説明

ゲル紡糸ポリエチレン繊維

本発明は、a)UHMWPEと紡糸溶剤とを含むスラリーを押出機へ供給するステップと;b)押出機中のスラリーを紡糸溶剤中にUHMWPEを含む溶液に変えるステップと;c)ステップb)の溶液を、複数個の紡糸孔を含む紡糸プレートに通すことによって、流体UHMWPE繊維を紡糸するステップと;d)流体UHMWPE繊維を冷却してゲルUHMWPE繊維を形成するステップと;e)少なくとも部分的に紡糸溶剤をゲルUHMWPE繊維から除去するステップと;f)紡糸溶剤を除去する前、その除去の間及び/またはその除去の後に少なくとも1回の延伸ステップでUHMWPE繊維を延伸するステップとを含む、UHMWPE繊維を製造するためのゲル紡糸法であって、紡糸プレートが1cm当たり6個以下の紡糸孔を有することを特徴とする、UHMWPE繊維を製造するためのゲル紡糸法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ゲル紡糸超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維およびその製造方法に関する。本発明はまた、UHMWPE繊維を含む様々な物品(例えば、ロープ、網および複合材)に関する。
【0002】
ゲル紡糸UHMWPE繊維は普通、紡糸溶剤中にUHMWPE分子を含む溶液を紡いで流体繊維(fluid fiber)を形成し、流体繊維を冷却してゲル状態にしてゲル繊維にし、次いで紡糸溶剤を除去して固体繊維を形成することによって製造する。1つの状態または全部の状態(すなわち、流体、ゲル及び/または固体)のUHMWPE繊維を延伸して、繊維内のUHMWPE分子が整列されて高配向領域になっている状態にすることができる。延伸されたゲル紡糸UHMWPE繊維の例およびそれを得るためのゲル紡糸法の例は、例えば、欧州特許第1,137,828B1号明細書、国際公開第2005/066,401号パンフレット、欧州特許第1,193,335号明細書、米国特許第6,958,187号明細書および米国特許第6,969,553号明細書に記載されている。
【0003】
周知のゲル紡糸法では、繊維内のUHMWPE分子が、1つまたは複数の配向部位、1つまたは複数の移動性部位、および配向部位と移動性部位との間の境界領域(interface)に存在する1つまたは複数の部位から構成されている、UHMWPE繊維が作り出される。したがって周知のUHMWPE繊維は、UHMWPE分子の配向部位(1つまたは複数)からなる配向部分(結晶部分とも呼ばれる);UHMWPE分子の移動性部位(1つまたは複数)からなる非配向部分(非晶質部分とも呼ばれる);およびそれらの間の境界領域にあるUHMWPE分子の部位(1つまたは複数)からなる境界領域部分を含む構成を有する。
【0004】
UHMWPE繊維の機械的性質は、その結晶部分とその非晶質部分の比率の影響を受けることが知られており、この比率は繊維を延伸する度合いを変えることによって調節される。UHMWPE繊維を延伸することにより、非晶質部分のUHMWPE分子部分がより多く及び/またはより長く整列され、前記繊維の結晶部分が増大する。前記増大により、機械的性質(例えば、引張り強さおよびモジュラス)の向上したUHMWPE繊維が得られることが観察された。
【0005】
しかし、周知のゲル紡糸法では、必ずしも境界領域部分の量が減少せず、かつ/または秩序部分の分子構造に影響しない。それゆえに、そのような方法ではUHMWPE繊維の機械的性質をある程度までしか向上させることができない。さらに、前記周知の方法では、一定の特性を有するUHMWPE繊維しか作り出すことができず、それゆえに、周知の方法は、機械的性質および物理的性質のいろいろな組み合わせを持つ繊維を作ろうとする場合、柔軟性に欠けることになる。
【0006】
さらに、UHMWPE繊維の秩序部分の分子構造の中で生じる構造欠陥を減少させることによって、その分子構造に影響を及ぼすことができるゲル紡糸法が必要とされている。そのような構造欠陥(例えば、ジグザグのUHMWPE分子における鎖の折重なり、ループ、絡み合いおよびねじれのようなもの)は、繊維の物理的性質および機械的性質に好ましくない影響を及ぼす。それゆえに、その秩序部分の分子構造における構造欠陥が少なくなっているUHMWPE繊維が必要とされている。
【0007】
また、方法の安定性を高めることによってUHMWPE繊維を製造するための方法全体を改善することも必要とされている。特に、糸の最適特性(均質性など)を維持しながら、糸の破損を減少させることが望ましい。
【0008】
本発明がここに、
a)UHMWPEと紡糸溶剤とを含むスラリーを押出機へ供給するステップと;
b)押出機中のスラリーを、紡糸溶剤中にUHMWPEを含む溶液に変えるステップと;
c)ステップb)の溶液を、複数個の紡糸孔を含む紡糸プレートに通すことによって、流体UHMWPE繊維を紡糸するステップと;
d)流体UHMWPE繊維を冷却してゲルUHMWPE繊維を形成するステップと;
e)少なくとも部分的に紡糸溶剤をゲルUHMWPE繊維から除去するステップと;
f)紡糸溶剤を除去する前、その除去の間及び/またはその除去の後に、少なくとも1回の延伸ステップでUHMWPE繊維を延伸するステップと
を含む、UHMWPE繊維を製造するゲル紡糸法であって、
紡糸プレートが1cm当たり6個以下の紡糸孔を有することを特徴とする、UHMWPE繊維を製造するゲル紡糸法を提供する。
【0009】
驚くべきことに、本発明の方法により、構成の改善されたUHMWPE繊維を得ることができること、また特に、得られたUHMWPE繊維の境界領域部分の量を減少させることができることが見出された。さらに、前記方法により、周知のゲル紡糸UHMWPE繊維よりも欠陥の少ない分子構造を秩序部分が有する、UHMWPE繊維を製造することが可能である。
【0010】
また驚くべきことに、幅広い組み合わせの機械的性質を有するUHMWPE繊維を製造することが可能であるという点で、本発明の方法はいっそう柔軟性があることも見出された。繊維の破損の数が減少し、前記本発明の方法は周知の方法よりも長い時間実施することができるという点で、本発明の方法はいっそう強力なものであることも見出された。したがって、本発明の方法の生産性は増大する。
【0011】
本発明の方法の更なる利点として、それによって得られたUHMWPE繊維はまた、結晶部分において構造欠陥が少なくなっているという点もある。
【0012】
本発明の方法によれば、ステップe)において、形成されたゲルUHMWPE繊維に対して、紡糸溶剤を少なくとも部分的に除去して固体UHMWPE繊維を作り出す溶剤除去ステップを実施する。好ましくは、溶剤は、少なくとも0.005kg(溶剤)/kg(UHMWPE)秒、より好ましくは少なくとも0.01kg(溶剤)/kg(UHMWPE)秒、もっとも好ましくは少なくとも0.05kg(溶剤)/kg(UHMWPE)秒(少なくとも0.1kg(溶剤)/kg(UHMWPE)秒など)の速度で、ゲルUHMWPE繊維から除去する。紡糸溶剤をゲルUHMWPE繊維からいっそう速く除去すると、UHMWPE繊維の境界領域部分の量がいっそう減少することが観察された。溶剤除去の最大速度は、標準的な実験によって求めることができる。典型的には、ステップe)における溶剤除去の最大速度は、0.5kg(溶剤)/kg(UHMWPE)秒であることが好ましく、より好ましくは、溶剤除去の最大速度は0.2kg(溶剤)/kg(UHMWPE)秒である。これは、溶媒除去速度を大きくすると、場合によっては性質の低下につながることがあるからである。
【0013】
溶剤除去ステップe)の後に固体UHMWPE繊維中に残る残留紡糸溶剤(以下、残留溶剤)の量は、広い範囲内において様々でありうるが、好ましくは本発明の方法のステップb)におけるUHMWPE溶液中の溶剤の初期量の15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらにより好ましくは5質量%以下、もっとも好ましくは1質量%以下である。紡糸溶剤をゲルUHMWPE繊維からかなりの程度除去すると、固体UHMWPE繊維の秩序部分内の構造欠陥の量が減少することが観察された。残留溶剤の好ましい量は、ステップe)後の繊維の取り扱いのタイプによって異なる。手で取り扱う必要がある場合、非常に少量であること(2質量%未満、または好ましくは1質量%未満、あるいはさらに0.5質量%未満)が、作業環境の観点から非常に好ましい。繊維の取り扱いを、好ましくは密閉室内で自動化する(例えば、インライン装置で)場合、残留溶剤の量は多い(例えば、5質量%、10質量%、15質量%、あるいは特別な場合にはさらに高い濃度など)のが有利でありうる。
【0014】
本発明の方法のステップe)における溶剤除去工程は、比較的揮発性の紡糸溶剤(例えば、デカリン)を用いてUHMWPE溶液を調製した場合、周知の方法(例えば、蒸発)で実施することができる。紡糸溶剤の蒸発速度を増大させるために、蒸発は、好ましくは、オーブンにおいて90から150℃の間、より好ましくは100から140℃の間、もっとも好ましくは110から135℃の間の温度で実施する。
【0015】
好ましくは、蒸発は、繊維に当たるガスの噴射(例えば、空気、N、Ar、またはそれらの混合物の噴射)を生じるノズルを備えたオーブン中で実施する。好ましくは、ガス噴射は繊維に対して実質的に垂直である。ガス速度が少なくとも0.2m/s、好ましくは少なくとも0.5m/s、より好ましくは少なくとも1.0m/sである時に、良好な結果が得られた。
【0016】
好ましい実施態様では、少なくとも2、より好ましくは少なくとも3、もっとも好ましくは少なくとも4の延伸比で、ゲル繊維を延伸しかつ/または固体繊維を生じさせながら、蒸発を延伸オーブン中で行わせる。この段階で(すなわち、生じた固体繊維を延伸する前)得られた中間UHMWPE繊維の機械的性質は、周知の方法で得られる中間UHMWPE繊維と比べて向上していることが観察された。
【0017】
不揮発性または低揮発性の紡糸溶剤(例えば、パラフィン)の場合、抽出液剤(extraction liquid)を用いることによってさらに溶剤除去を行える可能性がある。特に揮発性物質と不揮発性物質の溶剤の混合物を紡糸に使用する場合には、両方の方法(すなわち、蒸発と抽出)を組み合わせて用いることができる。好適な抽出液剤には、UHMWPEゲル繊維のUHMWPE網構造に重大な変化を生じさせない液体、例えば、エタノール、エーテル、アセトン、シクロヘキサノン、2−メチルペンタノン、n−ヘキサン、ジクロロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、ジエチルエーテルおよびジオキサンまたはそれらの混合物がある。好ましくは、抽出液剤は、再生利用のために紡糸溶剤を抽出液剤から分離できるようなもの選択する。紡糸溶剤抽出の速度を増大させるため、好ましくは、抽出液剤の温度は0から60℃の間、より好ましくは10から50℃の間、もっとも好ましくは20から40℃の間である。より好ましくは、抽出の速い抽出液剤と抽出の遅い抽出液剤との混合物を使用し、その好適な例には、エタノールとアセトン、それらの混合物とそれらの少なくとも1種を含む混合物がある。そのような混合物をゲル紡糸法で使用すると、それによって得られたUHMWPE繊維の境界領域部分における構造欠陥の数の減少も起こることが見出された。好ましいくは、抽出用液剤(extracting liquids)の流れを使用し、その流れの速度は、好ましくは0.1m/s、より好ましくは少なくとも1m/s、もっとも好ましくは少なくとも4m/sである。
【0018】
好ましくは、本発明の方法では、1cm当たり6個以下、より好ましくは5個以下、さらにより好ましくは2個以下、もっとも好ましくは1個以下の紡糸孔を有する紡糸プレートを使用する。本発明はまた、そのような紡糸プレートおよびポリマー繊維を製造するための紡糸法におけるその使用に関する。そのような紡糸プレートの利点は、それを使用した紡糸方法では、向上した構成(例えば、境界領域部分の量の減少及び/または秩序部分における欠陥の減少)および特性を有する繊維および特にUHMWPE繊維が製造されることである。さらに、前記方法はより柔軟性のある強力なものであり、より均質な繊維が製造されることが観察された。
【0019】
好ましくは、前記紡糸プレートは、1cm当たり少なくとも0.1個の紡糸孔、より好ましくは少なくとも0.5個を有する。好ましくは、紡糸プレートの紡糸孔は紡糸プレートの全表面にわたって分散しており、より好ましくは、紡糸孔は均一に分散している。そのような紡糸プレートを使用すると、より均質なUHMWPE繊維が製造されるだけでなく、繊維破損の発生が減少し、方法の生産性が改善されることが見出された。
【0020】
方法の生産性が良好になるのは、紡糸プレートが、少なくとも10個の紡糸孔、好ましくは少なくとも50個、より好ましくは少なくとも100個、さらにずっとより好ましくは少なくとも300個、もっとも好ましくは少なくとも500個の紡糸孔を含む場合である。好ましくは、紡糸プレートは、5000個以下、より好ましくは3000個以下、もっとも好ましくは1000個以下の紡糸孔を含む。
【0021】
紡糸溶剤の好適な例としては、脂肪族および脂環式の炭化水素、例えば、オクタン、ノナン、デカンおよびパラフィン(それらの異性体を含む);石油留分;鉱油;ケロシン;芳香族炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、およびナフタレン(それらの水素化誘導体、例えば、デカリンおよびテトラリンを含む);ハロゲン化炭化水素、例えば、モノクロロベンゼン;およびシクロアルカンまたはシクロアルケン、例えば、カリーン(careen)、フッ素、カンフェン、メンタン、ジペンテン、ナフタレン、アセナフタレン(acenaphtalene)、メチルシクロペンタジエン(methylcyclopentandien)、トリシクロデカン、1,2,4,5−テトラメチル−1,4−シクロヘキサジエン、フルオレノン、ハフチンダン(naphtindane)、テトラメチル−p−ベンゾジキノン、エチルフルオレン(ethylfuorene)、フルオランテンおよびナフテノンがある。上に列挙した紡糸溶剤を組み合わせたものもUHMWPEのゲル紡糸に使用でき、簡単にするため溶剤を組み合わせたものも紡糸溶剤と呼ぶ。好ましい実施態様では、一般に好まれる紡糸溶剤は、室温において揮発性ではないもの、例えば、パラフィン油である。本発明の方法は、室温で比較的揮発性の紡糸溶剤(例えば、デカリン、テトラリンおよびケロシン品質等級(kerosene grades)のようなもの)にとって特に有利であることも見出された。もっとも好ましい実施態様では、一般に好まれる紡糸溶剤はデカリンである。
【0022】
本発明の方法で用いるUHMWPEは、好ましくは、135℃においてデカリン溶液で測定した場合の固有粘度(IV)が、少なくとも5dl/g、好ましくは少なくとも10dl/g、より好ましくは少なくとも15dl/g、もっとも好ましくは少なくとも21dl/gである。好ましくは、IVは、40dl/g以下、より好ましくは30dl/g以下、さらにより好ましくは25dl/g以下である。IVを注意深く選択するなら、紡糸するUHMWPE溶液の加工性と得られたモノフィラメントの機械的性質との釣り合いが保たれる。
【0023】
好ましくは、UHMWPEは、100個の炭素原子当たり1つ未満の分枝、好ましくは300個の炭素原子当たり1つ未満の分枝を有する線状ポリエチレンであり;分枝または側鎖または鎖分枝(chain branch)は普通、少なくとも10個の炭素原子を含む。線状ポリエチレンを使用した場合に良好な結果が得られることが観察された。線状ポリエチレンは、5モル%までの1種またはそれ以上のコモノマー(プロピレン、ブテン、ペンテン、4−メチルペンテンまたはオクタンのようなアルケンなど)をさらに含んでもよく、さらに少量の(一般には5質量%未満、好ましくは3質量%未満の)通例の添加剤(例えば、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、流動促進剤など)も含んでよい。
【0024】
好ましくは、スラリーは、少なくとも3質量%、より好ましくは少なくとも5質量%、さらにより好ましくは少なくとも8質量%、もっとも好ましくは少なくとも10質量%のUHMWPEを含む。スラリーは、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらにより好ましくは20質量%以下、もっとも好ましくは15質量%以下のUHMWPEを含む。加工性を向上させるためには、ポリエチレンのモル質量が大きいほど、濃度は低い方が好ましい。好ましくは、スラリーは、UHMWPEのIVが15〜25dl/gの範囲である場合、3から25質量%の間のUHMWPEを含む。しかし、均一な本発明の糸を得るためには、好ましくはより高濃度のスラリーが使用される。それゆえに、5から20質量%の間のUHMWPEを含み、IVが15〜25dl/gであるスラリーで、良好な結果が得られた。
【0025】
流体UHMWPE繊維を冷却(急冷としても知られている)してゲルUHMWPE繊維を生じさせることは、ガス流及び/または液体冷却槽中で行うことができる。好ましくは、冷却槽は、UHMWPEの非溶剤である冷却液、より好ましくはUHMWPE溶液の調製に使用された溶剤と混和性でない冷却液を含む。好ましくは、冷却液は、少なくとも流体繊維が冷却槽に入る場所において繊維に対して実質的に垂直に流れるが、その利点は、冷却槽中での延伸条件をよりうまく限定し制御することができることである。
【0026】
本発明による方法は、溶剤の前記除去の前、その間及び/またはその後にUHMWPE繊維を延伸することをさらに含む。好ましくは、少なくとも2、より好ましくは少なくとも3、もっとも好ましくは少なくとも4の延伸比で、流体繊維を延伸する。当業者であれば、例えば、1つまたは複数の収縮ゾーン(contraction zones)が設けられた紡糸孔を有する紡糸プレートを使用するか、流体繊維を出す紡糸プレートの表面と流体繊維が冷却されてゲル繊維が生じる領域との間に存在するエアギャップにおいて延伸する(当てはまる場合)か、あるいはその両方の手法を組み合わせた、流体繊維の延伸方法を知っている。流体繊維の延伸方法の例は、例えば、国際公開第2005/066,401号パンフレットに記載されている。
【0027】
好ましくは、ゲル及び/または固体の繊維は、少なくとも4、より好ましくは少なくとも10、もっとも好ましくは少なくとも20の延伸比で、延伸オーブン中において、少なくとも1つの延伸ステップで延伸する。より好ましくは、固体繊維の延伸は、少なくとも2つのステップ、さらにより好ましくは少なくとも3つのステップで実施する。それぞれの延伸ステップは、好ましくは、繊維の破損を生じさせることなく所望の延伸比が達成されるように選ばれた、異なる温度で実施するのが好ましい。好ましくは、延伸オーブンには温度勾配が設けられる。ゲル及び/または固体の繊維の延伸を複数ステップで実施する場合、前記繊維の合計延伸比は、それぞれ個別の延伸ステップで達成された延伸比を乗ずることによって計算する。
【0028】
本発明はさらに、本発明の方法で得ることのできるゲル紡糸UHMWPE繊維に関する。本発明の繊維は、13C核磁気共鳴(NMR)分光法で測定した場合に境界領域部分の量が減少していることが観察された。
【0029】
本発明のUHMWPE繊維はまた、構造欠陥の量が特に秩序部分で減少している(これも、13C核磁気共鳴分光法で測定した場合)ことも見出された。
【0030】
好ましくは、本発明のUHMWPE繊維は、25%未満の量の中間部分を含む構成を有し、中間部分は、UHMWPE分子の配向部位と非配向部位との間の境界領域に位置するUHMWPE分子の1つの部位または複数の部位からなっている。より好ましくは、本発明の繊維の構成における中間部分の前記量は、15%未満、さらにより好ましくは10%未満、もっとも好ましくは5%未満である。
【0031】
本発明のUHMWPE繊維の利点は、その構成が、周知のゲル紡糸UHMWPE繊維と比べて多くの量の配向部分を含むことである。本発明の方法では、処理ステップの間に境界領域部分の少なくとも一部を配向部分、より具体的には、単斜晶系(monoclinic type)の結晶構造を有する配向部分に変えることにより、前記配向部分を増大させることができることが見出された。それゆえに、本発明の繊維は、物理的性質および機械的性質がより優れていることが観察された。
【0032】
本発明の好ましい実施態様では、本発明の繊維の構成は、13C NMR分光法で測定した場合に、少なくとも65%、より好ましくは少なくとも75%、もっとも好ましくは少なくとも85%の量の配向部分を含み、前記配向部分は、UHMWPE分子の配向した1つの部位または複数の部位から構成され、前記配向部分の少なくとも3%が単斜晶系の配向結晶構造を有する。13C NMR分光法で測定した場合に、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも6%の前記配向部分が単斜晶系の配向結晶構造を有する。
【0033】
本発明による方法は柔軟性があるため、得られるゲル紡糸UHMWPE繊維の機械的および物理的性質を幅広いものにすることができる。普通のゲル紡糸法では、機械的性質間で厳密な関係のある繊維が作り出される。言い換えれば、例えば、ある特定の引張り強さを有する繊維を製造する必要がある場合、他のすべての機械的パラメーター(例えば、モジュラス、破断点伸び、クリープ)が実質的に引張り強さによって決まり、それに依存する。本発明の方法では、本方法で製造されるゲル紡糸UHMWPE繊維の機械的パラメーターに関して、たとえ1つのそのようなパラメーター(例えば、引張り強さ)が決まっていている場合であっても、幅広い選択肢の範囲(window)が提供されうる。どんな解釈にも縛られることはないが、本発明者らは、この利点は、13C NMRスペクトルでのピーク高さの中点における線幅(Δυ1/2)の増大した値(単斜晶系の結晶構造を有する配向部分に対応する)を有するゲル紡糸UHMWPE繊維を製造できることに起因するとした。Δυ1/2の増大した値は、例えば、ジグザグのUHMWPE分子における鎖の折重なり、ループ、絡み合いおよびねじれなどの欠陥の少なくなっている秩序部分を有するUHMWPE繊維に特有であるということも推測される。
【0034】
したがって、好ましい実施態様では、本発明の繊維は、13C NMRスペクトルでのピーク高さの中点における線幅(Δυ1/2)の値(単斜晶系の結晶構造を有する配向部分に対応する)が、少なくとも60Hz、より好ましくは少なくとも70Hz、もっとも好ましくは少なくとも80Hzである。本発明はまた、上に定めた13C NMRスペクトルでのピーク高さの中点における線幅(Δυ1/2)の値を有するゲル紡糸UHMWPE繊維に関する。
【0035】
好ましくは、本発明の繊維のモジュラスは、少なくとも50GPa、より好ましくは少なくとも100GPa、さらにより好ましくは少なくとも150GPa、もっとも好ましくは少なくとも180GPaである。
【0036】
好ましくは、本発明の繊維の強さは、少なくとも1.2GPa、より好ましくは少なくとも2GPa、さらにより好ましくは少なくとも3GPa、さらにずっとより好ましくは少なくとも4GPa、さらにずっとより好ましくは少なくとも5GPa、もっとも好ましくは少なくとも5.5GPaである。
【0037】
本発明のゲル紡糸UHMWPE繊維は、例えば、複合材、ロープおよび網のような様々な用途において優れた性能を示すことが分かった。
【0038】
したがって、本発明はまた、本発明の新規かつ独創的なゲル紡糸UHMWPEマルチフィラメント糸を含む物品に関する。本発明の糸を含むロープおよび網は、性質が向上し、比較的容易に本発明の糸から製造されることが見出された。それゆえに、本発明は特に、本発明の糸を含むロープおよび網に関する。
【0039】
本発明はまた、本発明の糸を含む医療器具に関する。好ましい実施態様では、医療器具はケーブルまたは縫合糸である。
【0040】
本発明の糸を含む複合物品はまた、性質が向上する。それゆえに、本発明は特に、本発明の実施態様に従った糸を含む複合物品に関する。好ましくは、複合物品は本発明の糸の網製品を含む。網製品とは、前記糸のモノフィラメントが様々なタイプの構成に配列されていることを意味し、例えば、編まれるかまたは織られた布帛、糸がランダムに配向するか秩序よく配向された不織布、平行配列配置(一方向UD配置としても知られ、様々な従来の手法のいずれかによって重ねるか布帛に形成される)がある。好ましくは、前記物品は前記糸の少なくとも1種の網製品を含む。より好ましくは、前記物品は本発明の糸の複数の網製品(好ましくはUD網製品)を含み、好ましくは1つの層における糸の方向が隣接層における糸の方向に対してある角度をなしている。本発明の糸のそのような網製品は、抗切断(cut resistant)衣料品(例えば、手袋)に含めることができ、また耐衝撃製品(例えば、防弾のチョッキおよびヘルメット)に含めることもできる。それゆえに、本発明はまた、本発明の糸を含む上述の物品に関する。
【0041】
図について以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の繊維を特徴付けるために用いられた信号の時系列が描かれている。
【0043】
本発明を以下の実施例および比較実験によってさらに説明するが、それらに限定されることはない。
【0044】
[試験方法]
・IV: 固有粘度は、PTC−179の方法(Hercules Inc.Rev.Apr.29,1982)に従って135℃においてデカリンで測定する。溶解時間は16時間であり、DBPCを酸化防止剤として2g/リットル(溶液)の量だけ用い、種々の濃度で測定された粘度を濃度ゼロに外挿する。
・側鎖: UHPE試料中の側鎖の数は、2mmの厚さの圧縮成形フィルムでFTIRによって求め、1375cm−1における吸収量を測り、NMRの測定値に基づく検量線を使用する(例えば、欧州特許第0269151号明細書に記載されているようにする)。
・溶剤除去速度: 溶剤除去速度は、溶剤除去の前後に溶剤の量を求め、その重量変化を溶剤除去時間で割ることによって測定する。試料中の溶剤の量は、真空下で24時間乾燥させる前と後に得られる試料を計量して求める。真空乾燥で必要とされる温度は、使用する溶剤によって異なり、好適な温度は標準的な実験によって求めることができる。デカリンの場合、50℃における真空下での乾燥が適していることが見出された。それゆえに、そうした条件下で乾燥を実施した。
・引張特性: 引張り強さ(または強さ)は、ASTM D885Mで規定されているように定義し、マルチフィラメント糸で測定する。繊維の公称標点距離(nominal gauge length)は500mm、クロスヘッド速度は50%/分、Instron 2714クランプ(Fibre Grip D5618Cタイプのもの)で行う。モジュラスは、測定された応力−歪曲線に基づいて、0.3から1%の歪の間の傾きとして求める。モジュラスおよび強さの計算では、測定した引張力を、10メートルの繊維を計量して測定される繊度(titre)で割り、値(GPa単位)は密度が0.97g/cmであると仮定して計算する。
・境界領域部分の量: 13C固体状態核磁気共鳴分光法によって以下のように測定した:
【0045】
UHMWPE繊維は、メスを用いて1.5cmの長さの断片に切断し、直径4mmのジルコニア(ZrO)ローター内に入れて、繊維がローター軸と一直線に並ぶようにした。ローターを、マジック角回転(MAS)二重共鳴Bruker NMR検出ヘッドに入れ、そのようにして、均一永久磁場Bに対して角度θが54.7°(いわゆるマジック角)になるようにした。
【0046】
13C共鳴周波数125.8403936MHz、H共鳴周波数500.4430971MHzで、Bruker DSX 500分光計(80=11.75T)を用いて、13C固体状態NMR実験を実施した。周囲温度(T=295K)において、5kHzという中程度のマジック角試料回転(MAS)で測定を行った。これにより、不均一な幅の広がりのないスペクトルを記録することができる。
【0047】
13C NMRスペクトルの記録に使用したパルス系列(100)対時間を図に示す。プロトンの磁化を高速で行えるように、Hチャネル(101)と13Cチャネル(102)の交差分極パルス系列方式を使用した。13C高分解能スペクトルが得られるように、プロトンデカップリングを行いながら13Cの時間依存性信号(以下、13C NMRスペクトルと呼ぶ)を記録する。そのような技法は、例えば、米国特許第3,792,346号明細書;D.E.Demco,J.Tegenfeldt,J.S.Waugh,Phys.Rev.Bll,4133(1975);S.R.Hartmann,E.L.Hahn,Phys.Rev.128,2042(1962);およびR.S.Thakur,N.D.Kurur,P.K.Madhu,Chem.Phys.426,459−463(2006)(およびそれらの中の文献)(これらを本明細書に援用する)に詳述されている。
【0048】
5sの分極時間(すなわち、繰返し時間)の後、7dBの電力減衰量(power attenuation)で8.4μsの長さの90°無線周波数パルス(103)をHチャネルに加え、その後、Hチャネルと13Cチャネルの両方に対してそれぞれ7dBおよび12dBの電力減衰量で接触パルス(contact pulse)(104)を1.5msの時間だけ加えた。接触パルスの最後に、13Cの自由誘導減衰(106)である13C NMRスペクトルを、広帯域パルス系列(105)TPPM20(後続の180°パルス間の位相差を20°とした、2パルス位相変調)を用いて、高出力デカップリングを行いながら検出する。180°デカップリングパルスの場合にHチャネルで用いた電力減衰量は4dBであり、パルス長は14μsである。8192点の時間領域および連続した2点間のドウェル時間10μsを、記録信号のデジタルサンプリングに使用して、合計取得時間が81.92msとなった(すなわち、13C NMRスペクトルの記録に必要とされた時間)。分光計のデッドタイムは、5.5μsのオーダーである。
【0049】
調査するUHMWPE繊維の13C NMRスペクトルを記録する前に、テトラメチルシラン(TMS)液体試料のスペクトルを上に詳述したようにして記録し、TMSの13Cの信号で分光計を較正した(すなわち、TMSの13Cスペクトルのピークを0ppmと定めた)。
【0050】
調査対象のすべてのUHMWPE繊維の13C NMRスペクトルを取得した後、それぞれに対して高速フーリエ変換を行った。このようにして得られた変換スペクトルは、分光計ソフトウェアXWINMR(Bruker Company)を用いて位相補正およびベースライン補正を行った。
【0051】
13C NMRスペクトルは、結晶部分(斜方晶、32.7ppm付近)、単斜晶部分(34.1ppm付近)、中間部分(33ppm付近)、非晶質部分(31〜32ppm付近)に対応する4成分に分解された(図3)。
【0052】
D.Massiot et al.,Magn.Reson.Chem.40,70−76(2002)(本明細書に援用する)から自由に入手可能な分解プログラムDmFitを、記録されたスペクトルの数値デコンボリューション(numerical deconvolution)(4つの成分を使用)に用いた。13Cの線はすべてLorentzian形状を有すると見なされた。分解後に、プログラムは、デコンボリューションされたNMRピークの部分含有率(%)、高さの中点における線幅(Hz)、および位置(ppm)を示す。
【0053】
[実施例および比較実験]
[実施例1]
デカリン中にUHMWPEホモポリマーを9質量%含むスラリーを作った。前記UHMWPEは、135℃においてデカリン溶液で測定した場合にIVが20dl/gであった。UHMWPEは、1000個の炭素原子当たり基が0.3個未満であった。UHMWPEスラリーを、歯車ポンプを装備した180℃に温度設定された25mm二軸スクリュー押出機によって均一溶液に変え、その後、64個の紡糸孔を有する紡糸プレートに通し、(デカリンおよび水蒸気も含んでいる)空気雰囲気中に、1個の孔当たり約1.5g/分の速度で押し出した。紡糸孔の密度は、1cm当たり5個(孔)であった。紡糸孔は紡糸プレートの全域を覆っており、円形断面を有していた。また紡糸孔は、0.17cmの長さにわたって初期直径3mmから1mmへと徐々に減少しており、その後に、長さLと直径Dとの比がL/D=10である一定直径の部分が続いている。紡糸孔のこの特定の幾何学的形状により延伸比が9となる。
【0054】
紡糸口金から流体繊維は長さ25mmの流体延伸ゾーン(fluid stretching zone)に入り、それから水槽に入った。その水槽では、流体延伸ゾーンにおいて流体繊維の延伸比が20になるような速度で流体繊維を巻き取った。
【0055】
流体繊維を水槽中で冷却して、ゲル繊維を生じさせた。水槽は約40℃に保持した。ここで、槽に入る繊維に対して垂直に約50リットル/時の流速で水流を供給した。
【0056】
ゲル繊維の延伸比が4となるような速度で、水槽からゲル繊維を90℃の温度のオーブン中に巻き取り、その際にゲル繊維からデカリンを蒸発させて固体繊維を生じさせた。固体繊維中の残留デカリンの量は12質量%であった。オーブンは、繊維に対して垂直にNを噴射するノズルを備えており、その噴射の速度は100cm/秒であった。蒸発速度は0.01kg(デカリン)/kg(UHMWPE)秒であった。
【0057】
その後、固体繊維は、90℃(オーブンの入口)から130℃(出口)に至る温度勾配を有するオーブンに入れた。固体繊維は、約4の延伸比で、オーブン中で延伸した。
【0058】
得られた繊維の特性を表1に示す。
【0059】
[実施例2]
実施例1の実験を繰り返したが、蒸発速度が0.05kg(デカリン)/kg(UHMWPE)秒だったという点が異なっていた。
【0060】
[実施例3]
実施例1の実験を繰り返したが、蒸発速度が0.1kg(デカリン)/kg(UHMWPE)秒であり、紡糸孔の密度が1cm当たり2個(孔)であったという点で異なっていた。
【0061】
[実施例4]
実施例1の実験を繰り返したが、蒸発速度が0.1kg(デカリン)/kg(UHMWPE)秒であり、固体繊維中の残留溶剤の量が3.5%であり、紡糸孔の密度が1cm当たり1個(孔)であったという点で異なっていた。
【0062】
[比較実験A]
実施例1の実験を繰り返したが、紡糸孔の密度が1cm当たり8個(孔)であったという点で異なっていた。
【0063】
上に示した実施例で達成され、かつ表1に要約されている結果から、本発明のUHMWPE繊維は、境界領域部分の量が減少しており、さらに前記繊維はその秩序部分における構造的欠陥の量が減少していることを、はっきり知ることができる。
【0064】
[実施例5]
実施例1の実験を繰り返したが、紡糸孔の密度が1cm当たり2個(孔)であったこと、またそれぞれの実験で、固体繊維の延伸比を3.0から破損発生前の達成可能な最大延伸比まで増大させたという点で異なっていた。結果を表2に示す。
【0065】
[実施例6]
実施例5の実験を繰り返したが、紡糸孔の円形断面が、初期直径2mmから0.8mmへと徐々に減少しているという点で異なっていた。
【0066】
[比較例B]
実施例1の実験を繰り返したが、紡糸孔の密度が1cm当たり8個(孔)であったこと、またそれぞれの実験で、固体繊維の延伸比を3.0から破損発生前の達成可能な最大延伸比まで増大させたという点で異なっていた。結果を表2に示す。
【0067】
[比較例C]
比較例Bの実験を繰り返したが、紡糸孔の円形断面が、初期直径2mmから0.8mmへと徐々に減少しているという点で異なっていた。
【0068】
表2から、紡糸孔の密度が小さくなると、延伸性(drawability)を大きくすることができることが分かる。また、その場合、大きな強さおよびモジュラスを有する繊維を得ることもできる。さらに、こうした特性により、加工の幅を広げることができると共に、糸が破損する傾向が少なくなっている。
【0069】
【表1】



【0070】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)UHMWPEと紡糸溶剤とを含むスラリーを押出機へ供給するステップと;
b)前記押出機中の前記スラリーを、前記紡糸溶剤中にUHMWPEを含む溶液に変えるステップと;
c)ステップb)の前記溶液を、複数個の紡糸孔を含む紡糸プレートに通すことによって、流体UHMWPE繊維を紡糸するステップと;
d)前記流体UHMWPE繊維を冷却してゲルUHMWPE繊維を形成するステップと;
e)少なくとも部分的に前記紡糸溶剤を前記ゲルUHMWPE繊維から除去するステップと;
f)前記紡糸溶剤を除去する前、その除去の間及び/またはその除去の後に、少なくとも1回の延伸ステップで前記UHMWPE繊維を延伸するステップと
を含む、UHMWPE繊維を製造するためのゲル紡糸法であって、
前記紡糸プレートが1cm当たり6個以下の紡糸孔を有することを特徴とする、UHMWPE繊維を製造するためのゲル紡糸法。
【請求項2】
前記紡糸プレートが、1cm当たり5個以下の紡糸孔、より好ましくは1cm当たり2個以下の紡糸孔、もっとも好ましくは1cm当たり1個以下の紡糸孔を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶剤除去ステップe)の後の残留紡糸溶剤の量が、ステップb)における前記UHMWPE溶液中の溶剤の初期量の15質量%以下である、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記紡糸溶剤が揮発性溶剤であり、ステップe)の前記溶剤除去工程が90から150℃の間の温度でオーブン中における蒸発によって実施される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップe)において、前記溶剤を前記ゲルUHMWPE繊維から少なくとも0.005kg(溶剤)/kg(UHMWPE)秒の速度で除去する、好ましくは前記溶剤を前記ゲルUHMWPE繊維から少なくとも0.01kg(溶剤)/kg(UHMWPE)秒の速度で除去する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記紡糸溶剤がデカリンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
13C核磁気共鳴(NMR)分光法で測定した場合に25%未満の量の中間部分を含む構成を有するゲル紡糸UHMWPE繊維であって、前記中間部分が、前記UHMWPE分子の配向部位と非配向部位との間の境界領域にあるUHMWPE分子の一つの部位または複数の部位からなっている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法で得られるゲル紡糸UHMWPE繊維。
【請求項8】
5%未満の量の中間部分を含む構成を有する、請求項7に記載の繊維。
【請求項9】
13C NMR分光法で測定した場合に少なくとも65%の量の前記配向部分をさらに含む構成を有し、前記配向部分がUHMWPE分子の1つの配向部位または複数の配向部位からなり、前記配向部分の少なくとも3%が単斜晶系の配向結晶構造を有する、請求項7または8のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項10】
前記繊維の前記構成が少なくとも85%の量の前記配向部分を含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項11】
単斜晶系の結晶構造を有する前記配向部分に対応する、13C NMRスペクトルでの前記ピークの高さの中点における線幅(Δυ1/2)の値が少なくとも60Hzである、請求項7〜10のいずれか一項に記載の繊維。

【図1】
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【公表番号】特表2012−509413(P2012−509413A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536873(P2011−536873)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065564
【国際公開番号】WO2010/057982
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】