説明

ゲート絶縁膜形成用塗布液

【課題】スピンコートや印刷法等の簡便な膜形成方法を採用することができ、且つ電荷移動度の高いゲート絶縁膜、その形成のための組成物と、このゲート絶縁膜を使用した良好な有機薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】ゲート絶縁膜形成用組成物として、繰り返し単位中に、一般式(I)又は(II)で表されるフェノール性水酸基を有する構造を有するポリアミド化合物を含有する、エポキシ樹脂硬化性組成物を用いる。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜トランジスタの製造に際して、良好な電荷移動度を有するゲート絶縁膜を比較的低温下で形成することができ、且つスピンコートや印刷法等の簡便な膜形成方法を採用することができる、優れたゲート絶縁膜形成用塗布液に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペーパー等のフレキシブルな装置の電子基板の材料には、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック材料が用いられており、このようなプラスチック基板上に、電子ペーパーを駆動させるための有機薄膜トランジスタを形成するためには、従来比較的高温下で形成されていたゲート絶縁膜をより低温で、具体的には200℃以下で形成することが必要である。
【0003】
一般的なゲート絶縁膜は、炭化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン等の絶縁性の高い無機材料を、CVDで成膜を行っている。しかし、CVDでの成膜は、大掛かりな真空系装置が必要であり、製造コストが高くなる等の問題がある。また、これらの無機系材料は硬いため、曲げたことにより破損する等、耐屈曲性が低いことが欠点であり、フレキシブル基板への応用は難しいと考えられている。
【0004】
これに対し、トランジスタの各パーツが、有機系材料で構成される有機薄膜トランジスタが注目され、近年多くの研究や開発がなされている。有機系材料が注目される理由は、有機系材料には屈曲性を有するものが多く、また有機溶媒に可溶なものが多いことから、塗布法や印刷法での成膜が可能であり、無機系材料で必要であった真空装置を要しないことによる、製造コストの低減が可能と考えられているからである。
その中でも、ゲート絶縁膜の材料としてポリイミド系の材料は、耐電圧特性が高く、リーク電流密度が低いことから、薄膜化による電界効果の上昇が期待され、トランジスタの電荷移動度が高くなる材料として、注目されている材料である(特許文献1及び非特許文献1参照)。
【0005】
しかし、多くのポリイミド系材料は、成膜温度に200℃以上の加熱工程が必要なため、プラスチック基材への適用が困難であった。また、特許文献2には、200℃以下で成膜できるポリイミドを含有するゲート絶縁膜用塗布液が記載されているが、十分に高い電荷移動度が得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−227294号公報
【特許文献2】特開2009−4394号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chem.Matter.9.1299(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、有機薄膜トランジスタの製造に際して、良好な電荷移動度を有するゲート絶縁膜を比較的低温下で形成することができ、且つスピンコートや印刷法等の簡便な膜形成方法を採用することができる、優れたゲート絶縁膜形成用塗布液を提供することにある。
【0009】
また本発明の他の目的は、有機薄膜トランジスタの製造に際して、良好な電荷移動度を有するゲート絶縁膜を比較的低温下で形成することができ、且つスピンコートや印刷法等の簡便な膜形成方法を採用することができる、優れたゲート絶縁膜形成用塗布液を用いて形成したゲート絶縁膜を提供することにある。
【0010】
また本発明の他の目的は、良好な電荷移動度を有するゲート絶縁膜を比較的低温下で形成することができ、且つスピンコートや印刷法等の簡便な膜形成方法を採用することができる、優れたゲート絶縁膜形成用塗布液を用いて製造した有機薄膜トランジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、前記に鑑み鋭意研究を重ねた結果、特定のポリアミド化合物を含有するエポキシ樹脂硬化性組成物が前記目的を達成し得ることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
即ち、本発明は、繰り返し単位中に、下記一般式(I)又は(II)で表されるフェノール性水酸基を有する構造を有するポリアミド化合物を含有する、エポキシ樹脂硬化性組成物からなるゲート絶縁膜形成用塗布液である。
【化1】

(式中、環Aは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよく、Rは炭素原子数2〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基、炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。)
【化2】

(式中、環Bは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。)
【0013】
また、他の本発明は、前記ポリアミド化合物が、下記一般式(III)又は(IV)で表されるフェノール性水酸基を有する構造を有する前記ゲート絶縁膜形成用塗布液である。
【化3】

(式中、環Aは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよく、Rは炭素原子数2〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基、炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。nは正数である。)
【化4】

(式中、環Bは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。mは正数である。)
【0014】
また他の本発明は、前記一般式(I)又は(III)中の環Aが、フェニレン基又はナフチレン基である前記ゲート絶縁膜形成用塗布液である。
【0015】
また他の本発明は、前記一般式(I)又は(III)中のRが、フェニレン基又はナフチレン基である前記ゲート絶縁膜形成用塗布液である。
【0016】
また他の本発明は、前記ゲート絶縁膜形成用塗布液であって、更に有機溶媒及び/又はレベリング剤を含有する、前記ゲート絶縁膜形成用塗布液である。
【0017】
また他の本発明は、前記ゲート絶縁膜形成用塗布液を用いて、200℃以下の焼成温度にて成膜してなることを特徴とするゲート絶縁膜である。
【0018】
また他の本発明は、前記ゲート絶縁膜を有することを特徴とする有機薄膜トランジスタである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果は、有機薄膜トランジスタの製造に際して、良好な電荷移動度を有するゲート絶縁膜を比較的低温下で形成することができ、且つスピンコートや印刷法等の簡便な膜形成方法を採用することができる、優れたゲート絶縁膜形成用塗布液を提供したことにある。
【0020】
また本発明の他の効果は、有機薄膜トランジスタの製造に際して、良好な電荷移動度を有するゲート絶縁膜を比較的低温下で形成することができ、且つスピンコートや印刷法等の簡便な膜形成方法を採用することができる、優れたゲート絶縁膜形成用塗布液を用いて形成したゲート絶縁膜を提供したことにある。
【0021】
また本発明の他の効果は、良好な電荷移動度を有するゲート絶縁膜を比較的低温下で形成することができ、且つスピンコートや印刷法等の簡便な膜形成方法を採用することができる、優れたゲート絶縁膜形成用塗布液を用いて製造した有機薄膜トランジスタを提供したことにある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、実施例1〜15又は比較例1〜5の塗布液から得られた薄膜をゲート絶縁膜とする有機薄膜トランジスタの概略断面図である。
【図2】図2は、実施例1、7及び13並びに比較例1の塗布液から得られた薄膜をゲート絶縁膜とする有機薄膜トランジスタの電流密度(Current Density)と電圧(Electric Field)の関係を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例1、7及び13並びに比較例1の塗布液から得られた薄膜をゲート絶縁膜とする有機薄膜トランジスタのドレイン電流(Drain Current)とゲート電圧(Gate Voltage)の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のゲート絶縁膜形成用塗布液について詳細に説明する。
【0024】
本発明のゲート絶縁膜形成用塗布液で使用されるポリアミド化合物は、その繰り返し単位中に、下記一般式(I)又は(II)で表される構造を有し、その構造中に、フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有していることに特徴がある。
【化5】

(式中、環Aは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよく、Rは炭素原子数2〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基、炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。)
【化6】

(式中、環Bは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。)
【0025】
前記一般式(I)における環A又は前記一般式(II)における環Bで表される、炭素原子数6〜18のアリーレン基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,5−ナフチレン基、2,5−ナフチレン基、アントラセン−ジイル、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−p−ターフェニレン基、4,4’−m−ターフェニレン基、2−フル−1,4−オロフェニレン基、2,5−ジメチル−1,4−フェニレン基等が挙げられる。
【0026】
前記一般式(I)における環A又は前記一般式(II)における環Bで表される炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基としては、メチリデンジフェニレン基、エチリデンジフェニレン基、プロピリデンジフェニレン基、イソプロピリデンジフェニレン基、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェニレン基、プロピリデン−3,3’,5,5’−テトラフルオロジフェニレン基、フルオレン−9−イリデンジフェニレン基等が挙げられる。
【0027】
前記一般式(I)におけるRで表される炭素原子数2〜10のアルキレン基としては、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン等が挙げられる。
【0028】
前記一般式(I)におけるRで表される炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基としては、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビシクロヘキサン、ジシクロヘキサン等の2価の基が挙げられる。
【0029】
前記一般式(I)におけるRで表される炭素原子数6〜18のアリーレン基としては、前記の環Aにおけるものと同様の基が挙げられる。
【0030】
前記一般式(I)におけるRで表される炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリール基としては、前記の環Aにおけるものと同様の基が挙げられる。
【0031】
本発明のゲート絶縁膜形成用塗布液で使用される前記一般式(I)のポリアミド化合物の構造には、フェノール性水酸基と、該フェノール性水酸基に隣接するアミド基とで、脱水閉環した、下記一般式(VI)の構造が含まれていてもよい。
【化7】

(式中、環A及びRは、前記一般式(I)と同様である。)
【0032】
本発明ゲート絶縁膜形成用塗布液で使用されるポリアミド化合物は、その硬化物の物性(高ガラス転移温度、低線膨張係数、引張強度、伸び、可撓性)の点から、繰り返し単位中に、前記一般式(I)又は一般式(II)の構造のみのものを含む、下記一般式(III)又は下記一般式(IV)の構造を有するものが好ましい。
【化8】

(式中、環Aは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよく、Rは炭素原子数2〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基、炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。nは正数である。)
【化9】

(式中、環Bは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。mは正数である。)
【0033】
前記一般式(III)における環Aで表される炭素原子数6〜18のアリーレン基としては、前記一般式(I)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0034】
前記一般式(III)における環Aで表される炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基としては、前記一般式(I)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0035】
前記一般式(III)におけるRで表される炭素原子数2〜10のアルキレン基としては、前記一般式(I)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0036】
前記一般式(III)におけるRで表される炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基としては、前記一般式(I)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0037】
前記一般式(III)におけるRで表される炭素原子数6〜18のアリーレン基としては、前記一般式(I)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0038】
前記一般式(III)におけるRで表される炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリール基としては、前記一般式(I)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0039】
また、前記一般式(III)におけるnとしては2〜100であるものが、溶媒、エポキシ樹脂、その他配合物との溶解性及び硬化後の特性の点から好ましい。
【0040】
前記一般式(IV)における環Bで表される炭素原子数6〜18のアリーレン基としては、前記一般式(II)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0041】
前記一般式(IV)における環Bで表される炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基としては、前記一般式(II)におけるものと同様の基が挙げられる。
【0042】
また、前記一般式(IV)におけるmとしては2〜100であるものが、溶媒、エポキシ樹脂、その他配合物との溶解性及び硬化後の特性の点から好ましい。
【0043】
本発明ゲート絶縁膜形成用塗布液で使用されるポリアミド化合物としては、前記一般式(I)又は一般式(III)中の環A及び/又はRがフェニレン基又はナフチレン基である化合物が好ましい。
【0044】
本発明ゲート絶縁膜形成用塗布液で使用されるポリアミド化合物のより具体的な構造としては、例えば、以下のNo.1〜No.11の構造が挙げられる。但し、本発明は以下の構造によりなんら制限を受けるものではない。
【0045】
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【0046】
本発明のゲート絶縁膜形成用塗布液で使用されるポリアミド化合物は、フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有する、フェノール性水酸基含有芳香族ジアミンから得ることができる。すなわち本ポリアミド化合物は、フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有する、フェノール性水酸基含有芳香族ジアミンと、ジカルボン酸類(各種芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸等)とを原料として、構成されるポリアミド化合物である。アミノ基と隣接する位置につく、フェノール性水酸基の数は、特に限定されず、例えば原料の芳香族ジアミン1分子について、1個〜4個である。もちろん本ポリアミド化合物は、フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有するジアミン以外のジアミン化合物(各種芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン等)をさらに原料として、構成成分としてもよいし、フェノール性水酸基を含有するジカルボン酸をさらに使用してもかまわない。
【0047】
前記のフェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有する、フェノール性水酸基含有芳香族ジアミンの例としては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−トリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォキサイド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、ベンチジン、3,3’−ジメチルベンチジン、3,3’−ジメトキシベンチジン、3,3’−ジアミノビフェニル、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、o−キシリレンジアミン、2,2’−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ベンゼン、1,3’−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−エチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−プロピルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジプロピルフェニル)メタン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン等の芳香族ジアミンの、アミノ基と隣接する位置に、水酸基が1個〜4個結合しているものが挙げられる。
但し、これらに限定されるものではない。またこれらは1種又は2種以上混合して用いても良いし、水酸基の結合していない芳香族ジアミンと併用してもよい。水酸基の結合していない芳香族ジアミンの例は前記したものが挙げられる。
【0048】
また、フェノール性水酸基をアミノ基と隣接する位置に有する、フェノール性水酸基含有芳香族ジアミンと反応し、本発明のポリアミド化合物を構成する、ジカルボン酸類の例としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−オキシ二安息香酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−、メチレン二安息香酸、4,4’−メチレン二安息香酸、4,4’−チオ二安息香酸、3,3’−カルボニル二安息香酸、4,4’;−カルボニル二安息香酸、4,4’−スルフォニル二安息香酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシイソフタル酸、3−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸、2,2’−ビス(3−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。またこれらは1種又は2種以上混合して用いても良い。
【0049】
本発明のゲート絶縁膜形成用塗布液は、前記ポリアミド化合物を含有するエポキシ樹脂硬化性組成物である。
【0050】
このエポキシ樹脂硬化性組成物に用いられるエポキシ樹脂としては、特に制限されず、公知の芳香族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が用いられる。
【0051】
前記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ノボラック、テトラブロモビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等の多価フェノールのグリシジルエーテル化合物が挙げられる。
【0052】
前記脂環族エポキシ化合物としては、少なくとも1個以上の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又はシクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。例えば、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルへキシル等が挙げられる。
【0053】
前記脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー等が挙げられる。代表的な化合物として、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル、またプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖ニ塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。さらに、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、また、これらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0054】
このエポキシ樹脂硬化性組成物において、前記ポリアミド化合物は、エポキシ樹脂の硬化剤として作用する。このエポキシ樹脂硬化性組成物における前記ポリアミド化合物(硬化剤)の使用量は、特に限定されず、通常は、エポキシ化合物の全エポキシモル数と硬化剤の官能基数の比が0.9/1.0〜1.0/0.9であるが、好ましくは、エポキシ化合物の使用量がエポキシ樹脂硬化性組成物において10〜80重量%、硬化剤の使用量がエポキシ樹脂硬化性組成物において5〜90重量%となる範囲から、前記の比を満足するように選択する。
【0055】
また、フッ素置換された硬化剤は吸水率の低いエポキシ樹脂となるので好ましいが、フッ素置換化合物は一般に高価であり、他の特性値等も含め、用途に応じて適宜選択される。
【0056】
さらに、このエポキシ樹脂硬化性組成物には、前記ポリアミド化合物以外のエポキシ樹脂硬化剤を用いることもできる。他の硬化剤と組み合わせて使用することで得られる硬化性組成物の粘度や硬化特性、また、硬化後の物性等を制御することが期待できる。他の硬化剤としては、潜在性硬化剤、ポリアミン化合物、ポリフェノール化合物等が挙げられる。本発明の効果を阻害せずにこれら他の硬化剤を併用した効果を発揮させるためには、全硬化剤中、好ましくは0.1〜40重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%となるように用いる。
【0057】
前記潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド、ヒドラジド、イミダゾール化合物、アミンアダクト、スルホニウム塩、オニウム塩、ケチミン、酸無水物、三級アミン等が挙げられる。これら潜在性硬化剤は、一液型の硬化性組成物を与え、取り扱いが容易なので好ましい。
【0058】
前記イミダゾール化合物としては、例えば2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル,4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種イミダゾール類、及び、それらイミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類が挙げられる。
【0059】
前記酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物等が挙げられる。
【0060】
前記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等の脂環族ポリアミン、m−キシレンジアミン等の芳香環を有する脂肪族アミン、m−フェニレンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等の芳香族ポリアミンが挙げられる。
【0061】
前記ポリフェノール化合物としては、例えば、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、テルペンジフェノール、テルペンジカテコール、1,1,3−トリス(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)ブタン、ブチリデンビス(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0062】
以上述べた本発明のゲート絶縁膜形成用塗布液のエポキシ樹脂硬化性組成物は、前記のエポキシ樹脂及び硬化剤に、更に有機溶媒及びレベリング剤を含有していることが、スピンコート法や印刷法にて適用する観点から好ましいものである。
【0063】
この有機溶媒としては、前記エポキシ樹脂と硬化剤を溶解し、スピンコート法や印刷法にて適用するために適した粘度(周知の粘度)にすることのできるもの(この意味では希釈剤と呼称されることもある)で、本発明の効果を阻害しないものであれば特に限定されず使用することができ、例えば、アルコール類、エーテル類、ラクタム類、イミダゾール類、アセタール類、ケトン類、エステル類、アルコールエステル類、ケトンアルコール類、エーテルアルコール類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類、エステルエーテル類、芳香族系溶剤等の有機溶剤を挙げることができ、具体的な好ましいものとしては、例えば、N−メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−エチル−4−メチルイミダゾール等を挙げることができ、特にプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。有機溶媒の使用量は任意であって、前記スピンコート法や印刷法にて適用するために適した周知の粘度とするに要する必要十分な量とすればよいので一概には言えないが、通常、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量100質量部に対して、50〜5000質量部、好ましくは200〜1000質量部の範囲で使用すればよい。一例を示すと、プロピレングリコールモノメチルエーテルであれば、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量100質量部に対して、100〜2000質量部、好ましくは300〜600質量部を使用すればよい。その他の溶媒は、これと同様の粘度となるように適宜用いればよい。
【0064】
前記レベリング剤は、粘調な液体表面を平滑化させる目的で使用されるものであり、前記エポキシ樹脂硬化性組成物に溶解可能で、本発明の効果を阻害することのないものであればどのようなレベリング剤であっても使用することができるが、好ましくはフッ素系界面活性剤等のレベリング剤がよく、市販のレベリング剤も使用することができ、例えばDIC株式会社製のF−470(フッ素系界面活性剤)及び同程度の前記性質を有するレベリング剤を好ましいものとして例示することができる。レベリング剤の使用量は任意であって、前記スピンコート法や印刷法にて適用するために適した周知の平滑性とするに要する必要十分な量とすればよいので一概には言えないが、通常、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量100質量部に対して、0.001〜10質量部、好ましくは0.005〜5質量部の範囲で使用すればよい。一例を示すと、DIC株式会社製F−470であれば、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量100質量部に対して、0.1〜5質量部、好ましくは0.2〜1質量部を使用すればよい。
【0065】
以下、本発明のゲート絶縁膜及び有機薄膜トランジスタについて詳述する。
本発明のゲート絶縁膜は、本発明のゲート絶縁膜形成用塗布液を用いて、200℃以下の焼成温度にて成膜してなるものである。ここで、「本発明のゲート絶縁膜形成用塗布液を用いる」とは、本発明のゲート絶縁膜形成用塗布液を基板上のゲート電極に塗布することを言う。
【0066】
本発明のゲート絶縁膜において、本発明のゲート絶縁膜形成用塗布液を塗布する基板は任意であり、得ようとする有機薄膜トランジスタの仕様によって適宜選択すればよいが、例えば、機械的な柔軟性を求める場合には、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック材料が適している。
【0067】
前記ゲート電極としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、カルシウム等の金属や、カーボンブラック、フラーレン類、カーボンナノチューブ等の無機材料等、さらには、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフルオレン及びこれらの誘導体等の有機π共役ポリマー等が挙げられる。
【0068】
本発明のゲート絶縁膜形成用塗布液の塗布方法は、ディップ法、スピンコート法、印刷法、ロールコート法、インクジェット法、スプレー法、刷毛塗り法等で行うことができる。
【0069】
本発明のゲート絶縁膜形成用塗布液を基板(基板上のゲート電極)に塗布した後の焼成方法は特に限定されるものではないが、例えばホットプレートやオーブンを用いて、適切な雰囲気下、即ち大気、窒素等の不活性ガス存在下、或いは真空中(30Pa以下、好ましくは10Pa以下)等で行うことができ、その温度は200℃以下、好ましくは170〜190℃程度で行えばよい。
【0070】
前記の焼成により、溶媒が蒸発すると共に、塗布液中に含まれるエポキシ樹脂を硬化させることができ、本発明のゲート絶縁膜形成用塗布液から成膜された本発明のゲート絶縁膜とすることができる。
【0071】
本発明のゲート絶縁膜は、ゲート絶縁膜は、薄すぎると低電界で絶縁破壊が発生しトランジスタとして動作しなく、また厚すぎると、トランジスタを動作させるために高い電圧が必要となることから、その膜厚としては、300〜1500nmが好ましく、より好ましくは500〜800nmである。
【0072】
本発明の有機薄膜トランジスタは、ゲート絶縁膜として、本発明のゲート絶縁膜を有する以外は、従来公知ないし周知の有機薄膜トランジスタと同様の構成であり、特に制限されないものである。
【実施例】
【0073】
本発明を実施例を挙げてさらに説明する。但し、以下の実施例等により本発明はなんら制限を受けるものではない。
【0074】
〔合成例1〕実施ポリマー1(No.1の構造を有するポリアミド)の合成
2,4−ジアミノフェノール5.49g(0.045モル)をN−メチルピロリドン(以下NMP)40g及びピリジン15.33gの混合物に溶かした溶液に、イソフタロイルクロライド10.05g(0.0495モル)をNMP40gに溶かした溶液を−15〜0℃で滴下した。−15〜0℃を保持したまま2時間反応させ、さらに室温で2時間反応させた。この反応溶液を、約2リットルのイオン交換水で再沈後、ろ過して150℃で3時間減圧乾燥して白色粉末(実施ポリマー1)15g(収率79.1%)を得た。得られた化合物は、赤外吸収スペクトルによりアミド結合の形成を確認し、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより重量平均分子量の7000のポリマーであることを確認した。また、分析により粘度は270cps(25℃、30重量%NMP溶液)でOH当量は289g/eqであった。
【化23】

【0075】
〔合成例2〜17〕
合成例1と同様にして下記の実施ポリマー2〜17を合成した。得られた実施ポリマーの重量平均分子量、粘度、OH当量を下記に示す。
【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【0076】
〔実施例1〜15、比較例1〜5〕
前記合成例で得られた実施ポリマーを用いて表1に記載の配合により、本発明のゲート絶縁膜形成用塗布液と比較のためのゲート絶縁膜形成用塗布液を調製した。調製したゲート絶縁膜形成用塗布液のゲート絶縁膜としての特性を評価するために、図1に示すような評価用有機薄膜トランジスタ(TFT)を次のようにして製作した。
即ち、ボトムゲート・トップコンタクト型素子を、ガラス基板1上に、Cr膜(幅2mmの引き出し電極、厚さ約100nm)をゲート電極3として蒸着法により作製し、その上に各ゲート絶縁膜形成用塗布液を、スピンコーターで3000rpm×120秒にて基板上に塗布し、100℃×10分の加熱により溶媒乾燥を行った後、180℃×90分の熱処理をしてゲート絶縁膜2(700nm厚)を形成し、その上に、有機半導体層4としてポリ−(3−ヘキシル)チオフェンを、キシレンを溶媒としてスピン塗工し、その上にソース電極(5,6)及びドレイン電極(5,6)(チャンネル長100μm×幅2mm)を金蒸着法(厚さ30nm)により積層して評価用有機薄膜トランジスタを製作した。
【0077】
前記有機薄膜トランジスタについて、Keithley社製の半導体パラメータアナライザーSCS4200を用いて輸送特性を測定し、その飽和領域から電荷移動度μを算出した。具体的には、下記式で示される飽和領域におけるドレイン電流IDの絶対値の平方根を縦軸に、ゲート電圧VGを横軸にプロットしたときのグラフの傾きから求めた。測定は、窒素ガス雰囲気下、遮光状態で行った。結果を表1に示す
【数1】

上記式において、Wはトランジスタのチャネル幅、Lはトランジスタのチャネル長、Cはゲート絶縁膜の静電容量、VTはトランジスタの閾値電圧、μは電荷移動度である。
表1において、実施ポリマー、エポキシ樹脂、PGM及び界面活性剤の数字は質量部である。電流密度は、I-V測定の結果において、電界強度が0.5MV/cmのときの値である。静電容量は、ゲート絶縁膜の比誘電率と膜厚から求めた。また表1中の記号は以下の通りである。
【0078】
EP−1:株式会社ADEKA製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名EP−4100
EP−2:ジャパンエポキシレジン株式会社製4,4’−ビフェニルエポキシ樹脂、商品名YX−4000H
EP−3:DIC株式会社製ナフタレン型エポキシ樹脂、商品名HP−4032
EP−4:DIC株式会社製フェノールノボラック型エポキシ樹脂、商品名N−665
EP−5:株式会社ADEKA製、脂環式エポキシ樹脂、商品名EP−4088
PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
界面活性剤:DIC株式会社製、商品名F−470
【0079】
【表1】

【0080】
上記表1より、本発明のゲート絶縁膜形成用塗布液から成膜されたゲート絶縁膜は、高電圧を印加しても電流密度が10-10A/cm2オーダーしか流れず、非常に優れた絶縁性を示すと共に、比較用のゲート絶縁膜に比して、良好な電荷移動度を示した。
【符号の説明】
【0081】
1:ガラス基板
2:ゲート絶縁膜
3:ゲート電極(Cr蒸着膜)
4:有機半導体層
5、6:ソース、ドレイン電極(Au蒸着膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位中に、下記一般式(I)又は(II)で表されるフェノール性水酸基を有する構造を有するポリアミド化合物を含有する、エポキシ樹脂硬化性組成物からなるゲート絶縁膜形成用塗布液。
【化1】

(式中、環Aは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよく、Rは炭素原子数2〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基、炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。)
【化2】

(式中、環Bは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。)
【請求項2】
前記ポリアミド化合物が、下記一般式(III)又は(IV)で表されるフェノール性水酸基を有する構造を有する請求項1記載のゲート絶縁膜形成用塗布液。
【化3】

(式中、環Aは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよく、Rは炭素原子数2〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜18のシクロアルキレン基、炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。nは正数である。)
【化4】

(式中、環Bは炭素原子数6〜18のアリーレン基又は炭素原子数13〜25のアルキリデンジアリーレン基を表し、これらの基はハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。mは正数である。)
【請求項3】
前記一般式(I)又は(III)中の環Aが、フェニレン基又はナフチレン基である請求項1又は2記載のゲート絶縁膜形成用塗布液。
【請求項4】
前記一般式(I)又は(III)中のRが、フェニレン基又はナフチレン基である請求項1〜3の何れかに記載のゲート絶縁膜形成用塗布液。
【請求項5】
更に有機溶媒及び/又はレベリング剤を含有する、請求項1〜4の何れかに記載のゲート絶縁膜形成用塗布液。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のゲート絶縁膜形成用塗布液を用いて、200℃以下の焼成温度にて成膜してなることを特徴とするゲート絶縁膜。
【請求項7】
請求項6に記載のゲート絶縁膜を有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−151091(P2011−151091A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9523(P2010−9523)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構「超フレキシブルディスプレイ部材技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】