説明

ゲル状二酸化塩素系殺菌消臭剤

【課題】家庭で使用できる安全で且つ蒸散安定性を備えたゲル状二酸化塩素系殺菌消臭剤を提供する。
【解決手段】適宜容量の容器に適宜濃度の亜塩素酸塩水溶液(例えば濃度10〜16%の範囲の亜塩素酸ナトリウム水溶液)を充填した第一液剤と、適宜量のアルギン酸ナトリウムと食品添加可能な固形有機酸(例えば無水クエン酸)を混合した第二混合部とからなり、第一液剤に第二混合部を加えて混合攪拌して、二酸化塩素ガスを蒸散するゲル状物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル状にして取り扱い容易な希薄な二酸化塩素ガスを放散する殺菌消臭剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二酸化塩素ガスは、強力な酸化剤であるので、その酸化作用により、滅菌したり、また、悪臭成分を分解したりすることが知られており、特に他の物質と反応して有害物を作り出すことが少なく安全であるため、二酸化塩素ガスを発生する物質を殺菌剤、消臭剤等として使用している。
【0003】
また二酸化塩素ガスの発生物質(安定化二酸化塩素水溶液)を殺菌剤、消臭剤等として取り扱いやすいようにゲル状物質とし、所定の容器に収納して、車両室内用や、冷蔵庫用として使用することが提案されている(特許文献1:特開昭57−22102号公報、特開昭61−181532号公報)。また前記特許文献1には、ゲル化剤として寒天を使用することが開示されている。
【0004】
しかし安定化二酸化塩素水溶液をゲル状組成物とした場合にでは、二酸化塩素ガスの発生が極めて少ないとして、特許文献2(特開平11−278808号公報)には、亜塩素酸塩を水に溶解した亜塩素酸塩水溶液と、二酸化塩素ガスを水中にバブリングして溶解させた二酸化塩素水溶液と、亜塩素酸塩水溶液にpH調整剤(クエン酸等)等を適宜量混合し室温で十分に攪拌して調製した純粋二酸化塩素液剤を高吸水樹脂に含有させてゲル化したゲル状組成物が提案されている。
【0005】
また特許文献3(特開2005−29430号公報)には、固形亜塩素酸塩と固形有機酸と粉状のガス発生調節剤と吸水性樹脂とを混合し、使用前に水を添加してゲル化させて二酸化塩素ガスを持続的に発生させる場合に、二酸化塩素ガスの蒸散速度の調整が困難であるとして、蒸散ガスの吸収・放出をなすガス発生調整剤(セピオライトのような多孔質材料)を含めることが提案されている。
【0006】
また特許文献4(特開2006−321666号公報)には、亜塩素酸塩水溶液に、活性化剤としてさらし粉またはイソシアヌル酸類と、ガス発生調節剤(セオピライト)と、吸水性樹脂とを添加し、ゲル化させて得られるゲル状組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−22102号公報。
【特許文献2】特開平11−278808号公報。
【特許文献3】特開2005−29430号公報。
【特許文献4】特開2006−321666号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般の冷蔵庫のような食品収納の場所や、要介護者の居室のような場所に使用される殺菌消臭剤は、使用部材の安全性、適度の希薄放散性、長期安定性などが求められるので、二酸化塩素ガス発生物質をゲル状化することが前記文献で開示されているが、特許文献1に記載されているようにゲル化剤として寒天を使用する場合には、当然二酸化塩素発生溶液が、寒天溶解温度(同文献では80℃以上)状態として混合する必要があり、各家庭での使用する商品には不適当である。
【0009】
そこで常温でもゲル化が可能な高給水樹脂を採用することが、特許文献2,3,4で提案されているが、高吸水性樹脂は、乳幼児や要介護者が誤って口にした場合の安全性に問題あり、特に特許文献2記載の高吸水性樹脂のみでゲル化した場合には、蒸散速度の調節が難しく、例えば温度の上昇によって蒸散速度が大きくなるという問題点もあり、特許文献3,4に開示されているようにガス発生調整剤を添加混合する必要がある。
【0010】
但し特許文献2に記載されているように、単に粉状のガス発生調節剤(セピオライト等)を混入することで二酸化塩素ガス発生の安定性を高めたとしても、その実施例からは7日間程度のガス発生量の安定性しか裏付けられていない。
【0011】
二酸化塩素の長期安定性として、使用期間を1カ月(30日:720時間)とすることを目安とした場合、特許文献3に開示されている実施例においては、実施例9,10,11が長期の安定性を認めることができるが、やや低濃度の蒸散である。
【0012】
これは吸水樹脂の性質上、ゲル中からの安定気体放散機能(長期安定放出)の点で劣るためで、セピオライトのようなガス発生調整剤を必要とし、前記ガス発生調整剤を混入しないと混合当初のガス発生濃度が高くなってしまい、ガス発生濃度の減少率が高くなり、安定放出とは程遠いことになり、必然的にガス放散濃度を低くする必要がある。
【0013】
そこで本発明は、特定のゲル化剤(アルギン酸ナトリウム)を採用することで、ガス発生調整剤を使用することなく、適度の濃度による放散性と、長期安定性と、安全性を兼ね備えることを見出し、新規な二酸化塩素ガスを放散する殺菌消臭剤を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るゲル状二酸化塩素系殺菌消臭剤は、適宜容量の容器に適宜濃度の亜塩素酸塩水溶液を充填した第一液剤と、適宜量のアルギン酸ナトリウムと食品添加可能な固形有機酸を混合した第二混合部とからなり、第一液剤に第二混合部を加えて混合攪拌してなることを特徴とするものである。
【0015】
第一液剤に第二混合部を混合攪拌すると、亜塩素酸塩と有機酸が反応して二酸化塩素が発生するが、アルギン酸ナトリウムによって水溶液全体がゲル状となり、前記のガス発生反応が徐々に進行することになり、長期間(15〜30日間程度)安定してガスが発生する。
【0016】
また本発明(請求項2)に係るゲル状二酸化塩素系殺菌消臭剤は、前記第一液剤の水溶液に、マグネシウムイオン又はカルシウムイオン源となる物質を添加混合してなるもので、前記マグネシウムイオン又はカルシウムイオンは、アルギン酸ナトリウムの球状ゲル化を促進し、二酸化塩素の蒸散濃度を高める作用を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記のとおりの構成であって、亜塩素酸塩に酸を反応させて二酸化塩素ガスを発生させる周知手段において、特にゲル化剤としてアルギン酸ナトリウムを採用することで、ガス発生調整剤を使用することなく、適度の濃度の二酸化塩素ガスを蒸散し、且つ長期の安定放散性を備えることになる。また食品添加物として使用できる亜塩素酸と有機酸と、アルギン酸ナトリウムを使用することで、使用時の安全性も確保できたものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1の測定結果表。
【図2】同実施例2の測定結果表。
【図3】同実施例3の測定結果表。
【図4】同実施例4の測定結果表。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態となるゲル状二酸化塩素系殺菌消臭剤は、第一液剤と第二混合部とを備え、使用に際して第一液剤(容器充填)に第二混合部を添加し、混合攪拌して使用するものである。
【0020】
第一液剤は、所定の容器に、所定濃度の亜塩素酸塩水溶液及び必要に応じて適宜量のゲル化促進剤(Mg,Caイオン源)を充填したもので、容器は、取り扱いの利便さや、使用対象空間(8畳程度の居室、靴箱、冷蔵庫等)に対応して定められる容量で、密封蓋と小透孔を穿った中蓋を備えたものである。
【0021】
亜塩素酸塩水溶液は、10〜18%(好ましくは12〜16%)濃度の水溶液である。濃度が高ければ、後述する第二混合部との混合攪拌に際してゲル状化がなされないし、濃度が低いと二酸化塩素ガスの蒸散濃度が低すぎて、所望の殺菌消臭作用を達成できない。
【0022】
亜塩素酸塩としては、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸カルシウム等の亜塩素酸アルカリ金属塩や亜塩素酸アルカリ土類金属塩が使用できる。
【0023】
また前記の亜塩素酸塩水溶液に、塩化マグネシウムや塩化カルシウム等のゲル化を促進するマグネシウムイオン又はカルシウムイオン源となる物質を適宜添加混合しても良い。
【0024】
第二混合部は、前記の第一液剤の液量に対応したアルギン酸ナトリウムと、クエン酸、リンゴ酸、乳酸等の食品添加可能な固形有機酸とを、適宜な密封袋内に充填し、揉むようにして良く混合したものである。
【0025】
而して容器内の第一液剤に、第二混合部を添加し、混合攪拌すると十数秒で全体がゲル状化すると共に、亜塩素酸塩と有機酸が反応して二酸化塩素を発生させ、中蓋の小透孔から二酸化塩素ガスが放散される。この二酸化塩素ガスの強力な酸化力で、殺菌消臭を実現するものである。
【0026】
次にその具体的な実施について説明する。実施例に使用した容器は、市販されている内径50mm、高さ90mmのネジ蓋式中蓋付き褐色ポリ容器で、予め中蓋中心近くに直径1mmの穴を3個開口したものである。
【0027】
<第一実施例>
第一液剤は、前記容器に12.5%濃度の亜塩素酸ナトリウム水溶液80mlを充填しておくものである。第二混合部は、アルギン酸ナトリウム(片山化学工業製品)4gと無水クエン酸3gを、チャック付きポリ袋に充填し、全体を揉むようにして混ぜ合わせたものである。
【0028】
前記の第一液剤に第二混合部を添加し、容器の中で第一液剤と第二混合部が良く混ざるように円を描く様に回転させて混合すると、約15秒で全体がゲル状となる。この状態で小透孔を穿っている中蓋を装着し、小透孔の10mm上方位置で北川式検知管にて二酸化塩素ガスの濃度を計測した。
【0029】
計測結果は、図1の表のとおりで、ガス濃度は2時間後から480時間(20日間)は47〜42ppmの範囲(減少率89%)で放散するもので、長期間安定した放散がなされることが認められた。特許文献3で開示されているガス調整剤を使用した最適実施例(実施例11)の減少率(86%)よりも優れ、而も前記文献の平均的な減少率(60%)に比較しも著しい放散安定性が認められるものである。
【0030】
<第二実施例>
第二実施例は、第一液剤が前記容器に16%濃度の亜塩素酸ナトリウム水溶液80mlを充填し、第一実施例と同様の第二混合部を使用したもので、第一液剤に第二混合部を添加し、混合攪拌すると、約20秒で全体がゲル状となり、第一実施例と同様に二酸化塩素ガスの濃度を計測した。
【0031】
計測結果は、図2の表のとおりで、ガス濃度は2時間後から480時間(20日間)は50〜44ppmの範囲であり、第一実施例と同様に長期安定放散性が認められた。
【0032】
<第三実施例>
第三実施例は、第一液剤として12.5%濃度の亜塩素酸ナトリウム水溶液80mlにも塩化カルシウム3gを添加して溶解させたものである。前記各実施例と同様に容器の中で第一液剤と第二混合部を混合攪拌すると、約15秒で全体が前記第一、二実施例のゲル状とはやや異なる状態のゲル状物となった。
【0033】
前記ゲル状物の二酸化塩素ガスの濃度を、前記各実施例と同様の手段で計測した結果が図3の表のとおりで、ガス濃度は2時間後から720時間(30日間)は50〜42ppmの範囲であり、前記各実施例と同様に長期安定放散性が認められた。
【0034】
<第四実施例>
第四実施例は、前記第三実施例において、塩化カルシウム3gに替えて塩化マグネシウム3.5gを添加して12%濃度の亜塩素酸ナトリウム水溶液に溶解させたもので、その他は全て前記格実施例と同様に処置したもので、生成されたゲル状物の二酸化塩素ガスの濃度は、図4に示したとおりで、ガス濃度は2時間後から720時間(30日間)は50〜40ppmの範囲であり、前記各実施例と同様に長期安定放散性が認められた。
【0035】
尚本発明はゲル状化に際して、吸水樹脂を採用せずにアルギン酸ナトリウムを採用したものであり、同様に自然物のゲル化剤として知られている小麦粉や寒天パウダーを使用してみたが、常温ではゲル状態に至らず、当然80℃以上の加熱が必要であり、使用時の加熱は、亜塩素酸ナトリウムと有機酸の反応が加速し、瞬時に多量の二酸化塩素ガスを発生させ、またゲル剤の分解も起こし、使用することができない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜容量の容器に適宜濃度の亜塩素酸塩水溶液を充填した第一液剤と、適宜量のアルギン酸ナトリウムと食品添加可能な固形有機酸を混合した第二混合部とからなり、第一液剤に第二混合部を加えて混合攪拌してなることを特徴とするゲル状二酸化塩素系殺菌消臭剤。
【請求項2】
第一液剤の水溶液に、マグネシウムイオン又はカルシウムイオン源となる物質を添加混合してなる請求項1記載のゲル状二酸化塩素系殺菌消臭剤。
【請求項3】
亜塩素酸塩水溶液が亜塩素酸ナトリウム水溶液である請求項1又は2記載のゲル状二酸化塩素系殺菌消臭剤。
【請求項4】
亜塩素酸ナトリウム水溶液が濃度10〜16%の範囲である請求項3記載のゲル状二酸化塩素系殺菌消臭剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−83447(P2011−83447A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238847(P2009−238847)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000194295)
【Fターム(参考)】