説明

ゲル電解質

【課題】室温付近において、良好なイオン伝導度を有するゲル電解質を提供する。
【解決手段】固体電解質塩と、溶媒と、下記式(1)で表される化合物及びその類似化合物又はそれらの薬学的に使用可能な塩からなる脂質ペプチド型ゲル化剤とを含む、ゲル電解質。


(R1は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R2は水素原子、又は炭素原子数1若しくは2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、R3は−(CH2n−X基を表し、nは1乃至4の数を表し、Xはアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環若しくは6員環又は5員環と6員環から構成される縮合複素環を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル電解質に関し、詳細には、低分子脂質ペプチド型ゲル化剤を用いたイオン伝導性のゲル電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型軽量化、ポータブル化に伴い、高電圧、高エネルギー密度という特徴を有するリチウム二次電池が注目を集め、特に、環境問題に対応した電気自動車向けなどの用途は非常に期待されている分野であり、研究開発が活発に行われている。こうした背景の中で、更なる高電圧、高エネルギー密度を実現できるようなリチウム二次電池への要求が今後ますます高まることが予想される。
【0003】
従来の電気デバイスの電解質としては、一般に液体電解質、特に有機電解液にイオン性化合物を溶解させたものが用いられてきたが、液体電解質は、電解液の外部への液漏れ、揮発、し電極物質の溶出などの種々の問題が発生しやすく、自然放電といった、長期信頼性に劣るという問題がある。こうした問題点を解決するために、スチール製のパッケージが採用されているものがある。しかし、これはパッケージ重量が重くなるという別の問題を生じさせ、電子機器の軽量化、ポータブル化には向いていない。軽量なアルミニウムをパッケージ材料として使用するためには、電解液を非液状化させることが安全性の点から必要とされ、種々の検討が行われている。
【0004】
電解液を非液状化させる方法として従来より様々な方法が検討されており、大別すると下記2種の方法が挙げられる:
(1)電解液を高分子化合物でゲル化させる方法、すなわち電解液の流動性を無くしたゲル状ポリマー電解質とする方法、或いは、
(2)有機溶媒を全く使用しない電解質、あるいは、電解質合成時は低沸点の有機溶媒を使用するが、その後に加熱などにより、低沸点の有機溶媒を除去してしまう方法、すなわち高分子固体電解質とする方法。
このうち、ゲル状ポリマー電解質は、耐漏液性を含めた、安全性、貯蔵性に優れた電池を構成できるという利点を有する。
【0005】
これまでに提案されているゲル状のポリマー電解質としては、例えば、有機溶媒に難溶性のポリマとポリアニオンポリマを混合あるいは相溶してなるポリマアロイフィルムと、有機溶媒からなるゲル状のポリマアロイ電解質(特許文献1)、多孔性合成樹脂フィルムおよび/または合成繊維不織布に、活性光線で重合可能なモノマーあるいはマクロマー、非水系溶媒、および無機イオン塩からなる液状混合物を含浸させた後に、活性光線を照射することによりゲル化させる半固体高分子電解質膜(特許文献2)、さらに、リチウム塩と非水系溶媒とゲル化剤である高分子ポリマーとからなるリチウムイオン伝導性ゲル状電解質(特許文献3)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−50345号公報
【特許文献2】特許第2715309号明細書
【特許文献3】特公平7−32022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に提案されたポリマアロイ電解質は、リチウムイオンの輸率は0.99と高いものの、イオン伝導度は1.4×10-4S/cmと低く、電解質抵抗に起因する電圧損を避けるため、低電流での使用に限定される。
また特許文献2に提案された半固体高分子電解質膜や、特許文献3に提案されたリチウムイオン伝導性ゲル状電解質においても、10-4S/cm程度のイオン伝導度が達成されてはいるものの、この値は従来の有機電解液を用いる液体電解質で得られる伝導度:およそ10-3〜10-2S/cmと比較した場合、十分な値であるとは到底言えない。
【0008】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その解決しようとする課題は、従来の液体電解質において得られる、室温付近でおよそ1mS/cm以上のイオン伝導度を達成できる、ゲル電解質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、低分子脂質ペプチド又はその薬学的に使用可能な塩からなる脂質ペプチド型ゲル化剤と、固体電解質塩及び溶媒とを含むゲル電解質が、良好なイオン伝導性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、第1観点として、固体電解質塩と、溶媒と、下記式(1)乃至式(3)で表される化合物又はその薬学的に使用可能な塩のうちの少なくとも一種からなる脂質ペプチド型ゲル化剤とを含む、ゲル電解質に関する。
【化1】

(式中、R1は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R2は水素原子、又は炭素原子数1若しくは2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、R3は−(C
2n−X基を表し、nは1乃至4の数を表し、Xはアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環若しくは6員環又は5員環と6員環か
ら構成される縮合複素環を表す。)
【化2】

(式中、R4は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R5乃至R7はそれぞれ独立して
水素原子、炭素原子数1若しくは2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基、又は−(CH2n−X基を表し、nは1乃至4の数を表し、Xはアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環若しくは6員環又は5員
環と6員環から構成される縮合複素環を表す。)
【化3】

(式中、R8は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R9乃至R12はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1若しくは2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基、又は−(CH2n−X基を表し、nは1乃至4の数を表し、Xはアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環若しくは6員環又は5員
環と6員環から構成される縮合複素環を表す。)
第2観点として、前記溶媒が有機溶媒である、第1観点に記載のゲル電解質に関する。
第3観点として、前記有機溶媒は、良溶媒と貧溶媒の混合溶媒である、第2観点に記載のゲル電解質に関する。
第4観点として、前記有機溶媒は、前記固体電解質塩及び前記脂質ペプチド型ゲル化剤のいずれとも反応しない溶媒であり、且つ、良溶媒は非プロトン性極性溶媒及び低級脂肪族アルコールからなる群から選択される溶媒であり、貧溶媒は炭酸エステル類、脂肪族エステル類、環状エーテル類及びニトリル系溶媒からな群から選択される溶媒である、第3観点に記載のゲル電解質に関する。
第5観点として、前記良溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1,2−ジメトキシエタン及び1,2−ジエトキシエタンからなる群から選択される溶媒であり、前記貧溶媒は、炭酸エチルメチル、炭酸ジメチル、炭酸プロピレン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びアセトニトリルからなる群から選択される溶媒である、第4観点に記載のゲル電解質に関する。
第6観点として、前記溶媒がイオン液体である、第1観点に記載のゲル電解質に関する。
第7観点として、前記イオン液体は、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、アンモニウム及びスルホニウムからなる群から選択されるカチオンと、ハロゲン、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、チオシアネート、ニトレート、アルミネート、ボレート、ホスフェート、アミド、アンチモネート、イミド及びメチドからなる群から選択されるアニオンとから構成されるものからなる、第6観点に記載のゲル電解質に関する。
第8観点として、前記固体電解質塩は、リチウムイオン二次電池に使用可能な固体電解質塩からなることを特徴とする、第1観点乃至第7観点のいずれかの1項に記載のゲル電解質に関する。
第9観点として、前記固体電解質は、LiN(SO2252、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、第1観点
乃至第7観点のいずれかの1項に記載のゲル電解質に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゲル電解質は、従来の有機電解液を用いる液体電解質と同程度の伝導度、すなわち、室温で1mS/cm以上という高いイオン伝導性を有する。
また、本発明のゲル電解質は、電解質がゲル状の形態を有していることから、電解液の外部への液漏れや揮発、電極物質の溶出という問題や、パッケージの重量化といった、従
来の液体電解質に付随する問題点を解消することができる。
このため本発明のゲル電解質は、高電圧や高エネルギー密度、耐漏液性、長期信頼性、そして軽量性等が求められる燃料電池の固体電解質や、電池分野での電解質等として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、例16で調製したゲル電解質について温度と電気伝導率との相関性を示すグラフである。
【図2】図2は、例17で調製したゲル電解質について温度と電気伝導率との相関性を示すグラフである。
【図3】図3は、例18で調製したゲル電解質について温度と電気伝導率との相関性を示すグラフである。
【図4】図4は、例19で調製したゲル電解質について温度と電気伝導率との相関性を示すグラフである。
【図5】図5は、例20で調製したゲル電解質について温度と電気伝導率との相関性を示すグラフである。
【図6】図6は、例21で調製したゲル電解質について温度と電気伝導率との相関性を示すグラフである。
【図7】図7は、例22で調製したゲル電解質について温度と電気伝導率との相関性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、固体電解質塩と、溶媒と、前記式(1)乃至式(3)で表される化合物又はその薬学的に使用可能な塩のうちの少なくとも一種からなる脂質ペプチド型ゲル化剤とを含む、ゲル電解質に関する。
以下、各構成成分について説明する。
【0014】
[脂質ペプチド型ゲル化剤]
本発明において用いる脂質ペプチド型ゲル化剤としては、下記式(1)乃至式(3)で表される化合物(脂質ペプチド)又はその薬学的に使用可能な塩(疎水性部位である脂質部と親水性部位であるペプチド部とを有する低分子化合物)を用いることができる。
【化4】

【0015】
上記式(1)において、R1は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、好ましくは、
1は不飽和結合を0乃至2個有し得る炭素原子数11乃至23の直鎖状脂肪族基である
ことが望ましい。
1は及び隣接するカルボニル基で構成される脂質部(アシル基)の具体例としては、
ラウロイル基、ドデシルカルボニル基、ミリストイル基、テトラデシルカルボニル基、パルミトイル基、マルガロイル基、オレオイル基、エライドイル基、リノレオイル基、ステアロイル基、バクセノイル基、オクタデシルカルボニル基、アラキドイル基、エイコシル
カルボニル基、ベヘノイル基、エルカノイル基、ドコシルカルボニル基、リグノセイル基、ネルボノイル基等を挙げることができ、特に好ましいものとして、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、マルガロイル基、ステアロイル基、オレオイル基、エライドイル基及びベヘノイル基が挙げられる。
【0016】
上記式(1)において、ペプチド部に含まれるR2は、水素原子、又は炭素原子数1若
しくは2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基を表す。
上記炭素原子数1若しくは2の分岐鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基とは、主鎖の炭素原子数が1乃至4であり、かつ炭素原子数1若しくは2の分岐鎖を有し得るアルキル基を意味し、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基又はtert−ブチル基などが挙げられる。
【0017】
上記R2は好ましくは、水素原子、又は炭素原子数1の分岐鎖を有し得る炭素原子数1
乃至3のアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
炭素原子数1の分岐鎖を有し得る炭素原子数1乃至3のアルキル基とは、主鎖の炭素原子数が1乃至3であり、かつ炭素原子数1の分岐鎖を有し得るアルキル基を意味し、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基又はsec−ブチル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、i−プロピル基、i−ブチル基又はsec−ブチル基である。
【0018】
上記式(1)において、R3は−(CH2)n−X基を表す。上記−(CH2)n−X基
において、nは1乃至4の数を表し、Xはアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又
は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環式基若しくは6員環式基、又は5員環と6員環から構成される縮合複素環式基を表す。
上記R3を表す−(CH2)n−X基において、Xは好ましくはアミノ基、グアニジノ基、カルバモイル基(−CONH2基)、ピロール基、イミダゾール基、ピラゾール基又は
インドール基であり、より好ましくはイミダゾール基である。また、上記−(CH2)n
−X基において、nは好ましくは1又は2であり、より好ましくは1である。
従って、上記−(CH2)n−基は、好ましくはアミノメチル基、2−アミノエチル基
、3−アミノプロピル基、4−アミノブチル基、カルバモイルメチル基、2−カルバモイルエチル基、3−カルバモイルブチル基、2−グアニジノエチル基、3−グアニジノブチル基、ピロールメチル基、4−イミダゾールメチル基、ピラゾールメチル基、又は3−インドールメチル基を表し、より好ましくは4−アミノブチル基、カルバモイルメチル基、2−カルバモイルエチル基、3−グアニジノブチル基、4−イミダゾールメチル基又は3−インドールメチル基を表し、さらに好ましくは4−イミダゾールメチル基である。
【0019】
上記式(1)で表される化合物において、脂質ペプチド型ゲル化剤として特に好適な脂質ペプチドとしては、以下の脂質部とペプチド部(アミノ酸集合部)から形成される化合物である。なおアミノ酸の略称としては、アラニン(Ala)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、トリプトファン(Trp)、バリン(Val)を表す。:ラウロイル−Gly−His、ラウロイル−Gly−Gln、ラウロイル−Gly−Asn、ラウロイル−Gly−Trp、ラウロイル−Gly−Lys、ラウロイル−Ala−His、ラウロイル−Ala−Gln、ラウロイル−Ala−Asn、ラウロイル−Ala−Trp、ラウロイル−Ala−Lys;ミリストイル−Gly−His、ミリストイル−Gly−Gln、ミリストイル−Gly−Asn、ミリストイル−Gly−Trp、ミリストイル−Gly−Lys、ミリストイル−Ala−His、ミリストイル−Ala−Gln、ミリストイル−Ala−Asn、ミリストイル−Ala−Trp、ミリストイル−Ala−Lys;パルミトイル−Gly−His、パルミトイル
−Gly−Gln、パルミトイル−Gly−Asn、パルミトイル−Gly−Trp、パルミトイル−Gly−Lys、パルミトイル−Ala−His、パルミトイル−Ala−Gln、パルミトイル−Ala−Asn、パルミトイル−Ala−Trp、パルミトイル−Ala−Lys;ステアロイル−Gly−His、ステアロイル−Gly−Gln、ステアロイル−Gly−Asn、ステアロイル−Gly−Trp、ステアロイル−Gly−Lys、ステアロイル−Ala−His、ステアロイル−Ala−Gln、ステアロイル−Ala−Asn、ステアロイル−Ala−Trp、ステアロイル−Ala−Lys。
【0020】
最も好ましいものとして、ラウロイル−Gly−His、ラウロイル−Ala−His-ミリストイル−Gly−His、ミリストイル−Ala−His;パルミトイル−Gl
y−His、パルミトイル−Ala−His;ステアロイル−Gly−His、ステアロイル−Ala−Hisが挙げられる。
【0021】
【化5】

上記式(2)において、R4は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、好ましい具体
例としては、前出のR1で定義したものと同じ基が挙げられる。
上記式(2)において、R5乃至R7は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子数1若しくは2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基、又は−(CH2)n
−X基を表し、且つR5乃至R7のうち少なくとも一つ以上が−(CH2)n−X基を表す
。nは1乃至4の数を表し、Xはアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は窒素原
子を1乃至3個有し得る5員環式基若しくは6員環式基、又は5員環と6員環から構成される縮合複素環式基を表す。ここでR5乃至R7の好ましい具体例としては、前出のR2
びR3で定義したものと同じ基が挙げられる。
【0022】
上記式(2)で表される化合物において、好適な脂質ペプチドとしては、以下の脂質部とペプチド部(アミノ酸集合部)から形成される化合物である。ミリストイル−Gly−Gly−His、ミリストイル−Gly−Gly−Gln、ミリストイル−Gly−Gly−Asn、ミリストイル−Gly−Gly−Trp,ミリストイル−Gly−Gly−Lys、ミリストイル−Gly−Ala−His、ミリストイル−Gly−Ala−Gln、ミリストイル−Gly−Ala−Asn、ミリストイル−Gly−Ala−Trp,ミリストイル−Gly−Ala−Lys、ミリストイル−Ala−Gly−His、ミリストイル−Ala−Gly−Gln、ミリストイル−Ala−Gly−Asn、ミリストイル−Ala−Gly−Trp,ミリストイル−Ala−Gly−Lys、ミリストイル−Gly−His−Gly、ミリストイル−His−Gly−Gly、パルミトイル−Gly−Gly−His、パルミトイル−Gly−Gly−Gln、パルミトイル−Gly−Gly−Asn、パルミトイル−Gly−Gly−Trp,パルミトイル−Gly−Gly−Lys、パルミトイル−Gly−Ala−His、パルミトイル−Gly−Ala−Gln、パルミトイル−Gly−Ala−Asn、パルミトイル−Gly−Ala−Trp,パルミトイル−Gly−Ala−Lys、パルミトイル−Ala−Gly−His、パルミトイル−Ala−Gly−Gln、パルミトイル−Ala−Gly−Asn、パルミトイル−Ala−Gly−Trp,パルミトイル−Ala−Gly−Lys、パルミトイル−Gly−His−Gly、パルミトイル−His−Gly−Gly。
これらのうち、最も好ましいものとして、ラウロイル−Gly−Gly−His、ミリストイル−Gly−Gly−His、パルミトイル−Gly−Gly−His、パルミトイル−Gly−His−Gly、パルミトイル−His−Gly−Gly、ステアロイル−Gly−Gly−Hisが挙げられる。
【0023】
【化6】

【0024】
上記式(3)において、R8は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、好ましい具体
例としては、前出のR1で定義したものと同じ基が挙げられる。
上記式(3)において、R9乃至R12は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子
数1若しくは2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基、又は−(CH2
n−X基を表し、且つR9乃至R12のうち少なくとも一つ以上が−(CH2)n−X基を表す。nは1乃至4の数を表し、Xはアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は窒素
原子を1乃至3個有し得る5員環式基若しくは6員環式基、又は5員環と6員環から構成される縮合複素環式基を表す。ここでR9乃至R12の好ましい具体例としては、前出のR2及びR3で定義したものと同じ基が挙げられる。
したがって上記式(3)で表される化合物において、好適な脂質ペプチド型ゲル化剤として、特に好適な脂質ペプチドとしては、ラウロイル−Gly−Gly−Gly−His、ミリストイル−Gly−Gly−Gly−His、パルミトイル−Gly−Gly−Gly−His、パルミトイル−Gly−Gly−His−Gly、パルミトイル−Gly−His−Gly−Gly、パルミトイル−His−Gly−Gly−Gly、ステアロイル−Gly−Gly−Gly−His等が挙げられる。
【0025】
本発明において用いられる脂質ペプチド型ゲル化剤は、上記式(1)乃至式(3)で表される化合物(脂質ペプチド)又はその薬学的な使用可能な塩のうちの少なくとも一種からなり、ゲル化剤としてこれら化合物を単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
本発明によるゲル電解質において、脂質ペプチド型ゲル化剤の割合は、得られるゲル電解質の総質量の0.1乃至30質量%、好ましくは、15乃至20質量%である。
【0027】
[固体電解質塩]
本発明において用いる固体電解質塩としては、リチウムイオン二次電池に使用可能な固体電解質塩が使用できる。具体例としては、LiN(SO2252[LiBETI]、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(SO2
32、LiN(SO2252[LiTFSI]等やこれらの混合物が挙げられる。
本発明によるゲル電解質において、固体電解質塩は、得られるゲル電解質に0.01乃至2mol/kg、好ましくは、0.1乃至1mol/kgの濃度で用いられる。
【0028】
[溶媒]
本発明において、溶媒とは、該固体電解質塩を溶解すると共に前記脂質ペプチド型ゲル化剤をも溶解し、且つ、該ゲル化剤によってゲル化されるものであり、更に該固体電解質
塩とゲル化剤の両者と反応することがないものを意味する。
本発明において、上記溶媒として、有機溶媒又はイオン液体が使用できる。
本発明によるゲル電解質において、溶媒の割合は、得られるゲル電解質の総質量の30乃至98質量%、好ましくは、60乃至95質量%である。
【0029】
<有機溶媒>
リチウム金属に対して熱力学的に安定な有機溶媒は存在しないと言われるが、ある種の有機溶媒はリチウム金属と反応してリチウム金属表面上に保護皮膜を生成するので、さらなる反応が制御され速度論的に安定状態となる。この保護皮膜を固体電解質層(SEI)と称するが、リチウム電池で使用される黒鉛負極表面上でもリチウム金属表面上と類似のSEIの性状は可逆容量、保存寿命、サイクル寿命、安全性などの電池性能に大きな影響を及ぼす。そのため種々のカーボネート、安息香酸メチル、無水コハク酸、コハク酸イミド、ジアルキルピロカーボネートなどを混合した有機溶媒がリチウム電池に用いられている。
本発明においては、ゲル電解質形成について鋭意研究を重ねた結果、溶媒として前記固体電解質及び前記脂質ペプチド型ゲル化剤の何れとも反応しない溶媒を使用し、そして、良溶媒と貧溶媒の2種の溶媒の混合使用が重要であることを見出した。
ここで良溶媒とは、以下の2点の特徴を有するものを意味する。
1.該ゲル化剤を溶媒に入れ、所定温度で加熱し、室温で放冷した後に沈澱を生じない溶媒。
2.該ゲル化剤及び上記段落[0027]記載の固体電解質を溶媒に入れ、所定温度で加熱し、室温で放冷した後に沈澱を生じない溶媒。
一方、ここでの貧溶媒とは、以下の2点の特徴を有するものを意味する。
1.該ゲル化剤を溶媒に入れ、所定温度で加熱し、室温で放冷した後に沈澱を生じる溶媒。2.該ゲル化剤及び上記段落[0027]記載の固体電解質を溶媒に入れ、所定温度で加熱し、室温で放冷した後に沈澱を生じる溶媒
【0030】
上記良溶媒の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等の低級脂肪族アルコール等が挙げられる。中でも、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンが好ましい。また、これらは互いに相溶する2種以上の溶媒を混合して使用してもよい。
上記貧溶媒の具体例としては、炭酸エチルメチル、炭酸ジメチル、炭酸プロピレン等の炭酸エステル類;酢酸エチル等の脂肪族エステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;アセトニトリル等のニトリル系溶媒などが挙げられ、これらは互いに相溶する2種以上の溶媒を混合して使用してもよい。特には、炭酸エチルメチル、炭酸ジメチルが好ましい。
【0031】
上記良溶媒と貧溶媒の好ましい組み合わせとしては、N,N−ジメチルホルムアミドと炭酸エチルメチル、N,N−ジメチルホルムアミドと炭酸ジメチル、N,N−ジメチルホルムアミドと炭酸プロピレン、ジメチルスルホキシドと炭酸エチルメチル、ジメチルスルホキシドと炭酸ジメチル、ジメチルスルホキシドと炭酸プロピレン、N,N−ジメチルアセトアミドと炭酸エチルメチル、N,N−ジメチルアセトアミドと炭酸ジメチル、N,N−ジメチルアセトアミドと炭酸プロピレン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと炭酸エチルメチル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと炭酸ジメチル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと炭酸プロピレン、N−メチル−2−ピロリドンと炭酸エチルメチル、N−メチル−2−ピロリドンと炭酸ジメチル、N−メチル−2−ピロリドンと炭酸プロピレン、メタノールと炭酸エチルメチル、メタノールと炭酸ジメチル、メタ
ノールと炭酸プロピレン、エタノールと炭酸エチルメチル、エタノールと炭酸ジメチル、エタノールと炭酸プロピレン、イソプロパノールと炭酸エチルメチル、イソプロパノールと炭酸ジメチル、イソプロパノールと炭酸プロピレン、1,2−ジメトキシエタンと炭酸エチルメチル、1,2−ジメトキシエタンと炭酸ジメチル、1,2−ジメトキシエタンと炭酸プロピレン、1,2−ジエトキシエタンと炭酸エチルメチル、1,2−ジエトキシエタンと炭酸ジメチル、1,2−ジエトキシエタンと炭酸プロピレンが挙げられる。
これらのうちで特に好ましい良溶媒と貧溶媒の組み合わせとしては、N−メチル−2−ピロリドンと炭酸エチルメチル、N−メチル−2−ピロリドンと炭酸ジメチル、1,2−ジメトキシエタンと炭酸エチルメチル、1,2−ジメトキシエタンと炭酸ジメチルが挙げられる。
【0032】
<イオン液体>
イオン液体としては、一般に「イオン液体」として既知のものを使用でき、例えばイミダゾリウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、アンモニウム及びスルホニウムからなる群から選択されるカチオンと、ハロゲン、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、チオシアネート、ニトレート、アルミネート、ボレート、ホスフェート、アミド、アンチモネート、イミド及びメチドからなる群から選択されるアニオンとから構成されるものが挙げられる。
例えば、カチオン種としては、1,3−ジアルキルイミダゾリウムイオン、1,2,3−トリアルキルイミダゾリウムイオン、N−アルキルピリジニウムイオン、N−アルキルピロリジニウム、テトラアルキルアンモニウムイオン、テトラアルキルホスホニウムイオン、トリアルキルスルホニウムイオンなどが挙げられる。
また、アニオン種としては、テトラフルオロボレート(BF4-)イオン、ヘキサフルオロホスフェート(PF6-)イオン、トリフルオロメタンスルホネート(CF3SO3-)イ
オン、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6-)イオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)イオン、ビス(フルオロスルホニル)イミド((FSO22-)イオン、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)イオン、ニトレート(NO3-)イオン、トリフルオロメチルカルボキシレー
ト(CF3CO2-)イオン、カルボキシレート(CH3CO2-)イオン、クロロアルミネート(Al2Cl7-)イオンなどが挙げられる。
【0033】
[ゲル電解質]
本発明のゲル電解質は、種々の方法によって得ることができる。たとえば、前記脂質ペプチド型ゲル化剤と前記固体電解質塩を前記溶媒に加熱溶解し、混合物(キャスティング液)を得る。加熱溶解時の温度は、使用する溶媒の沸点以下であればよい。
次のこの混合物を、必要に応じて、例えば平滑な面に適当量を滴下したり、或いは、適当な型に注入した後、室温(約25℃)で冷却し、静置することにより、ゲル電解質を得ることができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例及び試験例を例に挙げて詳しく説明するが、本発明がこれらの例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例の記載において用いる略記号の意味は、次のとおりである。
Pal−GH:N−パルミトイル−Gly−His(Gly:グリシン、His:ヒスチジン)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
DME:1,2−ジメトキシエタン
AN:アセトニトリル
EMC:炭酸エチルメチル
DMC:炭酸ジメチル
PC:炭酸プロピレン
P13−TFSA:N−メチル−N−プロピルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
EMIm−BF4:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート
【0035】
[合成例1:脂質ペプチド(N−パルミトイル−Gly−His)の合成]
本実施例において、ゲル化剤として用いた脂質ペプチドは、以下に示す方法で合成した
500mLの4つ口フラスコに、ヒスチジン14.2g(91.6mmol)、N−パルミトイル−Gly−メチル30.0g(91.6mmol)、トルエン300gを投入し、塩基であるナトリウムメトキサイド 28%メタノール溶液35.3g(183.2mmol)を加え、油浴で60℃に加熱し1時間攪拌を続けた。その後、油浴を外し、25℃まで放冷し、この溶液をアセトン600gで再沈殿させ、濾取した。ここで得られた固体を、水600gとメタノール750gの混合溶液に溶解し、ここに6規定塩酸30.5ml(183.2mmol)を加えて中和し固体を析出させ、ろ過した。次に、得られた固体をテトラヒドロフラン120gと水30gの混合液に60℃で溶解させ、酢酸エチル150gを加え、60℃から30℃まで冷却した。その後、析出した固体をろ過した。さらに得られた固体を、テトラヒドロフラン120gとアセトニトリル60g溶剤中に溶解し、60℃に加熱し、1時間攪拌した後に冷却し、ろ過した。ここで得られた固体を水120gで洗浄し、ろ過後に減圧乾燥を行いN−パルミトイル−Gly−Hisフリー体(以下、単にN−パルミトイル−Gly−Hisとも称する)の白色の結晶、26.9g(収率65%)を得た。
【0036】
[ゲル電解質の作製(1)]
表1に従って、各組成物(ゲル化剤、有機溶媒2種類、固体電解質塩)をサンプル管に秤量した。サンプル管を表1に示す所定温度にて所定時間加熱し、室温(およそ25℃)で放冷した後、ゲル形成の確認を行った。ゲル形成の確認(ゲル状電解の形成の確認)は、試験管倒置法により行い、ゲルが崩壊せずに、倒立状態を維持しているものを「ゲル形成:○」と評価した。得られた結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
[ゲル電解質の作製(2)]
表2に従って、各組成物(ゲル化剤、溶媒(イオン液体)、固体電解質塩)をサンプル管に秤量した。サンプル管を表2に示す所定温度にて所定時間加熱し、室温(およそ25℃)で放冷した後、ゲル形成の確認を行った。ゲル形成の確認(ゲル状電解の形成の確認)は、試験管倒置法により行い、ゲルが崩壊せずに、倒立状態を維持しているものを「ゲル形成:○」と評価した。得られた結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
[ゲル電解質の熱安定性評価]
表3に従って、各組成物(ゲル化剤、有機溶媒2種類、固体電解質塩)をサンプル管((株)マルエム製 No.01)に秤量した。サンプル管を表3に示す所定温度にて所定時間加熱し、室温で放冷した後、ゲル形成の確認(ゲル状電解の形成の確認)を行った。ゲル形成の確認は、試験管倒置法により行った。
続いて、調製したゲル電解質を、表3に示す所定温度(25℃、50℃、60℃、70℃)に予め加熱しておいた恒温槽に、サンプル管を倒立させた状態で入れた。1時間経過後、ゲルが崩壊せずに、倒立状態を維持しているものを「耐熱性あり(○)」と評価した。得られた結果を表3に示す。
【0041】
【表3】

【0042】
表3に示すとおり、いずれのゲル電解質においても60℃までは耐熱性を有し、その形状を保つことが確認された。
【0043】
[イオン伝導度測定]
表4に従い、Pal−GH、溶媒(1種又は2種)、固体電解質塩をサンプル管に秤量し、75℃で1時間加熱した。加熱した混合物に、電気伝導率セル(東亜ディーケーケー(株) 電気伝導率計:MM−60,浸漬型電気伝導率セル:CT-57101C)を浸
漬させ、2時間静置し、ゲル電解質を作製した。
次いで、ゲル電解質を10℃までドライアイスを用いて冷却した後、ドライバスインキュベーターを用いて、75℃まで徐々に昇温し、所定温度(10℃、20℃、25℃、30℃、40℃、50℃、60℃、65℃、70℃)における電気伝導率を測定した。
得られた結果を表4及び図1乃至図7に示す。
【0044】
【表4】

【0045】
表4並びに図1乃至図7に示すとおり、60℃以下の温度範囲において、イオン伝導度が1mS/cm以上であるゲル電解質を得た(例17〜18、例20、例22)。
また、例17及び18においては、20℃から70℃の温度範囲において、ほぼ一定の電気伝導率が得られ、温度依存性が低いゲル電解質を得ることできた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質塩と、溶媒と、下記式(1)乃至式(3)で表される化合物又はその薬学的に使用可能な塩のうちの少なくとも一種からなる脂質ペプチド型ゲル化剤とを含む、ゲル電解質。
【化1】

(式中、R1は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R2は水素原子、又は炭素原子数1若しくは2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、R3は−(C
2n−X基を表し、nは1乃至4の数を表し、Xはアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環若しくは6員環又は5員環と6員環か
ら構成される縮合複素環を表す。)
【化2】

(式中、R4は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R5乃至R7はそれぞれ独立して
水素原子、炭素原子数1若しくは2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基、又は−(CH2n−X基を表し、nは1乃至4の数を表し、Xはアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環若しくは6員環又は5員
環と6員環から構成される縮合複素環を表す。)
【化3】

(式中、R8は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R9乃至R12はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1若しくは2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基、又は−(CH2n−X基を表し、nは1乃至4の数を表し、Xはアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環若しくは6員環又は5員
環と6員環から構成される縮合複素環を表す。)
【請求項2】
前記溶媒が有機溶媒である、請求項1に記載のゲル電解質。
【請求項3】
前記有機溶媒は、良溶媒と貧溶媒の混合溶媒である、請求項2に記載のゲル電解質。
【請求項4】
前記有機溶媒は、前記固体電解質塩及び前記脂質ペプチド型ゲル化剤のいずれとも反応しない溶媒であり、且つ、
良溶媒は非プロトン性極性溶媒及び低級脂肪族アルコールからなる群から選択される溶媒であり、
貧溶媒は炭酸エステル類、脂肪族エステル類、環状エーテル類及びニトリル系溶媒からな群から選択される溶媒である、
請求項3に記載のゲル電解質。
【請求項5】
前記良溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1,2−ジメトキシエタン及び1,2−ジエトキシエタンからなる群から選択される溶媒であり、
前記貧溶媒は、炭酸エチルメチル、炭酸ジメチル、炭酸プロピレン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びアセトニトリルからなる群から選択される溶媒である、
請求項4に記載のゲル電解質。
【請求項6】
前記溶媒がイオン液体である、請求項1に記載のゲル電解質。
【請求項7】
前記イオン液体は、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、アンモニウム及びスルホニウムからなる群から選択されるカチオンと、ハロゲン、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、チオシアネート、ニトレート、アルミネート、ボレート、ホスフェート、アミド、アンチモネート、イミド及びメチドからなる群から選択されるアニオンとから構成されるものからなる、請求項6に記載のゲル電解質。
【請求項8】
前記固体電解質塩は、リチウムイオン二次電池に使用可能な固体電解質塩からなることを特徴とする。請求項1乃至請求項7のいずれかの1項に記載のゲル電解質。
【請求項9】
前記固体電解質は、LiN(SO2252、LiPF6、LiBF4、LiClO4、L
iAsF6、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれかの1項に記載のゲル電解質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−186055(P2012−186055A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48913(P2011−48913)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】