説明

ゲル状芳香剤

【課題】経時的な外観の色相変化が大きいゲル状芳香剤を提供する。
【解決手段】(a)赤色系染料、(b)青色系染料、(c)香料、(d)カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基を有する吸水性樹脂、並びに水を含有し、(a)/(b)の質量比が1/50〜50/1である、ゲル状芳香剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル状芳香剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、芳香成分を含有する球状やブロック状の吸水性樹脂を用いたゲル状芳香剤への関心が高まっている。玄関、トイレ、車内など香りへの意識が高い空間に該芳香剤を設置することで香料成分を飛散させ快適性を向上させることを目的とする製品であり、一般に多くの芳香剤が製造され店頭にて販売されている。これらの芳香剤は、特許文献1などに開示されているように香料含有溶液を吸水性樹脂に含浸させることにより製造されている。使用開始時に設置するだけの手軽な操作によって長期間香りを徐放する機能を有するが、その機能は永続的なものではなく、機能が発現しなくなったところで取替え又は詰め替えなどの対応をする必要がある。しかしながら、この終点は使用する消費者の判断に委ねられており、簡便かつ的確に使用終点を判断できる芳香剤の開発が望まれていた。
【0003】
特許文献2には、芳香成分の揮散量に応じた割合で収縮するゲル状成型物からなる芳香・消臭剤が開示されている。ゲル状成型物の収縮状態により芳香剤の使用終点、交換時期を外観から検知するが、成型物の大きさで判断する方法であり、更に簡便且つ適正に終点を判断する方法が望まれる。
【0004】
特許文献3には、芳香剤と容器壁面に対照的な色彩を施して減り具合を認視可能とし、芳香剤の交換時が簡単に分かる構造の芳香剤容器と組み合わせて使用するものが提案されている。容器の工夫を伴うが減り具合で認視するという点で特許文献2と共通した技術であり、更に判断しやすい方法が望まれている。
【0005】
また、特許文献4には、親水性染料、特定の香料、特定の含窒素界面活性剤、及び水を含有する特定の液状混合物と、吸水性樹脂とを含有する、ゲル状消臭芳香剤が記載されている。しかし、本技術に関しても、使用終点は、吸収性樹脂の大きさで判断する方法であり、更に簡便且つ適正に終点を判断する方法が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−264098号公報
【特許文献2】特開2002−35100号公報
【特許文献3】特開平5−176979号公報
【特許文献4】特開2010−284511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来提案されているゲル状芳香剤は、外観の変化、すなわち、吸水性樹脂の大きさ、量の減少によって芳香剤製品の使用終点を決定することが殆どである。しかし、本発明者らの検討により、吸水性樹脂内の香料を含む液体成分の残量が20〜30%程度となると、樹脂の大きさに関する外観からの変化量は少なくなり、見かけ上、大きさがほどんど変化しないが、引き続き香料の揮発が継続する状態となることがわかった。使用者は外観が小さくなって変化しなくなった場合にゲル状芳香剤の効き目がなくなったことを連想することが多く、前記したような状態では使用が中止されると、製品の機能が十分発揮されないまま使用を終了してしまうおそれがある。そのため、単に外観の大きさの変化だけではなく、別の因子により、より正しく香料揮発の終点を判断できることが望まれており、その一つとして、ゲル状芳香剤の外観の色相変化が考えられる。しかし、従来のゲル状芳香剤は外観の経時的な色相の変化に乏しく、使用の継続、終了の判断材料として利用できる程、色相の変化が大きいものは見出されていなかった。
【0008】
本発明の課題は、経時的な外観の色相変化が大きいゲル状芳香剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(a)赤色系染料〔以下、(a)成分という〕、(b)青色系染料〔以下、(b)成分という〕、(c)香料〔以下、(c)成分という〕、(d)カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基を有する吸水性樹脂〔以下、(d)成分という〕、並びに水を含有し、(a)/(b)の質量比が1/50〜50/1である、ゲル状芳香剤に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用時に色相が変化することにより、使用終点の目安を認知するとともに、使用中に色相が変化するという審美的な効果にも優れるゲル状芳香剤を提供する。
【0011】
本発明は、鋭意検討の結果、水、香料、吸水性樹脂を用いたゲル状芳香剤において、水分の減少や香料の揮散に伴い、色が大きく変化する特徴を有する特定の組成物を見出している。すなわち、本発明のゲル状芳香剤は、(a)成分、(b)成分の染料を特定比率で混合使用することによって、経時で色相が変化するという特徴を有しており、使用終点の見極めに有効である。これは、単一の染料を使用した場合に、ゲル状成型物が経時で収縮していく際に色調の濃淡などの色調変化を伴う場合とは明らかに異なる現象であり、本技術で意図的に色の種類すなわち色相を変化させることにより終点判断を簡便にすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<(a)成分及び(b)成分>
本発明の(a)成分及び(b)成分は特に制限されるものではないが、例えば親水性染料から選択されることが好ましい。例えば「染料便覧」〔有機合成化学協会編,昭和45年7月20日発行,丸善(株)〕、「染料ノート第22版」〔(株)色染社〕、「法定染料ハンドブック」〔日本化粧品工業連合会編、1988年11月28日発行、(株)薬事日報社〕などに記載されているものから、好ましくは親水性の染料を選ぶことができ、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び食品用色素から選ばれる化合物が好適である。また、これらの親水性の染料を(d)成分の吸水性樹脂に均一に浸透させるために、(a)成分及び(b)成分は分子中に親水基を有するものが好ましく、分子内にアミノ基もしくはスルホニル基又はアミノ基とスルホニル基の両方を有する、水溶性の青色系染料、赤色系染料を挙げることができる。なお、ここで用いたアミノ基とは、フタロシアニン系のような環状のアミノ基を意味するものではない。
【0013】
(a)成分は赤色系染料である。具体的には以下の染料が挙げられる。
(赤色系染料)
C.I.Direct Red2、C.I.Direct Red13、C.I.Direct Red17、C.I.Direct Red28、C.I.Direct Red33、C.I.Direct Red46、C.I.Direct Red75、C.I.Direct Red79、C.I.Acid Red18、C.I.Acid Red27、C.I.Acid Red32、C.I.Acid Red33、C.I.Acid Red37、C.I.Acid Red42、C.I.Acid Red51、C.I.Acid Red52、C.I.Acid Red87、C.I.Acid Red92、C.I.Acid Red94、C.I.Acid Red138。
C.I.Direct Violet1、C.I.Acid Violet9(赤色401号)、C.I.Acid Violet11、C.I.Acid Violet15、C.I.Acid Violet41 、C.I.Acid Violet49。
【0014】
染料水溶液やゲル状芳香剤などの着色物の色相は、マンセル色票に基づく表色系で表すことができる。本発明では、色相環1周を100で表した場合の色相間隔を用いることが好ましい。すなわち、円周の5等分点に、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、青(B)および紫(P)を基本色相とし、その順に時計の進行方向に並べる。さらに色相環5色間を2等分にして、補色色相(BG,PB,RP,YR,GY)に10等分に分割し、さらに100色相になるように色相感覚で分割(100等分)し、これを色相判定の基準とする。ここで色相の間隔値は以下の通りに設定する。
(色相と間隔値)
R(赤): 1〜10
YR(黄赤):11〜20
Y(黄):21〜30
GY(黄緑):31〜40
G(緑):41〜50
BG(青緑):51〜60
B(青):61〜70
PB(青紫):71〜80
P(紫):81〜90
RP(赤紫):91〜100
【0015】
(a)成分は、0.001質量%の水溶液とした場合に、上記の間隔値で100等分した色相環で目視判定した場合に、色相の間隔値が1〜10又は81〜100となる染料が好ましく、1〜5又は85〜100となる染料がより好ましく、91〜100となる染料が更に好ましい。
【0016】
(b)成分は青色系染料である。具体的には以下の染料が挙げられる。
(青色系染料)
C.I.Direct Blue1、C.I.Direct Blue2、C.I.Direct Blue6、C.I.Direct Blue15、C.I.Direct Blue41、C.I.Direct Blue86、C.I.Acid Blue1、C.I.Acid Blue7、C.I.Acid Blue9、C.I.Acid Blue15、C.I.Acid Blue22、C.I.Acid Blue29、C.I.Acid Blue62、C.I.Acid Blue74、C.I.Acid Blue83、C.I.Acid Blue90、C.I.Acid Blue93、C.I.Acid Blue100、C.I.Acid Blue103、C.I.Acid Blue104、C.I.Acid Blue112、C.I.Acid Blue117、C.I.Acid Blue138、C.I.Food Blue1、C.I.ReactiveBlue13、C.I.Reactive Blue49、C.I.Reactive Blue71、C.I.Reactive Blue72、C.I.Reactive Blue78、C.I.Basic Blue75、C.I.Basic Blue1 29。
【0017】
(b)成分は、0.001質量%の水溶液とした場合に、上記の間隔値で100等分した色相環で目視判定した場合に、色相の間隔値が51〜80となる染料が好ましく、60〜80となる染料がより好ましく、65〜75となる染料が更に好ましい。
【0018】
本発明では(a)成分及び(b)成分として、ポリオキシアルキレン鎖を少なくとも1つ有する染料(以下、ポリオキシアルキレン変性染料という)を用いることが可能であり、このような染料は日光などの光に対して耐褪色性を有することから好ましい。ポリオキシアルキレン変性染料は、ポリオキシレン鎖と発色団を有していれば良い。
【0019】
発色団としては、アゾ発色団、フタロシアニン発色団、アントラキノン発色団、アザ[18]アヌレン発色団、フォルマザン銅錯体発色団、トリフェノオキサジン発色団、ニトロソ発色団、ニトロ発色団、ジアリールメタン発色団、トリアリールメタン発色団、キサンテン発色団、アクリデン発色団、メチン発色団、チアゾール発色団、インダミン発色団、アジン発色団、オキサジン発色団、チアジン発色団、キノリン発色団、インジゴイド発色団、インドフェノール発色団、スチルベンゼン発色団等が挙げられる。ポリオキシアルキレン鎖と発色団は、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を介して直接的又は間接的に結合しているものが好ましい。
【0020】
ポリオキシアルキレン変性染料の具体例として、ポリオキシアルキレン変性アントラキノン系着色料、オキシアルキレン変性フタロシアニン系染料、シロキサン含有ポリ(オキシアルキレン)共重合体置換基を有する着色料、ポリ(オキシアルキレン)置換着色剤、等を挙げることができる。これらの中から(a)成分、(b)成分に該当するものを選定して使用できる。
【0021】
本発明では、(a)成分がC.I.Acid Violet9(赤色401号)であり、(b)成分がC.I.Reactive Blue71及び/又はC.I.Reactive Blue72である組み合わせが、経時的な色相変化が大きいため、好ましい。また、(a)成分がC.I.Acid Violet9(赤色401号)であり、(b)成分がC.I.Reactive Blue71である組み合わせが、最も好ましい。
【0022】
<(c)成分>
本発明の(c)成分である香料は、吸水性樹脂への液状混合物の含浸促進の観点やゲル状芳香剤の香り立ちの観点から、logPが1〜6の香料素材そのもの又はこれを1種以上含有する香料組成物が好ましい。
【0023】
ここで、「logP」とは、化合物の1−オクタノール/水の分配係数の対数値であり、1−オクタノールと水の2液相の溶媒系に化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡において、それぞれの溶媒中での溶質の平衡濃度の比を意味し、底10に対する対数「logP」の形で一般的に示される。すなわち、logPは親油性(疎水性)の指標であり、この値が大きいほど疎水的であり、値が小さいほど親水的である。
【0024】
logPについては、例えば、Daylight Chemical Information Systems, Inc.(Daylight CIS)等から入手し得るデータベースに掲載されているlogPを実測値として参照することができる。また、実測値がない場合には、プログラム“CLOGP”(Daylight CIS)等で計算することができ、中でもプログラム“CLOGP”により計算することが、信頼性も高く好適である。
【0025】
プログラム“CLOGP”においては、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される「計算logP(ClogP)」の値が、logPの実測値がある場合にはそれと共に出力される。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(A.Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C.Hansch, P.G.Sammens, J.B.Taylor and C.A.Ramsden,Eds., p.295, Pergamon Press, 1990)。このClogPは現在最も一般的で信頼できる推定値であるため、化合物の選択に際してlogPの実測値がない場合に、ClogPを代わりに用いることが好適である。本発明においては、logPの実測値、又はプログラム“CLOGP”により計算したClogPのいずれを用いてもよいが、実測値がある場合には実測値を用いることが好ましい。
【0026】
特に限定されるものではないが、ClogPが1〜4未満の香料素材の具体例を以下に示す。( )内の数字はClogPの値である。
【0027】
ラズベリーケトン(1.1)、ヘリオトロピン(1.1)、フルクトン(1.1)、2−フェニルエチルアルコール(1.2)、バニリン(1.3)、ヘリオナール(1.4)、シンナミックアルコール(1.4)、クマリン(1.4)、アニスアルデヒド(1.8)、カロン(1.8)、エチルバニリン(1.8)、インドール(2.1)、酢酸フェニルエチル(2.1)、スチラリルアセテート(2.3)、メチルジヒドロジャスモネート(2.4)、オイゲノール(2.4)、イソオイゲノール(2.6)、シス−ジャスモン(2.6)、ゲラニオール(2.6)、リナロール(2.6)、ネロール(2.8)、酢酸ヘキシル(2.8)、ジヒドロミルセノール(3.0)、シトラール(3.1)、シトロネロール(3.3)、リナリルアセテート(3.5)、ネリルアセテート(3.6)、テトラヒドロゲラニオール(3.7)、アンブリノール(3.8)、アルデヒド C−14ピーチ(3.8)、リリアール(3.9)、テトラヒドロムゴール(3.5)、β−ヨノン(3.8)、酢酸ゲラニル(3.7)、3−メチル−3−フェニルグリシド酸エチル(2.7)、δ−ダマスコン(3.6)、ヘプタン酸アリル(3.4)、δ−ウンデカラクトン(3.8)、酢酸フェニルエチルフェニル(3.8)。
【0028】
特に限定されるものではないが、ClogPが4〜6の香料素材の具体例を以下に示す。( )内の数字はClogPの値である。
【0029】
酢酸p−t−ブチルシクロヘキシル(4.0)、アミルシンナミックアルデヒドジメチルアセタール(4.0)、5−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−メチル−3−ブテン−2−オン(4.0)、安息香酸2−フェニルエチル(4.1)、ジフェニルメタン(4.1)、γ−ウンデカラクトン(4.1)、酢酸o−t−ブチルシクロヘキシル(4.1)、p−メチル−イソプロピルベンゼン(4.1)、イソブチルキノリン(4.2)、ゲラニルアントラニレート(4.2)、オーランチオール(4.2)4−(2,2,5,6−テトラメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン(4.2)、ヒドロキシシトロネラールメチルアントラニレート(4.2)、ジフェニルオキシド(4.2)、アセチルセドレン(4.2)、酢酸シトロネリル(4.2)、γ−n−メチルヨノン(4.3)、アミルシンナミックアルデヒド(4.3)、ダマセノン(4.3)、10−オキサデカノリド(4.3)、11−オキサデカノリド(4.3)、γ−ドデカラクトン(4.4)、リモネン(4.4)、サリチル酸ベンジル(4.4)、γ−ターピネン(4.4)、p−メンタ−1,8−ジエン(4.4)、シトロネリルニトリル(4.4)、2,2,5−トリメチル−5−ペンチルシクロペンタノン(4.5)、フロラマット(4.5)、セドロール(4.5)、パチョリアルコール(4.5)、サリチル酸イソアミル(4.6)、エチレンブラシレート(4.6)、ネロリドール(4.6)、7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレン(4.7)、サリチル酸ヘキセニル(4.7)、ビサボロール(4.7)、1−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−2−ブテン−1−オン(4.7)、β−ダマスコン(4.7)、3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエン−12−オール(4.8)、メチルジヒドロジャスモン(4.8)、p−シメン(4.9)、ウンデシレン酸エチル(4.9)、酢酸ベチベリル(4.9)、酢酸ミラディル(4.9)、ギ酸セドリル(5.1)、セドリルメチルエーテル(5.1)、安息香酸リナリル(5.2)、ゲラニルフェニルアセテート(5.2)、3α,6,6,9α−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン(5.3)、サリチル酸ヘキシル(5.3)、サリチル酸シクロヘキシル(5.3)、アンブロキサン(5.3)、酢酸セドリル(5.4)、ムスクインダノン(5.5)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(5.5)、桂皮酸シンナミル(5.5)、ガラキソリド(5.5)、6−アセチル−1,1,2,3,3,5−ヘキサメチルインダン(5.7)、1−(2,2,6−トリメチルシクロヘキシル)−3−ヘキサノール(5.9)、ファントリド(6.0)。
【0030】
<(d)成分>
(d)成分は、カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基を含む吸水性樹脂であり、カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基を構成単位として含む重合体を含んで構成される。
【0031】
(d)成分は、20℃の環境条件下において、該吸水性樹脂1gあたり、20℃のイオン交換水の吸水量が10〜300g、好ましくは10〜250g、より好ましくは20〜200gであるものが好適である。この吸水量が10g以上であれば、製造時、吸水性樹脂が香料含有液状混合物を吸収、膨潤して得られるゲル状芳香剤の意匠性がより良好となり、また、300g以下であればゲル状芳香剤の強度がより充分になる。
【0032】
(d)成分は、カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基を構成単位として含む重合体を含む吸水性樹脂であり、例えば、デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸エステル共重合体の(部分)中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物及び部分ケン化物、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物、ポリビニルアルコール変性物、部分中和ポリアクリル酸塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸塩架橋体、アクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合物架橋体等が挙げられ、使用に際しては、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。なお、アクリル酸(塩)は、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を意味する。
【0033】
好ましい吸水性樹脂は、ポリアクリル酸塩架橋体、アクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合物架橋体であり、特に離水性の点、及び香りの持続性の点からアクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体が好適である。アクリル酸(塩)/アクリルアミドの構成比率(モル比)は、赤外線全反射法(IR測定)によって組成比を算出し、その組成比が60/40〜99/1、好ましくは70/30〜99/1、より好ましくは80/20〜95/5である。
【0034】
ポリアクリル酸塩架橋体としては、例えば特開平8−337726号公報の実施例17〜22、特開平8−127725号公報の実施例1〜5に記載されているものを用いることができる。また、イソブチレン−無水マレイン酸共重合物架橋体は例えば、特開2000−212354号公報の実施例1及び2、特開2006−167202号公報の実施例1〜3に記載されている吸水性樹脂を用いることができる。更に、アクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体としては特開2007−291145号公報の試験例1、特開2007−291146号公報の試験例1、特開2007−270100号公報の試験例1に記載の吸水性樹脂を用いることができる。
【0035】
(d)成分の形状は球状が好ましい。吸水前、吸水後のいずれも球状であることが好ましい。吸水性樹脂は、一般に、吸水前の形状が球状であれば、吸水後も球状となる。該吸水性樹脂が容器につめられた場合、球状であれば、樹脂同士で密着する面積が少なく間隙が多くなるため、空気との接触面積が大きくなり匂い立ちの点から良好となる。また、吸水前の状態、すなわち、水又は水を含有する液状成分(例えば後述の液状混合物)を含浸させる前の状態での平均粒子径は500〜4,000μmが好適である。平均粒子径は、JIS試験用ふるい規格のふるい〔例えばNo.5〜No.35(公称目開きで4mm〜500μm)〕を用いたふるい分けにより測定することができる。
【0036】
(d)成分の市販品としては、特に制限されるものではないが、例えばアクリル酸(塩)架橋体としては日本触媒製のアクアリックCA、住友精化製のアクアキープSA、三洋化成製のサンフレッシュGT、アクアパールDS、アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合架橋体としてはAK Chemtech Co., Ltd.製のHISOBEAD、イソブチレン−無水マレイン酸共重合架橋体としてはクラレケミカル製のアクアビーズ#200、ポリオキシアルキレンオキシド架橋体としては住友精化製のアクアコークTWなどが挙げられる。
【0037】
<その他の成分>
〔(a)成分及び(b)成分以外の染料〕
本発明では、本発明の効果を損なわない範囲内であれば(a)成分及び(b)成分以外の染料を含有することができる。本発明においては、(a)成分及び(b)成分を1種類以上含有することを特徴とするが、色相変化を高める点から、(a)成分及び(b)成分の含有量の合計は、含有する全ての染料の合計量に対して30〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%が更に好ましく、95〜100質量%が最も好ましい。(a)成分及び(b)成分以外の染料としては、以下のものが挙げられる。
【0038】
(緑色系染料)
C.I.Direct green1、C.I.Acid green5、C.I.Direct green6、C.I.Direct green28、C.I.Acid green3、C.I.Acid green9、C.I.Acid green16、C.I.Acid green20、C.I.Acid green28、C.I.Food green3。
【0039】
(黄色系染料)
C.I.Acid Yellow3、C.I.Acid Yellow17、C.I.Acid Yellow23、C.I.Acid Yellow36、C.I.Reactive Yellow2、C.I.Reactive Yellow102、C.I.Reactive Yellow18、C.I.Reactive Yellow85、C.I.Basic Yellow28、C.I.Basic Yellow36、C.I.BasicYellow51、C.I.Basic Yellow67、C.I.Food Yellow3、Liquitint(登録商標)Bright Yellow(ミリケン・ケミカル社製)。
【0040】
〔(e)成分〕
本発明のゲル状芳香剤は(e)成分として消臭効果を付与する成分を含有することが好ましい。(e)成分としては、ツバキ科植物の抽出物であり、ツバキ科植物としては、例えば茶、山茶花、椿、サカキ、ヒサカキ、モッコク等が挙げられ、これらの生葉、その乾燥物、その加熱処理物等を用いることができる。これらの中では茶の生葉もしくはその乾燥物、あるいいは蒸気もしくは焙煎等により加熱処理されたものが好ましく、特に茶の生葉もしくはその乾燥物が、入手の容易性、安全性等の観点から好ましい。
【0041】
<(f)成分>
本発明のゲル状芳香剤は(f)成分として、下記一般式(f1)で表される界面活性剤及び一般式(f2)で表される界面活性剤から選ばれる界面活性剤を含有することが好ましい。
【0042】
【化1】

【0043】
(式中、R1fは炭素数7〜19の炭化水素基を表し、R2f、R3fはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3ヒドロキシアルキル基から選ばれる基を表し、pは2〜5の数を表す。)
【0044】
【化2】

【0045】
(式中、R2f、R3fはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基から選ばれる基を表し、R4fは炭素数8〜20の炭化水素基を表す。)
【0046】
一般式(f1)中、R1fは、炭素数7〜19の炭化水素基を表す。香りの持続性の点から、好ましくは炭素数11〜15の炭化水素基、より具体的にはヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基及びノナデシル基から選ばれる基であり、好ましくはウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基及びヘプタデシル基から選ばれる基である。より好ましくはウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基及びペンタデシル基から選ばれる基である。最も好ましくはウンデシル基及び/又はトリデシル基である。pは2〜5の数であり、好ましくは3である。一般式(f1)中のR2f、R3fはメチル基又はエチル基が好ましい。
【0047】
一般式(f2)中、R4fは、炭素数8〜20の炭化水素基を表す。香りの持続性の点から、好ましくは炭素数10〜16の炭化水素基、より具体的にはオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基である。より好ましくはデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基である。最も好ましくはドデシル基及び/又はテトラデシル基である。一般式(f2)中のR2f、R3fはメチル基が好ましい。
【0048】
(f)成分は、本発明のゲル状芳香剤の製造時、(c)成分を液状混合物中に少ない界面活性剤量で均一に分散又は可溶化させ、且つ液状混合物を(d)成分の吸水性樹脂に効率よく含浸させる観点、又は香りの持続性を更に高める観点から、好ましい成分である。(f)成分は、一般式(f1)で表される化合物が好ましい。
【0049】
<(g)成分>
更に、本発明は(g)成分として溶剤を含有することが好ましい。(g)成分としては、フェノキシエタノール、エタノール、イソプロパノール等の1価アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール類(好ましくは炭素数2〜12)が挙げられる。
【0050】
<(h)成分>
本発明のゲル状芳香剤は(h)成分として下記一般式(h1)で表される非イオン界面活性剤を含有することが好ましい。
HO−[(C24O)m/(C36O)n]−H (h1)
〔式中、mは1〜30の数、nは5〜100の数であり、“/”は(C24O)と(C36O)の配列がランダムでもブロックでもよいことを意味する。〕
【0051】
(h)成分は、前記一般式(h1)で表されるものであり、香料との相溶性に優れたポリプロピレングリコールユニットを疎水基、ポリエチレングリコールユニットを親水基として有する。一般式(h1)中、(C24O)と(C36O)の配列はランダムでもブロックでも良いが、ブロック付加型の方がランダム付加型より好ましい。具体的には、下記一般式(h2)〜(h4)から選ばれる一種以上が好ましい。
HO−(EO)a−(PO)b−(EO)c−H (h2)
HO−(PO)x−(EO)y−(PO)z−H (h3)
HO−(EO)y−(PO)b−H (h4)
〔式(h2)、(h3)、(h4)中、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示し、x、z及びbはプロピレンオキシドの平均付加モル数を示し、xとzの合計は5〜100、好ましくは10〜60の数であり、bは5〜100、好ましくは10〜60の数である。y及びa、cはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、yは1〜30、好ましくは1〜25の数であり、aとcの合計は1〜30、好ましくは1〜25の数である。〕
【0052】
より好ましくは、一般式(h2)の非イオン界面活性剤及び一般式(h4)の非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上であり、最も好ましくは、一般式(h4)の非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤である。
【0053】
<(i)成分>
本発明のゲル状芳香剤は(i)成分としてキレート剤を含有することが好ましい。
【0054】
(i)成分の具体例としては以下のものが挙げられる。
(i−1)アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン等のアミノ酸、及びそのアルカリ金属塩又はアルカノールアミン塩。
(i−2)ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノカルボン酸、及びそのアルカリ金属塩又はアルカノールアミン塩。
(i−3)ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸、及びそのアルカリ金属塩又はアルカノールアミン塩。
【0055】
これらの中でも、クエン酸、リンゴ酸等のヒドロキシカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸等のアミノカルボン酸、及びこれらの塩が好ましい。塩の形態としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩が好ましい。
【0056】
〔上記以外の成分〕
本発明のゲル状芳香剤は、色相変化や芳香性を阻害しない範囲において、防腐剤、硫酸ナトリウム、N,N,N−トリメチルグリシン等のアミノ酸の塩、pH調整剤、酸化防止剤、キレート剤、殺菌剤、抗菌剤、色素、紫外線吸収剤等を含有することができる。また、(f)成分、(h)成分以外の界面活性剤、例えば陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、(h)成分以外の非イオン界面活性剤を含有することができる。
【0057】
<ゲル状芳香剤>
本発明における「芳香剤」とは香料を徐放する機能を有する物品をいうが、消臭成分を併せて含有する場合には「芳香消臭剤」、「消臭芳香剤」又は「消臭剤」と呼称して使用する物品も包含する。
【0058】
本発明では、(a)成分/(b)成分の質量比は、1/50〜50/1であり、色相の変化を高める点から1/20〜20/1が好ましく、1/10〜10/1がより好ましく、1/5〜5/1が更に好ましく、1/3〜3/1が最も好ましい。
【0059】
本発明のゲル状芳香剤は、(a)赤色系染料、(b)青色系染料、(c)香料及び水を含有し、(a)成分/(b)成分の質量比が1/50〜50/1である液状混合物と、(d)成分とを含有するゲル状芳香剤であってよい。このゲル状芳香剤は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有する液状混合物を、(d)成分と混合してなる。
【0060】
前記液状混合物を用いる場合、(a)成分の含有量は、下限値以上では経時的な色相の変化が大きく、上限値以下では調製時に適度な色相の外観を付与できることから、液状混合物中、好ましくは0.00001〜0.01質量%、より好ましくは0.0005〜0.005質量%、更に好ましくは0.0001〜0.001質量%である。
【0061】
前記液状混合物を用いる場合、(b)成分の含有量は、下限値以上では経時的な色相の変化が大きく、上限値以下では調製時に適度な色相の外観を付与できることから、液状混合物中、好ましくは0.00001〜0.01質量%、より好ましくは0.0005〜0.005質量%、更に好ましくは0.0001〜0.001質量%である。
【0062】
前記液状混合物を用いる場合、(c)成分の含有量は、下限値以上では匂い立ちがよく、長期間香りを徐放することが出来、また上限値以下では吸水性樹脂への吸収がよいことから、液状混合物中、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%、更に好ましくは1〜4質量%である。
【0063】
前記液状混合物を用いる場合、(e)成分の含有量は、下限値以上では消臭効果が良好で、上限値以下では吸収性樹脂の褐変といった影響が少ないことから、液状混合物中、好ましくは0.005〜1質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%、更に好ましくは0.03〜0.1質量%である。
【0064】
前記液状混合物を用いる場合、(f)成分の含有量は、下限値以上では香料を十分に可溶化し、上限値以下では吸収性樹脂への吸収が良好であることから、液状混合物中、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%、更に好ましくは1.5〜4質量%である。
【0065】
前記液状混合物を用いる場合、(g)成分の含有量は、下限値以上では香料を十分に可溶化出来、上限値以下で均一で安定性の高い液状混合物が得られることから、液状混合物中、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.2〜1.5質量%、更に好ましくは0.4〜0.8質量%である。
【0066】
前記液状混合物を用いる場合、(h)成分の含有量は、下限値以上では香料を十分に可溶化して、上限値以下では吸収性樹脂への吸収を良好とすることから、液状混合物中、好ましくは0.3〜5質量%、より好ましくは0.5〜4質量%、更に好ましくは1〜3質量%である。
【0067】
前記液状混合物を用いる場合、(i)成分の含有量は、下限値以上では液体成分が吸水性樹脂に吸収しやすく、且つ上限値以下では吸液後も十分に保持されることから、液状混合物中、好ましくは0.001〜1質量%、より好ましくは0.01〜0.4質量%、更に好ましくは0.02〜0.2質量%である。
【0068】
前記液状混合物を用いる場合、該液状混合物と(d)成分の質量比は、液状混合物/(d)成分=100/1〜2/1、更に50/1〜5/1であることが好ましい。最終的な本発明のゲル状芳香剤中の(a)成分の含有量は0.000001〜1質量%、更に0.00001〜0.1質量%、より更に0.0001〜0.01質量%、(b)成分の含有量は0.000001〜1質量%、更に0.00001〜0.1質量%、より更に0.0001〜0.01質量%が好ましく、この範囲となるように液状混合物を用いることが好ましい。
【0069】
本発明のゲル状芳香剤は、香料を徐放する芳香剤であるが、使用後期は香料揮散量が減少するため、残液量が初期値の15質量%以下となった時点を製品の使用終点とすることが好ましい。この使用終点に関して、本発明によれば色相の変化から使用終点を判断することが出来るが、使用初期から使用終点までに色相が変化する効果の指標として、上記の間隔値で100等分した色相環の色相の間隔値を用いることができる。すなわち、本発明では、上記の間隔値で100等分した色相環において、ゲル状芳香剤の使用開始時の色相の値から使用終了時の色相の値との差分(以下、色相変化量という場合もある)が15以上であるものが、経時的な色相の変化が大きく、好ましい。また、本発明では、ゲル状芳香剤中の水分量が初期値の15質量%となった時点での色相変化量が15以上であるものが好ましい。従来のゲル状芳香剤の中にも染料により着色されているものもあるが、それらは、使用初期から使用終点までの色相の変化が乏しく、経時的な外観上の色相の変化を容易に視認できない。
【0070】
本発明により、本発明のゲル状芳香剤を用いた芳香付与方法であって、前記ゲル状芳香剤の外観の色相変化量が15以上となるまで前記ゲル状芳香剤の使用を継続する、芳香付与方法が提供される。
【0071】
また、本発明により、本発明のゲル状芳香剤を用いた芳香付与方法であって、前記ゲル状芳香剤の外観の色相変化量が15以上となった時点で前記ゲル状芳香剤の使用を終了する、芳香付与方法が提供される。
【0072】
本発明では、ゲル状芳香剤中の水分量が初期値の15質量%となった時点で色相変化量が15以上となるように設計することで、ゲル状芳香剤の使用終了を容易に判断することができ、好ましい。
【0073】
本発明のゲル状芳香剤はそのまま芳香剤として使用することもできるが、当該ゲル状芳香剤を含んで構成される据え置き型芳香剤とすることができる。例えば、自立可能な容器等に収容して据え置き型芳香剤とすることもできる。
【0074】
本発明のゲル状芳香剤が収容される容器は、該ゲル状芳香剤を収容可能であって、開放部を有し、この開放部からゲル状芳香剤中の芳香成分〔(c)成分〕を揮散させ得るものであれば、その形状や構造に特に制限はなく、開放部が上部にあるものの他、側部など他部にあるものも使用可能である。
【0075】
上記容器としては、プラスチック、ガラス、金属などを用いることができるが、ゲル状成型物の収縮を目視できる、透明又は半透明な材質や、スリットや開口部から内部を視認できるものが使用できる。更には、従来から芳香・消臭剤に用いられているプラスチック容器、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの容器が使用される。
【0076】
本発明のゲル状芳香剤を容器内に収容、設置する際、設置量は特に限定されず、使用する場所や使用期間、容器形状などの特性に応じて適宜選定することができ、また、同一容器に互いに異なる色調及び/又は香調を有するゲル状芳香剤を収容、設置してもよい。
【0077】
本発明のゲル状芳香剤は、使用により経時でゲル状消臭芳香剤から水分や各種成分が揮散することでゲル状物が収縮する。それに伴い、外観の色相が変化する。従って、例えば容器外部から経時によるゲル状消臭芳香剤の色相の変化を視認することによって、ゲル状芳香剤の使用終点、交換時期を容易に判断することができる。
【0078】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のゲル状芳香剤、及びその用途を開示する。
【0079】
<1>(a)赤色系染料、(b)青色系染料、(c)香料、(d)カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基を有する吸水性樹脂、並びに水を含有し、(a)/(b)の質量比が1/50〜50/1である、ゲル状芳香剤。
【0080】
<2>(a)成分が、0.001質量%水溶液の色相が、マンセル色票に基づく表色系で色相環1周を前記の基準で100で表した場合の間隔値で1〜10又は81〜100、好ましくは1〜5又は85〜100、より好ましくは91〜100となる赤色系染料である、前記<1>に記載のゲル状芳香剤。
【0081】
<3>(a)成分が、C.I.Acid Violet9である前記<1>又は<2>に記載のゲル状芳香剤。
【0082】
<4>(b)成分が、0.001質量%水溶液の色相が、マンセル色票に基づく表色系で色相環1周を前記の基準で100で表した場合の間隔値で51〜80、好ましくは60以上が好ましく、より好ましくは65以上、また好ましくは75以下となる青色系染料である、前記<1>〜<3>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0083】
<5>(b)成分が、C.I.Reactive Blue71及び/又はC.I.Reactive Blue72、好ましくはC.I.Reactive Blue71である前記<1>〜<4>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0084】
<6>(a)/(b)の質量比が、1/20以上、好ましくは1/10以上、より好ましくは1/5以上、更に好ましくは1/3以上であり、また、20/1以下、好ましくは10/1以下、より好ましくは5/1以下、更に好ましくは3/1以下である前記<1>〜<5>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0085】
<7>ゲル状芳香剤中の(a)成分の含有量が、0.000001〜1質量%、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上であり、また、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である前記<1>〜<6>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0086】
<8>ゲル状芳香剤中の(b)成分の含有量が、0.000001〜1質量%、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上であり、また、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である前記<1>〜<7>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0087】
<9>(a)成分及び(b)成分が、それぞれポリオキシアルキレン鎖を少なくとも1つ有する染料である前記<1>〜<8>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0088】
<10>(c)成分が、logPが1〜6の香料素材又はこれを1種以上含有する香料組成物である前記<1>〜<9>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0089】
<11>(d)成分が、20℃の環境条件下において該吸水性樹脂1gあたり、20℃のイオン交換水の吸水量が10〜300g、好ましくは10〜250g、より好ましくは20〜200gの吸水性樹脂である前記<1>〜<10>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0090】
<12>(d)成分がポリアクリル酸塩架橋体、アクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体、及びイソブチレン−無水マレイン酸共重合物架橋体から選ばれる吸水性樹脂であり、好ましくはアクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体から選ばれる吸水性樹脂である前記<1>〜<11>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0091】
<13>(d)成分が、アクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合物架橋体であり、赤外線全反射法(IR測定)によって算出したアクリル酸(塩)/アクリルアミドのモル比が60/40〜99/1、好ましくは70/30以上、より好ましくは80/20以上であり、また、好ましくは95/5以下、より好ましくは80/20〜95/5である前記<1>〜<12>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0092】
<14>(d)成分の形状が球状である前記<1>〜<13>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0093】
<15>(d)成分が、吸水前の状態で、平均粒子径500〜4,000μmである前記<1>〜<14>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0094】
<16>(a)成分及び(b)成分の含有量の合計が、含有する全ての染料の合計量に対して30〜100質量%であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である前記<1>〜<15>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0095】
<17>(e)成分として消臭効果を付与する成分、好ましくはツバキ科植物の抽出物、より好ましくは茶、山茶花、椿、サカキ、ヒサカキ及びモッコクから選ばれる1種以上の抽出物、更に好ましくは茶の生葉又はその乾燥物又は加熱処理物からの抽出物、より更に好ましくは茶の生葉又はその乾燥物からの抽出物を含有する前記<1>〜<16>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0096】
<18>(f)成分として、前記一般式(f1)で表される界面活性剤、好ましくは前記一般式(f1)中、R1fが炭素数11〜15の炭化水素基、更にウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、及びヘプタデシル基から選ばれる基、更にウンデシル基及び/又はトリデシル基であり、R2f、R3fがメチル基又はエチル基である界面活性剤を含有する前記<1>〜<17>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0097】
<19>(f)成分として、前記一般式(f2)で表される界面活性剤、好ましくは前記一般式(f2)中、R4fが炭素数10〜16の炭化水素基、更にオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、及びオクタデシル基から選ばれる基、更にドデシル基及び/又はテトラデシル基であり、一般式(f2)中のR2f、R3fがメチル基である界面活性剤を含有する前記<1>〜<18>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0098】
<20>(g)成分として溶剤、好ましくはフェノキシエタノール、及びエタノール、イソプロパノールから選ばれる1価アルコール類、並びにエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、及びソルビトールから選ばれる多価アルコール類(好ましくは炭素数2〜12)から選ばれる溶剤を含有する前記<1>〜<19>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0099】
<21>(h)成分として前記一般式(h1)で表される非イオン界面活性剤、好ましくは前記一般式(h1)中、(C24O)と(C36O)の配列がブロック付加型である非イオン界面活性剤、より好ましくは前記一般式(h2)〜(h4)から選ばれる一種以上、更に好ましくは前記一般式(h2)及び一般式(h4)から選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤、より更に好ましくは前記一般式(h4)で表される非イオン界面活性剤を含有する前記<1>〜<20>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0100】
<22>(i)成分としてキレート剤、好ましくはクエン酸、及びリンゴ酸から選ばれるヒドロキシカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸から選ばれるアミノカルボン酸、並びにこれらの塩、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、又はアルカノールアミン塩から選ばれる1種以上のキレート剤を含有する前記<1>〜<21>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0101】
<23>(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水、並びに必要に応じて(e)〜(i)成分から選ばれる成分を含有し、(a)成分/(b)成分の質量比が1/50〜50/1である液状混合物を、前記(d)吸水性樹脂と混合してなる前記<1>〜<22>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0102】
<24>前記液状混合物と(d)成分の質量比が、液状混合物/(d)成分=100/1〜2/1、好ましくは50/1以上であり、また、好ましくは5/1以下である前記<23>に記載のゲル状芳香剤。
【0103】
<25>前記液状混合物中の(a)成分の含有量が0.00001〜0.01質量%、好ましくは0.0005質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上であり、また、好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下であり、また、好ましくは0.0001〜0.001質量%である前記<22>又は<23>に記載のゲル状芳香剤。
【0104】
<26>前記液状混合物中の(b)成分の含有量が0.00001〜0.01質量%、好ましくは0.0005質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上であり、また、好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下であり、また、好ましくは0.0001〜0.001質量%である前記<23>〜<25>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0105】
<27>前記液状混合物中の(c)成分の含有量が0.5〜10質量%、好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下であり、また、好ましくは1〜4質量%である前記<23>〜<26>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0106】
<28>前記液状混合物が(e)成分を含有し、該前記液状混合物中の(e)成分の含有量が0.005〜1質量%、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上であり、また、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下であり、また、好ましくは0.03〜0.1質量%である前記<23>〜<27>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0107】
<29>前記液状混合物が(f)成分を含有し、該前記液状混合物中の(f)成分の含有量が0.1〜10質量%、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、好ましくは4質量%以下であり、また、好ましくは1.5〜4質量%である前記<23>〜<28>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0108】
<30>前記液状混合物が(g)成分を含有し、該前記液状混合物中の(g)成分の含有量が0.1〜5質量%、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上であり、また、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下であり、また、好ましくは0.4〜0.8質量%である前記<23>〜<29>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0109】
<31>前記液状混合物が(h)成分を含有し、該前記液状混合物中の(h)成分の含有量が0.3〜5質量%、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下であり、また、好ましくは1〜3質量%である前記<23>〜<29>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0110】
<32>前記液状混合物が(i)成分を含有し、該前記液状混合物中の(i)成分の含有量が0.001〜1質量%、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上であり、また、好ましくは0.4質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下であり、また、好ましくは0.02〜0.2質量%である前記<23>〜<30>のいずれか1に記載のゲル状芳香剤。
【0111】
<33>前記いずれか1に記載のゲル状芳香剤を用いた芳香付与方法であって、前記ゲル状芳香剤の外観の色相変化量が15以上となった時点で前記ゲル状芳香剤の使用を終了する、芳香付与方法。
【0112】
<34>前記いずれか1に記載のゲル状芳香剤を用いた芳香付与方法であって、前記ゲル状芳香剤の外観の色相変化量が15以上となるまで前記ゲル状芳香剤の使用を継続する、芳香付与方法。
【実施例】
【0113】
<ゲル状芳香剤の調製>
表1の液状混合物100gと吸水性樹脂5gとを、広口規格ビン(PS−No.6)に入れフタを閉め、液状混合物を吸水性樹脂に含浸し、24時間静置したものをゲル状芳香剤とし、経時的な外観の色相変化(色相変化量)の評価に用いた。なお、吸水性樹脂は、アクリル酸−アクリルアミド共重合体(HISOBEAD 、AK Chemtech Co., Ltd.製、球状、乾燥粒子径2000μm)を用いた。また、液状混合物の含浸により吸水性樹脂は膨潤し、球状のゲル状芳香剤が得られた。
【0114】
<色相変化量の評価>
ゲル状芳香剤を、開口部のある容器(株式会社三商製、セキュリティーコンテナー、60ml)に充填させ、その状態で40℃、2週間保存し、保存前後の当該ゲル状芳香剤の色相を、前記したマンセル色票に基づく色相環1周を100等分して前記の通り配列した場合の色相で目視観察し、その間隔の差分を色相変化量とした。保存後のゲル状芳香剤は、何れも、水分量が保存前の水分量に対して15質量%以下となっていた。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
【表3】

【0118】
<処方例>
表4に本発明のゲル状芳香剤の調製に使用できる液状混合物を示す。この液状混合物100質量部と、吸水性樹脂、例えばアクリル酸−アクリルアミド共重合体(HISOBEAD、AK Chemtech Co., Ltd.製、乾燥粒子径2000μm)を3〜5質量部とを混合することで、本発明のゲル状芳香剤を得ることができる。
【0119】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)赤色系染料、(b)青色系染料、(c)香料、(d)カルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基を有する吸水性樹脂、並びに水を含有し、(a)/(b)の質量比が1/50〜50/1である、ゲル状芳香剤。
【請求項2】
(a)が、0.001質量%水溶液の色相が、マンセル色票に基づく表色系の色相環1周を100等分し下記の基準で配列した間隔値で1〜10又は81〜100となる赤色系染料である、請求項1記載のゲル状芳香剤。
(色相と間隔値)
R(赤): 1〜10
YR(黄赤):11〜20
Y(黄):21〜30
GY(黄緑):31〜40
G(緑):41〜50
BG(青緑):51〜60
B(青):61〜70
PB(青紫):71〜80
P(紫):81〜90
RP(赤紫):91〜100
【請求項3】
(a)が、C.I.Acid Violet9である請求項1又は2記載のゲル状芳香剤。
【請求項4】
(b)が、0.001質量%水溶液の色相が、マンセル色票に基づく表色系の色相環1周を100等分し下記の基準で配列した間隔値で51〜80となる青色系染料である、請求項1〜3の何れか1項記載のゲル状芳香剤。
(色相と間隔値)
R(赤): 1〜10
YR(黄赤):11〜20
Y(黄):21〜30
GY(黄緑):31〜40
G(緑):41〜50
BG(青緑):51〜60
B(青):61〜70
PB(青紫):71〜80
P(紫):81〜90
RP(赤紫):91〜100
【請求項5】
(b)が、C.I.Reactive Blue71及び/又はC.I.Reactive Blue72である請求項1〜4の何れか1項記載のゲル状芳香剤。
【請求項6】
(a)0.00005〜0.01質量%、(b)0.00005〜0.01質量%、(c)香料、及び水を含有する液状混合物を、前記(d)吸水性樹脂と混合してなる、請求項1〜5の何れか1項記載のゲル状芳香剤。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項記載のゲル状芳香剤を用いた芳香付与方法であって、前記ゲル状芳香剤の外観の色相変化量が15以上となった時点で前記ゲル状芳香剤の使用を終了する、芳香付与方法。

【公開番号】特開2013−85603(P2013−85603A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226817(P2011−226817)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】