説明

ゲート弁

【課題】シール部に作用する荷重が変動しても、ゲート弁の本体がゲートに接触することを防止するとともに、所定のシール性を確保することが可能なゲート弁を提供する。
【解決手段】ゲート弁は、本体部1と、ゲート弁が閉じたときにゲートの周縁部に当接するシール部2とを備える。シール部2は、本体部1の周縁部に沿って延びるように設けられ、ゲート弁が開いたときに主面1Aから突出する凸状の第1部分2Aおよび凸状の第2部分2Bを含む。第1部分2Aの主面1Aからの突出量(H1)は、第2部分2Bの主面1Aからの突出量(H2)よりも大きい。第1部分2Aは、第2部分2Bに対して主面1Aの内周側に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート弁に関し、特に、半導体製造装置などに用いられ、チャンバに対してウエハが出し入れされるゲートに設けられるゲート弁に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置などに使用される真空用ゲート弁として、たとえば、国際公開第2008/001683号(特許文献1)および国際公開第2010/032722号(特許文献2)に記載されたものが、従来から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/001683号
【特許文献2】国際公開第2010/032722号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば半導体体製造装置のチャンバにおいては、半導体の製造工程における各処理を行なう際、チャンバ内を超真空状態にしたり、高圧状態にしたりすることがある。
【0005】
ウエハ等の被処理物を出し入れするゲートを開閉するゲート弁は、略一定の荷重で閉弁される。しかし、チャンバ内を超真空状態にしたとき(正圧時)は、チャンバ内外の圧力差によって、ゲート弁の閉弁方向に更なる荷重が作用する。逆に、チャンバ内を高圧状態にしたとき(逆圧時)は、チャンバ内外の圧力差によって、ゲート弁の開弁方向に荷重が作用し、ゲート弁を閉弁する力は減少する。
【0006】
ウエハ等の被処理物が大型化すると、ゲートの開口も大きくなり、上記の傾向はより顕著になる。すなわち、正圧時と逆圧時とで、ゲート弁のシール部に作用する荷重の差が大きくなる。
【0007】
ゲート弁の閉弁力が大きいとき、シール部が変形し過ぎると、ゲート弁の本体がゲートに接触し、意図しないパーティクルの発生などを招くことが懸念される。他方、ゲート弁の閉弁力が小さいとき、シール部が十分に変形しないと、所定のシール性が確保できないことが懸念される。
【0008】
このような状況下において、高荷重の正圧時においては、シール部の変形を抑制して、ゲート弁の本体がゲートに接触することを防止する一方で、低荷重の逆圧時においては、シール部をある程度変形させやすくして、所定のシール性を確保することが求められる。
【0009】
また、特に高荷重の正圧時においては、シール部が外周側に倒れ込むことに起因したパーティクルの発生を防止することが求められる。
【0010】
特許文献1および特許文献2に記載の真空用ゲート弁は、上記のような要請に基づいて製作されたものではなく、上述の課題を十分に解決する構成は示されていない。
【0011】
すなわち、特許文献1に記載のゲート弁は、応力集中または接着剤の剥離により、シール部に亀裂が入ったりパーティクルが発生したりすることを防止することを目的とするものであり、シール部に作用する荷重の変動を考慮した本発明とは無関係のものである。
【0012】
また、特許文献2に記載のゲート弁は、シール部が処理ガスに曝されることを防止することを目的とするものであり、シール部に作用する荷重の変動を考慮した本発明とは無関係のものである。
【0013】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シール部に作用する荷重が変動しても、ゲート弁の本体がゲートに接触することを防止するとともに、所定のシール性を確保することが可能なゲート弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るゲート弁は、チャンバに対して被処理物が出し入れされるゲートに設けられるゲート弁であって、主面を有する本体部と、ゲート弁が閉じたときにゲートの周縁部に当接するシール部とを備える。シール部は、本体部の周縁部に沿って延びるように設けられ、ゲート弁が開いたときに主面から突出する凸状の第1部分および凸状の第2部分を含む。なお、「本体部の周縁部に沿って延びる」ことは、第1部分および第2部分の一部が本体部の周縁部から離れるまたは本体部の周縁部により近づくが、大部分は本体部の周縁部に沿って形成されている場合も含む。
【0015】
本発明に係るゲート弁において、上記シール部の第1部分の主面からの突出量は、第2部分の主面からの突出量よりも大きい。また、上記シール部の第1部分は、第2部分に対して主面の内周側に設けられる。
【0016】
1つの実施態様では、上記ゲート弁において、第2部分は、ゲート弁が比較的高荷重で閉じられたときにのみゲートの周縁部に当接する。
【0017】
1つの実施態様では、上記ゲート弁において、本体部の主面に対する第2部分の外周側斜面の傾斜角度は、本体部の主面に対する第1部分の外周側斜面の傾斜角度よりも大きい。
【0018】
1つの実施態様では、上記ゲート弁において、本体部の主面に対する第1部分の外周側斜面の傾斜角度は、本体部の主面に対する第1部分の内周側斜面の傾斜角度よりも小さい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高荷重時には、シール部の第1部分および第2部分の両方で荷重を受け止めるため、シール部の変形が抑制され、低荷重時には、シール部の第1部分のみで荷重を受け止めるため、シール部が変形しやすい。したがって、ゲート弁のシール部に作用する荷重が変動しても、高荷重時にゲート弁の本体がゲートに接触することを防止するとともに、低荷重時に所定のシール性を確保することができる。
【0020】
また、本発明によれば、突出量が大きい第1部分が内周側に位置しているため、高荷重時において、シール部が外周側に倒れ込むような変形が抑制され、そのような変形に起因したパーティクルの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の1つの実施の形態に係るゲート弁を示す図であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は背面図を示す。
【図2】図1に示すゲート弁におけるシール部の周辺を示した拡大断面図である。
【図3】図1に示すゲート弁の使用状態を示す図であり、(a)は低荷重(逆圧時)を示し、(b)は中荷重(同圧時)を示し、(c)は高荷重(正圧時)を示す。
【図4】図1に示すゲート弁に高荷重を作用させたときの応力状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0023】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。
【0024】
図1は、本実施の形態に係るゲート弁を示す図であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は背面図を示す。本明細書では、ゲート開口部およびチャンバ内空間に面する側をゲート弁の正面とする。
【0025】
本実施の形態に係るゲート弁10は、典型的には、半導体製造装置のゲートに設けられる。ゲートは、チャンバに対してウエハなどの被処理物が出し入れされる開口である。
【0026】
本実施の形態に係るゲート弁10は、プロセスチャンバとトランスファチャンバとの間のゲートに設けられてもよいし、トランスファチャンバとロードロックチャンバとの間のゲートに設けられてもよいし、ロードロックチャンバと大気開放部との間のゲートに設けられてもよい。
【0027】
本実施の形態に係るゲート弁10は、図1(a),(b),(c)に示すように、本体部1と、本体部1の主面に設けられたシール部2とを備える。
【0028】
本体部1は、たとえばアルミニウムなどにより構成される。本体部1は、エアシリンダによって開弁方向および閉弁方向に駆動される。
【0029】
シール部2は、たとえばゴムやエラストマなどの弾性材により構成される。シール部2は、本体部1の主面の周縁部に沿って設けられる。シール部2は、ゲート弁が閉じたときに、チャンバを構成する筐体の開口(ゲート)の周縁部に当接する。シール部2は、本体部1に接着されていてもよいし、本体部1に設けた溝に嵌合されていてもよい。
【0030】
ゲート弁10の長さは、一例として、たとえば500mm程度である。ゲート弁の幅は、一例として、たとえば80mm程度である。ゲート弁10の高さ(シール部2を含む)は、一例として、たとえば25mm程度である。ゲート弁10におけるシール部2の幅は、たとえば7mm程度である。
【0031】
次に、ゲート弁10におけるシール部2の周辺を示した拡大断面図である図2を用いて、シール部2の構造について説明する。なお、図2は、ゲート弁が開いたときの状態を示す。
【0032】
図2に示すように、シール部2は、ゲート弁が開いた状態において、本体部1の主面1Aから突出する凸状の第1部分2Aと、同じく本体部1の主面1Aから突出する凸状の第2部分2Bとを含む。第1部分2Aは、第2部分2Bに対して本体部1主面1Aの内周側に設けられている。
【0033】
シール部2の高さ(全高)は、一例として、たとえば3mm程度である。第1部分2Aの主面1Aからの突出量H1は、一例として、たとえば1mm程度である。第1部分2Bの主面1Aからの突出量H2は、一例として、たとえば0.5〜0.6mm程度である。すなわち、本体部1の主面1Aからの第1部分2Aの突出量H1は、本体部1の主面1Aからの第2部分2Bの突出量H2よりも大きい。
【0034】
また、本体部1の主面1Aに対する第1部分2Aの外周側斜面の傾斜角度θ1は、一例として、たとえば39°程度である。本体部1の主面1Aに対する第1部分2Aの内周側斜面の傾斜角度θ1’は、一例として、たとえば64°程度である。本体部1の主面1Aに対する第2部分2Bの外周側斜面の傾斜角度θ2は、一例として、たとえば57〜67°程度である。
【0035】
すなわち、本体部1の主面1Aに対する第2部分2Bの外周側斜面の傾斜角度θ2は、本体部1の主面1Aに対する第1部分2Aの外周側斜面の傾斜角度θ1よりも大きい。また、本体部1の主面1Aに対する第1部分2Aの外周側斜面の傾斜角度θ1は、本体部1の主面1Aに対する第1部分2Aの内周側斜面の傾斜角度θ1’よりも小さい。
【0036】
次に、図3を用いて、ゲート弁10の使用状態を説明する。図3(a)は、シール部材2に作用する荷重が低い場合を示し、図3(b)は、シール部材2に作用する荷重が中程度の場合を示し、図3(c)は、シール部材2に作用する荷重が高い場合を示す。
【0037】
ゲート弁10を閉弁するとき、本体部1は、略一定の荷重で駆動される。しかし、チャンバ内を超真空状態にしたとき(正圧時)は、チャンバ内外の圧力差によって、シール部2に対して、ゲート弁の閉弁方向に更なる荷重が作用する。逆に、チャンバ内を高圧状態にしたとき(逆圧時)は、チャンバ内外の圧力差によって、シール部2に対して、ゲート弁の開弁方向に荷重が作用する。チャンバ内外の圧力差がないとき(同圧時)には、本体部1を閉弁方向に駆動する力がそのままシール部2に作用する。このようにして、シール部2に作用する荷重は変動する。
【0038】
シール部材2に作用する荷重が低い場合(逆圧時)の荷重は、一例として、たとえば2000N程度であり、シール部材2に作用する荷重が高い場合(正圧時)の荷重は、一例として、たとえば8000N程度であり、シール部材2に作用する荷重が中程度の場合(同圧時)の荷重は、たとえば5000N程度である。
【0039】
シール部材2に作用する荷重が低い場合(逆圧時)は、図3(a)に示すように、第1部分2Aのみがゲートの当接面3に当接している。シール部材2に作用する荷重が中程度の場合(同圧時)およびシール部材2に作用する荷重が高い場合(正圧時)は、図3(b),(c)に示すように、第1部分2Aと第2部分2Bとの両方がゲートの当接面3に当接している。すなわち、第2部分2Bは、ゲート弁10が比較的高荷重で閉じられたときにのみゲートの当接面3に当接するものである。
【0040】
なお、本実施の形態の例では、シール部材2に作用する荷重が中程度の場合(同圧時)にも第2部分2Bがゲートの当接面3に当接しているが、シール部材2に作用する荷重が高い場合(正圧時)にのみ第2部分2Bがゲートの当接面3に当接するようにしてもよい。
【0041】
本実施の形態に係るゲート弁10によれば、低荷重時には、図3(a)に示すように、シール部2の第1部分2Aのみで荷重を受け止めるため、シール部2が変形しやすい。他方、高荷重時には、図3(c)に示すように、シール部2の第1部分2Aおよび第2部分2Bの両方で荷重を受け止めるため、シール部2の変形が抑制される。
【0042】
このように、本実施の形態に係るゲート弁10によれば、シール部2に作用する荷重が変動しても、高荷重時にシール部2が変形し過ぎて本体部1がゲートに接触することを防止するとともに、低荷重時においても所定のシール性を確保することが可能である。
【0043】
また、本実施の形態に係るゲート弁10では、突出量が大きい第1部分2Aを第2部分2Bに対して内周側に設けることにより、図4に示すように、高荷重時において、応力のピーク(図4中のA)を、シール部2における比較的内周側に位置させることができる。この結果、高荷重時においても、シール部2が外周側に倒れ込むような変形が抑制され、そのような変形に起因したパーティクルの発生を防止することができる。
【0044】
また、本実施の形態に係るゲート弁10では、第2部分2Bの外周側斜面の傾斜角度θ2を、第1部分2Aの外周側斜面の傾斜角度θ1よりも大きく設定することにより、高荷重時にのみゲートに当接する第2部分2Bを相対的に変形しにくく、低荷重時にもゲートに当接する第1部分2Aを相対的に変形しやすくすることができる。この結果、高荷重時にシール部2を変形しにくく、低荷重時にはシール部2を変形しやすくする効果をさらに高めることができる。
【0045】
また、本実施の形態に係るゲート弁10では、第1部分2Aの外周側斜面の傾斜角度θ1を第1部分2Aの内周側斜面の傾斜角度θ1’よりも小さく設定することにより、高荷重時の応力のピーク(図4中のA)を、より内周側に位置させることができる。この結果、シール部2が外周側に倒れ込むような変形を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0047】
1 本体部、1A 主面、2 シール部、2A 第1部分(メインシール部)、2B 第2部分(潰し代調整部)、3 当接面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバに対して被処理物が出し入れされるゲートに設けられるゲート弁であって、
主面を有する本体部と、
前記ゲート弁が閉じたときに前記ゲートの周縁部に当接するシール部とを備え、
前記シール部は、前記本体部の周縁部に沿って延びるように設けられ、前記ゲート弁が開いたときに前記主面から突出する凸状の第1部分および凸状の第2部分を含み、
前記第1部分の前記主面からの突出量は、前記第2部分の前記主面からの突出量よりも大きく、
前記第1部分は、前記第2部分に対して前記主面の内周側に設けられる、ゲート弁。
【請求項2】
前記第2部分は、前記ゲート弁が比較的高荷重で閉じられたときにのみ前記ゲートの周縁部に当接する、請求項1に記載のゲート弁。
【請求項3】
前記本体部の主面に対する前記第2部分の外周側斜面の傾斜角度は、前記本体部の主面に対する前記第1部分の外周側斜面の傾斜角度よりも大きい、請求項1または請求項2に記載のゲート弁。
【請求項4】
前記本体部の主面に対する前記第1部分の外周側斜面の傾斜角度は、前記本体部の主面に対する前記第1部分の内周側斜面の傾斜角度よりも小さい、請求項1から請求項3のいずれかに記載のゲート弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−113327(P2013−113327A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257572(P2011−257572)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【特許番号】特許第5173011号(P5173011)
【特許公報発行日】平成25年3月27日(2013.3.27)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】