説明

ゲル状芳香剤、消臭剤用ゲル化材

【課題】 日光に対する吸水ゲルの長期安定性に優れたゲル状芳香剤用又はゲル状消臭剤用ゲル化材を提供する。
【解決手段】 窒素原子含有単量体(a)と(メタ)アクリル酸(塩)(b)を必須構成単量体単位とする架橋重合体(A)からなり、下記の要件(i)、(ii)および(iii)を具備するゲル状芳香剤用又はゲル状消臭剤用ゲル化材。
(i):イオン交換水吸収倍率が50倍以上である。
(ii):イオン交換水で50倍に膨潤させたゲル(G1)のゲル強度(GS1)が1.0〜10.0kN/m2である。
(iii):該膨潤ゲル(G1)のゲル強度(GS1)と、JISK7350−2に準拠した耐光性試験に基づき、3時間照射を行った後のゲル(G2)のゲル強度(GS2)を比較したときのゲル強度保持率(=GS2/GS1×100)が50%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゲル状芳香剤用又はゲル状消臭剤用のゲル化材に関する。さらに詳しくは、日光に対する吸水ゲルの長期安定性に優れたゲル状芳香剤用又はゲル状消臭剤用ゲル化材、およびこのゲル化材を用いたゲル状芳香剤又はゲル状消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゲル状芳香剤やゲル状消臭剤に適したゲル化材としては、寒天やカラギーナンと吸水性ポリマーを併用するもの(例えば、特許文献1)、カルボキシビニルポリマーとアルカリとの中和物(例えば、特許文献2)、N−ビニルアセトアミド共重合物の架橋物(例えば、特許文献3)等が挙げられる。
さらに、吸水ゲルの耐光性の向上方法として、水溶性紫外線吸収剤を添加する方法(例えば、特許文献4)が挙げられる。
【特許文献1】特開昭56−57451号公報
【特許文献2】特開平1−119258号公報
【特許文献3】特開2002−80681号公報
【特許文献4】特開平2−64163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、寒天やカラギーナンを用いた場合には、製造時に加熱溶解させる工程が必要となり、高い温度で芳香剤成分や消臭剤成分を添加せざるを得ないため、これらの成分に悪影響を及ぼすという問題がある。
その一方、寒天やカラギーナン以外のゲル化材は日光に対する耐光性に乏しい。耐光性向上のため水溶性紫外線吸収剤を通常量添加するだけでは効果が不十分で、芳香剤や消臭剤としての末端商品を店舗内に長期間置いた際にゲル状物が徐々に崩壊して製品外観が悪くなったり、芳香剤成分や消臭剤成分を含有した水性液体を保持しきれなくなって分離したり、さらに保持しきれなくなった成分が揮散してしまって商品価値が低下するという問題がある。
充分な効果を発揮するだけの多量の紫外線吸収剤を添加した場合には、ゲルから液が離水してしまい、必要な成分を保持できないという問題があった。
本発明は、悪影響を及ぼす添加物を配合することなく、吸水ゲルそのものの耐光性を向上させることで、必要量の芳香剤成分または消臭剤成分を保持し、かつ商品陳列中に経時変化を起こすことのないゲル化材、及びこのゲル化材と芳香剤成分とからなるゲル状芳香剤、このゲル化材と消臭剤成分とからなるゲル状消臭剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、窒素原子含有単量体(a)と(メタ)アクリル酸(塩)(b)を必須構成単量体単位とする架橋重合体(A)からなり、下記の要件(i)、(ii)および(iii)を具備するゲル状芳香剤用又はゲル状消臭剤用ゲル化材;該ゲル化材と芳香剤成分とからなるゲル状芳香剤;該ゲル化材と消臭剤成分とからなるゲル状消臭剤である。
(i):イオン交換水吸収倍率が50倍以上である。
(ii):イオン交換水で50倍に膨潤させたゲル(G1)のゲル強度(GS1)が1.0〜10.0kN/m2である。
(iii):該膨潤ゲル(G1)のゲル強度(GS1)と、JISK7350−2に準拠した耐光性試験に基づき、3時間照射を行った後のゲル(G2)のゲル強度(GS2)を比較したときのゲル強度保持率(=GS2/GS1×100)が50%以上である。
【発明の効果】
【0005】
本発明のゲル化材、ゲル状芳香剤、ゲル状消臭剤は、下記の効果を有する。
(1)本発明のゲル化材を用いた吸水ゲルは、紫外線吸収剤などの添加剤を使用しなくても耐光性に非常に優れるため、芳香性物質や消臭性物質を含有した水性液体を所定量吸収しきれなかったり、吸水ゲルが経時変化を起こして離液したり、ゲルの形状が変化したりすることがない。
(2)本発明のゲル状芳香剤、ゲル状消臭剤は、耐光性に非常に優れるため、商品陳列中の経時変化が起こらず、商品価値の低下を招くことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明において、架橋重合体(A)は、窒素原子含有単量体(a)と(メタ)アクリル酸(塩)(b)を必須構成単量体単位とする架橋重合体である。
窒素原子含有単量体(a)としては、N−ビニルアミン、N−アルキル−N−ビニルアミン、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリドン等を例示することができ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中で好ましいものは、N−ビニルアミン、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドであり、さらに好ましいものは、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドである。
なお、本発明において「(メタ)アクリル・・・」とは、「アクリル・・・」及び「メタクリル・・・」の少なくとも一方を意味し、「・・・酸(塩)」とは、「・・・酸」及び「・・・酸塩」の少なくとも一方を意味する。
塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩が含まれる。
【0007】
本発明の架橋重合体(A)中の窒素原子含有量は、(A)の質量に基づいて通常2〜32質量%であり、4〜25質量%が好ましく、5〜20質量%がさらに好ましく、6〜18質量%が特に好ましい。窒素原子含有量が2質量%未満であると、必要な耐光性が得られず、32質量%を超えると、イオン交換水の吸収倍率が低くなりすぎる。
【0008】
架橋重合体(A)としては、次の(AT)及び(AC)が挙げられる。
架橋重合体(AT):窒素原子含有単量体(a)と(メタ)アクリル酸(塩)(b)の共重合体(P)の熱架橋により得られる架橋重合体。
架橋重合体(AC):窒素原子含有単量体(a)と(メタ)アクリル酸(塩)(b)を構成単位とし、架橋剤(c)によって架橋されてなる架橋重合体。
【0009】
架橋重合体(AT)及び架橋重合体(AC)の何れにおいても、(a)と(b)以外に、必要により他の水溶性エチレン性不飽和単量体(d)を併用してもよい。
このような水溶性エチレン性不飽和単量体(d)としては、スルホアルキル(メタ)アクリレートやその塩、2−アクリルアミドー2−メチルプロパンスルホン酸(塩)、スチレンスルホン酸(塩)、マレイン酸(塩)及びイタコン酸(塩)等を例示できるが、(a)及び(b)と共重合可能なエチレン性水溶性不飽和単量体であれば何ら限定されるものではない。これらのエチレン性水溶性不飽和単量体は、所定量の範囲で2種以上を併用してもよい。
【0010】
上記の熱架橋により得られる架橋重合体(AT)の中間体である共重合体(P)における各成分の共重合比率は、ゲル化の対象となる芳香剤又は消臭剤溶液の種類や濃度、必要な吸水ゲルのゲル強度等によっても異なるが、(a)は好ましくは20〜99質量%、さらに好ましくは25〜90質量%、特に好ましくは30〜80質量%であり、(b)は好ましくは1〜80質量%、さらに好ましくは10〜75質量%、特に好ましくは20〜70質量%である。
必要により他の水溶性エチレン性不飽和単量体(d)を併用する場合には、通常10質量%以下である。(a)の割合が20質量%未満では、必要な耐光性が得られず、好ましくない。一方、(b)の割合が1質量%未満では、イオン交換水に対する吸収倍率が低下するため、芳香性物質や消臭性物質を含有した水性液体をゲル化することができず、また膨潤ゲルの強度が低下してしまうため好ましくない。
【0011】
共重合体(P)中の、(b)の中和度は、好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは60〜100モル%、特に好ましくは70〜100モル%である。
中和度が50モル%未満では、(メタ)アクリル酸が十分に解離せず、イオン交換水の吸収量が低下する。(メタ)アクリル酸の中和は、各種塩の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等)を添加することにより行われる。(メタ)アクリル酸の中和は、重合前のモノマー段階で中和してもよいし、重合後の含水ゲルに各種塩の水酸化物を添加することによって行ってもよい。
【0012】
共重合体(P)は、未架橋の水溶性高分子である。この共重合体(P)の固有粘度[η](分子量の指標)は、好ましくは15〜50、さらに好ましくは20〜40、特に好ましくは25〜30である。固有粘度[η]が15未満では、重合体の分子量が低すぎ、(P)を熱架橋して得られる架橋重合体(AT)のイオン交換水吸収量、保水性能及び吸水ゲルのゲル強度が低下する。50以上では、重合後の含水ゲルの取り扱いが困難となり、製造しにくくなる。
【0013】
固有粘度[η]は以下の方法で測定、算出した。
[共重合体(P)の固有粘度[η]の測定]
未架橋の共重合体(P)の乾燥物0.20g(または含水ゲル、純分0.20g換算量)と、5%の塩化ナトリウム水溶液199.80gをビーカーに入れ、マグネティックスターラーを用いて300rpmで3時間撹拌し均一に溶解させ、純分0.10%の測定試料を作成した。この測定試料を5%の塩化ナトリウム水溶液で希釈して、それぞれ純分0.05%、0.03%、0.01%の測定試料を作成した。30℃±0.1℃に調整した恒温槽の水中にキャノンフェンスケ粘度計を垂直に入れ、この中に各測定試料溶液10mlを入れ、30分温調後、流出時間(秒)を測定した。同様に5%塩化ナトリウム水溶液単独の流出時間を同一条件で測定してブランクとした。還元粘度ηSP/Cを下式により算出した。
ηSP/C=(t−t0)/t0×1/C
ただし、t :測定試料溶液の流出時間
0 :5%塩化ナトリウム水溶液単独の流出時間
C :測定試料溶液の濃度
ηSP :比粘度
方眼紙の横軸に各測定試料溶液の濃度C(%)を、縦軸に還元粘度ηSP/Cをとり、各測定点をプロットして各測定点を通る直線を引き、縦軸と交わる点(C=0)におけるηSP/C=固有粘度[η]を求めた。
【0014】
共重合体(P)を得るための重合方法としては、公知の重合方法が適用でき、例えば溶液重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法、薄膜重合法、噴霧重合法等が挙げられる。これらの重合方法のうち、好ましくは溶液重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、乳化重合法であり、さらに好ましくは溶液重合法、逆相懸濁重合法、乳化重合法であり、特に好ましくは溶液重合法、逆相懸濁重合法である。
重合制御の方法としては、例えば断熱重合法、温度制御重合法、等温重合法等が挙げられる。好ましくは断熱重合法、温度制御重合法である。
重合開始方法としては、例えば重合開始剤を用いる方法、放射線、紫外線、電子線等を照射する方法が挙げられる。好ましくは重合開始剤を用いる方法である。
【0015】
重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤及びレドックス系開始剤からなる群より選ばれる開始剤が使用できる。
アゾ系開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド等が挙げられる。
過酸化物系開始剤としては、無機過酸化物[過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等]、有機過酸化物[過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート等]が挙げられる。
レドックス系開始剤としては、アルカリ金属塩の亜硫酸塩もしくは重亜硫酸塩、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸アンモニウム、塩化第2鉄、硫酸第2鉄またはL−アスコルビン酸等の還元剤と、アルカリ金属の過硫酸塩、過硫酸アンモニウム、過酸化水素または有機過酸化物等の酸化剤との組み合わせよりなるもの等が挙げられる。これらは2種類以上を併用してもよい。
開始剤の使用量は、単量体の合計質量に対して、共重合体の重合度を大きくするために好ましくは0.000001〜3.0質量%、より好ましくは0.000001〜0.5質量%である。
【0016】
重合時に連鎖移動剤を使用してもよく、例えばチオール類(n−ラウリルメルカプタン、メルカプトエタノール、トリエチレングリコールジメルカプタン等)、チオール酸類(チオグリコール酸、チオリンゴ酸等)、2級アルコール類(イソプロパノール等)、アミン類(ジブチルアミン等)、次亜燐酸塩類(次亜燐酸ナトリウム等)等を挙げることができる。これらは2種類以上を併用してもよい。連鎖移動剤を使用する場合の使用量は、単量体の合計質量に対して、好ましくは0.001〜1質量%である。
【0017】
重合開始温度は使用する開始剤の種類等によっても異なるが、好ましくは−10℃〜100℃、より好ましくは共重合体の重合度をアップするために−10℃〜80℃である
重合時の溶存酸素量に関しては、ラジカル開始剤の添加量等にもよるが、0〜2ppm(2×10-4重量%以下)が好ましく、0〜0.5ppm(0.5×10-4重量%以下)がより好ましい。これらの範囲であると、高重合度の共重合体(P)を製造することができる。
溶液重合法及び逆相懸濁重合のいずれの場合においても、重合時の単量体濃度である重合濃度は、通常10〜60質量%、好ましくは20〜50重量%である。重合濃度が10%未満では、共重合体(P)の分子量が上がりにくく、また非効率的である。重合濃度が60%を越えると、重合温度等がコントロールしにくくなる。
また、重合温度に関しては−10〜100℃が好ましく、−10〜80℃がより好ましい。
【0018】
逆相懸濁重合を行う場合には、必要により重合時に分散剤を使用してもよい。分散剤としては、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)が3〜8のソルビタンモノステアリン酸エステル等のソルビタン脂肪酸エステル類、グリセリンモノステアリン酸エステル等のグリセリン脂肪酸エステル類及びショ糖ジステアリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル類等の界面活性剤;エチレン/アクリル酸共重合体のマレイン化物、エチレン/酢酸ビニル共重合体のマレイン化物、及びスチレンスルホン酸(塩)/スチレン共重合体の様に分子内に親水性基を有しかつ、単量体水溶液を分散させる溶媒に可溶な高分子分散剤(親水性基含有量;0.1〜20質量%、質量平均分子量;1,000〜1,000,000)等を例示できるが、分散剤としては高分子分散剤を使用した方が、溶媒中での単量体水溶液の懸濁粒子の大きさを調整しやすく、必要とする粒子径の共重合体(P)の含水ゲルの作成が容易であるので好ましい。
界面活性剤及び高分子分散剤を使用する場合の使用量は、疎水性有機溶媒の質量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
逆相懸濁重合における単量体水溶液と疎水性有機溶媒との質量比(W/O比)は、0.1〜2.0が好ましく、0.3〜1.0がより好ましい。これらの範囲であると、共重合体(P)の粒子径がさらに調整しやすい。
【0019】
水溶液重合又は逆相懸濁重合により共重合体(P)の含水ゲルを得た場合は、必要により乾燥する。乾燥方法は公知の方法でよく、例えば、水溶液重合の場合は、含水ゲルをミートチョッパーやカッター式の粗砕機である程度細分化あるいはヌードル化し、透気乾燥(パンチングメタルやスクリーン上に含水ゲルを積層し、強制的に50〜150℃の熱風を通気させて乾燥する等)や通気乾燥(含水ゲルを容器中に入れ、熱風を通気・循環させ乾燥、ロータリーキルンのような機械でさらにゲルを細分化しながら乾燥する等)、接触乾燥(ドラムドライヤー上に含水ゲルを圧縮延伸して乾燥する等)等を行う方法が挙げられる。これらの中で、透気乾燥が短時間で効率的な乾燥が行えるため好ましい。
逆相懸濁重合の場合は、重合した含水ゲルと有機溶媒をデカンテーション等の方法で固液分離した後、減圧乾燥(減圧度;100〜50,000Pa程度)または通気乾燥を行うのが好ましい。
【0020】
本発明において、含水ゲル乾燥時の乾燥温度は、使用する乾燥機や乾燥時間等により種々異なるが、好ましくは50〜230℃、より好ましくは80〜200℃、特に好ましくは100〜180℃である。乾燥温度が50℃以上であれば、乾燥に多くの時間を必要とせず効率的であり、一方230℃以下であれば、副反応や樹脂の分解等が起こりにくく、品質が低下しない。
【0021】
得られた共重合体(P)の乾燥物は、必要により粉砕し、さらに必要により粒度調整して粉末化する。粉砕方法は、公知の方法でよく、例えば衝撃粉砕機(ピンミル、カッターミル、スキレルミル、ACMパルペライザー、遠心粉砕器等)や空気粉砕機(ジェット粉砕機等)で行うことができる。粒度調整も篩い振とう機等の公知のものが使用できる。
熱架橋させる粒子径は、使用する目的、使用場所等によっても異なるが、好ましくは質量平均粒子径で1〜5,000μmであり、より好ましくは10〜3,000μmである。最終的にゲル状芳香剤またはゲル状消臭剤とする場合には、商品外観の観点から、平均粒子径は300〜3,000μmが特に好ましい。平均粒子径が5,000μmを越えると、生産性が悪くなり、一方1μm未満では、芳香性物質や消臭性物質を含有した水性液体を吸収させる時にママコを生じ、膨潤不良となる場合がある。平均粒子径は、上記のように粉砕及び篩いによりコントロールすることができる。また、逆相懸濁重合の場合は重合条件によりコントロールすることもできる。質量平均粒子径は、JIS Z8815−1994(6.1乾式ふるい分け試験)に準拠して測定される(以下、粒子径の測定は本方法による)
【0022】
共重合体(P)を熱架橋させる際の乾燥粉末の加熱装置は、粉体を均一に加熱できる装置であればいずれでもよく、例えば、気流乾燥機、回転式乾燥機、パドルドライヤー、円盤形乾燥機、流動層乾燥機、ベルト式乾燥機、ナウター式加熱機、赤外線乾燥機等を使用することができる。
【0023】
共重合体(P)の熱架橋を行う方法において、目的の粒径に調整する前に、共重合体を所定温度に加熱して熱架橋させた後、必要により粉砕を行って目的の粒径に粒度調整してもよいが、好ましくは、共重合体を目的の粒径の粉末状あるいは粒子状にした後、所定温度に加熱して熱架橋させることにより、いわゆる表面架橋の原理で内部の架橋密度が低くかつ外部の架橋密度が高い架橋重合体(AT)を得る方法である。
熱架橋の際の加熱温度は、好ましくは120〜230℃、より好ましくは140〜220℃である。加熱温度が120〜230℃であると、加熱架橋が早く進行し、共重合体が熱分解せず、品質が低下しないので好ましい。加熱時間に関しては、達成したい架橋度によって種々異なるが、目的の温度に達してから、好ましくは1〜600分、より好ましくは5〜300分である。加熱時間が1分以上であると熱架橋が充分に起こり、一方加熱時間が600分以下であると、熱分解が起こらないため品質が低下しない。
【0024】
本発明のゲル化材の主成分の架橋重合体(A)としては、熱架橋により得られる架橋重合体(AT)以外に、架橋剤(c)により架橋されてなる架橋重合体(AC)も使われる。
【0025】
架橋重合体(AC)における架橋剤(c)としては、耐光性、経時変化の観点から、非加水分解性の架橋剤が好ましい。
非加水分解性の架橋剤としては、吸水ゲル中で加水分解を起こして結合が切断されないように、加水分解性結合を分子内に有さず、また、架橋反応により加水分解結合を形成しないようなものが挙げられる。
さらに、架橋剤(c)としては、アリルエーテル基またはビニルエーテル基の少なくとも1種を2個以上有する下記一般式(1)で表される架橋剤(c1)が好ましい。
【0026】
【化1】

【0027】
[式中、mは2〜4の整数、n=0または1;R1は炭素数1〜10の2〜4価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基;R2、R3は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す]
【0028】
架橋剤(c1)としては、2個以上のビニルエーテル基を有する架橋剤(c11)、2個以上のアリルエーテル基を有する架橋剤(c12)、ビニルエーテル基とアリルエーテル基をそれぞれ1個以上有する架橋剤(c13)が挙げられる。
これらは2種以上を併用してもよい。
【0029】
2個以上のビニルエーテル基を有する架橋剤(c11)としては、エチレングリコールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル等のアルキレン(炭素数2〜10)グリコールジビニルエーテル系、ポリエチレングリコール(重合度2〜5)ジビニルエーテル等のポリアルキレン(炭素数2〜4)グリコール(重合度2〜10)ジビニルエーテル系、、ビスフェノールAジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ソルビトールトリビニルエーテル及びポリグリセリン(重合度3〜13)ポリビニルエーテル等が挙げられる。
【0030】
2個以上のアリルエーテル基を有する架橋剤(c12)としては、分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を含まない架橋剤(c121)、分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を1〜5個有する架橋剤(c122)、分子内にアリル基を3〜10個有しかつ水酸基を有さない架橋剤(c123)、分子内にアリル基が3〜10個有しかつ水酸基を1〜3個有する架橋剤(c124)等が挙げられる。分子内に水酸基を含むと、(メタ)アクリル酸(塩)との相溶性が良く、架橋の均一性が向上して吸水ゲルの耐光性がよくなるのでさらに好ましい。
分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を含まない架橋剤(c121)としては、ジアリルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアリルエーテル、アルキレン(炭素数2〜5)グリコールジアリルエーテル、及びポリエチレングリコール(重合度2〜10)ジアリルエーテル等が挙げられる。
分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を1〜5個有する架橋剤(c122)としては、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル及びポリグリセリン(重合度2〜5)ジアリルエーテル等が挙げられる。
分子内にアリル基を3〜10個有しかつ水酸基を有さない架橋剤(c123)としては、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル及びテトラアリルオキシエタン等が挙げられる。
分子内にアリル基を3〜10個有しかつ水酸基を1〜3個有する架橋剤(c124)としては、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジグリセリントリアリルエーテル及びポリグリセリン(重合度3〜13)ポリアリルエーテル等が挙げられる。
【0031】
ビニルエーテル基とアリルエーテル基をそれぞれ1個以上有する架橋剤(c13)としては、アリルビニルエーテル、アルキレン(炭素数2〜5)グリコールアリルビニルエーテル、トリメチロールプロパンアリルビニルエーテル、グリセリンアリルビニルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルビニルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルビニルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルビニルエーテル等が挙げられる。
【0032】
架橋剤(c1)の添加量は、必要とする吸水量やゲル強度、使用する架橋剤の種類にもよるが、単量体の合計質量に対して通常0.0001〜3質量%、好ましくは0.001〜1質量%である。添加量がこの範囲にあれば、必要なゲル強度が得られ、かつ充分な吸水量が得られる。なお、このように架橋剤を使用する架橋重合体(AC)の場合でも、必要により、さらに上記熱架橋を行って架橋度を調整してもよい。
【0033】
本発明において、上記に記載したように架橋剤としては、耐光性、経時変化に優れる上記架橋剤(c1)が好ましく、通常の吸水性樹脂に使用されているトリメチロールプロパントリアクリレート等のエステル型共重合性架橋剤、メチレンビスアクリルアミドに代表されるアミド型共重合性架橋剤、エチレングリコールジグリシジルエーテルに代表されるカルボン酸との反応型の架橋剤は、吸水ゲル中で加水分解により容易に架橋構造が分解するため、耐光性の向上や商品外観の保持等にはほとんど効果はないが、ゲル化材の吸収速度の向上や初期の吸水倍率の調整といった目的に関しては、上記架橋剤(c1)以外の、アリルエーテル基とビニルエーテル基を全く有しないかいずれか1個しか有しない他の架橋剤(c2)を少量併用使用しても良い。
【0034】
他の架橋剤(c2)としては、例えばN,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等に代表される分子内の官能基数が2〜10の共重合性の架橋剤(c21);
例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル等に代表される多価グリシジル化合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等に代表される多価イソシアネート化合物、エチレンジアミン等に代表される多価アミン化合物及びグリセリン等に代表される多価アルコール化合物等に代表されるカルボン酸との反応型架橋剤(c22);が挙げられる。
これらの反応性架橋剤(c22)を使用した場合は、架橋剤添加後、任意の段階で、通常100〜230℃、好ましくは120〜160℃に加熱し架橋反応を進行させるのが一般的である。また、これら反応性架橋剤は、所定量の範囲で2種以上、更には共重合性架橋剤(c1)と併用しても良い。
これら必要により添加する他の架橋剤(c2)の添加量は、単量体の合計質量に対して、0〜0.5%が好ましく、0〜0.3%が更に好ましい。
【0035】
窒素原子含有単量体(a)と(メタ)アクリル酸(塩)(b)を構成単位とし、架橋剤(c)によって架橋されてなる架橋重合体(AC)における各成分の共重合比率は、(AT)における共重合体(P)と同様に、ゲル化の対象となる芳香剤又は消臭剤溶液の種類や濃度、必要な吸水ゲルのゲル強度等によっても異なるが、(a)は好ましくは20〜99質量%、さらに好ましくは25〜90質量%、特に好ましくは30〜80質量%であり、(b)は好ましくは1〜80質量%、さらに好ましくは10〜75質量%、特に好ましくは20〜70質量%である。
必要により他の水溶性エチレン性不飽和単量体(d)を併用する場合には、通常10質量%以下である。(a)の割合が20質量%未満では、必要な耐光性が得られず、好ましくない。一方、(b)の割合が1質量%未満では、イオン交換水に対する吸収倍率が低下するため、芳香性物質や消臭性物質を含有した水性液体をゲル化することができず、また膨潤ゲルの強度が低下してしまうため好ましくない。
【0036】
架橋重合体(AC)中の、(b)の中和度は、好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは60〜100モル%、特に好ましくは70〜100モル%である。
中和度が50モル%未満では、(メタ)アクリル酸が十分に解離せず、イオン交換水の吸収量が低下する。(メタ)アクリル酸の中和は、各種塩の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等)を添加することにより行われる。(メタ)アクリル酸の中和は、重合前のモノマー段階で中和してもよいし、重合後の含水ゲルに各種塩の水酸化物を添加することによって行ってもよい。
【0037】
(a)と(b)を構成単位とし、架橋剤(c)によって架橋されてなる架橋重合体(AC)の粒子径も、(AT)における共重合体(P)と同様に、好ましくは質量平均粒子径で1〜5,000μmであり、より好ましくは10〜3,000μmである。最終的にゲル状芳香剤またはゲル状消臭剤とする場合には、商品外観の観点から、平均粒子径は300〜3,000μmが特に好ましい。
【0038】
本発明のゲル化材は、水不溶性でかつ水性液体を吸収して膨潤する架橋重合体(A)からなり、ゲル化材のイオン交換水吸収倍率は、使用する水性液体、芳香性成分、消臭性成分の種類や濃度及び想定される使用環境等により種々異なるが、好ましくは50倍以上、より好ましくは70倍以上、さらに好ましくは100倍以上である。50倍未満では、必要量の水性液体を吸収することができず、好ましくない。
【0039】
ゲル化材のイオン交換水吸収倍率は、以下の方法で測定、算出する。
[イオン交換水吸収倍率]
ゲル化材0.1gを、一方に開口部をもつ目開き250メッシュ、大きさ10cm×20cmのナイロン袋に入れ、イオン交換水1リットルが入った1リットルビーカー中に1時間浸漬した。1時間後、ゲル化材の入ったナイロン袋を引き上げ、過剰のイオン交換水を15分間水切りした。同様な操作を空のナイロン袋を用いて行い、下式によりイオン交換水吸収倍率を算出した。
吸収倍率(倍)=(浸漬後のナイロン袋質量−空試験のナイロン袋質量)/0.1
【0040】
本発明のゲル化材をイオン交換水で50倍に膨潤させたゲルの のゲル強度は、1.0〜10.0kN/m2、好ましくは2.0〜10.0kN/m2であり、1.0kN/m2未満ではゲル状芳香剤またはゲル状消臭剤作成時に膨潤ゲルが壊れやすく、10.0kN/m2を超えると ゲルが堅くなりすぎ、ゲル状芳香剤またはゲル状消臭剤とした時にゲル状の質感が得られにくいため、好ましくない。
【0041】
イオン交換水で50倍に膨潤させたゲル強度は、以下の方法で測定、算出する。
[イオン交換水吸収ゲルのゲル強度]
100mlのビーカーにイオン交換水を100gと撹拌子を入れ、マグネティックスターラーで600rpmで撹拌しているところへゲル化材2.0gを入れ、ゲル化材が膨潤してイオン交換水上部の渦が平らになった時点で撹拌を停止させ、上部をラップで覆い、25℃の水浴中に1時間放置して温調した。カードメーター・マックスME−500(アイテクノエンジニアリング製)の試料台を原点まで戻し、1時間放置した測定試料を試料台にセットし、試料台を上昇させて感圧軸の下端が測定試料表面に接するようにセットし、以下の条件で測定を行った。
感圧軸φ :8mm
スプリング:100g用
荷重 :100g
上昇速度 :1インチ/7秒
試料性質 :破断
測定開始6秒後の応力測定値を読み取り、下式によりゲル強度(GS1)を算出した。
ゲル強度(GS1)(N/m2)=0.98×F/S
F:応力測定値(g/cm2
S:感圧軸の円盤面積(cm2
【0042】
本発明のゲル化材は、耐光性に非常に優れることを特長とする。
JISK7350−2に準拠した耐光性試験に基づき、50倍に膨潤させたゲルを3時間照射を行った後のゲル(G2)のゲル強度(GS2)を、照射前のゲル強度(GS1)と比較したときのゲル強度保持率(=GS2/GS1×100)が、通常50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。
【0043】
ゲル強度のキセノンアーク光曝露後の保持率は、以下の方法で測定、算出する。
[ゲル強度保持率]
ゲル強度を測定した吸水ゲルを、ポリエチレン製のビニール袋(ユニパックC−2、生産日本社製)に入れて上部をヒートシールし、JISK7350−2(プラスチック−実験室光源による暴露試験方法 第2部:キセノンアーク光源)に準拠して以下の条件で耐光性試験を行った。
耐光性試験装置:キセノンウェザーメーター(スガ試験機社製)
照射強度:50W
ブラックパネル温度:40℃
相対湿度:50%RH
耐光性試験後の吸水ゲルを、目開き106μmの篩上に全量投入して液状化した部分を除去し、残ったゲルを100mlのビーカーに入れ、耐光性試験後のゲル強度(GS2)を測定し、前述の式によりゲル強度保持率を算出した。
【0044】
本発明のゲル化材は、一般の家庭に置かれるような芳香剤や消臭剤用のゲル化材として使用した場合、適度なゲル強度をもちかつ日光等に長期にわたってさらされても膨潤ゲルの経日変化が起こらないため、芳香性成分や消臭性成分を含んだ水性液体を含有した状態でも長期にわたって良好な外観を保ち、かつ安定的に芳香性成分及び消臭性成分を利用することが可能となる。
【0045】
本発明のゲル化材は、芳香性成分や消臭性成分を含んだ水性液体を含有したゲルの安定性や、成分の有効利用を目的として、その他公知の成分を含有してもよい。
このような成分としては、例えばカーボンブラック、活性炭、ラジカル連鎖禁止剤、金属キレート剤、紫外線吸収剤、還元性物質、酸化チタン微粉末、2−メルカプトチアゾール、アンモニア、ピロリジン、エタノールアミン、有機燐酸化合物、マレイミド類等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。これらの添加量は、架橋重合体(A)の質量を基準として、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。添加量が10質量%以下であれば、ゲル化材としての性能を損ねることがない。
【0046】
次に、本発明のゲル状芳香剤について説明する。
本発明のゲル状芳香剤は、前記本発明のゲル化材及び芳香性物質を含有してなるものである。
本発明のゲル状芳香剤に用いる芳香性物質としては、天然芳香性物質、合成芳香性物質が挙げられる。
天然芳香性物質としては、じゃ香、霊猫香、竜挺香等の動物性香料、アビエス油、アジヨクン油、アルモンド油、アンゲリカルート油、ベージル油、ベルガモット油、バーチ油、ボアバローズ油、カヤブテ油、カナンガ油、カブシカム、キャラウエー油、カルダモン油、カシア油、セロリー油、シンナモン油、シトロネラ油、コニャック油、コリアンダー油、キュベブ油、クミン油、樟脳油、ジル油、エストゴラン油、ユーリカ油、フエンネル油、ガーリック油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、ホップ油、ジュニパーベリー油、ローレルリーフ油、レモン油、レモングラス油、ロベージ油、メース油、タイムホワイト油、カッシャ油、ビメント油、ヒノキ油、ヒバ油、フローラル油、ナツメグ油、マンダリン油、タンゼリン油、カラシ油、はっか油、燈花油、玉ねぎ油、こしょう油、オレンジ油、スターニアス油、テレピン油、ウォームウッド油、ワニラ豆エキストラクト、シトラール、シンナミックアルデヒド、チモール、オイゲノール、ローズマリー、セイジ等の植物性芳香性物質が挙げられる。
【0047】
合成香料としては、ピネン、リモネン等の炭化水素類、リナロール、ゲラニオール、シトロネオール、メントール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、β−フェニルエチルアルコール等のアルコール類、アネノール、オイゲノール等のフェノール類、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、ノナジエナール、シトラール、シトロネラール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ヘリオトロピン、ワニリン等のアルデヒド類、メチルアミルケトン、メチルノニルケトン、ジアセチル、アセチルプロピオニル、アセチルブチリン、カルボン、メントン、樟脳、アセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、イオノン等のケトン類、アミルブチロラクトン、メチルフェニルグリシド酸エチル、γ−ノニルラクトン、クマリン、シネオール等のラクトンまたはオキシド類、メチルフォーメート、イソプロピルフォーメート、リナリールフォーメート、エチルアセテート、オクチルアセテート、メンチルアセテート、ベンジルアセテート、シンナミルアセテート、プロピオン酸ブチル、酢酸イソアミル、イソ酪酸イソプロピル、イソ吉草酸ゲラニル、カプロン酸アリル、ヘプチル酸ブチル、カプリル酸オクチル、ヘプチンカルボン酸メチル、ベラハゴン酸エチル、オクチンカルボン酸メチル、カプリン酸イソアシル、ラウリル酸メチル、ミリスチン酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸ブチル、桂皮酸メチル、桂皮酸シンナミル、サルチン酸メチル、アニス酸エチル、アンスラニル酸メチル、エチルビルベート、エチル−α−ブチルブチレート等のエステル類等が挙げられる。
これらは一種類のみでもよいし、二種類以上を調合したものでもよい。
【0048】
本発明において、芳香性物質には、さらに必要により他の添加物を配合することができる。この添加物としては、例えばバッチュリ油等の揮発保留剤、オイゲノール等の変調剤、防虫性薬剤(合成ピレスロイド、エンペンスリン、ヒノキチオール等)、抗菌性薬剤(炭素数6〜30のアルキル基を少なくとも1個有する第4級アンモニウム化合物[オクチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムグルコン酸等]、ポリメチレンビグアニジン化合物[ポリヘキサメチレングアニジン塩化合物、ポリオクタメチレングアニジン塩化合物等]、クロルヘキシジン化合物[クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン等])、顔料(蛍光性顔料や蓄光顔料を含む)、染料、色素(食添色素など)、老化防止剤、防腐剤、防かび剤、消泡剤、脱酸素剤、酸化防止剤、界面活性剤、溶媒等が挙げられる。また、後に示すような消臭性物質を配合してもよい。
【0049】
次に、本発明のゲル状消臭剤について説明する。
本発明のゲル状消臭剤は、前記本発明のゲル化材及び消臭性物質を含有してなるものである。
本発明のゲル状消臭剤に用いる消臭性物質としては、無機強酸の弱塩基の塩(硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、塩化アンモニウム、ミョウバン類等)、フラボノイド化合物(イネ、松、ヒノキ、笹等の植物からの抽出物質、「フレシュライマツ」(白井松新薬社製)、「スメラル」(環境科学開発社製)等)、シクロデキストリン(α−またはβ−シクロデキストリンまたはこれらの誘導体)、酸またはアルカリ性の水性液、ゼオライト、活性炭等が挙げられ、これらのものを水または一部溶剤を含んだ水溶液で希釈した水性液として用いることができる。
これらは一種類のみでもよいし、二種類以上を使用してもよい。また、上記のような芳香性物質を併用してもよい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。ゲル化材のイオン交換水吸収倍率、イオン交換水吸収ゲルのゲル強度、ゲル強度保持率、共重合体(P)の固有粘度[η]は先に述べた方法により測定した。以下、特に定めない限り、%は質量%を示す。
【0051】
実施例1
1リットルのビーカーにアクリル酸150g、48%水酸化ナトリウム水溶液165g、水485g及び50%アクリルアミド水溶液200gを添加し、10℃に冷却した。この水溶液を断熱重合槽に入れ、窒素を通じて溶液の溶存酸素量を0.1ppmとした後、35%の過酸化水素水0.0007g、L−アスコルビン酸0.00025g及び4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)0.125gを添加した。約30分後重合が開始し、約5時間後に最高到達温度77℃に到達して重合が完結して、含水ゲル状の重合物が得られた。この含水ゲルをミートチョッパーで細分化した後、バンド乾燥機(透気乾燥機、井上金属株式会社製)を用いて130℃で1時間乾燥し、粉砕して平均粒径2,000ミクロンの未架橋の乾燥粒子を得た。
この未架橋の乾燥粒子の固有粘度[η]の値は24.5であった。この未架橋粒子100gをステンレス製のバットに3mmの厚みで入れ、180℃の循風乾燥機で60分加熱して熱架橋させて、本発明のゲル化材(AT−1)を得た。
【0052】
実施例2
実施例1の重合を行う際に、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル0.75gを添加し、熱架橋ではなく架橋剤で架橋させた以外は実施例1と同様な操作を行い、本発明のゲル化材(AC−1)を得た。
【0053】
実施例3
実施例1において、アクリル酸を200gに、48%水酸化ナトリウム水溶液を220gに、50%アクリルアミド水溶液を100gに変え、粉砕後の平均粒子径を2,500ミクロンとする以外は実施例1と同様の操作を行い、未架橋の乾燥粒子を得た。この未架橋の乾燥粒子の固有粘度[η]の値は21.3であった。
この未架橋粒子100gをステンレス製のバットに3mmの厚みで入れ、180℃の循風乾燥機で60分加熱して熱架橋させて、本発明のゲル化材(AT−2)を得た。
【0054】
実施例4
実施例1において、アクリル酸を15gに、48%水酸化ナトリウム水溶液を16.5gに、水を498.5gに、50%アクリルアミド水溶液を470gに変える以外は実施例1と同様の操作を行い、未架橋の乾燥粒子を得た。この未架橋の乾燥粒子の固有粘度[η]の値は25.8であった。
この未架橋粒子100gをステンレス製のバットに3mmの厚みで入れ、180℃の循風乾燥機で60分加熱して熱架橋させて、本発明のゲル化材(AT−3)を得た。
【0055】
実施例5
1リットルのビーカーに、市販のN−ヒドロキシメチルアクリルアミド125gとアクリル酸125g、48%水酸化ナトリウム水溶液140g及び水610gを添加し、10℃に冷却した。この水溶液を断熱重合槽に入れ、窒素を通じて溶液の溶存酸素量を0.1ppmとした後、35%の過酸化水素水0.001g、L−アスコルビン酸0.00025g及び4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)0.125gを添加した。約30分後重合が開始し、約2時間後に最高到達温度70℃に到達し、この温度で5時間熟成して重合を完結させた。得られた重合物は含水ゲル状を有していた。この含水ゲルをミートチョッパーで細分化した後、バンド乾燥機(透気乾燥機、井上金属株式会社製)を用いて120℃で1時間乾燥し、粉砕して平均粒径2,300ミクロンの未架橋の乾燥粒子を得た。この未架橋の乾燥粒子の固有粘度[η]の値は17.8であった。
この未架橋粒子100gをステンレス製のバットに3mmの厚みで入れ、180℃の循風乾燥機で60分加熱して熱架橋させて、本発明のゲル化材(AT−4)を得た。
【0056】
実施例6
アクリル酸100gに48%水酸化ナトリウム水溶液110g、水485g、50%アクリルアミド水溶液300g及びエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−810、ナガセケムテックス株式会社製)0.2gを添加し、10℃に冷却してモノマー溶液を調整した後、過硫酸カリウム0.05gを添加し、溶解させてモノマー水溶液とした。
攪拌機、滴下ロート及びコンデンサー(冷却器)を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、シクロヘキサン1000ml及び分散剤としてスチレンスルホン酸ナトリウム/スチレンブロック共重合体10gを、湯浴を用いて内容物を60℃に加熱し攪拌して、シクロヘキサンに分散剤を溶解させた。
セパラブルフラスコ中のシクロヘキサン液中に窒素を通じてシクロヘキサンの溶存酸素を0.1ppm以下とした後、少量の窒素を通じたままで攪拌機を用いてシクロヘキサンを攪拌しながら、滴下ロートを用いて前記モノマー水溶液400gを滴下し、重合温度60℃で逆相懸濁重合を行い、モノマー水溶液の滴下終了後、更に2時間加熱し、懸濁重合を完結させ、シクロヘキサン中で球状の含水ゲルを得た。
攪拌機の回転を停止し、生成した含水ゲルを沈降させた後、デカンテーションによりシクロヘキサンを除去し、残った含水ゲルを数回シクロヘキサンで洗浄し、含水ゲルに付着した分散剤を除去した。
得られた球状の含水ゲルを離型紙の上に広げ、80℃の減圧乾燥機で2時間乾燥させて、平均粒子径380ミクロンの本発明のゲル化材(AC−2)を得た。
【0057】
比較例1
1リットルのビーカーにアクリル酸210g、48%水酸化ナトリウム水溶液230g、水480g及び50%アクリルアミド水溶液80gを添加し、10℃に冷却した。この水溶液を断熱重合槽に入れ、窒素を通じて溶液の溶存酸素量を0.1ppmとした後、35%の過酸化水素水0.0007g、L−アスコルビン酸0.00025g及び4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)0.125gを添加した。約30分後重合が開始し、約5時間後に最高到達温度75℃に到達して重合が完結して、含水ゲル状の重合物が得られた。この含水ゲルをミートチョッパーで細分化した後、バンド乾燥機(透気乾燥機、井上金属株式会社製)を用いて130℃で1時間乾燥し、粉砕して平均粒径2,000ミクロンの未架橋の乾燥粒子を得た。この未架橋の乾燥粒子の固有粘度[η]の値は17.5であった。
この未架橋粒子100gをステンレス製のバットに3mmの厚みで入れ、180℃の循風乾燥機で60分加熱して熱架橋させて、比較のゲル化材(BT−1)を得た。
【0058】
比較例2
比較例1の重合を行う際に、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル0.1gを添加し、熱架橋を行わなかった以外は比較例1と同様な操作を行い、比較のゲル化材(BC−1)を得た。
【0059】
比較例3
1リットルのビーカーに50%アクリルアミド水溶液500g及び水480gを添加し、5℃に冷却した。この水溶液を断熱重合槽に入れ、窒素を通じて溶液の溶存酸素量を0.1ppmとした後、35%の過酸化水素水0.001g、L−アスコルビン酸0.00025g及び4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)0.125gを添加した。約30分後重合が開始し、約5時間後に最高到達温度75℃に到達して重合が完結して、含水ゲル状の重合物が得られた。この含水ゲルをミートチョッパーで細分化した後、バンド乾燥機(透気乾燥機、井上金属株式会社製)を用いて130℃で1時間乾燥し、粉砕して平均粒径2,000ミクロンの未架橋の乾燥粒子を得た。この未架橋の乾燥粒子の固有粘度[η]の値はで24.2あった。この未架橋粒子100gをステンレス製のバットに3mmの厚みで入れ、180℃の循風乾燥機で60分加熱して熱架橋させて、比較のゲル化材(BT−2)を得た。
【0060】
比較例4
市販のポリアクリル酸ソーダ系の吸水性樹脂(サンウェットST−500D*、平均粒径380ミクロン、三洋化成工業株式会社製)を比較のゲル化材(BC−2)とした。
【0061】
比較例5
比較例5のポリアクリル酸ソーダ系の吸水性樹脂100gに、特開平2−64163に記載の水溶性紫外線吸収剤である2−ヒドロキシベンゾフェノン−4−ジグリセリルエーテル100gを配合したものを作成し、比較のゲル化材(BC−3)とした。
【0062】
実施例1〜6及び比較例1〜5で得られたゲル化材(AT−1)〜(AT−4)、(AC−1)〜(AC−2)、(BT−1)〜(BT−2)、(BC−1)〜(BC−3)について、前述の方法でイオン交換水吸収倍率、ゲル強度、ゲル強度保持率、固有粘度[η]を測定したものを表1に示す。
なお、表1中の比較例4と比較例5は、キセノンアーク光照射後ではゲルの形状が全くなく流動化していたため、照射後のゲル強度(GS2)は測定できなかった。また、表1中の「熱架橋前の固有粘度」欄の「−」は、架橋剤で架橋したゲル化材は水に不溶のため測定しなかったことを表す。
【0063】
【表1】

【0064】
<芳香液の調製>
200mLビーカーに、フローラル油50gにエタノール30g、プロピレングリコール20g及びトリデシルアルコール−(EO)20モル付加物75gを加えて撹拌し、均一に溶解させた。
【0065】
上記香料液1.0gにイオン交換水49.0gを加えて均一に溶解させたものに、実施例1〜6及び比較例1〜5で得られたゲル化材(AT−1)〜(AT−4)、(AC−1)〜(AC−2)、(BT−1)〜(BT−2)、(BC−1)〜(BC−3)を各1.0gを加えて吸収・ゲル化させたものを、透明ガラス瓶の中に入れ、日光が直接差し込む南向きガラス窓から30cm離した室内の台の上に3ヶ月放置してゲルの経日安定性を目視判定し、次のように評価した。
◎:ゲルが形状を保っており、液の滲み出しがない。
○:ゲルがわずかに崩れているが、液の滲み出しは見られない。
△:ゲルの形状が若干崩れており、液の滲み出しが見られる。
×:ゲルの形状が全くなく流動化している。
結果を表2に示す。
【0066】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のゲル化材は、耐光性に非常に優れている。従って、本発明のゲル化材を用いて作成したゲル状芳香剤やゲル状消臭剤は、長期にわたるゲルの安定性に優れるため、商品価値を低下させることなく長期保存が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素原子含有単量体(a)と(メタ)アクリル酸(塩)(b)を必須構成単量体単位とする架橋重合体(A)からなり、下記の要件(i)、(ii)および(iii)を具備するゲル状芳香剤用又はゲル状消臭剤用ゲル化材。
(i):イオン交換水吸収倍率が50倍以上である。
(ii):イオン交換水で50倍に膨潤させたゲル(G1)のゲル強度(GS1)が1.0〜10.0kN/m2である。
(iii):該膨潤ゲル(G1)のゲル強度(GS1)と、JISK7350−2に準拠した耐光性試験に基づき、3時間照射を行った後のゲル(G2)のゲル強度(GS2)を比較したときのゲル強度保持率(=GS2/GS1×100)が50%以上である。
【請求項2】
窒素原子含有量が、前記(A)の質量に基づいて2〜32質量%である請求項1記載のゲル化材。
【請求項3】
窒素原子含有単量体(a)が、N−ビニルアミン、N−アルキル−N−ビニルアミン、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドおよびN−ビニル−2−ピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である請求項1または2記載のゲル化材。
【請求項4】
架橋重合体(A)が、(a)20〜99質量%と(b)1〜80質量%からなる共重合体(P)の熱架橋により得られる架橋重合体(AT)である請求項1〜3のいずれか記載のゲル化材。
【請求項5】
共重合体(P)が、固有粘度[η]が15〜50の水溶性の共重合体である請求項4記載のゲル化材。
【請求項6】
架橋重合体(A)が、(a)20〜99質量%と(b)1〜80質量%からなり、かつ0.001〜3質量%の架橋剤(c)により架橋されてなる架橋重合体(AC)である請求項1〜3のいずれか記載のゲル化材。
【請求項7】
架橋剤(c)が、非加水分解性の架橋剤である請求項6に記載のゲル化材。
【請求項8】
架橋剤(c)が、下記一般式(1)で表される架橋剤(c1)である請求項6または7記載のゲル化材。
【化1】

[式中、mは2〜4の整数、n=0または1;R1は炭素数1〜10の2〜4価の炭化水素基またはヒドロキシアルキル基;R2、R3は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す]
【請求項9】
請求項1〜8に記載のゲル化材と、芳香性物質からなるゲル状芳香剤。
【請求項10】
請求項1〜8に記載のゲル化材と、消臭性物質からなるゲル状消臭剤。

【公開番号】特開2007−289229(P2007−289229A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117451(P2006−117451)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】