説明

ゲート化電流測定器

サンプル中の分析目的物の濃度を決定するためのセンサシステム、装置および方法が記載される。連続的な励起および緩和の複数の負荷サイクルを含むゲート化電流測定パルスシークエンスは短時間の分析時間をもたらしおよび/または分析の正確性および/または精度を改善することができる。開示されたゲート化電流測定パルスシークエンスは、ヘマトクリット効果、キャップ−ギャップ容積のばらつき、非定常状態条件、メディエータバックグラウンド、充填量不足、サンプルの温度変化および一組の較正定数によって生じる分析誤差を減少することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連する出願の参照
[001] 本出願は、「ゲート化電流測定器」と題した2005年7月20日付出願の米国仮出願番号60/700,787、および「バイオセンサ用の異常出力検出システム」と題した2006年5月8日付出願の米国仮出願番号60/746,771の利益を主張し、それらの全ての内容は本明細書中に参考文献として援用されている。
【0002】
本発明の背景
[002] 生物学的液体中の分析目的物の定量測定は、生理学的異常の診断および治療に有用である。例えば、血液などの生物学的液体中のグルコース濃度を決定することは、頻繁に血糖値をして、食事内容および/または薬物療法を制御しなければならない糖尿病患者個体にとって重要である。
【0003】
[003] このタイプの分析には、電気化学的システムが用いられてきている。分析の過程において、分析目的物は、酵素または同様の種との酸化還元反応を受けて電流を生じ、この電流を測定できるとともに目的分析物の濃度に相関させることができる。望まれる正確性および精度によって提供される一方、分析に必要な時間を減少させることにより、使用者にとっての実質的な利点を提供することができる。
【0004】
[004] 生物学的液体中の分析目的物を分析するための電気化学的センサシステムの一例には、測定装置およびセンサストリップが含まれる。センサストリップには、分析の過程で分析目的物と反応するとともに分析目的物から電子を移動する試薬、およびストリップを装置に接続する伝導体を通して電子を通す電極が含まれる。測定装置には、ストリップから電子を受け取る接点、および接点間で異なる電圧を印加する能力が含まれる。装置はセンサを通った電流を記録し、また電流値をサンプルの分析目的物含量の測定に変換することができる。これらのセンサシステムは1〜15マイクロリットル(μl)量などの、一滴の全血(WB)を分析することができる。
【0005】
[005] 卓上測定装置の例として、BAS Instruments社(米国インディアナ州West Lafayette)から販売されているBAS 100B Analyzer、CH Instruments社(米国テキサス州Austin)から販売されているCH Instrument Analyzer、Cypress Systems社(米国カンザス州Lawrence)から販売されているCypress Electrochemical Workstation、およびPrinceton Research Instruments社(米国ニュージャージー州Princeton)から販売されているEG&G Electrochemical Instrumentが含まれる。携帯型測定装置の例には、Bayer社のAscensia Breeze(登録商標)およびAscensia Elite(登録商標)メーターが含まれる。
【0006】
[006] センサストリップには、分析目的物が電気化学的な反応をする作用電極および逆の電気化学的反応をする対電極が含まれていてもよいため、電極間に電流を流すことが可能である。したがって、もし酸化が作用電極で起きる場合、還元が対電極で起こる。例えば、Fundamentals Of Analytical Chemistry第4版(D.A. Skoog and D.M. West; Philadelphia: Saunders College Publishing (1982), pp 304-341)を参照されたい。
【0007】
[007] センサストリップにはまた、測定装置に対して固定(non-variant)参照電位を提供する正確な参照電極が含まれていてもよい。複数の参照電極材が知られているが、分析溶液の水性環境中での混合物の不溶性のため、不溶の銀(Ag)および塩化銀(AgCl)の混合物が一般的である。参照電極はまた、対電極として用いられてもよい。このような参照電極−対電極の組み合わせを使用するセンサストリップは、米国特許番号5,820,551号に記載されている。
【0008】
[008] センサストリップは、米国特許番号6,531,040号、5,798,031号および5,120,420号に記載されているような、複数の技術を用いて絶縁物質上に電極を印刷することによって形成されてもよい。一層または複数層の試薬層は、作用電極および/または対電極などの、一種類または複数種類の電極をコーティングすることによって形成されてもよい。一つの態様では、作用電極および対電極が同じ組成物でコーティングされる場合のように、一種類以上の電極が同じ試薬層によって覆われてもよい。別の態様では、2003年10月24日付出願の米国仮出願番号60/513,817に記載された方法を用いて、異なる組成物を有する試薬層は、作用電極および対電極上に印刷するか、またはマイクロ固着させてもよい。したがって、作用電極上の試薬層は酵素、メディエータ、および結合剤を含んでもよく、対電極上の試薬層はメディエータと同じまたはメディエータと異なっていてもよい可溶性酸化還元種、および結合剤を含んでもよい。
【0009】
[009] 試薬層には、分析目的物と伝導体の間で電子移動を補助するメディエータまたは他の物質、並びに分析目的物の酸化または還元を促進するためのイオン化薬剤(ionizing agent)が含まれていてもよい。イオン化薬剤は、グルコースオキシダーゼまたはグルコースデヒドロゲナーゼなどの、全血サンプル中のグルコース酸化を触媒する、分析目的物に特異的な酵素であってもよい。試薬層にはまた、酵素とメディエータを同時に保持する結合剤が含まれていてもよい。以下の表Iは、特異的分析目的物とともに使用される酵素およびメディエータの通常の組み合わせを示す。
【0010】
【表1】

【0011】
[0010] 結合剤には、CMC(カルボキシルメチルセルロース)および/またはPEO(ポリエチレンオキシド)などの、さまざまなタイプおよび分子量の重合体が含まれてもよい。試薬同士を結合することに加えて、結合剤は、赤血球のふるい分けを補助することで、赤血球が電極表面に付着することを防ぐ働きをしてもよい。
【0012】
[0011] 生物学的液体中の分析目的物を分析するための従来の電気化学的センサシステムの例には、Abbott社(米国イリノイ州Abbott Park)から販売されているPrecision(登録商標)バイオセンサ、Roche社(米国インディアナ州Indianapolis)から販売されているAccucheck(登録商標)バイオセンサ、Lifescan社(米国カリフォルニア州Milpitas)から販売されているOneTouch Ultra(登録商標)バイオセンサが含まれる。
【0013】
[0012] 生物学的液体中の分析目的物を定量するのに用いられている一つの電気化学的方法は電量測定法である。例えば、Hellerらは全血グルコース測定の電量的方法(coulometric method)を、米国特許番号6,120,676号に記載している。電量測定法では、分析目的物の濃度は少容量中で分析目的物を完全に酸化すること、および酸化している時間に対する電流を積分することにより分析目的物の濃度を示す電荷を生成すること、によって定量される。換言すれば、電量測定法はセンサストリップ内のグルコース総量を捕捉するということである。
【0014】
[0013] 電量測定法の重要な側面は、電荷対時間の積分曲線の終点に向けて、電流が時間とともに変化する割合が実質的に一定になることで、定常状態条件をもたらすことである。電量的曲線の定常状態の部分は、比較的平らなプラトー領域を形成するため、相当する電流値の決定が可能となる。しかしながら、電量的方法は分析目的物の全体量が完全に転換し、定常状態条件に達することを必要とする。結果的に、この方法は時間がかかるものであること、またグルコースモニタリング製品などの電気化学的装置の使用者が必要とする迅速な結果を供給できない。電量測定法の別の問題は、正確な結果を出すには少容量のセンサセルが調整されなければならず、そのことは量産装置では困難なことである。
【0015】
[0014] 生物学的液体中の分析目的物を定量するのに用いられている他の電気化学的方法は、電流測定法である。電流測定法では、電流は、センサストリップの作用電極および対電極間に印加される定電位(電圧)としての読み取りパルス中に測定される。測定された電流を用いて、サンプル中の分析目的物を定量する。電流測定は電気化学的活性種、すなわち目的分析物が作用電極付近で酸化または還元される速度を計測する。バイオセンサのための電流測定方法の多数のバリエーションは、例えば米国特許番号5,620,579号、5,653,863号、6,153,069号および6,413,411号に記載されている。
【0016】
[0015] 従来の電流測定法での欠点は、電位が印加された後の、電流の非定常状態の性質である。時間に対する電流変化率は、初期に非常に急速であり、そして拡散過程の変化する性質によって、分析が進行するにつれて、遅くなる。電極表面での還元メディエータの消費速度が拡散速度と等しくなるまでは、定常状態の電流値は得られない。したがって、電流測定法では、定常状態の条件に達する前の一過性の期間に電流を測定することが、定常状態の時間に行われる測定よりも、不正確になる可能性がある。
【0017】
[0016] 「ヘマトクリット効果」は全血サンプル中のグルコース濃度を正確に分析することを妨害する。全血サンプルは赤血球(RB細胞)および血漿を含む。血漿は主に水分であるが、いくらかのタンパク質およびグルコースを含む。ヘマトクリットは、全血サンプルの総容積に対する赤血球成分の容積であり、また、しばしばパーセンテージで表される。全血サンプルは一般的にヘマトクリット値の範囲が20%から60%であり、約40%が平均値である。
【0018】
[0017] グルコース濃度を決定するための従来のセンサストリップでは、グルコースは酵素によって酸化されることができ、その後電子がメディエータに移動される。還元メディエータはその後、作用電極へと移動し、そこで電気化学的に酸化される。酸化されたメディエータ量は、センサストリップの作用電極および対電極間を流れる電流に相関していると考えられる。定量的には、作用電極で測定された電流は、メディエータの拡散係数に直接的に比例する。ヘマトクリット効果はこのプロセスを妨害し、その理由として赤血球が作用電極へのメディエータの拡散を妨害するためである。その後、ヘマトクリット効果はサンプル中のグルコース量と何ら関係することなしに、作用電極で測定された電流量に影響する。
【0019】
[0018] 様々な濃度の赤血球を有する全血サンプルは、測定において不正確性を引き起こす可能性がある。その理由として、赤血球が作用電極への拡散を防ぐため、センサは低濃度のメディエータと高濃度のメディエータを区別できない可能性があるためである。例えば、同濃度のグルコースを含んでいるが、20、40および60%のヘマトクリットを有する全血サンプルが分析された場合、1組の較正定数(例えば検量線の傾きおよび切片)に基づく従来のセンサシステムでは、3つの異なるグルコース測定値が記録されるであろう。グルコース濃度が同一であっても、このシステムでは20%のヘマトクリットサンプルが、60%のヘマトクリットサンプルよりも多いグルコースを含むと記録されると考えられ、これは赤血球が作用電極へのメディエータの拡散を妨害するためである。
【0020】
[0019] ヒトの正常なヘマトクリット値の範囲(赤血球濃度)は、20%から60%であり、およそ40%が中間値である。ヘマトクリットバイアスは、YSI社(米国オハイオ州Yellow Springs)から発売されているYSI 2300 STAT PLUS(登録商標)などの、基準機器によって得られた基準グルコース濃度と、異なるヘマトクリットレベルを含むサンプルのための携帯型センサシステムから得られた実験的グルコース測定値との間の差について表す。基準値と実験値との差は、特定の全血サンプル間での異なるヘマトクリット値から生じる。
【0021】
[0020] ヘマトクリット効果に加え、測定可能な種の濃度が分析目的物の濃度に相関していない場合、測定値の不正確性が起こりうる。例えば、分析目的物の酸化に応じて生じた還元メディエータ濃度をセンサシステムが決定する場合、分析目的物の酸化によって生じない他の還元メディエータにより、メディエータのバックグラウンドのために、本来の量よりも多くの分析目的物がサンプル中に存在していることを示す様なセンサシステムが導かれる。
【0022】
[0021] ヘマトクリット効果およびメディエータバックグラウンド効果に加え、他の因子もまたサンプル中の分析目的物の濃度を決定する従来の電気化学的センサシステムの能力の不正確性を引き起こす場合がある。一つの態様では、サンプルを含むセンサストリップの部分が、ストリップごとに異なる容積であってもよいため、これらの不正確性が起こりうる。不正確性はまた、十分なサンプルがキャップ−ギャップ(cap-gap)の容積に完全に充填するように提供されなかった場合、つまり充填量不足の状態でも起こりうる。他の態様では、不正確性はランダムな「ノイズ」により、およびセンサシステムがサンプルにおける温度変化を正確に決定する能力を欠く場合、測定値に導入される可能性がある。
【0023】
[0022] これらの欠点のうちの1つまたは複数を克服する試みとして、センサストリップの機械的なデザインや試薬選択についてだけではなく、ストリップに電位を印加する測定装置の様式に関しても、従来のセンサシステムは複数の技術を試みてきた。例えば、米国特許番号5,708,247号および5,951,836号で開示されているような、電流測定センサのためのヘマトクリット効果を減少する従来の方法はフィルタの使用を含み;またWO 01/57510で開示されているような、印加電流の極性を逆にすること;および米国特許番号5,628,890号で開示されているような、サンプル固有の抵抗性を最大にする方法によることである。
【0024】
[0023] 一般的にパルス法、パルスシークエンス、またはパルスサイクルと呼ばれる、電位をストリップに印加する複数の方法がこれまでに用いられ、決定された分析目的物の濃度の不正確性に焦点を当てている。例えば、米国特許番号4,897,162号では、パルス法は、混合されて三角形の波形となる、電位の上昇および低下の連続的な印加を含む。その上、WO 2004/053476および米国特許出願2003/0178322号および2003/0113933号は、極性も変化し、電位の上昇および低下の連続的な印加を含む、パルス法を記載している。
【0025】
[0024] 他の従来の方法は、特定の電極配置と、電極配置に適合させたパルスシークエンスとを組み合わせる。例えば、米国特許番号5,942,102号は、薄層セルによる特定の電極配置と、連続的パルスとを併用することで、対電極由来の反応産物が作用電極へと到達する。この組み合わせを使用して、電流変化対時間が一定になるまでの反応を操作し、したがって電位段階にかけて作用電極および対電極間でメディエータが移動するための、真の定常状態条件へと達する。これらの各方法は様々な利点と欠点を兼ね備えているが、どれも理想的ではない。
【0026】
[0025] 上述したように、電気化学的センサシステムの改良についての継続的な必要性があり、その中でも特に、分析目的物の濃度のより正確な測定値をより少ない時間で検出するための改良が必要であると考えられる。本発明のシステム、装置および方法は、従来のシステムに関する少なくとも1つの欠点を克服する。
【0027】
発明の概要
[0026] サンプルに180秒以内に少なくとも3回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスを印加することを含むサンプル中の分析目的物の濃度を決定する方法が提供される。負荷サイクルはそれぞれ、固定電位での励起および緩和を含んでもよく、励起のあいだには電流を記録することができる。パルスシークエンスは終端読み取りパルス(terminal read pulse)を含んでもよく、また作用電極上に拡散バリア層(diffusion barrier layer; DBL)を含んでいるセンサストリップに印加されてもよい。決定された分析目的物の濃度は、180秒以内に少なくとも3回の負荷サイクルを含んでいるパルスシークエンスを行わない同じ方法または異なる方法に比べ、メディエータバックグラウンドに起因しうるバイアスがより少ないと考えられる。一過性電流データの使用を通じて、定常状態条件がパルスシークエンスの負荷サイクルの励起部で達成しない場合に、分析目的物の濃度を決定することができる。データ処理は測定電流に適用され、サンプル中の分析目的物の濃度を決定することができる。
【0028】
[0027] 手持ち型の分析目的物測定装置は、サンプル中の分析目的物の濃度を決定するために提供される。装置には、センサストリップを挿入するのに適合したゲート化電流測定装置が含まれる。ゲート化電流測定装置には、電気回路を通したディスプレイと、電気的に連絡する少なくとも2ヶ所の装置の接点が含まれる。センサストリップには、少なくとも第一センサストリップおよび第二センサストリップの接点が含まれる。第一センサストリップの接点は、作用電極と電気的に連絡しており、また第二センサストリップの接点は伝導体を通して対電極と電気的に連絡している。第一試薬層は少なくとも1つの電極上にあり、また第一試薬層には、酸化還元酵素および少なくとも一種類の酸化還元対が含まれる。
【0029】
[0028] センサストリップを挿入するのに適合した手持ち型測定装置は、サンプル中の分析目的物の濃度を決定するために提供される。装置には、接点と、少なくとも1つのディスプレイと、接点およびディスプレイの間に電気的連絡が確立している電気回路とが含まれる。回路には、充電器およびプロセッサが含まれ、プロセッサはコンピュータで読み込み可能な記憶媒体と電気的に連絡している。媒体には、コンピュータで読み込み可能なソフトウェアコードが含まれ、このソフトウェアコードはプロセッサによって実行されたときに、充電器が接点間で180秒以内に少なくとも3回の負荷サイクルを含んでいるパルスシークエンスの実行を引き起こす。
【0030】
[0029] 測定されたサンプル中の分析目的物の濃度における、メディエータバックグラウンドに起因しうるバイアスを減少させる方法であって、サンプルに180秒以内に少なくとも3回の負荷サイクルを含んでいるパルスシークエンスを印加することを含む方法が提供される。
【0031】
[0030] サンプル中の分析目的物の濃度を決定するための、180秒以内に少なくとも3回の負荷サイクルを含んでいるパルスシークエンスの持続時間を決定する方法であって、少なくとも3回の負荷サイクルのあいだ記録される電流から決定される複数組の較正定数を決定すること、および決定されたサンプル中の分析目的物の濃度に応じたパルスシークエンスの持続時間を決定することが含まれる前記方法が提供される。
【0032】
[0031] 使用者に信号を出してセンサストリップに追加サンプルを加える方法であって、ゲート化電流測定パルスシークエンスのあいだ記録された電流から減衰定数を決定することにより、センサストリップが充填量不足かどうかを決定すること、およびストリップが充填量不足であれば使用者に信号を出してセンサストリップに追加サンプルを加えることが含まれる前記方法が提供される。
【0033】
[0032] センサストリップに含まれるサンプルの温度を決定する方法であって、ゲート化電流測定パルスシークエンスで記録された電流から減衰定数を決定すること、および減衰定数が温度と相関させることが含まれる前記方法が提供される。
【0034】
[0033] サンプル中の分析目的物の濃度を決定するためのパルスシークエンスの持続時間を決定する方法であって、ゲート化電流測定パルスシークエンスのあいだ記録された電流から決定された減衰定数により、センサストリップに含まれるサンプルの温度を決定することが含まれる前記方法が提供される。
【0035】
[0034] 以下の定義は、明細書および請求範囲の明確で一貫した理解を提供するために付加される。
[0035] 「分析目的物」という用語は、サンプル中に存在する一種類または複数種類の物質として定義される。分析は、サンプル中に存在する分析目的物の存在および/または濃度を決定する。
【0036】
[0036] 「サンプル」という用語は、未知量の分析目的物を含んでもよい組成物として定義される。通常、電気化学的分析に用いられるサンプルは液状であり、また好ましくは、サンプルは水溶性混合物である。サンプルは、血液、尿、または唾液などの、生物学的サンプルであってもよい。サンプルはまた、抽出物、希釈液、ろ過液、または再構成された沈殿などの、生物学的サンプルの誘導体であってもよい。
【0037】
[0037] 「測定可能種」という用語は、適切な電位において、電気化学的センサストリップの作用電極で酸化または還元されうる、電気化学的に活性のある種として定義される。測定可能種の例には、分析目的物、酸化還元酵素およびメディエータが含まれる。
【0038】
[0038] 「電流測定」という用語は、サンプル中の分析目的物の濃度が、ある電位で分析目的物の酸化率または還元速度を電気化学的に測定することによって決定される、分析方法として定義される。
【0039】
[0039] 「システム」または「センサシステム」という用語は、伝導体を通じて測定装置と電気的に連絡するセンサストリップとして定義され、測定装置はサンプル中の分析目的物の濃度を定量することができる。
【0040】
[0040] 「センサストリップ」という用語は、分析の過程でサンプルを含み、そしてサンプルと測定装置の間で電気的な連絡を提供する装置として定義される。サンプルを含むセンサストリップ部はしばしば、「キャップ−ギャップ」と呼ばれる。
【0041】
[0041] 「伝導体」という用語は、電気化学的分析中に安定的な、電気的に伝導性のある物質として定義される。
[0042] 「測定装置」という用語は、センサストリップの伝導体に電位を印加し、そして生じた電流を測定しうる、一種類または複数種類の電気的装置として定義される。測定装置にはまた、記録された電流値に応じて、一種類または複数種類の分析目的物の存在および/または濃度を決定する処理能力を含まれていてもよい。
【0042】
[0043] 「正確性」という用語は、センサストリップによって測定された分析目的物の量が、サンプル中の真の分析目的物の量にどれだけ近いかとして定義される。一つの態様では、正確性はバイアスとい用語で表されてもよい。
【0043】
[0044] 「精度」という用語は、同一のサンプルに対して分析目的物の複数回測定が、どれだけ近いかとして定義される。一つの態様では、精度は、複数回の測定間での広がりまたは分散という用語で表されてもよい。
【0044】
[0045] 「酸化還元反応」という用語は、少なくとも1つの電子が最初の種から次の種へと移動することを含む、2つの種の間での化学反応として定義される。したがって、酸化還元反応には酸化および還元が含まれる。反応の酸化半電池は、最初の種による少なくとも1つの電子の損失を含み、一方、還元半電池は、二番目の種へ少なくとも1つの電子の添加を含む。酸化された種のイオン電荷は、除去された電子数と等しい量によって、より正になる。同様に、還元された種のイオン電荷は、得た電子数と等しい量によって、より正ではなくなる。
【0045】
[0046] 「メディエータ」という用語は、酸化または還元されていてもよく、また1つ以上の電子を移動しうる物質として定義される。メディエータは、電気化学的分析での試薬であり、また関心の対象となる分析目的物ではないが、分析目的物の間接的な測定を提供する。単純化したシステムにおいては、メディエータは、分析目的物の酸化または還元に応じた酸化還元反応を受ける。酸化または還元されたメディエータはその後、センサストリップの作用電極で逆の反応を受け、そして最初の酸化数へと再生される。
【0046】
[0047] 「結合剤」という用語は、試薬との化学的適合性を持ちながら、試薬への物理的な支持体および封じ込めを供給する物質として定義される。
[0048] 「メディエータバックグラウンド」という用語は、内在の分析目的物の濃度に応答しない測定可能種に起因しうる、測定された分析目的物の濃度に導入されたバイアスとして定義される。
【0047】
[0049] 「充填量不足」という用語は、センサストリップに注入されたサンプル量が、正確な分析をするには不十分である場合として定義される。
[0050] 「酸化還元対」という用語は、異なる酸化数を持つ化学物質の2つの共役種として定義される。より高い酸化数を持つ種の還元は、より低い酸化数を持つ種を生じる。逆に、より低い酸化数を持つ種の酸化は、より高い酸化数を持つ種を生じる。
【0048】
[0051] 「酸化数」という用語は、原子などの化学種の形式イオン電荷として定義される。(III)などの高い酸化数はより強い正の電荷を帯びており、(II)などの低い酸化数は弱い正の電荷を帯びる。
【0049】
[0052] 「可溶性酸化還元種」という用語は、酸化または還元されうる物質であって、水1リットルあたり少なくとも1.0グラムのレベルで水(pH 7、25℃)に可溶性の物質として定義される。可溶性酸化還元種には、電場応答性(electro-active)有機分子、有機遷移金属錯体および遷移金属配位錯体が含まれる。「可溶性酸化還元種」という用語からは、金属元素および単独の金属イオン、特に水に不溶性またはわずかにしか溶けないものが除かれる。
【0050】
[0053] 「酸化還元酵素」という用語は、分析目的物の酸化または還元を促進する酵素として定義される。酸化還元酵素は試薬である。酸化還元酵素という用語には、酸素分子が電子受容体となる酸化反応を促進する「オキシダーゼ」;分析目的物が還元されそして酸素分子が分析目的物ではない還元反応を促進する「リダクターゼ」;および酸素分子が電子受容体ではない酸化反応を促進する「デヒドロゲナーゼ」が含まれる。例えば、改訂版のOxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(Smith編集、New York: Oxford University Press (1997) 、161, 476, 477および560ページ)を参照されたい。
【0051】
[0054] 「電場応答性有機分子」という用語は、酸化反応または還元反応を受けられる金属を欠失した有機分子として定義される。電場応答性有機分子はメディエータとして機能することができる。
【0052】
[0055] 「OTM錯体」ともいわれる「有機遷移金属錯体」(organotransition metal complex)という用語は、遷移金属が、シグマ結合(遷移金属にシグマ結合した炭素原子の形式電荷は−1)またはパイ結合(遷移金属にパイ結合した炭素原子の形式電荷は0)を通じて少なくとも1つの炭素原子と結合した錯体として定義される。例えば、フェロセンは、2つのシクロペンタジエニル(Cp)環を持つOTM錯体であり、それぞれは2ヶ所のパイ結合および1ヶ所のシグマ結合によって、5個の炭素原子を介して鉄中心に対して結合した。OTM錯体の他の例は、6個のシアノ配位子(6個の配位子の各形式電荷は−1)が、炭素原子を介して鉄中心にシグマ結合しているフェリシアン化物(III)およびその還元型であるフェロシアン化物(II)である。
【0053】
[0056] 「配位錯体」という用語は、正八面体型、または平面正方型などの、よく知られている配位構造を有する錯体として定義される。結合様式によって定義されているOTM錯体とは異なり、配位錯体は構造によって定義される。したがって、配位錯体はOTM錯体(前述したフェリシアン化物など)であってもよく、または窒素、硫黄、酸素およびリンを含むヘテロ原子のような、炭素以外の非金属原子が遷移金属中心に配位結合している錯体であってもよい。例えば、ルテニウムヘキサアミンは6個のNH3配位子(6個の配位子の各形式電荷は0)がルテニウム中心に配位結合している、よく知られた正八面体構造を有する配位錯体である。有機遷移金属錯体、配位錯体および遷移金属結合についてのより完全な考察は、Collmanら、Principles and Applications of Organotransition Metal Chemistry (1987) および Miessler & TarrのInorganic Chemistry (1991)で見られるであろう。
【0054】
[0057] 「定常状態」という用語は、独立した入力変数(電圧または時間)に関する電気化学的信号(電流)の変化が、±10または±5%以内などの、実質的に定常である場合として定義される。
【0055】
[0058] 「一過性ポイント」という用語は、伝導体表面への測定可能種の拡散の増加速度が、拡散の比較的一定な速度へと移行する場合での時間の関数として得られた電流値として定義される。一過性ポイント前に、電流は時間とともに急速に変化する。同様に、一過性ポイント後では、電流減衰速度は比較的一定になり、したがって測定可能種の伝導体表面への拡散の比較的一定な速度を反映する。
【0056】
[0059] 「比較的一定」という用語は、電流値または拡散速度の変化が±20、±10または±5%以内である場合として定義される。
[0060] 「平均初期厚」という用語は、液体サンプルを導入する前の層の平均厚についていう。平均という用語が用いられるのは、上部表面層が凸面と凹面を持ち、平坦ではないためである。
【0057】
[0061] 「酸化還元強度」(redox intensity; RI)という用語は、パルスシークエンスのための総励起時間および総緩和遅延時間の合計によって割り算された総励起時間として定義される。
【0058】
[0062] 「手持ち型装置」という用語は、人間の手で持つことができる装置として定義され、携帯型である。手持ち型装置の一例は、Bayer HealthCare LLC社(Elkhart, IN)から販売されているAscensia(登録商標)Elite血糖値モニタリングシステムに付随した測定装置である。
【0059】
[0063] 「上」(on)という用語は、「上方」(above)として定義され、そして記載された物質の配向に関連している。例えば、もし第一エレメントが第二エレメントの少なくとも一部の上に沈着する場合、第一エレメントは第二エレメントの「上に沈着」した、と言われる。他の例では、もし第一エレメントが第二エレメントの少なくとも一部の上方に存在する場合、第一エレメントは第二エレメント「上」にある、と言われる。「上」(on)という用語の使用は、記載される上部エレメントと下部エレメントとの間に物質が存在することを除外しない。例えば、第一エレメントは上部表面をコーティングされていてもよいが、第一エレメントの少なくとも一部の上のに第二エレメントおよびその上部表面コーティングは、第一エレメントの「上」(on)として記載されてもよい。したがって、「上」(on)という用語の使用は関連づけられる2つのエレメントが物理的に接触していることを意味してもよく、または意味しなくてもよい。
【0060】
発明の詳細な説明
[0082] 本発明は、複数の負荷サイクルを含むゲート化電流測定パルスシークエンスが、分析完了時間を減少させながら、分析の正確性および精度の改善を提供することができる、という知見を使用する。各負荷サイクルには、比較的定電圧で提供することができる励起が含まれる。各負荷サイクルにはまた、開回路によって提供することができる緩和が含まれる。本発明のパルスシークエンスは、付加的な遅延およびパルス、例えば試薬の再水和を提供するための「インキュベーション」遅延、電極を回復するための「バーンオフ」パルス、ならびにメディエータの酸化状態を回復するためのメディエータ再生パルスなど、の必要性を除去することにより、分析に必要とされる時間を減少させることができる。
【0061】
[0083] 短い分析時間であっても、本発明のゲート化電流測定パルスシークエンスは従来の方法と比較すると、正確性および/または精度を改善することができる。一つの態様では、ヘマトクリット効果により導入される正確性の誤差およびさまざまなキャップ−ギャップ容積により導入される精度の誤差は、本発明のパルスシークエンスと拡散バリア層とを組み合わせることによって減少させることができる。他の態様では、本発明によらなければ非定常状態のセンサ条件および/またはメディエータバックグラウンドによって生じる誤差を、減少させることができる。本発明のゲート化パルスシークエンスはまた、一過性電流の測定および定常状態の条件をシミュレートする輪郭特性の測定を可能にする。一過性電流特性を使用して、複数組の較正定数、充填量の不足の検出、および測定装置からの温度に依存する代わりにサンプル温度を検出する能力、を提供することができる。
【0062】
[0084] 図1Aおよび図1Bは、本発明で使用することができるセンサストリップ100を表す。図1Aは、孔130、凹面領域140および投入端部開口部150を含むフタ120によって、少なくとも一部が覆われたセンサ基板110を含む、組み立てられたセンサストリップ100の透視図である。部分的に封入された容積160(キャップ−ギャップ)は、基板110およびフタ120の間に形成される。本発明に適合性のある他のセンサストリップのデザインも使用することができ、これらは米国特許番号5,120,420 号および5,798,031号に記載されているようなものである。
【0063】
[0085] 分析を行う液体サンプルを、開口部150に導入することによってキャップ−ギャップ160に輸送することができる。容器内にたまっていた空気を孔130から排出しつつ、液体がキャップ−ギャップ160に充填される。キャップ−ギャップ160は、キャップ−ギャップ中の液体サンプルの保持を補助する組成物(非掲載)を含んでもよい。このような組成物の例には、カルボキシメチルセルロースおよびポリエチレングリコールなどの水分で膨張できる重合体;および、デキストランやポリアクリルアミドなどの多孔性重合体マトリクスが含まれる。
【0064】
[0086] 図1Bはフタ120を取り外した状態のセンサストリップ100の上面図を表す。伝導体170および180は、それぞれ、誘電体層190の下で、開口部150から作用電極175および対電極185に走行してもよい。一つの態様では、作用電極175および対電極185は、図に示されるように、実質的に同一面上にあってもよい。関連のある態様では、作用電極175および対電極185は、200または250μm以上の間隔で離れていてもよく、またフタ120の上部からは少なくとも100μm離れていてもよい。誘電体層190は、電極175、185を部分的に覆っていてもよく、また絶縁重合体などの適した誘電体物質から作成されてもよい。
【0065】
[0087] 対電極185は、センサストリップ100の作用電極175での電位とつり合っている。一つの態様では、この電位は、銀/塩化銀などの酸化還元対から対電極185を形成して、参照電極−対電極の組み合わせを提供することによって達成した参照電位であってもよい。他の態様では、電位は、キャップ−ギャップ160中に、炭素などの不活性物質から対電極185を形成することやフェリシアン化物などの可溶性酸化還元種を含ませることによってセンサシステムに提供されてもよい。あるいは、センサストリップ100は、第三伝導体および電極(非掲載)を提供して、センサシステムへ参照電位を提供してもよい。
【0066】
[0088] 図2は、作用電極175および対電極185の層構造を示す図1Bで表されたセンサストリップの断面図を表す。伝導体170および180は、基板110に直接載っていてもよい。表面伝導体層270および280は、それぞれ伝導体170および180上に固着されていてもいなくてもよい。表面伝導体層270および280は、同じ物質から作製されても、または異なる物質から作製されてもよい。
【0067】
[0089] 伝導体170、180および表面伝導体層270、280を形成するために用いられる一種類または複数種類の物質には、どのような伝導体が含まれていてもよい。好ましい伝導体は、非イオン化のものであり、それによりこの物質はサンプルの分析中に正味の酸化または正味の還元を受けない。伝導体170、180には、好ましくは、金属ペーストの薄層または、金、銀、白金、パラジウム、銅またはタングステンなどの金属が含まれる。表面伝導体層270、280には、好ましくは、炭素、金、白金、パラジウム、またはこれらの組み合わせが含まれる。もし表面伝導体層が伝導体上に存在しない場合、伝導体は非イオン化物質から作成されるのが好ましい。
【0068】
[0090] 表面伝導体物質は、金属箔固着、化学蒸着、スラリー固着などを含む、センサストリップの操作に適合性のあるどのような従来からの手段によって処理されてもよい。スラリー固着のケースでは、混合物を、米国特許番号5,798,031号に記載されるように、インクとして伝導体170、180に適用してもよい。
【0069】
[0091] 試薬層275および285は、それぞれ伝導体170および180に沈着されていてもよく、それらには試薬および場合によっては結合剤を含んでもよい。結合剤物質は、好ましくは、少なくとも部分的には水溶性の重合体物質である。結合剤として使用されるのに適した部分的水溶性重合体物質には、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシエチレンセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリリジンなどのポリアミノ酸、ポリスチレンスルホン酸、ゼラチン、アクリル酸、メタクリル酸、デンプン、これらの無水マレイン酸塩、これらの誘導体、およびこれらの組み合わせが含まれる。上述した結合剤物質の中でも、PEO、PVA、CMCおよびPVAが好ましく、現在のところさらにCMCとPEOが本発明にはより好ましい。
【0070】
[0092] 結合剤に加えて、試薬層275および285には、同じ試薬または異なる試薬が含まれてもよい。一つの態様では、第一層275に存在する試薬は、作用電極175との使用のために選抜されてもよく、一方で第二層285に存在する試薬は、対電極185との使用のために選抜されてもよい。例えば、層285中の試薬は、サンプルと伝導体180との間での電子の自由な流れを促進することができる。同様に、層275中の試薬は、分析目的物の反応を促進することができる。
【0071】
[0093] 試薬層275は、分析目的物、特に複雑な生物学的サンプル中のもの、に対するセンサシステムの特異性を増強しながら、分析目的物の反応を促進できる、分析目的物に特異的な酸化還元酵素を含んでもよい。いくつかの特異的な酸化還元酵素および対応する分析目的物の例は、以下の表IIに示される。
【0072】
【表2】

【0073】
現時点では、グルコース分析に特に好ましい酸化還元酵素には、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、これらの誘導体、またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0074】
[0094] 試薬層275にはまた、表面伝導体270および/または伝導体170へ、分析目的物反応の結果をより効率よく伝達するためのメディエータが含まれてもよい。メディエータの例には、OTM錯体、配位錯体および電気活性のある有機分子が含まれる。特異的な例は、フェロセン化合物、フェロシアン化物、フェリシアン化物、置換型または非置換型ピロロキノリンキノン(PQQ)の補酵素、置換型または非置換型3フェニルイミノ-3H-フェノチアジン類(PIPT)、3-フェニルイミノ-3H-フェノキサジン(PIPO)、置換型または非置換型ベンゾキノン類、置換型または非置換型ナフトキノン類、Nオキシド類、ニトロソ化合物、ヒドロキシルアミン類、オキシン類、フラビン類、フェナジン類、フェナジン誘導体、フェノチアジン類、インドフェノール類およびインダミン類が含まれる。試薬層に含まれてもよい、これらの、および他のメディエータは、米国特許番号5,653,863、5,520,786、4,746,607、3,791,988号および欧州特許番号0 354 441号および0 330 517号中に見いだすことができる。
【0075】
[0095] 現在のところ、グルコース分析に特に好ましいメディエータには、フェリシアン化物、ルテニウムヘキサアミン、PIPT、PIPOまたはこれらの組み合わせが含まれる。生物学的酸化還元システムに有用な電気化学的メディエータの概説は、Analytica Clinica Acta.誌140 巻(1982年)、1-18ページに見いだすことができる。
【0076】
[0096] 試薬層275、285は、印刷法、液体沈着法、またはインクジェット沈着法などの、どのような簡便な手段によって沈着されてもよい。一つの態様では、試薬層は印刷法によって沈着される。他の要因と同様に、印刷ブレードの角度は試薬層の厚みに逆に影響しうる。例えば、ブレードが基板110に対しておよそ82°の角度で移動した場合、試薬層はおよそ10μmの厚さとなる可能性がある。同様に、ブレード角が基板110に対しておよそ62°で用いられた場合、より厚めの30μmの試薬層が産生される。したがって、より小さいブレード角によって、より厚い試薬層を提供しうる。ブレード角に加え、スクリーンサイズやエマルジョンの組み合わせと同様に、適用される物質の粘性などの、その他の要因が、試薬層275、285の厚みに影響を及ぼしうる。
【0077】
[0097] 作用電極175にはまた、拡散バリア層(DBL)を含んでもよく、これは試薬層275に必須であるか、または図2で表されているような別の層290である。したがって、DBLは伝導体上の組み合わせ試薬/DBLとして、伝導体上の別の層として、または試薬層上の別の層として、形成することができる。作用電極175に別のDBL290が含まれる場合、試薬層275はDBL290上にあってもよく、またはなくてもよい。DBL290上にあるかわりに、試薬層275はセンサストリップ100のどの部分上にあってもよく、それによりサンプル中に試薬を可溶化することができる。例えば、試薬層175は、基板110上またはフタ120にあってもよい。
【0078】
[0098] DBLは、測定可能種が存在できる内部容積を有する多孔性スペースを提供する。DBLの孔を選抜することができ、それにより測定可能種はDBL中に拡散できるが、赤血球などの、物理的に大きなサンプル中の成分は実質的に除外される。従来のセンサストリップは、作用電極表面から赤血球をふるい分けるためのさまざまな物質を用いてきたが、DBLは内部多孔性スペースを提供することでサンプルから測定可能種の一部を含み、そしてその一部を分離する。
【0079】
[0099] 試薬層275に水溶性結合剤が含まれる場合には、励起を印加する前のサンプル中には可溶化しない結合剤のどの部分も、必須のDBLとして機能できる。DBL/試薬層の組み合わせの平均初期厚は、好ましくは30または23マイクロメートル(μm)未満であり、より好ましくは16μm未満である。現在のところ、DBL/試薬層の組み合わせの特に好ましい平均初期厚は、1から30μmまたは3から12μmである。DBL/試薬層の組み合わせの望ましい平均初期厚は、DBLから、図2由来の伝導体170の表面または表面伝導体270の表面などの伝導体表面への、測定可能種の拡散速度が比較的一定になった場合に基づき、特異的な励起長に関して選抜されてもよい。
【0080】
[00100] その上、DBLから伝導体表面への測定可能種の拡散速度が比較的一定になった場合、短い励起長とともに厚すぎるDBLを用いることは遅延しうる。例えば、0.5秒の緩和で間隔をあけた1秒間の励起を連続的に行うことを含む負荷サイクルを、30μmの平均初期厚を持つDBL/試薬層の組み合わせを使用する作用電極に印加する場合、好ましい拡散速度には、少なくとも6回の負荷サイクルが印加されるまで(10秒以内)には達しない。逆に、同じ負荷サイクルが、11μmの平均初期厚を持つDBL/試薬層の組み合わせを使用する作用電極に印加される場合、比較的一定な拡散速度に、2回目の励起後に(およそ2.5秒)に達しうる。したがって、所定の負荷サイクルでは、DBLの好ましい平均初期厚には上限がある。DBL厚、励起長、比較的一定の拡散速度に達するまでの時間の間の相関についての徹底的な処理は、2005年2月22日出願の「拡散バリア層内での濃度++++++0決定」と題した、米国仮出願番号60/655,180で見られる。
【0081】
[00101] 別のDBL290には、サンプル中に部分的に溶けるか、または徐々に溶けながら、望ましい孔スペースを提供するようないずれかの材料が含まれてもよい。一つの態様では、別のDBL290には、試薬を欠失している試薬結合剤物質が含まれてもよい。別のDBL290は少なくとも5μm、好ましくは8から25μm、そしてより好ましくは8から15μmの平均初期厚であってもよい。
【0082】
[00102] 図3は、サンプル312中の分析目的物322の有無、および場合によっては濃度を決定するための電気化学的分析300を表す。310では、サンプル312は、図1A、図1Bおよび図2で表されるセンサストリップ314に対して導入される。図2での275および/または285などの試薬層はサンプル312中へと溶け込み始めることで、反応が開始する。現在のところ、分析において、初期時間遅延、または試薬がサンプル312と反応するための「インキュベーション時間」を提供するのに有利であると考えられる。好ましくは、初期時間遅延は1から10秒であってもよい。初期時間遅延のより徹底的な処理は米国特許番号5,620,579号および5,653,863号中に見いだすことができる。
【0083】
[00103] 反応中、サンプル312に存在する分析目的物322の一部は、320中で、例えば、酸化還元酵素によって、化学的または生化学的に酸化または還元される。酸化または還元時に、電子は330中で分析目的物322およびメディエータ332間を輸送されてもされなくてもよい。
【0084】
[00104] 340では、320由来の荷電された分析目的物322、または330由来の荷電したメディエータ332であってもよい測定可能種342は、電気化学的に励起される(酸化される、または還元される)。例えば、サンプル312が、320中のグルコースオキシダーゼによって酸化されたグルコースを含む全血であり、それにより電子が移動し、330中のフェリシアン化物(III)メディエータをフェロシアン化物(II)へと還元する場合、340の励起は、作用電極においてフェロシアン化物からフェリシアン化物へと酸化する。このように、電子は選択的にグルコース分析目的物からセンサストリップの作用電極へと移動され、そこで測定装置によって検出されることができる。
【0085】
[00105] 励起340から生じた電流を、350での時間の関数として励起340のあいだ記録することができる。360では、サンプルは緩和を受ける。好ましくは、電流は緩和360のあいだは記録されない。
【0086】
[00106] 370では、励起340、記録350および緩和360を、180秒またはそれよりも短い時間枠内に、全部で少なくとも3回の負荷サイクルが行われるサイクルのあいだに、少なくとも2回繰り返す。記録された電流および時間の値を分析し、380におけるサンプル312中の分析目的物322の有無および/または濃度を決定できる。
【0087】
[00107] 電流測定センサシステムは、電流(アンペア数)がモニターされるあいだ、センサストリップへ電位(ボルト数)を印加し、測定可能種を励起する。従来の電流測定センサシステムは、例えば5秒から10秒の、連続的な読み取りパルス長のための電流を測定しながら、電位を維持することができる。従来の方法とは対照的に、電気化学的分析300に用いられる負荷サイクルは、連続的で、長い持続時間の読み取りパルスを、短い持続時間の複数の励起および緩和に、置き換える。
【0088】
[00108] 分析300は、ストリップのキャップ−ギャップ内に存在する測定可能種とは対照的に、540において作用電極で励起された測定可能種が実質的にDBLの内側からから引き出された場合、分析目的物測定の正確性および/または精度を上げることができる。図4Aおよび図4Bは、長い読み取りパルスおよび短い励起の印加のあいだの、表面伝導体430および別のDBL 405を有する作用電極400を表す。WBサンプルが作用電極400に適用される場合、赤血球420はDBL 405を覆う。サンプル中に存在する分析目的物は、DBL 405の外側に外部測定可能種410を形成する。外部測定可能種410の一部は、別のDBL 405中に拡散し、内部測定可能種415を提供する。
【0089】
[00109] 図4Aに示されるように、連続的な10秒間の読み取りパルスが作用電極400に印加される場合、外部測定可能種410および内部測定可能種415のどちらも、酸化状態の変化によって表面伝導体430で励起される。長い読み取りパルスの間、外部測定可能種410は、赤血球420が存在するサンプル領域を通じて、またDBL 405を通って表面伝導体430へ拡散する。読み取りパルスの間、赤血球420を介した外部測定可能種410の拡散は、分析にヘマトクリット効果を導入する。表面伝導体430で励起された測定可能種のかなりの部分が、DBL 420の外側から生じるため、DBLを有するセンサストリップに印加された長い読み取りパルスは、DBLを持たないストリップに印加された短い読み取りパルスへのヘマトクリット効果に関して、同様に作用できる。
【0090】
[00110] 逆に、図4Bは、DBL 405の外側の測定可能種410の励起を実質的に排除しながら、DBLを装備したセンサストリップ400に、短い励起を印加して、内部測定可能種415を励起する状況を表す。短い励起の間、測定可能種410は、DBL 405の外側に残留するか、またはDBLを通って表面伝導体430へと到達する様な拡散を実質的に行わない。このように、短い励起は、分析に対するヘマトクリット効果の影響を実質的に減少させることができる。
【0091】
[00111] 作用電極での励起の長さを調整することによって、DBLの外側の測定可能種を分析から実質的に排除しながら、DBLの内側の測定可能種を分析できる。作用電極の表面伝導体430と関連して、DBL 405の厚さおよび内部容積は、外部測定可能種410の拡散速度と関連して、内部測定可能種415の拡散速度を変化させると考えられる。
【0092】
[00112] DBLの内側の測定可能種は、DBLの外側での測定可能種よりも作用電極の伝導体へ異なる割合で拡散できるため、作用電極での励起の長さにより、どの測定可能種が優先的に分析されるかを選択することができる。分子的な観点からは同一であっても、DBLの内側および外側での異なる拡散速度は区別を可能とする。
【0093】
[00113] 特定の理論によって拘束されることは望ましくないが、DBLの内部容積から伝導体への測定可能種の拡散速度が比較的一定なのに対し、DBLの外側からDBL内への測定可能種の拡散速度は様々であると考えられている。DBLの外側の測定可能種のさまざまな拡散速度は、サンプル中に存在する赤血球および他の成分によって引き起こされる可能性があり、ヘマトクリット効果を生じる可能性がある。したがって、赤血球を含むサンプルの成分によって起こる分析誤差(バイアス)は、伝導体への比較的一定の拡散速度を有する測定可能種に分析を実質的に制限することによって減少させることができる。
【0094】
[00114] DBLの内側の測定可能種を選択的に分析することの他の利点は、さまざまなキャップ−ギャップ容積を有するセンサストリップによる測定の不正確性を減少することである。キャップ−ギャップ内に存在する実質的に全ての測定可能種が分析された場合に、もし読み取りパルスが時間を越えて連続すると、分析はもはやサンプル中の測定可能種の濃度を表せず、代わりにキャップ−ギャップ内の測定可能種の量を決定した;これは、非常に異なる測定値である。励起の長さがキャップ−ギャップの容積に対して長くなるにつれ、電流測定は内在の分析目的物の濃度ではなく、キャップ−ギャップの容積に依存するようになる。したがって、パルス長がキャップ−ギャップ内に存在する測定可能種を「オーバーシュート」する場合、長い読み取りパルスは、分析目的物の濃度に関して非常に不正確な測定値を生じかねない。
【0095】
[00115] 「拡散バリア層中での濃度測定」と題した2004年10月12日付出願の米国仮出願番号60/617,889で記載されるように、単一の短い読み取りパルスまたは励起を、測定可能種の励起をDBLに実質的に制限するように選択することができる。単一の励起が使用される場合、励起の長さおよびDBLの厚さは、好ましくは、励起のあいだにDBLから伝導体表面への測定可能種が比較的一定な拡散速度へと到達する。励起のあいだに比較的に一定な拡散速度へと到達しない場合、DBL中の測定可能種の濃度は、サンプル中の測定可能種の濃度を正確に表すことができず、したがって分析に悪影響を及ぼす。その上、単一の励起は、メディエータ由来のバックグラウンド信号を効率よく減少させることができない。
【0096】
[00116] 図3を参照すると、励起340、記録350および緩和360は、単一の負荷サイクルから構成され、180秒間またはそれより少ない時間のあいだ、そのサイクルを少なくとも3回センサストリップに対して印加印加することができる。より好ましくは、少なくとも4、6、8、10、14、18または22回の負荷サイクルが、独立的に選択される120、90、60、30、15、10または5秒間のあいだ印加される。一つの態様では、負荷サイクルは、5から60秒間のあいだ印加される。他の態様では、3から18回または3から10回の負荷サイクルを、30秒かそれ以内のあいだ印加することができる。他の態様では、4から8回の負荷サイクルを、3から16秒以内のあいだ印加することができる。
【0097】
[00117] 負荷サイクルの励起340の部分の間に印加される電位は、持続時間を通じて、好ましくは実質的に一定の電圧および極性で印加される。このことは、データ記録の間、複数の電位および/または極性を通じて電圧が変化されるか「掃引」される、従来の読み取りパルスと直接的に対比される。一つの態様では、励起340の持続時間は、多くて4秒または5秒であり、また好ましくは、3、2、1.5または1秒未満である。他の態様では、励起340の持続時間は、0.01から3秒、0.01から2秒または0.01から1.5秒である。より好ましくは、励起340の持続時間は0.1から1.2秒である。
【0098】
[00118] 励起340の後、360では、測定装置はセンサストリップ314を通じて回路を開くことで、システムの緩和を行うことができる。緩和360の間、励起340のあいだ存在する電流は、少なくとも半分、好ましくは10分の1、より好ましくはゼロまで、実質的に減少される。好ましくは、ゼロ電流状態は、開回路または実質的にゼロ電流をもたらすことが当業者に知られている他の方法によってもたらされる。パルスシークエンスの負荷サイクルの間、少なくとも3回の緩和を行うことができる。
【0099】
[00119] 一つの態様では、緩和360は、少なくとも10、5、3、2、1.5、1または0.5秒の持続時間である。他の態様では、緩和360は、0.1から3秒、0.1から2秒または0.1から1.5秒の持続時間である。より好ましくは、緩和360は0.2から1.5秒の持続時間で、また開回路によってもたらされる。
【0100】
[00120] 緩和360の間、イオン化薬剤は分析目的物と反応して、電位の効果なしに付加的な測定可能種を生じうる。したがって、グルコースオキシダーゼおよびフェリシアン化物メディエータを試薬として含むグルコースセンサシステムには、サンプルの分析目的物の濃度に応答性のある付加的なフェロシアン化物(還元メディエータ)を、緩和360の間電位からの干渉なしに産生することができる。
【0101】
[00121] 多くの従来型の分析方法は、読み取りパルスの持続時間の間、連続的に電圧を印加する。この印可電圧は固定電位を有してもよくあるいは、陽電位から陰電位へ掃引、または陽電位または陰電位から電位に関してゼロ電位へ掃引される電位を有してもよい。ゼロ相対電位であっても、これらの方法は、読み取りパルスの間、センサストリップから連続的に電流を引き出し、それが読み取りパルスを通じて電気化学的反応が連続することを可能とする。したがって、分析目的物の濃度に応じて測定可能種を産生する反応、および作用電極への測定可能種の拡散は、いずれも従来の読み取りパルスのゼロ電位部分のあいだの電流によって影響される。
【0102】
[00122] センサストリップに対して連続的に電圧を印加し、そして電位に関してゼロ電位であってもセンサストリップから電流を引き出す従来の方法は、本発明の緩和とは、基本的に異なる。本発明によって印加された複数の負荷サイクルはまた、本発明の複数の緩和のため、複数の測定での単一の長い持続時間パルスを用いている米国特許番号5,243,516号で開示された従来の方法とは、顕著に異なる。従来の方法とは対照的に、本発明のパルスシークエンスの各負荷サイクルは、緩和の間、非依存的な拡散および分析目的物反応時間を供給する。
【0103】
[00123] 図5Aから図5Eは、サンプルの導入後のセンサストリップに複数の負荷サイクルを印加した、ゲート化電流測定パルスシークエンスの5つの例を表す。これらの例では、方形波パルスが用いられた;しかしながら、センサシステムに適合する他の波形およびテストサンプルも用いられてもよい。図5C、図5Dは、同一の励起および開回路遅延時間を有する複数の負荷サイクルを含むパルスシークエンスを表す。
【0104】
[00124] 図5A、図5Bは、電圧を増加させる、より長い持続時間の終端読み取りパルス510に加え、同一の励起および開回路遅延時間を有する9回の負荷サイクルを含む、パルスシークエンスを表す。この終端読み取りパルスの電圧の増加は、高い酸化電位を有する種を検出する能力を提供する。終端読み取りパルスに関するさらに完全な考察は、「バイオセンサのためのコントロール溶液中の内部基準としての酸化可能種」と題した、2005年4月8日付出願の米国仮出願番号60/669,729中に見いだすことができる。
【0105】
[00125] 図5Aは、0.5秒間の励起が1秒間の開回路遅延によって隔てられ、0.357(5/14)の酸化還元強度(redox intensity: RI)を与える、9回の負荷サイクルのパルスシークエンスを表す。したがって、図5Aでは、二回目の負荷サイクルは励起部分520および緩和部分530とを有する。図5Bは、1秒間の励起が0.5秒間の開回路遅延によって隔てられ、0.69(10/14.5)のRIを与える、9回の負荷サイクルのパルスシークエンスを表す。図5Cは、1秒間の励起が1秒間の開回路遅延によって隔てられ、0.53(8/15)のRIを与える、7回の負荷サイクルパルスシークエンスを表す。7回の負荷サイクルのあいだ用いられたものと同一の持続時間および電圧の終端読み取りパルス540が印加された。図5Dは、1.5秒間の励起が1秒間の開回路遅延によって隔てられ、0.636(10.5/16.5)のRIを与える、6回の負荷サイクルパルスシークエンスを表す。図5Cのように、前の負荷サイクルのパルスと同一の持続時間および電位の終端読み取りパルス540が印加された。図5Eは、相対的に短い0.25秒の励起が相対的に長い1.5秒の緩和によって隔てられている、7回の負荷サイクルパルスシークエンスを表す。図5Eのパルスシークエンスは、最初の1秒のパルス550で開始し、1.25秒の終端読み取りパルスで終了することで、0.25(4/16)のRIを提供する。
【0106】
[00126] パルスシークエンスのためのRIが高いほど、メディエータによる分析へ導入されるバックグラウンドがより少なくなる。図5Aから図5Eで表されるパルスシークエンスは、測定可能種である還元メディエータを励起する(すなわち酸化する)ように設計された、酸化的パルスである。したがって、所定の時間内にセンサストリップに印加された酸化電流が大きくなるほど、記録される電流値に寄与する、分析目的物の酸化以外の経路によってメディエータが還元される機会が少なくなる。
【0107】
[00127] 以下の表IIIは、パルスシークエンス(a)および(b)の最後の4回の負荷サイクルの輪郭特性についての傾き、切片および傾きに対する切片の比を示す。パルスシークエンス(a)は:
9×(0.5秒オン + 1.0秒オフ)+ 0.5秒 = 14秒、RI = 5/14 = 0.357.
パルスシークエンス(b)は:
9×(1.0秒オン+ 0.375秒オフ)+ 1.0秒 = 13.375秒、 RI = 10/13.375 = 0.748
である。
【0108】
【表3】

【0109】
[00128] 傾きに対する切片の比は、メディエータに寄与するバックグラウンド信号の量の指標を提供し、比がより高いことは、メディエータバックグラウンドに寄与する記録信号の比率がより高いことを示している。したがって、シークエンス(a)および(b)のパルス周波数(励起数/総アッセイ秒数)は約0.7sec-1で同様であるが、パルスシークエンス(b)によって提供されたRIの増加は半分以下のバックグラウンド信号を提供する。組み合わせにおいては、パルスシークエンスの複数の励起は、メディエータの酸化状態を回復するための初期パルスの必要性を除去することができる。バックグラウンド電流は、メディエータによって影響されうるが、フェリシアン化物については、少なくとも0.01、0.3、0.6または1のRI値を有するパルスシークエンスが好ましく、0.1から0.8、0.2から0.7または0.4から0.6のRI値を有するパルスシークエンスがより好ましい。
【0110】
[00129] 図3を再度参照すると、350では、パルスシークエンスの各負荷サイクルのためセンサストリップ314の伝導体を介して通過する電流は、時間の関数として記録することができる。図6Aは、50、100、200、400および600 mg/dLのグルコースを含む、40%ヘマトクリットのWBサンプルについて、図5Bで表されたパルスシークエンスのために時間の関数としてプロットされた出力電流を表す。測定可能種の広範な酸化を生じる従来の長い持続時間の読み取りパルスの代わりに、各励起の後には、電流特性における小休止が続く。
【0111】
[00130] 図6Aで、出力電流が時間の関数としてプロットされる場合、各励起は、時間とともに減衰する、初期高電流値を有する一過性電流特性を生じる。好ましくは、負荷サイクルには、従来システムの読み取りパルスのあいだに必要とされるような、各励起のあいだで定常状態または緩やかな電流減衰条件に達しないようにシステムを抑制する、短く非依存的な励起および緩和が含まれる。従来の定常状態または緩やかに減衰する電流の代わりに、一過性(急速に減衰する)の電流値がゲート化電流測定パルスシークエンスから得られる。これは作用電極での測定可能種の電気化学的反応が、測定可能種が拡散によって作用電極に供給される速度よりも早いためである。
【0112】
[00131] 図6Bは、図6Aで示された、各一過性電流特性由来の最終電流値(すなわち各励起からの最終電流値)をつないだ輪郭特性を示す。輪郭特性が用いられることで、時間の経過につれて電流が変化することが実質的に定常的である、定常状態での従来システムから得られたデータをシミュレートすることができる。
【0113】
[00132] ゲート化電流測定パルスシークエンスから得られた一過性電流特性および派生した輪郭電流値は、単一の読み取りパルスを用いた従来の分析から得られた電流特性とは、基本的に異なる。単一の読み取りパルスから記録された電流が、単一の緩和/拡散から派生する一方、一過性電流の輪郭特性でのそれぞれの時間の点は、非依存的な緩和/拡散過程後の励起から始まる。さらに、励起の長さが増加するにしたがい、電流と分析目的物の濃度との間の相関は、しばしばヘマトクリット効果のために、減少する可能性がある。したがって、複数の、短い励起を用いた分析の正確性は、組み合わされた複数の励起の持続時間を有するより長い読み取りパルスを用いた分析と比べて、増加する可能性がある。
【0114】
[00133] 図6Aを再度参照すると、励起について得られた最終電流値が全ての励起について得られた最終電流値を表すとき、一過性ポイント605が電流特性に到達する。したがって、図6Aでは、一過性ポイントはおよそ5秒の時点で達している。各グルコース濃度において、DBL再水和に関する平衡を、各グルコース濃度での輪郭特性における最も高い電流値で達成することができる。したがって、図6Aの一過性電流が図6Bの輪郭電流へと変換されるとき、読みとり610(最高値)および620(低値)は、DBLへの測定可能種の拡散および600 mg/dLのグルコース濃度について約5秒でのDBLの再水和に関して、平衡に達したことを立証する。
【0115】
[00134] 比較的一定の拡散速度で記録された電流値は、それ以外の方法では再水和での多様性および試薬の拡散速度によって引き起こされうる不正確性を最小化する。したがって、いったん比較的一定の拡散速度に到達すると、記録された電流値は、測定可能種の濃度、そして従って分析目的物の濃度に、より正確に対応する。さらに、図6Bでは、完全な分析がおよそ7秒程度で完結することができ、これはいったん輪郭特性の最高電流値610がわかれば、その値を分析目的物の濃度に直接相関させることができるためである。以前に考察されたように、付加的なデータポイントを得て、メディエータに寄与するバックグラウンド誤差を減少することができる。
【0116】
[00135] 図6Cは、図5Eで表されたパルスシークエンスによって生成された一過性電流特性から調製された電流輪郭特性を表す。各0.25秒の励起のあいだ、電流値は、中央(〜0.125秒)および終わり(〜0.25秒)で記録され、それを使用して減衰定数を決定することができる。短い励起および相対的に長い緩和を伴うより長い初期パルスを用いて、分析を約4秒間内に完了することができる。
【0117】
[00136] 図6Dは、ゲート化電流測定パルスシークエンスを用いて、電気化学的システムについて入力信号に関連する出力信号を図解したグラフである。入力信号は、生物学的な液体のサンプルに印加された電位である。入力信号には、ポーリング入力信号およびアッセイ入力信号が含まれる。出力信号は、サンプルから生成された電流である。出力信号には、ポーリング出力信号およびアッセイ出力信号が含まれる。サンプルは、アッセイ入力信号に応じた全血中のグルコースの酸化還元反応からのアッセイ出力信号を生成する。入力および出力信号は、作用電極および対電極を有するバイオセンサのためのものであってもよい。付加的な電極および異なった形状のバイオセンサを含む、他のバイオセンサを使用することができる。他の生物学的な液体中の分析目的物の濃度を含む、他の分析目的物の濃度を測定することができる。初期に減衰する出力信号、そして全てのパルスで減衰する出力信号を含む、他の出力信号を生成することができる。
【0118】
[00137] 使用時には、生物学的液体のサンプルをバイオセンサ内に沈着させる。バイオセンサは、サンプルに対してポーリング信号を約−1.25秒から約0秒まで印加する。パルスは、約5-10 msのパルス幅および約125 msのパルス間隔を有する。バイオセンサは、ポーリング入力信号に応じたポーリング出力信号を生成する。バイオセンサは、ポーリング出力信号を測定する。バイオセンサは、アナログコンパレーターの入力に対してポーリング出力信号を提供するポテンショスタットを有してもよい。
【0119】
[00138] ポーリング出力信号がポーリング閾値と同程度かまたは高い場合、バイオセンサは、約0秒から約7秒まで電極に対してアッセイ入力信号を印加する。ポーリング閾値バルブは、約250 nAであってもよい。コンパレーターは、ポーリング出力信号をポーリング閾値と比較することができる。ポーリング出力信号がポーリング閾値を超えた時、コンパレーターの出力信号はアッセイ入力信号の開始を誘発することができる。
【0120】
[00139] アッセイ入力信号のあいだ、バイオセンサは、約1秒間で約400 mVの電位を持つ第一パルスを伴う負荷サイクルを、作用電極および対電極に対して印加する。第一パルスに引き続いて0.5秒の緩和を行い、それが本質的に開回路などであってもよい。第一パルス中のアッセイ出力信号または電流は、測定され、そして記憶装置に保存される。バイオセンサは、第二パルスを約1秒間、約200 mVで、作用電極および対電極に印加することができる。第二パルス中のアッセイ出力信号または電流は、測定され、そして記憶装置に保存される。バイオセンサは、アッセイ期間の終了までまたはバイオセンサにより必要とされる限り、アッセイ入力信号からのパルスを作用電極および対電極に対して印加し続ける。アッセイ期間は約7秒であってもよい。バイオセンサは、各パルスでのアッセイ出力信号または電流を測定し、そして保存できる。
【0121】
[00140] ポーリング入力信号は、設定した周波数または間隔でパルスを負荷し、またはオン・オフする、電流または電位などの電気信号である。サンプルはポーリング入力信号に応じたポーリング出力信号を生じる。このポーリング出力信号は、電流または電位などの、電気信号である。バイオセンサは、ポーリング出力信号をディスプレイ上に表示することができ、および/またはアッセイ出力信号を記憶装置に保存できる。バイオセンサは、ポーリング信号を印加して、サンプルが電極にいつ接触したかを検出することができる。バイオセンサは、他の方法および装置を用いて、サンプルが分析のためにいつ利用できるかを検出することができる。
【0122】
[00141] ポーリング入力信号は、ポーリングパルスのシークエンスがポーリング緩和によって隔てられた負荷サイクルである。ポーリングパルスの間、電気信号はオンである。ポーリング緩和の間、電気信号はオフである。オンには、電気信号が存在する場合の時間が含まれてもよい。オフには、電気信号が存在しない場合の時間が含まれてもよい。オフには、電気信号が存在するが本質的に振幅を有さない場合の時間が含まれなくてもよい。電気信号は、電気回路を閉じたり開いたりすることで、それぞれオンとオフの間を切り替えることができる。電気回路を、機械的、電気的などで開いたり閉じたりできる。
【0123】
[00142] ポーリング入力信号は一回または複数回のポーリングパルス間隔を有してもよい。ポーリングパルス間隔は、ポーリングパルスおよびポーリング緩和の合計である。各ポーリングパルスは、振幅およびポーリングパルス幅を有する。振幅は、電気信号の電位、電流などの強度を示す。振幅は、ポーリングパルスの間、変化してもよく、または一定であってもよい。ポーリングパルス幅は、ポーリングパルスの持続時間である。ポーリング入力信号におけるポーリングパルス幅は、変化してもよく、または実質的に同じであってもよい。各ポーリング緩和は、ポーリング緩和の持続時間である、ポーリング緩和幅を有する。ポーリング入力信号におけるポーリング緩和幅は、変化してもよく、または本質的に同じであってもよい。
【0124】
[00143] ポーリング入力信号は、約300ミリ秒(ms)未満のポーリングパルス幅、および約1秒未満のポーリングパルス間隔を有してもよい。ポーリング入力信号は、約100 ms未満のポーリングパルス幅、および約500 ms未満のポーリングパルス間隔を有してもよい。ポーリング入力信号は、約0.5 msから約75 msまでの範囲でのポーリングパルス幅、および約5 msから約300 msまでの範囲でのポーリングパルス間隔を有してもよい。ポーリング入力信号は、約1 msから約50 msまでの範囲でのポーリングパルス幅、および約10 msから約250 msまでの範囲でのポーリングパルス間隔を有してもよい。ポーリング入力信号は、約5 msのポーリングパルス幅、および約125 msのポーリングパルス間隔を有してもよい。ポーリング入力信号は、その他のポーリングパルス幅、およびポーリングパルス間隔を有してもよい。
【0125】
[00144] バイオセンサは、ポーリング期間のあいだ、ポーリング入力信号をサンプルに印加することができる。ポーリング期間は、約15分、5分、2分または1分未満であってもよい。ポーリング期間は、使用者がどのようにバイオセンサを用いるかによって、より長くしてもよい。ポーリング期間は、約0.5秒から約15分までの範囲であってもよい。ポーリング期間は、約5秒から約5分までの範囲であってもよい。ポーリング期間は、約10秒から約2分までの範囲であってもよい。ポーリング期間は、約20秒から約60秒までの範囲であってもよい。ポーリング期間は、約30秒から約40秒までの範囲であってもよい。ポーリング期間は、約200回、100回、50回または25回未満のパルス間隔を有してもよい。ポーリング期間は、約2回から約150回までのパルス間隔を有してもよい。ポーリング期間は、約5回から約50回までのパルス間隔を有してもよい。ポーリング期間は、約5回から約15回までのパルス間隔を有してもよい。ポーリング期間は、約10回のパルス間隔を有してもよい。他のポーリング期間を使用してもよい。
【0126】
[00145] バイオセンサは、ポーリング出力信号がポーリング閾値と同程度であるか、またはそれより高い場合に、アッセイ入力信号を印加する。ポーリング閾値は、第一パルスの始めに、予想されるアッセイ入力信号の約5パーセント(%)より高くてもよい。ポーリング閾値は、第一パルスの始めに、予想されるアッセイ入力信号の約15パーセント(%)より高くてもよい。ポーリング閾値は、第一パルスの始めに、予想されるアッセイ入力信号の約5パーセント(%)から約50%までの範囲であってもよい。他のポーリング閾値を使用してもよい。バイオセンサは、ポーリング出力信号がディスプレイ上のポーリング閾値と同程度かそれより高いことを示すことができる。
【0127】
[00146] アッセイ入力信号は、設定した周波数または間隔でパルスを負荷しまたはオン・オフする、電流または電位などの電気信号である。サンプルは、アッセイ入力信号に応じたアッセイ出力信号を生じる。アッセイ出力信号は、電流または電位などの電気信号である。
【0128】
[00147] アッセイ入力信号は、アッセイ緩和によって隔てられたアッセイパルスのシークエンスである。アッセイパルスの間、電気信号はオンである。アッセイ緩和の間、電気信号はオフである。オンには、電気信号が存在する場合の期間が含まれる。オフには、電気信号が存在しない場合の時間が含まれ、電気信号が存在するが本質的に振幅を有しない場合の時間は含まれない。電気信号は、電気回路を閉じたり開いたりすることで、それぞれオンとオフの間を切り替える。電気回路を、機械的、電気的などで開いたり閉じたりできる。
【0129】
[00148] アッセイ入力信号は、一回または複数回のアッセイパルス間隔を有してもよい。アッセイパルス間隔は、アッセイパルスとアッセイ緩和との合計である。各アッセイパルスは、振幅およびアッセイパルス幅を有する。振幅は、電気信号の電位、電流などの強度を示す。振幅は、アッセイパルスの間、変化してもよく、または一定であってもよい。アッセイパルス幅は、アッセイパルスの持続時間である。アッセイ入力信号でのアッセイパルス幅は、変化してもよく、または本質的に同じであってもよい。各アッセイ緩和は、アッセイ緩和の持続時間である、アッセイ緩和幅を有する。アッセイ入力信号におけるアッセイ緩和幅は変化してもよく、または本質的に同じであってもよい。
【0130】
[00149] アッセイ入力信号は、約5秒未満のアッセイパルス幅、および約15秒未満のアッセイパルス間隔を有してもよい。アッセイ入力信号は、約3、2、1.5または1秒未満のアッセイパルス幅、および約13、7、4、3、2.5または1.5秒未満のアッセイパルス間隔を有してもよい。アッセイ入力信号は、約0.1秒から約3秒までの範囲でのアッセイパルス幅、および約0.2秒から約6秒までの範囲でのアッセイパルス間隔を有してもよい。アッセイ入力信号は、約0.1秒から約2秒までの範囲でのアッセイパルス幅、および約0.2秒から約4秒までの範囲でのアッセイパルス間隔を有してもよい。アッセイ入力信号は、約0.1秒から約1.5秒までの範囲でのアッセイパルス幅、および約0.2秒から約3.5秒までの範囲でのアッセイパルス間隔を有してもよい。アッセイ入力信号は、約0.4秒から約1.2秒までの範囲でのアッセイパルス幅、および約0.6秒から約3.7秒までの範囲でのアッセイパルス間隔を有してもよい。アッセイ入力信号は、約0.5秒から約1.5秒までの範囲でのアッセイパルス幅、および約0.75秒から約2.0秒までの範囲でのアッセイパルス間隔を有してもよい。アッセイ入力信号は、約1秒のアッセイパルス幅、および約1.5秒のアッセイパルス間隔を有してもよい。アッセイ入力信号は、他のアッセイパルス幅、およびアッセイパルス間隔を有してもよい。
【0131】
[00150] バイオセンサは、アッセイ期間に、アッセイ入力信号をサンプルに印加する。アッセイ期間はポーリング期間と同じか、または異なる持続時間を有してもよい。アッセイ入力信号のアッセイ期間は、約180、120、90、60、30、15、10または5秒未満であってもよい。アッセイ期間は、約1秒から約100秒までの範囲であってもよい。アッセイ期間は、約1秒から約25秒までの範囲であってもよい。アッセイ期間は、約1秒から約10秒までの範囲であってもよい。アッセイ期間は、約2秒から約3秒までの範囲であってもよい。アッセイ期間は、約2.5秒であってもよい。アッセイ期間は、約50、25、20、15、10、8、6または4回未満のパルス間隔を有してもよい。アッセイ期間は、約2回から約150回までのパルス間隔を有してもよい。アッセイ期間は、約2回から約25回までのパルス間隔を有してもよい。アッセイ期間は、約2回から約15回までのパルス間隔を有してもよい。アッセイ期間は、約10回のパルス間隔を有してもよい。他のアッセイ期間が用いられてもよい。
【0132】
[00151] 図7Aおよび図7Bは、DBLが短い読み取りパルスと組み合わされる場合の、測定値の正確性の改善を表したグラフである。全血サンプルは、1:5の希釈率でフェロシアン化物と混合されて内在グルコース濃度を表し、そして1秒の読み取りパルスで測定された。したがって、最初20%、40%および60%のヘマトクリット値の全血サンプルを、16%、32%および48%のヘマトクリット値へと希釈した(これら3つのヘマトクリット値は20%の減少)。20%、40%および60%の線は、それぞれ16%、32%および48%のヘマトクリットを含む血液サンプルについての測定電流を表す。
【0133】
[00152] 図7Aは、ヘマトクリット効果およびDBLを含まないむき出しの伝導体センサストリップからの他の効果による不正確性を示す。この不正確性は、20%と60%のヘマトクリットの線の間での差として表され(総ヘマトクリットバイアススパン)、ヘマトクリット効果に寄与する最大の測定不正確性を表す。より小さいバイアス値は、より正確な性能を表す。同様の結果は、図4Aに関する上述の考察のように、DBLが長い読み取りパルスとともに用いられたときに観察された。
【0134】
[00153] 逆に、図7Bは、DBLが1秒間の読み取りパルスと組み合わされたときの、20%と60%の検量線の間の差の顕著な減少を示す。PEO重合体および10% KCl(試薬を除く)の別のDBLは、上述した図7Aで用いられるように伝導体上に印刷された。DBL/短い読み取りパルスに夜総バイアスヘマトクリットスパンは、DBLがない総バイアススパンよりも、ほぼ2/3少なかった(ほぼ1/3になった)。したがって、DBLと組み合わせた、複数の負荷サイクルを含むパルスシークエンスは、測定の正確性を有意に増加することができ、またメディエータバックグラウンドの望ましい減少をもたらすことができる。
【0135】
[00154] 図7Cおよび図7Dは、ゲート化電流の測定パルスシークエンスをDBLと組み合わせたときに得ることができるヘマトクリットバイアスの減少を表す。図7Cは、DBLが図5Eのパルスシークエンスと組み合わされ、また電流値が14.875秒または最終パルスから0.125秒で記録された場合、ヘマトクリット効果に寄与する測定値バイアスが±5%以内であることを示す。比較のため、図7Dは、16秒(最終パルスから1.25秒)での電流値を使用して、サンプルのグルコース濃度を測定する場合、バイアスは±15%へと増加することを立証する。したがって、励起の持続時間が長くなるにつれ、観察されるヘマトクリットバイアスが増える。
【0136】
[00155] ヘマトクリット効果およびメディエータバックグラウンド信号からの不正確性を減少させる本発明の能力に加え、各励起の一過性電流特性および生じた輪郭特性の組み合わせを使用して、センサシステムに複数組の較正定数を供給することができ、それにより分析の正確性が増加する。得られた較正定数の各組を使用して、サンプル中の測定可能種の特定濃度に、特定電流測定値を相関させることができる。したがって、一つの態様では、正確性の増加を、複数組の較正定数を用いて得られたグルコース値を平均化することによって得られることができる。
【0137】
[00156] 従来の電気化学的センサシステムは、通常、傾き及び切片などの、一組の較正定数を使用して、電流測定値をサンプル中の分析目的物の対応する濃度に変換する。しかしながら、一組の較正定数は、記録された電流から決定された分析目的物の濃度の不正確性を生じる可能性があるが、それはランダムなノイズが測定値に含まれるためである。
【0138】
[00157] 本発明のパルスシークエンスの各負荷サイクル内での固定時間における電流値を採用することによって、複数組の較正定数を確立することができる。図8は、図5Bで表されたパルスシークエンスがさまざまなグルコース濃度を含む全血サンプルに印加されたときの、8.5、10、11.5、13および14.5秒(負荷サイクル6-9および終端読み取りパルスの最初の部分)で記録された電流値の終点をプロットしたものである。これら5本の検量線それぞれは独立したものであり、そして少なくとも2つの方法で使用されることができる。
【0139】
[00158] 第一に、複数組の較正定数を使用して、望ましい正確性、精度およびアッセイ期間を得るためのパルスシークエンスの間に印加されるべき負荷サイクル数を決定できる。例えば、もし初めの3回の励起から得られた電流値が、150または200 mg/dL以上などの、高いグルコース濃度を示す場合、センサシステムは、約5.5秒で分析を終了することができ、その結果、分析に必要とされる時間がかなり短縮される。高いグルコース濃度における不精密さは、通常、より低いグルコース濃度での不精密さより少ないため、このような短縮は可能である。逆に、もし初めの3回の励起から得られた電流値が、150または100 mg/dL以下などの、低いグルコース濃度を示す場合、センサシステムは、分析を7秒以上、例えば8秒以上または10秒などに延長して、分析の正確性および/精度を増加することができる。
【0140】
[00159] 第二に、複数組の較正定数を使用して、平均による分析の正確性および/または精度を上げることができる。例えば、目標とするグルコース測定時間が11.5秒である場合、8.5、10および11.5秒での電流値を利用して、対応する検量線からの傾きおよび切片を用いてグルコース濃度を計算することができる;その結果、
G8.5 = (i8.5 - Int8.5)/Slope8.5、G10= (i10 - Int10)/Slope10,、およびG11.5 = (i11.5 - Int11.5)/Slope11.5
となる。理論上、これら3つのグルコース値は同値であるはずであり、ランダムな変動によってのみ異なるはずである。したがって、グルコース値G8.5、G10およびG11.5は平均化されてもよく、また(G8.5+ G10 + G11.5)/3で最終的なグルコース値が計算されてもよい。検量線から値を平均化することで、1/√3の割合でノイズの減少をすることができる。
【0141】
[00160] 図5Eで表されるものなど、相対的に短い励起および相対的に長い緩和を含むゲート化電流測定パルスシークエンスの予想外の利点は、較正を単純化できることである。一過性および輪郭特性から得ることができる複数組の較正定数が分析の正確性に利点をもたらすことができるが、図5Eで表されるものなどのパルスシークエンスは、一組の較正定数由来の複数組の較正定数を使用することで得られた分析と同様の正確性をもたらすことができる。特定の理論に拘束されることは意図しないが、この結果は、短い緩和に対して、相対的に長い緩和時間に寄与すると考えられる。長い緩和時間は、励起のあいだの測定可能種変換の平均速度が、DBLへの測定可能種拡散速度によって平衡化される状態をもたらすことができる。このように、複数組の較正定数は、一組へと分解することができ、また記録されたデータの分析目的物の濃度への変換は、分析目的物の濃度を決定する前に、記録された電流データを平均化するプロセスを実行することによって単純化することができる。
【0142】
[00161] 各励起の一過性電流特性および生じた輪郭特性の組み合わせを使用して、センサストリップがサンプルで充填量不足であり、したがって使用者に新たなサンプルをセンサストリップへ追加させることができるかどうかを決定することができる。作用電極および対電極に加えて、従来のセンサシステムは、第三の電極または電極対の使用を通して充填量不足の条件を決定することができる;しかしながら、第三の電極または電極対はセンサシステムに複雑性とコストを追加する。
【0143】
[00162] 従来の2電極システムは、分析が「失敗」であることを認識することができるが、分析が失敗した理由が充填量不足により生じたのか、あるいはセンサストリップの欠陥により生じたのかを見極めることはできない。充填量不足によって分析が失敗したかどうかを決定する能力、同一のセンサストリップに新たなサンプルを加えることにより、そして分析を繰り返すことにより修正することができ、したがって、良好なストリップを廃棄しなくて済むため、有益である。
【0144】
[00163] 図9Aは、図5Bで表されたパルスシークエンスによって得られた、10回の分析の一過性電流特性を表しており、各分析には2.0μLのサンプルをストリップに導入する異なるセンサストリップを用いる。充填速度および特定のセンサストリップのキャップ−ギャップ容積に依存してで、2.0μLのサンプルはストリップを充填するのに充分な場合もあれば、または不十分な場合もある。
【0145】
[00164] 図9Bでは、図9Aの一過性電流特性が時間の関数として減衰速度の輪郭特性へと変換された。一つの態様では、減衰速度は以下の式のいずれかで決定されたK定数として表されてもよい。
【式1】
【0146】

【0147】
式中の0.125、1.5、1.0という値は秒数である。その結果、減衰過程のK定数を用いて、図9Aの電流特性を図9Bの減衰定数特性へと変換することができる。
[00165] 図9Bは、充填量不足のセンサおよび正常に充填されたセンサ間での減衰特性、特に3から7秒の範囲で、実質的差異があることを立証する。充填量不足を、実際の減衰定数と以前に選択された値との間の差を比較することにより、減衰定数特性から決定することができる。例えば、図9Bに関して正常に充填されたセンサについては、上限として−0.1が選択される場合、3から5秒間での励起から決定された−0.1より低い値を有するK1定数は、正常に充填されたとして判断することができる。同様に、−0.1より高いK1値を有するセンサは、充填量不足と判断することができる。このように、充填量不足は、一過性電流特性から得られる減衰速度に応じて決定することができる。
【0148】
[00166] したがって、図9Bにおいて、シリーズ3および8として表されているセンサストリップは、十分に充填されているが、シリーズ1〜2、4〜7および9〜10として表されている8個のセンサストリップは充填量不足であった。このように、本発明のゲート化電流測定のパルスシークエンスは、二電極のセンサストリップで充填量不足を検出することができ、これは従来のセンサシステムについては第三電極が必要とされる機能である。さらに、充填量不足の決定が10秒未満でなされ、発光装置またはディスプレイへ信号を伝達するなどによって、使用者にストリップへより多くのサンプルを追加するように信号を発する時間をもたらす。
【0149】
[00167] 充填量不足を一過性電流特性から決定することができるため、分析目的物の有無および/または濃度を決定するのに用いられる同じ電流値を使用して、充填量不足の状態が存在するかどうかを決定することができる。したがって、充填量不足は、濃度決定に必要とされる持続時間を超える、電気化学的分析の持続時間を延長することなしに、パルスシークエンスの複数の負荷サイクルのあいだに決定されることができる。
【0150】
[00168] 各励起の一過性電流特性および生じた輪郭特性の組み合わせを使用して、サンプルの温度変化が分析に悪影響を及ぼす可能性があるかどうかを決定することができる。従来のセンサシステムには、測定装置内またはストリップ上にそれぞれ装置またはストリップの温度を提供するサーミスタが含まれる。この温度がサンプル温度の近似であるが、通常、装置またはストリップは、サンプルとは異なる温度である。装置またはストリップとサンプルとの間での温度差は、分析にバイアスを導入しうる。
【0151】
[00169] 以前に考察したようにK定数などの減衰速度を決定することにより、サンプル温度を決定することができる。図10は、50、100および400 mg/dLのグルコース濃度についてのパルスシークエンスの5回目の励起によって得られた、温度の関数としてプロットされたK定数を表す。このプロットは、減衰速度が温度上昇によって絶対値として増加したことを立証する。特定の理論に拘束されることは望ましくないが、この現象は、温度が低くなるにつれてキャップーギャップ内に存在するさまざまな成分の拡散速度が緩やかになることに寄与していると考えられる。このように、サンプル温度を、一過性電流特性から得られる減衰速度に応じて決定することができる。
【0152】
[00170] サンプル温度を一過性電流特性から決定することができるため、分析目的物の有無および/または濃度を決定するのに用いられる同一の電流値を使用して、サンプル温度を決定することができる。したがって、サンプル温度を、濃度決定に必要とされる持続時間を超えて、電気化学的分析の持続時間を延長することなしに、パルスシークエンスの複数の負荷サイクルのあいだに決定することができる。
【0153】
[00171] 一つの態様では、サンプル温度を、以下の式により、Kを解くことによって決定することができる。
【式2】
【0154】

【0155】
i0.125とi0.375は、温度変化についてもっとも影響を受けやすい電流減衰を生じる励起などの、もっとも温度変化の影響を受けやすい励起での0.125および0.375秒での電流値である。ln(0.125)およびln(0.375)は、それぞれ0.125および0.375秒での自然対数項である。図10で表されるような、温度に対するこれらのK定数のプロットから、サンプル温度をプロットの相関関数によって決定することができる。相関関数は曲線の多項式フィットであってもよい。このプロットから決定された温度は、装置温度とは異なっていてもよく、そしてサンプル温度をより正確に反映することができる。
【0156】
[00172] 装置とは逆に、サンプルの温度を決定することの利点は、分析の長さが調整され、DBLの再水和して平衡に達するのにかかる時間が十分にでき、したがって分析の正確性が増加することである。例えば、パルスシークエンスのあいだに決定されたサンプル温度が、外界温度より少なくとも5℃または10℃低い場合、パルスシークエンスを、負荷サイクルの追加を用いるなどで延長されてもよい。
【0157】
[00173] 図11は、電気回路1110およびディスプレイ1130と電気的に連絡している接点1120を含む測定装置1110の模式図である。一つの態様では、測定装置1100は携帯型であり、手持ち型として、そして図1Aでのストリップ100などのセンサストリップを受容するのに適合されている。他の態様では、測定装置1100は、センサストリップを受容し、ゲート化電流測定パルスシークエンスを行うのに適合された手持ち型の装置である。
【0158】
[00174] 接点1120は、電気回路1110と図1Bで表したセンサストリップ100の接点170および180などの、センサストリップの接点との電気的連絡を提供するのに適合されている。電気回路1110には、充電器1150、プロセッサ1140およびコンピュータで読み込み可能な記憶媒体1145が含まれていてもよい。充電器1150は、ポテンショスタット、信号発生装置などであってもよい。したがって、充電記録計として機能するように生じた電流を記録する間に、充電器1150は接点1120へ電圧を印加することができる。
【0159】
[00175] プロセッサ1140は、充電器1150、コンピュータで読み込み可能な記憶媒体1145およびディスプレイ1130と電気的に連絡されている状態にあってもよい。充電器が電流を記録するために適合していない場合、プロセッサ1140は接点1120で電流を記録するのに適合してもよい。
【0160】
[00176] コンピュータで読み込み可能な記憶媒体1145は、磁気的メモリ、光学的メモリ、半導体メモリなどの、どのような記憶媒体であってもよい。コンピュータで読み込み可能な記憶媒体1145は、固定記憶装置であっても、または取り外し可能なメモリカードなどの取り外し可能な記憶装置であってもよい。ディスプレイ1130は、アナログであってもまたはデジタルであってもよく、一つの態様ではLCDディスプレイが数値読みとり値を表示するのに適している。
【0161】
[00177] サンプルを含んでいるセンサストリップの接点が、接点1120と電気的に連絡している場合、プロセッサ1140は、充電器1150に指示して、ゲート化電流測定パルスシークエンスをサンプルに印加することができ、それにより分析を開始することができる。プロセット1140は、センサストリップの挿入に応じて、事前に挿入されたセンサストリップへのサンプルの適用に応じて、または使用者入力に応じて、分析を開始することができる。
【0162】
[00178] ゲート化電流測定パルスシークエンスの実行に関する指示は、コンピュータで読み込み可能な記憶媒体1145に保存された、コンピュータで読み込み可能なソフトウェアコードによって供給することができる。コードは、オブジェクトコードであってもよく、または本出願で記載された機能性を記載または制御する他のコードであってもよい。ゲート化電流測定パルスシークエンスから生じたデータは、減衰速度、K定数、傾き、切片および/またはプロセッサ1140内のサンプル温度の決定ならびに、修正された分析目的物の濃度、ディスプレイ1130への出力などの結果を含む、1つまたはそれ以上のデータ処理をされてもよい。パルスシークエンスに関する指示同様、データ処理はコンピュータで読み込み可能な記憶媒体1145に保存された、コンピュータで読み込み可能なソフトウェアコードによって実行することができる。
【0163】
[00179] 範囲、応用、または実行を限定することなしに、以前に記載された方法およびシステムを、以下のアルゴリズムを用いて実行することができる。
[00180] ステップ1:バイオセンサの電源を入れる。
【0164】
[00181] ステップ2:バイオセンサのセルフテストを実行する。
[00182] ステップ3:
センサへのサンプル適用のためにポーリングするためにセットアップを行う
ASICポーリング電位をvpollにセットする
ASIC閾値をitriggerにセットする
intpollで終了するようにポーリング周期タイマをセットする。
【0165】
[00183] ステップ4:
センサ電流をアッセイするためのセットアップを行う
ポーリング周期タイマが終了するまで待機する
ASCI電荷ポンプを作動させる
ASCI閾値検出器(itrigger)を作動させる
ポーリング電位(vpoll)を作動させる
センサに電位を印加するセンサチャネルを選択する
沈降時間tpollまで待機する。
【0166】
[00184] ステップ5:センサ電流が閾値を超えないかをテストする。
[00185] ステップ6:再度センサ電流を遅延およびテストする。
[00186] ステップ7:サンプル適用の検出時に
時間測定を開始する
パルスシークエンスを開始する。
【0167】
[00187] パルス1−センサ電流i1,1およびi1,8を測定する
パルス1をtp1時に開始する
パルス1の持続時間をdp1にセットする
パルス1のセンサ電位をvp1にセットする
電位をセンサに印加するためのセンサチャネルを選択する
t1,1時に、センサ信号を測定し、測定値をADS11として保存する
t1,8時に、センサ信号を測定し、測定値をADS18として保存する。
【0168】
[00188] ステップ9:
遅延1−機器類を再標準化する
読みとりAD2の終了時に遅延1を開始し、センサチャネルを切断する
遅延1はパルス2の開始時に終了させる
電位をVstandardizeにセットする
tc1時に、参照レジスタチャネルを選択した後に信号を測定し、測定値をADR1として保存する
tc2時に、オフセットチャネルを選択した後に信号を測定し、測定値をADO1として保存する。
注意:パルス1で開始するセンサ電流は、ADR1からADO1の測定値から計算される。
【0169】
[00189] ステップ10:パルス2−センサ電流i2,1およびi2,8を測定する
パルス2をtp2時に開始する
パルス2の持続時間をdp2にセットする
パルス2のセンサ電位をvp2にセットする
電位をセンサに印加するためのセンサチャネルを選択する
t2,1時に、センサ信号を測定し、測定値をADS21として保存する
t2,8時に、センサ信号を測定し、測定値をADS28として保存する。
【0170】
[00190] ステップ11:遅延2−
読みとりADS3の終了時に遅延2を開始し、センサチャネルを切断する
遅延2はパルス3の開始時に終了させる
センサを切断するようにオフセットチャネルを選択する。
【0171】
[00191] ステップ12:パルス3−センサ電流i3,1およびi3,8を測定する
パルス3をtp3時に開始する
パルス3の持続時間をdp3にセットする
パルス3のセンサ電位をvp3にセットする
電位をセンサに印加するためのセンサチャネルを選択する
t3,1時に、センサ信号を測定し、測定値をADS31として保存する
t3,8時に、センサ信号を測定し、測定値をADS38として保存する。
【0172】
[00192] ステップ13:遅延3−T1およびiwet
読みとりADS38の終了時に遅延3を開始し、センサチャネルを切断する
遅延3はパルス4の開始時に終了させる
電位をVstandardizeにセットする
tc3時に、サーミスタチャネルを選択した後に信号を測定し、測定値をADT1として保存する
twet時に、オフセットチャネルを選択した後に信号を測定し、測定値をADwetとして保存する。
【0173】
[00193] ステップ14:パルス4−センサ電流i4,1、i4,4およびi4,8を測定する
パルス4をtp4時に開始する
パルス4の持続時間をdp4にセットする
パルス4のセンサ電位をvp4にセットする
電位をセンサに印加するためのセンサチャネルを選択する
t4,1時に、センサ信号を測定し、測定値をADS41として保存する
t4,4時に、センサ信号を測定し、測定値をADS44として保存する
t4,8時に、センサ信号を測定し、測定値をADS48として保存する。
【0174】
[00194] ステップ15:遅延4−
読みとりADS48の終了時に遅延4を開始し、センサチャネルを切断する
遅延4はパルス5の開始時に終了させる
センサを切断するようにオフセットチャネルを選択する
[00195] ステップ16:パルス5−センサ電流i5,1、i5,4およびi5,8を測定する
パルス5をtp5時に開始する
パルス5の持続時間をdp5にセットする
パルス5のセンサ電位をvp5にセットする
電位をセンサに印加するためのセンサチャネルを選択する
t5,1時に、センサ信号を測定し、測定値をADS51として保存する
t5,4時に、センサ信号を測定し、測定値をADS54として保存する
t5,8時に、センサ信号を測定し、測定値をADS58として保存する
ASCIアナログ機能を無効にする。
【0175】
[00196] ステップ17:
ロット較正数のために傾きと切片を確認する
S = 電流ロット較正数用の傾きの値
Int = 電流ロット較正数用の切片の値
[00197] ステップ18:傾きと切片の値を温度作用に対して補正する。
【0176】
[00198] ステップ19:25℃でのグルコース濃度を計算する。
[00199] ステップ20:目的基準物への転換(血漿vs. WB基準物)。
[00200] ステップ21:充填量不足を確認する。
【0177】
[00201] ステップ22:「動作異常」を確認する。
[00202] ステップ23:低グルコースであれば、再度「動作異常」を確認する。
[00203] ステップ25:極端なグルコースレベルを確認する。
【0178】
[00204] ステップ26:結果を表示する。
[00205] アルゴリズムは、サンプル温度および充填量不足条件などの誤差の確認を含む他のサブルーチンを含んでもよい。アルゴリズムに用いられる定数は、以下の表IIIで示される。他の定数が用いられてもよい。
【0179】
【表4】

【0180】
[00207] 本発明のさまざまな態様が記載されているが、当該技術分野の当業者であれば、本発明の範囲内で他の態様および実行が可能であることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0181】
[0064] 本発明は、以下の図および説明を参照してよりよく理解することができる。図中の構成要素は必ずしも一定の縮尺ではなく、本発明の原理を図解する上で強調される。さらに、図中では、参考しやすいように、異なる図面を通して対応するパーツに対応する番号をつけている。
【図1】[0065] 図1Aは組み立てられたセンサストリップの透視図である。 [0066] 図1Bはふたを除いた状態でのセンサストリップの上面図である。
【図2】[0067] 図2は図1Bのセンサストリップの断面図である。
【図3】[0068] 図3はサンプル中の分析目的物の有無および濃度を決定する電気化学的分析方法を表す。
【図4】[0069] 図4Aおよび図4Bは長時間および短時間の読み取りパルスの印加のあいだの表面伝導体およびDBLを持つ作用電極を示す。
【図5】[0070] 図5Aから図5Eは、サンプルの導入後に複数の負荷サイクルがセンサストリップに印加された場合のパルスシークエンスの5つの例を表す。
【図6−1】[0071] 図6Aは、50、100、200、400および600 mg/dLのグルコースを含むヘマトクリット値40%のWBサンプルについての、図5Bで表したパルスシークエンスの一過性出力電流を示す。 [0072] 図6Bは、図6Aで示した各の一過性電流特性から最終電流値をプロットし、またプロット間をつないで作成された電流輪郭特性を示す。
【図6−2】[0073] 図6Cは、図5Eで表されたパルスシークエンスによって生じた一過性電流特性から作成された電流輪郭特性を示す。
【図6−3】[0074] 図6Dは、ゲート化電流測定パルスシークエンスを用いる電気化学的システムについての、入力信号と比較した出力信号を図解したグラフである。
【図7−1】[0075] 図7Aおよび図7Bは、DBLが短時間の読み取りパルスと組み合わされるときの測定値の正確性の改善を図解したグラフである。
【図7−2】[0076] 図7Cおよび図7Dはゲート化電流測定パルスシークエンスがDBLと組み合わされるときに得ることができる、ヘマトクリットバイアスの減少を図解したグラフである。
【図8】[0077] 図8は、図5Bのパルスシークエンスがさまざまなグルコース濃度を含むWBサンプルに印加されたときの複数の負荷サイクルで記録された終点電流値(endpoint currents)をプロットしたものである。
【図9】[0078] 図9Aは、2.0 μLのサンプルが10個の異なるセンサストリップに導入された場合に、図5Bで表されたパルスシークエンスから得られた一過性電流特性を表す。 [0079] 図9Bは、時間の関数として、図9Aから変換された各パルスシークエンスの減衰速度の特性を表す。
【図10】[0080] 図10は温度の関数として、50、100および400 mg/dLのグルコース濃度について、パルスシークエンスから決定されたK定数をプロットしたものである。
【図11】[0081] 図11は測定装置の模式図である。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルに180秒以内に少なくとも3回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスを印加すること、および
サンプル中の分析目的物の濃度を決定すること、
を含む、サンプル中の分析目的物の濃度を決定する方法。
【請求項2】
180秒以内に少なくとも3回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスを行わない他の方法によって決定された分析目的物の濃度と比較して、この方法によって決定された分析目的物の濃度がメディエータバックグラウンドに寄与するバイアスをより少なく含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
180秒以内に少なくとも3回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスを行わない同じ方法によって決定された分析目的物の濃度と比較して、この方法によって決定された分析目的物の濃度がメディエータバックグラウンドに寄与するバイアスをより少なく含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
サンプルが生物学的液体を含む液体である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
分析目的物がグルコースである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
各負荷サイクルが固定電位での励起および緩和を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
電流値が各励起間で記録される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
パルスシークエンスが終端読み取りパルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
パルスシークエンスが作用電極上の拡散バリア層を含むセンサストリップに印加される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
生じた電流の測定および電流による複数の較正点の決定を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
パルスシークエンスの持続時間が複数の較正点から決定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
分析目的物の濃度の決定に複数の較正点を含む信号の平均化を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
サンプルを含むセンサストリップがサンプルで充填量不足かどうかを決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
サンプルを含むセンサストリップが充填量不足であるかどうかの決定に、減衰速度を決定することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
センサストリップによって含まれているサンプルの温度を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
センサストリップによって含まれているサンプルの温度の決定に、減衰速度の決定を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
センサストリップを受容する様に適合されたゲート化電流測定装置を含むサンプル中の分析目的物の濃度を決定するための手持ち型の分析目的物測定装置であって、
ゲート化電流測定装置は、電気回路を通してディスプレイと電気的に連絡する少なくとも2つの装置接点を含み;そして
センサストリップは、少なくとも第一センサストリップおよび第二センサストリップの接点を含み、ここで第一センサストリップが作用電極と電気的に連絡して接触し、また第二センサストリップが伝導体を通して対電極と電気的に連絡して接触し;
第一試薬層が少なくとも1つの電極上にあり、そして酸化還元酵素および少なくとも一種類の酸化還元対を含む、
前記分析目的物測定装置。
【請求項18】
180秒以内に少なくとも3回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスをサンプルに印加すること;
生じた電流を測定すること;
測定した電流にデータ処理を施すこと;および
サンプル中の分析目的物の濃度を決定すること;
を含む、サンプル中の分析目的物の濃度を決定する方法。
【請求項19】
センサストリップを受容するのに適合された、サンプル中の分析目的物の濃度を決定するための携帯型分析目的物測定装置であって、この装置は、
接点;
少なくとも1つのディスプレイ;および
接点とディスプレイ間に電気的連絡が確立される電気回路;
を含み、
この電気回路は、充電器と、コンピュータで読み込み可能なソフトウェアコードを含むコンピュータで読み込み可能な記憶媒体と電気的に連絡しているプロセッサとを含み、
この回路は、プロセッサによって実行されたときに、接点間で180秒以内に少なくとも3回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスを充電器に実行させる、
前記携帯型分析目的物測定装置。
【請求項20】
180秒以内に少なくとも3回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスをサンプルに印加すること
を含む、サンプル中の分析目的物の濃度の決定におけるメディエータバックグラウンドに寄与するバイアスを減少する方法。
【請求項21】
少なくとも3回の負荷サイクル間に記録された電流によって決定された複数の較正点を決定すること;および
決定されたサンプル中の分析目的物の濃度に応じてパルスシークエンスの持続時間を決定すること、
を含む、サンプル中の分析目的物の濃度を決定するための、180秒以内に少なくとも3回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスの持続時間を決定する方法。
【請求項22】
180秒以内に少なくとも3回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスの少なくとも2回の励起のあいだに記録された電流によって減衰定数を決定することによりセンサストリップが充填量不足であるかどうかを決定すること;および
ストリップが充填量不足であった場合にセンサストリップに追加的なサンプルを追加することを使用者に合図すること、を含む、
センサストリップへの追加的なサンプルの追加を使用者に合図する方法。
【請求項23】
180秒以内に少なくとも3回の負荷サイクルを含むパルスシークエンスの少なくとも2回の励起のあいだに記録された電流から減衰定数を決定すること;および
温度値と減衰定数を相関させること、を含む、
センサストリップによって含まれるサンプルの温度を決定する方法。
【請求項24】
180秒と同じかそれ以内の時間のあいだに生物学的液体であるサンプルにパルスシークエンスを印加し、このパルスシークエンスには少なくとも3回の負荷サイクルがあり、この負荷サイクルには実質的に定電圧での励起があり、負荷サイクルには緩和があること;
少なくとも1つの電流特性を測定すること;および
少なくとも1つの電流特性に応じたサンプル中の分析目的物の濃度を決定すること、
を含む、分析目的物の濃度を決定する方法。
【請求項25】
励起が5秒未満である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
緩和が開回路に反応性である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
緩和が少なくとも0.5秒である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
電流特性が一過性電流特性である、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
緩和時の電流がゼロである、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
パルスシークエンスが方形波パルスを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
パルスシークエンスが少なくとも0.01の酸化還元強度である、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
測定可能種の拡散速度が比較的一定になったときに電流特性に応じた分析目的物の濃度を決定することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1つの電流特性に応じて複数組の較正定数を確立することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
複数組の較正定数に応じてパルスシークエンスの負荷サイクル数を決定することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
各組の較正定数に応じてサンプル中の分析目的物の濃度を決定すること;および、
複数組の較正定数から分析目的物の濃度を平均化すること、
をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
電流特性に応じてセンサストリップがいつ充填量不足であるかを決定することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項37】
電流特性の減衰速度が選択値よりも低い場合に、センサストリップがいつ充填量不足であるかを決定することをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
選択値が−0.1である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
電流特性の減衰速度に応じてサンプルの温度を決定することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項40】
センサストリップに生物学的液体のサンプルを導入すること;
少なくとも1つの電子をサンプル中の分析目的物からセンサストリップのメディエータに移動すること;
サンプルにパルスシークエンスを180秒と同程度かそれより少ない時間のあいだ印加すること(ここで、パルスシークエンスは少なくとも3回の負荷サイクルを有し、負荷サイクルは実質的に定電圧で一回の励起を有し、負荷サイクルは緩和を含む);
測定可能種の励起に応じて電流値を分析すること;および
電流値に応じてサンプル中の分析目的物を決定すること、
を含む、生物学的液体中の分析目的物を決定する方法。
【請求項41】
測定可能種を電気化学的に励起することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
サンプル中の分析目的物を酸化することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
サンプル中の分析目的物を還元することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
測定可能種が分析目的物である、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
測定可能種がメディエータである、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
励起のあいだ電流を時間の関数として記録することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
サンプル中の分析目的物の有無を決定することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
サンプル中の分析目的物の濃度を決定することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項49】
拡散バリア層の内側で測定可能種を励起すること;および
拡散バリア層の外側での測定可能種の励起を実質的に除外すること、
をさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
誘電体層下に少なくとも2つの伝導体を有するセンサ基板(ここで、少なくとも2つの伝導体は少なくとも2つの電極に接続しており、少なくとも1つの電極は拡散バリア層を有する);および
センサ基板を少なくとも部分的に覆うフタ(ここで、フタは孔を形成し、フタは凹面領域および投入開口部を形成する)
を含み、センサ基板およびフタがキャップ−ギャップを形成する、センサストリップ。
【請求項51】
センサ基板が、拡散バリア層を有する作用電極、および対電極を含む、請求項50に記載のセンサストリップ。
【請求項52】
作用電極および対電極が、実質的に同一平面上である、請求項51に記載のセンサストリップ。
【請求項53】
作用電極および対電極が、200μm以上離れている、請求項51に記載のセンサストリップ。
【請求項54】
作用電極および対電極が、フタの上部から少なくとも100μm離れている、請求項51に記載のセンサストリップ。
【請求項55】
対電極が参照電位を供給するように配置される、請求項51に記載のセンサストリップ。
【請求項56】
誘電体層が作用電極および対電極を部分的に覆っている、請求項51に記載のセンサストリップ。
【請求項57】
伝導体上に固着した少なくとも1つの試薬層をさらに含む、請求項51に記載のセンサストリップ。
【請求項58】
少なくとも一層の試薬層が試薬を含む、請求57に記載のセンサストリップ。
【請求項59】
少なくとも一層の試薬層が、少なくとも1つの結合剤およびメディエータを含む、請求項57に記載のセンサストリップ。
【請求項60】
拡散バリア層が試薬層にとって不可欠である、請求項50に記載のセンサストリップ。
【請求項61】
結合した拡散バリア層および試薬層が30μm未満の平均厚を有する、請求項60に記載のセンサストリップ。
【請求項62】
拡散バリア層が試薬層から分離されている、請求項50に記載のセンサストリップ。
【請求項63】
試薬層がセンサ基板およびフタの少なくとも一方にある、請求項62に記載のセンサストリップ。
【請求項64】
拡散バリア層が少なくとも5μmの平均厚を有する、請求項62に記載のセンサストリップ。
【請求項65】
少なくとも2ヶ所の接点;
ディスプレイ;および
少なくとも2ヶ所の接点とディスプレイとの間に電気的な連絡を確立する電気回路(ここで電気回路は、充電器およびコンピュータで読み込み可能な記憶媒体と電気的に連絡するプロセッサを含む)、
を含む生物学的液体中の分析目的物を決定するための測定装置であって、
プロセッサは、充電器から少なくとも2ヶ所の接点へ180秒と同程度またはそれ未満の時間のあいだパルスシークエンスを実行するために操作できるものであり、パルスシークエンスは少なくとも3回の負荷サイクルを有し、負荷サイクルは実質的に定電圧での励起を有し、そして緩和があり、
少なくとも1つの電流特性を少なくとも2ヶ所の接点での測定を操作できるプロセッサ、および、
少なくとも1つの電流特性に応じて生物学的液体中の分析目的物の決定を操作できるプロセッサである、
前記測定装置。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6−1】
image rotate

【図6−2】
image rotate

【図6−3】
image rotate

【図7−1】
image rotate

【図7−2】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2009−503452(P2009−503452A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522921(P2008−522921)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/028013
【国際公開番号】WO2007/013915
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)