説明

ゲル層を有する支持装置

本発明は、ゲル層を有する支持装置を提供する。1つの実施形態において、前記ゲル層は、1つ以上の付加支持層を被覆する。このゲル層は、ゲルたとえばポリウレタンゲルから成り、また随意に、1つ以上の充填材を含む。この充填材は、天然または合成材料とすることができる。この支持装置の例としては、たとえばマットレス、椅子その他の家具、およびクッションのような装置がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、体を支持するために設計された装置に関する。より詳しくは、本発明は、快適感が高く、特に圧力開放が改良された装置、また熱移動の制御が改良された装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本件がかかわる分野においては、使用者の体を支持するための装置が多数知られている。一般に、そのような装置は、1層以上の詰め物または緩衝剤を有し、使用者の体に機能的な支持を与え、またそのような支持を、快適感とともに与えるものである。同様に、そのような装置は、機械的な支持体たとえばコイルばねを有することもできる。
【0003】
この分野における進歩は、一般に、前記装置において必要な機能的支持を与える装置に関するものであるが、同時にまた、快適感を与えるか、あるいは支持体を作るのに必要な材料が少なくなるような装置に関する。たとえば、Romanoほかに付与された米国特許第6,701,556号においては、圧力分散を改良する一方で、マットレスまたはクッションの全体的厚さを減少させるように設計されたマットレスまたはクッション構造物が開示されている。さらに、Roseほかに付与された米国特許第6,804,848号においては、上部マットレス空気姿勢決めモジュールおよび調節可能な空気姿勢決め睡眠面を有する空気支持睡眠システムが開示されている。
【0004】
通常体の支持に使用されるこれらの装置は、機能的な支持を与えうるが、安らぎまたは睡眠を楽にするのに有効な快適感を与えるのには失敗しており、または支持面に接触する体部分に対する圧力の最大の開放を与えるのに失敗している。ゲル材料が物理的快適感および圧力開放を与えるということが一般に知られている。また、ゲルが割合に大きな熱伝導率を示すことも知られている。したがって、ゲルたとえばポリウレタンゲルは、一般に、体に“清涼”感を与えるものであると考えられている。ゲルに接触したときに、体から体熱が知覚しうるほどに取り去られるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本件のかかわる分野において、使用者の体に機能的な支持を与えると同時に、快適感を与え、また場合によっては治療のための利点をも与えるような体支持体として有用な装置に対する要求は依然として存在する。上記特性、ならびにその他の好ましく有利な特性が、本発明によって与えられるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、体の少なくとも一部をその上に支持するための装置を提供するものである。好ましくは、この装置は、特定の範囲の測定可能な硬さを有するゲルから成るゲル層を有する。別の実施形態においては、この装置は、複数の層を有し、好ましくはこれらの層は少なくとも二つの異なる種類の材料から成り、この装置の1つの層はゲルから成る。本発明の装置は、圧力マッピングを改良し、圧力開放を与えるのに有利であり、また、いろいろなパラメータによって、熱を吸収し、移動させる能力をも与える。そのような熱に関する能力は、装置の組成、特に装置のゲル層の組成によって、調節することができる。
【0007】
本発明の1つの実施形態においては、装置は、1つ以上の付加支持層を被覆するゲル層を有する。本発明のこの実施形態の場合、前記ゲル層は、使用者に対する支持圧力と圧力開放とが改良され、また使用者の感じる快適感(すなわち、良い“感じ”)が増大するような特定の物理的性質を有するゲルから成る。このゲル層は、装置の最外側層とすることができ、したがって使用者に直接接触する層とすることができる。別の実施形態の場合、この装置は、ゲル層を被覆するカバーを有することもできる。好ましくは、このカバー層は、ゲル層によって与えられる快適感と支持とを実質的に減少または打ち消すような構造または厚さのものではない。本発明に含まれるカバーの非限定例としては、布層、フィルム層、塗膜層、およびフォーム層がある。
【0008】
この装置のゲル層に使用されるゲルは、特に、特定の物理的性質を有するように配合され、たとえば、使用者に良い“感じ”または高い快適感を与えるばかりでなく、使用者にとって有利な強力な支持と圧力開放とを与えるような範囲にある硬さと弾性とを有するようにされる。1つの特定実施形態においては、このゲル層に使用されるゲルは、約0.5 kPa〜約50 kPaの範囲の測定可能な硬さを有する。もう1つの実施形態においては、このゲルの弾性は、ヒステリシスによって測定することができ、このゲルのヒステリシス百分率は、約15%〜約80%の範囲にある。
【0009】
この装置で使用される1つ以上の付加支持層は、体支持装置の分野、特にマットレスおよび着座装置の分野において周知の任意の種類の支持材とすることができる。たとえば、この1つ以上の付加支持層は、フォーム層、ばね層、布層、気体層、木材層、金属層、およびプラスチック層の1つ以上とすることができる。したがって、本発明の装置は、多くの種類の支持体において使用することができる。たとえば、本発明の装置は、全身または体の一部だけを支持するために使用することができる。したがって、本発明の装置は、家庭用品たとえばベッドまたは着座装置、事務所用品たとえば椅子シート、椅子背もたれ、椅子ひじ掛け、キーボードのリストレスト、その他、ならびに輸送手段、たとえば自動車シートその他の内装用品、医療用品、たとえばベッド、車椅子、ならびに衣類、特に履物、ならびに快適感または圧力開放が最大限であるべきその他の用品、において使用することができる。一つの特定実施形態においては、この装置はマットレスである。本発明に含まれるその他の支持装置の非限定例としては、着座装置、枕、マットレストッパー、履物クッション(または中敷)、アームパッド、およびリストパッドがある。
【0010】
もう1つの実施形態においては、ゲル層は、ゲルのほかに、1つ以上の充填材をも含むことができる。そのような充填材は、特に、ゲル層に使用するゲルの熱伝導率を変えるのに有効である。前述のように、通常ゲルは“冷”感をその特徴とし、これは、一部は、ゲルの熱伝導率から生じる。ゲルは、ゲルに接触する温かい物体たとえば使用者の体から熱を移動させるからである。ゲル層に使用される充填材は、好ましくは、ゲルの熱伝導率を低下させうるものであり、したがってゲルが使用者に感じられる“冷たさ”を低下させうるようなものである。
【0011】
本発明においては、いろいろな種類の充填剤を使用することができる。充填材は、一般に、ゲル、またはゲルの可能な誘導体もしくはその前駆体(たとえば、ポリウレタンゲルの場合、イソシアネートおよびポリオール)と反応しないものでなければならない。好ましくは、この充填材は、ゲルの1つ以上の物理的性質、たとえば非限定例としてゲルの熱伝導率、に有利な影響を及ぼしうる物質である。本発明の1つの特定実施形態においては、この充填材は、コルク片、コルク粉、木材片、木材チップ、フォームフレーク、紡織繊維、布片、パラフィン、中空球、合成微小球、鉱物粒子、ガラスビーズ、気体、活性剤(active agent)、ナノ粒子、およびこれらの混合物から成るグループから選択される。
【0012】
1つの特定実施形態においては、体の少なくとも一部をその上に支持する装置が提供され、該装置は、1つ以上の付加支持層を被覆する充填材入り(filled)ゲル層を有する。好ましくは、この充填材入りゲル層は、約0.20 W m-1 K-1よりも小さな熱伝導率を有する。
【0013】
本発明のもう一つの側面においては、特にマットレスが提供される。1つの実施形態においては、このマットレスはフォーム層を被覆するゲル層を有する。好ましくはこのゲル層は、約0.5 kPa〜約50 kPaの範囲の硬さを有するゲルから成る。好ましい実施形態においては、このゲルはポリウレタンゲルである。別の実施形態においては、このマットレスはさらなる支持層たとえばばね層を有することができ、またさらにカバーたとえば布層をも有することができる。
【0014】
もう1つの実施形態においては、前記マットレスはばね層を被覆するゲル層を有する。好ましくは、このゲル層は、約0.5 kPa〜約50 kPaの範囲の硬さを有するゲルから成る。1つの特定実施形態の場合、このゲルはポリウレタンゲルである。さらなる実施形態においては、このマットレスはさらなる支持層たとえばフォーム層を有することができ、またさらにカバーたとえば布層をも有することができる。
【0015】
本発明のこの側面によるマットレスは、ゲル層に使用されるゲルのさらなる物理的性質によって特徴を与えることができる。たとえば、1つの実施形態においては、このゲル層は、ヒステリシスが約15%〜約80%の範囲にあるような弾性を有するゲルから成る。
【0016】
本発明のもう1つの側面においては、特にマットレストッパーが提供される。1つの実施形態においては、このマットレストッパーはフォーム層を被覆するゲル層を有し、好ましくはこのフォーム層は標準的マットレスの平均厚さよりもかなり小さい厚さのものである。1つの特定実施形態においては、このマットレストッパーのフォーム層は約5 cmよりも小さな厚さを有する。別の実施形態では、このマットレストッパーはゲル層を被覆するカバーを有することができる。好ましくは、このゲル層は約0.5 kPa〜約50 kPaの範囲の硬さを有するゲルから成る。好ましい実施形態においては、このゲルはポリウレタンゲルである。
【0017】
本発明のさらに別の側面においては、特に枕が提供される。1つの実施形態においては、この枕はフォーム層を被覆するゲル層を有する。1つの好ましい実施形態においては、フォーム層の一部だけを被覆する。好ましくは、このゲル層は約0.5 kPa〜約50 kPaの範囲の硬さを有するゲルから成る。好ましい実施形態においては、このゲルはポリウレタンゲルである。さらに別の好ましい実施形態においては、この枕はゲル層を被覆するカバーを有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を、本発明の好ましい実施形態に即してさらに十分に説明する。この説明は、当業者にとって、十分かつ完全であり、本発明の範囲を完全に伝えるようになされる。しかし、本発明はいろいろ異なる形で実施することができると解釈すべきであり、ここで説明する特定実施形態のみに限定されると解釈すべきではない。以下の説明では特定の用語を使用するが、これらの用語は本発明の説明のためだけに使用するものであり、本発明の範囲を限定または制限するものではない。全体を通じて、類似の要素は類似の番号で示す。この明細書と特許請求の範囲においては、特に明示しない限り、単数形“1つ”および“この”(“a”、“an”and“the”)は、複数の指示対象をも含む。
【0019】
本発明は、体の支持に有用な装置を提供するものであり、特に、機能的であると同時に、使用者にとって快適で圧力点を除去するような支持体を提供するものである。この装置は、使用者に快適“感”を与えると同時に、健康に関する利点を与えるような好ましい物理的特性を示すゲル材料の使用を特徴とする。
【0020】
本発明の装置で使用するゲルは、安定かつ無毒で、緩衝作用を与える一方で、ある程度の構造的な安定性と支持力とを保つことが周知であるような任意のゲルから成ることができる。特に、このゲルは、以下でより詳しく述べる好ましい範囲にある硬さと弾性とを有する任意のゲル材料から成ることができる。
【0021】
本発明においては、特にポリウレタンゲルが有用である。さらに、経時硬化を起こさず、膨張性が小さく、また物質劣化(たとえば、揮発性の薬剤たとえば可塑剤の移動による)の起こりにくい他のゲルも、本発明におけるゲルとして使用することができる。好ましくは、本発明の装置で使用するゲルは、衝撃吸収性であり、振動に抵抗するようなものでもある。
【0022】
一般に、ポリウレタンゲルは、ポリイソシアネート化合物と多官能価アルコール(たとえば、ポリオール)との化学反応生成物であると理解される。ポリウレタン化合物を製造する一般的な反応方式の一例は、下記のものである。
【化1】


この式で、R1とR2は、各種の有機基とすることができ、たとえば、非限定例として、直鎖または枝分かれ鎖または環式アルキル、アルケニル、またはアルキニル基、および各種アリール基とすることができる。もちろん、上記方式は、本発明において有効なポリウレタン化合物の製造法の単なる1つの例として示すものであり、本発明の限定を意図するものではない。本発明で使用できるポリウレタンゲルのさらなる例は、米国特許第6,191,216号、米国特許出願公開第2004/0058163号(出願通し番号第10/618,558号)、および米国特許出願公開第2004/0102573号(出願通し番号第10/656,778号)明細書に開示されている。これらの明細書を参照されたい。本発明で使用できるその他のタイプのゲルの例は、米国特許第4,404,296号、米国特許第4,456,642号、および米国特許出願公開第2005/0186436号(出願通し番号第11/058,339号)に開示されている。これらの明細書を参照されたい。
【0023】
本発明の1つの実施形態においては、装置のゲル層で使用するゲルは、ポリウレタンゲルから成る。特に、このポリウレタンゲルはイソシアネート官能基とポリオール成分の官能基とを有する原料を使用して製造することができる。ここで、ポリオール官能価とイソシアネート官能価との積は、少なくとも5.2であるが、好ましくは少なくとも6.5または7.5である。本発明の好ましい実施形態においては、ゲルを製造するためのポリオール成分は、112よりも小さなヒドロキシル価を有する1つ以上の第一ポリオールと、112〜600の範囲のヒドロキシル価を有する1つ以上の第二ポリオールとの混合物を含む。ここで、第一ポリオールの第二ポリオールに対する重量比は、90:10〜10:90の範囲にある。この反応混合物のイソシアネート特性値(isocyanatecharacteristic)は、15〜59.81の範囲にあり、イソシアネート官能価とポリオール成分の官能価との積は少なくとも6.15である。
【0024】
もう1つの特定実施形態においては、本発明で有用なゲルの製造のための原料は、1つ以上のポリイソシアネート、ならびに112よりも小さなヒドロキシル価を有する1つ以上のポリオールの第一成分と、112〜600の範囲のヒドロキシル価を有する1つ以上のポリオールの第二成分とから成るポリオール成分、ならびにイソシアネート基とヒドロキシル基との反応のための随意の触媒、ならびにポリウレタン化学で知られている随意の充填材および/または添加剤を含む。ここで、前記第一成分と第二成分との重量比は、90:10〜10:90の範囲にあり、反応混合物のイソシアネート特性値は15〜59.81であり、イソシアネート官能価とポリオール成分の官能価との積は、少なくとも6.15である。
【0025】
ゲルを製造するためのポリオール成分は、好ましくは、1,000〜12,000の範囲の分子量と20〜112の範囲のOH価とを有する1つ以上のポリオールから成り、ここで、ポリウレタン生成成分の官能価の積は、少なくとも5.2であり、イソシアネート特性値は、15〜60の範囲にある。
【0026】
ゲル製造のためのイソシアネートとしては、好ましくは、式Q(NCO)nを有するものを使用することができ、この式において、nは、2〜4であり、Qは、6〜18個のC原子を有する脂肪族炭化水素ラジカル、または4〜15個のC原子を有する脂環式炭化水素ラジカル、または8〜15個のC原子を有する芳香族炭化水素ラジカルを示す。これらのイソシアネートは、純粋の形、または通常のイソシアネート改質剤の形、たとえばウレタン化、アロファネート化、またはビウレタン化(biuretisation)のための改質剤の形で使用することができる。
【0027】
本発明の装置においては、ゲルたとえばポリウレタンゲルが特に有用であり、その理由の一部はこのゲルによって釣り合いの取れた圧力分布が与えられるということである。たとえば使用者が座ったり、横たわったりすることによって加えられた圧力の軸(すなわち、詰め物の平面に垂直な軸)に沿ってのみ変形することにより加えられた圧力に反応する通常の詰め物材料と異なり、ゲルは3次元の変形特性を示す。言い換えると、このゲルは三軸方向に変形することによって加えられた圧力に反応する。三軸と言うのは、ゲル表面の平面内のXおよびY軸と、ゲル表面の平面に垂直なZ軸である。この反応により、加えられた圧力の均一な分布がもたらされ、圧力点で使用者が感じる圧力が小さくなる。これは、不快な、場合によっては損傷を与える、圧力点における圧力の蓄積を起こしうる通常の詰め物材料に比して好ましい点である。したがって、このゲルは、快適さを増大させると同時に、健康に関する利点、たとえば血液循環を増大させる利点、正しい姿勢をとらせる利点、さらに、深刻な事態たとえば床ずれその他のタイプの潰瘍を生じさせうる圧力集中を軽減させるという利点を与える。
【0028】
本発明の装置で有用なゲル材料は、特に、圧力分布を最適化する能力に関して有利であり、この能力は圧力マッピングによって見ることができる。圧力マッピングは、使用者と支持面たとえばシートまたはベッド面との間に発生する境界面圧力を測定する臨床医学的手段である。通常の支持クッションおよび詰め物の場合、圧力マップは、局所的大圧力領域を示す傾向があり、そのような場合、均一分布圧力とはなりえない。本発明で有用なゲル特にポリウレタンゲルおよびその他のゲルは、圧力点から遠くに圧力を分散させる能力のため、通常の支持体よりもすぐれている。この能力は、圧力点において小さな圧力測定値を示す圧力マップによって明らかにされる。
【0029】
本発明で使用されるゲルは、それらが示す特定の物理的性質によって特徴づけられる。本発明のゲルを特徴づける特別な二つの物理的性質は硬さと弾性である。このゲルが示すこれら二つの性質を最適化により、客観的および主観的快適感と支持力とを与える装置の製造が可能になる。言い換えると、ある程度の硬さとある程度の弾性とを有する本発明のゲルは、前述のように、治療に関する利点(すなわち、客観的快適感)を与えると同時に、使用者に良い“感じ”(すなわち、主観的快適感)を与える。客観的および主観的快適感の両方を与える能力は、特に有用である。使用者に治療に関する利点を与えるように設計された支持装置は、必ずしも使用者に良い感じを与えないからである。逆に、使用者に良く感じられるものは、必ずしも使用者に治療上の利点を与えない。しかし、ここで指定する範囲内の硬さと弾性を有する本発明のゲルは、客観的および主観的快適感を与える。
【0030】
本発明の装置のゲル層に使用するゲルは、小さな硬さを有することを特徴とする。この硬さは、特定圧縮値におけるゲルの変形のための力(force deflection)として測定することができる。ゲルの硬さは、任意の公知の方法で測定することができ、本発明で有用なゲルは特定範囲内の硬さを有するものとして指定することができる。本発明で特に有効な、ゲルの硬さを測定する1つの方法は、国際標準化機構(ISO)が指定している試験法ISO 3386-1である。
【0031】
ISO 3386-1には、各種材料の圧縮応力値の計算法が示されている。圧縮応力/ひずみ特性は、材料の耐負荷特性の尺度であり、またこの試験法には、圧縮変形のための力をキロパスカル(kPa)単位で計算する二つの式が示されており、その結果は材料の測定硬さを示す。
【0032】
特に、ISO 3386-1規格のもとで、本発明のゲルは、圧縮負荷変形試験による硬さ決定のための測定を実施することができる。特に、5 cm×5 cm×2.5 cmのゲル試料に、70%最大圧縮の圧縮力を加え、ゲル硬さが、40%圧縮時にゲルに加わる応力(kPa単位)として測定される。
【0033】
本発明で有用なゲルは、小さな測定可能(measurable)硬さを有する。好ましくは、このゲルは、90 kPaよりも小さな、より好ましくは80 kPaよりも小さな、さらに好ましくは70 kPaよりも小さな、もっとも好ましくは60 kPaよりも小さな測定可能硬さを有する。1つの実施形態においては、本発明で使用するゲルは、約0.5 kPa〜約50 kPaの範囲の測定可能硬さを有する。別の実施形態では、このゲルは、約1 kPa〜約40 kPa、約1.5 kPa〜約30 kPa、または約2 kPa〜約25 kPaの範囲の硬さを有する。
【0034】
本発明のもう一つの実施形態においては、装置のゲル層で使用するゲルは、特定範囲内の測定可能弾性を有することを特徴とする。固体力学においては、材料は、加えられた荷重によって形状が変化し、また荷重が除去されたとき、もとの形に戻るならば、弾性的に振舞うとみなされる。材料の弾性はそのスティフネスに逆比例する。
【0035】
本発明で使用するゲルの弾性を評価する1つの方法は、ゲルが示すヒステリシスの決定によるものである。ヒステリシスは、加えられる力にすぐにはしたがわないで、ゆっくりと反応するか、またはそのもとの状態に完全には戻らない系(通常は、物理的な系)の性質である。したがって、ヒステリシスは、材料たとえばゲルがゲルに加わる力の除去後そのもとの形に戻る能力として評価することができる。
【0036】
ヒステリシスの決定のための1つの方法においては、ゲルに、ゲルの圧縮を起こす力が加えられる。70%圧縮時のゲルの変形のための力を測定し、外力を除去して、ゲルの圧縮が除去されるようにする。次に、圧縮のないとき(すなわち、力の除去後)のゲルの変形を測定する。ゲルのヒステリシス(百分率として評価)は、指定された変形時の二つの力値の差である。したがって、低ヒステリシス百分率を示すゲルは、高度に弾性的である、言い換えると、もとの形に急速かつほぼ完全に戻る、と考えられる。高ヒステリシス百分率を示すゲルは、低度に弾性的である、言い換えると、もとの形によりゆっくり戻り、かつ完全には戻らない、と考えられる。
【0037】
本発明においては、ゲル層に使用するゲルは弾性が大きいが、高度に温度依存性の物理的性質を示さないのが有利である。たとえば、通常“記憶フォーム”と呼ばれている粘弾性フォームは、一般に、室温付近のガラス転移温度(Tg)を示す。低温環境下では、記憶フォーム製品は、硬くなり、低弾性になる傾向がある。逆に、高温環境下では、記憶フォーム製品は、軟らかくなり、弾性が大きくなる傾向がある。したがって、記憶フォーム製品は、周囲温度に応答して、変化する。温度変化には、体からの熱流によるものが含まれる。
【0038】
本発明で有用な高度に弾性的なゲルは、前記のような欠点を有しない。逆に、これらのゲルは温度に依存しない弾性(または、ヒステリシス百分率)を示す。1つの実施形態においては、本発明で使用するゲルは、約15%〜約80%の範囲の測定可能ヒステリシスを有する。別の実施形態においては、このゲルは、約20%〜約70%、約25%〜約60%、または約30%〜約50%の範囲のヒステリシスを有する。
【0039】
一般に、ゲルは、標準的な緩衝材料たとえばフォームに比してすぐれた圧力分布特性を示す傾向があるが、ゲルは、フォームに比して大きな熱伝導性を示す傾向もある。大きな熱伝導率は、好ましいゲル特性となるうるものであり、たとえば、冷却効果が喜ばれるような温い環境下では、そうである。しかし、他の状況下では、熱を使用者の体付近に保つために、低熱伝導率を有するのが好ましいこともある。したがって、本発明が有利なのは、本発明の支持装置のゲル層に使用するゲルが確定できる熱伝導率を有しうる場合である。
【0040】
熱伝導率(λ)は、通常、1メートルあたり、1 Kあたりのワット数(W m-1 K-1)で示され、材料が一定の条件下で熱を通過させうる能力をあらわす。λの値が小さいほど、その材料はより良い断熱材である。逆に、λの値が大きいほど、その材料はより良い熱導体である。
【0041】
支持装置のための代表的な緩衝材料であるフォームは、良好な断熱性を示す材料として知られている。たとえば、シートクッションとして使用されるような成形フォームは、一般に約0.04 W m-1 K-1のλ値を有し、構造および建築材料として使用されるフォームは、一般に約0.022 W m-1 K-1のλ値を有する。高度に断熱性の材料たとえばフォームがヒトが使用するための支持装置に使用される場合、ヒトの体で発生する熱は、フォームに接触すると、ただちにフォームの接触面に移動する。時間が経過すると、移動熱は、散逸のためのフォーム通過移動に際して大きな抵抗を受ける。ヒトの体で連続的に生成されるエネルギー(熱)は、温度上昇をもたらす。フォームは、このエネルギーを吸収することができず、この熱が接触領域から十分速く移動できないからである。言い換えると、フォームとの接触によって生じる最初の温かさは、快適なレベルのものでありうるが、最終的な熱蓄積は、使用者にとって不快なものになる。
【0042】
ポリウレタンゲルおよびここで述べる類似のゲルは、異なる熱特性を示し、一般に、フォームに比して、熱の良導体であると考えることができる。たとえば、ポリウレタンゲルは、約0.20 W m-1 K-1以上のλ値を有することができる。また、一般にポリウレタンゲルはフォームよりも大きな密度を有する。たとえば、ポリウレタンゲルは、一般に約600〜約1,100 kg/m3の範囲の密度を有しうるが、シートクッションのための発泡フォームは、一般に約30〜約85 kg/m3の範囲のものとすることができる。さらに、ポリウレタンゲルは、通常大きな熱容量を有する。材料中を大きな熱を通過させる能力、単位面積あたりの大きな材料質量、および材料温度を上昇させるのに必要な大きなエネルギーという組合せにより、時間経過による使用者とゲルとの熱交換のタイプが大きく異なってくる。
【0043】
したがって、本発明におけるゲル層に使用するゲルの熱交換能力は、さらに、支持装置たとえばマットレス、枕、着座装置、その他に関して使用者が望み味わう快適“感”に寄与する。したがって、ゲル層の存在により、快適感が増大しうる。これは、ゲルの圧力分布特性のためばかりでなく、ゲルの熱伝導率のためでもある。後者のため、体からの熱移動能力が高まり、したがって多くの支持装置に伴う、不快感をもよおしうる最終的な熱蓄積を避けることができる。
【0044】
好ましくは、本発明に有効なゲルは、1つ以上の充填材の添加により、λ値を変えることができる。本発明においては、充填材入りのゲルが有用である。というのは、これらのゲルは、前述のように、良好な快適感と圧力分布とを与えるために支持装置に使用することができ、一方使用者の体からの熱移動を小さくするために小さな熱伝導率を有することもできる。ゲルのそのようなλ値の低下により、ゲルの“冷たさ”が低下する。また、これにより、温かい感じを望む使用者のための支持装置の主観的快適感を増大させることができる。
【0045】
したがって、本発明の一つの実施形態においては、支持装置のゲル層に使用するゲルには、1つ以上の充填材が含まれる。充填材は、ゲルと混和することができ、ゲルのλ値を変えるのに有効な任意の材料とすることができる。1つの特定実施形態においては、充填材は、ゲルのλ値を低下させて、少なくともゲルの冷たさの感じが低下するような熱伝導率を示すλ値にするのが有効である。別の実施形態においては、充填剤は、ゲルから温かさが感じられるようなゲルのλ値まで低下させるのに有効である。したがって、固体から液体までいろいろな種類の材料を、本発明のゲル層に使用するゲルに対して充填材として使用することができる。
【0046】
本発明の1つの実施形態においては、充填材は固体材料から成る。好ましくは、この固体材料は粒子状物質から成る。この粒子の平均寸法は、充填材入りゲルを使用する装置に応じて変えることができ、また充填材入りゲルにおいて望ましいλ値に応じて変えることもできる。1つの実施形態においては、充填材は粗大粒子からなることができる。別の実施形態においては、充填材は微細な粒子(すなわち、粉末)から成ることができる。さらに別の実施形態においては、この充填材はナノ粒子から成ることができる。本発明の特定実施形態においては、充填材物質は、約0.05 mm〜約15 mmの平均直径を有する粒子から成ることができる。別の実施形態においては、この粒子は、約0.10 mm〜約10 mm、約0.10 mm〜約5 mm、または約0.10 mm〜約1 mmの平均直径を有する。
【0047】
本発明の別の実施形態においては、充填剤物質は、中空物質たとえば微小球から成る。そのような中空物質は天然のものまたは合成されたものとすることができるが、一般には、合成製造材料とすることが考えられる。たとえば、この材料は合成微小球から成ることができる。そのような微小球は、好ましくはポリマー材料たとえばポリオレフィン特にアクリロニトリルコポリマーまたはポリビニルクロリドから成る。合成微小球のほかに、いろいろな形状を有する他の種類の中空物質も、充填材入りゲルに使用することができる。たとえば、大体球状(また、風船状ともいえる)特性の中空物質のほかに、中空物質は、管状、矩形、その他の形状を有することもできる。
【0048】
本発明のもう一つの実施形態においては、充填材は、液体特に有機液体から成る。この液体は、好ましくは、ゲル層に使用するゲルに対して化学的に不活性なものであり、また、ゲルの製造における出発原料、中間体、および副生物(たとえば、ポリウレタンゲルの場合のイソシアネートおよびポリオール)である。したがって、液体充填材は、一般に好ましくは、たとえば可塑剤(たとえば、油、樹脂、および炭化水素誘導体)、炭化水素、および燃料、アルキルベンゼン、および液体エステルのような材料から選択される。より具体的に、この液体物質の例としては、非晶質または半結晶性パラフィン、ナフテン系オイルまたは樹脂、重油または軽油、アルキルベンゼン、エステル(好ましくは、多価アルコールと一塩基カルボン酸との生成物)、アルキルポリ芳香族化合物(alkylpolyaromaticcompound)、および植物油、ならびにこれらの液体の混合物を挙げることができる。
【0049】
本発明のもう1つの実施形態においては、充填材は1つ以上の気体から成ることができる。たとえば、充填材は周囲大気から成ることができる。別の実施形態においては、充填材として使用する気体は、実質的に純粋の気体たとえば窒素ガスまたは他の不活性ガスたとえばアルゴンガスから成ることができる。この気体は気相化合物たとえば二酸化炭素ガスから成ることもできる。
【0050】
本発明のさらに別の実施形態においては、充填材は1つ以上の活性剤から成ることもできる。ここで使用する活性剤という言葉は、使用者に治療効果を与えうる任意の添加剤を意味するものとする。たとえば、活性剤の例としては、ビタミン、鉱物、精油、香料、その他が挙げられる。
【0051】
一般に、充填材は天然または合成物質から成ることができる。たとえば、充填材は、天然物質たとえばコルク、木材、海綿、天然繊維(たとえば、木綿、羊毛、その他)、鉱物(たとえば、雲母その他の珪酸塩、その他の金属酸化物たとえばアルミン酸塩)、軽石、およびガラス(たとえば、繊維、ビーズ、その他)から成ることができる。本発明の充填材として有用な合成物質の例としては、合成繊維、合成微小球、およびその他のいろいろな合成物質が挙げられる。本発明の1つの特定実施形態においては、充填材は、コルク片、コルク粉、木材片、木材チップ、フォームフレーク、紡織繊維、布片、パラフィン、中空球、合成微小球、鉱物粒子、ガラスビーズ、気体、活性剤、ナノ粒子、およびこれらの混合物から成るグループから選択される。
【0052】
ゲルの充填剤含有率は、その充填材入りゲルが使用される装置によって変化しうるものであり、またその充填材入りゲルに望ましいλ値によっても変化しうる。本発明の1つの実施形態においては、充填材は、その充填材入りゲルの約5 vol%〜約95 vol%を占める。もう1つの実施形態の場合、充填材は、その充填材入りゲルの約10 vol%〜約90 vol%を占める。さらにもう1つの実施形態の場合、充填材は、その充填材入りゲルの約20 vol%〜約80 vol%を占める。さらに別の実施形態の場合、充填材は、その充填材入りゲルの約25 vol%〜約75 vol%を占める。
【0053】
充填材入りゲルに使用される充填材の種類および充填材入りゲルの充填材含有率に応じて、充填材入りゲルのλ値は、充填材を含まないゲルのλ値とは変えることができる。好ましくは、充填材入りゲル中に充填材が存在することにより、その充填材入りゲルのλ値が小さくなるようにする。言い換えると、好ましくは、充填材入りゲルが、充填材を含まないゲルの熱伝導率よりも小さな熱伝導率を有するようにする。
【0054】
本発明の1つの実施形態においては、充填材入りゲルは約0.20 W m-1K-1よりも小の熱伝導率を有する。もう1つの実施形態においては、充填材入りゲルは約0.15 W m-1K-1よりも小の熱伝導率を有する。さらにもう1つの実施形態においては、充填材入りゲルは約0.10 W m-1K-1よりも小の熱伝導率を有する。本発明の1つの特定実施形態においては、充填材入りゲルは約0.08 W m-1K-1以下の熱伝導率を有する。
【0055】
本発明の支持装置は、ゲル層(1つ以上の充填材を含んでいてもいなくても良い)のほかに、さらに、ゲル層の下に配置される1つ以上の付加支持層を有することができる。この付加支持層は、少なくとも使用者の体の一部に対する支持を与えるのに有用であると一般に当業者が考えている任意の種類の材料とすることができる。たとえば、この付加支持層は、フォーム層から成ることができ、このフォーム層は、一般に緩衝効果または支持効果を与えるのに有効な任意の各種実施形態とすることができる。付加支持層は、体への支持を与えるのに有効だと考えられるばねから成ることもできる。ばねの層は、使用者に対して有効な支持を与えると同時に快適感を与えることが当業者に知られている任意の実施形態とすることができる。たとえば、ばねの層は少なくとも部分的に相互連結された一連のばねから成ることができる。また、ばねの層は独立のコイルから成る一連のばねから成ることもできる。本発明のばね層は、上述の例に限定されるものではなく、そのほかのばね層の実施形態も含まれる。たとえば、本発明は、付加支持層が、支持を与えることが知られている他の材料、たとえば気体(たとえば、空気)、緩衝材、または詰め物、布層、さらにまた構造を与える材料、たとえば木材、金属、または硬質プラスチックから成る支持装置をも含む。
【0056】
本発明の1つの実施形態においては、支持装置は、ゲル層とフォーム材料から成る少なくとも1つの付加支持層とから成る。本発明のもう1つの実施形態においては、支持装置は、ゲル層とばねから成る少なくとも一つの付加支持層とから成る。本発明のもう1つの実施形態においては、支持装置は、ゲル層、ばねから成る少なくとも1つの付加支持層、およびフォーム材料から成る少なくとも1つの付加支持層から成る。本発明の1つの特定実施形態においては、1つ以上の付加支持層が、ゲル層の下に配置され、ゲル層の上に配置される付加支持層はないようにされる。
【0057】
これらの付加支持層とゲル層とは、一体取りつけすることができ、あるいは別々の物体とすることができる。一体取りつけというのは、これらの層が、二つの層が1つ以上の層の少なくとも部分的損傷なしでは分離できないようにすることによって、相互取りつけされるようにするものである。たとえば、これらの層は、たとえば接着剤、ステープル、縫製、溶接、その他によって、一体取りつけすることができる。さらに、これらの層は、化学的結合によって一体取りつけすることができる。たとえば、ゲル層がポリウレタンゲルから成り、付加支持層がポリウレタンフォームから成る場合、どちらの層も、ゲルまたはフォームの硬化(または、熟成)の前には、遊離イソシアネート基を有する。したがって、1つの層が硬化させられているとき、もう1つの層に隣接して、ゲルとフォームとの化学結合を生じさせることができる。
【0058】
フォーム支持層は、ゲル層との組合せにおいて特に有効である。それは、前述のように、結合が容易であるためばかりでなく、いろいろな組合せができるためである。たとえば、1つの実施形態においては、渦巻きフォーム(convoluted foam)を使用することができる。別の実施形態においては、フォームはゲル層の全部または一部を受容するための一つ以上の空洞を有することができる。そのような空洞が存在する場合、この空洞は、フォームの“頂”面、フォームの“底”面、またはフォームの頂面と底面との両方に備えることができる。
【0059】
付加支持層がフォーム層から成る、本発明の特定実施形態においては、フォーム層が特定の厚さを有するようにするのが特に有効でありうる。たとえば、本発明の装置が割合に大きく、フォーム層がかなりの量の装置構造物となる場合、たとえばマットレスの場合、フォーム層がかなりの厚さを有するようにするのが有利でありうる。たとえば、1つの実施形態においては、付加支持層が少なくとも約5 cmの厚さを有するフォーム層から成る。別の実施形態では、フォーム層は、少なくとも約6 cm、少なくとも約7 cm、少なくとも約8 cm、少なくとも約9 cm、または少なくとも約10 cmの厚さを有する。
【0060】
本発明の他の実施形態においては、付加支持層が前述のものよりも小さな厚さを有するようにするのが好ましいことがある。たとえば、支持装置が靴インサートである場合、この装置が最小限の厚さを有するのが好ましい。同様に、この装置がマットレストッパーである実施形態の場合、付加支持層が最小限の厚さを有して、マットレストッパーの全断面厚(overall profile)が大きくなるのを避けるようにするのが有利である。たとえば、1つの実施形態においては、付加支持層が約5 cmよりも小の厚さを有するフォーム層または布層とするのが有利である。別の実施形態の場合、付加支持層は、好ましくは、約4 cmよりも小、約3 cmよりも小、または約2 cmよりも小の厚さを有する。
【0061】
本発明の支持装置には、前述のゲル層および付加支持層のほかに、ゲル層を被覆するカバーをも付け加えることができる。このカバーは、一般に、本発明に含まれるいろいろなタイプの支持装置のためのカバーに普通に使用される任意の種類の材料から成ることができる。そのようなカバーは天然および合成材料とすることができる。また、このカバーは詰め物を有することもできる。たとえば、支持装置がマットレスの場合、カバーは詰め物入りマットレストッパーとすることができる。さらに、任意の種類の上張り材料(upholstering material)を、本発明のカバーとして使用することができる。したがって、ゲル層の存在は、本発明の支持装置の被覆に使用することのできるカバーの種類を制限するものではない。さらに、他の種類のカバーも本発明で使用される。たとえば、このカバーは、フィルムたとえばポリウレタンフィルム、塗膜たとえば乾燥または硬化状態で非反応性または非粘着性のポリマー、またはフォームから成ることができる。
【0062】
本発明のある種の実施形態においては、付加支持層の場合と同様に、カバー層を特定の厚さとするのが有効でありうる。一般に、カバー層は、最小限の厚さにして、治療上の利点とゲル層の快適感とを覆い隠すことがないようにすべきである。たとえば、1つの実施形態においては、このカバーはフォーム層から成る。この実施形態の場合、好ましくは、フォーム層は約5 cmよりも小の厚さを有する。別の実施形態では、このカバーは、好ましくは、約4 cmよりも小、約3 cmよりも小、または約2 cmよりも小の厚さを有する。
【0063】
ゲル層の存在は、本発明に含まれる支持装置の範囲を制限するものではない。したがって、本発明の支持装置には、マットレス、椅子、ソファー、リクライニングチェア、車椅子、枕、家具クッション(furniture cushion)、オフィス用品、自動車部品、マットレストッパー、その他が含まれうる。本発明の1つの特定実施形態においては、本発明の支持装置がベッドマットレスから成る。本発明の別の実施形態においては、本発明の支持装置が着座装置から成る。さらに別の実施形態においては、本発明の支持装置が枕からなる。さらに別の実施形態においては、本発明の支持装置がマットレストッパーから成る。
【0064】
少なくとも1つの付加支持層たとえばフォーム層とばね層とを被覆するゲル層を有する本発明の支持装置は、本発明の複数の側面からの利点をもたらすものである。前述のように、ゲル層は、支持装置を使用する各個人における圧力マッピングを改良する(すなわち、ゲルは、圧力点の外部および圧力点から離れた場所の圧力分布を改良する)。さらに、ゲルは、断熱材として作用し、一般に使用者の熱トラップとして作用する他の公知の支持材料たとえばフォームとは異なるパラメータ特性で、熱を吸収し、移動させる能力を有する。しかし、本発明の装置のゲル層は、また、1つ以上の充填材を含むことができ、したがって所定の仕様にしたがって、使用者の体からの熱流が最適化されて快適に感じられるようなλ値を有するようにすることができる。言い換えると、充填材入りのゲル層は、しばしば使用者に好ましい温かさの感じを与えるが、フォームのように熱トラップとしては作用しないようにすることができる。さらに、別の層たとえばフォームまたはばねと組み合わせて使用すると、ゲル層のいろいろな利点が、ゲル層を割合に薄くして、支持装置本体をより便利な材料で作ることによって与えられるようにすることができる。
実験
【0065】
以下、本発明を例に即してより詳しく説明する。これらの例は、本発明を説明するためのものであり、限定を意図するものではない。
【0066】
例1
ゲルの機械的性質の決定
本発明に有用な複数のポリウレタンゲルの機械的性質を、以下で述べるような試験方法を用いて決定した。各種のゲル試料を硬さとヒステリシスとに関して評価し、評価結果を表1に示した。
【表1】

【0067】
各ゲル試料に関して、試料形状、随意の充填材、使用例、硬さ(40%圧縮における変形のための力として測定)、および%ヒステリシスを示した。試料形状において、“通常”は、幅5 cm×長さ5 cm×厚さ2.5 cmの試料を示し、“円柱”は、直径5 cm、厚さ3 cmを有する円柱形試料を示し、“タワー”は、幅5 cm×長さ5 cm×厚さ1.7 mmで、それぞれ頂部から出ている、幅2 cm×長さ2 cm×厚さ0.8 cmの四つの正方形突起を有する試料である。各試料に関して示す用途は、単なる例であり、限定を意図するものではない。識別番号12の試料は、本発明で有用でないゲルを比較例として示すものであり、このゲルの硬さは、好ましい範囲の外にある。
【0068】
当業者は、上記の本発明の実施形態に、上記説明で示した教示内容の利点を有する変形を加えたものまた他の実施形態を多数考えることができる。したがって、本発明はここで開示した特定実施形態のみに限定されるものではなく、前記変形および他の実施形態も特許請求の範囲内に含まれると理解すべきである。ここでは特定の用語を使用したが、これらは一般的な意味で、説明のために使用しただけであり、本発明を限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体の少なくとも一部をその上に支持するための装置であって、
1つ以上の付加支持層を被覆するゲル層を有し、該ゲル層が、約0.5〜約50 kPaの範囲の硬さを有するゲルから成ること、
を特徴とする装置。
【請求項2】
当該ゲルが約15%〜約80%のヒステリシスを示すことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
当該ゲルが約25%〜約60%のヒステリシスを示すことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
当該ゲルが約1.5 kPa〜約30 kPaの範囲の硬さを有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
当該1つ以上の付加支持層が、フォーム層、ばね層、布層、気体層、木材層、金属層、プラスチック層、およびこれらの組合せから成るグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
さらに、当該ゲル層を被覆するカバーを有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
当該カバーが、布層、フィルム層、塗膜層、およびフォーム層から成るグループから選択されることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
マットレス、着座装置、枕、マットレストッパー、履物クッション、アームパッド、およびリストレストから成るグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
当該ゲル層の上に配置される付加支持層がないことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
当該ゲル層がポリウレタンゲルであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
フォーム層を被覆するゲル層を有するマットレスであり、前記ゲル層が、約0.5 kPa〜約50 kPaの範囲の硬さを有し、約15%〜約80%のヒステリシスを示すポリウレタンゲルから成ることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
当該ゲルの硬さがISO 3386-1の方法によって測定されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
当該硬さが、当該ゲルの5 cm×5 cm×2.5 cm試料の40%圧縮時の変形のための力を示すことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
当該ゲル層が、当該1つ以上の付加支持層の少なくとも1つに一体付着させられることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項15】
当該1つ以上の付加支持層がフォーム層から成ることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項16】
当該フォームが渦巻きフォームであることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
当該フォームが、当該ゲル層を受容するための1つ以上の空洞を有することを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項18】
当該ゲル層と当該フォーム層とが化学的に結合されることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項19】
当該フォーム層が少なくとも約5 cmの厚さを有し、当該装置が、さらに、前記ゲル層を被覆する少なくとも1つのカバーを有し、前記カバーが、布層、フィルム層、塗膜層、およびフォーム層から成るグループから選択され、前記少なくとも1つのカバーが約5 cmよりも小さな厚さを有することを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項20】
当該装置が、フォーム層を被覆するゲル層を有するマットレストッパーであり、前記ゲル層が、約0.5 kPa〜約50 kPaの範囲の硬さを有し、約15%〜約80%のヒステリシスを示すポリウレタンゲルから成り、前記フォーム層が約5 cmよりも小さな厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項21】
当該ゲルがある含有率の1つ以上の充填材を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項22】
当該1つ以上の充填材が、コルク片、コルク粉、木材片、木材チップ、フォームフレーク、紡織繊維、布片、パラフィン、中空球、合成微小球、鉱物粒子、ガラスビーズ、気体、活性剤、ナノ粒子、およびこれらの混合物から成るグループから選択されることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
当該1つ以上の充填材を含む当該ゲルが、約0.20 Wm-1K-1よりも小さな熱伝導率を有することを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項24】
当該1つ以上の充填材を含む当該ゲルが、約0.10 Wm-1K-1よりも小さな熱伝導率を有することを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
当該1つ以上の充填材が、当該ゲルの約5 vol%〜約95 vol%を占めることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項26】
体の少なくとも一部をその上に支持するための装置であって、
1つ以上の付加支持層を被覆する充填材入りゲル層を有すること、
を特徴とする装置。
【請求項27】
当該充填材入りゲル層が、コルク片、コルク粉、木材片、木材チップ、フォームフレーク、紡織繊維、布片、パラフィン、中空球、合成微小球、鉱物粒子、ガラスビーズ、気体、活性剤、ナノ粒子、およびこれらの混合物から成るグループから選択される1つ以上の充填材を含むことを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項28】
当該1つ以上の充填材が、平均直径約0.05 mm〜約15 mmを有する粒子状物質から成ることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項29】
当該充填材入りゲルが、前記1つ以上の充填材なしの該ゲルの熱伝導率よりも小さな熱伝導率を示すことを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項30】
当該充填材入りゲルが、約0.20 W m-1 K-1よりも小さな熱伝導率を有することを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項31】
当該充填材入りゲルが、約0.10 W m-1 K-1よりも小さな熱伝導率を有することを特徴とする請求項30に記載の装置。
【請求項32】
当該1つ以上の充填材が、前記ゲルの約5 vol%〜約95 vol%を占めることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項33】
当該1つ以上の充填材が、前記ゲルの約20 vol%〜約90 vol%を占めることを特徴とする請求項32に記載の装置。
【請求項34】
当該充填材入りゲル層が、約0.5 KPa〜約50 KPaの範囲の硬さを有するゲルから成ることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項35】
当該充填材入りゲル層が、約15%〜約80%のヒステリシスを示すゲルから成ることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項36】
当該1つ以上の付加支持層が、フォーム層、ばね層、布層、気体層、木材層、金属層、プラスチック層、およびこれらの組合せから成るグループから選択されることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項37】
さらに、当該充填材入りゲル層を被覆するカバーを有することを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項38】
当該カバーが、布層、フィルム層、塗膜層、およびフォーム層から成るグループから選択されることを特徴とする請求項37に記載の装置。
【請求項39】
マットレス、着座装置、枕、マットレストッパー、履物クッション、アームパッド、およびリストレストから成るグループから選択されることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項40】
フォーム層を被覆するゲル層を有するマットレスであって、
該ゲル層が、ISO 3386-1の方法によって測定した約0.5 kPa〜約50 kPaの範囲の硬さを有するゲルから成ること、
を特徴とするマットレス。
【請求項41】
当該ゲルが約15%〜約80%のヒステリシスを示すことを特徴とする請求項40に記載のマットレス。
【請求項42】
さらに、1つ以上のばね層を有することを特徴とする請求項40に記載のマットレス。
【請求項43】
さらに、前記ゲル層を被覆するカバーを有することを特徴とする請求項40に記載のマットレス。
【請求項44】
ばね層を被覆するゲル層を有するマットレスであって、
該ゲル層が、ISO 3386-1の方法によって測定した約0.5 kPa〜約50 kPaの範囲の硬さを有するゲルから成ること、
を特徴とするマットレス。
【請求項45】
当該ゲルが、約15%〜約80%のヒステリシスを示すことを特徴とする請求項44に記載のマットレス。
【請求項46】
さらに、1つ以上のフォーム層を有することを特徴とする請求項44に記載のマットレス。
【請求項47】
さらに、前記ゲル層を被覆するカバーを有することを特徴とする請求項44に記載のマットレス。
【請求項48】
フォーム層を被覆するゲル層を有するマットレストッパーであって、
前記ゲル層が、ISO 3386-1の方法によって測定した約0.5 kPa〜約50 kPaの範囲の硬さを有するゲルから成り、前記フォーム層が約5 cmよりも小さな厚さを有すること、
を特徴とするマットレストッパー。
【請求項49】
当該ゲルが約15%〜約80%のヒステリシスを示すことを特徴とする請求項48に記載のマットレストッパー。
【請求項50】
さらに、当該ゲル層を被覆するカバーを有することを特徴とする請求項48に記載のマットレストッパー。
【請求項51】
フォーム層を被覆するゲル層を有する枕であって、
該ゲル層が、ISO 3386-1の方法によって測定した約0.5 kPa〜約50 kPaの範囲の硬さを有するゲルから成ること、
を特徴とする枕。
【請求項52】
当該ゲルが約15%〜約80%のヒステリシスを示すことを特徴とする請求項51に記載の枕。
【請求項53】
さらに、当該ゲル層を被覆するカバーを有することを特徴とする請求項51に記載の枕。
【請求項54】
体の少なくとも一部をその上に支持するための装置であって、
ISO 3386-1の方法によって測定した約0.5 kPa〜約50 kPaの範囲の硬さを有し、約15%〜約80%のヒステリシスを示すゲルから成るゲル層を有すること、
を特徴とする装置。
【請求項55】
さらに、当該ゲル層の下に配置される1つ以上の付加支持層を有することを特徴とする請求項54に記載の装置。
【請求項56】
さらに、当該ゲル層を被覆するカバーを有することを特徴とする請求項54に記載の装置。
【請求項57】
マットレス、マットレストッパー、および枕から成るグループから選択されることを特徴とする請求項54に記載の装置。
【請求項58】
当該ゲル層が、さらに、コルク片、コルク粉、木材片、木材チップ、フォームフレーク、紡織繊維、布片、パラフィン、中空球、合成微小球、鉱物粒子、ガラスビーズ、気体、活性剤、ナノ粒子、およびこれらの混合物から成るグループから選択される1つ以上の充填材を含むことを特徴とする請求項54に記載の装置。

【公表番号】特表2008−532720(P2008−532720A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502500(P2008−502500)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【国際出願番号】PCT/IB2006/000603
【国際公開番号】WO2006/100558
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507314730)テクノゲル イタリア エス.アール.エル. (3)
【Fターム(参考)】