説明

ゲル状組成物

【課題】
本発明はホエープロテインを含むゲル状組成物でありながら、透明感と粒感を有するゲル状組成物の提供を目的とする。
【解決手段】
ホエープロテインと寒天と水を含有し、25℃におけるpHが3.5〜4であり、ゲル状組成物100gあたりのカルボキシル基のモル当量が0.0032以下であるゲル状組成物とすることによって、ホエープロテインを含むゲル状組成物でありながら、透明感と粒感を有するゲル状組成物が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゲル状組成物に関し、より詳しくは透明感と粒感を有するゲル状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在ホエープロテインを含むゲル状組成物としては、栄養成分のバランスのとれたゼリー状携帯食などが複数上市されている。これらは概ねホエープロテインを3〜7重量%含有するが、波長800nmにおける光の透過率が0〜5%であり、透明感がない。
また、特許文献1にはホエープロテインを含むゲル状組成物として、各栄養素をバランスよく含有し、清涼感のある低pHと飲食(喫飲)に適した軟らかいゲル状形態を有しており、しかも該形態を長期間安定に保持しうる、総合栄養補給用ゲル状飲料組成物が開示されている。
しかしこれら従来のホエープロテインを含むゲル状組成物は外観上透明感がなく、また糊状の食感を呈し粒感が感じられないものなので、外観的および食感的に好ましいものではなかった。
【特許文献1】WO2004/010796
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はホエープロテインを含むゲル状組成物でありながら、透明感と粒感を有するゲル状組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ホエープロテインと寒天と水を含有し、25℃におけるpHが3.5〜4であり、ゲル状組成物100gあたりのカルボキシル基のモル当量が0.0032以下であるゲル状組成物とすることによって、ホエープロテインを含むゲル状組成物でありながら、透明感と粒感を有するゲル状組成物が得られることを見出し、本願発明を完成させた。すなはち、本願発明は以下に示すものである。

(1)ホエープロテインと寒天と水を含有し、25℃におけるpHが3.5〜4であり、
ゲル状組成物100gあたりのカルボキシル基のモル当量が0.0032以下であ
るゲル状組成物。
(2)殺菌工程においてゼリー調合液が65〜95℃まで加熱される
(1)に記載のゲル状組成物。
(3)25℃におけるpHが3.7〜3.9である(1)または(2)に記載のゲル状組
成物。
(4)ホエープロテインを1.5〜9重量%含有する(1)〜(3)のいずれかに記載の
ゲル状組成物。
(5)グアーガムを含有する(1)〜(4)のいずれかに記載のゲル状組成物。
(6)ゲル状組成物100gあたりのカルボキシル基のモル当量が0.0016以下であ
る(1)〜(5)のいずれかに記載のゲル状組成物。
【発明の効果】
【0005】
本発明はゲル状組成物を、ホエープロテインと寒天と水を含有し、25℃におけるpHが3.5〜4であり、ゲル状組成物100gあたりのカルボキシル基のモル当量が0.0032以下、としたことにより、ホエープロテインを含むゲル状組成物でありながら、透明感と粒感を有するので、従来品よりも外観および食感的により好ましいゲル状組成物を提供できる。本発明のゲル状組成物は、波長800nmにおける光の透過率が5%以上であり、従来品よりも優れた透明感が得られる。本発明のゲル状組成物には適度なゲル強度を付与することも可能であるから、ホエープロテイン含有チアパックドリンクゼリーのみならず、カップゼリーなどにも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(定義)
ホエープロテイン
ホエープロテインとは、牛乳からカゼイン等を除いた乳清(ホエー)に含まれるタンパク質を言い、ラクトアルブミン、ラクトグロブリン、ラクトフェリン等がその主成分である。ホエープロテインは、持久力向上、疲労回復、免疫力強化等の機能があることが知られている他、運動栄養食品やダイエット用食品等にタンパク質補給素材として使われたりしている。
本発明のゲル状組成物最終製品に占めるホエープロテインの組成は9.0重量%以下が好ましい。
【0007】
糖質
糖質としては特に限定されず、各種単糖類、二糖類、水飴、糖アルコール、オリゴ糖、デキストリン等が使用できる。
前記単糖類としては、例えば、グルコース(ブドウ糖)、果糖、異性化液糖、ガラクトース、マンノース、リボース、アラビノース、キシロース、ラムノース、ソルビトール、マンニトール、などが挙げられる。
前記二糖類としては、例えば、シュクロース(蔗糖)、マルトース、ラクトース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、パラチノース、トレハロース、などが挙げられる。
前記水飴としては酸糖化水飴、還元水飴などが挙げられる。
前記糖アルコールとしては、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、マルチトール、ラクチトール、還元パラチノースなどが挙げられる。
前記デキストリンとしてはマルトデキストリンなどが挙げられる。
スポーツ栄養を目的とするゼリーの場合は、異性化液糖、トレハロース、マルトデキストリンなどが好ましく用いられる。
【0008】
甘味料
前記糖質以外の甘味料として、アステルパーム、アセスルファムカリウム、ステビオサイド、グリチルリチン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ソーマチンなどを使用することも可能である。
【0009】
ゲル化剤
ゲル化剤としては、寒天が挙げられるが、特にアガロペクチン含有率が低いか、または、ミネラル含有率が低い寒天がよりいっそう好ましい。
本発明のゲル状組成物最終製品に占めるゲル化剤の組成は0.3〜0.6重量%が好ましい。
【0010】
増粘剤
増粘剤としては、ローカストビーンガム、プルラン、グアーガム、グルコマンナン、タマリンドシードガム、タラガム等が挙げられる。
本発明のゲル状組成物最終製品全体重量に対する増粘剤の添加量は、0.05〜0.15重量%が好ましい。
【0011】
酸味料
前記酸味料としては、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、酢酸、乳酸、グルコン酸、コハク酸等の各種有機酸の他、リン酸、フィチン酸、アスコルビン酸などを使用できる。
本発明のゲル状組成物100gあたりのカルボキシル基のモル当量は0.0032以下が好ましく、0.0016以下がより好ましい。

そのほか、本発明では目的に応じて適宜、ペプチド、アミノ酸、香料、着色料、乳化剤、ビタミン(B1,B2,B6,ナイアシン等)等を、本発明の目的の範囲内で添加しても良い。
【0012】
製造方法
本発明のゲル状組成物の製造方法は例えば次のとおりである。
まず寒天を水に分散して95℃付近で加熱溶解する。このとき目的に応じて増粘剤等を加えても良い。これとは別に、ホエープロテインを水に溶解する。このとき目的に応じて糖質等を加えても良い。
次にこのホエープロテイン水溶液を前述の寒天水溶液と混合する。
さらに必要に応じて、ビタミン、甘味料、酸味料、着色料、乳化剤、香料なども添加溶解し、ゼリー調合液を得る。
こうして得られたゼリー調合液を容器に充填し殺菌するが、殺菌は容器充填の前または後に行う。殺菌は容器充填前に行うのであれば通常のプレートヒーターやチューブラーヒーターなどを使用することができ、充填後に行うのであれば通常の湯槽殺菌などを使用することができる。
ゼリー調合液を充填する容器は殺菌に適するものであれば特に限定されないが、いわゆるチアパック容器などが好ましく使用できる。
なお本発明のゲル状組成物の製造方法は上記の方法に限定されず、本発明の目的の範囲内において種々の変更を加えても良い。
【0013】
光の透過率測定方法
本願明細書における光の透過率の測定方法は、通常の分光光度計によるものであり、具体的には光路長1cmのプラスチックセルに測定資料を入れ、水をブランク資料として波長800nmの光の吸収率を算出する。したがって、ブランク資料である水の光の透過率は100%となる。
【0014】
カルボキシル基のモル当量測定方法
本願明細書においては、通常の液体クロマトグラフィーによる有機酸の分析によって各有機酸の含有量を測定し、それぞれの酸の含有量にそれぞれの酸の価数を乗じて算出した値をカルボキシル基のモル当量とする。
【0015】
透明感および粒感の官能評価方法
透明感と粒感は専門パネル10名の官能評価平均値によって評価した。

pH測定方法
通常のガラス電極を用いて、25℃においてゲル状組成物そのままを測定した。

次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0016】
実施例および比較例
以下の製法に従って、下記表1の実施例1〜9および比較例1のゲル状組成物を調製し、表中に示した特性の測定および官能評価を行った。
まず寒天(CERO AGAR;Roeper社製)とグアーガムを水に分散して95℃で加熱溶解した。これとは別に、ホエープロテイン(ALACEN895;フォンテラジャパン株式会社製)とトレハロース、マルトデキストリン、異性化糖を水に溶解した。そして、このホエープロテイン含有水溶液を前述の寒天含有水溶液と混合した。さらにクエン酸、リン酸、リン酸三ナトリウムを添加溶解し、ゼリー調合液を得た。こうして得られたゼリー調合液をチアパック容器に充填した。殺菌は実施例1〜7においてはチューブラーヒーターを用いて92℃達温で容器充填の前に行い、また、実施例8,9および比較例1においては容器充填後に湯槽殺菌によってゲル状組成物の中心部が65℃に達してから10分間保持して行った。
【0017】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホエープロテインと寒天と水を含有し、25℃におけるpHが3.5〜4であり、ゲル状組成物100gあたりのカルボキシル基のモル当量が0.0032以下であるゲル状組成物。
【請求項2】
殺菌工程においてゼリー調合液が65〜95℃まで加熱される請求項1に記載のゲル状組成物。
【請求項3】
25℃におけるpHが3.7〜3.9である請求項1または2に記載のゲル状組成物。
【請求項4】
ホエープロテインを1.5〜9重量%含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のゲル状組成物。
【請求項5】
グアーガムを含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のゲル状組成物。
【請求項6】
ゲル状組成物100gあたりのカルボキシル基のモル当量が0.0016以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のゲル状組成物。

【公開番号】特開2008−148636(P2008−148636A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340559(P2006−340559)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【Fターム(参考)】