説明

ゲル組成物及びその製造方法並びにスキンケア剤

【課題】 エッセンシャルオイルを単体で含み、安全で取り扱いやすくしたゲル組成物を提供する。
【解決手段】 エッセンシャルオイルを有効成分として含有する。エッセンシャルオイルをゲル中に分散させて希釈することができる。濃度の高いエッセンシャルオイルが局所的に直接皮膚に付着しにくくなる。分子の小さなエッセンシャルオイルを有効成分として、有効成分を必要とする肌部分に直接安全に摂取できるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッセンシャルオイル(精油)を含有するゲル組成物及びその製造方法、並びにこのゲル組成物を用いたスキンケア剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、芳香性のエッセンシャルオイルを揮発させてその香りにより鎮静効果などを得るアロマセラピーが注目されている。また、アロマセラピーを手軽に行うことができるアロマセラピー用具キットも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般に、エッセンシャルオイルは小瓶等の容器に入れて販売されており、その購入者は各種のエッセンシャルオイルを単独であるいは複数組み合わせ、これを油やアルコールなどで希釈してアロマセラピーに利用したり香水として用いたりしている。
【0004】
しかし、濃度の高いエッセンシャルオイル(原液)は毒性、刺激性、感作作用が強く、誤って直接皮膚に付着すると身体に炎症が発生することがあり、安全性が低いという問題があった。
【特許文献1】特開平10−225510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、エッセンシャルオイルを安全で取り扱いやすくしたゲル組成物及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
また、本発明は、安全性の高いスキンケア剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のゲル組成物は、エッセンシャルオイルを有効成分として含有するものである。
【0008】
本発明にあっては、フローラルウォーターを含有するのが好ましい。
【0009】
本発明のゲル組成物の製造方法は、エッセンシャルオイルとフローラルウォーターとの混合液にゲル化剤を配合することを特徴とするものである。
【0010】
本発明にあっては、植物を煮沸することによりエッセンシャルオイルとフローラルウォーターとの混合液を生成するのが好ましい。
【0011】
本発明のスキンケア剤は、上記ゲル組成物を用いて成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明にあっては、エッセンシャルオイルをゲル中に分散させて希釈することができ、濃度の高いエッセンシャルオイルが局所的に多量に直接皮膚に付着しにくくなって、安全性及び取り扱い性が向上するものである。また、分子の小さなエッセンシャルオイルを有効成分として、有効成分を必要とする肌部分に直接安全に摂取することができる。
【0013】
また、フローラルウォーターを含有することにより、エッセンシャルオイルの製造過程で生じるフローラルウォーターを廃棄せずに、有効に利用することができるものである。
【0014】
また、エッセンシャルオイルとフローラルウォーターとの混合液にゲル化剤を配合するので、エッセンシャルオイルの製造過程で生じる混合液をそのまま用いることができ、ゲル組成物を容易に製造することができるものである。
【0015】
また、植物を煮沸することによりエッセンシャルオイルとフローラルウォーターとの混合液を生成するので、蒸気を用いて混合液を生成する場合に比べて熱によるエッセンシャルオイルの分解を少なくすることができると共に、溶剤を用いて混合液を生成する場合に比べて不純物の含有を少なくすることとができ、品質の高いゲル組成物を製造することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0017】
本発明のゲル組成物は、芳香性のあるエッセンシャルオイル(精油)とゲル(ジェル)との混合物であって、エッセンシャルオイルを有効成分として含有するものである。ここで有効成分とは、消毒作用、抗炎症作用、殺真菌作用、肉芽形成作用、瘢痕形成作用、消臭作用、防虫/駆虫作用、血圧降下作用、血圧上昇作用、引赤作用、浄血/解毒作用、リンパ刺激作用、循環強壮、収斂作用、去痰作用、鎮痙作用、鎮痛作用、殺菌作用、駆風・健胃作用、胆汁分泌促進作用、強肝作用、食欲増進作用、通経作用、子宮強壮作用/整調作用、抗バクテリア作用、催乳作用、催淫作用、制淫作用、副腎刺激作用、解熱作用、発汗作用、刺激作用、神経強壮作用などを有する成分であって、本発明ではエッセンシャルオイルがこれらの作用を有するものである。
【0018】
エッセンシャルオイルとしては各種のものを使用することができ、例えば、タイム、セージ、ユーカリ、ティートリー、クローブ、レモン、ジャーマンカモミール、ローマンカモミール、ラベンダー、ヤロー、ミルラ、パチョリ、スイートマジョムラ、カモミール、ローズ、ネロリ、フランキンセンス、ゼラニウム、ベルガモット、ジュニパー、サイプレス、スパニッシュセージ、レモングラス、スパイク、ガーリック、シトロネラ、カンファー、アトラス、シダーウッドなどを例示することができるが、これらに限定されるものではなく、上記の各種作用を発揮するエッセンシャルオイルを用いることができる。
【0019】
本発明のゲル組成物はゲル基材にエッセンシャルオイルのみを単体で含むことができるが、フローラルウォーターを含有しているのも好ましい。フローラルウォーターとは蒸留法でエッセンシャルオイルを生成する過程で得られる水層部分(水相)であって、エッセンシャルオイル以外の植物由来の成分が含有されている水分である。従来、このフローラルウォーターはエッセンシャルオイルを摂取した後に廃棄されていたが、各種のビタミンやミネラルなどの有用成分を含有すると共にエッセンシャルオイルと同様の香りも有するものである。従って、本発明ではフローラルウォーターを廃棄することなく、有効に利用するものである。つまり、本発明のゲル組成物を肌(皮膚)に塗布することにより、水溶性のビタミン類と油溶性のビタミン類とを同時に肌に摂取可能となるのである。
【0020】
本発明のゲル組成物は、エッセンシャルオイルとフローラルウォーターとの混合液にゲル化剤を配合することによって製造することができる。エッセンシャルオイルとフローラルウォーターとの混合液は、植物の樹脂、樹皮、葉、花、実、根、茎などの部位を水(精製水)で煮沸することにより蒸気を生成し、この蒸気を冷却することによって生成することができる。この方法は直接蒸留法と呼ばれるものであって、植物が高温(100℃よりも高い温度)に曝されなくなって、エッセンシャルオイルとフローラルウォーターに含まれている成分が熱分解されにくくなり、各成分の性能が損なわれないようにすることができる。一方、エッセンシャルオイルとフローラルウォーターとの混合液を生成するにあたって、水蒸気蒸留法を用いることもできるが、この場合、植物が100℃以上の水蒸気に曝されるために、エッセンシャルオイルとフローラルウォーターに含まれている成分が熱分解されやすくなるために、好ましくない。また、搾取法ではフローラルウォーターを得ることができず、溶剤抽出法では水以外の有害な溶剤が含まれる恐れがあり、いずれの方法も好ましくない。
【0021】
ゲル化剤(増粘剤)としては、天然成分のものを使用することができ、例えば、カラギーナンを用いることができる。カラギーナンは紅藻類の海藻から抽出、生成して得られる天然高分子で、半エステル型の硫酸基をもち、ガラクトースを構成成分とする多糖類である。また、カラギーナンは、すぎのり科・みりん科・いばらのり科・おきつのり科などの海藻(キリンサイ属海藻)を原料として得られるものである。また、ゲル化剤としては、てんぐさ(オゴノリ属海藻)を原料とする寒天であってもよい。さらに、他の天然成分のゲル化剤としては、ガラクトマンナン類、セルロース類およびそれらの誘導体、キサンタンゴム類、アルギネート類(アルギン酸)、タマリンドウガム、ヒアルロン酸などを用いることができる。
【0022】
ガラクトマンナン類としては、例えば、グアールゴム(グァーガム)およびイナゴマメゴムなどを用いることができる。アルギネート類としては、例えば、アルギン酸ナトリウム(ポリマンヌロネートおよびグルロネート)などを用いることができる。セルロース類およびそれらの誘導体としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを用いることができる。キサンタンゴム類としては、例えば、キサンタンガム(エコーガム)、D−グルコース、D−マンノースおよびD−グルクロン酸モノマーからなるものを用いることができる。
【0023】
尚、その他のゲル化剤としては合成成分であるカルボキシビニルポリマー型の合成ゲル化剤、グリセリンポリメタクリレート類、ポリエーテルシリコーンワックス型の合成ゲル化剤なども使用可能であるが、上記の天然成分のゲル化剤を使用するのが好ましい。
【0024】
本発明のゲル組成物は、エッセンシャルオイルとフローラルウォーターとの混合液にゲル化剤を配合した後、攪拌することによって、混合液をゲル化・増粘して糊状に製造することができる。ここで、エッセンシャルオイルの含有量はゲル組成物全量に対して1〜30重量%、好ましくは2〜10重量%、さらに好ましくは2〜3重量%にすることができる。エッセンシャルオイルの含有量が1重量%よりも少ないと、エッセンシャルオイルを配合したことによる効果を充分に得ることができなくなる恐れがあり、エッセンシャルオイルの含有量が30重量%よりも多いと、エッセンシャルオイルの希釈を充分に行うことができず、安全性が低くなる恐れがある。エッセンシャルオイルの中でも比較的安全性の高いティートリー、ラベンダー、フランキンセンスは、ゲル組成物全量に対して30重量%の高濃度で配合しても湿疹などの問題が生じない。
【0025】
また、ゲル化剤の含有量はゲル組成物全量に対して0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%にすることができる。ゲル化剤の含有量が0.01重量%よりも少ないと、充分にゲル化することができず、取り扱い性が低下する恐れがあり、ゲル化剤の含有量が30重量%よりも多いと、固くなり過ぎて、取り扱い性が低くなる恐れがある。
【0026】
本発明のゲル組成物は、エッセンシャルオイルとゲル化剤以外の成分全部(残部40〜98.99重量%)をフローラルウォーターとすることができる。また、エッセンシャルオイルとフローラルウォーターとゲル化剤以外の成分として通常の化粧品に用いられている成分、例えば、保湿剤などを用いることができるが、できるだけ少量であることが好ましい。また、本発明のゲル組成物は、一種類のエッセンシャルオイルのみを含有してもよいし、複数種のエッセンシャルオイルを含有してもよい。また、フローラルウォーター及びゲル化剤についても一種類のみを単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0027】
本発明のゲル組成物は糊状であって、肌のシワやシミを低減したり、日焼け後の肌をケアしたりするためのスキンケア剤として用いることができる。このスキンケア剤は肌をパックするものであってもよいし、肌に塗布するものであってもよい。そして、本発明のゲル組成物を肌に付着させると、有効成分であるエッセンシャルオイルが皮膚、毛細血管、皮下組織に浸透して摂取され、エッセンシャルオイルによる上記効能が発揮されるものである。また、本発明のゲル組成物は水溶性のゲル化剤を用いているために、シワの溝にまで容易に入り込ませることができ、また、ピンポイントで集中的にエッセンシャルオイルをシワ、シミ、日焼け跡など部分に浸透させることができ、手当が必要な部分に対するエッセンシャルオイルの有効性を高めることができるものである。さらに、のり科の海藻を原料とするゲル化剤を用いることにより、その保湿作用で肌の活性化を図ることができ、肌の再生を補助することができるものであり、しかも、のり科の海藻を原料とするゲル化剤を用いると、ゲル化組成物の乾燥により肌をひっぱってシワを伸ばした状態で保持することも可能であり、これにより、洗顔するまでの間、乾燥したゲル化組成物で肌をひっぱってシワを伸ばした状態を肌に記憶させることができるものであり、さらに、このシワを伸ばした部分にゲル組成物が付着してピンポイントでエッセンシャルオイルを浸透させることができるものであり、このために、本発明のゲル組成物はシワ低減効果が高いものである。
【0028】
また、本発明のゲル組成物は香水として用いることができる。この場合、一種類のエッセンシャルオイルのみを配合したゲル組成物を複数種類用意し、各ゲル組成物を適量ずつ混合して好みの香りの香水を調製することができる。本発明の場合、エッセンシャルオイルを含有するゲル組成物を取り扱うので、多量のエッセンシャルオイルが肌の局所に直接付着しないようにして混合等の作業を行うことができ、エッセンシャルオイルを原液のまま混合等する場合に比べて、安全性及び取り扱い性が高くなるものである。そして、一種類のエッセンシャルオイルのみを配合したゲル組成物をそれぞれ小瓶等に詰め、その複数種類を一セットにした香水作製キットを形成することもできる。
【実施例】
【0029】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0030】
(実施例)
オレオゴム樹脂を水で煮沸することにより蒸気を生成し、この蒸気を冷却することによって、エッセンシャルオイルとしてのフランキンセンスとそのフローラルウォーターとからなる混合液を生成した。この混合液は3重量部のフランキンセンスと96重量部のフローラルウォーターとからなるものである。次に、上記混合液99重量部に対してゲル化剤であるカラギーナン(三菱レイヨン(株)製)を1重量部配合し、攪拌することによって、ゲル組成物を製造した。
【0031】
(比較例)
実施例においてエッセンシャルオイルを配合しなかった以外は実施例1と同様にしてゲル組成物を製造した。
【0032】
実施例及び比較例のゲル組成物を10人の被験者(25〜50歳の女性)に使用して、1ヶ月後のシワ、シミの改善効果をアンケートにより判定した。使用方法は、シミ・シワ部分に一日2回、朝晩洗顔直後に適量ずつ塗布した。結果を表1に示す。尚、表中の○は「改善」を、△は「やや改善」を、×は「変化なし」をそれぞれ意味する。
【0033】
【表1】

【0034】
表1の実施例と比較例を対比すると、実施例では多くの被験者がシワ、シミの改善効果が見られたのに対して、比較例では改善効果が見られた被験者が少なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッセンシャルオイルを有効成分として含有することを特徴とするゲル組成物。
【請求項2】
フローラルウォーターを含有することを特徴とする請求項1に記載のゲル組成物。
【請求項3】
エッセンシャルオイルとフローラルウォーターとの混合液にゲル化剤を配合することを特徴とするゲル組成物の製造方法。
【請求項4】
植物を煮沸することによりエッセンシャルオイルとフローラルウォーターとの混合液を生成することを特徴とする請求項3に記載のゲル組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のゲル組成物を含有して成ることを特徴とするスキンケア剤。

【公開番号】特開2006−282622(P2006−282622A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106654(P2005−106654)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(504303665)
【Fターム(参考)】