説明

ゲル状口腔用組成物

【課題】優れた口腔バイオフィルム抑制効果及びジンジパイン阻害効果を有し、かつ苦味のない良好な使用感、及び優れた保存安定性を有し、口腔内での滞留性の高いゲル状口腔用組成物を得る。
【解決手段】(A)銅濃度として0.005〜0.15質量%の水溶性銅化合物、(B)フェノール系殺菌剤、(C)クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩から選ばれる1種以上の有機酸塩、(D)キシリトール及び/又はエリスリトール、(E)水溶性高分子化合物、及び(F)界面活性剤及び/又は1〜3価のアルコールを配合する。更に、20℃における粘度を5〜100Pa・sとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯周病の病巣部位である歯茎や歯肉への滞留性が高く、かつ使用感及び保存安定性が良好で、歯周病の原因物質を効果的に抑制する歯周病改善及び抑制効果に優れたゲル状口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病の改善及び予防を目的に、歯周病の病巣部位である歯茎及び歯周ポケットへ直接適用できるゲル状の口腔用組成物が用いられてきた。ゲル状の口腔用組成物は、歯茎や歯肉へマッサージするように塗布することができ、更に、歯磨剤や洗口剤などのペースト状、液状、液体等の他の形態の口腔用組成物よりも滞留性に優れるという利点を有する。
【0003】
歯周病は、宿主への病原菌による感染症と考えられ、歯周病の予防及び治療には感染した病原菌を排除することが重要である。そのため、歯周病の予防及び治療に各種殺菌剤や抗生剤が用いられているが、成人の半数は歯周炎という調査結果もあり、その効果は十分とはいえない。その背景として、歯周病の原因となる病原菌は、口腔内でバイオフィルムという形態で生息していることが考えられる。バイオフィルムを形成した病原菌は、殺菌剤や抗生剤に抵抗性を示すことが知られている。そこで、歯周病を効果的に改善及び予防するために高い口腔バイオフィルム抑制効果を発揮する技術の開発が望まれている。
【0004】
また、歯周病菌であるポルフィロモナス ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)は、ジンジパインと呼ばれる組織破壊酵素を菌体外へ放出し、歯茎を構成するコラーゲンや細胞に傷害を与え、歯周病の惹起、進行に関与すると考えられている。ジンジパインは病原菌が殺菌されても活性を有するため、歯周病の改善や予防には、高いバイオフィルム抑制効果に加えて、ジンジパイン阻害効果も発揮されることが有効であると考えられ、これら効果を兼ね備える技術の開発が望まれる。
【0005】
一方、銅化合物は、抗菌作用及び消臭作用を有することから、う蝕、歯周病、口臭予防を目的として銅化合物を配合した口腔用組成物が提案されているが、銅化合物の殺菌効果は殺菌剤に比べて弱い。銅化合物の殺菌効果を高める方法として、殺菌剤との併用による相乗的殺菌効果の向上技術(特許文献1参照)が提案されているが、その殺菌効果は満足し得るものではなかった。
【0006】
また、従来から銅化合物は金属特有の苦味を有すること、保存安定性に劣ることが知られており、メントール誘導体による苦味抑制技術(特許文献2参照)や多塩基酸との併用による銅化合物の安定化技術(特許文献3,4参照)が提案されている。しかし、その効果は十分ではなく、銅化合物をゲル状口腔用組成物に配合した場合は、多塩基酸を配合することにより銅自体の安定化は可能であるが、銅由来の青色が退色するという問題が生じた。
【0007】
液体口腔用組成物では、製剤の色が目立たず、製剤を直接見ることもないため、退変色はあまり問題にならないが、口腔内に塗布するなどして適用される製剤では外観がよいものが好まれることから退変色しないものが望ましい。歯磨剤では、色素とパラオキシ安息香酸アルキルエステルによる変退色抑制技術が提案されている(特許文献5参照)が、その効果は十分ではなく、また、一般に防腐剤として使用されるパラオキシ安息香酸アルキルエステルは、科学的には安全性が立証されているものの、生活者の安全性に対する不安が強く、パラオキシ安息香酸アルキルエステルを使用せずに退変色を抑制できる技術が望まれる。
【0008】
特許文献2の実施例30には、銅の配合量が銅濃度として0.14質量%のグルコン酸銅、香料、キシリトール、及び非イオン性界面活性剤を組み合わせたタブレットが開示されているが、滞留性がないため、ジンジパイン活性阻害効果及びバイオフィルム抑制効果は得られない。特許文献6の実施例8には、銅の配合量が銅濃度として0.0014質量%のグルコン酸銅、香料、リンゴ酸ナトリウム、キシリトール、及び非イオン性界面活性剤とグリセリンとを組み合わせた洗口剤が、特許文献7の実施例7には、銅の配合量が銅濃度として0.0014質量%のグルコン酸銅、香料、リンゴ酸ナトリウム、キシリトール、及び、非イオン性界面活性剤とエタノールとを組み合わせた水はみがきが開示されているが、どちらも滞留性が小さく、更に、銅濃度が低いため、ジンジパイン活性阻害効果及びバイオフィルム抑制効果は得られない。
【0009】
歯周病の改善及び予防を目的に、歯周病の病巣部位である歯茎や歯肉へ適用できるゲル状の口腔用組成物では、優れた口腔バイオフィルム抑制効果とジンジパイン阻害効果とを兼ね備え、かつ使用感及び保存安定性も良好で、口腔内滞留性も良好な製剤が求められるが、従来の技術はこれらを全て満たしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平01−153620号公報
【特許文献2】特開2003−137755号公報
【特許文献3】特開平01−168611号公報
【特許文献4】特開平05−000929号公報
【特許文献5】特開平08−310928号公報
【特許文献6】特開2000―297022号公報
【特許文献7】特開2000−191485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、上記の種々の問題を解決しつつ、優れた口腔バイオフィルム抑制効果及びジンジパイン阻害効果を有し、かつ苦味のない良好な使用感、及び優れた保存安定性を有し、口腔内での滞留性の高いゲル状口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するためジンジパイン阻害効果とバイオフィルム抑制効果とを同時に達成する手段について鋭意検討を重ねた結果、(A)特定量の水溶性銅化合物と(B)フェノール系殺菌剤とを併用し、かつ(C)特定の有機酸塩、(D)キシリトール又はエリスリトール、(E)水溶性高分子、及び(F)界面活性剤及び/又は1〜3価のアルコールを組み合わせてゲル状口腔用組成物に配合することにより、ジンジパイン阻害効果とバイオフィルム抑制効果が相乗的に向上し、高いジンジパイン活性阻害効果とバイオフィルム抑制効果とを兼ね備え、かつ使用感及び外観安定性が良好で、経時での銅化合物の安定性にも優れ、口腔内での滞留性も高いことを知見し、本発明をなすに至った。
【0013】
歯周病原因菌ポルフィロモナス ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)は、浮遊菌とは違い殺菌剤などに抵抗性を示すバイオフィルムを形成し感染している。更に、ジンジパインと呼ばれるプロテアーゼを産生して、歯周病の惹起、進行に関与している。そのため、歯周病の治療及び予防には、バイオフィルム抑制効果だけでなくジンジパイン阻害効果に優れた技術が有効である。
【0014】
出願人は、銅化合物にジンジパイン阻害作用があることを見出し、特願2009−56150号公報に特定の銅化合物にアミノ酸又はその塩などを併用して配合した、歯周病の抑制効果に優れた口腔用組成物を提案した。
本発明者らは、銅化合物のジンジパイン阻害作用に注目し、更に検討を進めた結果、水溶性銅化合物、特にグルコン酸銅もしくは硫酸銅又はその水和物が、歯周病変部位の歯肉溝浸出液(GCF)中のジンジパイン活性阻害効果を有し、かかる銅化合物にフェノール系の殺菌剤、クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩から選ばれる少なくとも1つの有機酸塩、キシリトール及び/又はエリスリトール、界面活性剤及び/又は1〜3価のアルコール、及び水溶性高分子化合物を組み合せて配合し、ゲル状の口腔用組成物を調製することで、これら成分が相乗的に作用して、銅化合物由来のジンジパイン活性阻害効果とフェノール系殺菌剤由来の歯周病原因菌、特にポルフィロモナス ジンジバリス菌が形成する口腔バイオフィルムへの浸透殺菌効果とが極めて有効に発揮され、歯周病を効果的に抑制できること、しかも、製剤の口腔内での滞留性が高く、かつ、銅化合物に由来する苦味等が改善され、刺激やべたつき感もなく、使用感が向上する上、銅化合物の経時保存安定性が良好で、長期保存後の変退色がほとんどなく製剤の外観安定性も改善し、これら特性を全て満たすことを見出したものである。
【0015】
従って、本発明は、下記のゲル状口腔用組成物を提供する。
請求項1:
(A)銅濃度として0.005〜0.13質量%の水溶性銅化合物、
(B)フェノール系殺菌剤、
(C)クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩から選ばれる1種以上の有機酸塩、
(D)キシリトール及び/又はエリスリトール、
(E)水溶性高分子化合物、及び
(F)界面活性剤及び/又は1〜3価のアルコール
を含有してなることを特徴とするゲル状口腔用組成物。
請求項2:
(B)成分が、イソプロピルメチルフェノール、チモール、オイゲノールから選ばれる1種以上である請求項1記載のゲル状口腔用組成物。
請求項3:
(C)成分の有機酸塩の有機酸量/(A)成分の水溶性銅化合物の銅量が、質量比で2〜80である請求項1又は2記載のゲル状口腔用組成物。
請求項4:
(B)成分を0.03〜0.3質量%含有する請求項1、2又は3記載のゲル状口腔用組成物。
請求項5:
25℃における粘度が5〜100Pa・sである請求項1乃至4のいずれか1項記載のゲル状口腔用組成物。
請求項6:
歯茎又は歯肉に塗布して適用されるものである請求項1乃至5のいずれか1項記載のゲル状口腔用組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明のゲル状口腔用組成物は、口腔内滞留性が高く、ジンジパイン阻害効果及び口腔バイオフィルム抑制効果に優れ、かつ銅化合物の経時保存安定性、使用感及び外観安定性に優れ、歯茎や歯肉へ直接適用でき、歯周病の改善及び予防に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。本発明のゲル状口腔用組成物は、(A)水溶性銅化合物、(B)フェノール系殺菌剤、(C)クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩から選ばれる有機酸塩、(D)キシリトール及び/又はエリスリトール、(E)水溶性高分子化合物、及び(F)界面活性剤及び/又は1〜3価のアルコールを含有する。
【0018】
A成分の水溶性銅化合物としては、歯周病変部位の歯肉溝浸出液(GCF)中のジンジパイン活性抑制効果を有するものであれば特に限定されず、例えばグルコン酸銅、硫酸銅、塩化銅などが用いられ、1種単独でも2種以上を併用してもよい。これらの中でもグルコン酸銅又は硫酸銅、特に硫酸銅が好ましい。銅化合物は、それぞれ無水物であっても、水和物であってもよく、例えば硫酸銅5水和物などの結晶水を含む水和物を用いることもできる。
【0019】
水溶性銅化合物の配合量は、銅濃度が組成全体の0.005〜0.13%(質量%、以下同様)、特に0.01〜0.1%、とりわけ0.025〜0.1%となる範囲が好ましい。配合量が0.005%未満ではジンジパイン阻害効果及びバイオフィルム抑制効果が満足に発揮されず、0.13%を超えると苦味による使用感や外観安定性に劣る。
【0020】
B成分のフェノール系殺菌剤としては、例えばイソプロピルメチルフェノール、チモール、オイゲノール、トリクロサン、クレゾール、フェノール、クロロクレゾール、パラクロロメタクレゾール、パラクロロメタキシレノール、オルソフェニルフェノール、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、サリチル酸又はその塩類などが挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられるが、中でもイソプロピルメチルフェノール、チモール、オイゲノールが好ましい。
【0021】
フェノール系殺菌剤の配合量は、組成全体の0.03〜0.3%、特に0.05〜0.2%が好ましい。配合量が0.03%未満ではバイオフィルム殺菌効果が十分発揮されず、更に満足なジンジパイン阻害効果が発揮されないことがあり、0.3%を超えると使用感が満足できない場合がある。
また、組成中のA成分に対するB成分の配合割合は特に限定されないが、B成分とA成分の銅濃度との割合((B)/(A))の質量比で0.4〜24、特に0.5〜2.0が好ましい。0.4未満では使用感及び外観安定性に劣り、24を超えると使用感やジンジパイン活性阻害効果に劣る場合がある。
【0022】
C成分の有機酸塩としては、クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩から選ばれる1種又は2種以上が用いられ、これら有機酸塩を配合することで、銅化合物を安定配合でき良好な保存安定性が得られる。塩としては、特に限定されるものではなく、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、亜鉛、鉄、コバルト、マンガンなどの遷移金属塩、及びこれら金属塩の結晶水を含む水和物を用いることができる。
具体的には、クエン酸2ナトリウム3/2水塩、クエン酸3ナトリウム2水塩、クエン酸カルシウム、クエン酸亜鉛、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、酒石酸ナトリウムカリウム4水塩、酒石酸2ナトリウム2水塩、リンゴ酸2ナトリウム1/2水塩などが挙げられ、特にクエン酸3ナトリウム2水塩、酒石酸2ナトリウム2水塩、リンゴ酸2ナトリウム1/2水塩が好ましい。
【0023】
C成分の配合量は、有機酸濃度が組成全体の0.03〜0.9%、特に0.1〜0.7%、とりわけ0.1〜0.4%となる範囲が好ましい。0.03%未満では銅化合物の安定化作用に劣る場合があり、0.9%を超えると外観安定性、ジンジパイン活性阻害効果、バイオフィルム抑制効果のいずれかに劣る場合がある。
【0024】
また、組成中のA成分に対するC成分の配合割合は、C成分の有機酸濃度とA成分の銅濃度との割合((C)/(A))の質量比で2〜80、特に6〜50、とりわけ6〜26が好ましい。2未満では銅化合物の安定化作用に劣り、80を超えると外観安定性、ジンジパイン活性阻害効果、バイオフィルム抑制効果のいずれかに劣る場合がある。
【0025】
D成分のキシリトール及びエリスリトールは、非発酵性であることから口腔用組成物に汎用される糖アルコールであるが、本発明ではキシリトール及び/又はエリスリトールを配合することにより、銅化合物由来の苦味をマスキングでき満足な使用感が得られ、外観安定性も高まる。D成分としては特にキシリトールが好ましい。
キシリトール及び/又はエリスリトールの総配合量は、組成全体の10〜40%、特に15〜30%が好ましい。配合量が10%未満では外観安定性に劣り、更に満足な使用感が得られない場合があり、40%を超えると糖アルコールの変化により外観安定性に劣る場合がある。
【0026】
本発明のゲル状口腔用組成物は、E成分として水溶性高分子化合物を含有するもので、E成分の配合により保形性を持たせた水溶性の粘性組成物である。
【0027】
水溶性高分子化合物としては、組成物に保形性を持たせることができれば特に定めるものではなく、例えばキサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラゲニン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸塩、ヒドロキシエチルセルロースなどの1種又は2種以上が挙げられ、中でも塩に対して保形性が高く安定性も高いポリアクリル酸塩及び/又はカルボキシビニルポリマーが好適であり、とりわけカルボキシビニルポリマーが高粘性で、かつ本発明の目的を達成するためにより好適である。
【0028】
ポリアクリル酸塩としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム等のポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリアクリル酸モノエタノールアミン、ポリアクリル酸ジエタノールアミン、ポリアクリル酸トリエタノールアミン等のポリアクリル酸のアミン塩、ポリアクリル酸のアンモニウム塩などの1種又は2種以上が使用できる。
【0029】
ポリアクリル酸塩としては、0.5%水溶液の粘度(25℃)が、BH型粘度計(東機産業(株)製、ローターNo.4〜5、回転数20rpm、測定時間2分)で測定した時に7〜13Pa・sであるものが好ましい。このようなポリアクリル酸ナトリウムとしては、日本純薬社製のレオジック250H(粘度7〜13Pa・s)などが挙げられ、市販品を使用できる。
【0030】
カルボキシビニルポリマーは、アクリル酸を主とし、これに少量のポリアリルシュクロースなどの架橋剤で架橋した水溶性の共重合体で、塩基性物質で中和することでゲル性状を発現する。中和に使用する物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基やトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミンなどを用いることができる。
【0031】
カルボキシビニルポリマーとしては、0.2%水溶液の粘度(25℃)が、BH型粘度計(東機産業(株)製、ローターNo.3〜7、回転数20rpm、測定時間2分)で測定した時に2〜70Pa・s、特に16〜28Pa・sであるものが好ましい。なお、上記カルボキシビニルポリマーの粘度は、0.1mol/mLの水酸化ナトリウムでpH6.0に調整したときの値である。
【0032】
このようなカルボキシビニルポリマーとしては、B.F.Goodrich社製のカーボポール980(粘度16〜28Pa・s)、981(粘度4〜7.5Pa・s)、2984(粘度2.5〜6.5Pa・s)、5984(粘度12〜22Pa・s)、1382(粘度14〜32Pa・s)、EDT2020(粘度14〜32Pa・s)、EDT2050(粘度6〜14Pa・s)、Ultrez10(粘度12〜29Pa・s)、Ultrez20(粘度47〜67Pa・s)、Ultrez21(粘度45〜65Pa・s)、住友精化社製のアクペックHV−501E(粘度2.5〜6.4Pa・s)、HV−504E(粘度2〜5.5Pa・s)、HV−505E(粘度15〜30Pa・s)等の市販品を使用できる。中でも、B.F.Goodrich社製のカーボポール980(粘度16〜28Pa・s)、住友精化社製のアスペックHV−505E(粘度15〜30Pa・s)が好ましい。なお、括弧内の粘度は、上記と同様の方法で測定した25℃における粘度である。
また、ローターは、測定粘度が下記粘度範囲内に相当するものを使用した。
ローターNo.1:粘度が0Pa・s以上0.4Pa・s未満
ローターNo.2:粘度が0.4Pa・s以上1.6Pa・s未満
ローターNo.3:粘度が1.6Pa・s以上4Pa・s未満
ローターNo.4:粘度が4Pa・s以上8Pa・s未満
ローターNo.5:粘度が8Pa・s以上16Pa・s未満
ローターNo.6:粘度が16Pa・s以上40Pa・s未満
ローターNo.7:粘度が40Pa・s以上200Pa・s以下
【0033】
水溶性高分子化合物の配合量は、組成物中1〜5%、特に1〜3%が好ましい。配合量が1%未満ではゲルが柔らかすぎて口腔内での滞留性に劣り本発明の目的が達成できない場合があり、5%を超えるとべたつき感が強くなることで使用感が損なわれる場合がある。
【0034】
更に、本発明組成物には、B成分のフェノール系殺菌剤を可溶化することを目的の一つとして、F成分として界面活性剤及び/又は1〜3価のアルコールを配合する。
【0035】
界面活性剤としては特に定めるものではなく、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤の1種又は2種以上を用いることができるが、特に口腔内への刺激が少なく、使用感改善作用が期待できる非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0036】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、α−オレフィンスルフォン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの中でも特に、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウムなどのN−アシルザルコシン酸ナトリウムがバイオフィルム殺菌効果発現の観点からより好適に使用することができる。
【0037】
カチオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム、アルキルベンジルアンモニウム塩等が用いられる。
両性界面活性剤としては、酢酸ベタイン、イミダゾリニウムベタイン、レシチンなどが用いられる。
【0038】
非イオン性界面活性剤としては、多価アルコールと脂肪酸がエステル結合でつながっている多価アルコール型、高級アルコールやアルキルフェノール等の水酸基を持つ疎水性原料に主として酸化エチレン(エチレンオキサイド)が付加したタイプ、脂肪酸や多価アルコール脂肪酸エステルに酸化エチレンを付加したタイプのポリエチレングリコール型のものが好適である。
【0039】
多価アルコール型としては、多価アルコールとしてはショ糖、ソルビタン、又はポリグリセリンが好適であり、例えばショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられ、中でもショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルが使用感並びにバイオフィルム殺菌効果発現の観点からより好適に使用することができる。
ショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸炭素数が10〜22、特に12〜18のものが好ましい。エステル化可能な脂肪酸の数は、最大6つあるが、1つの脂肪酸をエステル化したモノエステルの割合が50%以上、特に70%以上のものが好ましい。このようなショ糖脂肪酸エステルは市販品を用いることができ、例えば三菱化学フーズ社製のサーフホープJ−1811、J−1815、J−1816、J−1216、J−1416などがある。
【0040】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンの平均重合度が4〜20、特に6〜10のものが好ましい。脂肪酸の炭素数は8〜22、特に10〜18で、脂肪酸のモノエステルが好ましい。
このようなポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、日光ケミカルズ社製のNIKKOL Hexaglyn 1−SV、Decaglyn 1−L、Decaglyn 1−SV、阪本薬品工業社製のML−750、ML−500、MO−7S、MSW−7S、SYグリスターDML−3などが挙げられる。
【0041】
ポリエチレングリコール型としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油などが挙げられ、中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが使用感並びにバイオフィルム殺菌効果発現の観点から好適に使用することができる。
【0042】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、エチレンオキサイドの平均付加モル数が5〜100、特に20〜100のものが好適である。
このようなポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては市販のものを用いることができ、例えば日光ケミカルズ社製のHCO−5、HCO−10、HCO−20、HCO−30、HCO−40、HCO−50、HCO−60、HCO−80、HCO−100などが挙げられる。
【0043】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、エチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜50、特に6〜40で、アルキル基の炭素数が12〜22、特に12〜18のものを用いることができる。
このようなポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、日光ケミカルズ社製のBL−2、BL−21、BC−2、BC−7、BC−15、BC−25、BS−20、BO−10V、BB−10、日本エマルジョン社製の、EMALEX115、520、625、730、750、BHA−30などがある。
【0044】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、エチレンオキサイドの平均付加モル数が5〜30、特に10〜20であり、脂肪酸の炭素数が12〜22、特に14〜18のものが好ましく、脂肪酸のモノエステルが好ましい。
このようなポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、日光ケミカルズ社製のTS−10MV、TS−30V、TO−10MVなどが挙げられる。
【0045】
界面活性剤は、1種又は2種以上を使用でき、その配合量は、組成全体の0〜3%、特に0.1〜3%、とりわけ0.5〜2%が好ましい。配合量が0.1%未満では、B成分の可溶化が不十分となり、満足な外観安定性や使用感及びバイオフィルム抑制効果が発揮されない場合があり、3%を超えると界面活性剤自体の苦味が顕著になり使用感に劣り、更にフェノール系殺菌剤が不活性化することで十分なバイオフィルム抑制効果が発揮されない場合がある。
【0046】
1〜3価のアルコールとしては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロパノール等の炭素数2〜4の1価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、プロピレングリコール、平均分子量190〜25000のポリエチレングリコール、平均分子量400〜3000のポリプロピレングリコール等の2価アルコール、グリセリン等の3価アルコールなどを挙げることができ、特にエタノール、グリセリン、プロピレングリコール、平均分子量380〜3800のポリエチレングリコールがフェノール系抗菌剤の可溶化能に優れ、バイオフィルム殺菌効果発現の観点から好ましく使用される。なお、これらアルコールは1種又は2種以上を配合することができる。また、上記平均分子量は医薬部外品原料規格2006記載の平均分子量を示し、具体的には、ポリエチレングリコール200(平均分子量190〜210)、ポリエチレングリコール400(平均分子量380〜420)、ポリエチレングリコール600(平均分子量570〜630)、ポリエチレングリコール4000(平均分子量2600〜3800)が例示できる。
【0047】
1〜3価のアルコールの総配合量は、純分換算で好ましくは組成物全体の0〜40%、特に5〜40%、とりわけ10〜30%が好ましい。配合量が5%未満の場合は、B成分を可溶化が不十分となり、十分な外観安定性や使用感及びバイオフィルム抑制効果が得られない場合があり、40%を超えると刺激が強くなり使用感に劣る場合がある。
1〜3価のアルコールの配合方法は、香料中に配合してもよいし、別添加してもよく、もしくは両方(香料中及び別添加の両方)に配合してもよい。
【0048】
本発明においては、界面活性剤又は1〜3価のアルコールを単独配合(界面活性剤のみを配合、又は1〜3価のアルコール類のみを配合)してもよいし、又は界面活性剤及び1〜3価のアルコールを併用して配合してもよいが、界面活性剤と1〜3価のアルコールとを併用して配合することが好ましい。なお、界面活性剤及び1〜3価のアルコールの総配合量は、組成物全体の0.1〜40%、特に0.5〜30%が好ましい。
【0049】
本発明のゲル状口腔用組成物は、上記必須成分に加えて、必要によりその他の公知成分を本発明の効果を損ねない範囲で配合することができ、通常の方法で調製することができる。任意成分としては、研磨剤、甘味料、香料、着色剤、pH調整剤、油性成分、有効成分などを配合できる。
【0050】
研磨剤としては、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ゼオライト、ジルコノシリケート、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、不溶性メタリン酸カリウム、酸化チタン、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる。研磨剤を配合する場合、その配合量は通常5〜50%である。
【0051】
甘味料としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン等が挙げられる。着色剤としては、青色1号、黄色4号、二酸化チタン等が挙げられる。
香料としては、l−メントール等のテルペン類又はその誘導体やペパーミント油等が挙げられる。
【0052】
pH調整剤としては、上記(C)成分の有機酸塩以外のもの、例えばリン酸、フマル酸、乳酸、酢酸及びそれらの塩などが挙げられ、pH5.5〜8.0に調整することが好ましい。
【0053】
油性成分としては、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、パラフィンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、スクワレン等の炭化水素油、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウロレイン酸、オレイン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸等の脂肪酸、アマニ油、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、ナタネ油、綿実油、オリーブ油、椿油、ひまし油、カカオ脂、パーム油、ヤシ油等の植物油、牛脂、豚脂、馬脂、羊脂の動物油等が挙げられる。この中でも、滞留性の点から炭化水素油が好ましく、より好ましくは流動パラフィン、軽質流動パラフィンである。油性成分を配合する場合、その配合量は、通常0.1〜10%である。
【0054】
有効成分としては、上記銅化合物とフェノール系殺菌剤に加えて、その他の有効成分、例えばアスコルビン酸塩、トコフェロールエステル等のビタミン類、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム等の酵素、オウバクエキス、オウゴンエキス、チョウジエキス等の生薬成分、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、ヒノキチオール等のカチオン性殺菌成分や天然の殺菌成分、塩化ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、オルソリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、乳酸アルミニウム、キトサン等の無機塩類や有機塩類などを配合してもよい。これら有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0055】
組成物の粘度は、B型粘度計、特にBH型粘度計(東機産業(株)製、ローターNo.4〜7、回転数20rpm、測定温度25℃、測定時間2分)で計測した時、5〜100Pa・sの粘度、特に20〜70Pa・sの粘度を有することが望ましい。粘度が5Pa・s未満ではゲル剤の特徴である滞留性が損なわれる場合があり、100Pa・sを超えると、べたつき感が強くなり使用感が損なわれる場合がある。
【0056】
本発明組成物は、ゲル状で粘性を有するので、口腔内の歯茎や歯肉に指や歯ブラシなどで直接塗布したり、塗布しながらマッサージするように適用してもよい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%であり、純分換算値である。
【0058】
また、各例で用いた成分の詳細を下記に示す。
硫酸銅・5水和物:関東化学社製
グルコン酸銅:富田製薬社製
イソプロピルメチルフェノール:大阪化成社製
塩化セチルピリジウム:和光純薬工業社製
チモール:高砂香料工業社製
オイゲノール:高砂香料工業社製
アネトール:高砂香料工業社製
クエン酸ナトリウム(クエン酸3ナトリウム2水塩):和光純薬工業社製
リンゴ酸ナトリウム(dl−リンゴ酸2ナトリウム1/2水塩):扶桑化学工業社製
酒石酸ナトリウム(l−酒石酸2ナトリウム2水塩):扶桑化学工業社製
キシリトール:東和化成社製
エリスリトール:三菱化学フーズ社製
カルボキシビニルポリマー〈1〉:B.F.Goodrich社製、カーボポール980(粘度17Pa・s、0.2%水溶液、25℃、ローターNo.6、水酸化ナトリウムでpH6.0に調整)
カルボキシビニルポリマー〈2〉:B.F.Goodrich社製、カーボポール980(粘度23Pa・s、0.2%水溶液、25℃、ローターNo.6、水酸化ナトリウムでpH6.0に調整)
カルボキシビニルポリマー〈3〉:B.F.Goodrich社製、カーボポール981(粘度5Pa・s、0.2%水溶液、25℃、ローターNo.4、水酸化ナトリウムでpH6.0に調整)
ポリアクリル酸ナトリウム:日本純薬社製、レオジック250H(粘度9Pa・s、0.5%水溶液、25℃、ローターNo.5)
キサンタンガム:モナートガムDA、ケルコ社製(粘度200mPa・s、0.2%水溶液、25℃、ローターNo.1)
ヒドロキシエチルセルロース:HECダイセルSE850、ダイセル化学工業社製(粘度23mPa・s、0.2%水溶液、25℃、ローターNo.1)
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油:日光ケミカルズ社製、HCO−60 エチレンオキサイドの平均付加モル数60
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンステアリン酸エステル:日光ケミカルズ社製、TS−10MV エチレンオキサイドの平均付加モル数20
モノラウリン酸デカグリセリル:日光ケミカルズ社製 Decaglyn 1−L
ショ糖ステアリン酸エステル:三菱化学フーズ社製、サーフホープJ−1816
ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル:日光ケミカルズ社製、BL−9EX エチレンオキサイドの平均付加モル数9
グリセリン(純分85%):ライオンオレオケミカル社製
エタノール:和光純薬工業社製、日局エタノール
プロピレングリコール:旭硝子社製
ポリエチレングリコール400:第一工業製薬社製
【0059】
〔実施例、比較例〕
表1〜3に示す組成のゲル剤(ゲル状口腔用組成物)を常法により調製し、容量40gのアルミチューブに充填し、使用感、滞留性、ジンジパイン阻害効果、バイオフィルム抑制効果、外観安定性、銅の経時保存安定性を下記方法により評価した。結果を表1〜3に示す。
ゲル剤の粘度は、ゲル剤をガラス製容器に入れ、25℃の水浴中で30分間放置した後、BH型粘度計(東機産業(株)製、回転数20rpm、測定時間2分)で計測した。なお、下記に示すように粘度範囲に応じて使用するローターを変えた。
【0060】
ローターNo.1:粘度が0Pa・s以上0.4Pa・s未満
ローターNo.2:粘度が0.4Pa・s以上1.6Pa・s未満
ローターNo.3:粘度が1.6Pa・s以上4Pa・s未満
ローターNo.4:粘度が4Pa・s以上8Pa・s未満
ローターNo.5:粘度が8Pa・s以上16Pa・s未満
ローターNo.6:粘度が16Pa・s以上40Pa・s未満
ローターNo.7:粘度が40Pa・s以上200Pa・s以下
【0061】
1.使用感の評価
使用感の評価は、専門家10名により行い、ゲル剤約0.3gを指にとり、下顎歯肉へ塗布した1分後の苦み、刺激、べたつき感といった使用感を下記評価基準により評価し、その平均値により下記判定基準により判定をした。
<使用感の評価基準>
4点:非常によい。
3点:よい。
2点:ややよい。
1点:悪い。
0点:非常に悪い。
<使用感の判定基準>
◎:平均値が3点以上
○:平均値が2点以上3点未満
△:平均値が1点以上2点未満
×:平均値が0点以上1点未満
【0062】
2.ジンジパイン活性阻害効果
ジンジパイン活性阻害効果は、ビーグル犬を用い、歯周病変部位の歯肉溝浸出液(GCF)中のジンジパイン活性により評価した。具体的評価法としては、固形飼料(商品名、DS−1A、オリエンタル酵母社製)を水で、飼料:水が質量比で7:5の割合で練状にした飼料で飼育することで歯周病を誘発したビーグル犬(6歳齢、雌)を用いた。下顎3歯(P3、P4、M1)を被検部位とし、ゲル剤を処置した(n=3)。処置は、3時間毎に3回、各被験部位にゲル剤約0.3gを指で塗布することで行った。処置前及び全処置終了3時間後のGCF中のジンジパイン活性を測定し*1)、活性阻害効果を下記式により求め、その平均値から下記の判定基準により判定した。
なお、GCF採取量は、GCF採取前後のGCFコレクション ストリップス(ぺリオペーパー(登録商標)、ヨシダ社製)の質量差から求めた。
【0063】
ジンジパイン活性阻害効果(%)={(A−B)/A}×100
A=(薬剤処置前の活性)/(薬剤処置前の採取GCF質量)
B=(薬剤処置後の活性)/(薬剤処置後の採取GCF質量)
<有効性の判定基準>
◎:平均値が90%以上
○:平均値が50%以上90%未満
△:平均値が10%以上50%未満
×:平均値が10%未満
【0064】
*1)ジンジパイン活性測定法
5mmol/Lシステインを含む20mmol/Lのリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)を反応バッファー*2)とし、GCF抽出液*3)10μLと、反応バッファーにより10μmol/Lに調製した基質(Bz−Arg−MCA:カルボベンゾキシ−L−フェニルアラニル−L−アルギニン−4−メチルクマリル−7−アミド、ペプチド研究所製)140μLを混合し、37℃で60分間反応させた。反応により生成したAMC(7−アミノ−4−メチルクマリン)の蛍光強度を励起波長390nm、測定波長460nmで測定し(フルオロスキャン アセント、大日本製薬社製)、その反応速度をGCF中のジンジパイン活性とした。
*2)反応バッファー:100mL中の質量
L−システイン塩酸塩(和光純薬工業社製): 0.0878g
リン酸二水素ナトリウム二水和物(和光純薬工業社製): 0.312g
1N 水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製): 適量(pH7.5に調整)
蒸留水: 残
(全量を100mLにメスアップ)
*3)GCF抽出液
GCFコレクション ストリップスを各被験部位の歯周ポケットに30秒間挿入することで、GCFを採取し、10mmol/Lリン酸ナトリウムバッファー(pH6.0)100μLに浸漬し、十分に撹拌することで、GCFを抽出した。
【0065】
3.バイオフィルムに対する浸透殺菌効果(バイオフィルム抑制効果)の評価
(1)バイオフィルムの作製方法
バイオフィルムを作製する担体として、直径7mm×厚さ3.5mmのハイドロキシアパタイト(HA)板(旭光学社製)を用い、唾液コートするため、0.45μmのフィルターで濾過したヒト無刺激唾液により、室温で4時間処理した。培養液は、トリプチケースソイブロス(Difco社製)30gを1Lの精製水に溶解した液に、ヘミン(シグマ社製)5mg、メナジオン(シグマ社製)0.5mgを添加したものを用いた。また、バイオフィルムを形成させる菌種として、口腔常在細菌であるストレプトコッカス ゴルドニアイ ATCC51656株及びアクチノマイセス ナエスランディ ATCC51655株、病原性細菌であるポルフィロモナス ジンジバリス ATCC33277株を用いた。これら3菌種をそれぞれ2×107cfu/mL(cfu:colony forming units)になるように上述の培養液に接種し、唾液コートしたHA担体と共に37℃,嫌気条件下(5vol%炭酸ガス、95vol%窒素)で2週間連続培養(培養液の置換率は10vol%とした)を行い、HA表面に3菌種混合のモデルバイオフィルムを形成させた。
【0066】
(2)バイオフィルムに対する浸透殺菌効果
ゲル剤を5倍質量の滅菌蒸留水に溶解しサンプルとした。サンプル処置は、上記方法で形成させたバイオフィルムをサンプル2mLに3分間浸漬することで行い、その後、滅菌生理食塩水1mLで6回洗浄した。サンプル処置したバイオフィルムは、滅菌生理食塩水4mL中に、超音波処理(200μA、10秒間)により分散し、10%綿羊脱繊維血含有トリプチケースソイ寒天平板(Difco社製)に50μL塗沫し、37℃,嫌気条件下(5vol%炭酸ガス、95vol%窒素)で10日間培養した。生育したポルフィロモナス ジンジバリス菌の黒色コロニー数を計測し、バイオフィルム菌数(cfu/mL)を求め、サンプル(ゲル剤)処置による菌数の低下を下記式により求め、下記の判定基準により判定した。
【0067】
バイオフィルム抑制効果=
(サンプル無処置のバイオフィルム菌数)/(サンプル処置のバイオフィルム菌数)
判定基準
◎:バイオフィルム抑制効果が500以上
○:バイオフィルム抑制効果が10以上500未満
△:バイオフィルム抑制効果が3以上10未満
×:バイオフィルム抑制効果が3未満
【0068】
4.外観安定性
ゲル剤を60℃の恒温層に1ヶ月保存し、室温に戻したあと、チューブから白色の紙上に約2cmゲル剤を押出し、4℃保存のゲル剤をコントロールとして、色の変化を下記判定基準により目視判定した。
外観安定性判定基準
◎:変色、退色がほとんど認められない。
○:変色、退色がわずかに認められるが、問題ないレベルである。
△:変色、退色がやや認められる。
×:変色、退色が認められる。
【0069】
5.銅の安定性
ゲル剤を60℃の恒温層で1ヶ月保存し、室温に戻したゲル剤0.1gを遠心管に採取し、蒸留水50mLに分散した。遠心分離(10,000rpm、10分間)した後、上清2.5mLに硝酸2.5mLを混合し、原子吸光度法により(偏光ゼーマン原子吸光分光光度計、日立製作所製)により銅イオンを定量した。なお、銅イオンの量は、銅標準溶液(湘南和光社製)により作製した検量線から求めた。また、4℃保存のゲル剤をコントロールとして、下記式により銅残存率を算出し、下記判定基準により銅の経時保存安定性を判定した。
【0070】
銅残存率(%)=(B/A)×100
A:4℃保存のゲル剤の銅イオン定量値
B:60℃保存のゲル剤の銅イオン定量値
銅の安定性の判定基準
◎:銅残存率が95%以上
○:銅残存率が90%以上95%未満
△:銅残存率が70%以上90%未満
×:銅残存率が70%未満
【0071】
6.滞留性
ゲル剤の口腔内滞留性の評価は、専門家10名により行い、ゲル剤約0.3gを指にとり、口腔内の下顎歯肉へ塗布したのち、1時間後の製剤の口腔内滞留性について下記評価基準により官能評価を行い、その平均値により下記判定基準により判定した。
<滞留性の評価基準>
0点:滞留性を感じない。
1点:滞留性を殆ど感じない。
2点:滞留性をわずかに感じる。
3点:滞留性を感じる。
4点:滞留性を強く感じる。
<滞留性の判定基準>
◎:平均値が3.5点以上
○:平均値が2点以上3.5点未満
△:平均値が1点以上2点未満
×:平均値が0点以上1点未満
【0072】
【表1−1】

【0073】
【表1−2】

【0074】
【表2−1】

【0075】
【表2−2】

【0076】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)銅濃度として0.005〜0.13質量%の水溶性銅化合物、
(B)フェノール系殺菌剤、
(C)クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩から選ばれる1種以上の有機酸塩、
(D)キシリトール及び/又はエリスリトール、
(E)水溶性高分子化合物、及び
(F)界面活性剤及び/又は1〜3価のアルコール
を含有してなることを特徴とするゲル状口腔用組成物。
【請求項2】
(B)成分が、イソプロピルメチルフェノール、チモール、オイゲノールから選ばれる1種以上である請求項1記載のゲル状口腔用組成物。
【請求項3】
(C)成分の有機酸塩の有機酸量/(A)成分の水溶性銅化合物の銅量が、質量比で2〜80である請求項1又は2記載のゲル状口腔用組成物。
【請求項4】
(B)成分を0.03〜0.3質量%含有する請求項1、2又は3記載のゲル状口腔用組成物。
【請求項5】
25℃における粘度が5〜100Pa・sである請求項1乃至4のいずれか1項記載のゲル状口腔用組成物。
【請求項6】
歯茎又は歯肉に塗布して適用されるものである請求項1乃至5のいずれか1項記載のゲル状口腔用組成物。

【公開番号】特開2011−105650(P2011−105650A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262762(P2009−262762)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】