説明

ゲートウェイシステム

【課題】高機能で拡張性に優れたゲートウェイシステムを提供する。
【解決手段】GWシステム1は、通信部20と、業務処理部10と、メッセージルータ部30と、を備える。通信部20は、通信対象システムからのデータを受信すると、そのデータに基づいたメッセージをメッセージルータ部30に送信する。また、通信部20は、メッセージルータ部30からのメッセージを受信すると、そのメッセージに基づいたデータを対応する通信対象システムに送信する。業務処理部10は、メッセージルータ部30からのメッセージを受信すると、そのメッセージの内容に基づいた所定処理を実行する。メッセージルータ部30は、通信部20又は業務処理部10から送信されたメッセージを受信すると、そのメッセージの内容を解析し、その解析結果に基づいて、処理内容を指定したメッセージを通信部20又は業務処理部10に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲートウェイシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
プロトコルの異なるシステム間でのデータ交換を実現するために構築されるゲートウェイ(GW)について、従来より様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1等)。
【0003】
特許文献1では、一のクライアントとプロトコルの異なる複数のホスト間、及び一のホストとプロトコルの異なる複数のクライアント間で、クライアント及びホストにプロトコルの切り替えを意識させることなく相互接続可能とする通信方式が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−225171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、昨今の金融機関等では、プロトコルの差異を吸収して多対多のデータ交換を実現することのみならず、様々な業務処理の対応や安全性、メンテナンス性の向上等の観点から、さらに付加機能を充実させた高機能で拡張性の良いGWの構築が望まれているのが実情である。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高機能で拡張性に優れたゲートウェイシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るゲートウェイシステムは、
通信手段と、メッセージルータ手段と、業務処理手段と、を備え、複数のシステム間のデータ連携を行うゲートウェイシステムであって、
前記通信手段は、通信対象システムから送信されたデータを受信すると、該データに基づいたメッセージを前記メッセージルータ手段に送信し、前記メッセージルータ手段から送信されたメッセージを受信すると、該メッセージに基づいたデータを対応する前記通信対象システムに送信し、
前記業務処理手段は、前記メッセージルータ手段から送信されたメッセージを受信すると、当該メッセージの内容に基づいた所定処理を実行し、
前記メッセージルータ手段は、前記通信手段又は前記業務処理手段から送信されたメッセージを受信すると、当該メッセージの内容を解析し、その解析結果に基づいて、処理内容を指定したメッセージを前記通信手段又は前記業務処理手段に送信する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高機能で拡張性に優れたゲートウェイシステムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るGWシステムの運用態様を示す概念図である。
【図2】図1のGWシステムの機能構成を示す図である。
【図3】処理ノードについて説明するための図である。
【図4】通信ノードについて説明するための図である。
【図5】電文のフォーマットを示す図である。
【図6】ノード間転送処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】処理ノードの多プロセス化について説明するための図である。
【図8】通信ノードの多プロセス化について説明するための図である。
【図9】GWシステムの使用例1を説明するための図である。
【図10】GWシステムの使用例2を説明するための図である。
【図11】GWシステムの使用例3を説明するための図である。
【図12】GWシステムの使用例4を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るゲートウェイ(GW)システムの一実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
本実施形態に係るGWシステム1は、金融機関に設置され、システム間の差異を吸収して、トランザクション連携やデータ中継等を行うシステムである。図1に示すように、GWシステム1は、端末系(例えば、ATM(Automated Teller Machine):現金自動預払機、営業店端末等)、勘定系(例えば、メインフレーム等)、対外系(例えば、全銀システム等)等の各システムとそれぞれ所定のネットワークを介して通信可能に接続する。
【0012】
GWシステム1は、図2に示すように、機能的には、業務処理部10と、通信部20と、メッセージルータ部30と、を備える。業務処理部10は、電文の内容を書き換える等の編集処理(電文編集処理)、電文(より詳細には、電文に含まれる業務データ)の文字コードを変換する処理(コード変換処理)やプロトコル処理等の業務に係る所定処理を実行する。
【0013】
本実施形態では、GWシステム1は、業務処理部10におけるこれらの各処理を、図3に示すように、それぞれ別個の処理ノード(処理ノード100,100,…)として管理する。それぞれの処理ノード100は、メッセージルータ部30から送信される電文の内容等に基づいた特有の処理を実行する。
【0014】
通信部20は、通信対象システム(端末系、勘定系、対外系等)とのデータ通信を制御する。本実施形態では、GWシステム1は、図4に示すように、通信部20における各通信対象システム毎に特有のデータ通信処理をそれぞれ別個の通信ノード(通信ノード200,200,…)として管理する。それぞれの通信ノード200は、各通信先(例えば、ATM、営業店端末、メインフレーム等)の通信プロトコル(下位レイヤ)に対応したデータ通信処理を行う。
【0015】
上記の各ノード(各処理ノード100及び各通信ノード200)には、ID(ノードID)が割り振られ、ノードIDによって何れのノードであるかが一意に識別できるようになっている。
【0016】
図2に戻り、メッセージルータ部30は、通信部20の通信ノード200又は業務処理部10の処理ノード100から受け取った電文を解析し、次に処理を行うべきノード(処理ノード100又は通信ノード200)を決定する。そして、この決定したノードを指定した電文を生成して、業務処理部10又は通信部20に送信する。
【0017】
ここで、本実施形態で取り扱う電文について説明する。電文は、GWシステム1において、メッセージルータ30と業務処理部10間、メッセージルータ30と通信部20間でやり取りされるメッセージである。図5に示すように、この電文は、ヘッダ部と業務データ部とから構成される。ヘッダ部には、電文長(当該電文のデータサイズ)、電文の種別、送信元のノードID、宛先のノードID等が格納される。ヘッダ部のサイズは、例えば、64バイトである。
【0018】
業務データ部には、実際の業務に係るデータ(例えば、営業店端末から送られてきた取引要求データ等)が格納される。業務データ部のデータサイズは、可変長であり、例えば、最大8128バイトのデータが格納可能である。
【0019】
次に、メッセージルータ部30による電文の転送処理(ノード間転送処理)を図6のフローチャートに沿って具体的に説明する。メッセージルータ部30は、業務処理部10又は通信部20から電文を受け取ると(ステップS101でYES)、電文の所定領域に含まれる情報(振分情報)を抽出する(ステップS102)。
【0020】
なお、振分情報は、電文の一領域のみならず、複数の領域に点在している場合もある。
【0021】
ここで、業務処理部10、通信部20によるメッセージルータ部30への電文の送信について説明する。業務処理部10は、メッセージルータ部30によって指定された処理ノード100が所定の処理を完了すると、その処理結果が反映された電文を生成し、メッセージルータ部30に送信する。例えば、処理ノード100によりコード変換処理が実行された場合、当該コード変換処理によって文字コードが変換されたデータが、電文の業務データ部に格納される。
【0022】
通信部20は、通信対象システムからデータを受信すると、当該データに基づいた電文を生成し、メッセージルータ部30に送信する。
【0023】
上記の振分情報の抽出の際、メッセージルータ部30は、定義ファイルを参照する。この定義ファイルには、振分情報の格納領域についての情報(抽出情報)が示されている。抽出情報には、例えば、取得を開始する位置についての情報(例えば、電文先頭からのバイト数)と、取得するデータ長についての情報(例えば、バイト長)との組が1又は複数含まれている。
【0024】
定義ファイルは、上記の抽出情報や、メッセージルータ部30のその他の処理に係る情報等が記述されたテキスト形式のファイル(例えば、INIファイル等)である。定義ファイルは、GWシステム1が備える半導体メモリ等の記憶装置(図示せず)に格納されている。
【0025】
次に、メッセージルータ部30は、上記の定義ファイルと同様、図示しない記憶装置に格納されているノード情報ファイルをオープンする(ステップS103)。ノード情報ファイルは、業務処理部10の各処理ノード100及び通信部20の各通信ノード200についての情報(ノード情報)が記述されたテキスト形式のファイル(例えば、INIファイル等)である。
【0026】
ノード情報ファイルは、処理ノード100用と通信ノード200用の2種類用意されていてもよいし、両者が1ファイルに統合されていてもよい。
【0027】
メッセージルータ部30は、抽出した振分情報と、ノード情報ファイルに格納されているノード情報と、に基づいて、電文の宛先(転送先)となるノードを決定する(ステップS104)。そして、メッセージルータ部30は、決定したノードを指定した電文、即ち、ヘッダ部の宛先に決定したノードのノードIDを設定した電文を業務処理部10又は通信部20に送信する(ステップS105)。以降、メッセージルータ部30は、ステップS101〜S105の処理を繰り返し実行する。
【0028】
例えば、メッセージルータ部30から業務処理部10に電文が送信され、指定された処理ノード100が当該電文を受信すると、当該処理ノード100は、自己に特化された業務処理(電文編集処理、コード変換処理、プロトコル処理等)を実行する。
【0029】
一方、メッセージルータ部30から通信部20に電文が送信され、指定された通信ノード200が当該電文を受信すると、当該通信ノード200は、自己に特化されたデータ通信処理を実行し、当該電文に基づいた送信用のデータを生成して、これを通信先(例えば、メインフレーム等)に送信する。
【0030】
以上のようにして、メッセージルータ部30は、業務処理部10の何れかの処理ノード100又は通信部20の何れかの通信ノード200に電文を転送するが、かかる転送経路のパターンは様々であり、例えば、通信ノード200→メッセージルータ部30→通信ノード200やメッセージルータ部30→処理ノード100→メッセージルータ部30→処理ノード100等のパターンもある。
【0031】
なお、図7に示すように、業務処理部10の各処理ノード100において、一の業務処理を複数のプロセスにより冗長化することも可能である。このような仕様にすることで、プロセスの1つに障害が発生しても、他のプロセスで業務処理を継続することができる。
【0032】
また、図8に示すように、通信部20の各通信ノード200において、複数のプロセスを生成して、それぞれのプロセスで異なる通信先とデータ通信処理を実行することができる。
【0033】
続いて、以上の機能を有するGWシステム1の使用例について説明する。
【0034】
(使用例1)
図9は、端末と分散されている複数のシステム(A、B、C)との1:n連携を示す概念図である。この例では、GWシステム1は、1つの端末(営業店端末等)から送信された電文に基づいて、システムA、B、Cとメッセージ連携を行う。
【0035】
(使用例2)
図10は、システム間の文字コードの整合性を取る例を示す概念図である。この例では、GWシステム1は、システムA(文字コードとしてEBCDICを使用する)からの電文を受信すると、文字コードをJIS8に変換してシステムBに転送する。これとは逆に、システムBからの電文を受信すると、文字コードをJIS8からEBCDICに変換してシステムAに転送する。
【0036】
(使用例3)
図11は、GWシステム1の電文編集処理を説明するための概念図である。この例では、GWシステム1は、オンライン端末からの電文(例えば、XML形式の電文)を受信すると、メインフレームが認識可能な物理電文(取引形式電文)に変換して、メインフレームに転送する。これとは逆に、メインフレームからの物理電文を受信すると、オンラインシステム形式(即ち、XML形式)の電文に変換して、オンライン端末に転送する。
【0037】
(使用例4)
図12は、GWシステム1を使用したミラーテストを説明するための概念図である。ここでは、GWシステム1の機能が、テスト用勘定系システムのデグレード確認テストに利用される例を説明する。
【0038】
図12において、GWシステム1は、テスト用GWシステムと所定のネットワークを介して通信可能に接続する。テスト用GWシステムは、GWシステム1と同等の機能を有する。テスト用GWシステムは、テスト用勘定系(メインフレーム等)と所定のネットワークを介して通信可能に接続する。
【0039】
GWシステム1は、営業店端末、ATM等から送信された取引要求電文を実際に運用している勘定系に転送すると共に、当該電文のコピーをテスト用GWシステムに送信する。テスト用GWシステムは、GWシステム1から送信された取引要求電文のコピーをあたかも配下の端末から送られてきた取引要求電文のようにして、テスト用勘定系へ送信する。
【0040】
テスト用勘定系は、テスト用GWシステムから送信された取引要求電文を受信すると、受信した取引要求電文の内容に基づいて、実際の運用に即した処理を実行し、取引応答電文をテスト用GWシステムに送信する。テスト用GWシステムは、テスト用勘定系からの取引応答電文を受信すると、GWシステム1に送信することなく、これを破棄する。
【0041】
このように、GWシステム1の機能を利用して、実際の業務に支障なく、テスト用勘定系システムのデグレード確認テストを実施することが可能になる。
【0042】
以上のように、本実施形態のGWシステム1によれば、システム間の差異を吸収して、トランザクション連携やデータ中継等を容易に行うことが可能となる。また、GWシステム1における各機能部(業務処理部10、通信部20、メッセージルータ部30)は、主として、電文の受信をイベントとして各処理を実行する(いわゆるメッセージドリブン方式)。したがって、様々なサブシステム間との接続についても柔軟に対応することが可能である。
【0043】
また、業務処理部10及び通信部20において、その処理内容がノード単位で管理され、メッセージルータ部30は、定義ファイルを使用して電文を解析し、その解析内容と、ノード情報ファイルの内容と、に基づいて、電文の振り分け(転送先ノードの決定)を行う。このような定義ファイルやノード情報ファイルの内容は、簡単なユーザI/Fを使用して容易に変更できるため、転送ルールの変更やトラフィックの増加等に対して柔軟な対応ができ、拡張性に優れる。
【0044】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は勿論可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態では、GWシステム1を金融機関のシステムに適用する例を説明したが、本発明の適用範囲に限定はなく、官公庁や通信事業者で構築されるシステム等、高機能で拡張性に優れたゲートウェイシステムが必要となるあらゆるシステムに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 ゲートウェイ(GW)システム
10 業務処理部
20 通信部
30 メッセージルータ部
100 処理ノード
200 通信ノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信手段と、メッセージルータ手段と、業務処理手段と、を備え、複数のシステム間のデータ連携を行うゲートウェイシステムであって、
前記通信手段は、通信対象システムから送信されたデータを受信すると、該データに基づいたメッセージを前記メッセージルータ手段に送信し、前記メッセージルータ手段から送信されたメッセージを受信すると、該メッセージに基づいたデータを対応する前記通信対象システムに送信し、
前記業務処理手段は、前記メッセージルータ手段から送信されたメッセージを受信すると、当該メッセージの内容に基づいた所定処理を実行し、
前記メッセージルータ手段は、前記通信手段又は前記業務処理手段から送信されたメッセージを受信すると、当該メッセージの内容を解析し、その解析結果に基づいて、処理内容を指定したメッセージを前記通信手段又は前記業務処理手段に送信する、
ことを特徴とするゲートウェイシステム。
【請求項2】
前記業務処理手段は、実行し得る複数の処理内容をそれぞれ別個の処理ノードとして管理し、
前記通信手段は、各通信対象システム毎に特有のデータ通信制御処理をそれぞれ別個の通信ノードとして管理し、
前記メッセージルータ手段は、前記通信手段又は前記業務処理手段から送信されたメッセージを受信すると、当該メッセージから所定の情報を振分情報として抽出し、この抽出した振分情報に基づいて、何れか一の前記通信ノード又は前記処理ノードを決定し、決定した前記通信ノード又は前記処理ノードを指定したメッセージを前記通信手段又は前記業務処理手段に送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載のゲートウェイシステム。
【請求項3】
前記メッセージルータ手段は、前記通信手段又は前記業務処理手段から送信されたメッセージの所定領域に含まれる情報を前記振分情報として抽出する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のゲートウェイシステム。
【請求項4】
前記メッセージルータ手段は、メッセージ内における前記振分情報の格納領域についての情報が示された定義ファイルの内容に従って、前記メッセージから振分情報を抽出する、
ことを特徴とする請求項3に記載のゲートウェイシステム。
【請求項5】
前記定義ファイルがテキスト形式のファイルである、
ことを特徴とする請求項4に記載のゲートウェイシステム。
【請求項6】
前記メッセージルータ手段は、前記振分情報と、前記通信ノード及び前記処理ノードについての情報が格納された1又は複数のノード情報ファイルの内容と、に基づいて、何れか一の前記通信ノード又は前記処理ノードを決定する、
ことを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載のゲートウェイシステム。
【請求項7】
前記ノード情報ファイルがテキスト形式のファイルである、
ことを特徴とする請求項6に記載のゲートウェイシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−239494(P2010−239494A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86701(P2009−86701)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000213301)中部日本電気ソフトウェア株式会社 (56)
【Fターム(参考)】