応物のいくつかを、個々または混合物の何れかにて、同時に導入してよく、反応物のいくつかを連続的に導入してよい。それぞれの例において、予備的なパルスに続いて、パージまたは排出ステップにより、導入した成分の過剰量を除去してよい。それぞれの例において、パルスは、約0.01秒から約10秒、あるいは約0.3秒から約5秒、あるいは約0.5秒から約2秒にわたる時間続いてよい。
【0049】
特定のプロセスパラメータに応じて、異なる長さの時間、堆積を行ってよい。一般に、堆積は、必要な特性を有するフィルムを製造するために好ましいまたは必要な長さの間、続けてよい。典型的なフィルムの厚さは、特定の堆積プロセスに応じて、数百オングストロームから数百ミクロンまで変化してよい。堆積プロセスは、所望のフィルムを得るために必要な回数行ってもよい。
【0050】
1つの非限定的な例示的なPE−ALD型プロセスにおいて、開示される先駆物質(例えば、Ge−Cl−NMM)の蒸気相を反応器に導入してよく、そこで、それが適した基体と接触する。その後、過剰な先駆物質は、パージおよび/または反応器の排出によって、反応器から除去してよい。第2先駆物質(例えば、Te(SiMe)を反応器に導入してよく、そこで、それは、自己制限的な様式で、吸収された先駆物質と反応する。任意の過剰な第2先駆物質をパージおよび/または反応器の排出によって、反応器から除去してよい。所望のフィルムがGeTeフィルムである場合、この二段階プロセスは、所望のフィルムの厚さを提供してよく、または必要な厚さを有するフィルムが得られるまで繰り返してよい。
【0051】
あるいは、所望のフィルムがGSTフィルムである場合、上述の二段階プロセスに続いて、異なる第2先駆物質(「第3先駆物質」)(例えば、SbCl)の上記の反応器への導入を行ってよい。反応器への導入の後に、第3先駆物質をGeTeフィルムと接触させる。任意の過剰な第3先駆物質をパージおよび/または反応器の排出によって、反応器から除去してよい。再度、第2先駆物質(便宜的にここでは「第2先駆物質」と称する)と同一または異なってよいテルル含有先駆物質を反応器に導入し、第3先駆物質と反応させてよい。過剰な第2先駆物質をパージおよび/または反応器の排出によって、反応器から除去してよい。所望のフィルムの厚さが達成された場合、プロセスを終了してよい。しかしながら、より厚いフィルムが望ましい場合、全4つのステップのプロセスを繰り返してよい。開示される先駆物質、第2先駆物質および第3先駆物質の供給を交互に繰り返すことにより、所望の組成および厚さを有するフィルムを堆積させることができる。
【0052】
上述したプロセスから得られるゲルマニウム含有フィルムまたは層は、純粋な金属(Ge)、金属ケイ酸塩(GeSi)、金属酸化物(Ge)、金属酸窒化物(Ge)またはGeSbTeフィルムを含んでよく、ここにおいて、k、l、m、n、x、yおよびzは、1から6の整数(1および6を含む)である。適切な開示される先駆物質、第2先駆物質および/または共反応物種の公正な選択により、所望のフィルム組成を得てよいことを当業者は認識するだろう。
【0053】
[実施例]
以下の非限定的な例は、本発明の実施形態をさらに例証するために提供される。しかしながら、これらの例は、全てを含んでいることを意図しておらず、ここに記載される発明の範囲を限定することを意図しない。
【0054】
例1:GeCl−付加物の合成
以下の表中の分子を合成した。無水THFにGeCl−ジオキサンを含む溶液に対し、L付加物を添加し、室温で撹拌した。混合物をろ過し、過剰なL付加物および溶媒並びにジオキサンを減圧下で蒸留する。残る生成物を、減圧乾燥器において、数時間で結晶化する。得られた結晶を無水ペンタンで複数回洗浄し、減圧乾燥する。これらの反応は、定量的な収率を示した。
【表2】

【0055】
新たに合成した分子は、GeCl−ジオキサン(178−180℃)よりも低い融点を有しており、このことは、分子を反応チャンバーに容易に送達する上で重要である。
【0056】
例2:ジクロロゲルマニウム(II)−2−メチルピリジンを使用したGSTフィルムの予測的な堆積
ゲルマニウム アンチモン テルル(GST)フィルムが、熱的様式において、70℃と同じくらい低い温度から堆積すると出願人は信じている。アンチモンおよびテルル先駆物質は、それぞれSbClおよびTe(SitBuMeであってよい。ゲルマニウム分子は、GeCl−2−メチルピリジンであってよい。種々の化合物の蒸気は、Nをキャリアーガスとして使用して、並びに希釈の目的で使用して、反応炉に送達されるだろう。各々の先駆物質の導入はそれぞれ行われ、それに続いてパージして、それらの各々の間における任意の気相反応を回避してよい(ALDモード)。特に、GeCl−2−メチルピリジンの蒸気の送達路は、送達路における分子のあらゆる凝固および吸着を回避するために、150℃まで加熱されるだろう。
【0057】
そのような条件において、GSTフィルムは、熱的様式において、70℃からの温度において得られると予想される。深い溝の構造への堆積は、10対1よりも高いアスペクト比の孔において、90%を超えるステップカバレッジで得られてよい。
【0058】
堆積された金属フィルム中の様々な非GST元素の濃度はオージュ分光測定によって分析され、全ての元素(炭素、窒素、酸素)についての値は、装置の検出限界よりも低いと予想される。フィルムの組成は、各々の先駆物質の導入時間および堆積温度の関数に調整されてよい。
【0059】
例3:ジクロロゲルマニウム(II)−ジオキサンを使用したGSTフィルムの予測的な堆積
全ての条件は例2と同様であるものの、GeCl−2−メチルピリジンの代わりに、従来の先駆物質GeCl−ジオキサンが使用されるだろう。GeCl−ジオキサンの融点はGeCl−2−メチルピリジンよりも約40℃高いため、路を少なくとも40℃より高い温度に加熱し、同様の効果(路内で凝固しない)を得る必要があるだろう。高い熱収支が要求されるということだけでなく、高温の値が必要であり、収支の負担を増大させるために、そのような高い温度の使用は、システム構成についての問題を証明するだろう。
【0060】
例4:GeCl−2−メチルピリジンを使用したSiGeフィルムの予測的な堆積
シリコン−ゲルマニウム(SiGe)フィルムは、共反応物を使用することなく、熱的様式において、200℃と同じくらい低い温度にて堆積してよい。シリコン先駆物質はSiHMeであってよい。ゲルマニウム分子は、GeCl−2−メチルピリジンであってよい。種々の化合物の蒸気は、SiHMeのためのガスとして、またはGeCl−2−メチルピリジンのためのバブラー型の送達におけるキャリアーガスとしてNを使用して、反応炉に送達されるだろう。Nを希釈の目的のために使用してもよい。各々の先駆物質の導入を別々に行ってよく、続いて、パージして、2つの分子間における任意の気相反応を回避してよい(ALDモード)。特に、GeCl−2−メチルピリジンの蒸気の送達路は、路の急速なパージを可能とし且つ分子が管で吸着することを予防するために、130℃まで加熱されるだろう。
【0061】
そのような条件において、SiGeフィルムは、熱的様式にて、200℃からの温度にて得られると予想される。プラズマモードにおける堆積は、わずかにより低い温度(150℃から)におけるフィルムの堆積を可能にしてよい。深い溝の構造への堆積は、10対1よりも高いアスペクト比の孔において、90%を超えるステップカバレッジで得られてよい。
【0062】
堆積したフィルム中の様々な非SiGe元素の濃度はオージュ分光測定により分析され、全ての元素(炭素、窒素、酸素)についての値は、検出装置の検出限界よりも低いと予想される。
【0063】
例5:GeCl−2−メチルピリジンを使用したGeOフィルムの予測的な堆積
酸化ゲルマニウム(GeO)フィルムは、熱的様式において、200℃から堆積されてよい。酸素源はOであってよい。ゲルマニウム分子は、GeCl−2−メチルピリジンであってよい。GeCl−2−メチルピリジンの蒸気は、バブリング送達技術およびキャリアーガス窒素(N)を使用して、反応炉に輸送されてよい。また、Nは、希釈の目的で使用されてよい。各々の先駆物質の導入は別々に行われ、続いて、パージにより、2つの分子間のあらゆる気相反応が回避されるだろう(ALDモード)。特に、GeCl−2−メチルピリジンの蒸気の送達路は、路の急速なパージを可能とし、分子が管で吸着することを予防するために、130℃まで加熱されるだろう。
【0064】
そのような条件において、GeOフィルムは、熱的様式で、200℃からの温度で得られると予想される。プラズマモードにおける堆積は、わずかにより低い温度(150℃から)におけるフィルムの堆積を可能にし、改善されたフィルム特性がもたらされるだろう。深い溝の構造への堆積は、10対1よりも高いアスペクト比の孔において、90%を超えるステップカバレッジで得られてよい。
【0065】
不純物(炭素、窒素、塩素)の濃度はオージュ分光測定によって分析され、全ての元素についての値は、装置の検出限界よりも低いと予想される。
【0066】
詳細、材料、ステップおよび要素の配置は、本願発明の性質を説明するためにここに記載され例証されたものであり、それらにおける多くの付加的な変更は、特許請求の範囲に表現される本願発明の原理および範囲内において、当業者によって為されてよいと理解されるだろう。したがって、本願発明は、上記の例および/または図面における特定の実施形態に限定されることを意図していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式を有するゲルマニウム含有先駆物質であって、
GeX−L
−LはCでないという条件で、
−Xは、F、Cl、BrおよびIから成る群から独立に選択され、
−Lはルイス塩基であり、
−0.5≦n≦2、好ましくは0.75≦n≦1.25である物質。
【請求項2】
前記ルイス塩基は、水;エーテル;ケトン;スルホキシド;一酸化炭素;ベンゼン;ジクロロメタン;THF;THP;ジグリム;ピリジン;ピペリジン;ピラジン;TMEDA;NMM;トリオキサン;置換ジオキサン;HOEt;EはPまたはAsであり、RはCからCアルキル基またはPhであるER;および、EはPまたはAsであり、RはCからCアルキル基であり、RはPhであるERから成る群から選択される請求項1に記載の先駆物質。
【請求項3】
前記先駆物質は、GeCl−(メチル−1,3−ジオキサン)、GeCl−(2,4−ジメチル−1,3−ジオキサン)、GeCl−(トリオキサン)、GeCl−(2−MeTHF)、GeCl−(THP)、GeCl−(HOEt)、GeCl−(ジグリム)、GeCl−(PEtPh、GeCl−(AsEt、GeCl−(AsiPr、GeCl−(AsnPr、GeCl−(AsnBu、GeCl−(AstBu、GeCl−(AsEtPh、GeCl−(メチルピリジン)、GeCl−(トリフルオロメチルピリジン)、GeCl−(トリメチルシリルピリジン)n、GeCl−(1−メチルピペリジン)、GeCl−(ピラジン)、GeCl−(2,6−ジメチルピラジン)、GeCl−(2−メトキシピラジン)n、GeCl−(TMEDA)、GeCl−(NMM)、GeCl−(NEt、GeBr−(メチル−1,3−ジオキサン)、GeBr−(2,4−ジメチル−1,3−ジオキサン)、GeBr−(トリオキサン)、GeBr−(THF)、GeBr−(2−MeTHF)、GeBr−(THP)、GeBr−(HOEt)、GeBr−(ジグリム)、GeBr−(PEt、GeBr−(PiPr、GeBr−(PnPr、GeBr−(PnBu、GeBr−(PEtPh、GeBr−(AsEt、GeBr−(AsiPr、GeBr−(AsnPr、GeBr−(AsnBu、GeBr−(AstBu、GeBr−(AsPh、GeBr−(AsEtPh、GeBr−(ピリジン)、GeBr−(メチルピリジン)、GeBr−(トリフルオロメチルピリジン)、GeBr−(トリメチルシリルピリジン)、GeBr−(1−メチルピペリジン)、GeBr−(ピラジン)、GeBr−(2,6−ジメチルピラジン)、GeBr−(2−メトキシピラジン)、GeBr−(TMEDA)、GeBr−(NMM)、GeBr−(NEt、GeI−(メチル−1,3−ジオキサン)、GeI−(2,4−ジメチル−1,3−ジオキサン)、GeI−(トリオキサン)、GeI−(THF)、GeI−(THP)、GeI−(2−MeTHF)、GeI−(HOEt)、GeI−(ジグリム)、GeI−(PEt、GeI−(PiPr、GeI−(PnPr、GeI−(PtBu、GeI−(PPh、GeI−(AsEt、GeI−(AsiPr、GeI−(AsnPr、GeI−(AsnBu、GeI−(AstBu、GeI−(AsPh、GeI−(AsEtPh、GeI−(ピリジン)、GeI−(メチルピリジン)、GeI−(トリフルオロメチルピリジン)、GeI−(トリメチルシリルピリジン)、GeI−(1−メチルピペリジン)、GeI−(ピラジン)、GeI−(2,6−ジメチルピラジン)、GeI−(2−メトキシピラジン)、GeI−(TMEDA)、GeI−(NMM)、GeI−(NEt、GeF−(メチル−1,3−ジオキサン)、GeF−(2,4−ジメチル−1.3−ジオキサン)、GeF−(トリオキサン)、GeF−(THF)、GeF−(2−MeTHF)、GeF−(THP)、GeF−(HOEt)、GeF−(ジグリム)、GeF−(PEt、GeF−(PiPr、GeF−(PnPr、GeF−(PnBu、GeF−(PtBu、GeF−(PPh、GeF−(PEtPh、GeF−(AsEt、GeF−(AsiPr、GeF−(AsnPr、GeF−(AsnBu、GeF−(AstBu、GeF−(AsPh、GeF−(AsEtPh、GeF−(メチルピリジン)、GeF−(トリフルオロメチルピリジン)、GeF−(トリメチルシリルピリジン)、GeF−(1−メチルピペリジン)、GeF−(α,α−ビピリジン)、GeF−(ピラジン)、GeF−(2,6−ジメチルピラジン)、GeF−(2−メトキシピラジン)、GeF−(TMEDA)、GeF−(NMM)、GeF−(NEtおよびそれらの組合せから成る群から選択され、好ましくはGeCl−NMM、GeCl−メチルピリジン、GeCl−2MeTHFおよびそれらの組合せから成る群から選択される請求項1に記載の先駆物質。
【請求項4】
内部に基体が配置された反応器を用意すること、
前記反応器に、請求項1から3の何れか1項に記載のゲルマニウム含有先駆物質を導入すること、および
前記ゲルマニウム含有先駆物質を反応させて、前記基体上にゲルマニウム含有フィルムを形成すること
を含む基体上にゲルマニウム含有フィルムを形成する方法。
【請求項5】
前記ゲルマニウム含有先駆物質は第2先駆物質と反応する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2先駆物質は、テルル含有先駆物質、セレン含有先駆物質、アンチモン含有先駆物質、ビスマス含有先駆物質、インジウム含有先駆物質、ケイ素含有先駆物質およびそれらの組合せから成る群から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2先駆物質は、Te(SiMe、Te(SiEt、Te(SiiPr、Te(SitBu、Te(SitBuMe)、Te(SitBuMe、Te(GeMe、Te(GeEt、Te(GeiPr、Te(GetBu、Te(GetBuMe)、Te(GetBuMe、TeMe、TeEt、TeiPr、TetBu、Te(N(SiMeおよびそれらの組合せから成る群から選択される請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2先駆物質は、SbCl、SbCl、SbCl−L’(L’は付加物である)、SbMe、SbEt、Sb(iPr)、Sb(nPr)、Sb(tBu)、Sb(iBu)、Sb(NMe、Sb(NEt、Sb(N(SiMe、Sb(SiMe、Sb(GeMe、Sb(SiEt、Sb(GeEtおよびそれらの組合せから成る群から選択される請求項5または6の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2先駆物質は、SiH、Si、Si、N(SiH、SiHCl、SiCl、SiCl、SiCl、SiH(NEtそれらの組合せおよびそれらのラジカル種から成る群から選択される請求項5または6の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ゲルマニウム含有先駆物質は共反応物と反応する請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記共反応物は、O、O、HO、NO、NO、アルコール、それらの組合せおよびそれらのラジカル種から成る群から選択される酸素源である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記共反応物は、水素、アンモニア、アミン、イミン、ヒドラジン、シランおよびそれらの組合せから成る群から選択される還元剤である請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ゲルマニウム含有フィルムは、Ge、Sb、Te、Si、Oおよびそれらの組合せを含む請求項5から12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
ドーピング成分を前記ゲルマニウム含有フィルムに導入することをさらに含み、前記ドーピング成分は、ケイ素、窒素および酸素から成る群から選択される請求項5から13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記基体は、金属層および金属窒化物層から成る群から選択され、好ましくはタングステン層、窒化チタン層および窒化チタンアルミニウム層から成る群から選択される請求項5から14の何れか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−503849(P2013−503849A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527441(P2012−527441)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053961
【国際公開番号】WO2011/027321
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】