説明

ゲル化剤含有食品及びその製造方法

【課題】ゲル化剤として寒天を用いた場合であっても、再セットされたゲル化剤含有食品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】寒天と、ガラクトマンナン及びグルコマンナンのうち少なくとも一方とが1:0.5〜1:30の重量比で含有されたゲル化剤を用いてゲル組成物を形成するゲル組成物形成工程と、該ゲル組成物工程によって形成されたゲル組成物を崩壊するゲル崩壊工程と、該ゲル崩壊工程によって崩壊されたゲル崩壊物を放置することによって、ゲル崩壊物を増粘又はゲル化する再セット工程とを備えたゲル化剤含有食品の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル化剤を含有したゲル化剤含有食品(ヨーグルトなど)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヨーグルトには、容器充填後に発酵させる後発酵ヨーグルトと、発酵してから容器に充填される前発酵ヨーグルトがある(例えば、特許文献1)。後発酵ヨーグルトの場合、全原料は容器充填後に密封シールされ、それを加温して発酵させることから、得られた発酵原料(発酵乳)に後からフルーツなどの第三成分を混ぜることが工程的に難しい。一方、前発酵ヨーグルトの場合には、容器充填前に発酵原料を得ることができ、後からこれに第三成分を混ぜたヨーグルトを容易につくることができる。
【0003】
前発酵ヨーグルトでは、例えば、発酵原料とゲル化剤溶液を混合した後に容器等に充填してゲル化させる。第三成分を混ぜる場合には、発酵原料とゲル化剤溶液とフルーツ等を混合した後、この混合液を凝固点以下の温度まで下げて撹拌し、一旦ゲル化したヨーグルトを崩壊させる。崩壊したヨーグルトは、ある程度の粘性を有するので、フルーツなどが均質分散した状態で容器に充填される。最終製品として、第三成分が均一にゲル組成物に含まれたゲル化又は増粘した前発酵ヨーグルトを得るには、充填時に崩壊したゲル組成物では粘度が低いので、再セットする必要がある。
【0004】
再セットを可能にするためのゲル化剤としては、例えば、ゼラチンが挙げられる(特許文献2)。ゼラチンは、一旦ゲル化した後に、撹拌などによってゲル組成物が崩壊しても、その後に崩壊し流動性のある状態から再セットする。すなわち、その崩壊物を増粘又はゲル化させる前発酵ヨーグルトのゲル化剤として適している。しかし、ゼラチンは、ゲルの融点が低く温度によるゲル強度変化が大きいため食感が安定せず、食感もべたつき、経時的にも食感が変化し、特有の味や臭いを有し、さらにはアレルギーなどを生じさせるという問題がある。
【0005】
再セットさせるためのその他のゲル化剤として、ネイティブジェランガムとハイメトキシルペクチン等(特許文献3)や、サイリュームシードガムなども用いられているが、ネイティブジェランガムとハイメトキシルペクチン等を使用したヨーグルトは、特許文献3にも記載されているように、弾性を有しプルプル感をもつ食感になるため、口溶けが悪く香り立ちのよいみずみずしい食感ではない。また、ネイティブジェランガムは、凝固点や粘度が高く作業性が悪いという問題がある。そのため、寒天などの他のゲル化剤を用いることが望まれている。
【0006】
寒天を含むヨーグルトとして、低強度寒天とマンナン等を使用したトロミヨーグルトが知られている(特許文献4)。特許文献4においては、ゲル化剤を含んでいないカードを破砕して微粒化した破砕物に、別途低強度寒天を含む副原料液を準備して、それを前記破砕物に混合して粘度を調整することが記載されているのみであり、再セットすることは記載されていない。
【0007】
寒天は、さっぱりとしたみずみずしい食感のゲルを作製することができるため香り立ちが良く、発酵乳製造時におけるタンパク質凝集を起こさず、温度による物性変化が少なく、経時的にも安定しており、さらにアレルギー物質ではないという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−95482号公報
【特許文献2】特開昭50−19961号公報
【特許文献3】特開2005−13212号公報
【特許文献4】特開2009−82023公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ゲル化剤として寒天を用いた場合には、ゲルを一旦崩壊させた後に再セットが生じず、前発酵ヨーグルトにフルーツなど第三成分を添加してハードヨーグルトを得ることができないという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、ゲル化剤として寒天を用いて再セットされたゲル化剤含有食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の目的を達成するため、発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、寒天にガラクトマンナン及びグルコマンナンのうち少なくとも一方を添加することによって、ゲル化剤として寒天を用いた場合であっても、再セットさせることができることを見出した。すなわち、本発明は、寒天と、ガラクトマンナン及びグルコマンナンのうち少なくとも一方とが1:0.5〜1:30の重量比で含有されたゲル化剤を用いてゲル組成物を形成するゲル組成物形成工程と、該ゲル組成物工程によって形成されたゲル組成物を崩壊するゲル崩壊工程と、該ゲル崩壊工程によって崩壊されたゲル崩壊物を放置することによって、ゲル崩壊物を増粘又はゲル化する再セット工程とを備えたことを特徴とするゲル化剤含有食品の製造方法である。
【0012】
また、本発明は、寒天と、ガラクトマンナン及びグルコマンナンのうち少なくとも一方とが1:0.5〜1:30の重量比で含有されたゲル化剤を含有するゲル組成物を崩壊後に、それを放置することによってその崩壊物が増粘又はゲル化されたゲル化剤含有食品である。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、ゲル化剤として寒天を用いた場合であっても、再セットされたゲル化剤含有食品及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るゲル化剤含有食品の製造方法において、ゲル組成物形成工程では、ゲル化剤として、寒天と、ガラクトマンナン及びグルコマンナンのうち少なくとも一方とを用いる。寒天は、市販品等を用いることができ、さらに特許3023224,3414954に示された低強度寒天を用いることもできる。ガラクトマンナンとしては、ローカストビーンガム、タラガム、カシアガム、及びグアーガム等が挙げられる。グルコマンナンとしては、コンニャクマンナン等が挙げられる。ガラクトマンナン及びグルコマンナンの中では、ローカストビーンガム、タラガム、コンニャクマンマン、カシアガムであることが好ましく、ローカストビーンガムがさらに好ましい。
【0015】
寒天と、ガラクトマンナン及びグルコマンナンのうち少なくとも一方との重量比は、1:0.5〜1:30であり、1:2〜1:20であることが好ましく、1:4〜1:10であることがさらに好ましい。寒天の割合が少ないときには、再セット性が充分でないことがあり好ましくない。寒天の割合が多い時には、同様に再セット性が充分でなく、後述のゲル崩壊工程においてゲル強度が高すぎて、作業が困難になるため好ましくない。
【0016】
ゲル組成物形成工程では、必要により発酵処理した原料(発酵原料)に前記ゲル化剤を加えてゲル組成物を形成する。ゲル化剤の他に、水、砂糖、香料などを加えてもよい。発酵原料は、前発酵を行う場合の既知のものを用いることができる。ゲル組成物を形成する方法も、既知の方法を採用することができる。
【0017】
本発明に係るゲル化剤含有食品の製造方法において、ゲル崩壊工程では、ゲル組成物を均一化させるため崩壊させる。崩壊させる方法は特に制限されないが、撹拌機やホモジナイザーなどで撹拌して崩壊させるのが好ましい。撹拌速度は、製造規模等により異なるが、プロペラ式の撹拌機やホモジナイザーでは例えば、50rpm〜15000rpmとすることができる。ゲル組成物を崩壊する際の温度は、ゲル組成物の凝固点温度以下であることが好ましく、4〜30℃であることがさらに好ましい。ゲル組成物の凝固点以下で崩壊することにより、ゲル崩壊物が、適度な流動性のある粘性物となり、また容器の耐熱性がなく、低温で容器に充填しなければならない場合や熱に不安定な成分を混ぜる場合などに有効である。
【0018】
本発明に係るゲル化剤含有食品の製造方法において、再セット工程では、ゲル崩壊物を放置することによりゲルを再セットする。再セットするには、例えば、好ましくは温度1〜30℃、さらに好ましくは5〜10℃の下、1分〜48時間放置すればよい。ただし、糖質や塩類などの成分が入り氷点が低下すれば1℃より低い温度でも再セットする。ここで再セットとは、ゲル化剤を含有するゲル組成物を撹拌等により崩壊させた後、放置することにより、崩壊されたゲル組成物が再びゲル化したり、又は崩壊直後の粘度より高い粘度になることを言う。崩壊直後のゲル崩壊物の粘度は一般には、50〜4000mPa・sである。再セットにより増粘したゲル化剤含有食品の粘度は、崩壊直後の粘度より高く、かつ100〜30000mPa・sであることが好ましく、500〜30000mPa・sであることがさらに好ましい。崩壊直後のゲル崩壊物の粘度と再セット後の粘度の差は、50〜36000mPa・sであることが好ましい。再セットされたゲル化剤含有食品は、ゲル強度が測定可能なほどゲル化することが好ましく、再セット後のゲル強度は、2〜50g/cmであることが好ましく、4〜50g/cmであることがさらに好ましい。食品においては、食品の種類により好まれる硬さが異なるので、添加するゲル化剤の量等を調整して、好まれる粘度やゲル強度に調整することが望ましい。
【0019】
寒天とガラクトマンナン及びグルコマンナンのうち少なくとも一方の組み合わせにより再セットされるのは、寒天のゲル化により三次元の網目構造を形成し、そこにガラクトマンナン又はグルコマンナン分子が入り込み相乗性を示すと共に、寒天とガラクトマンナン等が所定の比率であることにより、ガラクトマンナン及びグルコマンナンに含まれる冷水可溶性部分が結着剤として作用して、ゲル崩壊後に崩壊したミクロゲル粒子同士を再接着させることができるためと推察される。
【0020】
本発明に係るゲル化剤含有食品の製造方法において、ゲル組成物に第三成分を添加する第三成分添加工程を備えていてもよい。第三成分は、ゲル組成物形成工程において、ゲル組成物を形成する前に添加することもできるし、ゲル組成物形成工程後、ゲル組成物に添加することもできる。さらにゲル組成物の崩壊時に添加することもできる。第三成分としては、固形物が好ましく、例えば、フルーツ、タピオカ粒、ナタデココ、アロエ果肉、及び小さなサイコロ状の寒天ゲルなどを挙げることができる。第三成分は、その後のゲル崩壊工程によりゲル崩壊物の中に混合され沈降することなく均一に分散され、ゲル崩壊物が再セットされることにより、固形物が均一に分散されたゲル化剤含有食品を得ることができる。
【0021】
特許文献4においては、低強度寒天は、凝固する温度より高い温度の溶液として発酵乳に添加されており、発酵乳と混合後にゲル化温度以下に冷却されゲル化させている。このため混合時には粘性を有していないため、この混合時にフルーツなどの第三成分を混合しても、沈降してしまい、均一に分散できない。
【0022】
本発明に係るゲル化剤含有食品としては、ヨーグルト、デザートゼリー、フルーツ入りゼリー、たれ、調味料などのゼリー状食品、豆乳を使用したヨーグルト、及びラクトアイス等が挙げられる。ゲル化剤は、ゲル化剤含有食品中に0.1〜3.0重量%含まれるのが好ましく、0.15〜3.0重量%含まれるのがさらに好ましく、0.2〜2.0重量%含まれるのが特に好ましい。
【実施例】
【0023】
本実施例及び比較例においては、以下の原料を用いた。
寒天1:伊那寒天UP−16(伊那食品工業社製)
寒天2:ウルトラ寒天AX―30(伊那食品工業社製)
ローカストビーンガム:RL−200(CPケルコ社製)
タラガム:タラガムA(伊那食品工業社製)
カシアガム:カシアガム(紀文フードケミファ社製)
コンニャクマンナン:マンナン100(伊那食品工業社製)
脱脂粉乳:脱脂粉乳(明治乳業社製)
ヤシ硬化油:ヤシ硬化油(ミヨシ油脂社製)
水飴:酵素糖化水飴(林原商事社製)
果糖ブドウ糖液糖:果糖ブドウ糖液糖(昭和産業社製)
乳化剤:P−40S(花王社製)
【0024】
実施例1〜9,比較例1〜2
寒天1と、ローカストビーンガムとをそれぞれ表1の重量比で混合し、合わせて1.0重量%とになるように水500gに分散させ加熱溶解した。それを容器に流し込み、10℃で2時間冷却後、ゲル組成物を得た。ゲル組成物のゲル強度(*1)をテクスチャーアナライザー(英弘精機社製,測定条件:プランジャー直径2cm,速度20mm/分,測定温度20℃,とし単位はg/cmとした。以下、特記しない限りはすべてのゲル強度はこの条件にて測定した。)で測定した。それぞれのゲル組成物について、温度20℃で撹拌機(TKホモミキサー,マークII,特殊機械社製)を用いて撹拌速度10000rpmでゲル組成物を崩壊させ直後の粘度(*2)をB型粘度計(DV−Eビスコメーター,ブルックフィールド社製,ローターNo.3,回転数3rpm,温度20℃,以下、特記しない限りはすべての粘度はこの条件にて測定した。)にて測定した後、上記と同様の容器に入れ、さらに5℃で12時間放置して再セットを行った。得られたゲル化剤含有食品のゲル強度(*3)又は粘度(*4)を測定し、表1に示した。
【0025】
【表1】

【0026】
表中、測定不能とは、ゲル強度が低すぎて数値的に測定不能であったことを示す。−は、未測定であることを示す。以下、同様である。
【0027】
表1より、寒天とローカストビーンガムの割合が1:0.5乃至1:30では、再セット性を有していることが分かる。
【0028】
実施例10〜18,比較例3〜4
ローカストビーンガムの代わりにタラガムを用いた以外は、実施例1〜9,比較例1〜2と同様にしてゲル化剤含有食品を得た。結果を表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
表2より、寒天とタラガムの割合が1:0.5乃至1:30では、再セット性を有していることが分かる。
【0031】
実施例19〜27,比較例5〜6
ローカストビーンガムの代わりにカシアガムを用いた以外は、実施例1〜9,比較例1〜2と同様にしてゲル化剤含有食品を得た。結果を表3に示す。
【0032】
【表3】

【0033】
表3より、寒天とカシアガムの割合が1:0.5乃至1:30では、再セット性を有していることが分かる。
【0034】
実施例28〜36,比較例7〜8
ローカストビーンガムの代わりにコンニャクマンナンを用いた以外は、実施例1〜9,比較例1〜2と同様にしてゲル化剤含有食品を得た。結果を表4に示す。
【0035】
【表4】

【0036】
表4より、寒天とコンニャクマンナンの割合が1:0.5乃至1:30では、再セット性を有していることが分かる。
【0037】
実施例37〜41
次に、寒天1の代わりに寒天2を用い、実施例5の重量比(寒天:ローカストビーンガム=1:4)にてゲル化剤の添加量を1.0重量%とする代わりに表5に示した添加量とする以外は、実施例5と同様にしてゲル化剤含有食品を得た。結果を表5に示す。
【0038】
【表5】

【0039】
表5より、寒天の種類やゲル化剤の添加量を変化させても、再セット性を有していることが分かる。
【0040】
実施例42,比較例9〜10
水870gに脱脂粉乳130gと砂糖10gを加えて分散させ、90℃まで加熱して加熱殺菌した。これを43℃まで冷却しスターター(市販ヨーグルト明治ブルガリアヨーグルト5重量部)を添加し、42℃の恒温機にて乳酸菌を発酵させ、発酵原料(無脂乳固形物13%,乳脂肪分0%)を得た。次に、寒天2、ローカストビーンガム、及び砂糖を粉体混合したものを水に分散させ、90℃まで加熱してゲル化剤含有物を調製した。得られた発酵原料70重量部とゲル化剤含有物30重量部を45〜50℃で加温しながら混合し、ホモゲナイザー(TKホモミキサー,マークII,特殊機械社製)で均質化した後、撹拌機(スリーワンモーター,HEIDON社製)にて撹拌速度400rpmで撹拌しながら16〜18℃まで冷却し、容器に充填して5℃の冷蔵庫に12時間放置して、ゲル組成物(ヨーグルト)を得た。配合量(重量部)は、表6に示した。
【0041】
得られたヨーグルトの物性は、以下のように測定した。
ゲル強度:テクスチャアナライザー(実施例1〜9と同様にして測定した。)
粘度:B型回転粘度計(実施例1〜9と同様にして測定した。)
保形性:容器から出したときの外観(流動性)を目視で評価した。
タンパク質の凝集性:目視で評価した。
結果を表6に、ゲル強度A、粘度A、保形性A、及びタンパク質の凝集性Aとして示した。
【0042】
得られたゲル組成物(ヨーグルト)をホモゲナイザー(TKホモミキサー,マークII,特殊機械社製)を用いて撹拌速度1000rpmで撹拌し、温度15℃でゲル組成物を崩壊させた後、ゲル組成物を崩壊させ直後の粘度を測定した。結果を表6に、粘度Bとして示した。崩壊させたゲル組成物を再び容器に充填して5℃の冷蔵庫に12時間放置して、再セット化を試み、ゲル化剤含有食品(再セットヨーグルト)を得た。得られたゲル化剤含有食品は、ゲル強度、粘度、保形性、及びタンパク質の凝集性を測定した。結果を表6に、ゲル強度C、粘度C、保形性C、及びタンパク質の凝集性Cとして示した。
【0043】
得られたゲル化剤含有食品について、さらに以下の評価を行った。
食感C:パネラーにより評価した。
安定性C:ゲル含有食品100gを20℃の恒温槽に1時間放置した際のゲル含有食品について、目視により評価した。
【0044】
【表6】

【0045】
表6より、寒天とローカストビーンガムを併用した実施例42は、再セットされたヨーグルトを得ることができたが、ローカストビーンガムを含まない比較例9のヨーグルトは再セット性が無かった。また、ゼラチンを使用した比較例10は、再セット性はあったものの、食感が好ましくなく、また融点が低いため20℃においてゲル強度を失ってしまい安定性が無かった。
【0046】
実施例43,比較例11〜12
表7に示す配合量(重量部)とし、ホモゲナイザー(TKホモミキサー,マークII,特殊機械社製)で均質化した後、撹拌機(スリーワンモーター,HEIDON社製)にて撹拌速度400rpmで撹拌したが、16〜18℃まで冷却しないで、42℃で容器に充填した以外は、実施例42,比較例9〜10と同様にして、ゲル組成物(ヨーグルト)を得た。このゲル組成物を高速撹拌機(バーミックス,チェリーテラス社製)を用いて温度15℃で崩壊させ再び容器に充填し、5℃の冷蔵庫に12時間放置して、再セット化を試み、ゲル化剤含有食品(再セットヨーグルト)を得た。実施例42,比較例9〜10と同様にしてゲル強度,保形性,食感,20℃における安定性を測定した。結果を同様に表7に示す。
【0047】
【表7】

【0048】
表7より、寒天とローカストビーンガムを併用した実施例43は、再セットされたヨーグルトを得ることができたが、ローカストビーンガムを含まない比較例11のヨーグルトは再セット性が無かった。また、ゼラチンを使用した比較例12は、再セット性はあったものの、食感が好ましくなく、また融点が低いため20℃においてゲル強度を失ってしまい安定性が無かった。
【0049】
実施例44,比較例13〜14
表8に示す配合量、及びゲル組成物(ヨーグルト)にフルーツプレパレーション(オレンジ,池田糖化社製)を加え崩壊させた以外は、実施例42,比較例9〜10と同様にして、ゲル組成物(ヨーグルト)及びゲル化剤含有食品(再セットヨーグルト)を得た。
【0050】
得られたゲル化剤含有食品(再セットヨーグルト)は、パネラーにより、フレバーリリース、ボディー感、口どけ感、及び後味のキレを以下の4段階(◎:良好,○:やや良好,△:普通,×:不適)で評価した。また、糊状感をパネラーにより有無で評価した。さらに、1日後におけるフルーツプレパレーションの沈降状態を目視により有無で評価した。結果を表8に示す。
【0051】
【表8】

【0052】
表8より、寒天とローカストビーンガムを併用した実施例44は、再セットされたヨーグルトを得ることができ、食味も満足できるものであり、さらにフルーツプレパレーションの沈降も無かった。一方、ローカストビーンガムを含まない比較例13のヨーグルトは再セット性が無くフルーツプレパレーションが沈降していた。またゼラチンを使用した比較例14は、再セット性はあったものの、食感が好ましくなくなかった。
【0053】
実施例45〜46
実施例42における発酵原料の作製において、脱脂粉乳を水に溶解する代わりに、牛乳(実施例45),又は豆乳(実施例46)に溶解して発酵原料を得た。これら発酵原料使用して実施例44と同様にして、フルーツプレパレーション入りのヨーグルトを作製した。その結果、実施例44と同様にフルーツプレパレーションの沈降が無く、食味も満足できるヨーグルトを得ることができた。
【0054】
実施例47,比較例15〜16
水に寒天、及びタラガムを溶解後、ヤシ硬化油、水飴、果糖ブドウ糖液糖、脱脂粉乳、砂糖50g、乳化剤、及び食塩を混合後、加熱溶解した。これに砂糖30gと卵黄を混ぜ、乳化機(PVA社製,マントンゴーリン式,150kg/cm)を用いて乳化させた。これを7℃まで急冷しバニラエッセンスを加えて1晩冷蔵庫で保存しエージングさせ、ゲル組成物を得た。この冷蔵品を−30℃にてオーバーラン(ゲル崩壊)させ、容器に充填した。配合量は、表9に示す。1日後の食感及びボリュームをパネラーにより評価した。結果を表9に示す。
【0055】
【表9】

【0056】
実施例47においては、1日経過してもゲル組成物が再セットされているため、起泡が安定しており食感の優れたボリューム感のあるラクトアイスを作製することができた。比較例15及び16においては、ゲル組成物が再セットされないため起泡が安定せず、好ましい食感が得られなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
寒天と、ガラクトマンナン及びグルコマンナンのうち少なくとも一方とが1:0.5〜1:30の重量比で含有されたゲル化剤を用いてゲル組成物を形成するゲル組成物形成工程と、
該ゲル組成物工程によって形成されたゲル組成物を崩壊するゲル崩壊工程と、
該ゲル崩壊工程によって崩壊されたゲル崩壊物を放置することによって、ゲル崩壊物を増粘又はゲル化する再セット工程とを備えたことを特徴とするゲル化剤含有食品の製造方法。
【請求項2】
寒天と、ガラクトマンナン及びグルコマンナンのうち少なくとも一方とが1:0.5〜1:30の重量比で含有されたゲル化剤を含有するゲル組成物を崩壊後に、それを放置することによってその崩壊物が増粘又はゲル化されたゲル化剤含有食品。
【請求項3】
前記ゲル組成物に発酵原料が含まれることを特徴とする請求項2記載のゲル化剤含有食品。


【公開番号】特開2011−62110(P2011−62110A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214245(P2009−214245)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000118615)伊那食品工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】