説明

ゲル状メッキ組成物

【課題】金属又は非金属の表面に、銅、ニッケル、金などの金属やこれらの複合金属の薄い被膜を施す電解メッキ、無電解メッキに用いる安定性に優れ、均一な金属被膜を形成できる部分メッキ等に好適なゲル状メッキ組成物を提供する。
【解決手段】少なくともメッキ液と、ゲル化剤と、硬さ調整剤と、メッキ表面調整剤とを含有すると共に、pHが2.0〜7.5であり、かつ、温度20〜80℃においてゲル強度が100〜900g/cmであることを特徴とするゲル状メッキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属又は非金属の表面に、銅、ニッケル、金などの金属やこれらの複合金属の薄い被膜を施す電解メッキ、無電解メッキに用いるメッキ組成物に関し、更に詳しくは、安定性に優れ、均一な金属被膜を形成できる部分メッキ等に好適なゲル状メッキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属又は非金属の表面に、銅、ニッケル、コバルト、クロム、亜鉛、スズ、金、銀、ロジウム、インジウム、パラジウムなどの金属やこれらの複合金属の薄い被膜を施すために用いるメッキ液組成物は、メッキ条件(浴温度、浴のpH、電流密度、攪拌条件、濾過条件等)、メッキ方法(電解メッキ、無電解メッキ)、メッキの種類(メッキする金属、被メッキ体等の種類)、目的とするメッキ膜物性などにより多種多様の液組成、条件が設定され、実施されている。
【0003】
近年、電子工業におけるプリント配線基板、電磁波シールド部材や装飾メッキなどに非常に重要な部分メッキは、現在写真製版やシルクスクリーン印刷などを用いたマスクパターン形成により主に行われている。
しかしながら、この方法は、マスクパターン形成及び除去のための煩雑な前処理及び後処理が必要となるため、より容易に効率的に部分メッキを行うためにはマスキングをせずに部分メッキできる方法が望ましい手段となる。
【0004】
従来の方法として、アノード電極を配置した筆にメッキ液を浸み込ませカソードに接触させて電気メッキを行う筆メッキ法が知られている。この筆メッキ法は、筆と接触した部分のみにメッキされるため、広範囲にわたるマスキングを必要としないものであるが、この方法では、メッキを行う表面積を厳密に制御することができないので、メッキ箇所及び電流密度に関して再現性の良いメッキを実施することは容易でないという問題点があった。
【0005】
そこで、容易に部分メッキを行う方法として、本出願人らは、ゼラチンを用いてゲル化させた硫酸銅溶液を用いて銅メッキを行う方法を報告している(例えば、非特許文献1及び2参照)。この方法は、硫酸銅及び塩化ナトリウムを含む水溶液に硫酸の滴下により水溶液のpHを調整し、5%〜10%濃度範囲のゼラチンを添加し、60℃で溶解した後、この水溶液を電解セル内で氷冷(0℃)することでゲル化させ、このゲル電解質中からの銅の電析における電気化学的挙動を電気化学測定法により調べたものである。
しかしながら、この方法では、ゲル化温度が0℃であり、実際上、冷却設備が必要となるなど工業的に実施する上で、制御が難しくなるなどの課題があるのが現状である。
【0006】
一方、特許文献では、ゲル状のメッキ組成物を用いるメッキ方法として、例えば、液体用タンクの内面のコーティング方法において、カルボキシメチルセルロースなどのゲル化剤を含有する金属メッキ組成物をアプリケーターによってタンク内面に適用して、少なくとも1μmの厚さの金属層を形成させることを特徴とする液体用タンク内面のコーティング方法(例えば、特許文献1参照)や、直径が10〜150μmで、しかも30〜100μmのピッチで並んだ半導体計測用プローブピンなどの針状物体の先端部に、接点材料を、ゲル状のメッキ浴を用いて、被着させることを特徴とする電解メッキ法(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1は、大型の液体用タンク内面のコーティング方法であり、単にカルボキシメチルセルロースなどのゲル化剤を含有する金属メッキ組成物を用いても安定性に課題があり、均一な金属層を形成することはできず、更に、塗布物の上下で、付着量の差が生じやすいなどの課題がある。
また、上記特許文献2は、非常に微小な部材の先端部に、接点材料を、ゲル状のメッキ浴を用いて形成させたものであり、また、このメッキ浴組成は、単に寒天とパラジウム等のメッキ液とを溶解させたものであるので、ゲルの硬さやメッキ表面の平滑性を制御することができないなどの課題がある。
こうしたゲル状のメッキ組成物は、マスキングを用いなくとも部分メッキができる点、従来のメッキ液(浴)に較べ液面の揺れがなく見切りが明確となる点、メッキ方向の自由度が高くなる点、メッキ後の処理が容易に洗浄できる点で有用性があることなどが挙げられているが、未だ一部の部材のみで試みられているのが現状であり、更に、ゲル状のメッキ組成物の安定性、均一な金属層を形成することができるゲル状メッキ組成物が切望されているのが現状である。
【非特許文献1】ゲル電解質を用いた銅めっきI「電解質の調整と銅電析の電気化学的挙動」板垣昌幸、下田賢一、渡辺邦洋、安田和哉、表面技術、Vol.54,p41−45(2003)
【非特許文献2】ゲル電解質を用いた銅めっきII「電気化学インピーダンス法による銅電析反応の解析」板垣昌幸、下田賢一、渡辺邦洋、安田和哉、表面技術、Vol.54,p293−299(2003)
【特許文献1】特開平2−133580号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平11−189892号公報(特許第3838768号、特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の技術の課題及び現状等に鑑み、これらを解消しようとするものであり、安定性に優れ、均一な金属被膜を形成できる部分メッキ等に好適なゲル状メッキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来技術の課題等について鋭意検討した結果、少なくともメッキ液と、ゲル化剤とを含有するゲル状メッキ組成物において、ゲル物性等を特定の範囲とすることにより、上記目的のゲル状メッキ組成物が得られること、更に、特定成分を含有することにより、更に優れた性能を有するゲル状メッキ組成物が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0010】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(5)に存する。
(1) 少なくともメッキ液と、ゲル化剤と、硬さ調整剤と、メッキ表面調整剤とを含有すると共に、pHが2.0〜7.5であり、かつ、温度20〜80℃においてゲル強度が100〜900g/cmであることを特徴とするゲル状メッキ組成物。
(2) ゲル化剤が寒天、キサンタンガム、カラギーナン、ローストビーンガム、グアーガム、ウェランガム、ジェランガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ペクチン酸、アルギン酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)に記載のゲル状メッキ組成物。
(3) 硬さ調整剤がカリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、セシウム塩、糖類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)に記載のゲル状メッキ組成物。
(4) メッキ表面調整剤が非イオン性界面活性剤、塩化物、ゼラチンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)に記載のゲル状メッキ組成物。
(5) 銅電解メッキ、ニッケル電解メッキ、パラジウム電解メッキ、白金電解メッキ、金電解メッキ、スズ電解メッキ、亜鉛電解メッキ、無電解金メッキ、無電解ニッケルメッキ、無電解パラジウムメッキに用いられる上記(1)〜(4)の何れか一つに記載のゲル状メッキ組成物。
なお、本発明で規定する「ゲル状メッキ組成物」は、従来と同様のメッキ液と同様の機能を有する液体を流動性がない固体状としたものであり、組成物のpHが2.0〜7.5であり、温度20〜80℃においてゲル強度が100〜900g/cmとなるものであり、上記温度範囲で離水性がなく、かつ、電気メッキ用、無電解メッキ用として用いるものである。
また、本発明で規定する「ゲル強度」は、ゲル表面1cmあたり約20秒間耐える最大重量(g)をゲル強度とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安定性に優れ、均一な金属被膜を形成できる部分メッキ等に好適なゲル状メッキ組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の具体的な実施形態を以下に詳述する。
本発明のゲル状メッキ組成物は、少なくともメッキ液と、ゲル化剤と、硬さ調整剤と、メッキ表面調整剤とを含有すると共に、pHが2.0〜7.5であり、かつ、温度20〜80℃においてゲル強度が100〜900g/cmであることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に用いるメッキ液としては、電解メッキ、無電解メッキに用いることができる従来公知の各種メッキ液を使用でき、例えば、銅電解メッキでは、硫酸銅/硫酸/添加剤系溶液、ニッケル電解メッキでは、硫酸ニッケル/ホウ酸/添加剤系溶液、金電解メッキでは、シアン化金カリウム/クエン酸塩類/添加剤系溶液、スズ電解メッキでは、硫酸第1スズ/硫酸/添加剤系溶液、無電解金メッキでは、シアン化金カリウム/次亜リン酸ナトリウム/添加剤系溶液、無電解パラジウムメッキでは、パラジウム塩/ヒドラジン/添加剤系溶液などを挙げることができる。
また、市販品としては、例えば、無電解金メッキでは、ワールドメタル社製の「MN−AUN」、無電解ニッケルメッキでは、上村工業社製の「ベルニッケル」、無電解パラジウムメッキでは、奥野製薬工業社製の「ムデンノーブルPD」などを用いることができる。
【0014】
本発明に用いるゲル化剤は、従来のメッキ液をゲル状とし保形性を維持させる点、保水性を維持させる点、粘弾性を生じさせる点から含有するものであり、例えば、寒天、キサンタンガム、カラギーナン、ローストビーンガム、グアーガム、ウェランガム、ジェランガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ペクチン酸、アルギン酸から選ばれる少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下同様)が挙げられる。
これらのゲル化剤の中で、ゲル化温度の点、ゲル強度の点から、好ましくは、寒天、キサンタンガム、カラギーナン、ローストビーンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることが望ましく、特に好ましくは、寒天、キサンタンガム、カラギーナン、ローストビーンガムが望ましい。
これらのゲル化剤の含有量は、メッキ法、メッキ液種、ゲル化剤種により変動するものであるが、ゲル強度が100〜900g/cmとなる範囲で調整される。
例えば、電解銅メッキ用では、ゲル化剤の含有量は、組成物全量に対して、1〜5重量%(10g/L〜50g/L)の範囲で用いることができる。
【0015】
本発明では、ゲル状としたメッキ組成物のゲル強度を高度に維持させる点、同じレベルのゲル強度の場合、ゲル化剤の含有量の減少により網目構造を大きくし、これによりイオンの移動を更に容易にする点から、硬さ調整剤、例えば、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、セシウム塩、糖類などを更に含有する。
具体的には、硬さ調整剤として、塩化カリウム、硫酸カリウムなどのカリウム塩、塩化カルシウム、乳酸カルシウムなどのカルシウム塩、塩化マグネシウムなどのマグネシウム塩、塩化セシウムなどのセシウム塩、ショ糖などの糖類などの少なくとも1種を用いることができ、更に好ましくは、硬さ調整範囲の広さの点から、塩化カリウム、乳酸カルシウムの使用が望ましい。
これらの硬さ調整剤の含有量は、メッキ法、メッキ液種、ゲル化剤種により変動するものであるが、組成物全量に対して、0.05〜1.0重量%(0.5g/L〜10g/L)の範囲で用いることができる。
この硬さ調整剤の含有量が、0.05重量%(0.5g/L)未満であると、ゲル強度の明らかな増加が見られず、一方、1.0重量%(10g/L)を超えると、ゲルを作製する作業がしずらくなり、好ましくない。
【0016】
また、本発明において、メッキ面の平滑性、均一なメッキ膜を形成させる点、離水性の制御の点から、メッキ表面調整剤、例えば、非イオン性界面活性剤、塩化物、ゼラチンなどを含有する。
具体的には、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどの塩化物、ゼラチンの少なくとも1種が挙げられ、好ましくは、離水性制御の容易さの点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、塩化ナトリウムの使用が望ましい。
これらのメッキ表面調整剤の含有量は、メッキ法、メッキ液種、ゲル化剤種により変動するものであるが、組成物全量に対して、0.001〜0.5重量%(0.01g/L〜5g/L)の範囲で用いることができる。
このメッキ表面調整剤の含有量が、0.001重量%(0.01g/L)未満であると、平滑性が得られず、一方、0.5重量%(5g/L)を超えると、ザラツキを生じ、好ましくない。
【0017】
本発明のゲル状メッキ組成物のpHは、2.0〜7.5に調整することが必要であり、好ましくは、3.0〜7.0とすることが望ましい。
本発明において、ゲル状メッキ組成物のpHが、2.0未満であると、ゲル化しずらくなり、一方、7.5を越えると、液に濁りを生じることがあり、好ましくない。
ゲル状メッキ組成物のpHの調整は、液組成に含まれる酸やアルカリの水溶液などを添加することにより行うことができる。
【0018】
本発明において、ゲル状メッキ組成物の実用的なゲル強度は、温度20〜80℃において100〜900g/cmである。
このゲル強度の調整は、メッキ法、メッキ液種により変動するものであるが、ゲル化剤種及びその含有量、硬さ調整剤種及びその含有量を好適に組み合わせることにより行うことができる。
【0019】
このゲル状メッキ組成物の温度が20℃未満では、冷却設備が必要となり、一方、80℃を越えると、保形性の維持が難しくなり、好ましくない。
また、ゲル強度が100g/cm未満であると、保形性を維持することが難しくなり、作業性などが煩雑なり、好ましくなく、一方、900g/cmを超えるものはゲルの作製そのものが困難となり、好ましくない。
【0020】
本発明のゲル状メッキ組成物の製造は、上記メッキ液に、ゲル化剤、硬さ調整剤、メッキ表面調整剤を添加混合し、加熱溶解、冷却することにより、離水性が認められないゲル状のメッキ液を調製することができる。
【0021】
このように構成される本発明のゲル状メッキ組成物は、電解メッキ用、無電解メッキ用の用途毎のゲル状メッキ組成物を調製することにより、銅電解メッキ、ニッケル電解メッキ、パラジウム電解メッキ、白金電解メッキ、金電解メッキ、スズ電解メッキ、亜鉛電解メッキなどの電解メッキ、あるいは、無電解金メッキ、無電解ニッケルメッキ、無電解パラジウムメッキなどの無電解メッキに適用することができ、例えば、プリント配線基板、電磁波シールド部材や装飾物などの被メッキ物に、シート状や格子状とした任意のパターンを形成した各種メッキ液成分を含有するゲル状メッキ組成物を載置し、常法によりメッキ、具体的には、電解メッキでは、メッキ金属の板、あるいは、不溶性電極を陽極とし、被メッキ物を陰極として電解メッキを施すことにより、無電解メッキにおいては、ゲルが溶解しない範囲で加温することにより、夫々ゲル状メッキ組成物を施した部分に、安定性に優れ、均一な金属被膜を形成することができることとなる。
【0022】
また、本発明のゲル状メッキ組成物は、上記ゲル物性を有するので、マスキングを用いなくとも容易に部分メッキを好適に実施することができ、更に硬さ調整剤、メッキ表面調整剤を用いるので、作業性の向上、メッキ部品質の更なる向上を発揮することができる。
【実施例】
【0023】
次に、試験例(実施例及び比較例)により本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものでない。
【0024】
〔試験例1:電解銅メッキへの適用〕
下記表1に示す各組成、ゲル強度のゲル状メッキ組成物(配合単位:重量%、全量100重量%、残部:水)を調製した。
得られた各ゲル状メッキ組成物のpH、ゲル強度、離水性を下記測定方法により測定した。
また、各ゲル状メッキ組成物を用いて、下記メッキ条件で電解銅メッキを行い、下記評価方法により、表面状態、メッキ膜厚及びメッキ均一性を評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0025】
なお、表中のゲル化剤は、下記のものを用いた。
カラギナン:イナゲルE−150、伊那食品工業社製
ローカストビーンガム:ゲニューガムRL−200−J、三晶社製
寒天:試薬、関東化学社製
ゼラチン:試薬、関東化学社製
【0026】
(pH測定法)
各ゲル状メッキ組成物を作製する際、メッキ液の状態において、pHメーター(HM30V、東亜ディーケーケー社製)を用いて測定した。
(ゲル強度の測定法)
上下可動式スタンドに取り付けたデジタルフォースゲージ(FGC−2B、日本電産シンポ社製)を用いてゲル表面1cmあたり20秒間耐える最大荷重(g)をゲル強度とした。
(離水性の測定方法)
各ゲル状メッキ組成物を25℃で、1時間放置した後、離水性を目視で官能評価し、離水がない場合を○、一部に離水を生じている場合を×で評価した。
【0027】
(銅電解メッキ条件)
箱型容器(内容積6.0×4.0×3.0cm)に流動状態のゲル化メッキ液を入れ、放冷し固化させた。ゲルの中央に被メッキ板を差し込み陰極とし、その両側に陽極板を配置し、両極の間に直流で0.01A/cmとなるように電流を25℃下、30分流した。
【0028】
(表面状態の評価方法)
被メッキ板の表面を電子顕微鏡(JSM−5200、日本電子社製)にて、2000倍で観察した。岩盤状の表面を×、微粒子状の表面を○で評価した。
(メッキ膜厚の評価方法)
被メッキ物のメッキ膜厚をケイ光X線膜厚計(X−Strata960、Oxford Instruments社製)で計測し、その厚みを表示した。
(メッキ均一性の評価方法)
被メッキ板の全体を目視観察し色ムラ、コゲの有無を官能評価した。色ムラ、コゲの見られないものを○、どちらかが見られたものを×で評価した。
【0029】
【表1】

【0030】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜4は、本発明の範囲外となる比較例1〜3に較べ、メッキで通常使用される温度範囲において、保形性、離水性、メッキの表面状態や均一性、膜厚などの点で優れていることが判った。
【0031】
〔試験例2:無電解型金メッキへの適用〕
下記表2に示す各組成、ゲル強度のゲル状メッキ組成物(配合単位:重量%、全量100重量%、残部:水)を調製した。
得られた各ゲル状メッキ組成物のpH、ゲル強度、離水性を上記測定方法により測定した。
また、各ゲル状メッキ組成物を用いて、下記メッキ条件でメッキを行い、上記評価方法により、表面状態、メッキ膜厚及びメッキ均一性を評価した。
これらの結果を下記表2に示す。
【0032】
(無電解メッキ条件)
被メッキ板の上に、ゲル状メッキ液をシート状(2.0×2.0×0.8cm)で載せ、所定温度で、所定時間保持した。
【0033】
【表2】

【0034】
上記表2の結果から明らかなように、本発明範囲となる無電解メッキの実施例5〜6は、本発明の範囲外となる比較例4に較べ、実際にメッキ可能な温度範囲において、保形性、離水性、メッキの表面状態や均一性に優れたメッキ皮膜を形成できることが判った。
なお、上記試験例1及び2では、電解銅メッキ、無電解金メッキの例示を具体的に示したが、本発明では、メッキ液種等を代えることなどにより、ニッケル電解メッキ、パラジウム電解メッキ、白金電解メッキ、スズ電解メッキ、亜鉛電解メッキ、無電解ニッケルメッキ、無電解パラジウムメッキなどに実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のゲル状メッキ組成物は、保形性、保水性を有することから、その一部を適切な大きさ、形に切って使用することができる。従って、金属被膜を形成したい領域にだけ本ゲル状メッキ組成物があれば良いので、メッキ液の使用量を大幅に減らすことが可能となる。特に、平らな基板状のものに、本ゲル状メッキ組成物を薄いシート状で重ねてメッキすれば、劇的にメッキ液の使用量を減らすことができ、省資源に役立つ。
また、シート状のゲル状メッキ組成物は、被メッキ物に張ってメッキし、その後剥がして取り除くことができるので、メッキ液の回収が容易であり、被メッキ物へのメッキ液付着が少ないため、その後の洗浄工程における洗浄廃液の量を減らすことができるなど、環境負荷の小さいメッキ方法となり得る。更に、シート状であれば、空間的に部分的に溶液を浸すことが困難な部分にもメッキ液が設置可能となる。
このような特性から本発明のゲル状メッキ組成物は、電子工業におけるプリント配線基板、電磁波シールド部材や装飾メッキなどに好適に実施でき、有用性の高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともメッキ液と、ゲル化剤と、硬さ調整剤と、メッキ表面調整剤とを含有すると共に、pHが2.0〜7.5であり、かつ、温度20〜80℃においてゲル強度が100〜900g/cmであることを特徴とするゲル状メッキ組成物。
【請求項2】
ゲル化剤が寒天、キサンタンガム、カラギーナン、ローストビーンガム、グアーガム、ウェランガム、ジェランガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ペクチン酸、アルギン酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のゲル状メッキ組成物。
【請求項3】
硬さ調整剤がカリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、セシウム塩、糖類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のゲル状メッキ組成物。
【請求項4】
メッキ表面調整剤が非イオン性界面活性剤、塩化物、ゼラチンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のゲル状メッキ組成物。
【請求項5】
銅電解メッキ、ニッケル電解メッキ、パラジウム電解メッキ、白金電解メッキ、金電解メッキ、スズ電解メッキ、亜鉛電解メッキ、無電解金メッキ、無電解ニッケルメッキ、無電解パラジウムメッキに用いられる請求項1〜4の何れか一つに記載のゲル状メッキ組成物。

【公開番号】特開2008−266740(P2008−266740A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112624(P2007−112624)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(593020485)吉野電化工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】