説明

ゲート駆動回路

【課題】ゲート駆動信号を電源用トランスによって適切に伝達することができるゲート駆動回路を提供する。
【解決手段】ゲート駆動信号を電源用トランス2により絶縁伝達するゲート駆動回路1であって、一次側電圧の駆動タイミングを生成するタイミング生成部4と、駆動タイミングに基づいて一次側電圧を出力するトランス駆動回路部3と、二次側電圧に含まれるパターン信号でゲート駆動信号を検出するパターン検出部6及びフリップフロップ回路部8とを備え、タイミング生成部4は、ゲート駆動信号を時間T1だけ遅延させ、ゲート駆動信号の極性反転タイミングから時間T1経過までの期間は一次側電圧VT1の極性反転を禁止し、時間T1経過直後にゲート駆動信号に応じて時間T1よりも短い時間幅T2,T3をもつパルス状極性反転を有するパターン信号が一次側電圧VT1に含まれるように駆動タイミングを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子のゲートを駆動する回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチング素子のゲートを駆動する回路として、ゲート駆動信号を電源用のトランスによって絶縁伝達するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の回路は、パルス幅デューティサイクル信号とクロック信号とを用いて、パルス幅デューティサイクル信号を変動させ、ゲート駆動信号をトランスによって伝達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−11960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の装置にあっては、クロック信号と同期したタイミングでなければパルス幅デューティサイクル信号を変更することができない。ゲート駆動信号はクロック信号と同期している保証はないため、特許文献1記載の装置では、ゲート駆動信号のHi又はLow(ON又はOFF)のタイミングが遅延するおそれがあるとともに、パルス幅デューティサイクル信号の変更の度に遅延時間が変動して一定とならない場合がある。
【0005】
そこで、本発明はこのような技術課題を解決するためになされたものであって、ゲート駆動信号を電源用のトランスによって電力供給とともに適切に伝達することができるゲート駆動回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係るゲート駆動回路は、スイッチング素子のゲートを駆動させるゲート駆動信号を電源用のトランスにより絶縁伝達するゲート駆動回路であって、前記トランスの一次側の電圧信号の駆動タイミングを生成するタイミング生成手段と、前記駆動タイミングに基づいて前記トランスの一次側の電圧信号を出力するトランス駆動手段と、前記トランスの二次側の電圧信号に含まれるパターン信号に基づいて前記ゲート駆動信号を検出するゲート駆動信号検出手段と、を備え、前記タイミング生成手段は、前記ゲート駆動信号を所定の遅延時間だけ遅延させ、前記ゲート駆動信号の極性反転のタイミングから前記遅延時間経過までの期間は一次側の電圧信号の極性反転を禁止するとともに、前記遅延時間経過直後に、前記ゲート駆動信号に応じて、前記遅延時間よりも短い時間幅をもつパルス状の極性反転を有する前記パターン信号が一次側の電圧信号に含まれるように前記駆動タイミングを生成することを特徴として構成される。
【0007】
本発明に係るゲート駆動回路では、タイミング生成手段により、ゲート駆動信号の極性反転のタイミングから遅延時間経過までの期間はトランスの一次側の電圧信号の極性反転が禁止される。これにより、遅延時間間隔以下の電圧信号の極性変化が生じなくなる。そして、タイミング生成手段により、遅延時間経過直後にゲート駆動信号の極性反転に応じて遅延時間よりも短い時間幅をもつパルス状の極性反転を有するパターン信号を生成することで、ゲート駆動信号の極性反転に関するパターン信号を検出可能な状態でトランスの電圧信号に含ませることができるとともに、パターン信号をトランスの電圧信号にどのタイミングにおいても含ませることが可能となる。よって、ゲート駆動信号をトランスによって適切に伝達することができる。
【0008】
ここで、前記タイミング生成手段は、前記ゲート駆動信号の極性反転状態に応じてパルス状の極性反転の時間幅の長さを変更した前記パターン信号が一次側の電圧信号に含まれるように前記駆動タイミングを生成し、前記ゲート駆動信号検出手段は、前記パターン信号に基づいて前記ゲート駆動信号の極性反転状態を検出することが好適である。
【0009】
このように構成することで、パターン信号の時間幅に基づいてゲート駆動信号の極性反転状態を適切に検出することができる。
【0010】
あるいは、前記タイミング生成手段は、前記ゲート駆動信号の極性反転タイミングに応じた時間幅一定のパルス状の極性反転を有する前記パターン信号が一次側の電圧信号に含まれるように前記駆動タイミングを生成するとともに、前記パターン信号終了から所定時間経過後の一次側の電圧信号の極性と前記ゲート駆動信号の極性とが一致するように前記駆動タイミングを生成し、前記ゲート駆動信号検出手段は、前記パターン信号に基づいて前記ゲート駆動信号の極性反転のタイミングを検出し、前記パターン信号終了から所定時間経過後の二次側の電圧信号の極性に基づいて、前記ゲート駆動信号の極性を検出してもよい。
【0011】
このように構成することで、パターン信号の出現タイミングでゲート駆動信号の極性反転のタイミングを適切に検出することができるとともに、パターン信号終了から所定時間経過後の電圧信号の極性を用いてゲート駆動信号の極性を適切に検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ゲート駆動信号を電源用のトランスによって電力供給とともに適切に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係るゲート駆動回路を示す回路構成図である。
【図2】図1に示すゲート駆動回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】第2実施形態に係るゲート駆動回路を示す回路構成図である。
【図4】図3に示すゲート駆動回路の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係るゲート駆動回路の一実施形態を示す回路構成図である。同図において、本実施形態のゲート駆動回路1は、図示しないIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等のパワースイッチング素子のゲートを駆動する回路である。
【0016】
図1に示すように、ゲート駆動回路1は、トランス2を備えている。トランス2は、一次側から二次側へ絶縁電力供給可能に構成されており、電源用のトランスとして機能する。そして、トランス2は、パワースイッチング素子のゲートを駆動するためのゲート駆動信号を一次側から二次側へ絶縁伝達可能に構成されている。
【0017】
トランス2の一次側は、トランス駆動回路(トランス駆動手段)3を介してタイミング生成部(タイミング生成手段)4及び遅延生成部5と接続されている。一方、トランス2の二次側は、ダイオード9を介して電圧源10と接続されているとともに、パターン検出部(ゲート駆動信号検出手段)6を介してフリップフロップ回路部(ゲート駆動信号検出手段)8と接続されている。
【0018】
最初に、トランス2の一次側の構成について詳細を説明する。タイミング生成部4及び遅延生成部5は、マイコン等により生成された入力ゲート駆動信号SGin1を入力する機能を有している。遅延生成部5は、入力ゲート駆動信号SGin1を所定時間(遅延時間T1)だけ遅延させた入力ゲート駆動遅延信号SGin2を生成する機能を有している。そして、遅延生成部5は、入力ゲート駆動遅延信号SGin2をタイミング生成部4へ出力する機能を有している。なお、遅延生成部5は、入力ゲート駆動遅延信号SGin2を生成するために用いた遅延時間T1のみをタイミング生成部4へ出力してもよい。
【0019】
タイミング生成部4は、トランス2の一次側の電圧信号の駆動周期及び駆動タイミングを生成する機能を有している。ここで、タイミング生成部4は、通常の電源動作としての駆動タイミングとともに、入力ゲート駆動信号SGin1及び遅延時間T1、又は、入力ゲート駆動信号SGin1及び入力ゲート駆動遅延信号SGin2に基づいて、ゲート駆動信号伝達のために、トランス2の一次側の電圧信号の駆動周期及び駆動タイミングを生成する機能を有している。例えば、タイミング生成部4は、入力ゲート駆動信号SGin1の変化、極値(HLデータ値)及び遅延時間T1(又は入力ゲート駆動遅延信号SGin2)に基づいて、トランス2の駆動タイミングを生成する。すなわち、タイミング生成部4は、トランス2の電圧信号にゲート駆動信号に関する情報を含ませる機能を有している。
【0020】
トランス駆動回路部3は、タイミング生成部4により生成された駆動周期及び駆動タイミングでトランス2の一次側の電圧信号を生成し、トランス2の一次側を駆動する。
【0021】
次に、トランス2の二次側の構成について詳細を説明する。トランス2の二次側電圧は、トランス2の巻き線数比に応じて一次側電圧と同じタイミングで振幅が変化する。
【0022】
パターン検出部6は、トランスの二次側に接続されており、二次側の電圧信号に含まれるゲート駆動信号に関する電圧パターン(パターン信号)を検出する機能を有している。そして、パターン検出部6は、検出したパターン信号でデータ判別し、判別結果をフリップフロップ回路部8へ出力する機能を有している。フリップフロップ回路部8は、判別結果を保持する機能を有している。
【0023】
次に、上記構成のゲート駆動回路1の動作について説明する。図2は、ゲート駆動回路1の動作を示すタイミングチャートである。
【0024】
図2に示すように、最初に、タイミング生成部4及び遅延生成部5が入力ゲート駆動信号SGin1を入力する。その後、遅延生成部5が、入力ゲート駆動信号SGin1を遅延時間T1だけ遅延させて入力ゲート駆動遅延信号SGin2を生成する。
【0025】
そして、タイミング生成部4は、入力ゲート駆動信号SGin1が変化したタイミングから遅延時間T1の間はトランス2の駆動極性変化(Hi/Low極性反転)を禁止する。そして、遅延時間T1経過直後に、入力ゲート駆動信号SGin1のHi/Low(ON/OFF)の変化に応じて、遅延時間T1よりも短い時間幅をもつパルス状の極性反転を有するパターン信号が一次側の電圧信号VT1に含まれるように駆動タイミングを生成する。例えば、入力ゲート駆動信号SGin1がLowからHi(OFFからON)へ変化するときには、遅延時間T1よりも短い時間幅T2をもつパルス状の極性反転を有するパターン信号が一次側の電圧信号VT1に含まれるように駆動タイミングを生成する。そして、タイミング生成部4は、パターン信号直後からトランス2の一次側の電圧信号VT1の駆動周期が始まるように、パターン信号直後に駆動周期をリセットする。これにより、トランス駆動回路部3は、入力ゲート駆動信号SGin1が変化したタイミングから遅延時間T1の間はトランス2の駆動極性を変更せず、遅延時間T1経過直後に、時間幅T2をもつパルス状の極性反転を有するパターン信号を出力する。その後、トランス一次側電圧VT1の駆動を最初から実行する。
【0026】
一方、タイミング生成部4は、入力ゲート駆動信号SGin1がHiからLow(ONからOFF)へ変化するときには、遅延時間T1よりも短い時間幅T3をもつパルス状の極性反転を有するパターン信号が一次側の電圧信号VT1に含まれるように駆動タイミングを生成する。そして、タイミング生成部4は、パターン信号直後からトランス2の一次側の電圧信号VT1の駆動周期が始まるように、パターン信号直後に駆動周期をリセットする。これにより、トランス駆動回路部3は、図2中のトランス一次側電圧VT1に示すように、入力ゲート駆動信号SGin1が変化したタイミングから遅延時間T1の間はトランス2の駆動極性を変更せず、遅延時間T1経過直後に、時間幅T3をもつパルス状の極性反転を有するパターン信号を出力する。その後、トランス一次側電圧VT1の駆動を最初から実行する。なお、時間幅T2,T3はそれぞれ異なり、かつ、遅延時間T1よりも短く設定されている。
【0027】
このように、トランス一次側電圧VT1は、入力ゲート駆動信号SGin1の極性変化に応じて、時間幅の異なる所定のパターンを描くように変更される。
【0028】
トランス2の二次側は、トランス2の巻き線数比に応じて一次側電圧VT1と同じタイミングで電圧VT2の振幅を変化させる。パターン検出部6は、二次側電圧VT2の極性変化の時間間隔を検出する。例えば、パターン検出部6は、一定間隔毎に二次側電圧VT2をサンプリングし(図2中の▽印)、Hi,Low,Hi,Hi(HLHH)のパターン又はLow,Hi,Low,Low(LHLL)のパターンで時間間隔T2、Hi,Low,Low,Hi(HLLH)のパターン又はLow,Hi,Hi,Low(LHHL)のパターンで時間間隔T3を検出する。そして、パターン検出部6は、時間間隔T2を検出した場合には、パターン検出出力LOUT1を出力し、時間間隔T3を検出した場合には、パターン検出出力LOUT2を出力する。
【0029】
フリップフロップ回路部8は、パターン検出出力LOUT1,LOUT2を入力して保持する。パターン検出出力LOUT1は、入力ゲート駆動信号SGin1のLowからHiへの極性変化に対応し、パターン検出出力LOUT2は、入力ゲート駆動信号SGin1のHiからLowへの極性変化に対応している。このため、ラッチしたデータは入力ゲート駆動信号SGin1を復元したものとなり、出力ゲート駆動信号SGoutとして出力される。
【0030】
以上、第1実施形態に係るゲート駆動回路1によれば、タイミング生成部4により、入力ゲート駆動信号SGin1の極性反転のタイミングから遅延時間T1経過までの期間はトランス2の一次側の電圧信号VT1の極性反転が禁止される。これにより、遅延時間T1間隔以下の電圧信号の極性変化が生じなくなる。そして、タイミング生成部4により、遅延時間T1経過直後に入力ゲート駆動信号SGin1の極性反転に応じて遅延時間T1よりも短い時間幅T2,T3をもつパルス状の極性反転を有するパターン信号を生成することで、入力ゲート駆動信号SGin1の極性反転に関するパターン信号を検出可能な状態でトランス2の電圧信号VT1に含ませることができる。さらに、従来のように、トランス2の一次側を一定の周波数に同期して駆動させ、その周波数に同期してクロックを生成して信号伝達するように構成されている場合には、クロックの途中でゲート駆動信号が変化しても次のクロックの立ち上がりまたは立ち下がりまで信号の伝達を待たなければならないが、遅延時間T1を設けることで、パターン信号をトランス2の電圧信号VT1にどのタイミングにおいても含ませることが可能となる。よって、フォトカプラ等よりも安価で耐熱性に優れたトランス2を用いて、電力供給とともに入力ゲート駆動信号SGin1を適切に伝達することができる。
【0031】
また、第1実施形態に係るゲート駆動回路1によれば、パターン信号の時間幅T2,T3と入力ゲート駆動信号SGin1のHi/Low極性反転とを関連付けすることで、パターン信号の時間幅T2,T3に基づいて入力ゲート駆動信号SGin1の極性反転状態を適切に検出することができる。さらに、入力ゲート駆動信号SGin1の変化から一定時間後に必ずデータを確定することが可能となるので、信号遅延を一定とすることができる。なお、入力ゲート駆動信号SGin1に比べて出力ゲート駆動信号SGoutは遅延しているが、パワースイッチング素子のON/OFFはデューティ比によって決定されるため、このように信号遅延が一定の場合には素子の制御性が悪化することはない。また、ゲート駆動信号を伝達しない通常の動作では、電源動作として最適に設計することができるため、損失等の増加が少ない。さらに、ゲート駆動信号を伝達する動作であっても、遅延時間は電源動作の周期に対して無視できるほどに小さく、ゲート駆動信号のHi/Lowの周期も電源動作の周期に比べて長いため、電源動作に影響を与えることなくゲート駆動信号を伝達することができる。
【0032】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るゲート駆動回路1は、第1実施形態に係るゲート駆動回路1とほぼ同様に構成され、パターン信号の利用態様が相違する。すなわち、第2実施形態に係るゲート駆動回路1は、パターン信号の出現タイミングでゲート駆動信号のHi/Low状態変化タイミングを伝達するとともに、そのタイミング後のトランス2の駆動の極性で、ゲートのHi/Low状態を伝達する。以下では、説明理解の容易性を考慮して、第1実施形態との相違点を中心に説明し、重複する説明は省略する。
【0033】
図3は、第2実施形態に係るゲート駆動回路1を示す回路構成図である。図3に示すように、第2実施形態に係るゲート駆動回路1は、第1実施形態に係るゲート駆動回路1とほぼ同様であり、フリップフロップ回路部8に代えてラッチ回路(ゲート駆動信号検出手段)12を備える点が相違する。ラッチ回路12は、パターン検出部6で検出された信号に基づいてデータをラッチ(確定)する機能を有している。
【0034】
次に、上記構成のゲート駆動回路1の動作について説明する。図4は、ゲート駆動回路1の動作を示すタイミングチャートである。
【0035】
図4に示すように、最初に、タイミング生成部4及び遅延生成部5が入力ゲート駆動信号SGin1を入力する。その後、遅延生成部5が、入力ゲート駆動信号SGin1を遅延時間T1だけ遅延させて入力ゲート駆動遅延信号SGin2を生成する。
【0036】
そして、タイミング生成部4は、入力ゲート駆動信号SGin1が変化したタイミングから遅延時間T1の間はトランス2の駆動極性変化(Hi/Low極性反転)を禁止する。そして、遅延時間T1経過直後に、入力ゲート駆動信号SGin1のHi/Low(ON/OFF)の変化のタイミングに応じて、遅延時間T1よりも短い一定の時間幅T2をもつパルス状の極性反転を有するパターン信号(クロック情報)が一次側の電圧信号VT1に含まれるように駆動タイミングを生成する。例えば、入力ゲート駆動信号SGin1がLowからHi又はHiからLowへ変化するタイミングでは、時間幅T2をもつパルス状の極性反転を有するパターン信号が一次側の電圧信号VT1に含まれるように駆動タイミングを生成する(図中(ア))。そして、タイミング生成部4は、時間幅T2経過後であって所定時間T3後に入力ゲート駆動信号SGin1のHi/Lowに対応した駆動極性となるように、トランス2の一次側の電圧信号VT1を設定する。すなわち、入力ゲート駆動信号SGin1のHi/Lowと、時間幅T2経過後であって所定時間T3後の電圧信号VT1とを一致させるように、駆動タイミングを設定する。なお、所望の駆動特性でない場合には、さらにT2の時間幅をもって駆動極性を反転させた電圧信号VT1を設定する(図中(イ)参照)。時間T2,T3は、T3−T2が駆動周期T4よりも小さくなるように設定される。なお、入力ゲート駆動信号SGin1に関する情報の伝達が終了した後は、通常の電源動作としての駆動に戻り、一定の駆動時間T4にて駆動する。すなわち、トランス2の一次側の電圧信号VT1の駆動周期が始まるように、パターン信号直後に駆動周期をリセットする。
【0037】
このように、トランス一次側電圧VT1は、入力ゲート駆動信号SGin1の極性変化に応じて、時間幅が同一のパターンを用いた所定のパターンを描くように変更される。
【0038】
トランス2の二次側は、トランス2の巻き線数比に応じて一次側電圧VT1と同じタイミングで電圧VT2の振幅を変化させる。パターン検出部6は、二次側電圧VT2の極性変化から特定の時間間隔(時間幅T2)の極性変化を検出する。例えば、パターン検出部6は、一定間隔毎に二次側電圧VT2をサンプリングし(図4中の▽印)、時間幅T2のパターン信号を検出する。そして、パターン信号を検出後一定期間(T3)の間、クロック情報となる信号(パターン検出出力LOUT1)を出力する。また、極性変化の順番に応じて、パターン検出出力LOUT1だけでなくパターン検出出力LOUT2も出力する。T3−T2がT4よりも小さいとすると、T3経過後のトランス2の駆動極性は、ゲート駆動信号のHi/Lowに対応した駆動極性となる。
【0039】
ラッチ回路12は、パターン検出出力LOUT1,LOUT2の両信号によりトランス2の二次側の極性(Hi/Low値)をラッチする。図4では、両信号のパルスの立ち下がりエンジのタイミングでラッチしている例を示している。パターン検出出力LOUT1,LOUT2は、入力ゲート駆動信号SGin1のHi/Lowの極性変化のタイミングに対応し、T3経過後には二次側電圧VT2の極値がゲート駆動信号のHi/Low状態に対応しているため、ラッチしたデータは入力ゲート駆動信号SGin1を復元したものとなり、出力ゲート駆動信号SGoutとして出力される。
【0040】
以上、第2実施形態に係るゲート駆動回路1によれば、タイミング生成部4により、入力ゲート駆動信号SGin1の極性反転のタイミングから遅延時間T1経過までの期間はトランス2の一次側の電圧信号VT1の極性反転が禁止される。これにより、遅延時間T1間隔以下の電圧信号の極性変化が生じなくなる。そして、タイミング生成部4により、遅延時間T1経過直後に入力ゲート駆動信号SGin1の極性反転に応じて遅延時間T1よりも短い時間幅T2をもつパルス状の極性反転を有するパターン信号を生成することで、入力ゲート駆動信号SGin1の極性反転に関するパターン信号を検出可能な状態でトランス2の電圧信号VT1に含ませることができる。さらに、従来のように、トランス2の一次側を一定の周波数に同期して駆動させ、その周波数に同期してクロックを生成して信号伝達するように構成されている場合には、クロックの途中でゲート駆動信号が変化しても次のクロックの立ち上がりまたは立ち下がりまで信号の伝達を待たなければならないが、遅延時間T1を設けることで、パターン信号をトランス2の電圧信号VT1にどのタイミングにおいても含ませることが可能となる。よって、フォトカプラ等よりも安価で耐熱性に優れたトランス2を用いて、電力供給とともに入力ゲート駆動信号SGin1を適切に伝達することができる。
【0041】
また、第2実施形態に係るゲート駆動回路1によれば、時間幅T2のパターン信号の出現タイミングで入力ゲート駆動信号SGin1の極性反転のタイミングを適切に検出することができるとともに、時間幅T2のパターン信号終了から所定時間T3経過後の電圧信号VT1の極性を用いて入力ゲート駆動信号SGin1の極性を適切に検出することが可能となる。さらに、入力ゲート駆動信号SGin1の変化から一定時間後に必ずデータを確定することが可能となるので、信号遅延を一定とすることができる。なお、入力ゲート駆動信号SGin1に比べて出力ゲート駆動信号SGoutは遅延しているが、パワースイッチング素子のON/OFFはデューティ比によって決定されるため、このように信号遅延が一定の場合には素子の制御性が悪化することはない。また、ゲート駆動信号を伝達しない通常の動作では、電源動作として最適に設計することができるため、損失等の増加が少ない。さらに、ゲート駆動信号を伝達する動作であっても、遅延時間は電源動作の周期に対して無視できるほどに小さく、ゲート駆動信号のHi/Lowの周期も電源動作の周期に比べて長いため、電源動作に影響を与えることなくゲート駆動信号を伝達することができる。
【0042】
なお、上述した各実施形態は本発明に係るゲート駆動回路の一例を示すものである。本発明に係るゲート駆動回路は、各実施形態に係るゲート駆動回路1に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、各実施形態に係るゲート駆動回路1を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0043】
例えば、上述した各実施形態では、フルブリッジ方式の電源トランス駆動の例を説明したが、ハーフブリッジ方式やプッシュプル方式等でもあってよく、要はトランスを用いた絶縁電源であれば方式を問わずに本発明を採用することができる。
【0044】
また、上述した第1実施形態では、パターン信号の判定に用いるサンプリング回数を4回として説明したが、これに限られるものではなく、時間幅の判定ができれば何回であってもよい。また、サンプリングはデジタル的でなくてもよく、アナログ的な時間幅判定を行ってもよい。また、時間幅T2は時間幅T3よりも短いものとして説明したが、逆の場合であってもよい。
【0045】
さらに、上述した第1実施形態では、2つのパターンのパルス幅を用いる例を説明したが、3つ以上の複数のパルス幅を用いてもよい。この場合、複数のゲート駆動信号の伝達が可能となる。また、上述した第1実施形態における遅延時間T1以下のパルス幅を利用して、シリアル通信としての信号伝達も可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…ゲート駆動回路、2…トランス、3…トランス駆動回路部(トランス駆動手段)、4…タイミング生成部(タイミング生成手段)、5…遅延生成部、6…パターン検出部(ゲート駆動信号検出手段)、8…フリップフロップ回路部(ゲート駆動信号検出手段)、9…ダイオード、10…電圧源、12…ラッチ回路部(ゲート駆動信号検出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子のゲートを駆動させるゲート駆動信号を電源用のトランスにより絶縁伝達するゲート駆動回路であって、
前記トランスの一次側の電圧信号の駆動タイミングを生成するタイミング生成手段と、
前記駆動タイミングに基づいて前記トランスの一次側の電圧信号を出力するトランス駆動手段と、
前記トランスの二次側の電圧信号に含まれるパターン信号に基づいて前記ゲート駆動信号を検出するゲート駆動信号検出手段と、
を備え、
前記タイミング生成手段は、
前記ゲート駆動信号を所定の遅延時間だけ遅延させ、前記ゲート駆動信号の極性反転のタイミングから前記遅延時間経過までの期間は一次側の電圧信号の極性反転を禁止するとともに、前記遅延時間経過直後に、前記ゲート駆動信号に応じて、前記遅延時間よりも短い時間幅をもつパルス状の極性反転を有する前記パターン信号が一次側の電圧信号に含まれるように前記駆動タイミングを生成すること、
を特徴とするゲート駆動回路。
【請求項2】
前記タイミング生成手段は、前記ゲート駆動信号の極性反転状態に応じてパルス状の極性反転の時間幅の長さを変更した前記パターン信号が一次側の電圧信号に含まれるように前記駆動タイミングを生成し、
前記ゲート駆動信号検出手段は、前記パターン信号に基づいて前記ゲート駆動信号の極性反転状態を検出する請求項1に記載のゲート駆動回路。
【請求項3】
前記タイミング生成手段は、前記ゲート駆動信号の極性反転タイミングに応じた時間幅一定のパルス状の極性反転を有する前記パターン信号が一次側の電圧信号に含まれるように前記駆動タイミングを生成するとともに、前記パターン信号終了から所定時間経過後の一次側の電圧信号の極性と前記ゲート駆動信号の極性とが一致するように前記駆動タイミングを生成し、
前記ゲート駆動信号検出手段は、前記パターン信号に基づいて前記ゲート駆動信号の極性反転のタイミングを検出し、前記パターン信号終了から所定時間経過後の二次側の電圧信号の極性に基づいて、前記ゲート駆動信号の極性を検出する請求項1に記載のゲート駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−125100(P2012−125100A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275794(P2010−275794)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】