説明

ゲートウェイ装置およびデータ送信方法

【課題】セキュリティを確保しつつ、音声データのみの折り返し機能を安価に実装可能なゲートウェイ装置を得ること。
【解決手段】個別の端末毎に独立したVoIP機能を持ち、配下端末同士で音声データの通信が発生した場合に、呼状態と音声データの通信に使用する通話リソース情報とを監視するユーザ用VoIP機能部8−1、8−2、…、8−Nと、音声データの通信を行う配下端末同士の通話リソース情報を、VLANにより特定されるMACアドレスと関連付けて管理するユーザ間連携機能部7と、ユーザ間連携機能部7で管理されている通話リソース情報と宛先および送信元の端末の通話リソース情報が一致する音声データを送信元の端末から受信した場合、受信した音声データのMACアドレスを関連付けて管理されているMACアドレスに書き換え、宛先の端末へ送信する宛先MAC変換機能部13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のユーザを収容するマルチユーザ対応のゲートウェイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
データ通信技術の発展により、電話等のアプリケーションで使用される音声通信は、回線交換からパケット交換を使用した伝送へ変化してきた。NGN(Next Generation Network)は、インターネットプロトコルを用いたパケット交換技術で電話網を再構築したものであり、各通信キャリアはNGNを使って電話等のサービスをユーザに提供している。インターネットプロトコルを使用した電話の技術はVoIP(Voice over IP(Internet Protocol))と呼ばれ、VoIPの呼制御プロトコルとして最も多く利用されているのはSIP(Session Initiation Protocol)である。SIPは、主にUDP(User Datagram Protocol)上で使用されるテキストベースのプロトコルであり、HTTP等の他のテキストベースのプロトコルと親和性が良い。
【0003】
ホームゲートウェイ(宅内通信機器)はアナログ電話を収容し、SIPを用いて電話機能を実現する一方で、LAN(Local Area Network)側ネットワークに収容されたSIP対応のIP電話に対しても電話機能を提供できる。現在のホームゲートウェイは家庭毎や小規模なオフィスでの使用を前提としているが、今後はCPUの高性能化、各種デバイスの高機能化により、複数のユーザを収容可能になると予想される。このようなゲートウェイ装置は、複数の家庭やオフィスを収容するが、セキュリティ保護の観点から各ユーザ間のトラヒックを分離することが重要である。一般的にゲートウェイ装置はL2スイッチを実装し、L2スイッチでLAN側ネットワークを構成している。L2スイッチでトラヒック分離を実現するには、VLAN(Virtual LAN)を使用することが必要となる。VLANは、各ユーザに個別にVLAN−IDを割り当て、L2スイッチをスイッチング動作させ、他のユーザとのトラヒックを分離する。
【0004】
複数のユーザを収容するゲートウェイで従来のホームゲートウェイ機能をユーザ毎に適用する場合には、ユーザ毎に異なる電話用のIPアドレスが割り当てられ、異なるユーザ間の電話では、音声データは、ゲートウェイからWAN(Wide Area Network)側に出力され、エッジルータで折り返されて再度ゲートウェイに入力され、通信相手のユーザに対して転送されることになる。音声データは、ゲートウェイのWAN側インタフェースとエッジルータ間を往復するが、ゲートウェイからWAN側へ出力せずに通話先のユーザへ折り返しが可能であればトラヒックを削減でき帯域の有効利用が可能になる。
【0005】
例えば、下記特許文献1では、ゲートウェイの上位に設置されるL2スイッチにおいて、この折り返しを実現する技術が開示されている。L2スイッチにおいてSIPパケットの内容を覗き見し、SIPにより交渉される音声データのフローを特定することで、特定した音声フローのMAC(Media Access Control)アドレスをL2スイッチ内で変換して、通信相手が繋がっているポートに出力する。また、下記特許文献2では、従来のNAT(Network Address Translation)機能を持つゲートウェイにて折り返しを実現する技術が開示されている。同一ゲートウェイ配下にある端末間の通信は、ゲートウェイ装置にSIPサーバから指示を出し折り返しを実現する方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4680942号公報
【特許文献2】特開2005−72817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の技術(特許文献1)によれば、L2スイッチにH/W的なSIPの覗き見機能や音声データの折り返し機能の実装が必要となり、製品コストがかさむ。ゲートウェイのような宅内通信機器は、ネットワーク内に設置される装置数が上位のL2スイッチよりも多いため、低コスト化が求められる。そのため、S/W的な機能の追加で実現できることが望ましいが、L2スイッチへの機能追加ではS/W的な機能追加で対応できない、という問題があった。
【0008】
また、上記従来の技術(特許文献2)によれば、プライベートアドレス間の通信は直接端末間で通信が可能になるように制御が行われる。そのため、音声トラヒックだけを折り返すことができず、その他の通信も他の端末方向へ折り返されてしまい、他のユーザのデータが転送されてしまう、という問題があった。例えば、直接端末間で通信ができるようにするためには、端末間で直接アドレス解決ができるようにする必要があり、IPアドレスとMACアドレスの対応を解決できる環境が必要である。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、セキュリティを確保しつつ、音声データのみの折り返し機能を安価に実装可能なゲートウェイ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、配下端末に重複しないIPアドレスを配布し、VLANにより分離された複数のユーザを収容するゲートウェイ装置であって、個別の端末毎に独立したVoIP機能を持ち、配下端末同士で音声データの通信が発生した場合に、呼状態と、音声データの通信に使用するIPアドレスおよびポート番号を示す通話リソース情報と、を監視するVoIP手段と、音声データの通信を行う配下端末同士の通話リソース情報を、前記VLANにより特定されるMACアドレスと関連付けて管理するユーザ間連携手段と、前記ユーザ間連携手段で管理されている通話リソース情報と宛先および送信元の端末の通話リソース情報が一致する音声データを送信元の端末から受信した場合、受信した音声データのMACアドレスを関連付けて管理されているMACアドレスに書き換え、MACアドレス書き換え後の音声データを宛先の端末へ送信する宛先MAC変換手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セキュリティを確保しつつ、音声データのみの折り返し機能を安価に実装できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施の形態1のゲートウェイ装置の構成例を示す図である。
【図2】図2は、ゲートウェイ装置を含むその周辺機器のシステム構成例を示す図である。
【図3】図3は、SIP端末、ゲートウェイ装置、SIPサーバ間のSIPによるシグナリングとゲートウェイ装置での処理を示すシーケンス図である。
【図4】図4は、宛先MAC変換機能部が管理する宛先MAC変換テーブルの内容を示す図である。
【図5】図5は、実施の形態2のゲートウェイ装置におけるL2制御部の構成例を示す図である。
【図6】図6は、実施の形態3のゲートウェイ装置におけるL2制御部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかるゲートウェイ装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係るゲートウェイ装置の構成例を示す図である。ゲートウェイ装置1は、WAN(Wide Area Network)インタフェース部2と、ゲートウェイ機能部3と、L2SW部4と、LAN(Local Area Network)インタフェース部5と、を備える。
【0015】
WANインタフェース部2は、ゲートウェイ装置1がWANに接続するためのインタフェースである。
【0016】
ゲートウェイ機能部3は、WANインタフェース部2とLANインタフェース部5とを、L2SW部4経由で相互接続する。また、ゲートウェイ機能部3は、VoIP(Voice over IP(Internet Protocol))制御機能部6と、ルータ機能部9と、を備える。
【0017】
VoIP制御機能部6は、各ユーザにVoIPサービスを提供するために必要な機能が実装されている。また、VoIP制御機能部6は、ユーザ間の通信を検出し、折り返しを検出するためのデータを管理するユーザ間連携機能部7と、ユーザ毎のVoIPサービスを提供するユーザ用VoIP機能部8−1、8−2、…、8−N(Nは2以上の整数)と、を備える。なお、N=2の場合はユーザ用VoIP機能部8−1、8−2となる。
【0018】
ルータ機能部9は、レイヤ3以上の制御を行うL3制御部10と、VLANを含むL2レベルの制御を行うL2制御部12と、を備える。
【0019】
L3制御部10は、ユーザ毎のユーザ用ルータ機能部11−1、11−2、…、11−Nを備える。ユーザ用ルータ機能部11−1、11−2、…、11−Nは、各ユーザに対応したルータ機能であり、入力されたパケットに対するルーチングやNAT(Network Address Translation)/NAPT(Network Address Port Translation)機能、およびFW(Firewall)機能を実装している。なお、N=2の場合はユーザ用ルータ機能部11−1、11−2となる。
【0020】
L2制御部12は、宛先MAC(Media Access Control)変換機能部13と、VLAN(Virtual LAN)制御機能部14と、を備える。宛先MAC変換機能部13は、登録されたフロー情報に一致するパケットに対して、宛先MACアドレスを書き換える。VLAN制御機能部14は、パケットの宛先MACアドレスから出力先VLANを決定する。
【0021】
L2SW部4は、VLANによるスイッチングを実現する。L2SW部4は、複数のLANインタフェース部5を備える。1ユーザに対して1つのVLANが定義され、各LANインタフェース部5には1つ以上のVLANが定義される。なお、LANインタフェース部5に複数のVLANが設定される場合には、さらに、ゲートウェイ装置1の外部にVLAN対応のL2スイッチを接続し、そのL2スイッチでVLANの出力先を分岐する。
【0022】
ゲートウェイ装置1では、配下の端末に対して、ユーザ間を跨った場合でも同一のIPアドレスを割り当てないことを前提としている。
【0023】
図2は、ゲートウェイ装置1を含むその周辺機器のシステム構成例を示す図である。ゲートウェイ装置1は、WANインタフェース部2でWAN20と接続する。WAN20にはエッジルータ30が設置され、エッジルータ30はSIP(Session Initiation Protocol)サーバ40と接続している。また、ゲートウェイ装置1のLANインタフェース部5には、各ユーザのSIP端末60−1〜60−3、およびSIP以外のインターネットアクセス用の端末70−1〜70−3が、HUB50−1〜50−3経由で接続されている。ここでは、一例として、ユーザ数が3の場合について説明するが、これに限定するものではない。
【0024】
各ユーザのSIP端末60−1〜60−3は、ゲートウェイ装置1に対しREGISTERメッセージを送信し、ゲートウェイ装置1の各ユーザ用VoIP機能部8−1〜8−3を使ってWAN20内のSIPサーバ40にREGISTERメッセージによる登録を行う。SIP端末60−1〜60−3は、ゲートウェイ装置1をSIPサーバ40とみなして動作する。SIP端末60−1〜60−3からのメッセージを受信したゲートウェイ装置1は、受信したメッセージを自装置内で終端し、WAN20内のSIPサーバ40へ同様のメッセージを送信する。
【0025】
つづいて、ゲートウェイ装置1において、ユーザ間の音声通話を自装置で折り返し可能となるまでの動作について説明する。図3は、SIP端末60−1、60−2、ゲートウェイ装置1、およびSIPサーバ40間のSIPによるシグナリングとゲートウェイ装置1での処理を示すシーケンス図である。SIP端末60−1がSIP端末60−2に対して発呼する場合、まずはSIP端末60−1、60−2共にSIPサーバ40に登録が行なわれている必要がある。
【0026】
まず、SIP端末60−1は、ゲートウェイ装置1宛てにREGISTERメッセージを送信する(ステップS1)。SIP端末60−1はユーザ#1に対応するSIP端末であるため、ゲートウェイ装置1では、ユーザ用VoIP機能部8−1が、SIP端末60−1から受信したREGISTERメッセージを処理し、ゲートウェイ装置1発のREGISTERメッセージをSIPサーバ40宛てに送信する(ステップS2)。
【0027】
SIPサーバ40は、SIP端末60−1からの登録を受け付ける場合には、REGISTERメッセージに対応する200OKのメッセージをゲートウェイ装置1宛てに送信する(ステップS3)。
【0028】
200OKメッセージを受信したゲートウェイ装置1では、REGISTERメッセージと同様、ユーザ用VoIP機能部8−1が処理を行う。ユーザ用VoIP機能部8−1は、REGISTERメッセージおよび200OKメッセージの内容から、SIP端末60−1の待ち受け電話番号の情報等を把握できる。そのため、処理(1)として、ユーザ用VoIP機能部8−1は、SIP端末60−1の登録状態と電話番号等の登録情報をユーザ間連携機能部7へ通知し、ユーザ間連携機能部7は、通知された情報を記憶する(ステップS4)。
【0029】
そして、ユーザ用VoIP機能部8−1は、対応するSIP端末60−1に宛ててゲートウェイ装置1発の200OKメッセージを送信する(ステップS5)。
【0030】
同様に、SIP端末60−2は、ゲートウェイ装置1宛てにREGISTERメッセージを送信する(ステップS6)。SIP端末60−2はユーザ#2に対応するSIP端末であるため、ゲートウェイ装置1では、ユーザ用VoIP機能部8−2が、SIP端末60−2から受信したREGISTERメッセージを処理し、ゲートウェイ装置1発のREGISTERメッセージをSIPサーバ40宛てに送信する(ステップS7)。
【0031】
SIPサーバ40は、SIP端末60−2からの登録を受け付ける場合には、REGISTERメッセージに対応する200OKのメッセージをゲートウェイ装置1宛てに送信する(ステップS8)。
【0032】
200OKメッセージを受信したゲートウェイ装置1では、REGISTERメッセージと同様、ユーザ用VoIP機能部8−2が処理を行う。ユーザ用VoIP機能部8−2は、REGISTERメッセージおよび200OKメッセージの内容から、SIP端末60−2の待ち受け電話番号の情報等を把握できる。そのため、処理(2)として、ユーザ用VoIP機能部8−2は、SIP端末60−2の登録状態と電話番号等の登録情報をユーザ間連携機能部7へ通知し、ユーザ間連携機能部7は、通知された情報を記憶する(ステップS9)。
【0033】
そして、ユーザ用VoIP機能部8−2は、対応するSIP端末60−2に宛ててゲートウェイ装置1発の200OKメッセージを送信する(ステップS10)。
【0034】
SIP端末60−1がSIP端末60−2に対して電話の発呼を行う場合、まず、発呼側SIP端末60−1は、着呼側SIP端末60−2の情報を記載したINVITEメッセージをゲートウェイ装置1宛てに送信する(ステップS11)。発呼側SIP端末60−1からのINVITEを受信したゲートウェイ装置1では、ユーザ用VoIP機能部8−1が、処理(3)として、INVITEメッセージの内容から自装置配下のSIP端末宛ての通話なのか、自装置配下以外のSIP端末への通話なのかの判断を行う(ステップS12)。
【0035】
具体的に、ユーザ間連携機能部7において、ゲートウェイ装置1配下に接続され、現在登録状態となっているSIP端末の状態が管理されていることから、ユーザ用VoIP機能部8−1は、宛先の情報が現在ユーザ間連携機能部7に登録されているかどうかで判断することが可能である。自装置配下以外のSIP端末の場合には特に処理を行う必要はないが、自装置配下の端末宛ての通話であると判断した場合、ユーザ用VoIP機能部8−1は、このINVITEメッセージにより開設される呼はゲートウェイ装置1において折り返しを行う対象の呼であることを認識し、INVITEメッセージ内に記載された発呼中の呼の識別子とSIP端末60−1で通話に使用する音声データフローのIPアドレス、UDPポート番号といった通話リソース情報をユーザ間連携機能部7へ通知し、ユーザ間連携機能部7は、通知された通話リソース情報を記憶する。
【0036】
そして、ユーザ用VoIP機能部8−1は、SIPサーバ40に対して、対応するINVITEメッセージを生成し送信する(ステップS13)。
【0037】
SIPサーバ40は、宛先のSIP端末60−2を認識し、対応するINVITEメッセージをゲートウェイ装置1に転送する(ステップS14)。
【0038】
ゲートウェイ装置1では、SIP端末60−2に対応するユーザ用VoIP機能部8−2が、INVITEメッセージを受信する。処理(4)として、まず、ユーザ用VoIP機能部8−2は、呼の識別子がユーザ間連携機能部7に記憶されている呼の情報と一致することを確認し、この呼が折り返し対象の呼であることを確認する。ユーザ用VoIP機能部8−2は、この呼についてSIPサーバ40からINVITEメッセージが返ってきたことを認識し、ユーザ間連携機能部7へこの呼のシーケンスが進み、ユーザ#2がINVITEメッセージを受信したところまでシーケンスが進んだことを通知し、ユーザ間連携機能部7は、通知された情報を記憶する(ステップS15)。
【0039】
そして、ユーザ用VoIP機能部8−2は、対応するINVITEメッセージをSIP端末60−2に対して送信する(ステップS16)。これらの動作により、INVITEメッセージがSIP端末60−1からSIP端末60−2に届けられることになる。
【0040】
SIP端末60−2では、受信したINVITEメッセージに応答する場合、受信したINVITEメッセージに対応する200OKメッセージをゲートウェイ装置1に対して送信する(ステップS17)。この200OKメッセージを受信したゲートウェイ装置1では、ユーザ用VoIP機能部8−2が、呼の識別子の情報がユーザ間連携機能部7に記憶されている呼情報と一致することを確認し、この呼が折り返し対象の呼であることを確認する。
【0041】
具体的に、処理(5)として、ユーザ用VoIP機能部8−2は、折り返し対象の呼であると確認した場合、200OKメッセージ内に記載された発呼中の呼の識別子とSIP端末60−2で通話に使用する音声データフローのIPアドレス、UDP(User Datagram Protocol)ポート番号といった通話リソース情報をユーザ間連携機能部7へ通知し、ユーザ間連携機能部7は、通知された情報を記憶する(ステップS18)。
【0042】
これにより、ゲートウェイ装置1では、INVITEメッセージと200OKメッセージの内容からSIP端末60−1およびSIP端末60−2がそれぞれ通信で使おうとしているIPアドレスおよびUDPポート番号を、呼の識別子と紐づけられた状態でユーザ間連携機能部7に記憶したことになる。また、ユーザ用VoIP機能部8−2は、これと合わせてSIP端末60−2から200OKメッセージを受信したことをユーザ間連携機能部7へ通知し、ユーザ間連携機能部7は、通知に基づき呼の状態を更新する。
【0043】
そして、ユーザ用VoIP機能部8−2は、SIPサーバ40に対して200OKメッセージを送信する(ステップS19)。
【0044】
SIPサーバ40は、ユーザ用VoIP機能部8−2から200OKメッセージを受信すると、受信した200OKメッセージをゲートウェイ装置1のユーザ用VoIP機能部8−1へ送信する(ステップS20)。
【0045】
200OKメッセージを受信したゲートウェイ装置1では、処理(6)として、ユーザ用VoIP機能部8−1は、SIPサーバ40から200OKメッセージを受信したことをユーザ間連携機能部7へ通知し、ユーザ間連携機能部7は、通知に基づき呼の状態を更新する(ステップS21)。
【0046】
そして、ユーザ用VoIP機能部8−1は、SIP端末60−1に対して200OKメッセージを送信する(ステップS22)。
【0047】
200OKメッセージを受信したSIP端末60−1は、自ら発呼した呼の接続要求を通信相手先であるSIP端末60−2が受け入れたことを認識できるため、最後にACKメッセージをゲートウェイ装置1に対して送信する(ステップS23)。ゲートウェイ装置1では、ユーザ用VoIP機能部8−1が、ACKメッセージを受信する。そして、処理(7)として、ユーザ用VoIP機能部8−1は、受信したACKメッセージについて呼の識別子からこの呼が折り返し対象であることを認識し、ユーザ間連携機能部7に対して呼の識別子とACKメッセージの受信を通知し、ユーザ間連携機能部7は、通知に基づき呼の状態を更新する(ステップS24)。
【0048】
具体的に、ユーザ間連携機能部7は、呼接続がACKメッセージの受信まで完了したことを認識し、INVITEメッセージおよび200OKメッセージから収集した、SIP端末60−1、60−2が音声データ通信に使用するIPアドレスおよびUDPポート番号の情報を用いて折り返し用の設定情報を生成し、宛先MAC変換機能部13に設定する。
【0049】
そして、ユーザ用VoIP機能部8−1は、SIPサーバ40宛てにこれに対応するACKメッセージを送信する(ステップS25)。
【0050】
SIPサーバ40は、ゲートウェイ装置1のユーザ用VoIP機能部8−1から受信したACKメッセージを、ゲートウェイ装置1のユーザ用VoIP機能部8−2に転送する(ステップS26)。
【0051】
ゲートウェイ装置1では、処理(8)として、ACKメッセージを受信したユーザ用VoIP機能部8−2が、ACKメッセージの受信をユーザ間連携機能部7へ通知し、ユーザ間連携機能部7は、呼の状態を更新する(ステップS27)。
【0052】
そして、ユーザ用VoIP機能部8−2は、SIP端末60−2にACKメッセージを送信する(ステップS28)。
【0053】
これらの動作により、ゲートウェイ装置1では、SIPの呼接続シーケンスに連動して、音声データの折り返し通信が可能な呼については、宛先MAC変換機能部13に折り返し設定を実現することができる。
【0054】
図4は、宛先MAC変換機能部13が管理する宛先MAC変換テーブルの内容を示す図である。宛先MAC変換テーブルは、宛先IPアドレス81と、宛先ポート番号82と、送信元IPアドレス83と、送信元ポート番号84と、変換MACアドレス85と、から構成される。
【0055】
宛先IPアドレス81、宛先ポート番号82、送信元IPアドレス83、および送信元ポート番号84は、ユーザ間連携機能部7が、折り返し対象の音声データの情報に基づいて設定する。
【0056】
変換MACアドレス85は、宛先MAC変換機能部13が、受信した音声データの通話リソース情報、具体的には、宛先IPアドレス81、宛先ポート番号82、送信元IPアドレス83、および送信元ポート番号84に設定されている情報と一致したデータの宛先MACアドレスを書き換えるための情報である。例えば、宛先MAC変換機能部13は、受信したデータの宛先IPアドレス81が「IP#1」、宛先ポート番号82が「UDP#1」、送信元IPアドレス83が「IP#2」、送信元ポート番号84が「UDP#2」のときに、受信した音声データの宛先MACアドレスを「MAC#2」に書き換えて、宛先MACアドレスを書き換えた音声データを宛先となるSIP端末へ送信する。
【0057】
変換MACアドレス85はユーザ間連携機能部7から指定されないため、宛先MAC変換機能部13が、宛先IPアドレス81に対応するMACアドレスをVLAN制御機能部14で管理しているMACアドレステーブルから検索し、現在宛先IPアドレス81に対応付けられているMACアドレスを識別して登録する。
【0058】
宛先MAC変換テーブルでは、宛先IPアドレス81だけでなく、宛先ポート番号82、送信元IPアドレス83、送信元ポート番号84もMACアドレスの変換条件になっているため、宛先MAC変換機能部13は、フローが完全に一致したもののみMACアドレスの書き換えを行う。なお、図4に示すように、宛先MAC変換テーブルは片方向の音声データフロー毎に設定を行う必要があるため、宛先MAC変換機能部13では、1つの音声データフローに対して2つの宛先MAC変換テーブルを登録する必要がある。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態では、ゲートウェイ装置において、端末がSIPサーバに登録し、他の端末との間で通信を確立するまでの間で送受信されるメッセージから、音声通話を行う端末の組み合わせについて通話リソース情報を取得する。そして、取得した情報に該当する音声通話のデータについて、MACアドレスを変換し、MACアドレス変換後のデータを、WAN側へ送信せずに、通信相手の端末へ送信することとした。これにより、ゲートウェイ装置は、H/W的な構成を追加することなく、セキュリティを確保しつつ、音声データのみの折り返し機能を安価に実現することが可能となる。
【0060】
実施の形態2.
図5は、本実施の形態に係るゲートウェイ装置1aにおけるL2制御部12aの構成例を示す図である。L2制御部12aは、宛先MAC変換機能部13と、VLAN制御機能部14と、ダミーRTP(Real−time Transport Protocol)送受信機能部15と、を備える。なお、ゲートウェイ装置1aは、L2制御部12をL2制御部12aに置き換えた点が実施の形態1(ゲートウェイ装置1)と異なるが、その他の構成は同一である。
【0061】
ダミーRTP送受信機能部15は、折り返しを行う実際の音声データの代わりに、ダミーの音声データであるダミーRTPデータを生成し、各ユーザ用ルータ機能部を経由してWANインタフェース部2からWAN20へ送信する。
【0062】
ゲートウェイ装置1aでは、ダミーRTP送受信機能部15が、ダミーRTPデータを、通話中のSIP端末60−1に対応するユーザ用ルータ機能部11−1を経由してWAN20へ送信する。WAN20内では、エッジルータ30が、ダミーRTPデータを受信し、その後、ゲートウェイ装置1aへ折り返す。ゲートウェイ装置1aでは、SIP端末60−1の通信相手(SIP端末60−2)に対応するユーザ用ルータ機能部11−2が、ダミーRTPデータを受信し、L2制御部12aへ転送する。L2制御部12aでは、ダミーRTP送受信機能部15が、ダミーRTPデータを廃棄する。
【0063】
これにより、WAN20内で、接続するゲートウェイ装置1aからの音声データのトラヒックを監視し、音声データが一定時間停止している場合に、網側から呼の切断を行う機能が実装されているシステムにおいても、ゲートウェイ装置1aでは、ダミーRTPをある一定のレートで送信しづけることで、呼を継続することが可能となる。なお、送信レートは適用するシステムに応じて変更可能とする。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態では、ゲートウェイ装置から、WANに対してダミーRTPデータを送信することとした。これにより、WAN側でゲートウェイ装置の音声データのトラヒックを監視している場合においても、呼を継続することが可能となる。
【0065】
実施の形態3.
図6は、本実施の形態に係るゲートウェイ装置1bにおけるL2制御部12bの構成例を示す図である。L2制御部12bは、宛先MAC変換機能部13と、VLAN制御機能部14と、ダミーRTP送受信機能部15と、ダミーRTCP(RTP Control Protocol)送受信機能部16と、を備える。なお、ゲートウェイ装置1bは、L2制御部12をL2制御部12bに置き換えた点が実施の形態1(ゲートウェイ装置1)と異なるが、その他の構成は同一である。
【0066】
ダミーRTCP送受信機能部16は、音声データの折り返しを行う際に、音声データの制御用チャネルであるRTCPデータについて、配下のSIP端末から受信したRTCPはゲートウェイ装置1bで折り返し、WAN20には、ダミーRTCPデータを生成し、各ユーザ用ルータ機能部を経由してWANインタフェース部2からWAN20へ送信する。
【0067】
ゲートウェイ装置1bでは、ダミーRTCP送受信機能部16は、ダミーRTCPデータを、通話中のSIP端末60−1に対応するユーザ用ルータ機能部11−1を経由してWAN20へ送信する。WAN20内では、エッジルータ30が、ダミーRTCPデータを受信し、その後、ゲートウェイ装置1bへ折り返す。ゲートウェイ装置1bでは、SIP端末60−1の通信相手(SIP端末60−2)に対応するユーザ用ルータ機能部11−2が、ダミーRTCPデータを受信し、L2制御部12bへ転送する。L2制御部12bでは、ダミーRTCP送受信機能部16が、ダミーRTCPデータを廃棄する。
【0068】
これにより、WAN20内で、接続するゲートウェイ装置1bからのRTCPデータを監視し、網内の品質データとして利用しているシステムにおいても、ゲートウェイ装置1bからダミーRTCPデータを送信することにより、WAN20は、ダミーRTCPデータを受信することが可能となる。
【0069】
以上説明したように、本実施の形態では、ゲートウェイ装置から、WANに対してダミーRTCPデータを送信することとした。これにより、WANでは、ダミーRTCPデータを網内の品質データとして利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明にかかるゲートウェイ装置は、WANと複数の端末とを接続する装置に有用であり、特に、音声通話を行う場合に適している。
【符号の説明】
【0071】
1 ゲートウェイ装置
2 WANインタフェース部
3 ゲートウェイ機能部
4 L2SW部
5 LANインタフェース部
6 VoIP制御機能部
7 ユーザ間連携機能部
8−1、8−2、…、8−N ユーザ用VoIP機能部
9 ルータ機能部
10 L3制御部
11−1、11−2、…、11−N ユーザ用ルータ機能部
12、12a、12b L2制御部
13 宛先MAC変換機能部
14 VLAN制御機能部
15 ダミーRTP送受信機能部
16 ダミーRTCP送受信機能部
20 WAN
30 エッジルータ
40 SIPサーバ
50−1、50−2、50−3 HUB
60−1、60−2、60−3 SIP端末
70−1、70−2、70−3 端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配下端末に重複しないIP(Internet Protocol)アドレスを配布し、VLAN(Virtual Local Area Network)により分離された複数のユーザを収容するゲートウェイ装置であって、
個別の端末毎に独立したVoIP(Voice over IP)機能を持ち、配下端末同士で音声データの通信が発生した場合に、呼状態と、音声データの通信に使用するIPアドレスおよびポート番号を示す通話リソース情報と、を監視するVoIP手段と、
音声データの通信を行う配下端末同士の通話リソース情報を、前記VLANにより特定されるMAC(Media Access Control)アドレスと関連付けて管理するユーザ間連携手段と、
前記ユーザ間連携手段で管理されている通話リソース情報と宛先および送信元の端末の通話リソース情報が一致する音声データを送信元の端末から受信した場合、受信した音声データのMACアドレスを関連付けて管理されているMACアドレスに書き換え、MACアドレス書き換え後の音声データを宛先の端末へ送信する宛先MAC変換手段と、
を備えることを特徴とするゲートウェイ装置。
【請求項2】
さらに、
MACアドレスを書き換えて宛先の端末へ送信した音声データと同じ宛先および送信元の端末の通話リソース情報を持つダミー音声データを、WAN(Wide Area Network)との間で送受信するダミーRTP(Real−time Transport Protocol)送受信手段、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のゲートウェイ装置。
【請求項3】
さらに、
MACアドレスを書き換えて宛先の端末へ送信した音声データに対応するRTCPデータを自装置内で折り返し処理を行い、折り返したRTCP(RTP Control Protocol)データと同じ宛先および送信元の端末の通話リソース情報を持つダミーRTCPデータを、WANとの間で送受信するダミーRTCP送受信手段、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のゲートウェイ装置。
【請求項4】
配下端末に重複しないIP(Internet Protocol)アドレスを配布し、VLAN(Virtual Local Area Network)により分離された複数のユーザを収容するゲートウェイ装置におけるデータ送信方法であって、
配下端末同士で音声通信が発生した場合に、呼状態と、音声データの通信に使用するIPアドレスおよびポート番号を示す通話リソース情報と、を監視する監視ステップと、
前記監視ステップにおいて監視した結果である音声データの通信を行う配下端末同士の通話リソース情報を、前記VLANにより特定されるMAC(Media Access Control)アドレスと関連付けて管理する管理ステップと、
管理されている通話リソース情報と宛先および送信元の端末の通話リソース情報が一致する音声データを送信元の端末から受信した場合、受信した音声データのMACアドレスを関連付けて管理されているMACアドレスに書き換るMACアドレス書き換えステップと、
MACアドレス書き換え後の音声データを宛先の端末へ送信する送信ステップと、
を含むことを特徴とするデータ送信方法。
【請求項5】
さらに、
MACアドレスを書き換えて宛先の端末へ送信した音声データと同じ宛先および送信元の端末の通話リソース情報を持つダミー音声データを、WAN(Wide Area Network)との間で送受信するダミーRTP(Real−time Transport Protocol)送受信ステップ、
を含むことを特徴とする請求項4に記載のデータ送信方法。
【請求項6】
さらに、
MACアドレスを書き換えて宛先の端末へ送信した音声データに対応するRTCPデータを自装置内で折り返し処理を行い、折り返したRTCP(RTP Control Protocol)データと同じ宛先および送信元の端末の通話リソース情報を持つダミーRTCPデータを、WANとの間で送受信するダミーRTCP送受信ステップ、
を含むことを特徴とする請求項4または5に記載のデータ送信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−110626(P2013−110626A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254782(P2011−254782)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】