説明

ゲル化剤、ゲル状組成物及びその利用

【課題】特徴的な粘弾性を有し、室温程度の温度領域でも安定性かつ安全性が高くいゲル状組成物を提供する。
【解決手段】HLB値11以上18以下のショ糖脂肪酸エステル及び、HLB値3以上11未満の界面活性剤、クラフト点が25℃以下のイオン性界面活性及び/又はステロー
ル基を有する非イオン性界面活性剤を含有するゲル化剤又はゲル状組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゲル化剤及びゲル状組成物、並びにそれらを用いた洗浄剤、化粧料、医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄剤、化粧品、医薬品等の分野においては、そのハンドリング性の向上や剤型保持の為に種々の高分子、無機化合物、界面活性剤等がゲル化剤として用いられている。例えば、高分子としては多糖類、カゼイン等の天然高分子、ポリオキシエチレン、アクリル酸ポリマー等の合成高分子が、また、無機化合物としては、モンモリロナイトをはじめとする各種粘土鉱物やシリカなどが、さらには、界面活性剤として、アニオン性、カチオン性、両性、非イオン性の界面活性剤が、ゲル化剤の目的・効果に応じて適宜選択使用されている
【0003】
特許文献1〜3には、ショ糖脂肪酸ジエステルを含有するゲル化剤が示されている。
【0004】
一方、使用性に優れたものとして、界面活性剤分子によって、Worm-like ミセル(ひも状ミセル)と呼ばれる長いひも状のミセルが形成され、それらが互いに絡み合うことによって高粘性を示す、粘弾性流体とよばれる系がある(非特許文献1)。粘弾性流体は、大きな粘性と大きな弾性を合わせ持っており、例えばサリチル酸セチルピリジニウムの様な、強固に結合した対イオンの存在下での4級アンモニウム塩型界面活性剤の水溶液に関する研究が多くなされている(非特許文献2)。また、他のカチオン性界面活性剤である、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドも多量の塩の存在下で粘弾性的な挙動を示す(非特許文献3)。
【0005】
また、特許文献4には、アニオン性界面活性剤を必須成分とし両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、電解質、水溶性高分子を含む、粘弾性界面活性剤水溶液を用いた頭髪・皮膚用洗浄剤が示されている。その中で、身体洗浄剤の使用に際して好ましい粘弾性挙動について述べられており、容器からの取り出しおよび皮膚上への塗布における粘弾性挙動が議論されている。弾性は大きすぎると塗布が難しくなり好ましくない。一方、粘性が高すぎると、容器の取り出し口から残った液がいつまでも糸を引いてたれる状態になる。適切な溶液挙動は弾性と粘性のバランスが取れている場合にのみ得られる。好ましい流動挙動と塗布挙動は、粘弾性流体の剪断弾性率G0が50Paから500paであり、動的貯
蔵弾性率G’と動的損失弾性率G’’が一致する周波数の範囲が、0.1rad・s-1以上60rad・s-1以下である場合に得られるとされている。
さらに、特許文献5には、特定範囲のHLB値のショ糖脂肪酸エステル又は/及びポリグリセリン脂肪酸エステルと、特定範囲のHLB値の界面活性剤を併用し、使用感の優れた粘弾性挙動を示す増粘ゲル化剤について述べている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−279651号公報
【特許文献2】特開平7−26244号公報
【特許文献3】特開平7−26245号公報
【特許文献4】US596550
【特許文献5】特開2005−82650号公報
【非特許文献1】Current Opinion in Colloid & Interface Science 6 (2001) 451−456
【非特許文献2】H.Hoffmann and H.Rehage, in Surfuctant Solutions, Surfactant Science Series, vol.22, R.Zana, Ed., New York, 1987, p.209
【非特許文献3】A.Khatory et al, Langumuir, vol.9, p.1456 (1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ゲル化剤を医薬品、化粧品に利用する場合、これらは人体に使用するために高い安全性を要求されることは当然ながら、同時に外用として皮膚に対して使用されるものの場合には、使用したときの感触、すなわち使用性のよさなどが要求される。また、シャンプーやボディソープ等の身体洗浄剤として用いる場合も安全性が高い方が好ましく、使用感の優れたものが求められている。このため、上記の目的で使用されるゲル化剤は、高い安全性、好ましい使用性、及び良好な増粘ゲル化能をあわせ持つことが要求されるが、従来のゲル化剤には上記3点を充分に満たすものは知られていなかった。
【0008】
例えば、高分子系のものは安全性は比較的高く、少量の添加で良好な増粘ゲル化能を発揮するが、皮膚に使用した場合は高分子特有の「ぬめり感」を生じ、好ましくない使用感を有する。また、粘土鉱物はチキソロピ−性が高く、さっぱりとした使用感であり使用性の点では好ましいが、離液が起こりやすく不安定である。界面活性剤系のものとしては、種々のものが用いられているが、安全性に問題があったり、塩濃度やpH等の液組成の影響を受けやすかったり、塗布時の伸びが不十分であるため、皮膚上に塗布したときの使用感が十分でなかった。
また、粘弾性流体は安全性の面から医薬品、化粧品の用途に十分に適しているとはいえなかった。
特許文献5で得られた増粘ゲル組成物は組成物中の結晶析出温度が高いため、その優れた粘弾性が室温程度(30℃以下)の温度領域で保存すると経時的に粘弾性が失われ、安定な粘弾性が得られなかった。
以上のように、上記の粘弾性挙動を有するゲル状組成物については、室温程度の温度領域においても安定に使用感が良好なものとして医薬品、化粧品の用途としての開発が望まれていた。
【0009】
上述のように、ゲル化剤及びゲル状組成物を身体洗浄剤、化粧料、医薬品等に用いる場合は、高い安全性と、室温程度温度領域における好ましい使用性、及び良好な増粘ゲル化能が要求されていたが、従来技術ではその全てを併せもつ十分なゲル化剤を得ることが出来なかった。特に室温程度の温度領域において、安定に粘弾性挙動を示すことが課題であった。また、発明者らは、このうち特にG0が100Pa以上であり、動的貯蔵弾性率G
’と動的損失弾性率G’’が一致する周波数の範囲が、0.01付近、詳しくは0.001rad・s-1以上1rad・s-1以下である場合に、特徴的な粘弾性を示すゲル状組成物を得ることができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、特定範囲のHLB値のショ糖脂肪酸エステル、特定範囲のHLB値の界面活性剤と特定範囲のクラフト点を有するイオン性界面活性剤及びまたは特定の骨格を有する非イオン性界面活性剤とを併用することによって、上記の優れた粘弾性挙動を示すゲル化能を有するゲル化剤を見いだした。
すなわち、本発明の第1の要旨は、(a)HLB値11以上18以下のショ糖脂肪酸エステル、(b)HLB値3以上11未満の界面活性剤並びに(c−1)クラフト点25℃以下のイオン性界面活性剤及び/又は(C−2)ステロール骨格を有する非イオン性界面
活性剤を含有するゲル化剤に存する。
【0011】
そして、本発明の第2〜3の要旨は、下記の(2)〜(7)に存する。
(2)(b)が、非イオン性の界面活性剤である上記ゲル化剤
(3)(a)のショ糖脂肪酸エステルのモノエステル含量が、50〜100%である上記ゲル化剤。
(4)上記のゲル化剤を含有するゲル状組成物。
(5)上記のゲル状組成物からなる洗浄剤。
(6)上記のゲル状組成物からなる化粧料。
(7)上記ゲル状組成物を含有する医薬品。
【0012】
さらに、好ましい流動挙動と塗布挙動は、粘弾性流体の剪断弾性率G0が50Paから
500paであり、動的貯蔵弾性率G’と動的損失弾性率G’’が一致する周波数の範囲が、0.1rad・s-1以上60rad・s-1以下である場合に得られるとされているが、発明者らは、このうち特にG0が100Pa以上であり、動的貯蔵弾性率G’と動的損
失弾性率G’’が一致する周波数の範囲が、0.01付近、詳しくは0.001rad・s-1以上1rad・s-1以下である場合に、特徴的な粘弾性を示すゲル状組成物を得ることができることを見出した。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかるゲル化剤を用いることにより、特徴的な粘弾性を有し室温程度の温度領域でも安定性かつ安全性が高いゲル状組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明につき、詳細に説明する。
[ゲル化剤]
ゲル化剤とは、これが添加される水性媒体を増粘およびゲル化させる剤である。本発明のゲル化剤は以下の(a)成分であるショ糖脂肪酸エステル(b)成分である疎水性界面活性剤(c−1)成分であるクラフト点25℃以下のイオン性界面活性剤及び/又は(C-2)成分であるステロール骨格を有する非イオン性界面活性剤を含有する。
尚、本発明において、ポリエチレングリコール型及び多価アルコール型非イオン界面活性剤のHLB値は、下記のグリフィンの式(1)によって定義する。
HLB値=(親水基部の分子量/界面活性剤の分子量)×20 (1)
尚、イオン性界面活性剤の場合HLB値は、上記の式で得られたHLB値の値と実際の挙動に差があるため、上記の式ではなく、塩水やHLB既知の親油性非イオン性界面活性剤や油と混合した系での相図を作成し、そのとき計算されるHLB組成を用いて、計算し、求める。
【0015】
<(a)成分:ショ糖脂肪酸エステル>
本発明で使用されるショ糖脂肪酸エステルは、HLB値が11以上18以下のものであって、好ましくは11以上16以下である。HLB値が低すぎると水への溶解性が低下し、沈殿が生じる場合があり、HLB値が高すぎるとひも状ミセル形成能が低下し、増粘ゲル化が起こらない場合がある。
ショ糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、また直鎖状脂肪酸でも分岐状脂肪酸でもよく、さらにはヒドロキシル基等の置換基を有していてもよい。構成脂肪酸の炭素数は、通常6以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上であり、通常22以下、好ましくは18以下、さらに好ましくは16以下である。構成脂肪酸の炭素数が少なすぎるとひも状ミセル形成能が低下し、増粘ゲル化が起こらない場合があり、多すぎると、組成物中の水和結晶の融点が高くなり、低温での安定性が低下する場合がある。これらの脂肪酸は2種以上併用してもよい。
具体的には、これらの脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸
、パルトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、エルカ酸、リシノール酸、ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステルのモノエステル含量は通常50〜100%であり、好ましくは70〜100%であり、さらに好ましくは90〜100%である。モノエステル含量が少なくジエステル以上の成分が多いと、ひも状ミセルよりもラメラ液晶が形成しやすくなり、増粘ゲル化が起こらない場合があったり、増粘ゲル化が起こっても好ましい粘弾性挙動が得られない。
【0016】
<(b)成分:界面活性剤>
本発明で使用される(b)成分である界面活性剤は、HLB値が、通常3以上、好ましくは5以上であり、通常11以下、好ましくは9以下のものである。HLB値が低すぎると水への溶解性が低下し析出する場合があり、HLB値が高すぎるとひも状ミセル形成能が低下し、増粘ゲル化が起こらない場合がある。
(b)成分の界面活性剤は、上記HLB値の範囲であれば、アニオン性、カチオン性、両
性、非イオン性の種類は問わないが、非イオン性界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、エーテルカルボン酸およびその塩、アルカンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルおよびアルキルアリルエーテル硫酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、硫酸化油、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ポリアミンまたはアルカノールアミン脂肪酸誘導体、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモルホリニウム塩等が、両性界面活性剤としては、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコール縮合物、ポリオキシエチレン硬化ひまし油等が挙げられるが、特に、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルが好ましい。 これらの界面活性剤を単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0017】
<(c−1)成分:クラフト点25℃以下のイオン性界面活性剤>
本発明で使用される(c−1)成分であるイオン性界面活性剤は、クラフト点が25℃以下、好ましくは20℃以下である。イオン性界面活性剤のクラフト点は、その溶解度が急激に増加する温度として定義されるものであり、界面活性剤の水への溶解性を表す。クラフト点が高すぎると、室温程度の温度領域において溶液中に界面活性剤の水和固体が析出し、ゲル化が起こらない場合がある。 (c−1)成分のイオン性界面活性剤は、上記ク
ラフト点の範囲であれば、アニオン性、カチオン性、両性の種類は問わないが、好ましいイオン性界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤としては、 ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩類、ドデシルポリオキシエチレン硫酸エステルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ラウリン酸ナトリウムなどの脂肪酸石鹸などが挙げられる。また、カチオン性界面活性剤としては、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどのアルキルトリメチルアンモニウウム塩、両性界面活性剤としては、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0018】
<(c−2)成分:ステロール骨格を有する非イオン性界面活性剤>
本発明で使用される(c−2)成分であるステロール骨格を有する非イオン性界面活性剤は、疎水基にコレステリル基またはフィトステリル基を有し、好ましくは、コレステリル基を有する非イオン性界面活性剤である。ステロール骨格を疎水基に有することにより、ひも状ミセル形成能が向上し、ゲル化が起こりやすくなる。コレステリル基を有する非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、フィトステリル基を有する非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンフィトステリルエーテルであり、特にポリオキシエチレンコレステリルエーテルが好ましい。
(c−2)成分のHLB値は、上記の条件を満たせば、特に影響はないが、好ましくは
HLB値が11以上18以下のものであり、特に好ましくは11以上16以下である。HLB値が低すぎると組成物中の水和結晶の融点が高くなり低温での安定性が得られなくなり、HLB値が高すぎると、ひも状ミセル形成能が低下し、増粘ゲル化が起こらない場合がある。
尚、本発明のゲル化剤は、通常(a)成分、(b)成分及び(c−1)成分及び/又は
(c−2)成分とからなるが、本発明の効果が損なわれない範囲で他の成分を含有してもよい。 また、(c−1)成分であるクラフト点25℃以下のイオン性界面活性剤と(c-2)成分であるステロール骨格を有する非イオン性界面活性剤を併用してもよい。
【0019】
<ゲル化剤の混合比率>
上記(c−1)成分及び/又は(c−2)成分を(c)成分とすると、(a)成分、(
b)成分と(c)成分の混合比率は、(b)成分/((a)成分+(b)成分+(c)成分)が、重量%で、通常0.01%以上、好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは1%以上であり、通常70%以下、好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。また、(a)成分/((a)成分+(c)成分)が、重量%で 通常30%
以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上であり、通常99.99%以下、好ましくは99.9%以下、さらに好ましくは99%以下である。
【0020】
<ゲル化剤の調製方法>
本発明のゲル化剤は、必ずしも均一化しておく必要はないが、均一化しておいた方がゲル状組成物を調製することが容易であり、調製時間を短縮することができる。ゲル化剤の均一化は、各成分を撹拌混合することによって行うことができる。常温では粘度が高すぎて混合が困難な場合は、加温して流動性を高めた状態で撹拌混合してもよい。また、粉体状の成分と液状の成分を混合する場合には、先に粉体状の成分を水やアルコール等の適当な溶媒に溶解した後、液状の成分をそこへ添加して撹拌混合した後、溶媒を留去して調製してもよい。
【0021】
[ゲル状組成物]
本発明のゲル状組成物は、増粘又はゲル化した組成物であって、ゲル化剤及び(d)成分として水性成分を含む。ゲル化剤と水性成分の好ましい混合比率は、ゲル化剤/(ゲル化剤+水性成分)が、重量%で、通常0.01%以上、好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは1%以上であり、通常70%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。
【0022】
<(d)成分:水性成分>
本発明の水性成分とは、通常は水を意味するが、水とエタノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール等のアルコールとの混合液としてもよい。水とアルコールとの混合液の場合には、混合比率には特に制限は無いが、水の含有量は、溶媒中、通常70重量%以上、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。
【0023】
<その他の成分>
本発明のゲル状組成物は、その用途に応じて、その他の成分を含有してもよい。例えば、洗浄剤用途に用いられる場合には、洗浄力を充分に発揮するために、キレート剤を配合してもよい。このキレート剤を用いることで、カルシウム、マグネシウム等を含有する硬水中でスケールの発生による硬水水溶液の白濁を防げるばかりでなく、硬水中での洗浄力、起泡力、泡の感触を保つことができる。このようなキレート剤としては、特に限定されず従来と同様のものが用いられ、具体的にはクエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、グルタミン酸塩、ピロリン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリマレイン酸塩、グルコン酸塩、ニトリロトリ酢酸塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体塩、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体塩、無水マレイン酸−オレフィン共重合体塩、無水マレイン酸−メタクリル酸共重合体の塩、無水マレイン酸−酒石酸縮合体、ゼオライト、トリポリリン酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、エチレンジアミン等が例示される。これらの中でも特に、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、グルタミン酸塩、ピロリン酸塩等は、人体への安全性が高く、環境汚染が無く、ゲル状組成物を構成する水、アルコール等と相溶性が高く、洗浄力、汚れ分散力、起泡力、泡の感触も優れているので好適に用いられる。これらの群より選ばれる一種または二種以上のキレート剤は、通常0.01〜50重量%、好ましくは1〜30重量%、本発明のゲル状組成物に含有される。
【0024】
この他にも、本発明のゲル状組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、通常の洗浄剤組成物に慣用される添加成分の中から任意のものを選択して添加してもよい。このような添加成分としては、例えば、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、あるいはカルボキシベタイン型、イミダゾリニウム型、スルホベタイン型、アミノ酸系界面活性剤などの人体に対して穏和な界面活性剤、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム等の無機ビルダー、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の流動性向上剤、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の増粘剤、さらには香料、着色剤、保湿剤、殺菌剤、酵素、抗炎症剤などが挙げられる。
【0025】
<ゲル状組成物の調製方法>
本発明のゲル状組成物は、水性成分にゲル化剤及び必要に応じてその他の成分を均一に溶解することによって得られる。
【0026】
[ゲル状組成物を含有する洗浄剤、化粧料、医薬品]
本発明のゲル状組成物は、洗浄剤、化粧料、医薬、食品、消臭剤、入浴剤、芳香剤、脱臭剤等として常温でゲル状を呈する各種製品に用いることができる。中でも洗浄剤、化粧料、医薬品の用途に適している。例えば、洗浄剤としては、食品用洗浄剤、食器洗浄剤、厨房用洗浄剤、洗顔料、ボディーソープ、シャンプー、リンス等が挙げられる。化粧料として、クリ−ム、乳液、ローション、クレンジング料、浴用化粧料、保湿化粧料、血行促進・マッサージ剤、パック化粧料、頭髪化粧料等が挙げられる。医薬品としては、軟膏剤、成形パップ剤、徐放製剤基材、ドラッグデリバリーシステム担体、電気泳動用ゲル等が挙げられ、ゲル状組成物は主に医薬品基剤として用いられる。
【0027】
[ゲル状組成物の動的粘弾性挙動]
本発明で得られるゲル状組成物はMaxwel流体の挙動を示すものが好ましい。Maxwel流体ではその動的粘弾性において以下の式が成り立つ。
G’=G0ω2τ2/(1+ω2τ2
G’’=G0ωτ/(1+ω2τ2
|η*|=(G’+G’’)1/2/ω
ここで、ω(rad・s-1)は周波数、τ(s)は緩和時間、G0(Pa)は剪断弾性
率、G’(Pa)は動的貯蔵弾性率、G’’(Pa)は動的損失弾性率、|η*|(Pa
・s)は複素粘性率である。通常、複素粘性率は剪断速度ωにおける粘度と考えてよい。

この式において、高周波数側すなわち剪断速度の速い領域ではωτ>1となり、G’とG0がほぼ等しくなる。また、G’=G’’のとき、G0=2G’、τ=1/ωとなる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。尚、本発明は実施例に限定されるものではない。また、配合量は特に指定がない限り重量%で示す。
【0029】
(実施例1〜7、比較例1〜24)
[ゲル状組成物の調製]
表1に示す組成の界面活性剤をゲル化剤として用いてゲル状組成物を調製した。ゲル状組成物は、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分に(d)成分を加えて撹拌混合することによって調製した。
【0030】
[増粘ゲル化の状態]
TA Instruments社のAR-G2を用いて、25℃における静的粘度として剪断速度0における粘度を測定した。また、これに基づき、増粘ゲル化の状態を以下のようにA〜Eの5段階で評価した。
表1の組成物中の水和結晶の融点は、組成物の温度における溶解状態を観察し、水和結晶が融解する温度を測定して求めた。
尚一般的にポリエチレングリコール型の非イオン性界面活性剤はクラフト点が観測されないほど低いため、参考値として「0℃未満」と記載した。
【0031】
100Pa・s以上のもの 粘弾性ゲル状 A
10Pa・s以上100Pa・s未満のもの ゲル状 B
0.1Pa・s以上10Pa・s未満のもの 増粘 C
0.1Pa・s以下のもの 増粘ゲル化が不十分 D
評価不能 組成物が分離 E
【0032】
【表1】

【0033】
[動的粘弾性の測定]
実施例1〜3,5に関しては、動的粘弾性を測定するために、Rheometric Scientific F.E.Ltd社のARES1KFRTN1-FCOを用いて、複素粘性率|η*|、動的貯蔵弾性率G’、動的
損失弾性率G”を測定した。その結果をそれぞれ図1〜4に示す。
【0034】
[伸びのよさ]
図1〜4からわかるように、実施例1〜3,5は、剪断速度ωが高くなるほど、|η*
|で 表される粘度が低下する。すなわち、肌上に塗布する際加えられる剪断によってゲ
ルの粘度は低下し、伸びがよいと感覚される。
【0035】
[動的粘弾性特性]
実施例1〜3,5は、剪断弾性率G0が100Pa以上であり、かつ、図1〜4より、
動的貯蔵弾性率G’と動的損失弾性率G’’が一致する周波数の範囲(ωG'=G'')が0.001rad・s-1以上1rad・s-1以下である。即ち、実施例1〜3、5は、良好かつ特徴的な動的粘弾性を示すゲル状組成物であることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1の動的粘弾性を測定した図である。
【図2】実施例2の動的粘弾性を測定した図である。
【図3】実施例3の動的粘弾性を測定した図である。
【図4】実施例5の動的粘弾性を測定した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)HLB値11以上18以下のショ糖脂肪酸エステル、(b)HLB値3以上11未満の界面活性剤並びに(c−1)クラフト点25℃以下のイオン性界面活性剤及び/又
は(C−2)ステロール骨格を有する非イオン性界面活性剤を含有するゲル化剤。
【請求項2】
(b)が、非イオン性の界面活性剤である請求項1に記載のゲル化剤。
【請求項3】
(a)のショ糖脂肪酸エステルのモノエステル含量が、50〜100%である請求項1又は2に記載のゲル化剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のゲル化剤を含有するゲル状組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のゲル状組成物からなる洗浄剤。
【請求項6】
請求項4に記載のゲル状組成物からなる化粧料。
【請求項7】
請求項4に記載のゲル状組成物を含有する医薬品。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−57521(P2009−57521A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228234(P2007−228234)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔刊行物名〕 第60回 コロイドおよび界面化学討論会、第2回日豪シンポジウム 講演要旨集 〔発行日〕 平成19年9月3日 〔発行所〕 日本化学会 コロイドおよび界面化学部会 〔該当頁〕 53頁 〔著者名〕 安藤 裕美 〔著者名〕 塩口 薫 〔著者名〕 荒牧 賢治 〔発明の内容〕 水/ショ糖脂肪酸エステル/SDS/補助界面活性剤系のひも状ミセル水溶液のレオロジー特性
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】