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ゲル強度に優れた温度及びpH敏感性ブロック共重合体及びその製造方法、並びにそれを用いた薬物伝達体
説明

ゲル強度に優れた温度及びpH敏感性ブロック共重合体及びその製造方法、並びにそれを用いた薬物伝達体

【課題】ゲル強度に優れた温度及びpH敏感性ブロック共重合体及びその製造方法、並びにそれを用いた薬物伝達体を提供する。
【解決手段】(a)ポリエチレン系列化合物単独(A)または生分解性ポリエステル高分子との共重合体(B)と、(b)前記ポリエチレン系列化合物単独(A)または共重合体(B)にポリウレタン系列オリゴマー(C)をカップリングさせ形成された多重ブロック共重合体であるヒドロゲルであって、温度敏感性である親水性と疎水性基とを共に有する両親性特性及び周辺環境のpHによってイオン化特性が変化するpH敏感特性によって、高分子ヒドロゲル構造を形成することができ、これによって体内pH変化による標的指向的薬物伝達体として用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度及びpH敏感性ブロック共重合体及びその製造方法、並びにそれを用いた薬物伝達体に関するものであり、より詳しくは、温度敏感性且つ親水性なポリエチレングリコール系列化合物の単独または疎水性な生分解性ポリエステルとの共重合体のpHによってイオン化特性を示すポリウレタン系列オリゴマー化合物と多重ブロック共重合体とを誘導することによって、ゲル強度に優れ、体内温度及びpH変化に応じて標的指向的な薬物放出が可能な多重ブロック共重合体及びその製造方法、並びにそれを用いた薬物伝達体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体適合性高分子においては、診断及び治療を含める各種医療行為及び身体の一部に代わるために使われる重合体が使われるが、最近は、生分解性高分子または疎水性及び親水性の基を共に有する両親性高分子に分子の構造を変化させ、またはブロック共重合体でヒドロゲルを形成させ、ゾルーゲル転移現象を調節するような薬物伝達体に対する工夫が盛んになされてきている。
【0003】
米国特許第4,942,035では、親水性高分子であるポリアルキレングリコールと生分解性ポリエステル高分子であるポリラクチドまたはポリグリコールライド、ポリカプロラクトンとの共重合体を用いて、既存のプルロニック(Pluronic)と呼ばれたポリエチレングリコールとポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドブロック共重合体が体内で分解されないという不都合を改善していた。
【0004】
また、米国特許第5,476,909号では、生分解性ポリエステル高分子A−B−A形態の3重ブロック共重合体を示しているが、疎水性ブロック(A)はポリラクチド(PLA)、ポリグリコライド(PGA)及びそれらの共重合体に限定し、親水性ブロック(B)もポリエチレングリコール(PEG)及びその誘導体に限定している。
【0005】
また、米国特許第6004573号では、疎水性ブロックがPLAとPGAとの共重合体で、親水性ブロックがPEGからなる生分解性低分子量の3重ブロック共重合体であって、疎水性部分の含量を増加させ、5℃〜25℃では清い液体であるゾル(sol)の状態に存在し、人体内への投入時には自動に体温(37℃)によってゲル(gel)の形態、即ち水を担持している半固形のヒドロゲル(hydrogel)の形態に転移され、人体内では持続的にゲルの形態に不溶性を示して、可逆的に熱的ゲル化が誘導されてゲル内の薬物を徐々に放出させるような薬物伝達体として用いられる、両親性のブロック共重合体が提案されている。
【0006】
また、米国公開特許第20060239961号では、中心のポリプロピレンオキシドまたはポリブチレンオキシドブロックと両方のエチレンオキシドブロックとの形態で、エステル結合のような加水分解が可能な結合で連結された2種以上のアルキレンオキシドオリゴマーからなる両親性3重共重合体として、生理状態ではオリゴマーに加水分解され、水溶液上では熱的に可逆的であり、加水分解が可能なヒドロゲル形態の薬物伝達体やその他の生体医療用に用いられ得る高分子が提案されている。
【0007】
しかし、温度にのみ敏感なゾル−ゲル転移特性を示すブロック共重合体であるので、体内に注射する過程にて体内の温度によって注射針の温度が体内の温度と熱的平衡に到達して、体内に完全に注入される前にゲル化が生じることによって、注射針が塞がるような現象などの問題が生じていた。
【0008】
また、上記の技術において、薬物の担持したヒドロゲルが人体に十分に注射されても、ヒドロゲルのゲル強度が十分に強くなく、人体への注射の初期にヒドロゲルの生分解による薬物の初期過多放出現象が生じる等、長期間に渡って薬物の放出が調節されないという不都合をもたらす。
【0009】
その他にPLA、PGAまたはポリカプロラクトン(PCL)などから成る疎水性部分がpH敏感性を示していると報告されているが、実に体内pHに適用するほどに敏感でないので、薬物伝達分野において実用化するには適当でなかった。
【0010】
一方、大韓民国公開特許公報第2000−0012970号では、スルホンアミド基を含むpH敏感性高分子及びその製造方法を示しているが、該スルホンアミド単量体とジメチルアクリルアミドあるいはイソプロピルアクリルアミドとのランダム共重合によって形成されたブロック共重合体ヒドロゲルの場合、pH敏感性付き成分が陰イオン性電荷を帯びて、主に陽イオン性電荷を帯びる薬物の伝達体として、その用途が限定されてきた。
【0011】
また、大韓民国登録特許第665672号では、pH敏感性成分としてポリ(β−アミノエステル)を用いたブロック共重合体ヒドロゲルの製造方法を示しており、温度だけでなくpHにも敏感なブロック共重合体を合成し、体内と似たpH7.0〜7.4付近でゲル化が行われ、該範囲以下ではゾル化され、体内注入時に従来温度敏感性ヒドロゲルで見ることができた注射針の塞がり現象が発生することなく、体内で安全にゲルを形成することを見出し、これによって製造されたブロック共重合体が特定な温度及び特定なpHで標的放出の可能な薬物放出用伝達体として応用することができるというものが提示されていた。
【0012】
ただし、該ヒドロゲルの場合、主に主鎖がエステル結合とアミド結合とから成り、ヒドロゲルの人体内への注射時、初期に急激にゲル強度が低下し、長期間の薬物放出を要する薬物伝達体としての使用には制限があるという不都合がある。
【特許文献1】大韓民国公開公報2000−0012970
【特許文献2】大韓民国登録特許665672
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の問題を解決するために、本発明の目的は、体内のpHに敏感してイオン化特性を示す成分であるポリウレタン系列オリゴマーを合成して、生分解性高分子からなる温度敏感性ブロック共重合体とのカップリング反応によって、温度だけでなくpHにも敏感なゲル強度に優れた新たな両親性ブロック共重合体、即ちゲル強度に優れた温度及びpH敏感性ブロック共重合体及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、該ブロック共重合体に封入できる生理活性物質を含むヒドロゲル型薬物伝達体を提供することにある。
【0015】
また、本発明のさらに他の目的は、該ブロック共重合体の構成成分、それらのモル比、分子量及び/又はブロック内官能基を適宜変更して、癌細胞だけでなく遺伝子変移または他の応用分野に標的指向的にデザインして、それを有用に応用する、ゲル強度に優れた温度及びpH敏感性ブロック共重合体及びその製造方法、並びにそれを用いた薬物伝達体を提供することにある。
【0016】
また、本発明のさらに他の目的は、薬物の初期過多放出(initial burst release)現象を抑制して、長期間に渡って薬物放出が可能な、ゲル強度に優れた温度及びpH敏感性ブロック共重合体及びその製造方法、並びにそれを用いた薬物伝達体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するために、本発明は、温度及びpH敏感性ブロック共重合体であって、(a)ポリエチレン系列化合物(A)単独または生分解性ポリエステル高分子との共重合体(B)と、(b)ポリウレタン系列オリゴマー(C)とを含む、ゲル強度に優れた温度及びpH敏感性ブロック共重合体を提供する。
【0018】
また本発明は、前記オリゴマー(C)が、ポリエチレン系列化合物単独(A)または共重合体(B)にカップリングして結合した3重又は5重ブロック共重合体、又は多重ブロック共重合体を提供する。
また本発明は、前記ポリエチレン系列化合物が、下記化学式


(ここで、Rは水素または炭素数1〜5のアルキル基であり、nは11〜45の範囲の自然数である)
によって示される多重ブロック共重合体を提供する。
【0019】
また本発明は、前記ポリエチレン系列化合物(A)の数平均分子量が1,000〜5,000g/mol範囲であるブロック共重合体を提供する。
【0020】
また本発明は、該ポリエチレン系列化合物がポリエチレングリコール(PEG)であり、数平均分子量が1,000〜2,000g/mol範囲であるブロック共重合体を提供する。
【0021】
また本発明は、前記生分解性高分子が、生分解性脂肪族ポリエステル高分子であるブロック共重合体を提供する。
【0022】
また本発明は、前記生分解性高分子が、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコライド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(カプロラクトン−ラクチド)ランダム共重合体(PCLA)、ポリ(カプロラクトン−グリコライド)ランダム共重合体(PCGA)及びポリ(ラクチド−グリコライド)ランダム共重合体(PLGA)、またはこれらの混合物から成る群より1以上選択されるブロック共重合体を提供する。
【0023】
また本発明は、前記ポリエチレン系列化合物と生分解性高分子との分子量比が、1:1〜1:3の範囲であるブロック共重合体を提供する。
【0024】
また本発明は、前記ポリウレタン系列オリゴマーが、ジイソシアネート化合物とダイオール化合物とを重合して形成されたブロック共重合体を提供する。
【0025】
また本発明は、前記ジイソシアネートが、次の化学式
OCN−(CH)n−NCO
(ここで、nは整数4〜10の繰り返し単位数である)
によって示されるブロック共重合体を提供する。
【0026】
また本発明は、前記ジイソシアネートが、1,2−ジイソシアネートエタン、1,4−ジイソシアネートブタン、1,3−ジイソシアネートブタン、1,6−ジイソシアネートヘキサン、1,7−ジイソシアネートヘプタン、1,8−ジイソシアネートオクタン、1,9−ジイソシアネートノナ、1,10−ジイソシアネートデカン、1,12−ジイソシアネートデカン、ビス(4−イソシアネートサイクロエチル)メタン、ビス(4−イソシアネートフェニル)メタン、ビス(4−イソシアネートフェニル)エーテル、ビス(4−イソシアネートフェニル)スルホン、4,4'−ダイフェニルメタンジイソシアネート、水素化済の4,4'−ダイフェニルメタンジイソシアネートからなる群より1以上選択されるブロック共重合体を提供する。
【0027】
また本発明は、前記ダイオール基が、主鎖に3次アミンを含む下記化学式


または


(ここで、R及びR'は炭素原子数1〜8のアルキル基である)
によって示されるブロック共重合体を提供する。
【0028】
また本発明は、前記ダイオール基が、1,3−ビス{1−(2−ヒドロキシエチル)−4−フェリーディール}プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1,4−ビス(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペラジン、及び1,4−ビス(2−ヒドロキシフロロフェニル)ピペラジン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン モノ−ラクテート[1,4−bis(2−hydroxyethyl)piperazine mono−lactate]、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン ジ−ラクテート[1,4−bis(2−hydroxyethyl)piperazine di−lactate]、1,3−{1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ピペリジル}プロパン モノ−ラクテート[1,3−{1−(2−hydroxyethyl)−4−piperidyl}propan mono−lactate]、1,3−{1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ピペリジル}プロパン ジ−ラクテート[1,3−{1−(2−hydroxyethyl)−4−piperidyl}propan di−lactate]から成る群より1以上選択されるブロック共重合体を提供する。
また本発明は、前記ジイソシアネートとダイオールとの反応モル比が、1:1〜1:3であるブロック共重合体を提供する。
【0029】
また本発明は、前記オリゴマーの数平均分子量が、10,000〜20,000g/molであるブロック共重合体を提供する。
【0030】
また本発明は、前記ブロック共重合体が、3重又は5重以上、又は3重以上から成るブロック共重合体を提供する。
また本発明は、前記ブロック共重合体が、下記一般式

または

によって示される化合物群より選択されることであるブロック共重合体を提供する。
【0031】
また本発明は、前記ブロック共重合体が、疎水性ブロックと親水性ブロックとの分子量比1:1〜1:3であるブロック共重合体を提供する。
【0032】
また本発明は、前記3重以上の多重ブロック共重合体の数平均分子量が、14,000〜30,000であるブロック共重合体を提供する。
【0033】
また本発明は、ゲル強度に優れた温度及びpH敏感性ブロック共重合体の製造方法であって、(a)ポリエチレン系列化合物単独(A)または生分解性ポリエステル高分子との共重合体(B)を合成するステップと、(b)前記ポリエチレン系列化合物単独(A)または前記共重合体(B)にポリウレタン系列オリゴマー(C)をカップリングさせるステップとを含む、ゲル強度に優れた温度及びpH敏感性注射型ヒドロゲルの製造方法を提供する。
【0034】
また本発明は、前記ポリエチレン系列化合物単独(A)または前記共重合体(B)を合成した後、前記共重合体にヒドロキシ基を導入するステップを、さらに含む方法を提供する。
【0035】
また本発明は、前記共重合体の合成が、温度130〜150℃、12〜48時間行われる方法を提供する。
【0036】
また本発明は、前記ステップの各々が、オクト酸錫(stannous octoate)、塩化錫(stannous chloride)、酸化鉄(iron oxide)、アルミニウムトリイソプロポキシド(aluminum triisopropoxide)、CaH、Zn、塩化リチウム(lithium chloride)、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノラート(tris(2,6−di−tert−butylphenolate))から成る群より1以上選択された触媒を利用可能である方法を提供する。
【0037】
また本発明は、温度及びpH敏感性ブロック共重合体の製造方法であって、窒素雰囲気にてポリエチレングリコールメチルエーテルとε−カプロラクトンとを重合するステップと、前記重合体をメチレンクロライドに溶解させて未反応物を除去するステップと、前記未反応物の除去された重合体をクロロホルムに溶解させ、ポリウレタンブロックを形成するために、1,6−ジイソシアネートヘキサン及び1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、または1,3−ビス{1−(2−ヒドロキシエチル)−4−フェリーディール}プロパン(HEP)と反応するステップと、前記反応物を過量のエチルエーテルに溶解させて未反応物を除去するステップとを含む、ゲル強度に優れた温度及びpH敏感性ブロック共重合体の製造方法を提供する。
【0038】
また本発明は、(a)前記ブロック共重合体または前記方法で製造されたブロック共重合体と、(b)前記ブロック共重合体内に封入可能な生理活性物質とを含む高分子ヒドロゲル型薬物伝達体を提供する。
【0039】
また本発明は、前記高分子ヒドロゲル型のブロック共重合体に封入可能な生理活性物質としては特別な制限なしに利用可能で、その非制限的な例としては、インシュリン、エクセンジン−4、人体成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(erythropoietin、EPO)、造血成長因子(Granulocyte Colony stimulating factor、G−CSF)、GM−CSF(Granulocyte−macrophage stimulating factor)などのようなタンパク質薬物と、抗癌剤、抗菌剤、ステロイド類、消炎鎮痛剤、性ホルモン、免疫抑制剤、抗ウィルス剤、麻酔剤、抗嘔吐剤または抗ヒスタミン剤などの薬物と、前記の成分以外に当業界に公知の通常な添加剤、例えば賦形剤、安定化剤、pH調整剤、抗酸化剤、保存剤、結合剤または崩解剤等から成る群より1以上選択されるの薬物伝達体を提供する。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、親水性高分子と生分解性高分子とからなるブロック共重合体にpH変化に応じて多様なイオン化度を示すポリウレタン系列オリゴマーをカップリング反応させることによって、温度敏感性以外に、pH敏感性も共に与えられると共に、前述の温度敏感性ヒドロゲルの問題を解決することができる効果が奏する。
【0041】
さらに、人体注射時のゲル強度に優れて、初期に生分解されて薬物の初期過多放出現象を抑制することができる、より安定な形態のヒドロゲルを形成することができる。
【0042】
さらにまた、温度及びpH敏感性ブロック共重合体は、体内で安全なので医療用、遺伝子伝達、薬物伝達分野、特に薬物担持及び放出などの西方型薬物伝達体として適用されると共に、病気の診断のための物質を非正常細胞に伝達することによって、診断イメージング(diagnostic imaging)などの診断用途に応用できる。
【0043】
さらにまた、正常体内条件と同一のpH7.0〜7.4の範囲ではヒドロゲルを形成し、癌細胞のような非正常条件であるpH7.0以下ではゾル状態で維持されて癌細胞標的指向的なデザインを適用しているが、該ブロック共重合体の構成成分、これらのモル比、分子量及び/又はブロック内官能基を適宜変更することによって、癌細胞だけでなく遺伝子変移または他の応用分野に標的指向的にデザインして、これを有用に応用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な一実施の形態を詳記する。まず、各図面において、同じ構成要素または部品は出来るだけ同じ参照符号を示していることに留意されたい。本発明を説明するに当たって、関連した公知の機能あるいは構成に対する具体的な説明は、本発明の要旨を曖昧でなくするために省略する。
【0045】
本明細書で使われる程度の用語、略、実質的に、等は言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示される時、その数値でまたはその数値に近接な意味として使われ、本発明の理解を助けるために正確または絶対的な数値が言及された開示内容を、非良心的な侵害者が不当に用いるのを防止するために使われる。
【0046】
本発明は、親水性で且つ温度に敏感なポリエチレン系列化合物単独または生分解性高分子化合物との共重合体に、pHによってイオン化度が変化するポリウレタン系列オリゴマー系列オリゴマーをカップリングさせることによって、体内温度だけでなく体内のpHにも敏感な、新規な温度及びpH敏感性多重ブロック共重合体及びこの製造方法、並びにそれを用いたヒドロゲル薬物伝達体を提供することを特徴とする。
【0047】
本発明による温度及びpH敏感性ブロック共重合体の構成成分の一つは、ポリエチレン系列化合物(A)と生分解性高分子との共重合体(B)である。該共重合体(B)は分子内ポリエチレン系列化合物の親水性と生分解性高分子の疎水性とが共存することによって、温度変化によるゾル−ゲル転移が可能である。
【0048】
該共重合体(B)を構成するポリエチレン系列化合物は、当分野で知られている通常なポリエチレン系列化合物を制限なしに使用可能で、特に、下記化学式1によって示されるポリエチレン系列化合物が望ましい。
[化学式1]


前記式において、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、nは11〜45の範囲の自然数である。
【0049】
前記ポリエチレン系列化合物の数平均分子量(Mn)は、特に制限がないが、1,000〜5,000g/mol範囲が望ましい。特に、前記化学式1中のRが水素であるポリエチレングリコール(PEG)の場合、1,000〜2,000g/molの範囲が望ましく、Rがメチル基であるメトキシポリエチレングリコール(MPEG)の分子量は1,000〜5,000g/molの範囲が望ましい。
【0050】
前記のポリエチレン系列化合物の分子量が前記範囲を外している場合、即ち1,000未満の場合と5,000g/molを超えている場合、ゲルの形成が十分に行われないだけでなく、ゲルが形成されるにしてもゲル強度などの弱化によって、実際の薬物伝達用伝達体として適用するに難しい点がある。
【0051】
前記共重合体(B)を構成する生分解性高分子は、当分野において公知されている通常な生分解性高分子を用いてもよく、望ましくは、生分解性脂肪族ポリエステル高分子である。該生分解性高分子の非制限的な例としては、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコライド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(カプロラクトン−ラクチド)ランダム共重合体(PCLA)、ポリ(カプロラクトン−グリコライド)ランダム共重合体(PCGA)、ポリ(ラクチド−グリコライド)ランダム共重合体(PLGA)またはそれらの混合形態などがある。
【0052】
前記共重合体(B)のうち、ポリエチレン系列化合物と生分解性高分子との分子量比は特別な制限がないが、特に1:1〜1:3の範囲が望ましい。該分子量比が1:1未満の場合、ゲル形成がなされなく、1:3を超えている場合は、疎水性の強さが増加してブロック共重合体が水に溶解しないという不都合が生じてしまう。
【0053】
また、前記共重合体のうち、生分解性高分子がPCLA、PCGAまたはPLGAの場合、それらのモル比を適宜調節することによって、温度及びpH敏感性効果を上げることができる。
【0054】
本発明による温度及びpH敏感性ブロック共重合体の構成成分の他の一つには、pHによって多様なイオン化度を示す化合物ならば特別な制限なしに使用可能で、特に疎水性及びpH敏感性の両方を有するポリウレタン系列化合物から形成されたオリゴマー(C)が望ましい。
【0055】
前記ポリウレタン系列オリゴマーは、温度敏感性ブロックとの反応が可能なジイソシアネート基(NCO−R−NCO)とダイオール基(HO−R'−OH)などの官能基を備えることが更に望ましいが、これは重合反応によって本発明によるブロック共重合体を容易に製造するためである。特に、前記ポリウレタン系列オリゴマー化合物は、pH7.0以下でイオン化される3次アミン基を含むダイオール基を用いることによって、体内pHに敏感性を示すことができる。
【0056】
ここで使われたジイソシアネート化合物は、下記化学式2のように示され、非制限的な例としては1,2−ジイソシアネートエタン、1,4−ジイソシアネートブタン、1,3−ジイソシアネートブタン、1,6−ジイソシアネートヘキサン、1,7−ジイソシアネートヘプタン、1,8−ジイソシアネートオクタン、1,9−ジイソシアネートノナ、1,10−ジイソシアネートデカン、1,12−ジイソシアネートデカン、ビス(4−イソシアネートサイクロエチル)メタン、ビス(4−イソシアネートフェニル)メタン、ビス(4−イソシアネートフェニル)エーテル、ビス(4−イソシアネートフェニル)スルホン、4,4'−ダイフェニルメタンジイソシアネート、水素化済の4,4'−ダイフェニルメタンジイソシアネートからなる群より1以上選択されたことであってもよい。
[化学式2]
OCN−(CH) n−NCO
前記式において、nは整数4〜10である。
【0057】
また、ダイオール化合物として、1,3−ビス{1−(2−ヒドロキシエチル)−4−フェリーディール}プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1,4−ビス(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペラジン、1,4−ビス(2−ヒドロキシフロロフェニル)ピペラジンから成る群より1以上選択されたことであってもよい。
【0058】
一方、ここで使われたpH敏感性成分として主鎖に3次アミンのあるダイオール化合物は、下記化学式3のように示すことができ、その非制限的な例としては1,3−ビス{1−(2−ヒドロキシエチル)−4−フェリーディール}プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1,4−ビス(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペラジン、1,4−ビス(2−ヒドロキシフロロフェニル)ピペラジン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン モノ−ラクテート、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン ジ−ラクテート、1,3−{1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ピペリジル}プロパン モノ−ラクテート、1,3−{1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ピペリジル}プロパン ジ−ラクテートなどがある。
[化学式3]


または


前記化学式3において、R及びR'は炭素原子数1〜8のアルキル基である。
【0059】
pH敏感性を示すポリウレタン系列オリゴマーの製造時、ジイソシアネート化合物とダイオール化合物との反応モル比は1:1〜1:3の範囲が望ましい。
【0060】
前記ダイオール系列化合物のモル比が1:1未満1:3を超えている場合、重合する高分子の分布が広くなり、pH敏感性が低下し、ブロック共重合体のブロック長さの調節が難しくなる。
【0061】
前記のポリウレタンから形成されたオリゴマーの数平均分子量は特別な制限はないが、10,000〜20,000g/mol範囲が望ましい。該分子量が10,000g/mol未満の場合、pH変化によるゾル−ゲル転移挙動が、人体内条件である約pH7.0〜7.4、温度37℃で示されなくなり、低分子量によってゲル強度が低下し、20,000g/molを超えている場合にも、人体内条件であるpH7.0〜7.4、温度37℃で、温度及びpH敏感性が同時に示されることが難しくなる。
【0062】
前記のpH敏感性付きポリウレタン系列オリゴマー系列オリゴマーと温度敏感性付きポリエチレン単独または生分解性高分子との共重合体とを適当な比率で反応して得た3重または5重ブロック共重合体のポリウレタン系列オリゴマー系列オリゴマーは、自体内に存在する3次アミン基によってpHによって水への溶解度が変わるイオン化特性を有するようになって、体内pH変化によってヒドロゲルを形成するか、またはゾル状態を維持することができる。
【0063】
該化合物は当業界において公知の通常な方法によって製造されてもよく、その一実施例が挙げると、両方末端がヒドロキシ基で構成された温度敏感性高分子ブロックにジイソシアネート基のウレタン反応によって、両方末端がイソシアネート基で形成された化合物を重合させ、ここにpH敏感性成分である3次アミン基付きダイオール基を適当な比率で反応させて、最後に温度及びpHに敏感なブロック共重合体ヒドロゲルを得ることができる。
【0064】
上記の構成成分のうち、ポリエチレングリコール系列化合物(A)と生分解性高分子との共重合体(B)及びポリウレタン系列オリゴマー(C)とがカップリングして形成された本発明のブロック共重合体は、3重以上の多重ブロック共重合体が適切で、とりわけ、3重または5重の形態が望ましい。特に、下記化学式4〜6によって示される。
[化学式4]
HO−PEG−OH
または、
HO−PCLA−PEG−PCLA−OH
[化学式5]

または、

[化学式6]

または、

【0065】
前記化学式4〜6における3重または5重のブロック共重合体は、前記のポリエチレングリコールブロックの親水性及び生分解性高分子ブロックの疎水性の両親性と、ポリウレタンオリゴマーブロックのpH敏感性または疎水性によりpH変化に応じてヒドロゲルを形成することができ、またはゾル−ゲル転移を誘導することができ、特に体内pH変化による敏感性が要求される用途、例えば薬物放出用伝達体または診断用途などにおいて満足な結果を導き出すことができる。
【0066】
この時、前記化学式5によって示されるポリエチレングリコール単独(HO−PEG−OH)または生分解性高分子との3重ブロック共重合体は、ポリエチレン系列化合物と生分解性ポリエステル高分子との共重合体(HO−PLCA−PEG−PCLA−OH)のうち、両方末端にヒドロキシ基(−OH)があるため、ジイソシアネート基(OCN−R'−NCO)との反応が可能で、その後に両方にポリウレタンオリゴマーのカップリングされたブロック構造を有する。
【0067】
前記3重または5重のブロック共重合体の数平均分子量の範囲は特別な制限はないが、14,000〜30,000g/mol程度が適している。ここには、温度に敏感なブロック共重合体を製造するために、分子量が3,000−5,000g/molの生分解性ポリエステル高分子と、分子量が1,000〜5,000g/molの分子量を有するポリエチレン系列化合物を用いるようになるが、これは疎水性ブロックと親水性ブロックとの分子量比が1:1〜1:3を有するようにするためである。該比が1:1未満の場合、ゲル形成がなされなく、1:3を超えている場合は、疎水性の強さが増加してブロック共重合体が水に溶解しないという不都合が生じてしまう。
【0068】
本発明による温度及びpH敏感性ブロック共重合体には、前述の成分以外に通常使われるその他成分または添加剤などが含まれてもよい。
【0069】
前記ポリエチレン系列化合物(A)と生分解性高分子との共重合体(B)及びポリウレタン系列オリゴマー(C)とを用いて、本発明による温度及びpH敏感性ブロック共重合体を製造するためには、ラジカル重合、陽イオン重合、陰イオン重合、縮合重合など、当技術分野において知られている、いくつかの重合方法のうちいずれかの方法を用いてもよい。
【0070】
以下、本発明による温度及びpH敏感性ブロック共重合体の製造方法の一つの実施形態を挙げと、a)ポリエチレン系列化合物単独(A)または生分解性高分子とを重合させて共重合体(B)を製造するステップと、b)生成されたポリエチレン系列化合物と生分解性高分子との共重合体(B)にヒドロキシ基を導入するステップと、c)生成された共重合体にジイソシアネート基とダイオール基とから構成されるポリウレタン系列オリゴマーをカップリングさせるステップとから成ることができる。
【0071】
まず、ポリエチレン系列化合物と生分解性ポリエステル高分子とを重合させて共重合体を形成するが、該反応は例えば、下記反応式1のように示すことができる。
[反応式1]

【0072】
ポリエチレン系列化合物と生分解性ポリエステル高分子との共重合反応は、開環重合反応を用いることが望ましく、この時、重合温度及び時間は特別な制限はないが、130〜150℃及び12〜48時間が望ましい。また、反応性のために触媒を用いてもよい。特に使用可能な触媒としてはオクト酸錫(stannous octoate)、塩化錫(stannous chloride)、酸化鉄(iron oxide)、GeO、Sb、SnO等、アルミニウムトリイソプロポキシド(aluminum triisopropoxide)、CaH、Zn、塩化リチウム(lithim chloride)、トリス(2,6−ジ−ターシャリー−ブチルフェノラート(tris(2,6−di−tert−butylphenolate))などがある。また、疎水性強さを多様化するために、前述の生分解性高分子の分子量または種類などを適宜調節してもよい。
【0073】
ポリエチレン系列オリゴマーと生分解性高分子との開環重合反応によって形成されたポリカプロラクトン−b−ポリ乳酸−ポリエチレン−b−ポリ乳酸−ポリカプロラクトンの3重ブロック共重合体にジイソシアネート基を導入するステップは、ポリエチレングリコール−生分解性ポリエステル共重合体末端のヒドロキシル基(−OH)にジイソシアネートのウレタン反応によってジイソシアネート基を導入することが望ましい。該反応は下記反応式2のように示すことができる。
[反応式2]

【0074】
ジイソシアネート基の導入されたポリエチレン系列化合物と生分解性ポリエステル高分子との共重合体(B)は、ダイオール基(HO−R−OH)とジイソシアネート基(OCN−R−NCO)とのウレタン反応によって本発明による温度及びpH敏感性5重ブロック共重合体を製造することができ、該反応は下記反応式3によって示すことができる。
[反応式3]

前記ステップの反応温度及び時間は、特別な制限がない。
【0075】
ポリウレタン系列オリゴマー製造に使われるジイソシアネート化合物及び3次アミンを含むダイオール化合物は、前述のものと同じである。前記のような方法によって製造された多重ブロック共重合体は前述のように、親水性ブロック、疎水性ブロック及びpH変化に応じて多様なイオン化度を示すポリウレタン系列オリゴマーが結合した形態であるので、温度敏感性と共にpH敏感性を示すことができる。
【0076】
実際に、このような方法で製造されたポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン−ポリラクチド−ポリウレタン(PU−PCLA−PEG−PCLA−PU)ブロック共重合体は、FT−IR及びH−NMRを用いて各々の作用基の導入及び各末端基の反応を確認することができ、GPC(Gel Permeation Chromatography)を用いたブロック共重合体の分子量の増加によって、ポリエチレングリコール系列化合物と生分解性高分子との共重合体及びポリウレタン系列オリゴマーのカップリングされた構造であることを確認することができた。また、pH敏感性を確認するために、温度に応じてpHを変化させながらゾル−ゲル転移特性の変化を測定し、これによって本発明の多重ブロック共重合体がpH敏感性特性を保有していることを確認することができた。
【0077】
また、本発明は(a)温度及びpH敏感性ブロック共重合体と、(b)前記ブロック共重合体内に封入できる生理活性物質とを含む高分子ヒドロゲル(hydrogel)型薬物伝達体を提供する。
【0078】
前記高分子ヒドロゲル型のブロック共重合体に封入できる生理活性物質は、特別な制限なしに用いることができ、その非制限的な例としてはインシュリン、エクセンジン−4、人体成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(erythropoietin、EPO)、造血成長因子(Granulocyte Colony stimulating factor、G−CSF)、GM−CSF(Granulocyte−macrophage stimulating factor)などのようなタンパク質薬物と、抗癌剤、抗菌剤、ステロイド類、消炎鎮痛剤、性ホルモン、免疫抑制剤、抗ウィルス剤、麻酔剤、抗嘔吐剤または抗ヒスタミン剤などがある。また、前記の成分以外に当業界に公知されている通常な添加剤、例えば賦形剤、安定化剤、pH調整剤、抗酸化剤、保存剤、結合剤または崩壊剤等を含んでもよい。この時、該伝達体は当分野において公知されている他の添加剤、溶媒などを追加に含んでもよい。
【0079】
また、前記高分子ヒドロゲル薬物伝達体は、経口剤または非経口剤の形態で製剤化して用いてもよく、静脈、筋肉または皮下注射剤として製造してもよい。
【0080】
加えて、本発明は前記温度及びpH敏感性ブロック共重合体を薬物伝達用または疾病診断用キャリア(carrier)として用いる方法を提供する。この時、ブロック共重合体内に含まれる物質は疾病の治療、防止または診断のための物質ならば特別な制限がない。
【0081】
以下、本発明を下記実施例及び実験例によって更に詳記する。但し、下記実施例は本発明を例示したことで、本発明の範囲をこれに限られるわけではない。

[実施例1〜3:温度及びpH敏感性3重ブロック共重合体合成]
<実施例1>
【0082】
ポリ(カプロラクトン−b−乳酸)−ポリエチレングリコール−ポリ(カプロラクトン−b−乳酸)3重ブロック共重合体(PCLA−PEG−PCLA)の製造
【0083】
ポリエチレングリコールメチルエーテル(PEG 1,500、Mn=1,500)10gと触媒であるオクタン酸錫(stannous octoate)0.2gとを反応器に入れて、水分を除去するために、110℃で4時間真空乾燥させた。乾燥した反応物を冷却させた後、窒素環境下で、生分解性ポリエステル高分子化合物であるε−カプロラクトン6.0g(5.576ml)とD,L−ラクチド1.43gとを添加し、該反応混合物を窒素環境下で徐々に135℃までに昇温した後、24時間重合させた。反応終了後、反応物を常温で冷却させ、これに少量のメチレンクロリドを添加して反応物を溶解させた。溶解した反応混合物内の未反応物を除去するために、過量のエチルエーテルに添加して沈殿させ、未反応物の除去された生成物は40℃で48時間真空乾燥させた。生成されたポリエチレングリコールと生分解性ポリエステル高分子化合物であるε−カプロラクトン及び乳酸の末端がヒドロキシ基を有する3重ブロック共重合体(PCLA−PEG−PCLA)を得て、生成物の収得率は91%であった。
<実施例2>
【0084】
生分解性高分子の反応モル比がε−カプロラクトン/D,L−ラクチド=1/2であることを除いては、実施例1と同一の方法を行って、分子量が7500のPCLA−PEG−PCLA3重ブロック共重合体を製造した。
<実施例3>
【0085】
生分解性高分子の反応モル比がε−カプロラクトン/D,L−ラクチド=1/3であることを除いては、実施例1と同一の方法を行って、分子量が8000のPCLA−PEG−PCLA3重ブロック共重合体を製造した。
[実施例4〜6:温度及びpH敏感性5重ブロック共重合体の合成]
<実施例4>
【0086】
ポリエチレングリコールメチルエーテル(PEG 2,000、Mn=2,000)4gと触媒であるオクタン酸錫(stannous octoate)0.02gとを反応器に入れて、水分を除去するために110℃で4時間真空乾燥させた。乾燥した反応物を冷却させた後、窒素環境下で生分解性ポリエステル高分子化合物であるε−カプロラクトン4.97g(4.61ml)を添加した後、65℃で1時間真空乾燥させた。その後、反応物を常温まで冷却させた上に、D,L−ラクチドを1.43gを添加して85℃で1時間真空乾燥させた。該反応混合物を窒素環境下で徐々に135℃までに昇温させた後、24時間重合させた。反応終了後、反応物を常温で冷却させ、これに少量のメチレンクロリドを添加して反応物を溶解させた。溶解した反応混合物内の未反応物を除去するために、過量のエチルエーテルに添加して沈殿させ、未反応物の除去された生成物は40℃で48時間真空乾燥させた。生成されたポリエチレングリコールと生分解性ポリエステル高分子化合物であるε−カプロラクトンとD,L−ラクチドとのブロック共重合体(PCLA−PEG−PCLA)を得て、生成物の収得率は91%であった。
【0087】
一方、前記によって製造されたヒドロキシ基付きPCLA−PEG−PCLA3重ブロック共重合体を常温下で反応器に入れた後、クロロホルムを添加してブロック共重合体を溶解させた。一方、ポリウレタンブロックを形成させるために、1,6−ジイソシアネートヘキサンと1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンとを常温で添加して溶解させた後、50℃で48時間反応させ、この時の反応物の当量比はヒドロキシ基結合付きPCLA−PEG−PCLA3重ブロック共重合体:1,6−ジイソシアネートヘキサン:1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン=1:2.8:3モル比であった。反応終了後、未反応物を除去するために過量のエチルエーテルに沈殿させた上に濾過して、分子量が27500のPU−PCLA−PEG−PCLA−PU5重ブロック共重合体を得て、収得率は80%以上であった。
<実施例5>
【0088】
ヒドロキシ基結合付きPCLA−PEG−PCLA3重ブロック共重合体:1,6−ジイソシアネートヘキサン:1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンのモル比が1:2.5:3であることを、前記実施例4と同一の方法を行って、分子量が25550のPU−PCLA−PEG−PCLA−PU5重ブロック共重合体を製造した。
<実施例6>
【0089】
ヒドロキシ基結合付きPCLA−PEG−PCLA3重ブロック共重合体:1,6−ジイソシアネートヘキサン:1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンのモル比が1:3:4であることを除いては、前記実施例4と同一の方法を行って、分子量が25550のPU−PCLA−PEG−PCLA−PU5重ブロック共重合体を製造した。
<実施例7>
【0090】
ポリウレタン系列オリゴマー成分であるダイオールが、1,3−ビス{1−(2−ヒドロキシエチル)−4−フェリーディール}プロパン(HEP)であることを除いては、前記実施例4と同一の方法を行って、分子量が27,550g/molのPU−PCLA−PEG−PCLA−PU5重ブロック共重合体を製造した。

<実験例1>:pH変化によるゾル−ゲル転移挙動の評価
【0091】
本発明によって製造されたブロック共重合体の温度及びpH変化に応じるゾル−ゲル転移挙動の評価を行った。
【0092】
実施例1で製造した3重ブロック共重合体(PCLA−PEG−PCLA)と実施例4で製造した5重ブロック共重合体(PU−PCLA−PEG−PCLA−PU)とを緩衝溶液に30重量%添加して溶かした後、50℃でNaOH溶液で適正して各々pH5.5、6.0、6.5、7.0、7.5に調節した。各々のpHを有する3重ブロック共重合体溶液を2℃ずつ上げながら、10分間一定な温度下で平衡状態がなされるようにした後、各溶液を傾けてゾル−ゲル転移挙動を測定した。
【0093】
図1は、本発明の一実施例による温度及びpH変化によるブロック共重合体ヒドロゲルのゾル−ゲル転移挙動を示すグラフである。
【0094】
より詳しくは、図1は実施例4によって、温度敏感性付きポリエチレングリコール系列化合物と、生分解性ポリカプロラクトン及びポリ乳酸の化合物と、pH敏感性付き生分解性ポリウレタン系列オリゴマー化合物とから構成された5重ブロック共重合体の温度及びpH変化によるゾル−ゲル転移挙動を示したグラフである。
【0095】
図1に示すように、本発明のブロック共重合体はブロック共重合体内のポリウレタン系列オリゴマーのpH変化によるイオン化度の変化及び生分解性高分子共重合体の温度変化による疎水性変化によって、温度だけでなくpH変化に応じてゾル−ゲル転移挙動が可逆的に行われていることを確認することができた。
【0096】
図2でのように実際に、製造されたブロック共重合体ヒドロゲルは特定pHでゾル−ゲル転移特性を示すことによって、体内と似たpH7.0〜7.4付近でゲル化がなされ、該範囲以下ではゾル化されることによって、体内注入時に従来温度敏感性ヒドロゲルで示された注射針の塞がり現象の発生なしに、体内で安全にゲルを形成することを見出すことができ、これによって製造されたブロック共重合体が特定な温度及び特定なpHで標的放出が可能な薬物放出用キャリアとして応用可能なことを見出した。一方、pH敏感性成分がゲル強度に優れたポリウレタン系列オリゴマーを用いる関係上、比較的長期に薬物を放出するような薬物伝達体として、適合である。
<実験例2>:ゲル強度の評価
【0097】
本発明によって製造されたブロック共重合体の温度及びpH変化において、ゾル−ゲル転移が起きた後のゲル強度の評価を行った。
【0098】
実施例1で製造された3重ブロック共重合体(PCLA−PEG−PCLA)と実施例4、5及び7で製造された5重ブロック共重合体(PU−PCLA−PEG−PCLA−PU)とを緩衝溶液に30重量%添加して溶かした後、50℃でNaOH溶液で適正して各々pH7.4に調節して、完全にゲル転移が起きて平衡状態がなされるようにした後、ヒドロゲルのゲル強度を測定した。
【0099】
図5は、本発明の実施例による温度37℃及びpH7.4で完全にゲル化されたヒドロゲルのゲル強度を示すグラフである。
【0100】
本発明の温度及びpH敏感性ブロック共重合体は、特定pH、例えば体内正常細胞のpH範囲であるpH7.0〜7.4では、安定なヒドロゲル(hydrogel)を形成し、癌細胞のような非正常細胞が示すpH範囲6.0〜7.0では、ゾル(sol)状態で維持することによって、癌細胞に標的指向的な薬物放出用伝達体として用いることができる。即ち、低いpH(pH7.0未満)でポリウレタン系列オリゴマーに存在する3次アミンのイオン化度の増加によってポリウレタンの全体が水溶性に変わるようになって、ヒドロゲルを形成することができなくなり、pH7.0以上ではポリウレタンのイオン化度が低下して疎水性特性を示す。
【0101】
上記のような特性により、本発明の多重ブロック共重合体は、温度だけでなくpHに敏感なゾル−ゲル転移特性を示すことができる。
【0102】
前記において、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明の請求範囲を逸脱することなく、当業者は種々の改変をなし得ろう。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の好適な一実施の形態による、温度及びpH変化によるブロック共重合体ゾル−ゲル転移挙動のグラフである。
【図2】本発明の好適な一実施の形態による、ポリエチレングリコール系列化合物と、ポリカプロラクトン及びポリ乳酸化合物と、ポリウレタン系列オリゴマー化合物とから構成された5重ブロック共重合体の30%溶液の37℃でpHによるゾル−ゲル転移挙動の写真である。
【図3】本発明の好適な一実施の形態の中に実施例6に基づいて製造されたポリエチレン系列化合物と、ポリカプロラクトン及びポリ乳酸化合物と、ポリウレタン系列オリゴマー化合物とから構成された5重ブロック共重合体のNMMRグラフである。
【図4】本発明の好適な実施例1及び6に基づいて製造された3重及び5重ブロック共重合体のIRグラフである。
【図5】本発明の実施例1〜6に基づいて製造されたポリエチレングリコール系列化合物と、ポリカプロラクトン及びポリ乳酸化合物と、ポリウレタン系列オリゴマー化合物とから構成された3重及び5重ブロック共重合体のゲル強度グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度及びpH敏感性ブロック共重合体において、
(a)ポリエチレングリコール(PEG)系列化合物(A)と生分解性高分子との共重合体(B)と、
(b)ポリウレタン系列オリゴマー(C)
とを含む、ゲル強度に優れた体内正常細胞のpH範囲であるpH7.0〜7.4ではヒドロゲル(hydrogel)を形成し、pH範囲7.0未満ではゾル(sol)状態を維持することによって、癌細胞標的指向的な薬物放出用伝達体として用いられる、温度及びpH敏感性ブロック共重合体。
【請求項2】
前記オリゴマー(C)が、ポリエチレングリコール(PEG)系列化合物(A)と生分解性高分子との共重合体(B)にカップリングして結合した3重または5重ブロック 共重合体である請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項3】
前記ポリエチレングリコール(PEG)系列化合物(A)は、数平均分子量が1,000〜2,000g/mol範囲のポリエチレングリコール(PEG)である請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項4】
前記生分解性高分子が、生分解性脂肪族ポリエステル高分子である請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項5】
前記生分解性高分子が、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコライド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(カプロラクトン−ラクチド)ランダム共重合体(PCLA)、ポリ(カプロラクトン−ポリグリコライド)ランダム共重合体(PCGA)及びポリ(ラクチド−グリコライド)ランダム共重合体(PLGA)、またはこれらの混合物から成る群より1以上選択される請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項6】
前記ポリエチレングリコール(PEG)系列化合物(A)と生分解性高分子との分子量比が、1:1〜1:3の範囲である請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項7】
前記ポリウレタン系列オリゴマー(C)が、ジイソシアネート化合物及びダイオール化合物を重合して形成される請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項8】
前記ジイソシアネート化合物が、次の化学式
OCN−(CH) n−NCO
(ここで、nは整数4〜10の繰り返し単位数である)
によって示される請求項7に記載のブロック共重合体。
【請求項9】
前記ジイソシアネート化合物が、1,2−ジイソシアネートエタン、1,4−ジイソシアネートブタン、1,3−ジイソシアネートブタン、1,6−ジイソシアネートヘキサン、1,7−ジイソシアネートヘプタン、1,8−ジイソシアネートオクタン、1,9−ジイソシアネートノナ、1,10−ジイソシアネートデカン、1,12−ジイソシアネートデカン、ビス(4−イソシアネートサイクロエチル)メタン、ビス(4−イソシアネートフェニル)メタン、ビス(4−イソシアネートフェニル)エーテル、ビス(4−イソシアネートフェニル)スルホン、4,4'−ダイフェニルメタンジイソシアネート、水素化済の4,4'−ダイフェニルメタンジイソシアネートからなる群より1以上選択される請求項7に記載のブロック共重合体。
【請求項10】
前記ジイソシアネートとダイオールとの反応モル比が、1:1〜1:3である請求項7に記載のブロック共重合体。
【請求項11】
前記オリゴマー(C)の数平均分子量が、10,000〜20,000g/molである請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項12】
前記ブロック共重合体が、3重または5重以上から成る請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項13】
前記ブロック共重合体における疎水性ブロックと親水性ブロックとの分子量比が1:1〜1:3である請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項14】
前記多重ブロック共重合体の数平均分子量が、14,000〜30,000である請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項15】
ゲル強度に優れた温度及びpH敏感性ブロック共重合体の製造方法において、
(a)ポリエチレングリコール(PEG)系列化合物(A)と生分解性ポリエステル高分子との共重合体(B)を合成するステップと、
(b)前記共重合体(B)にポリウレタン系列オリゴマー(C)をカップリングさせるステップ
とを含む、ゲル強度に優れた温度及びpH敏感性ブロック共重合体の製造方法。
【請求項16】
前記(a)ステップ後、前記ポリエチレングリコール(PEG)系列化合物(A)と生分解性高分子との共重合体(B)の末端にヒドロキシ基を導入するステップを、さらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記共重合体(B)の合成が、温度130〜150℃、12〜48時間行われる請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ステップの各々が、オクト酸錫(stannous octoate)、塩化錫(stannous chloride)、酸化鉄(iron oxide)、アルミニウムトリイソプロポキシド(aluminum triisopropoxide)、CaH、Zn、塩化リチウム(lithium chloride)、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノラート(tris(2,6−di−tert−butylphenolate))から成る群より1以上選択された触媒を利用可能である請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−79381(P2013−79381A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−248252(P2012−248252)
【出願日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【分割の表示】特願2008−96832(P2008−96832)の分割
【原出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(506392274)成均館大学校産学協力団 (10)
【Fターム(参考)】