説明

ゲル状吸水材

【課題】柔軟性、弾力性に富み、保存によるゲルの強度変化が小さく、ゾルの粘度が低く加工が容易で、きわめて離水の少ない物性を有し、さらには吸水性及び水溶性の機能を有する水性ゲル材料を提供することである。
【解決手段】
食物繊維90%以上、タンパク質1%以下、灰分1%以下のタマリンド種子多糖類、並びに多価アルコール及び水溶性界面活性剤の少なくとも1以上からなる水溶性有機物質を含有することを特徴とするゲル状吸水材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性、弾力性に富み、加工性に優れ、さらに強度の変化が少なく、吸水性を有するゲル状吸水材に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ゲル材料は、医薬品、医療器具、医薬材料、化粧品、生活雑貨建築材料、塗料、化学品、写真等に広く使用されており、水性合成高分子や天然高分子等を原料としている。水溶性合成高分子の代表的なものとしては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体等がある。
【0003】
一方、天然高分子の代表的なものとしては、寒天、カラギーナン、ゼラチン、ジェランガム等があり、これらは、粘性、または粘弾性のある水溶性組成物を作る天然多糖類として食品への応用が試みられている。また、このような多糖類は芳香剤または消臭剤等に配合され、ゲル化剤としても利用されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4参照)。
【0004】
昨今、廃棄物の環境に対する負荷の問題から廃棄しても生分解するものや、リサイクルして加工できるもの等メリットのある材料の開発がなされている。一般には、生分解性を有する物質として乳酸やアミノ酸のポリマー等の高分子剤材料の開発や、リサイクルするという点ではポリエチレンテレフタレート(PET)の利用が進んでいる。
【0005】
また、水を含む材料として利用されているものとしては、ポリビニルアルコールやポリアクリル酸ナトリウム架橋体を代表に様々なゲル化剤が用いられ、その中で特に天然系の材料は、廃棄した際の生分解性を有する点や、人体への安全性等で環境問題において優位、かつ有意である。化学合成によって生じる廃水、廃ガス、廃溶剤などの環境への負荷を考慮することなく、産業上のどの分野においても安心して使用できる汎用性の広い物質である。
【0006】
【特許文献1】特開昭61−185541号公報
【特許文献2】特開平1−40542号公報
【特許文献3】特開平1−74239号公報
【特許文献4】特開平10−248505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、天然多糖類は、前記の如く主として食品への応用がいくつか試みられているが、従来から基剤として使用されているカラギーナン、ジェランガムは破断強度を上げるために配合量を増やすと、得られる水性組成物は離水が著しく、柔軟性に乏しいという問題があり、またカルシウムやマグネシウム等の金属イオンと反応させる必要があるため、その反応は不可逆的で再利用はできないという問題がある。また、寒天のゲルも離水が多く、破断強度は高く固い物性を示すが柔軟性に乏しく、硬くてもろい。さらに、ゼラチンは柔軟なゲルを生成するが強度は弱く、また40℃以上でゲルが溶融してしまう問題もある。
【0008】
また、これらの天然系のゲル化剤で得られた水性のゲル材料は、経時で蒸散により水分が放出していくが吸水性はない。よって、吸水を目的とした用途では使用できない。ましてや水分を放出した後に吸水させて再利用することは不可能である。
【0009】
本発明でいう吸水性とは水と接触した際に水を吸収する機能があるという意味であり、所謂、空気中に放置した際の吸湿性とは異なる。この吸水性のメリットとしては、水性ゲルが空気中で水分を蒸散した後に、再度水分を与えることでゲルが吸水して復元し、再利用が可能になるということであり、省資源と廃棄物減量の目的が大きい。
【0010】
一方で、ガラクトマンナン類とキサンタンガムを併用すると、離水のほとんどない強固なゲルを形成することは知られており、例えば特開2002−060546に開示されている。しかし、柔軟性、吸水性など、水性ゲルとして優れた性状を持つ一方で、加温してもゾルの粘度が高いため、製造時のハンドリングが非常に悪く、加工・充填の生産ラインで加圧や減圧等の機械的操作が必要となるなどその使用に制限があった。通常、加工するには80〜90℃に加温する必要があることから揮発性の高い物質や、熱に不安定な成分の配合が出来ないという問題もある。また、この物質は吸水性は有するものの、その速度が遅いため、再加工が面倒である。さらに、これらの水溶性高分子材料は、常温で水溶性は示さないため、排水に流して処理することはできないため、これらを廃棄する際は生ゴミや可燃ゴミとして廃棄することになるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、柔軟性、弾力性に富み、保存によるゲルの強度変化が小さく、ゾルの粘度が低く加工が容易で、きわめて離水の少ない物性を有し、さらには吸水性及び水溶性の機能を有するゲル状吸水材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ある特定のタマリンド種子多糖類及び水溶性有機物質を含有することを特徴とする水性ゲル材料が、柔軟性・弾力性に富み、ゲルの保存による強度変化が小さく、ゾルの粘度が低く加工が容易で、きわめて離水の少なく、さらには吸水性及び水溶性の機能の全てを有することを見出した。すなわち、本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、食物繊維90%以上、タンパク質1%以下、灰分1%以下のタマリンド種子多糖類、並びに多価アルコール及び水溶性界面活性剤の少なくとも1以上からなる水溶性有機物質を含有することを特徴とするゲル状吸水材である。
【0013】
本発明に係るゲル状吸水材は、前記タマリンド種子多糖類が、食物繊維92%以上、タンパク質0.5%以下、灰分0.5%以下であることが好ましく、前記タマリンド種子多糖類2〜50%、前記水溶性有機物質3〜50%を含有することがより好ましく、また揮発性有効成分を含有することが好ましい。さらに、本発明に係るゲル状吸水材において、前記水溶性有機物質は、2〜5価の多価アルコール及びHLB値10〜20の水溶性界面活性剤の少なくとも1以上からなることが好ましい。
【0014】
またさらに、本発明は、本発明のゲル状吸水材を基材として含有することを特徴とする芳香剤、消臭剤、除湿剤、貼布剤、及び釣具用擬似餌を提供するものである。
【0015】
タマリンド種子多糖類は、インド・ビルマなど東南アジア一帯に生息する多年生豆科植物タマリンダス・インディカの種子から抽出された多糖類である。一般には80℃以上に加熱することで水に完全溶解する。その水溶液はほぼニュートン粘性であり、耐酸・耐熱・耐塩性に優れており、食品分野において広く汎用されている。また砂糖や水飴といった糖や、エタノールの共存下で水性ゲルを形成することは知られているが、一般のタマリンド種子多糖類は、弾性はあるが、柔軟性は弱い、水性ゲルから離水する水分が多い、吸水性は有するが弱い点や、また保存中にゲルの破断強度の変化が著しいため種々の産業分野の材料として利用されることが少なく、産業分野としては、食感として離水の好まれるゼリー様の食品、または化粧品においてはゲル化剤としてでなく、保湿剤としてしか使用されてこなかった。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、柔軟性、弾力性に富み、保存による強度変化が小さく、ゾルの粘度が低く加工が容易で、きわめて離水の少なく、吸水性及び水溶性の機能を有するゲル状吸水材を提供することができる。このように、本発明に係るゲル状吸水材は、吸水性に優れているので、ゲル材料として使用して水分を放出したとしても、その後吸水させて再利用することができる。また、本発明に係るゲル状吸水材は、水溶性を有するので、破棄する場合、水に溶解させて排水として処理することができる。
【0017】
本発明に係るゲル状吸水材は、このような特徴により、医薬品、医療器具、医薬材料、家庭用品、家庭用雑貨だけでなく、材料として建築、農薬、飼料、肥料、塗料、インキ、セラミックス、樹脂または接着剤等の工業分野に幅広く利用することができ、成型が自由であることから球状、角状、棒状、フィルム状など様々な形態に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るゲル状吸水材について詳細に説明する。本発明に係るゲル状吸水材は、基本的には、タマリンド種子多糖類及び水溶性有機物質から構成される。
【0019】
まず、本発明のゲル状吸水材の成分であるタマリンド種子多糖類について説明する。本発明で用いられるタマリンド種子多糖類は、食物繊維90%以上、タンパク質1%以下、灰分1%以下のタマリンド種子多糖類であり、汎用のタマリンド種子多糖類に比べ水への不溶成分を除去もしくは低減した精製度の高いものである。好ましくは食物繊維92%以上、タンパク質0.5%以下、灰分0.5%以下のタマリンド種子多糖類を用いると良い。タマリンド種子多糖類の配合量は、水性ゲル材料中の2〜50%であることが好ましく、さらに好ましくは4〜40%、さらにもっと好ましくは5〜20%である。
【0020】
タマリンド種子多糖類に含まれる食物繊維の分析方法例としては、酵素重量法(Prosky−AOAC法)がある。また同じくタンパク質の分析方法の一例として、食品添加物公定書記載の窒素定量法としてのセミミクロケルダール法がある。検体0.5g中の窒素(N)の量を測定し、これに5.7を乗じて求めると良い(0.01N硫酸1ml=0.1401mgN)。さらに同じく灰分の分析方法の一例として、食品添加物公定書記載の次の方法がある。検体1gを採取し、静かに加熱して炭化し、さらに炭化物を認めなくなり恒量に達するまで500〜600℃に強熱し残留物の量を求めると良い。
【0021】
本発明において、柔軟性や弾力性に富み、ゲルの保存による強度変化が小さく、ゾルの粘度が低く加工が容易で、きわめて離水の少ない、さらには吸水性の機能を具備する水性ゲル材料を得るためには、例えばタマリンド種子多糖類中の水不溶成分の一部、またはすべてが分解、または/および除去処理されたものを用いるとよい。水不溶性成分の分解処理にはアルカリ、酸による加水分解、酵素による加水分解、除去処理には珪藻土、白土、活性炭、その他の粘土やセラミック類などの吸着剤処理が施されるのが一般的であり、例えば特開2003−82003に開示されている。このような精製を行ったタマリンドガムは市販品で入手することができ、例えば日清オイリオ(株)製ノムコートEP-2を使用することで、得られた水性ゲル材料は、弾力性や柔軟性、保存による強度変化が少なく、離水の少ない物性、さらには吸水性及び水溶性が高い機能を付与できる。また、この処理を施していない一般の精製度の低いタマリンド種子ガムでは、柔軟性やゲルの安定性、離水性、吸水性、水溶性の機能の面で満足するものは得られない。
【0022】
次に、本発明に係るゲル状吸水材の成分である水溶性有機物質について説明する。本発明で用いられる水溶性有機物質は、多価アルコール及び水溶性界面活性剤の少なくとも1以上からなり、一般的に市販及び流通されているものであれば特に制限を与えるものではない。多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、へキシレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、エリスリトール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、キシリトールなどが挙げられ、とりわけ、2〜5価の多価アルコールが好ましい。さらには、その他の物質として、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオシキエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の水溶性を示すHLB値が10〜20の界面活性剤が取り分け好ましいものとして挙げられ、前記の多価アルコール類と併用することがもっとも好ましい。上記の水溶性有機物質を含有しない場合はゲルが生成せず、水溶液となってしまう。
【0023】
柔軟性のある弾力に富み、保存による強度変化が小さく、きわめて離水の少ない、さらには吸水性の機能を有するゲル状吸水材を得るためには、水溶性有機物質の配合量の総量は、水性ゲル材料中の3〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜40重量%、さらにもっと好ましくは20〜35重量%である。
【0024】
本発明に係るゲル状吸水材は、水溶液や水中油型乳化物などの水相に、高分子化合物が膨潤することで3次元架橋構造を形成し、寒天やゼラチンのゲルのように流動性のない弾力を持ちつつも固体様の性質を示すものである。本発明に係るゲル状吸水材は、加温時のゾル状態の粘度が低いため、熱に不安定なものや揮発性の高い物質の配合において余計な熱履歴がかからず配合ができ、さらにはゲルからゾルに変化する温度は50℃以下で保存温度や輸送中に性状の変化することが少ない温度範囲であるため、汎用性は広く、例えば、芳香剤、消臭剤、貼布剤、擬似餌、除湿剤などで効果を発揮する。
【0025】
本発明の水性ゲル材料は、タマリンド種子多糖類及び水溶性有機物質以外に、さらに揮発性有効成分を含有することが好ましい。前記揮発性有効成分とは、例えば、揮発して人や他の生物に対し何らかの作用・有効性を有する成分(物質及び/又は混合物)などがあり、忌避防虫剤、殺菌剤や消臭剤、および香料などが挙げられる。
【0026】
なお、本発明の水性ゲル材料にその他の成分として、水溶性高分子、界面活性剤、固体・半固体・液状の油剤、無機塩、有機塩、防腐・抗菌剤、酸化防止剤、香料等を目的の物性に応じて配合してもよい。また、その他の成分を配合することについては本発明の特性を損なわない範囲であれば何ら問題ない。
【0027】
それぞれ特に限定されるものではないがいくつか例を挙げると、水溶性高分子としては、ローカストビーンガム、アラビアゴム、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、マルメロ等の植物系高分子、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン、カードラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン等の動物系高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系高分子;ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子;ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子等がある。
【0028】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等;アニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウムやパルミチン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸セッケン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸及びその塩、アミノ酸と脂肪酸の縮合等のカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸エステルのスルホン酸塩、脂肪酸アミドのスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、N−アシルアミノ酸系活性剤等が挙げられる。
【0029】
油剤としては、天然動植物油脂類、及び半合成油脂、炭化水素油、高級脂肪酸、エステル油、シリコーン油等があるが、天然動植物油脂類、及び半合成油脂としては、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、オリーブ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、牛脂、牛脚脂、牛骨脂、硬化牛脂、小麦胚芽油、ゴマ油、米胚芽油、米糠油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、菜種油、馬脂、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヒマワリ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミツロウ、ミンク油、綿実油、ヤシ油、硬化ヤシ油、落花生油、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、ラノリン脂肪酸イソプロピル、POEラノリンアルコールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエステル等;炭化水素としてはスクワラン、スクワレン、セレシン、パラフィン、パラフィンワックス、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等;高級脂肪酸としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等;エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、2−エチルヘキサン酸セチル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、リンゴ酸ジイソステアリル等;グリセライド油としては、トリイソオクタン酸グリセライド、トリイソステアリン酸グリセライド、トリイソパルミチン酸グリセライド、トリ2-エチルヘキサン酸グリセライド、トリミリスチン酸グリセライド等;シリコーン油としてはジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ステアロキシシリコーン等の高級アルコキシ変成シリコーン、アルキル変成シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、高級脂肪酸エーテル変性シリコーン等が挙げられる。
【0030】
無機塩としては、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0031】
有機塩としては、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用する。
【0032】
防腐・抗菌剤としては、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール類、サリチル酸、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。
【0033】
酸化防止剤としては、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。
【0034】
香料として具体的に、αーアミルシンナムアルデヒド、アラントラニル酸メチル、イソオイゲノール、γーウンデカラクトン、エチルバニリン、オイゲノール、クマリン、ケイ皮アルコール、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮酸メチル、ケイ皮エチル、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、酢酸シンナミル、酢酸テルピニル、酢酸フェニルエチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、酢酸1ーメンチル、酢酸リナリル、サリチル酸メチル、シトロネロール、シトロネラール、デシルアルデヒド、γーノナラクトン、バニリン、パラメチルアセトフェノン、ヒドロキシプロピルセルロース、ピペロナール、フェニルエチルアルコール、フェニル酢酸エチル、ベンジルアルコール、メチフェニルポリシロキサン、lーメントール、ヨノン、リナノール、シトラール、ボルネオール、テレピネロール、ネロリン、ジフェニルオキシド、アシニックアルデヒド、dlーカンフル、テレビン油、ユーカリ油、ニクズク油、杉葉油、じゃ香、竜せん香、ラベンダー油、チモール等及びこれらの混合物が挙げられる。また、単に芳香を放出するだけでなく、香りをかぐことにより、例えばラベンダー油のように精神的にリラックスさせる効果をもつもの、例えばユーカリ油やシトロネラ油のように目をさまさせる効果をもつもの、例えばl−メントールのように頭をすっきりさせる効果をもつものも含まれる。
【0035】
本発明の水性ゲル材料の製造方法としては、特に限定されないが、例えば水溶性有機物質を含む水中にタマリンド種子多糖類をプロペラなどを用いて分散させ、その後60℃以上95℃未満に加熱し溶解させた後、所望の配合成分を成分の特性に応じた温度(通常40〜90℃)にして添加し、好みの型に流し込み10〜30℃まで冷却することで水性ゲル材料を得る。また、場合によっては、これを乾燥機などで水分を蒸散させ水分量を調整することにより得ることもできる。また、香料や熱に不安定な物質、揮発性物質などの、熱を嫌う物質は極力低い温度で加えるとよい。
【0036】
本発明に係るゲル状吸水材の応用例としては、芳香剤、消臭剤、乾燥剤、貼布剤の基材、女性、乳児、老人介護に用いる衛生用具の吸水樹脂、生分解性が求められる遊具類、生体の弾性を持つ擬似材料などがある。
【実施例】
【0037】
本発明を以下実施例によって具体的に説明するが、これらは本発明を例証するためのものであって、本発明を何ら限定するものではない。なお、以下の実施例及び比較例においての配合量は質量%である。
【0038】
(1)タマリンド種子多糖類の調製
先ず、市販のタマリンド種子多糖類(大日本製薬(株):表1のサンプルNo.4)を以下のように処理することによって表1に示すタマリンド種子多糖類を得た。すなわち、タマリンド種子多糖類粉末100gを水10リットルに分散し、加熱溶解した。この溶液を活性炭処理後、精密ろ過した。さらにこの溶液に、沈殿が発生するまでアルコールを加え得られた沈殿物を乾燥し粉砕し、サンプルを得た。このとき添加する活性炭の量を変えることで、サンプルNo.1〜3、および5を得た。No.1〜3のタマリンド種子多糖類は、本発明の実施例に使用し、No.4及び5のタマリンド種子多糖類は、比較例に使用した。
【0039】
【表1】

【0040】
(2)水性ゲル材料の調製
表2〜4の配合組成に従い25℃ですべての成分を混合、攪拌しながら、加温を開始し、80℃で30分攪拌して溶解した。それぞれ全量500gの実施例1〜9と比較例1〜6のゲル状吸水材に用いるゾル溶液を得た。
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
(3)ゾルの粘度測定と評価
(2)で調整したゲル状吸水材(実施例1〜9と比較例1〜6)の溶液の粘度を、60℃、BL型粘度計(東機産業社製)、12rpm、1分後の読み値を換算することで粘度値を測定した。溶液の粘度が10000mPa・sを下回るときは作業が容易(ハンドリングが容易)で、逆に30000mPa・sを上回ると困難になったため、評価は○(10000mPa・s未満)、△(10000〜30000mPa・s未満)、×(30000mPa・s以上)とした。これらの測定結果及び評価を表5及び表6に示した。
【0045】
【表5】

【0046】
【表6】

【0047】
(4)ゲルの破断試験と評価
(1)で調整したゲル状吸水材(実施例1〜9と比較例1〜6)の溶液を深型シャーレ(60mmφ×60mm)にやや溢れる程度に分注した後、25℃で24時間静置し、水性ゲル材料を得た。その後、シャーレからはみ出した部分をナイフで平らにカットしてサンプルとした。破断試験はレオメーター(レオテック社製:FUDOHレオメーターD・Dシリーズ)を用いて評価した。試作品を直接圧縮するアダプターとして直径10mm円盤型を取り付け、圧縮速度30cm/分にて20mm圧縮して、破断するか否かを観察し、破断しない場合○、破断した場合×とした。これらの測定結果及び評価を表5及び表6に示した。
【0048】
(5)ゲルの保存試験と評価
(3)と同様の方法でゲル状吸水材を2サンプル調製し、その1つを同様の条件でゲルを圧縮し破断強度を測定した。また、もう1つは水分が蒸散しないように50℃で、1週間放置した後、25℃で24時間放置し、同様の条件でゲルの破断強度を測定した。破断強度の変化率に関しては、保存前初期値と比べて、○(0〜150%)、△(151〜300%)、×(300%以上、または0%未満)として評価した。これらの測定結果及び評価を表5及び表6に示した。
【0049】
(6)水性ゲル材料の離水現象の評価
(3)と同様に調製したゲル状吸水材をシャーレから取り出し、水分蒸散を防ぐため極力空間の残らないよう密封できるビニール袋に入れ25℃、1週間放置した時目視により評価を行った。離水して溜まった水分をピペットで吸い取り、吸い取った水分の重量のゲルに対する比により、○(離水がないもしくは1重量%未満)、△(離水量が1〜10重量%未満)、×(離水量が水性ゲル材料に対し10%重量比以上)とした。本発明品、比較品の測定結果は表2に示した。これらの測定結果及び評価を表5及び表6に示した。
【0050】
(7)吸水性の測定及び評価(水性ゲル材料の吸水性)
(3)と同様に調製したゲル状吸水材をシャーレから取り出し、その小片10gと水5gを100mlビーカーに入れ、吸水性の有無と1時間後の水分量により吸水性の速度を測定し、吸収性を○(水分を80〜100%吸収する)、△(水分を10〜80%未満吸収する)、×(水分を10%未満吸収する、もしくは全く吸収しない)として評価した。本発明品、比較品の測定結果及び評価を表5及び表6に示した。
【0051】
(8)吸水性の測定及び評価(乾燥物の吸水性の評価)
(1)で調製したゲル状吸水材の溶液を、ステンレスバットに流し込み40℃の恒温槽内24時間乾燥させた後、シート状の組成物を得た。これを乾燥させる元の重量になるよう加水させた時の様子を観察し評価した。その結果、さらに吸水後ゲルに復元したもの(○)、一部吸水はするが元のゲルに復元しないもの(△)、吸水しないもの(×)とした。本発明品、比較品の評価を表5及び表6に示した。
【0052】
(9)吸水性の測定及び評価(水性ゲル材料の溶解性)
(3)と同様に調製した水性ゲル材料をシャーレから取り出し、その小片10gと水1000gを2lビーカーに入れ、吸水性の有無と1時間後の水分量により溶解性の速度を測定し、溶解性を○(全て溶解する)、△(一部溶け残りがある)、×(溶けない)として評価し、溶解性の有無を確認した。本発明品、比較品の評価を表5及び表6に示した。
【0053】
(10)総合評価
各項目のうち、一つでも×があった場合は×とし、△があった場合は△とした。すべて○の場合の時のみ○とし、本発明品、比較品の評価を表5及び表6に示した。
【0054】
以下に本発明のゲル状吸水材を用いる他の実施例を示す。
実施例10(芳香剤)
25℃、羽根型攪拌機で攪拌しながら、表7に示す配合で多価アルコール中にタマリンド種子ガムを徐添し、分散した後精製水を添加し加温を開始し、80℃で30分攪拌して溶解した。その他の香料以外の成分を添加し、50℃まで調温してから香料を添加し、適当な型に流し込み冷却することによって、実施例10に係るゲル状芳香剤を得た。
【0055】
【表7】

【0056】
次に、実施例10に係る芳香剤について評価を行った。この芳香剤に関し、乾燥吸水性については25℃、湿度50%下の室内において2週間放置し、重量が50%まで減量したものに元の重量になるよう水分を補正して吸水させると、元の形に復元した。その後、芳香剤として使用したが、香気については復元する前よりやや劣ったものの、使用するには充分な効果を示した。また、2週間後、使用し終わった時点でシンクの排水口に廃棄し毎分3リットルの水を流したところ、30分後には溶解消失していた。この芳香剤が材料特性は優良で、また環境商品としても利用できることがわかった。また、該芳香剤を、表5及び表6と同様の評価方法で試験を行ったところ、すべての試験において合格であった。
【0057】
実施例11(貼布剤)
25℃、羽根型攪拌機で攪拌しながら、表8に示す配合で多価アルコール中にタマリンド種子ガムを徐添し、分散した後精製水を添加し加温を開始し、80℃で30分攪拌して溶解した。メントール以外のその他の成分を添加し溶解し、40℃まで調温してからメントールを添加し、適当な型に流し込み冷却することによって、実施例11に係る平板状の貼布シート剤を得た。
【0058】
【表8】

【0059】
次に、実施例11に係る貼布剤について評価を行った。この貼布剤に関して、乾燥吸水性については人体に25℃、湿度50%下の室内において24時間貼布し、重量が80%まで減量したものに元の重量になるよう水分を補正して吸水させると、元の形に復元した。その後、同様に24時間貼布して使用したが、メントールの清涼感については復元する前より劣ったが、冷却効果は使用するに充分であった。また、使用し終わった時点でシンクの排水口に廃棄し毎分3リットルの水を流したところ、10分後には溶解消失していた。この貼布剤が材料特性は優良で、また環境商品としても利用できることがわかった。また、この貼布剤と同様の配合物を、乾燥吸水性以外の、表3と同様の試験を行ったところ、すべての試験において合格であった。
【0060】
実施例12(子供用遊具)
25℃、羽根型攪拌機で攪拌しながら、表9に示す配合で多価アルコール中にタマリンド種子ガムを徐添し、分散した後精製水を添加し加温を開始し、80℃で30分攪拌して溶解した。色素以外のその他の成分を添加し溶解し、60℃まで調温してからメントールを添加し、適当な人形型に流し込み冷却することによって、実施例12に係る子供用遊具を得た。
【0061】
【表9】

【0062】
次に、実施例12に係る子供用遊具について評価を行った。この子供用遊具に関し、乾燥吸水性については人体に25℃、湿度50%下の室内において1週間放置し、重量が60%まで減量したものに元の重量になるよう水分を補正して吸水させると、元の形に復元した。その後、1週間放置し、2回同様の操作を繰り返したが、同様に復元した。その後浴室の風呂水の残りに12時間浮遊させたところ、溶解消失していた。この遊具が材料特性は優良で、また環境商品としても利用できることがわかった。また、この遊具と同様の配合物を、乾燥吸水性以外の、表5と同様の試験を行ったところ、すべての試験において合格であった。
【0063】
実施例13(釣り用擬似餌)
25℃、羽根型攪拌機で攪拌しながら、表10に示す配合で多価アルコール中にタマリンド種子ガムを徐添し、分散した後精製水を添加し加温を開始し、80℃で30分攪拌して溶解した。天然色素、誘引剤以外のその他の成分を添加し溶解し、40℃まで調温してから天然色素、誘引剤を添加し、適当な型に流し込み冷却し、虫型の成型物を得た。その後に40℃で48時間乾燥させ、水分を50%程度蒸散させることによって、実施例13に係る釣具用疑似餌を得た。(実質のタマリンドガム種子の含量は12%)
【0064】
【表10】

【0065】
次に、実施例13に係る釣具用疑似餌の評価を行った。この釣具用擬似餌を、釣り針に付け、魚の居ない海中の生け簀に投げ入れた。1時間後に引き上げて、重量を測定したところ、吸水して元の重さの倍になっていたが、3時間後には完全に溶解していた。この擬似餌が材料特性は優良で、また環境商品としても利用できることがわかった。また、その後、魚の居る生け簀にこの疑似餌を3回投げ入れたところ、3分以内に魚が食いついた。乳酸ポリマーで同量の誘引剤を混合しても3回とも食いつくまで10分以上時間を要したことから、適度な溶解性が誘引剤を溶出し魚が誘引されやすくなるというメリットが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食物繊維90%以上、タンパク質1%以下、灰分1%以下のタマリンド種子多糖類、並びに多価アルコール及び水溶性界面活性剤の少なくとも1以上からなる水溶性有機物質を含有することを特徴とするゲル状吸水材。
【請求項2】
食物繊維92%以上、タンパク質0.5%以下、灰分0.5%以下のタマリンド種子多糖類及び水溶性有機物質を含有することを特徴とする請求項1記載のゲル状吸水材。
【請求項3】
前記タマリンド種子多糖類2〜50%、前記水溶性有機物質3〜50%を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のゲル状吸水材。
【請求項4】
さらに揮発性有効成分を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のゲル状吸水材。
【請求項5】
前記水溶性有機物質は、2〜5価の多価アルコール及びHLB値10〜20の水溶性界面活性剤の少なくとも1以上からなることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載のゲル状吸水材。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか記載のゲル状吸水材を基材とした芳香剤。
【請求項7】
請求項1乃至5いずれか記載のゲル状吸水材を基材とした消臭剤。
【請求項8】
請求項1乃至5いずれか記載のゲル状吸水材を基材とした除湿剤。
【請求項9】
請求項1乃至5いずれか記載のゲル状吸水材を基材とした貼布剤。
【請求項10】
請求項1乃至5いずれか記載のゲル状吸水材を基材とした釣具用擬似餌。

【公開番号】特開2006−8920(P2006−8920A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190756(P2004−190756)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【出願人】(000118615)伊那食品工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】