説明

ゲート開閉装置

【課題】許可された車両(移動体)のみがゲートを安全に通過することができるゲート開閉装置を提供する。
【解決手段】車両1がゲート5の前に敷設されているループコイル3aを通過または停止すると、ループコイル3aは車両1を検知する。ループコイル3aはその旨をゲート開閉手段6の制御部7に伝える。指向性アンテナ4は、車両1に搭載されたアクティブ無線タグ2から送信された識別コードを受信する。制御部7は、識別コードが入場許可されたものであるか否かを識別コード照合部8に照会する。識別コードが入場許可するものである場合であって、ループコイル3aから車両検知の結果を受信している場合には、制御部7はゲート開閉手段6に対して、ゲート5を開け車両1を通過させる指令を出力する。タイマー9を設けて、車両センサ3が車両を検出して一定時間以上経過した場合は、指向性アンテナ4がアクティブ無線タグ2から識別コードを受信しても、ゲート5を開かない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、駐車場の出入口で使用されるゲート開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車場には、その出入口にゲート開閉装置が設置されている。このゲート開閉装置は許可された車両のみが入退場を行うことができるよう入退場を規制するものである。このようなゲート開閉装置では、ドライバーがゲート開閉装置の直近に車両を停止し、駐車券やIDカード等をゲート開閉装置に設置されたリーダへ読み込ませて検知させることによって、当該車両が入退場できるようになっている。
【0003】
従って、車両を運転するドライバーは、車両をリーダに手が届く位置に正しく停止させる必要がある。しかしながら、初心者のドライバーの場合、車両をリーダに手が届く位置に停止させることは難しい場合が多い。
【0004】
また、日本国内で走行する車両は、多くの場合、右ハンドル車であることから、このリーダは車両の右側に設置されることがほとんどである。その為、車両が左ハンドル仕様の場合には、ドライバーが車両をリーダに手が届く位置に正しく車を停止できても、助手席の窓から身を乗り出すようにして、リーダに駐車券やIDカードを認識させる必要があり、非常に不便であった。
【0005】
上記の問題点を解決する技術として、車両先端部に設けられたパッシブ無線タグからの識別コードを、ゲートに設けられたアンテナが受信した際に、ゲートを開閉するものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−258664
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1は、パッシブ無線タグを使用している。このパッシブ無線タグの読取有効範囲は1m以下が一般的である。そのため、ドライバーは正確な位置で車を停止させる必要がある。しかし運転に慣れないドライバーは、停止位置に車両を停止させることができない場合がある。一方、ドライバーが誤って車両をゲートに接触させてしまうおそれもある。
【0007】
このような問題を回避するため、車の停車位置が厳密でなくとも、広い範囲で無線タグの電波を検知できるよう、無線出力を上げ、より高出力の電波を使用する方法もある。あるいは、アクティブ無線タグを使用して、パッシブ無線タグよりも、より遠距離から、その電波を検知できるようにする方法などもある。しかし、これらの場合、目的とする車以外に装着されている無線タグの電波を検知してしまう問題があった。
【0008】
特に、この問題は、車両が駐車場に出入りする場合に限らず、例えば、人間が建物に出入りする場合など、無線タグの発信する識別コードにより移動体がゲートを開閉させる場合全般に発生する。そのため、無線タグを移動体に固定することなく、しかも、誤検出により無線タグを持たない移動体がゲートを通過することのないゲート開閉装置の出現が期待されていた。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するもので、その目的は、無線タグを移動体に固定して取り付けることなく、入場を許可された移動体のみがゲートを安全に通過することができる利便性の高いゲート開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明のゲート開閉装置は、移動体を検知する移動体センサと、前記移動体センサ近傍に設けられ、前記移動体に搭載されたアクティブ無線タグから発信された識別コードを受信する指向性アンテナと、ゲートの開閉動作を行うゲート開閉手段と、前記移動体センサが移動体を検知し、かつ前記アクティブ無線タグから発信された識別コードを前記指向性アンテナが受信した場合に、前記ゲート開閉手段に対して、ゲートの開放動作を行わせる制御部を備えたことを特徴とする。
【0011】
このような構成を有する本発明では、指向性アンテナが一定範囲にあるアクティブ無線タグから送信された識別コードを受信し、且つ、移動体センサが車両を検知するという2つの要件を満たした場合に限って、移動体がゲートを通過することができる。また、指向性アンテナを用いて、受信範囲をより狭くできるので、アクティブ無線タグの混信や誤受信によって不用意にゲートが開閉することを防止できる。
【0012】
また、本発明では、前記移動体センサが移動体を検知後に一定時間を計測するタイマーを設け、前記制御部を、前記タイマーが計測する前記移動体センサが移動体を検知してから一定時間以内に、前記指向性アンテナが前記アクティブ無線タグから識別コードを受信しない場合に、ゲートの開放動作を行わないものとすることも可能である。このようにすると、ゲート前にアクティブ無線タグを所有しない移動体が長時間停止し、その後アクティブ無線タグを搭載した移動体がゲートに接近した場合でもゲートは開かないので、ゲート前に停止しているアクティブ無線タグを持たない移動体がゲート内に侵入することを防止でき、一層セキュリティ強化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、指向性アンテナが一定範囲にあるアクティブ無線タグから送信された識別コードを受信し、且つ、移動体センサが車両を検知するという2つの要件を満たした場合に限って、移動体がゲートを通過することができる。また、ゲート近傍を通過し、ゲート内に進入する意志のない移動体に搭載されたアクティブ無線タグによって、ゲートが不用意に開くことも防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、後述するように本発明の移動体は車両に限らず人や貨物等も含むものであるが、以下の実施の形態においては一例として車両を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
本実施形態は、指向性アンテナによるアクティブ無線タグの検出と、車両センサによる車両の検出とを組み合わせて、ゲートの開閉を行うものである。
【0015】
図1に示すように、1は、本発明の移動体の一例である車両、2は、識別コードが記憶されたアクティブ無線タグであり、車両1に搭載されている。本実施形態では、このアクティブ無線タグ2は、無線タグに吸盤を備えたチェーンを付けて、例えばフロントガラス等車内の窓に備え付けている。ここで、例えば、300MHzのアクティブ無線タグの場合、車内いずれの場所に搭載しても、後述する指向性アンテナ4によってアクティブ無線2から発信される識別コードを受信できるので、車両1の内外のどの場所でも設置は可能である。
【0016】
ループコイル3a,3bは、本発明の移動体センサに相当する。すなわち、このループコイル3a,3bは、その上に車両1が進入した場合のコイルのインダクタンス変化を捕らえ、車両1を検知するものである。本実施形態では、ゲート前の路面に引かれた停止線A近傍にループコイル3aが敷設されている。車両1の後方がゲートを通り抜けた位置の路面にはループコイル3bが敷設されている。このループコイル3a,3bの検出結果は、有線あるいは無線の回線を介して後述する制御部7に送信される。
【0017】
4は指向性アンテナであり、車両センサ近傍のアクティブ無線タグ2からの識別コード信号を受信する。この指向性アンテナ4が識別コードを受信する範囲は、誤検知を防止するため、ループコイル3aの近傍に設定されている。これは、例えば、識別コードが記憶されたアクティブ無線タグを有しない車両が前方に、識別コードが記憶されたアクティブ無線タグを有する車両が後方に連続して進入してきた際に、後方の車両の識別コードを誤って検知してゲートが開いてしまうことを防ぐためである。
【0018】
5は、ゲートである。このゲートとは、シャッター、扉、ストッパー等の進入方向を規制できるものをいうが、本実施形態では、一端を支点として他端が昇降する片持ち式の棒状の部材を使用する。6は、図示しないモータや油圧装置などの駆動源と、リンク機構などのメカニズムから構成されたゲート開閉手段であり、このゲート開閉手段6には、ゲート開閉用の制御部7が設けられている。
【0019】
この制御部7は、前記指向性アンテナ4が受信したアクティブ無線タグ2からの識別コードが入場許可されたものであるか否かを識別し、当該識別コードが入場を許可されたものである場合に、更に前記車両センサ3が車両を検知したことを条件に、ゲート開閉手段6にゲート5の開閉指令を出力する。そのため、制御部7は、アクティブ無線タグ2が記憶している識別コードが許可されたものであるか否かについて記憶した識別コード照合部8を有している。
【0020】
[1−2.作用]
以下、本実施形態の作用を、図2のフローチャートに基いて説明する。
【0021】
車両1がゲート5前の停止線Aに近づき、停止線Aが引かれている近傍に敷設されているループコイル3aを通過(またはループコイル3a位置で停止)すると、ループコイル3aは車両1を検知する。そして、ループコイル3aは、その旨をゲート開閉手段6の制御部7に伝える(ステップ201のYES)。
【0022】
一方、ループコイル3aが敷設されている路面近傍にアクティブ無線タグ2が存在する場合には、指向性アンテナ4は、アクティブ無線タグ2が送信した識別コードを受信する。そして、識別コードを受信した指向性アンテナ4は、その識別コードをゲート開閉手段6の制御部7に伝える(ステップ202のYES)。
【0023】
制御部7は、指向性アンテナ4が受信した識別コードが、入退場を許可された識別コードであるか否か確認するため、識別コード照合部8を制御して照合する。指向性アンテナ4が受信した識別コードが、入退場を許可された識別コードである場合であって(ステップ203のYES)、かつ、ループコイル3aが車両を検知している場合には、制御部7は、ゲート5を制御し、ゲート5を開放する(ステップ204)。ループコイル3bが、車両1がゲートを通過したことを検知した場合には(ステップ205のYES)、ループコイル3bは、その旨を制御部7に伝え、制御部7はゲート開閉手段6を制御することによって、ゲート5を閉める(ステップ206)。
【0024】
[1−3.効果]
以上のような本実施形態によれば、指向性アンテナがループコイルの近傍といった一定範囲にあるアクティブ無線タグが送信する識別コードを受信し、且つ、ループコイルが車両を検知するという2つの要件を満たした場合に限って、制御部は、ゲートを開け車両を通行させることができる。そのため、ループコイル3a近傍以外の場所で、アクティブ無線タグが送信した識別コードを、指向性アンテナが受信してゲートが開くという事態を防止できる。ゲート前に偶然存在したアクティブ無線タグを搭載していない車両がいたとしても、この車両は、ゲートを通過することができない。
【0025】
すなわち、アクティブ無線タグ単独ではなく、アクティブ無線タグと移動体センサに相当するループコイルとの2つの検出手段を用いる。この2つの検出手段によりアクティブ無線タグを有する車両が所定位置であるループコイル近傍にあることを検出した後にゲートの開閉を行うから、アクティブ無線タグを持たない車両がループコイル近傍に停止いるだけではゲートが開かず、また、車両がアクティブ無線タグを所有していてもその車両がループコイルに達しない限りはゲートが開くことがない。
【0026】
[2.第2実施形態]
[2−1.構成]
次に、本発明の第2の実施形態について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3において図1に示されたものと同様の構成要素には、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0027】
図3に示された実施の形態では、図1で示した第1の実施形態の構成において、制御部7にタイマー9を設けたものである。このタイマー9は、ループコイル3aを通過(またはループコイル3a位置で停止)した車両1をループコイル3aが検知した時から、制御部7において定められた一定時間を計測し、一定時間を計測後に制御部7にゲート5の開放を禁止する信号を送るものである。このゲート5の開放を禁止する信号を受信した制御部7は、ゲート開閉手段6を制御してゲートを閉状態に保ち、指向性アンテナ4が車両1に搭載されたアクティブ無線タグの識別信号を受信しても、ゲートを開放しないように構成されている。
【0028】
[2−2.作用]
以下、第2実施形態の作用を、図4のフローチャートに基いて説明する。
車両1がゲート5前の停止線A近傍に近づき、停止線A近傍の路面に敷設されているループコイル3aを通過(またはループコイル3a位置で停止)すると、ループコイル3aは車両1を検知する(ステップ401のYES)。そして、ループコイル3aはその旨を制御部7に送り、制御部7は、タイマー9に予め定めた時間を計測させる(ステップ402)。タイマー9の計測時間を経過前に、車両1に搭載されたアクティブ無線タグ2が送信した識別コードを制御部7が指向性アンテナ4から受信した場合(ステップ402のYES)、制御部7は、指向性アンテナ4が受信した識別コードと識別コード照合部8に記憶されている識別コードとを照合する。
【0029】
識別コード照合部8の照合の結果、指向性アンテナ4が受信した識別コードが、入場を許可されたものである場合には(ステップ403のYES)、制御部7はゲート開閉手段6を制御して、ゲート5を開け(ステップ404)車両1を通過させる。その後、ループコイル3bが車両1を検知すると(ステップ405のYES)、制御部7はゲート開閉手段6を制御して、ゲート5を閉じる(ステップ406)。
【0030】
一方、タイマー9の計測時間を経過するまでに、指向性アンテナ4が識別コードを受信しない場合には(ステップ402のNO)、タイマー9はゲート5の開放を禁止する信号を制御部7に送信し、ゲート5の開放を禁止する信号を受信した制御部7は、たとえ車両をループコイル3aが検知していてもゲート5を閉状態に保つ(ステップ407)。その後、車両がループコイル3aによって検知されなくなった後は、ステップ1の処理に戻る(ステップ408のNO)。
【0031】
[2−3.効果]
以上のような本実施形態によれば、指向性アンテナがループコイルの近傍といった一定範囲にあるアクティブ無線タグが送信する識別コードを受信し、且つ、ループコイルが車両を検知するという2つの条件と、ループコイルが車両を検知後一定時間以内に指向性アンテナが識別コードを受信という条件を満たした場合に限って、制御部は、ゲートを空け車両を通行させることができる。つまり、車両1がゲートを通過するために満たすべき条件が1つ増えたので、セキュリティーの強化を図ることができる
【0032】
特に、たとえループコイル3aが車両を検出しても、一定時間経過後はゲート5が開放することがないので、アクティブ無線タグを持たない車両がループコイル3aの位置で待機し、他のアクティブ無線タグを持った車両が接近した際にその識別コードを利用してゲート内に進入することを防止できる。
【0033】
[3.その他の実施形態]
本発明は、前記各実施形態に加えて、次のような他の実施形態も包含するものである
(1)指向性アンテナがアクティブ無線タグからの識別コードを受信できる範囲は、適宜変更可能である。また、タイマー9の設定時間も予め設定可能である。
(2)第1実施形態及び第2実施形態では、指向性アンテナがゲート横に設置されていたが、設置場所は適宜変更可能である。また、車両センサ(移動体センサ)の設置位置も適宜変更可能である。
【0034】
(3)第1実施形態及び第2実施形態では、アクティブ無線タグが搭載された車両を対象として説明したが、車両だけでなく、人間や貨物も対象とすることができる。例えば、マンションの入り口のセキュリティ、コンベヤによって移送する荷物やコンテナの倉庫への入出庫、仕分けにも応用することができる。
【0035】
(4)第1実施形態及び第2実施形態では、制御部をゲート開閉手段部分に設けたが、ゲートから離れた監視装置や制御用のコンピューター部分に配置する構成としてもよい。
(5)車両等の検知センサは、ループコイルに限られず、超音波方式又は赤外線方式といった公知の手段を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態の構成を示す構成図
【図2】本発明の第1実施形態の処理の流れを示すフローチャート
【図3】本発明の第2実施形態の構成を示す構成図
【図4】本発明の第2実施形態の処理の流れを示すフローチャート
【符号の説明】
【0037】
1…車両
2…アクティブ無線タグ
3a,3b…ループコイル
4…指向性アンテナ
5…ゲート
6…ゲート開閉手段
7…制御部
8…識別コード照合部
9…タイマー
A…停止線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を検知する移動体センサと、
前記移動体センサ近傍に設けられ、前記移動体に搭載されたアクティブ無線タグから発信された識別コードを受信する指向性アンテナと、
ゲートの開閉動作を行うゲート開閉手段と、
前記移動体センサが移動体を検知し、かつ前記アクティブ無線タグから発信された識別コードを前記指向性アンテナが受信した場合に、前記ゲート開閉手段に対して、ゲートの開放動作を行わせる制御部を備えたことを特徴とするゲート開閉装置。
【請求項2】
前記移動体センサが移動体を検知後、一定時間を計測するタイマーを備え、
前記制御部は、前記タイマーが計測する前記移動体センサが移動体を検知してから一定時間以内に、前記指向性アンテナが前記アクティブ無線タグから識別コードを受信しない場合に、ゲートの開放動作を行わないことを特徴とする請求項1に記載のゲート開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−117799(P2010−117799A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289304(P2008−289304)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年8月10日 日本工業出版株式会社発行の「月刊 自動認識 2008.8.」に発表
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】