説明

ゲート装置及び自動改札機

【課題】複数の通行者の人体を介して人体通信が行われたとしても、通行者と人体通信媒体を正しく関連付けることができるゲート装置及び自動改札機を提供する。
【解決手段】複数の人体通信パッド4−1〜4−nを配置した改札通路12を複数の通行者P4、P5が接近して通行しており、人体通信部4は、人体通信パッド4−1〜4−nにより人体通信媒体15Aと、通行者の人体を介して人体通信する。人体通信部4は、複数の人体通信パッド4−1〜4−nから一斉に人体通信媒体15Aへ応答要求を送信する。制御部10は、正規の人体通信パッド4−2に接続された受信部4R−2が人体通信媒体15Aからの応答信号を最も早く検出した場合には、人体通信パッド4−2の位置に、人体通信媒体15Aを所持する通行者がいると判定し、2番目以降に検出したときには、人体通信パッド4−2の位置にいる通行者は無札と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通行者の通行を制御するゲート装置及び自動改札機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触ICカード(RFIDタグ)を通行券として使用し、この通行券の有無により通路の通行を制御するゲート装置が普及している。このゲート装置では、通行券である非接触ICカードを入口側に設置されたアンテナにかざして、通行券を能動的に読み取らせる必要がある。
【0003】
近時、通行者が通行券を能動的に読み取らせる動作が不要なゲート装置が提案されている(特許文献1参照)。このゲート装置では、通路に電極を設置し、通行券である人体通信媒体(ユーザデバイス)を所持する通行者の人体を、人体通信媒体と電極との間を接続するキャパシタの誘電体として機能させる。つまり、ゲート装置は、通行者の人体を介して、電極と人体通信媒体との間で人体通信を行う。したがって、図1(A)に示す通行者P1のように、電極Aに人体通信媒体Bを能動的に提示しなくても、人体通信媒体Bを所持しているだけで、人体通信媒体に記録された情報をゲート装置に読み取らせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−172103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通行券として人体通信媒体を用いるゲート装置では、通路を通行する複数の通行者の間隔が狭いと、複数の通行者の人体を介して、別の通行者が所持する人体通信媒体と通信することがあった。例えば、図1(B)に示すように、通行者P2と通行者P3が接近して通行していると、通行者P3が所持する人体通信媒体Bから、通行者P3の人体と通行者P2の人体を介して、電極Aに信号が伝わることがあった。そのため、ゲート装置が人体通信媒体Bと通信して媒体情報を取得した際に、通行者P3が所持する人体通信媒体Bと、この人体通信媒体Bを所持していない別の通行者P2と、を誤って関連付けてしまうという問題があった。
【0006】
このような問題が発生すると、通行者P2は、無札にもかかわらず、通路の通行が可能となる。
【0007】
そこで、この発明は、複数の通行者の人体を介して人体通信が行われたとしても、通行者と人体通信媒体を正しく関連付けることができるゲート装置及び自動改札機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のゲート装置は、上記目的を達するために、以下のように構成している。
【0009】
ゲート装置の人体通信部は、通行者の人体を介して人体通信媒体と通信を行う人体通信アンテナが複数接続されている。人体通信部は、複数の人体通信アンテナ毎に、人体通信媒体から送信される送信信号を検出する。判定部は、人体通信媒体からの送信信号を最も早く検出した人体通信アンテナの位置に、この人体通信アンテナにより最も早く送信信号を検出された人体通信媒体を所持する通行者が位置していると判定する。
【0010】
通路を複数の通行者が接近して通行している場合、人体通信アンテナと人体通信媒体は、複数の通行者の人体を介して通信することがある。この場合、複数の人体通信アンテナ毎に人体通信媒体から送信される送信信号を検出すると、人体通信部は、人体通信媒体と、この人体通信媒体を所持する通行者(所持者)の人体だけを介する伝搬経路だけでなく、所持者及び他の通行者の人体を介する伝搬経路でも通信する。このように複数の伝搬経路で通信が行われた場合、人体通信媒体から送信された送信信号の伝搬経路が最も短い人体通信アンテナが、最も早く送信信号を検出する。これは、人体通信部が、人体通信アンテナにより人体通信媒体と人体通信を行うと、人体通信媒体からの送信信号を検出するまでの時間は、人体通信アンテナと人体通信媒体との伝搬経路長に比例するからである。そのため、送信信号を最も早く検出した人体通信アンテナを特定することで、この通信アンテナの位置に、この人体通信アンテナにより最も早く送信信号を検出された人体通信媒体の所持者が位置していると判定できる。したがって、通行者と、人体通信媒体と、を正しく関連付けることができる。また、1つの人体通信アンテナについて着目したときには、送信信号を最も早く検出したかどうかで、その人体通信アンテナの位置における通行者が、この送信信号を送信した人体通信媒体を所持しているかどうかを判定できる。
【0011】
人体通信部は、人体通信媒体に対する応答要求を、複数の人体通信アンテナから一斉に送信する。そして、複数の人体通信アンテナ毎に、人体通信媒体からの応答信号を検出する。
【0012】
人体通信媒体に対する応答要求を複数の人体通信アンテナから個別に送信すると、どの人体通信アンテナからの応答要求に対する応答信号を判別し、また、応答要求を送信してから応答信号を検出するまでの時間を計測しなければならず、処理が煩雑になる。これに対して、上記のように複数の人体通信アンテナから一斉に応答要求を送信することで、応答信号を検出するための構成や処理を簡素化することができ、また、短時間で容易に検出できる。
【0013】
ゲート装置の構成を自動改札機に適用する場合には、応答要求として乗車券情報の送信要求を送信し、人体通信媒体から応答信号として乗車券情報を受信するように構成するとよい。
【0014】
人体通信部は、複数の人体通信アンテナが並列に接続された1つの送信部と、複数の人体通信アンテナにそれぞれ接続された複数の受信部と、により構成するとよい。
【0015】
通行者の位置に応じて、応答信号を検出する人体通信アンテナの位置が変わるので、人体通信媒体からの応答信号を検出する受信部については、複数の人体通信アンテナに個別に受信部を接続する。
【0016】
複数の人体通信アンテナから一斉に人体通信媒体へ応答要求を送信する構成としては、複数の人体通信アンテナに個別に送信部を接続し、各送信部から一斉に応答要求を送信する構成も可能である。しかし、このように構成すると、各送信部の回路のばらつきなどにより、応答要求の出力タイミングがばらついてしまう。一方、上記のように、1つの送信部に、複数の人体通信アンテナを並列に接続することで、回路による応答要求の出力タイミングのばらつきは発生しない。したがって、複数の人体通信アンテナに個別に送信部を接続した構成よりも、応答要求の出力タイミングのばらつきを抑制できる。また、回路構成を簡素ができ、部品コストを抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、複数の通行者の人体を介して人体通信が行われたとしても、通行者と人体通信媒体を正しく関連付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1(A)は、通行者が所持する人体通信媒体と電極が通信する際の信号の伝搬経路(電気力線)を例示する模式図である。図1(B)は、近接して通行する2人の通行者のうち、後ろ側の通行者が所持する人体通信媒体と電極が通信する際の信号の伝搬経路(電気力線)を例示する模式図である。
【図2】図2(A)は、本実施形態に係る自動改札機を改札通路の入口側から見た正面図である。図2(B)は、本実施形態に係る自動改札機の側面図である。
【図3】自動改札機の制御系を示すブロック図である。
【図4】図4(A)は、改札通路に配置した人体通信パッドと、改札通路を通行する通行者との位置関係を示す図である。図4(B)は、人体通信部が、人体通信媒体と通信した際の応答時間を示す図である。
【図5】自動改札機の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明のゲート装置の一実施形態である自動改札機について説明する。
【0020】
図2(A)は、本実施形態に係る自動改札機を改札通路の入口側から見た正面図である。図2(B)は、本実施形態に係る自動改札機の側面図である。
【0021】
図2(A)に示すように、自動改札機1は、対になる自動改札機11と改札通路12を挟んで対向して設置されている。図2(B)においては、自動改札機1の右側が改札通路の入口、自動改札機1の左側が改札通路の出口である。以下の説明では、自動改札機1は、乗車券(検札対象媒体)として人体通信媒体のみを使用できるものとするが、磁気券や非接触ICカード(RFIDタグ)などの周知の乗車券も使用できるように構成してもよい。
【0022】
人体通信媒体は、人体通信パッドを通過した人体を介して人体通信する機能を有し、乗車券情報が内蔵メモリに記録されている乗車券である。人体通信パッドは、本発明の人体通信アンテナに相当する。
【0023】
自動改札機1は、筐体1Aの上面に液晶モニタ8Aを備えている。また、筐体1Aの改札通路12側の側面に、スピーカ2A、扉7A、及び複数の光電センサ9を備えている。また、改札通路12の路面に設置された人体通信パッド4−1〜人体通信パッド4−nを備えている。
【0024】
人体通信パッド4−1〜4−nは改札通路12の入口から出口までの間の路面において、一定間隔で設置されている。人体通信パッド4−1〜4−nは電極(人体通信アンテナに相当)を内蔵している。各人体通信パッド4−1〜4−nは、通行者の位置を正確に検出するために、重ならないように設置されている。
【0025】
扉7Aは、改札通路12(自動改札機1)の出口に設けられている。扉7Aは、後述の扉駆動処理部7により開状態または閉状態に切り替えられる。
【0026】
複数の光電センサ9は、改札通路12に沿って一定間隔で配列されている。各光電センサ9は、対となる自動改札機の一方に発光部を設け、他方に受光部を設けた透過型の構成であり、赤外光を改札通路12に照射して通行者の人体に遮蔽されるか否かを検出する。自動改札機1では後述の制御部10が、複数の光電センサ9の出力がオフになる領域に、改札通路12に進入した通行者が位置すると推定し、通行者の位置を追跡する。そして、通行者に対して、追跡した位置に応じた適切な制御タイミングで、その位置に応じた処理を行う。
【0027】
液晶モニタ8Aは、改札通路12の出口側に設けられている。自動改札機1は、液晶モニタ8Aに、利用者に対する案内表示や警告表示を表示する。
【0028】
図3は、自動改札機の制御系を示すブロック図である。自動改札機1は、制御部10、放音処理部2、人体通信部4、計時部5、扉駆動処理部7、表示処理部8、及び上述の複数の光電センサ9を備えている。
【0029】
制御部10は、自動改札機1における各部の動作を制御する。
【0030】
放音処理部2は、制御部10が出力する制御信号に基づいて不図示のメモリから音声信号を読み出して再生し、スピーカ2Aから通行者に対して各種音声情報を報知する。例えば、放音処理部2は、扉7Aを閉じて通行を禁止した際に音声で報知する。
【0031】
人体通信部4は、1つの送信部4Sと、n個の受信部4R−1〜4R−nを備えている。送信部4Sには、人体通信パッド4−1〜4−nが並列に接続されている。受信部4R−1〜4R−nは、人体通信パッド4−1〜4−nと個別に接続されている。
【0032】
人体通信部4は、一例として電界方式で人体通信を行う。人体通信部4では、送信部4Sが、人体通信パッド4−1〜4−nから人体通信媒体へ、人体通信パッドを通過する通行者Pの人体表面の電界に変動を与えて信号を送信する。また、受信部4R−1〜4R−nが、人体通信媒体15による電界の変動を信号として検出する。これにより、人体通信媒体15を所持する通行者Pが改札通路12を通過する際には、人体通信パッド4−1〜4−nのいずれかと人体通信媒体15との間に、通行者Pの人体を介して信号の伝搬経路ができる。
【0033】
人体通信部4は、送信部4Sにより人体通信パッド4−1〜4−nを介して人体通信媒体15へ一斉に応答要求、すなわち、乗車券情報の送信要求信号を送信する。また、人体通信部4は、受信部4R−1〜4R−nにより、人体通信媒体からの応答すなわち乗車券情報を人体通信パッド4−1〜4−n毎に検出すると、制御部10へ検出した乗車券情報を出力する。各受信部4R−1〜4R−nは、計時部5へ乗車券情報を出力する際に、乗車券情報を検出した人体通信パッドの個体識別情報を一緒に出力する。
【0034】
計時部5は、送信部4Sが乗車券の送信要求を送信するタイミングに、内蔵するタイマで応答時間の計時を開始し、予め設定された一定時間Tuが経過するまで計時を継続する。また、計時部5は、制御部10からの出力指示が入力されると、現在の応答時間の情報を制御部10へ出力する。
【0035】
扉駆動処理部7は、制御部10が出力する制御信号に基づいて、改札通路12における通行者の通行を制限するときには扉7Aを閉状態にし、改札通路12における通行者の通行を許可するときには、扉7Aを開状態にする。
【0036】
表示処理部8は、制御部10が出力する制御信号に基づいてメモリから画像信号を読み出して、液晶モニタ8Aに各種画像情報を表示させて、通行者に情報を報知する。
【0037】
制御部10は、受信部4R−1〜4R−nのいずれかから乗車券情報及び人体通信パッドの個体識別情報を受信すると、計時部5が計時している時間情報、すなわち応答時間の情報を取得する。そして、制御部10は、各受信部4R−1〜4R−nが受信した乗車券情報と、人体通信パッドの個体識別情報と、計時部5が計時した応答時間の情報と、に基づいて、人体通信媒体を所持する通行者の位置を判定する。制御部10は、本発明の判定部に相当する。
【0038】
次に、自動改札機1の処理について説明する。図4(A)は、改札通路に配置した人体通信パッドと、改札通路を通行する通行者との位置関係を示す図である。図4(B)は、人体通信部が、人体通信媒体と通信した際の応答時間を示す図である。図5は、自動改札機の処理を説明するためのフローチャートである。
【0039】
図4(A)に示す例では、以下の条件で、通行者が通行しているものとする。
【0040】
通行者P4,P5は、改札通路12を矢印Yの方向に通行している。通行者P4は人体通信パッド4−2の位置にいる。通行者P5は人体通信パッド4−4の位置にいる。
【0041】
通行者P4は人体通信媒体を所持していない(無札)。通行者P5は人体通信媒体15Aを頭の位置で所持している(有札)。
【0042】
人体通信部4は、人体通信パッドを通過する通行者が所持する人体通信媒体と通信する。改札通路12を通行する通行者P4と通行者P5の間隔が狭いために、両者の間で信号の伝搬(信号の乗り移り)発生する。すなわち、人体通信部4が、複数の人体通信パッド4−1〜4−nにより人体通信媒体15Aと通信するとき、人体通信媒体15Aから、人体通信媒体15Aを所持する通行者(所持者)P5の人体を介する伝搬経路K1で、人体通信パッド4−4へ信号が伝搬する。また、人体通信媒体15Aから、人体通信媒体15Aを所持する通行者(所持者)P5の人体及び他の通行者P4の人体を介する伝搬経路K2で、人体通信パッド4−2へ信号が伝搬する。
【0043】
人体通信部4が、人体通信パッドにより人体通信媒体と人体通信を行う場合、人体通信パッドから人体通信媒体へ応答要求を送信してから応答を受信するまでの応答時間は、人体通信パッドと人体通信媒体との信号の伝搬経路長に比例する。上記のように複数の伝搬経路(K1、K2)で通信が行われる場合、所持者P5は、最も短い伝搬経路で通信した人体通信パッド4−4の位置にいると判定できる。最も短い伝搬経路K1では、人体通信媒体15Aからの応答が最も早く、応答時間(T1)が最も短い。したがって、応答信号を最も早く検出した人体通信パッドを特定することで、この通信パッドの位置に人体通信媒体の所持者がいると判定できる。
【0044】
人体通信パッド4−1〜4−nには、それぞれ個体識別情報(ID)が割り当てられている。人体通信パッド4−1〜4−nの各IDは、4−1〜4−nとする。
【0045】
また、人体通信パッド4−2を通行者が乗車券を所持しているかどうかを判定する正規の人体通信パッドとし、その他の人体通信パッド4−1,4−3〜4−nを信号の乗り移り確認用の人体通信パッドとする。
【0046】
制御部10は、乗車券情報を検出した受信部が、人体通信パッド4−2に接続された受信部4R−2と、それ以外の受信部4R−1,4R−3〜4R−nと、のいずれであるかを信号が入力された際に検出できるように構成されている。例えば、制御部10のn個の入力ポートに、それぞれ受信部4R−1〜受信部4R−nを接続し、受信部と入力ポートを対応付けておき、信号が入力される毎に入力ポートを確認することで、いずれの受信部から信号が入力されたかを検出できる。
【0047】
自動改札機1の制御部10は、一定の時間間隔でポーリングを行っており、人体通信媒体に対する応答要求として、乗車券情報の送信要求を人体通信部4に送信させている。図5に示すように、人体通信部4は、乗車券情報の送信要求を、人体通信パッド4−1〜4−nから一斉送信すると(S1)、この送信タイミングに計時部5で計時を開始する(S2)。
【0048】
人体通信部4の受信部4R−1〜4R−nは、乗車券情報の受信を待ち受けている(S3:N)。制御部10は、受信部4R−1〜4R−nのうちのいずれかが人体通信パッドで、人体通信媒体15Aからの応答信号、すなわち、乗車券情報を検出(受信)すると(S3:Y)、乗車券情報が入力された受信部の情報と、計時部5が計時している応答時間の情報とを取得し、一時的に記憶する(S4)。
【0049】
制御部10は、予め設定した一定時間Tuが経過するまで(S5:N)、上記ステップS3〜S4の処理を繰り返す。
【0050】
制御部10は、一定時間Tuが経過すると(S5:Y)、記憶した全ての情報(乗車券情報が入力された受信部の情報と、計時部5が計時している応答時間の情報)を確認する。そして、受信部4R−2が受信した乗車券情報の応答時間が最も短いかどうかを判定する(S6)。なお、受信部4R−2は、正規の人体通信パッドである人体通信パッド4−2が接続された受信部である。
【0051】
制御部10は、受信部4R−2が受信した乗車券情報の応答時間が最も短い場合には(S6:Y)、人体通信パッド4−2の位置にいる通行者は人体通信媒体を所持していると判定する(S7)。そして、制御部10は、この通行者の通行を許可し、続いて、人体通信媒体に対して今回の利用情報などを記録する(S8)。制御部10は、通行者の入場処理を行う場合には、人体通信媒体に今回の利用情報として入場情報を記録させる。制御部10は、通行者の出場処理を行う場合には、人体通信媒体に今回の利用情報である出場情報の記録や、運賃の精算処理などを行う。
【0052】
制御部10は、ステップS8の処理が終了すると、扉駆動処理部7に出口側に設置された扉7Aを開にさせる(S9)。そして、制御部10は、ステップS1以降の処理を再度行う。
【0053】
一方、図4に示した例のように、制御部10は、ステップS6において、受信部4R−2が受信した乗車券情報の応答時間が2番目以降の場合には(S6:N)、信号の乗り移りが発生しており、人体通信パッド4−2の位置にいる通行者は人体通信媒体を所持していないと判定する(S10)。この場合、制御部10は、この通行者の通行を禁止し、扉駆動処理部7に扉7Aを閉状態にさせる(S11)。そして、制御部10は、放音処理部2及び表示処理部8に指示して、通行を禁止した理由や対処の方法などを液晶モニタ8Aに表示させ、また、スピーカ2Aから警報音を放音させ、改札処理を停止する(S12)。
【0054】
このように、本実施形態の自動改札機1は、上述の処理を実行するので、複数の通行者が近接して通行している場合でも、人体通信パッド4−1〜4−nを通過する通行者が人体通信媒体を所持しているかどうかを確実に判定できる。したがって、通行者と、その通行者が所持する人体通信媒体と、を正しく関連付けることができる。
【0055】
なお、上述の説明では、制御部10のn個の入力ポートにそれぞれ受信部4R−1〜受信部4R−nを接続した場合について説明したが、本発明は、これに限るものではない。
【0056】
例えば、制御部10の1つの入力ポートCに受信部4R−2を接続し、別の1つの入力ポートDに受信部4R−1,4R−3〜4R−nを全て接続するようにしてもよい。そして、入力ポートCと入力ポートDのどちらが先に信号を入力されるかを検出してもよい。このようにすることで、計時部での応答時間の計測が不要になる。
【0057】
また、上述の説明のように、制御部10のn個の入力ポートにそれぞれ受信部4R−1〜受信部4R−nを接続した場合でも、どの入力ポートが最も早く信号が入力されるかを検出するように構成してもよい。このように構成しても、計時部での応答時間の計測が不要になる。
【0058】
また、上述の説明では、人体通信部4が1つの送信部4Sを備え、n個の人体通信パッド4−1〜4−nが並列に接続されたものとしたが、これに限るものではない。例えば、人体通信媒体の応答時間のばらつきをある程度許容できる場合には、人体通信部4にn個の送信部を設けて、n個の人体通信パッド4−1〜4−nを個別に接続してもよい。
【0059】
また、上述の説明では、人体通信部4は、人体通信パッド4−1〜4−nから乗車券情報の送信要求(応答要求)を送信し、人体通信媒体15Bから送信された乗車券情報(応答信号)を検出する例を挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、人体通信パッド4−1〜4−nから乗車券情報の送信要求を送信せずに、人体通信媒体15Bから送信信号として乗車券情報を所定の間隔で送信するように構成することも可能である。このように構成した場合も、上記の説明と同様に、人体通信媒体と通信する際の信号の伝搬経路が最も短い人体通信パッドが、最も早く乗車券情報(送信信号)を検出する。したがって、最も早く乗車券情報(送信信号)を検出した人体通信パッドの位置に、この送信信号を送信した人体通信媒体を所持する通行者が位置する判定できる。
【0060】
また、上述の説明では、本願発明を駅などでの改札業務に使用する自動改札機を例に挙げて説明したが、これに限るものではなく、人体通信を利用した入退室管理など、本願発明は様々なゲート装置や、乗車券を提示することなく料金の精算を行う精算機などに適用できる。
【0061】
また、人体通信パッド4Aに電極を内蔵させて、電界方式により人体通信を行う例を挙げて説明したが、これに限るものではなく、他の方式で人体通信を行ってもよい。例えば、電流方式、UHF帯電磁波方式、弾性波方式(超音波方式)、エバネセント通信方式など、他の方式を用いてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1,11−自動改札機 2−放音処理部 2A−スピーカ 4−人体通信部 4−1〜4−n−人体通信パッド 5−計時部 7−扉駆動処理部 7A−扉 8−表示処理部 8A−液晶モニタ 9−光電センサ 10−制御部 15,15A−人体通信媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通行者の人体を介して人体通信媒体と通信を行う人体通信アンテナが複数接続され、前記複数の人体通信アンテナ毎に、前記人体通信媒体から送信される送信信号を検出する人体通信部と、
前記人体通信媒体からの送信信号を最も早く検出した人体通信アンテナの位置に、該人体通信アンテナにより最も早く送信信号を検出された人体通信媒体を所持する通行者が位置していると判定する判定部と、
を備えたゲート装置。
【請求項2】
前記人体通信部は、前記複数の人体通信アンテナから前記人体通信媒体に対する応答要求を一斉に送信し、前記応答要求に応答した人体通信媒体からの応答信号を検出する、請求項1に記載のゲート装置。
【請求項3】
前記人体通信部は、前記複数の人体通信アンテナが並列に接続された1つの送信部と、前記複数の人体通信アンテナがそれぞれ接続された複数の受信部と、を備えた、請求項1または2に記載のゲート装置。
【請求項4】
通行者の人体を介して人体通信媒体と通信を行う人体通信アンテナが複数接続され、前記複数の人体通信アンテナから前記人体通信媒体に対する乗車券情報の送信要求を一斉に送信し、前記送信要求に応答した人体通信媒体から送信される乗車券情報を検出する人体通信部と、
前記人体通信媒体からの乗車券情報を最も早く検出した人体通信アンテナの位置に、該人体通信アンテナにより最も早く乗車券情報を検出された人体通信媒体を所持する通行者が位置していると判定する判定部と、
を備えた自動改札機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−194934(P2012−194934A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60009(P2011−60009)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】