説明

ゲル製品の製造方法

【課題】 ゲル状組成物中に添加された粒状物が均一に分散され、美感やファッション性或いは高機能性を通じて商品価値が一層高められたゲル製品を効率的に量産できる製造方法を提供することである。
【解決手段】 下記の工程、(1)脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム及び水を含有する液状ゲル化組成物を攪拌しつつ80〜100℃に加熱してジェランガムの溶解を行う;(2)工程(1)で得られた液状ゲル化組成物に粒状物を添加し攪拌して均一に分散させ、次いで当該組成物中の粒状物が沈降しないで均一分散を保持できる粒状物固定化温度よりも低い冷却温度まで冷却する;(3)工程(2)で得られた液状ゲル化組成物を再加熱して流動性を高めて製品容器に充填する;および(4)工程(3)の製品容器に充填された液状ゲル化組成物をゲル化温度以下に冷却することによって固化させる;からなることを特徴とする、粒状物が均一に分散しているゲル製品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル状組成物中に粒状物が添加されたゲル製品の製造方法に関する。特に、美感に優れ、建物の屋内や自動車等の乗物の車内で使用される置き型のゲル芳香剤やゲル消臭剤等の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅のリビングルームやトイレ、自動車等の車内において、香りの拡散を目的とした芳香剤や悪臭や不快臭の除去を目的とした消臭剤(以下まとめて「芳香剤等」という)が使われている。芳香剤等の剤型は液体、固形、ゲル等に大別できる。こうした製品において、透明、二層、粒状物の分散など剤型の外観は美麗さを高めたり、目的の機能をイメージさせたりする上で極めて重要な商品の要素である。
近年では、芳香剤等も、基本の芳香消臭機能だけでなく、香りによるリラックス感やリフレッシュ感を目的とした製品が増加し、製品の外観の良さは、香りや消臭の心理的な効果を高める上で密接な関わりを有している。
【0003】
特に住居の室内や自動車の車内に設置して使用される芳香剤等は、香りの拡散だけが目的ではなく、室内や車内のインテリアとしての美感やファッション性、更に商品価値を高めるための高機能性が求められている。
芳香剤等にファッション性や高機能性を付与する例としては、ラメ等の装飾粒状物や活性炭等の機能性粒状物の添加が挙げられる。これら装飾性又は機能性粒状物(以下まとめて「粒状物」という)をメーカー製造時、およびユーザーの使用開始から使用終了まで芳香剤等の内部に均一に分散させておくことが美感上必要となり、そのため透明なゲル状組成物がかかる芳香剤等の基礎となる材料として選択される。
【0004】
ゲル状組成物の調製にはゲル化剤が用いられる。また、使用目的や用途に応じた物性を得るために、増粘剤や分散安定剤を併用することより様々なゲル状組成物を得ることができる。
なお、本明細書において、基材の液状のゲル化組成物が固化した状態をゲル状組成物、或いはゲル製品という。
また、本明細書において、ゲル化温度は脱アシル型ジェランガムをゲル化剤として用いたゲル化組成物が固化を始める温度を指す。脱アシル型ジェランガムの特性上、ゲル化温度でも速やかにすべてのゲル化組成物が固化するわけではなく、ゲル化温度近傍ではゲル化組成物は徐々に固化し、またゲル化温度よりも十分低い温度では固化が加速する。
【0005】
従来技術として、粒状物をゲル中に均一に分散させたゲル状組成物が提案されている(特許文献1及び特許文献2参照)。これらの提案は一般に30〜50℃でゲル化するジェランガム等のゲル化剤を用いたゲル化組成物において、ゲル化するよりも高い温度で当該組成物に粘度をもたせることにより、粒状物の沈殿を防止し均一分散状態を保持しようとするというものである。
しかしながら、粒状物が沈殿を起こさない温度では、ゲル化組成物の粘度が高くなるために、実際の製造時には充填に長時間を要し、当該組成物が通過する製造装置のチューブなどの製造ラインが目詰まりしたりして効率的な量産が妨げられるという問題点があった。
【0006】
このような状況のなかで、美感やファッション性向上の観点からゲル状組成物中に粒状物が安定した状態で均一に分散されている芳香剤等を効率的に量産することを可能にする技術の提供が当業界において強く要望されていた。
【特許文献1】特開2002−291859号公報
【特許文献2】特開2005−73926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記の従来技術における問題点を解決し、ゲル状組成物中に添加された粒状物が均一に分散され、美感やファッション性或いは高機能性を通じて商品価値が一層高められたゲル製品を効率的に量産することを可能にする製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討を行ったところ、公知のゲル化剤等の組み合わせでありながら、温度操作の点で特定の工程を有するゲル製品の製造方法が、上記問題点を解決することを見出し本発明の完成に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
〔I〕下記の工程、
(1)脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム及び水を含有する液状ゲル化組成物を攪拌しつつ80〜100℃に加熱してジェランガムの溶解を行う;
(2)工程(1)で得られた液状ゲル化組成物に粒状物を添加し攪拌して均一に分散させ、次いで当該組成物中の粒状物が沈降しないで均一分散を保持できる粒状物固定化温度よりも低い冷却温度まで冷却する;
(3)工程(2)で得られた液状ゲル化組成物を再加熱して流動性を高めて製品容器に充填する;および
(4)工程(3)の製品容器に充填された液状ゲル化組成物をゲル化温度以下に冷却することによって固化させる;
からなることを特徴とする、粒状物が均一に分散しているゲル製品の製造方法であり;
【0010】
〔II〕下記の工程、
(1)脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、水及び粒状物を含有する液状ゲル化組成物を攪拌しつつ80〜100℃に加熱してジェランガムの溶解と粒状物の均一な分散化を行う;
(2)工程(1)で得られた液状ゲル化組成物を、当該組成物中の粒状物が沈降しないで均一分散を保持できる粒状物固定化温度よりも低い冷却温度まで冷却する;
(3)工程(2)で得られた液状ゲル化組成物を再加熱して流動性を高めて製品容器に充填する;および
(4)工程(3)の製品容器に充填された液状ゲル化組成物をゲル化温度以下に冷却することによって固化させる;
からなることを特徴とする、粒状物が均一に分散しているゲル製品の製造方法、であり;
【0011】
〔III〕下記の工程、
(1)脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム及び水を含有する液状ゲル化組成物を攪拌しつつ80〜100℃に加熱してジェランガムの溶解を行う;
(2)工程(1)で得られた液状ゲル化組成物を、後記工程(3)で当該組成物に添加される粒状物が沈降しないで均一分散を保持できる粒状物固定化温度よりも低い冷却温度まで冷却する;
(3)工程(2)で得られた液状ゲル化組成物に粒状物を添加して均一に分散させてから再加熱して流動性を高めた後に、或いは液状ゲル化組成物を再加熱して流動性を高めてから粒状物を添加して均一に分散させた後に、製品容器に充填する;および
(4)工程(3)の製品容器に充填された液状ゲル化組成物をゲル化温度以下に冷却することによって固化させる;
からなることを特徴とする、粒状物が均一に分散しているゲル製品の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
ゲル化剤として脱アシル型ジェランガムを使用し、ゲル化助剤としてカルシウム塩等の金属塩を使用した場合(以下「脱アシル型ジェランガム組成物」という)は、固化したゲル状組成物に熱不可逆性を与えられることが一般に知られており、耐熱性を求められる自動車用ゲル芳香剤等の基材として当業界において広く利用されている。
この脱アシル型ジェランガム組成物に粒状物を均一に分散させた芳香剤等を製造しようとした場合、製造時加熱下で、一旦、ゲル化温度まで冷却および保持し、脱アシル型ジェランガム組成物を部分的に固化開始させることにより粒状物の沈殿を防ぎ(すなわち脱アシル型ジェランガム組成物において、粒状物固定化温度はゲル化温度に等しい)、再度加熱することにより、それ以上の固化を防止した状態で容器に充填することが求められる。この場合、高温域であっても熱不可逆性のために部分的に固化した当該組成物は液化することはなく、従って粒状物が沈殿することはない。
しかしながら、ゲル化温度まで冷却する必要があるために、製造時、充填前にゲル化組成物すべてが固化してしまうという事故が発生するリスクが高い。
【0013】
特許文献2の提案によれば、脱アシル型ジェランガム組成物にネイティブ型ジェランガムを添加した組成物(以降、「特許文献2組成物」と記す)は、粒状物固定化温度をゲル化温度よりも十分高い温度にすることができ、充填前に当該組成物すべてが固化してしまうという事故が発生するリスクを回避することが可能となる。
一方で、粒状物固定化温度近辺で製品容器に充填すると粘度が高く、流動性が低下し、製造効率が悪くなる。また、脱アシル型ジェランガム組成物の場合のように、粒状物固定化温度まで冷却し、それから再加熱した場合、高温域では粘度を低下させることができるが粒状物が固定されずに再び沈殿してしまう。
【0014】
本発明の製造方法によれば、特許文献2組成物であっても、粒状物固定化温度よりもさらに低い温度まで冷却し、そこから再加熱することにより、高温域であっても粒状物の沈降や沈殿を防ぐことができる。従って、ゲル化組成物に粒状物を均一に分散させたまま、十分な流動性を与えつつ、製品容器に充填することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
<I>原材料
本発明の製造方法によって得られるゲル製品のもととなる液状のゲル化組成物には以下の原材料が用いられる。
〔A〕ジェランガム
ゲル化剤として脱アシル型ジェランガムと、粒状物の分散安定剤としてネイティブ型ジェランガムとが含有される。
ジェランガムは微生物であるSphingomonas elodea(スフィンゴモナス・エロデア)が産出する発酵多糖類およびその誘導体の総称である。
現在、商業的に入手できるものとしてネイティブ型ジェランガムと脱アシル型ジェランガムの2種類が存在し、本発明ではそれらを併用する。
【0016】
ネイティブ型ジェランガムは、1−3結合したグルコース、1−4結合したグルクロン酸、1−4結合したグルコース及び1−4結合したラムノースの4分子を構成単位とする直鎖状の高分子多糖類の、1−3結合したグルコースに1構成単位当たりグリセリル基1残基とアセチル基が平均1/2残基結合したものであり、その1構成単位当たりカルボキシル基1残基を有するものである。
ネイティブ型ジェランガムの商業的に入手可能な製品として、CPケルコ社製の「ケルコゲル(登録商標)LT−100」、「ケルコゲル(登録商標)HM」及び「ケルコゲル(登録商標)HT」などを挙げることができ、このうち「ケルコゲル(登録商標)HT」が透明性の点から好ましい。
【0017】
また、ジェランガムのうち脱アシル型ジェランガムは、ネイティブ型ジェランガムの1−3結合したグルコースに存在するアセチル基とグリセリル基を除去した以外はネイティブ型ジェランガムと同様である。
商業的に入手可能な製品として、CPケルコ社製の「ケルコゲル(登録商標)」が挙げられる。
【0018】
ここで、脱アシル型ジェランガムの使用量としては特に制限はないが、工程(4)の固化前のゲル化組成物の合計質量のうち0.05〜5質量%、好ましくは、0.1〜3質量%、特に好ましくは0.2〜2質量%である。少なすぎると安定性が悪くなり、多すぎると残渣が増えて製品の見栄えが悪いという問題点がある。
【0019】
また、ネイティブ型ジェランガムの使用量としても特に制限はないが、工程(4)の固化前のゲル化組成物の合計質量のうち0.001〜1質量%、好ましくは、0.005〜0.5質量%、特に好ましくは0.01〜0.3質量%である。少なすぎると粒状物の分散安定性が悪くなり、多すぎると残渣が増えて製品の見栄えが悪くなったり、製造時加熱下のゲル化組成物の粘度が増大したりして充填効率が悪化するという問題点がある。
【0020】
なお、本発明においては、本発明の効果を妨げない範囲で、上記の必須のジェランガムの他に、他の種類のゲル化剤、増粘剤または分散安定剤を配合することができる。
具体的には、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、グアガム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウムなどの天然高分子やカルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコールなどの合成高分子などが挙げられる。
【0021】
〔B〕水
上記脱アシル型ジェランガムとネイティブ型ジェランガムと共にゲルを生成させるため、ゲル化組成物には必須成分として水が含有される。水の種類はとくに制限はないが、ゲル状組成物の物性、香料及び着色した場合はそれらに対して悪影響がないよう蒸留水やイオン交換水などの純水が望ましい。水の含有量は、それ以外の各成分の含有量に応じて残量だけ用いられるが、好ましくは工程(4)の固化前のゲル化組成物合計質量のうち50〜99質量%の範囲で用いられる。
【0022】
〔C〕粒状物
ゲル化組成物に含有される粒状物は、装飾性を付与したり、機能性を付与したりして商品価値を高めるために用いられる。
粒状物は、ゲル化組成物を構成する他成分と混ざり合わない性質のものであれば特に制限されず、固体やゲル、液体などの形態をとることができる。
装飾性を付与する粒状物として、例えば、ラメ、光輝性顔料、色彩を施したマイクロカプセル若しくはゼラチンカプセル、粉砕した野菜や果物、香辛料、胡麻等の種子、パルプ、ファイバー、金属片、プラスチック成型物、フィルム等が挙げられる。好ましくはラメや光輝性顔料である。
ラメは例えば、金属箔や樹脂フィルム等の表面に金属蒸着等によって形成された薄膜金属表面を、必要に応じて着色顔料が配合されている、耐熱性、耐光性及び耐薬品性を有するコーティング材料で被覆したものが挙げられる。光輝性顔料は例えば、ガラス粉体を二酸化チタンの薄膜で被覆したものが挙げられる。
【0023】
粒状物が付与する機能性としては、例えば、脱臭性、防虫性、殺虫性、防黴性、消臭性、芳香性などが挙げられる。
脱臭性を付与する粒状物として、例えば、活性炭、備長炭等の炭、ゼオライト、セピオライト、銀担持ゼオライト等のアルミノケイ酸塩、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物、シリカゲル、活性アルミナ、活性白土等が挙げられる。
その他の機能性を付与する粒状物として、例えば、昆虫等忌避成分、殺虫成分、防黴成分、消臭成分、香料そのものや、それらを多孔質等に担持させたものなど、医薬品分野、医薬部外品分野、香粧品分野、食品分野などにおいて通常使用されるものから任意に選択できる。
なお、これらの1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
ここで、粒状物の形状、粒径、比重等は、本発明の効果を妨げなければ、特に制限されるものではなく、形状としては、粉末状、顆粒状、球状、楕円状、破砕状、角状、多角形状、破片状又は液滴状のいずれであってもよい。この粒状物の粒径は、平均粒径0.1μm〜5cmの範囲を挙げることができる。好ましくは0.5μm〜5mmの範囲、より好ましくは1μm〜3mmの範囲である。
【0025】
さらに、粒状物の比重は、0.01〜10g/cm3の範囲を挙げることができる。好ましくは0.1〜5g/cm3の範囲であり、より好ましくは0.5〜4g/cm3である。さらに、工程(4)の固化前のゲル化組成物全体に対する粒状物の含有量は、配合した目的を達成する量であればよく、特に制限されない。
【0026】
〔D〕付加的成分
ゲル化組成物には以上の基本的な成分の他、以下の付加的成分を添加することができる。
(1)香料
ゲル化組成物に添加する香料は、リモネンなどのモノテルペン系炭化水素、アビエチンなどのジテルペン炭化水素、パラサイメンなどの芳香族炭化水素、リナロールなどのテルペン系アルコール、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、シトラールなどのテルペン系アルデヒド、メントンなどのテルペン系ケトン、p−メチルアセトフェノンなどの芳香族ケトン、ジフェニルエーテルなどのフェノール誘導体、デカナールなどの脂肪族アルデヒド、ベンズアルデヒドなどの芳香族アルデヒド、シトラールジメチルアセタールなどのアセタール類、イソアミルアセテート、ギ酸ゲラニル、安息香酸メチルなどの脂肪族、芳香族酸カルボン酸エステル、α、β、γ−イオノンなどの脂環式ケトン、ムスコンなどの大環状ケトン、ローズオキサイドなどの環状エーテル、インドールなどの複素環式化合物、γ−へプチルブチロラクトンなどのラクトン類、レモン油、オレンジ油、ライム油、ユーカリ油、ヒノキ油、ヒバ油、パイン油、ベルガモット油、ペパーミント油、テレピン油、ホー油、ラベンダー油、ジャスミン油、バニラなどの精油などが任意に用いられるが、上記に限定されるものではない。
【0027】
香料の素材の選択は必要とする香りの種類や質、用途などで適宜選択されるもので、1種単独で使用することもでき、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
香料の添加量は、必要に応じて適宜選定されるが、工程(4)の固化前のゲル化組成物全体の0.1〜15質量% 、好ましくは1.0〜10量% である。0.1質量%未満では、香料の揮発が十分に行われず、満足する香りの強さを得ることができない。また、15質量%を超えるとゲル安定性の低下の原因となるので好ましくない。
【0028】
(2)界面活性剤
ゲル化組成物に添加する香料やその他の油溶性の成分は、界面活性剤を用いて可溶化させて含有させることができる。
界面活性剤の種類としては特に制限はないが、ポリオキシエチレン(POE)ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテル、ポリオキシエチレン(POE)アルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(POE)硬化ヒマシ油などに代表される可溶化、乳化、分散の目的で使用される非イオン性界面活性剤が好ましく、1種単独で使用することもでき、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
また、非イオン性界面活性剤の他に、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を併用してもよい。
【0029】
(3)ゲル化助剤
ゲル化組成物には、必要に応じて、ゲル化助剤としてカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、アルミニウム等の金属イオン;コハク酸、無水コハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、フタル酸、アスパラギン酸等の有機酸若しくはそれらの塩;塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸若しくはそれらの塩等を含有させることができる。
【0030】
具体的には、乳酸カルシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。
これらのゲル化助剤の種類やその含有量は、所望の強度やゲル化温度に応じて適宜選択することができ、使用するゲル化助剤の種類によっても異なるが、通常、工程(4)の固化前のゲル化組成物全体に対して0〜3質量%の範囲で使用される。
【0031】
(4)溶剤
ゲル化組成物には、さらに必要に応じて揮発性成分の保留目的、揮発性成分の可溶化助剤目的、及びゲル化剤、増粘剤などの一次分散剤などのために溶剤を含有させることができる。
具体的には、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のグリコールエーテル類等の水溶性溶剤が挙げられる。
【0032】
(5)その他の成分
さらに、ゲル製品には、その付加価値を高める成分として消臭剤、防虫剤、殺虫剤、忌避剤、誘引剤、フェロモン、殺菌剤、抗菌剤、防黴剤、染料、着色顔料以外の体質顔料やアルミニウム防錆顔料などや、ゲル製品自身の安定性を高める成分として防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、キレート剤などを含有させることができる。これらは、医薬品分野、医薬部外品分野、香粧品分野、食品分野などにおいて通常使用されるものを任意に用いることができる。
【0033】
<II>ゲル製品の製造方法
本発明のゲル製品の製造方法においては液状のゲル化組成物を固化させる前の温度操作が重要である。
すなわち、脱アシル型ジェランガムとネイティブ型ジェランガムと粒状物と水を原材料とするゲル製品の製造工程において、脱アシル型ジェランガムとネイティブ型ジェランガムを80〜100℃で水中に加熱溶解せしめた後、液状のゲル化組成物中の粒状物が沈降せずに均一分散状態が保持される温度すなわち粒状物固定化温度(TP)よりも低い冷却温度(T)まで冷却し、その後再加熱して流動性を高めてから効率的に製品容器に充填する方法である。
すなわち、T < TP < 再加熱温度 である。
【0034】
製品製造前の段階で、ゲル化組成物の粒状物固定化温度(TP)とゲル化温度(TG)が既知であり、冷却温度(T)が設定されていることが好ましい。
ここで冷却温度(T)は、当該組成物を再加熱しても粒状物の分散状態が崩壊して沈降しなくなる温度域から選択されればよく、特に制限されないが、ゲル化温度(TG)を下回るとゲル化組成物が固化を始めるので、好ましくはゲル化温度(TG)以上、特に好ましくは35℃以上である。
冷却温度(T)がゲル化温度(TG)に近いと、製造時、製品容器に充填する前にゲル化組成物の全部又は一部が固化してしまうという事故が発生するリスクが高まる。ゲル化組成物が熱不可逆性を持つ場合は、再度加熱しても溶けず、製品容器へ充填することが不可能となる。
また、冷却温度(T)の上限は、好ましくは粒状物固定化温度(TP)よりも1℃以上低い温度(T≦TP−1)、より好ましくは3℃以上低い温度(T≦TP−3)である。ここで冷却温度(T)が粒状物固定化温度(TP)に近いと、粒状物の均一な分散状態が保持されず再加熱時に粒状物が沈殿してしまう場合がある。
以上からして以下の関係が成り立つ。
好ましくはTG≦T≦TP−1、特に好ましくは35≦T≦TP−3である。
【0035】
本発明のゲル製品の製造方法は、上記温度操作を行う点から以下の4工程から構成される。
工程(1)では、釜などの製造設備で、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム及び水を含有する液状ゲル化組成物を攪拌しつつ80〜100℃、好ましくは90〜99℃に加熱してジェランガムの溶解を行う。
【0036】
工程(2)では、工程(1)で得られた液状ゲル化組成物に粒状物、その他の水性添加物及びその他の油性添加物を添加し攪拌して均一に分散させ、次いで当該組成物中の粒状物が沈降しないで均一分散を保持できる温度である粒状物固定化温度(TP)になった時点で、液状ゲル化組成物を透明容器等でくみ出し、粒状物が沈殿していないことを確認する。その後、粒状物固定化温度(TP)よりも低い冷却温度(T)まで冷却する。この冷却温度(T)を保持して攪拌し釜中を均一な温度に保持する。
工程(3)では、工程(2)で得られた液状ゲル化組成物を、充填するのに十分な流動性が得られる温度まで、好ましくは38〜89℃に、再加熱して十分な流動性を高めて製品容器に充填する。
工程(4)では、工程(3)の製品容器に充填された液状ゲル化組成物をゲル化温度(TG)以下に自然冷却することによって固化させる工程である。
【0037】
ここで、粒状物の液状ゲル化組成物への添加時期は必ずしも工程(2)である必要はなく、工程(1)の加熱溶解時、工程(3)の再加熱の前後、或いは工程(4)の固化前の任意の時点で添加が可能であり、また1回に全ての粒状物を添加せずいずれかの工程で少量ずつ複数回添加しても良い。
また、ゲル製品が芳香剤等である場合には香料の添加が必須となるが、その添加時期は工程(1)、(2)又は(3)のいずれか任意の時点で1回又は複数回に分けて添加することができる。好ましくは液状ゲル状組成物の温度が80℃以下の時点である。
さらに、その他の水性添加物及びその他の油性添加物の添加時期も、工程(1)、(2)又は(3)のいずれか任意の時点で1回又は複数回に分けて添加することができる。
【0038】
工程(4)でゲル化組成物が充填される製品容器の材質として、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ステンレス、アルミ、陶器などが挙げられるが、容器外側から充填されたゲル状組成物が見え、耐衝撃性、耐薬品性が高いガラス、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
容器の形状として、静置したときに容易に転倒しない形状であれば何ら制限はない。
【実施例】
【0039】
以下、実施例等を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。
なお、下記の処方において%とは、特に指定しない限り、質量%を意味するものとする。
【0040】
実施例1〜5及び比較例1〜11
表1の処方A〜Fの処方に基づき、200gの液状ゲル化組成物200mlをビーカーに調製した。
具体的には、プロピレングリコール中に分散させたネイティブ型ジェランガム及び/又は脱アシル型ジェランガムにイオン交換水を加えた後、90℃以上に加熱してネイティブ型ジェランガム及び脱アシル型ジェランガムを溶解し、70℃に冷却した後に、1%乳酸カルシウム水溶液、POE硬化ヒマシ油、POEアルキルエーテル、アルコール系溶剤、香料、防腐剤、紫外線吸収剤及び粒状物を加え、撹拌しながら各成分が均一になるように分散させた。これを自然冷却しながら撹拌し続け、粒状物固定化温度(TP)を測定した。
それぞれの処方の粒状物固定化温度(TP)を表1に記す。
【0041】
【表1】

【0042】
次に、表2に記載した実施例1〜5及び表3に記載した比較例1〜11の冷却温度(T)及び充填温度に基づき、ゲル化組成物の温度を冷却温度(T)まで冷却し、その後、製品容器への充填温度まで再加熱した。
それぞれの実施例または比較例の冷却温度(T)および充填温度を表2および表3に記す。
なお、粒状物固定化温度(TP)と冷却温度(T)とが同一の数値の場合は、粒状物固定後に冷却を行っていないことを意味する。
また、冷却温度(T)と充填温度が同一の数値の場合は、再加熱を行っていないことを意味する。
【0043】
次に、充填温度で撹拌して粒状物を分散させながら、70mlの円筒状広口ガラス瓶に50g充填した。自然冷却後、完全に固化した後、粒状物の分散状態を評価した。それぞれの実施例または比較例の粒状物の分散状態を表2および表3に記す。
【0044】
また、充填温度で撹拌して粒状物を分散させながら、ガラス漏斗をゲル化組成物100gで満たし、ガラス漏斗からゲル化組成物が完全に抜けて、下部へ落ちるまでの時間を測定し、ゲル化組成物の充填効率を評価した。それぞれの実施例または比較例の充填効率を表2および表3に記す。
【0045】
(1)粒状物固定化温度(TP
粒状物固定化温度(TP)は、撹拌を静止し、なおかつゲル化組成物の流動が無くなった状態で、粒状物がビーカーの目盛線を基準として、5秒以上同じ高さに留まり続ける温度とした。
【0046】
(2)粒状物の分散状態
ガラス瓶に充填後、固化したゲル状組成物における粒状物の分散状態を下記の基準で評価した。
○:粒状物のほとんどが均一に分散していた。
△:粒状物の約半分が沈降、約半分が均一に分散していた。
×:粒状物のほとんどが沈降していた。
【0047】
(3)ゲル化組成物の充填効率
ネイティブ型ジェランガムを含まない処方Fの液状ゲル化組成物を前述の方法で調製し、40℃以下に温度が下がらないように保持した。これをガラス漏斗に100g満たし、ガラス漏斗から当該組成物が3.2秒で速やかに完全に抜けることを確認した。なお、同じ条件で水が抜ける時間は2.8秒であった。
それぞれの実施例または比較例のゲル化組成物がガラス漏斗から抜ける時間を比較し、3.2秒に対して何%であったかを求め、以下の基準でゲル化組成物の充填効率を評価した。
◎:100%以下
○:100%〜200%
△:200%以上
×:途中で部分的に固化し、全量がガラス漏斗から抜けなかった
【0048】
(4)総合判定
粒状物の分散状態およびゲル化組成物の充填効率の評価結果から以下の基準で総合判定を行った。
○:両方の結果が○以上の判定
△:△の判定が1個ある
×:×の判定が1個以上ある、または両方の結果が△の判定
【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
表2および表3に示す結果から明らかなように、本発明のゲル製品の製造方法である、脱アシル型ジェランガムとネイティブ型ジェランガムと粒状物と水を含有するゲル状組成物の製造工程において、脱アシル型ジェランガムとネイティブ型ジェランガムを水中に加熱溶解せしめたゲル化組成物中に粒状物が沈降せずに均一に分散される温度よりも低い冷却温度まで冷却し、その後再加熱して流動性を持たせて充填する方法で得られたゲル製品は、粒状物の分散状態および充填効率に優れる。
【0052】
冷却及び再加熱を行わない製造方法により作成したものは充填効率がよくても、ゲル化組成物が固化する前に粒状物が沈殿してしまったものがあった。
また、粒状物が沈殿しなくても、充填時に細いチューブを通過する際に時間がかかったり、目詰まりしたりして、充填効率が著しく悪いため製品の量産には不向きであった。
なお、比較例6は段落[0012]で前述した脱アシル型ジェランガム組成物において、粒状物を均一に分散させたゲル製品の公知の製造方法によるものである。総合判定は○であったが、量産時には製品容器に充填する前にゲル化組成物すべてが固化してしまうという事故が発生するリスクがある。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の製造方法によれば、ゲル状組成物中に装飾性や機能性を付与する粒状物を安定に分散させて美感やファッション性を通じて商品価値を一層高めたゲル製品、特に芳香剤等を、大規模な量産に適した方法で、効率よく製造し提供することができる。これにより、芳香や消臭のみならず外観の美麗をも要求される芳香剤等の市場において、これまでにない美感を有する付加価値の高い芳香剤や消臭剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程、
(1)脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム及び水を含有する液状ゲル化組成物を攪拌しつつ80〜100℃に加熱してジェランガムの溶解を行う;
(2)工程(1)で得られた液状ゲル化組成物に粒状物を添加し攪拌して均一に分散させ、次いで当該組成物中の粒状物が沈降しないで均一分散を保持できる粒状物固定化温度よりも低い冷却温度まで冷却する;
(3)工程(2)で得られた液状ゲル化組成物を再加熱して流動性を高めて製品容器に充填する;および
(4)工程(3)の製品容器に充填された液状ゲル化組成物をゲル化温度以下に冷却することによって固化させる;
からなることを特徴とする、粒状物が均一に分散しているゲル製品の製造方法。
【請求項2】
下記の工程、
(1)脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、水及び粒状物を含有する液状ゲル化組成物を攪拌しつつ80〜100℃に加熱してジェランガムの溶解と粒状物の均一な分散化を行う;
(2)工程(1)で得られた液状ゲル化組成物を、当該組成物中の粒状物が沈降しないで均一分散を保持できる粒状物固定化温度よりも低い冷却温度まで冷却する;
(3)工程(2)で得られた液状ゲル化組成物を再加熱して流動性を高めて製品容器に充填する;および
(4)工程(3)の製品容器に充填された液状ゲル化組成物をゲル化温度以下に冷却することによって固化させる;
からなることを特徴とする、粒状物が均一に分散しているゲル製品の製造方法。
【請求項3】
下記の工程、
(1)脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム及び水を含有する液状ゲル化組成物を攪拌しつつ80〜100℃に加熱してジェランガムの溶解を行う;
(2)工程(1)で得られた液状ゲル化組成物を、後記工程(3)で当該組成物に添加される粒状物が沈降しないで均一分散を保持できる粒状物固定化温度よりも低い冷却温度まで冷却する;
(3)工程(2)で得られた液状ゲル化組成物に粒状物を添加して均一に分散させてから再加熱して流動性を高めた後に、或いは液状ゲル化組成物を再加熱して流動性を高めてから粒状物を添加して均一に分散させた後に、製品容器に充填する;および
(4)工程(3)の製品容器に充填された液状ゲル化組成物をゲル化温度以下に冷却することによって固化させる;
からなることを特徴とする、粒状物が均一に分散しているゲル製品の製造方法。
【請求項4】
工程(2)の温度操作において冷却温度が、粒状物固定化温度よりも1℃以上低いことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゲル製品の製造方法。
【請求項5】
工程(2)の温度操作において冷却温度が、35℃以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のゲル製品の製造方法。
【請求項6】
工程(3)において38〜89℃に再加熱することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のゲル製品の製造方法。
【請求項7】
工程(4)の固化前の液状ゲル化組成物中において、脱アシル型ジェランガムの含有量が0.2〜2質量%、ネイティブ型ジェランガムの含有量が0.01〜0.3質量%及び水
の含有量が50〜99質量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のゲル製品の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項の工程(1)〜(3)のいずれかの段階における液状ゲル化組成物に香料を添加することを特徴とするゲル芳香剤又は消臭剤の製造方法。

【公開番号】特開2009−160526(P2009−160526A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−949(P2008−949)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(591011410)小川香料株式会社 (173)
【Fターム(参考)】