ゲル作成方法

【課題】任意のパターンのゲルを作成することが可能なゲル作成方法を提供する。
【解決手段】ゲル形成材を含むアルギン酸ナトリウム溶液Aをインクジェット方式により吐出し、ゲルを作成するゲル作成方法であって、ゲルの形状に応じた吐出パターンの選択をする選択ステップS1と、アルギン酸ナトリウム溶液Aが反応してゲル化するための塩化カルシウム溶液Cへ、アルギン酸ナトリウム溶液Aの液滴27をインクジェット方式のノズル26から吐出する吐出ステップS2と、吐出ステップで吐出された液滴27とは異なる位置へ次の液滴27を吐出するために受容部31の位置移動をする移動ステップS3と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を化学反応によってゲル化させるゲル作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゲルを作成する方法として、例えば特許文献1には、アルギン酸の液滴を支持体に付着させ、支持体と共に塩化カルシウム溶液等の硬化液へ浸漬することにより、アルギン酸ゲル球を得る方法が開示されている。この方法によれば、簡便な操作でアルギン酸ゲル球を作成することが可能である。
【0003】
また、特許文献2には、吐出物であるアルギン酸ナトリウム等の液体を、インクジェット方式により、液滴として被吐出液体である塩化カルシウム溶液等へ吐出することにより、該液滴をゲル球化したマイクロカプセルを得る方法が開示されている。このインクジェット方式を用いた方法によれば、吐出物である液体を、均一な大きさの液滴にする等の正確な制御に基づいて吐出することができ、得られたマイクロカプセルは、その粒径や膜厚等がほぼ均一に揃ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−192471号公報
【特許文献2】特開2001−232178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の技術において、球状のゲルを個々に作成することについては、好適であるが、球状の単体のゲル以外、例えば単体のゲルを連ねた線状や面状等の所望の形状にゲル化することは、開示された方法では困難である、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例または形態として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係るゲル作成方法は、ゲル形成材を含む少なくとも1種類の吐出液体をインクジェット方式により吐出し、ゲルを作成するために、前記ゲルの形状に応じた吐出パターンの選択をする選択ステップと、前記吐出液体が反応してゲル化するための被吐出液体へ、前記吐出液体の液滴を前記インクジェット方式のノズルから吐出する吐出ステップと、前記吐出ステップで吐出された前記液滴とは異なる位置へ次の前記液滴を吐出するための位置移動をする移動ステップと、を有することを特徴とする。
【0008】
このゲル作成方法によれば、インクジェット方式のノズルから吐出された液滴は、その液滴より前に吐出された液滴が被吐出液体に着弾した位置とは異なる位置へ、吐出される。即ち、吐出ステップにおける液滴吐出と、移動ステップにおける液滴が着弾する位置の移動と、のタイミングを調整すれば、選択した吐出パターンに応じて、被吐出液体の任意の位置へ液滴を吐出することが可能である。これにより、液滴を被吐出液体へ間隔を空けて吐出すれば、液滴それぞれがゲル化した個別のゲル球を得られる。さらに、このゲル作成方法によれば、液滴が被吐出液体と反応して完全にゲル化する前に、この未ゲル化の液滴と間隔を空けずに次の液滴を吐出することもでき、その結果、複数の液滴が連続して1つになった状態のゲルを得られる。このように、複数の液滴を1つのゲルにする正確な吐出の方法および位置移動の方法により、単独のゲル球を作成する従来の方法では困難であった種々の形状のゲルを、容易に得ることが可能である。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係るゲル作成方法において、前記移動ステップは、前記ノズルから順次吐出された前記液滴が前記被吐出液中で接触して所定の方向に沿って連なった前記ゲルとなるための主移動をすることが好ましい。
【0010】
この方法によれば、インクジェット方式のノズルから吐出された液滴は、吐出ステップにおける液滴吐出のタイミングと、移動ステップにおける液滴が着弾する位置の移動と、が調整され、既に吐出されて被吐出液体に着弾した液滴と接触する位置に吐出される。この場合、移動ステップにおける位置の移動は、選択した吐出パターンに応じた所定の方向へ向いて行われる主移動であり、この主移動によって、ノズルは、液滴と液滴との間隔を空けずに、液滴を被吐出液体へ吐出することが可能である。このようなゲル作成方法により、所定の方向へ沿った糸のような線状のゲルを容易に得ることが可能である。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係るゲル作成方法において、前記移動ステップは、前記ノズルから順次吐出された前記液滴が前記被吐出液中で接触して前記所定の方向と交差する方向にも連なった前記ゲルを作成するための副移動をさらにすることが好ましい。
【0012】
この方法によれば、主移動により、所定の方向へ沿って連なった糸のような線状のゲルを作成すると共に、さらに、副移動により、所定の方向と交差する方向にも連なったゲルを作成する。つまり、移動ステップは、主移動に加え副移動を有することにより、主移動および副移動の両移動で作成されたゲルは、所定の方向と、所定の方向に対して交差する方向とに延在し、繊維のような面状に連なった形状をなしている。このようなゲル作成方法により、面状のゲルを容易に作成することが可能である。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係るゲル作成方法において、前記吐出ステップは、前記位置移動する所定の方向と交差する方向に沿って所定間隔を有し前記所定の方向と直交する方向には間隔を有しない位置関係で設けられた、複数の前記ノズルから前記液滴を吐出し、前記移動ステップは、前記ノズルからそれぞれ順次吐出された前記液滴が前記被吐出液中で接触して、前記所定の方向に沿って連なった前記ゲルと、前記所定の方向と直交する方向に連なった前記ゲルと、を作成することが好ましい。
【0014】
この方法によれば、複数のノズルは、位置移動する方向である所定の方向に対して交差する方向に沿って所定の間隔を空けて設けられ、さらに、この交差していることにより、所定の方向と直交する方向においては、間隔を空けていない位置関係と見えるように、配置されている。つまり、複数のノズルのそれぞれから吐出された液滴を、所定の方向へ位置移動しつつ吐出タイミングを調節して、所定の方向と直交する方向に沿って被吐出液体へ吐出して並べることができ、並んだ各液滴は、間隔を空けずに連なった状態となっている。このように、所定の方向と交差する方向に沿ってノズルを設け、液滴の吐出タイミングを調節する方法によれば、所定の方向と直交する方向への位置移動をすることなく、所定の方向と直交する方向へも連なったゲルを作成することが可能である。また、このノズルの配置によれば、吐出した液滴が完全にゲル化する前に、その液滴に対して所定の方向および所定の方向と直交する方向へ、次の液滴を迅速に吐出することができ、複数の液滴が連なったゲルを確実に作成することが可能である。即ち、この配置のノズルによれば、四角形状をなす面状のゲルであっても、所定の方向の位置移動をするだけで容易に作成することが可能である。
[適用例5]上記適用例に係るゲル作成方法において、前記移動ステップは、前記ノズルと前記被吐出液体とのいずれかまたは両方が移動する、ことが好ましい。
【0015】
この方法によれば、移動ステップにおける位置移動は、ノズルのみが移動する設定や、被吐出液体のみが移動する設定、さらに、ノズルおよび被吐出液体の両方が移動する設定が考えられ、ゲル形状に即した吐出パターンに対して、最良の移動方法が行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態1に係るゲル作成方法を示すフローチャート。
【図2】ゲル作成方法により作成したゲルを示す平面図。
【図3】ゲルを受容した受容部を示す断面図。
【図4】本実施形態2に係るゲル作成方法により作成したゲルを示す平面図。
【図5】液滴の吐出方法を示す平面図。
【図6】吐出装置の概観を示す斜視図。
【図7】(a)液滴の吐出方法の変形例を示す平面図、(b)受容部の変形例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、ゲル作成方法の具体的な実施形態について図面に従って説明する。本実施形態におけるゲル作成方法は、インクジェット方式を用いて、任意形状のゲルを作成できることを特徴とする。
(実施形態1)
【0018】
図1は、本実施形態1に係るゲル作成方法を示すフローチャートである。また、図2および図3は、このフローチャートに基づいて、ゲルを作成する一例を示しており、図2は、ゲル作成方法により作成したゲルを示す平面図、図3は、ゲルを受容した受容部を示す断面図である。この場合、ゲル作成方法は、吐出装置1を用いてゲルを作成し、作成されたゲルは、図2および図3に示すように、糸のような線状をなしている線状ゲル10である。
【0019】
線状ゲル10の作成は、まず、図1に示すフローチャートのステップS1において、吐出パターンの選択がなされる。これは、吐出パターンの選択がなされたことを、吐出装置1が認識するステップである。そして、吐出パターンとして線状ゲル10のパターンが選択され、吐出装置1は、線状ゲル10を作成するように制御される。このステップS1は、選択ステップに該当する。
【0020】
本実施形態1に係るゲル作成方法で用いられる吐出装置1は、図6を参照して詳細を後述するが、吐出液体としてのアルギン酸ナトリウム溶液Aの液滴27を吐出するノズル26と、ノズル26が設けられているキャリッジ23と、液滴27が吐出される対象である被吐出液としての塩化カルシウム溶液Cを収容し液滴27を受容する受容部31と、を備えている。受容部31は、ノズル26に対向する側が開口した箱状であり、塩化カルシウム溶液Cを収容する箱状内に線状ゲル10を受けるためのネット311を有している。キャリッジ23は、2つのノズル26a,26bを有していて、これらノズル26a,26bは、Y軸方向に沿って設けられている。そして、線状ゲル10を作成するための位置移動は、受容部31がX軸方向へ移動する主移動のみである。吐出パターンの選択後、ステップS2へ進む。
【0021】
ステップS2において、吐出液体を液滴27として吐出する。アルギン酸ナトリウム溶液A(吐出液体)の液滴27は、直径Rの球状であって、ノズル26から塩化カルシウム溶液Cに吐出されると、塩化カルシウム溶液Cと反応してゲル化し、ゲル粒101となる。ゲル粒101は、それぞれのノズル26a,26bに対応したゲル粒101a,101bとして、塩化カルシウム溶液Cに浸漬して設けられているネット311に受け止められる。このステップS2は、吐出ステップに該当する。液滴27が塩化カルシウム溶液Cへ着弾すると、ステップS3へ進む。
【0022】
ステップS3において、受容部31の移動がなされる。この位置移動は、X軸に沿う主移動であって、液滴27が完全にゲル化しないうちにすばやく行われる。主移動する距離Sは、液滴27の直径Rより小さい。このステップS3は、移動ステップに該当する。主移動後、ステップS4へ進む。
【0023】
ステップS4において、所定数を吐出したか否かを判断する。この判断は、吐出装置1の制御部が液滴27の吐出数をカウントして行う。所定数の液滴27を吐出していれば、フローを終了し、一方、所定数の液滴27を吐出していなければ、ステップS2へ戻る。
【0024】
ステップS2に戻って、再度、吐出液体を液滴27として吐出する。ここで吐出する液滴27は、前に吐出した液滴27の吐出位置から距離Sだけ主移動した時点で、塩化カルシウム溶液Cへ吐出され、ゲル粒102となる。ここで、距離Sと液滴27の直径Rとは、S<Rの関係であることにより、ゲル粒101とゲル粒102とは、塩化カルシウム溶液Cの中で、互いに接触しつつゲル化することになる。つまり、ゲル粒101が完全にゲル化しないうちに、ゲル粒102となる液滴27が接触するため、双方の一部分が重なりあって1つに連なった状態のゲルとなる。この連なったゲルは、この場合の所定の方向であるX軸方向に沿って糸のように線状をなしている線状ゲル10である。線状ゲル10は、ゲル粒101aとゲル粒102aとが連なった線状ゲル10a、および、ゲル粒101bとゲル粒102bとが連なった線状ゲル10bの2本が延在する。再度、液滴27の吐出後、ステップS3へ進む。
【0025】
ステップS3において、再度、受容部31の移動がなされ、次いで、ステップS4において、再度、所定数を吐出したか否かを判断する。即ち、液滴27が所定数吐出されるまで、これらステップS2、ステップS3およびステップS4が繰り返されて、所定の長さの線状ゲル10が作成される。なお、ゲル粒101,102,・・・・が連なった一体の状態の線状ゲル10となるように、ステップS3では、主移動を迅速に行い、ステップ4では、主移動が行われているうちに判断をすること、が望ましい。
【0026】
以下、実施形態1の効果をまとめて記載する。
【0027】
(1)実施形態1におけるゲル作成方法は、選択ステップを有し、吐出パターンを選択することにより、線状ゲル10の長さ、ゲル粒101,102,・・・・の重なり等を簡便に調整して、多様なゲル作成に対応できる。さらに、ゲル作成方法は、インクジェット方式で液滴27を受容部31へ吐出する吐出ステップと、受容部31を所定方向へ主移動させる移動ステップと、を有し、主移動に対応した正確な吐出タイミングにより、受容部31へ吐出された液滴27同士が、接触して確実に連なった状態でゲル化する。そのため、所定の方向へ沿って延在する線状ゲル10が容易に得られる。
【0028】
(2)また、ゲル作成方法では、受容部31を主移動させるため、ノズル26を移動させる必要がない。そのため、ノズル26は、移動に伴う振動、慣性等の影響を受けず、均一形状の液滴27を一定方向へ正確に吐出することができ、ゲル粒101,102,・・・・が均一に重なって並んだ線状ゲル10を作成できる。
【0029】
(3)ゲル作成方法により作成された線状ゲル10は、受容部31のネット311で受けとめられて延在するため、平面視および断面視においても、同一の線状をなしている。そして、ゲル粒101,102,・・・・の重なりを増して作成した線状ゲル10は、表面の凹凸が目立たないものとなる。
(実施形態2)
【0030】
次に、ゲル作成方法における実施形態2について説明する。図4は、本実施形態2に係るゲル作成方法により作成したゲルを示す平面図であり、図5は、液滴の吐出方法を示す平面図である。実施形態2において作成したゲルは、ゲル粒501,502,503が面状の形状をなしている面状ゲル50である。本実施形態2に係るゲル作成方法は、図1に示すフローチャートに基づいて行われるが、用いられる吐出装置5は、ヘッド部28に設けられているノズル26の配置が、吐出装置1とは異なっている。ノズル26の配置以外は、位置移動が受容部31の主移動のみであるなど、吐出装置1と同様の構成である。
【0031】
吐出装置5は、吐出液体としてのアルギン酸ナトリウム溶液Aの液滴27(図3)を吐出するノズル26が、受容部31の主移動方向(X軸方向)に対して交差する方向に沿って、配置されている。つまり、ノズル26は、3つのノズル26p,26q,26rからなり、主移動方向と斜めに交差する方向に沿って等間隔に設けられている。そして、例えば、ノズル26qとノズル26rとは、X軸方向に距離Lだけ離間しY軸方向に距離Tだけ離間するように、主移動方向に対し斜めに配置されている。同様に、ノズル26qとノズル26pも、X軸方向に距離Lだけ離間しY軸方向に距離Tだけ離間している。また、液滴27の直径R(図3)と、距離Lと、距離Tとの関係は、この場合、L>R>Tであり、少なくとも、R>Tであれば良い。
【0032】
面状ゲル30の作成は、まず、図1に示すフローチャートのステップS1において、吐出パターンの選択がなされ、吐出パターンとして面状ゲル50のパターンが選択される。これにより、吐出装置5は、面状ゲル50を作成するように制御される。吐出パターンの選択後、ステップS2へ進む。
【0033】
ステップS2において、吐出液体を液滴27として吐出する。図4および図5では、面状ゲル50を分かりやすくするように、面状ゲル50から離してヘッド部28を描いてあるが、液滴27の吐出時は、ノズル26が面状ゲル50と平面視重なった状態になっている。例えば、ノズル26rから塩化カルシウム溶液Cへ吐出された液滴27は、図5に示すように、塩化カルシウム溶液Cと反応してゲル化し、ゲル粒501rとなる。この時、同時にノズル26qおよびノズル26pから液滴27が吐出されると、作成すべきゲル粒501rおよびゲル粒501pから離間したゲル粒501q’およびゲル粒501p’となってしまう。そこで、ノズル26rから液滴27を吐出した後、ステップS3へ進む。
【0034】
ステップS3において、受容部31の移動がなされる。この位置移動は、X軸に沿う主移動であって、ノズル26rから吐出された液滴27が完全にゲル化しないうちにすばやく行われる。主移動は、液滴27の直径Rより小さい距離Tだけ行われる。主移動後、ステップS4へ進む。
【0035】
ステップS4において、所定数を吐出したか否かを判断する。所定数の液滴27を吐出していれば、フローを終了し、一方、所定数の液滴27を吐出していなければ、ステップS2へ戻る。
【0036】
ステップS2に戻って、再度、吐出液体を液滴27として吐出する。ここで吐出する液滴27は、ゲル粒501rを作成した液滴27の吐出位置から距離Tだけ主移動した時点で、ノズル26rから塩化カルシウム溶液Cへ吐出され、ゲル粒502rとなる。ゲル粒502rとゲル粒501rとは、塩化カルシウム溶液Cの中で、互いに接触しつつゲル化し、双方の一部分が重なりあって1つに連なった状態のゲルとなる。この時、ノズル26qは、ノズル26qから吐出された液滴27が最初に作成すべきゲル粒501qに対し、距離(L−T)だけX軸(+)方向に離れた位置にある。再度の液滴27の吐出後、ステップS3へ進む。
【0037】
ステップS3において、再度、受容部31の移動がなされる。移動は、距離(L−T)であり、移動後、ステップS4へ進む。
【0038】
ステップS4において、再度、所定数を吐出したか否かを判断する。この場合、否であるため、ステップS2へ戻る。
【0039】
ステップS2において、吐出液体を液滴27として吐出する。ここで吐出する液滴27は、ノズル26qから塩化カルシウム溶液Cへ吐出され、ゲル粒501qとなる。ゲル粒501qとゲル粒501rとは、塩化カルシウム溶液Cの中で、互いに接触しつつゲル化し、双方の一部分が重なりあって1つに連なった状態のゲルとなる。この時、ノズル26pは、ノズル26pから吐出された液滴27が最初に作成すべきゲル粒501pに対し、距離LだけX軸(+)方向に離れた位置にある。ノズル26qからの液滴27の吐出後、ステップS3へ進む。
【0040】
ステップS3において、受容部31の移動がなされる。この場合、移動が距離Lであればノズル26pから液滴27を吐出してゲル粒501pを作成できるが、その前にノズル26rが距離{T−(L−T)}だけ移動して、ゲル粒502rから距離Tだけ移動した吐出位置に達する。従って、距離{T−(L−T)}の移動後、ステップS4へ進む。
【0041】
ステップS4において、再度、所定数を吐出したか否かを判断する。この場合、否であるため、ステップS2へ戻る。
【0042】
ステップS2において、吐出液体を液滴27として吐出する。ここで吐出する液滴27は、ノズル26rから塩化カルシウム溶液Cへ吐出され、ゲル粒503r(図4)となる。ゲル粒503rとゲル粒502rとは、塩化カルシウム溶液Cの中で、互いに接触しつつゲル化し、双方の一部分が重なりあって1つに連なった状態のゲルとなる。この時、ノズル26qは、次に作成すべきゲル粒502qに対し、(L−T)だけX軸(+)方向に離れた位置にあり、ノズル26pは、次に作成すべきゲル粒501pに対し、{2(L−T)}だけX軸(+)方向に離れた位置にある。ノズル26rからの液滴27の吐出後、ステップS3、ステップS4、そしてステップS2へ進む。
【0043】
ここで、受容部31が距離(L−T)だけ移動すると、ノズル26qがゲル粒501qから距離Tだけ移動したことになり、ゲル粒502qを作成するための液滴27を吐出する位置へ達する。さらに、受容部31が距離{2(L−T)}だけ移動すると、ノズル26pがゲル粒501pを作成するための液滴27を吐出する位置へ達する。このように、各ノズル26が、最初の液滴27を吐出した位置から距離Tだけ移動したそれぞれの位置において、順に液滴27を吐出し、各ノズル26からの吐出数が所定数に達するまで、ステップS2、ステップS3、ステップS4を繰り返す。こうして、受容部31が主移動するのみで、平面視で四角形の面状ゲル50を作成することができる。
【0044】
以下、実施形態2の効果を記載する。
【0045】
(1)実施形態2におけるゲル作成方法において、用いられる吐出装置5は、受容部31が主移動する方向と斜めに交差する方向に沿って設けられたノズル26を備え、各ノズル26は、主移動方向と直交する方向においては、間隔を空けていない位置関係と見えるように、配置されている。これにより、吐出ステップにおける液滴27の吐出タイミングと、移動ステップにおける主移動とを調節することにより、主移動以外の位置移動をすることなく、ゲル粒501,502,・・・が一体に連なった面状ゲル50を作成することができる。
【0046】
最後に、ゲル作成方法に用いられる吐出装置1(吐出装置5)について、簡単に説明する。図6は、吐出装置の概観を示す斜視図である。図6に示すように、吐出装置1(5)は、アルギン酸ナトリウム溶液Aの液滴27(図3)を吐出するヘッド部22(28)を有するヘッド機構部2と、液滴27が受容される塩化カルシウム溶液Cを収容した受容部31を載置する受容機構部3と、ヘッド部22(28)にアルギン酸ナトリウム溶液Aを供給する液体供給部4と、これら各機構部および供給部を総括的に制御する制御部13と、を備えている。
【0047】
また、吐出装置1は、床上に設置された複数の支持脚11と、支持脚11の上側に設置された定盤12を備えている。定盤12の上側には、受容機構部3が定盤12の長手方向(X軸方向)に延在するように配置されている。受容機構部3の上方には、定盤12に固定された2本の支持柱21で支持されているヘッド機構部2が、受容機構部3と直交する方向(Y軸方向)に延在して配置されている。また、定盤12の一方の端部には、ヘッド機構部2のヘッド部22(28)から連通してアルギン酸ナトリウム溶液Aを供給する液体供給部4が配置されている。そして、定盤12の下側には、制御部13が収容されている。
【0048】
ヘッド機構部2は、アルギン酸ナトリウム溶液Aを吐出するヘッド部22(28)と、ヘッド部22(28)を懸架したキャリッジ23と、キャリッジ23のY軸方向への移動をガイドするY軸ガイド24と、Y軸ガイド24の側方にY軸ガイド24と平行に設置されたY軸リニアモータ25と、を備えている。なお、ヘッド部22(28)は、受容機構部3へ向いた側に、ノズル26(図2)を有し、ノズル26から液滴27を吐出する。そして、ノズル26から液滴27を吐出する方法としては、ピエゾ素子の振動を利用して吐出する方法や、吐出液体を熱膨張させて吐出する方法等があるが、吐出液体を熱変質させないピエゾ素子を用いた方法が好ましい。
【0049】
受容機構部3は、ヘッド機構部2の下方に位置し、ヘッド機構部2とほぼ同様の構成でX軸方向に配置されており、受容部31と、受容部31を載置している載置台32と、載置台32の移動をガイドするX軸ガイド33と、X軸ガイド33の側方にX軸ガイド33と平行に設置されたX軸リニアモータ34とを備えている。
【0050】
これらの構成により、ヘッド部22(28)は、Y軸方向の吐出位置まで移動して停止し、下方にある受容部31のX軸方向の移動に同調して、液滴27を吐出することが可能である。従って、X軸方向に移動する受容部31と、Y軸方向に移動するヘッド部22(28)とを相対的に制御することにより、受容部31に収容されている塩化カルシウム溶液Cの任意位置へ液滴27を吐出できる。即ち、任意パターンのゲルを自在に作成することができる。なお、実施形態1,2においては、キャリッジ23は、移動しない設定である。
【0051】
また、ヘッド部22(28)にアルギン酸ナトリウム溶液Aを供給する液体供給部4は、アルギン酸ナトリウム溶液Aを貯蔵するタンク41と、液体ポンプ42と、タンク41から液体ポンプ42を経てヘッド部22までを接続する流路チューブ43とを備えている。
【0052】
そして、制御部13は、図示していないが、吐出装置1を総合的に制御するCPU(Central Processing Unit)と、CPUが参照し液滴27の吐出パターンや各種処理を実行するためのプログラム等を保存しているROM(Read Only Memory)と、ノズル26からの吐出の制御および吐出数のカウントをする吐出制御部と、キャリッジ23および載置台32の移動を制御する移動制御部と、液体ポンプ42の駆動を制御する供給制御部と、外部機器等との入出力を行うための入出力インターフェースなどを有している。以上のような諸機構を備えた吐出装置1を用いたゲル作成方法によれば、吐出パターンに基づいて、単独のゲル球や、線状、面状等の任意パターンのゲルを自在に作成することができる。
【0053】
また、ゲル作成方法は、上記の実施形態1,2に限定されるものではなく、次に挙げる変形例のような形態であっても、各実施形態と同様な効果が得られる。
【0054】
(変形例1)吐出装置5において、ヘッド部28は、X軸方向に対して斜め方向に並んだノズル26を備えた構成であるが、この構成に限定されるものではない。図7(a)は、液滴の吐出方法の変形例を示す平面図である。図7(a)に示すように、液滴27の吐出方法は、Y軸方向に沿ってノズル26を並べた複数のヘッド部29を用いる方法であっても良い。この場合、ヘッド部29は、ノズル26cおよびノズル26dを有するヘッド部29aと、ノズル26eおよびノズル26fを有するヘッド部29bと、を有し、ノズル26cとノズル26dとの間隔およびノズル26eとノズル26fとの間隔は、液滴27の直径R(図3)より小さい距離である。つまり、ヘッド部29aのノズル26cとノズル26dとの間に、ヘッド部29bのノズル26eを配置している。また、ヘッド部29bのノズル26eとノズル26fとの間に、ヘッド部29aのノズル26dを配置している。このような配置において、ヘッド部29aおよびヘッド部29bのノズル26からの吐出タイミングと、受容部36の主移動とを調整すれば、ノズル26cから吐出された液滴27によるゲル粒601cと、ノズル26dから吐出された液滴27によるゲル粒601dと、ノズル26eから吐出された液滴27によるゲル粒601eと、ノズル26fから吐出された液滴27によるゲル粒601fと、をY軸方向に沿って一体となって並ベルことができ、連粒ゲル60を作成できる。この連粒ゲル60をX軸方向へ順に配置すれば、図4に示す面状ゲル50が作成できる。なお、複数のヘッド部29は、Y軸方向に対して斜め方向にノズル26を並べた構成であっても良い。
【0055】
(変形例2)吐出装置1,5は、受容部31を移動させる構成であるが、これに限定されるものではない。図7(b)は、受容部の変形例を示す側面図である。図7(b)に示すように、吐出装置7は、固定された受容部37と、受容部37に収容されている被吐出液体(この場合、塩化ナトリウム溶液C)を一定流速で循環させるための循環ポンプ374および流路375と、受容部37に設けられ流路から塩化ナトリウム溶液Cが流入する流入口373と、受容部37に設けられ流路から吐出液体が排出する排出口372と、を備えている。この構成によれば、吐出された液滴27は、塩化ナトリウム溶液Cと反応してゲル化し、液滴27の吐出間隔に対して流速が速ければ、単独のゲル球70となり、液滴27の吐出間隔に対して流速が遅ければ、ゲル球70が一体となって連なった連粒ゲル71となる。
【0056】
(変形例3)吐出装置1,5において、各実施形態では、受容部31がX軸方向へ主移動するだけであるが、これに限定されず、Y軸方向へも移動してゲルを作成する方法であっても良い。これにより、曲線の線状ゲル等、より多様な形状のゲルが作成できる。また、受容部31に替えてノズル26が移動する構成や、受容部31とノズル26とが移動する構成でも良い。
【0057】
(変形例4)アルギン酸のゲルを得る方法としては、アルギン酸ナトリウム溶液Aと塩化カルシウム溶液Cを用いることに限定されず、アルギン酸カリウム溶液の液滴を、塩化バリウム溶液へ吐出する方法であっても良い。また、ゲルに所望の物質を含有させることも可能であって、例えば、アルギン酸ナトリウム溶液Aに、薬剤、酵素、細胞、顔料、触媒、ナノ粒子、蛍光粒子等を含ませて、液滴として吐出する。これにより、薬剤、酵素、細胞、顔料、触媒、ナノ粒子、蛍光粒子等を内部に封入した単独のゲル粒や、線状ゲルおよび面状ゲルを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係るゲル作成方法は、インクジェット方式で液滴吐出することにより、作成したゲルは、微小なものであっても均一な大きさであり、単体の粒状や、単体を連ねた線状および面状等の所望の形状を作成できる。従って、このゲル作成方法は、薬品・医療分野、人工皮膚・再生細胞等の生体材料分野、液晶等の表示装置関係、などの広範な分野に用いられる種々のゲルを作成するために、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…吐出装置、2…ヘッド機構部、3…受容機構部、4…液体供給部、10…線状ゲル、5…吐出装置、22…ヘッド部、26…ノズル、27…液滴、31…受容部、50…面状ゲル、101,102…ゲル粒、311…ネット、501,502,503…ゲル粒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル形成材を含む少なくとも1種類の吐出液体をインクジェット方式により吐出し、ゲルを作成するゲル作成方法であって、
前記ゲルの形状に応じた吐出パターンの選択をする選択ステップと、
前記吐出液体が反応してゲル化するための被吐出液体へ、前記吐出液体の液滴を前記インクジェット方式のノズルから吐出する吐出ステップと、
前記吐出ステップで吐出された前記液滴とは異なる位置へ次の前記液滴を吐出するための位置移動をする移動ステップと、を有することを特徴とするゲル作成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のゲル作成方法において、
前記移動ステップは、前記ノズルから順次吐出された前記液滴が前記被吐出液中で接触して所定の方向に沿って連なった前記ゲルとなるための主移動をすることを特徴とするゲル作成方法。
【請求項3】
請求項2に記載のゲル作成方法において、
前記移動ステップは、前記ノズルから順次吐出された前記液滴が前記被吐出液中で接触して前記所定の方向と交差する方向にも連なった前記ゲルを作成するための副移動をさらにすることを特徴とするゲル作成方法。
【請求項4】
請求項1に記載のゲル作成方法において、
前記吐出ステップは、前記位置移動する所定の方向と交差する方向に沿って所定間隔を有し前記所定の方向と直交する方向には間隔を有しない位置関係で設けられた、複数の前記ノズルから前記液滴を吐出し、
前記移動ステップは、前記ノズルからそれぞれ順次吐出された前記液滴が前記被吐出液中で接触して、前記所定の方向に沿って連なった前記ゲルと、前記所定の方向と直交する方向に連なった前記ゲルと、を作成することを特徴とするゲル作成方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のゲル作成方法において、
前記移動ステップは、前記ノズルと前記被吐出液体とのいずれかまたは両方が移動することを特徴とするゲル作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−20056(P2011−20056A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167545(P2009−167545)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,067)