説明

ゲル組成物

【課題】 超音波発生器と皮膚の間に均一な膜を形成し、より効率よく超音波を皮膚に伝えることのできる超音波媒体用のゲル組成物を提供する。
【解決手段】 成分(A)〜成分(E)、すなわち成分(A)アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩と、成分(B)カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩と、成分(C)ヒドロキシアルキルセルロースと、成分(D)ポリアクリル酸及び/又はその塩と、成分(E)多価アルコールを含有するゲル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波発生器と皮膚の間に均一な膜を形成し、より効率よく超音波を皮膚に伝えることのできる超音波媒体用のゲル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は、その機器が簡素化されたのに従って種々の分野で広く応用されるようになってきている。例えば超音波エコー診断は非侵襲的診断方法であるため、妊婦の定期健診での胎児の観察、肝臓、胆嚢等の内蔵の健康診断などに使用されている。また、超音波を利用した美顔器は、超音波を肌に当てることで、マッサージ効果を生み出し、その刺激で新陳代謝を活発にするものである。超音波美顔器を使うと、一秒間に何百万回という振動数のマイクロウェーブが発せられ、細胞を振動させることで皮膚の奥から温めつつ、マッサージを行なう。それにより、毛穴の奥に詰まった汚れを取り出し、活発になった血流が肌にたまった老廃物を押し流す。また、脂肪の燃焼を助けつつ、シワ、シミを除去するといわれているので美顔、美肌に効果的であることが知られている。
【0003】
超音波は、空気中よりも水のほうが伝わりやすいことが知られている。そのため、凹凸の多い生体に超音波を照射する場合、超音波を効率的に伝えるために、ゲル状組成物を媒体として用いることが一般的である。このようなゲル状組成物としては、カルボキシビニルポリマーの塩と多価アルコールを組み合わせたゲル(特許文献1参照)、カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩とカタラーゼ保護剤を含有する超音波媒体用のゲル組成物(特許文献2)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−318898号公報
【特許文献2】特開2003−160472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カルボキシビニルポリマーを主体としたゲル組成物は、皮膚上でのなじみが悪く、均一なゲル層を超音波発生器と皮膚の間に形成することが困難であった。そこで本願発明においては、超音波発生器と皮膚の間に均一な膜を形成し、より効率よく超音波を皮膚に伝えることのできる超音波媒体用のゲル組成物を得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、成分(A)〜成分(E)、すなわち成分(A)アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩と、成分(B)カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩と、成分(C)ヒドロキシアルキルセルロースと、成分(D)ポリアクリル酸及び/又はその塩と、成分(E)多価アルコールを含有するゲル組成物に関する。本発明のゲル組成物は特に超音波媒体用のゲル組成物として有用である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のゲル組成物は、超音波発生器と皮膚の間に均一な膜を形成し、より効率よく超音波を皮膚に伝えることができるという効果を発揮する。また、本発明のゲル組成物は、使用時のべたつきが無く、肌なじみが良好で、適度な硬度を有し、透明度が良好であるという効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のゲル組成物は、成分(A)〜成分(E)、すなわち成分(A)アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩と、成分(B)カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩と、成分(C)ヒドロキシアルキルセルロースと、成分(D)ポリアクリル酸及び/又はその塩と、成分(E)多価アルコールを含有する。これらの成分に関し、個々に説明する。
【0009】
本発明で用いる成分(A)アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、アルキル変性カルボキシビニルポリマーとは、アクリル酸、メタクリル酸又はこれらの単純エステルからなるモノマー1種以上と、アクリル酸アルキルの共重合体である。INCI名:Acrylates/C10-30 Alkyl Acrylate Crosspolymer[(アクリル酸/アクリル酸(C 10-30)アルキル)クロスポリマー]等として知られるもので、市販のものを用いることができる。市販品としては、具体的には、「Carbopol ETD 2020 Polymer」、「Carbopol 1342 Polymer」、「Carbopol 1382 Polymer」、「Carbopol Ultrez 20 Polymer」、「Carbopol Ultrez 21 Polymer」、「Pemulen TR-1」、「Pemulen TR-2」(以上、いずれもNoveon社製)等が挙げられ、これらを好適に用いることができる。成分(A)成分は1種又は2種以上を用いることができる。
【0010】
成分(A)は、通常、塩基性物質で中和して用いられる。用いられる塩基性物質としては、例えば、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン類、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、アルギニンなどの塩基性アミノ酸などが例示される。また、塩基性物質の添加量は、(A)成分を中和するのに充分な量であり、これら成分の種類や使用量に応じて適宜配合すればよい。
【0011】
成分(A)の配合量は、本発明ゲル組成物中、0.005〜1.5質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜1.0質量%、特に好ましくは0.01〜0.3質量%である。0.005質量%未満では、ゲル組成物としての構造が構成できない場合がある。1.5質量%をこえて配合すると、ゲル構造が硬くなりすぎ、使用感上問題を生じる場合や、ゲルの透明度が低下する場合がある。
【0012】
本発明で用いる成分(B)カルボキシビニルポリマーは、主としてアクリル酸の重合体であり、具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボポール981(ルーブリゾール社製)、カーボポール980(ルーブリゾール社製)、カーボポール941(ルーブリゾール社製)、カーボポール940(ルーブリゾール社製)、カーボポールUltrez10(ルーブリゾール社製)、カーボポール2984(ルーブリゾール社製)、カーボポールETD2050(ルーブリゾール社製)等が挙げられ、これらを好適に用いることができる。成分(B)成分は1種又は2種以上を用いることができる。
【0013】
成分(B)は、通常、塩基性物質で中和して用いられる。用いられる塩基性物質としては、例えば、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン類、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、アルギニンなどの塩基性アミノ酸などが例示される。また、塩基性物質の添加量は、(B)成分を中和するのに充分な量であり、これら成分の種類や使用量に応じて適宜配合すればよい。
【0014】
成分(B)の配合量は、本発明ゲル組成物中、0.005〜1.5質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜1.0質量%、特に好ましくは0.01〜0.3質量%である。0.005質量%未満では、ゲル組成物としての構造が構成できない場合がある。1.5質量%をこえて配合すると、ゲル構造が硬くなりすぎ、使用感上問題を生じる場合がある。
【0015】
本発明で用いる成分(C)ヒドロキシアルキルセルロースは、好ましくは、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、又はヒドロキシプロピルセルロースなどの低級アルキル(C 1〜C 8)ヒドロキシアルキルセルロースであり、さらに好ましくはヒドロキシエチルセルロースである。
【0016】
成分(C)の配合量は、本発明ゲル組成物中、0.005〜1.0質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜0.5質量%、特に好ましくは0.01〜0.3質量%である。0.005質量%未満では、ゲル組成物としての構造が構成できない場合がある。1.5質量%をこえて配合すると、ゲル皮膜が硬くなりすぎ、使用感上問題を生じる場合がある。
【0017】
本発明で用いる成分(D)ポリアクリル酸及び/又はその塩は通常皮膚外用剤に用いられるものであれば何れのものも使用でき、特に限定されないが、例えばポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアクリル酸カリウム塩、ポリアクリル酸アンモニウム塩などがあり、中でも、化粧品原料基準第二版注解に記載のポリアクリル酸ナトリウムが製剤中での安定性の点でより好ましい。このような成分(D)の市販品としてはアロンビスAH(日本純薬社製)、アロンビスS(日本純薬社製)、アロンA−20P(東亜合成社製)、アクアリックL−YS、アクアリックL−HL(日本触媒社製)、ジュリマーAC−10NP、ジュリマーAC−10P、アロンビスS、アロンビスSS(日本純薬社製)等があげられる。
【0018】
成分(D)の配合量は、本発明ゲル組成物中、0.0005〜0.5質量%が好ましく、より好ましくは0.001〜0.1質量%である。0.0005質量%未満では、ゲル組成物としての構造が構成できない場合がある。0.1質量%をこえて配合すると、使用感上問題を生じる場合がある。
【0019】
本発明で用いる成分(E)多価アルコールとしては、通常外用剤に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタエリスリトール等が挙げられ、1種を単独で若しくは2種以上を併用して用いる。本発明においては、使用感の点からグリセリン、ジグリセリンから選択される1種又は2種を用いることが好ましい。
【0020】
成分(E)の配合量は、本発明ゲル組成物中、10.0〜90.0質量%が好ましく、より好ましくは10.0〜50.0質量%である。10.0質量%未満では、ジェルの密度が低くなり超音波の振動が伝えにくくなる可能性がある。
【0021】
本発明のゲル組成物には、上述の必須成分の他に、必要に応じて、通常、医薬品、医薬部外品、皮膚化粧料に配合される、油性成分、保湿剤、色素、乳化剤、可溶化剤、紫外線吸収剤、増粘剤、薬剤、香料、樹脂、防菌防黴剤、アルコール類等を適宜配合することができる。
【実施例】
【0022】
さらに実施例により、本発明の特徴について詳細に説明する。
【0023】
表1に示す処方にて、ゲル組成物を調製し、使用感の評価を行った。アルキル変性カルボキシビニルポリマーをカルボキシビニルポリマーに代替した比較例1は、ゲルの硬さが足りず、使用時にたれてしまう欠点があった。ヒドロキシエチルセルロース若しくはポリアクリル酸ナトリウムをカルボキシビニルポリマーに代替した比較例2、3は、肌なじみが良くない使用感であった。カルボキシビニルポリマーをアルキル変性カルボキシビニルポリマーに代替した比較例4は、使用時のべたつきが気になり、外観の透明度も失われてしまった。これら比較例に対し、本発明の実施例1においては、使用時にべたつきが無く、肌なじみが良好で、ゲルの硬さも適度であり、透明な外観を呈する、良好なゲル組成物であった。
【0024】
【表1】

【0025】
[粘弾性測定]
粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製AR−2000)を用い下記の条件で周波数分散測定を行った。
コーンプレート:20mm
角周波数:0.62〜62rad/s
【0026】
【表2】

【0027】
表2に示したとおり、本発明の実施例1は比較例1と比較して、貯蔵弾性率が向上し、超音波振動を効率よく伝えることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)〜成分(E)、すなわち成分(A)アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩と、成分(B)カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩と、成分(C)ヒドロキシアルキルセルロースと、成分(D)ポリアクリル酸及び/又はその塩と、成分(E)多価アルコールを含有するゲル組成物。

【公開番号】特開2011−213646(P2011−213646A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82692(P2010−82692)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【Fターム(参考)】