説明

ゲームチップ、ゲームチップ書込装置、ゲームチップ読取装置及びゲームチップ監視システム

【課題】 センタ側の装置に処理を集中させることなく不正を防止し得る、しかも、通信路の障害時に所望の処理を実行できるゲームチップ、ゲームチップ書込装置、ゲームチップ読取装置を提供する。
【解決手段】 少なくとも識別情報を、ゲームに用いられるゲームチップに書き込むゲームチップ書込装置は、記録用情報の少なくとも一部を秘密鍵で暗号化する暗号化部分と、暗号化された情報を書き込む書込部分とを有する。ゲームチップ読取装置は、暗号化された情報をゲームチップから読み取る読取部分と、読み取られた情報を公開鍵で復号する復号部分とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゲームチップ、ゲームチップ書込装置、ゲームチップ読取装置及びゲームチップ監視システムに関し、例えば、カジノ用のゲームチップやそれを取り扱う装置やシステムに適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
カジノにおけるポーカやルーレット等のライブゲームでは、通貨と換金したゲームチップが使用される。このゲームチップは、カジノ内において貸出によって供給され、ゲームで利用され、ゲームが勝ちの場合には報酬として払い出される。ゲームチップには種々の金額のものがあり、例えば、アメリカ合衆国においては、5000ドルという高価なゲームチップも使用されている。ゲームチップは、カジノや金額(価値)の種類に応じて形状などが異なったり、色分けされていたりする。しかしながら、ゲームチップの形状、構造が単純であるために偽造が容易であり、偽造のゲームチップがカジノ経営にとり大きな問題となっている。
【0003】
そのため、今日では、ゲームチップ(カジノ用のゲームチップを含む)にICタグを適用し、遊技場(カジノ)や金額やチップ番号などの識別情報を読取装置側で識別可能にしたものも提案されている(特許文献1、2参照)。これにより、あるカジノ用の小額のゲームチップが他のカジノの高額のゲームチップとして使用されるようなことや、偽造されたゲームチップが使用されるようなことを防止している。
【特許文献1】特開2001−293242
【特許文献2】特開2003−144742
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ゲームチップに識別情報をそのまま記録した場合には、不正者が読取装置を入手したときには、その識別情報を取得でき、複数の識別情報から、チップ番号の規則性等を把握して偽造を行うことができる。
【0005】
また、真偽判定などを、各読取装置から与えられた識別情報などに基づいて、カジノにおけるセンタサーバが実行するような場合には、センタサーバに処理が集中して過負荷になり易く、各読取装置とセンタサーバとを結ぶネットワークに障害が発生した場合には、真偽判定もできなくなってしまう。
【0006】
識別情報を暗号化してゲームチップに記録することも考えられるが、この場合であっても、センタサーバが、復号化や真偽判定を行うときには、同様に、処理が集中することによる課題や、ネットワーク障害時の課題が生じる。また、この場合であっても、不正者が暗号鍵を不正に入手したときには、偽造を行うことができる。例えば、トレイやチップホルダと呼ばれるものに読取装置を設けた場合、トレイやチップホルダごと、持ち去られたときには、暗号鍵が発見される恐れがある。
【0007】
そのため、センタ側の装置に処理を集中させることなく不正を防止し得る、しかも、通信路の障害時に所望の処理を実行できるゲームチップ、ゲームチップ書込装置、ゲームチップ読取装置及びゲームチップ監視システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、請求項1に係る発明は、少なくとも識別情報を含む記録用情報を記録している、ゲームに用いられるゲームチップであって、上記記録用情報の少なくとも一部を秘密鍵で暗号化して記録していることを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る発明によれば、センタ側の装置に処理を集中させることなく、不正を防止しできると共に、通信路の障害時に所望の処理を実行できるようになる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、暗号化される情報の少なくとも一部は、原データをハッシュ関数を用いて圧縮したものであることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、デジタル署名方式による確認を実行することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、少なくとも識別情報を含む記録用情報を、ゲームに用いられるゲームチップに書き込むゲームチップ書込装置であって、上記記録用情報の少なくとも一部を秘密鍵で暗号化する暗号化手段と、暗号化された情報を上記ゲームチップに書き込む書込手段とを有することを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、センタ側の装置に処理を集中させることなく、不正を防止しできると共に、通信路の障害時に所望の処理を実行できるようになる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、暗号化される情報の少なくとも一部を構成する原データを、ハッシュ関数を用いて圧縮し、上記暗号化手段に引き渡す圧縮手段をさらに有することを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、デジタル署名方式による確認を実行することができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、少なくとも一部の情報が秘密鍵で暗号化されている記録用情報を、ゲームに用いられるゲームチップから読み取るゲームチップ読取装置であって、暗号化された情報を上記ゲームチップから読み取る読取手段と、読み取られた情報を公開鍵で復号する復号手段とを有することを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、センタ側の装置に処理を集中させることなく、不正を防止しできると共に、通信路の障害時に所望の処理を実行できるようになる。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明において、デジタル署名用の原データを外部から取り込む原データ取込手段と、外部から取り込んだ原データを、ハッシュ関数を用いて圧縮する外部原データ圧縮手段と、上記外部原データ圧縮手段による圧縮後の原データと、復号された情報の中に挿入されている圧縮されている原データとを照合する署名確認手段とを有することを特徴とする。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、デジタル署名方式による確認を実行することができる。
【0020】
請求項7に係る発明のゲームチップ監視システムは、請求項1に記載のゲームチップと、請求項3に記載のゲームチップ書込装置と、請求項5に記載のゲームチップ読取装置とを有することを特徴とする。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、センタ側の装置に処理を集中させることなく、不正を防止しできると共に、通信路の障害時に所望の処理を実行できるようになる。
【0022】
請求項8に係る発明のゲームチップ監視システムは、請求項7に係る発明において、請求項2に記載のゲームチップと、請求項4に記載のゲームチップ書込装置と、請求項6に記載のゲームチップ読取装置とを有することを特徴とする。
【0023】
請求項8に係る発明によれば、デジタル署名方式による確認を実行することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、センタ側の装置に処理を集中させることなく不正を防止し得る、しかも、通信路の障害時に所望の処理を実行できるゲームチップ、ゲームチップ書込装置、ゲームチップ読取装置及びゲームチップ監視システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(A)主たる実施形態
以下、本発明に係るゲームチップ、ゲームチップ書込装置、ゲームチップ読取装置及びゲームチップ監視システムをホテルのカジノシステムに適用した第1の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0026】
図1は、実施形態のカジノシステムを含む、ホテルシステムの構成を示すブロック図である。
【0027】
図1において、ホテルシステム100は、ホテルサーバ2、サービスサーバ10、イントラサービスサーバ12、マルチメディアサーバ14、ハウスカードサーバ18、PTS(プレーヤトラッキングシステム)サーバ56、集計・分析サーバ62、カジノデポジットサーバ66等の各種サーバを有し、また、フロント4、レストラン6、バー8、客室16、カジノ22等にもシステムの構成要素が設けられており、上述の構成要素がバス状、メッシュ状、リング状などの任意の網構成を有するネットワークNを介して接続されている。
【0028】
フロント4には、フロント端末4aに加え、このフロント端末4aに収容されている、ハウスカード20を発券するハウスカード発券機4bや、クレジットカードを処理するクレジットカード端末4cが設けられている。ハウスカード20は、当該ホテルに滞在する客を特定することが可能なカードであり、例えば、ルームキーなどの機能も兼ねている。ハウスカード20は、例えば、少なくともリード可能な磁気カードやICカードなどで構成されている。
【0029】
レストラン6やバー8にはそれぞれ、レジ装置(レジPOS装置)6a、8aや、現金に代えてハウスカード20を利用させるべくハウスカード20を読み取るカードリーダ6b、8bが設けられている。客室16には、ビデオオンデマンドやゲームオンデマンドなどに対応するためのセットトップボックス16aや、セットトップボックス16aを利用してビデオオンデマンドやゲームオンデマンドを実行させる際に自己を認証させるべく、ハウスカード20の読取りを実行させるカードリーダ16bが設けられている。
【0030】
カジノ22には、各種ゲームに係る構成に加え、ゲームチップ発行/精算機58が設けられている。ゲームチップ発行/精算機58は、現金とゲームチップとの間の交換(発行/精算)や、ハウスカード20に基づいて客を確認した上でのデポジットとゲームチップとの間の交換(発行/精算)を行うものである。例えば、ルーレットゲームに関して言えば、後述するように、カジノ22には、対をなすルーレット盤24及び遊技台68が設けられている。
【0031】
ホテルサーバ2には、フロント端末4a、レジ装置6a、8a等の総合管理を行うための各種機能が構築されている。サービスサーバ10には、ホテル内で行われる各種のショーやイベントの予約・発券を行うための各種機能が構築されている。イントラサービスサーバ12には、ホテル内のイントラネットを管理する機能が構築されている。マルチメディアサーバ14には、客室16のセットトップボックス16aを介してビデオオンデマンドやゲームオンデマンドで映画やゲームなどを提供する機能が構築されている。
【0032】
ハウスカードサーバ18には、ハウスカード20の管理やハウスカード20の所持者の個人口座の管理などを行うための各種機能が構築されている。ホテルやカジノ22にチェックインした客には、フロント4のカード発券機4bによって、その客を特定するためのハウスカード20が発券され、それ以降、ホテルやカジノ22内において、ハウスカード20を提示してチェックを受けることにより、所定の施設の利用が可能となる。例えば、ホテル内のレストラン6やバー8のレジ装置6a、8aでは、ハウスカード20がカードリーダ6b、8bで読み取られることによって支払請求金額がホテルサーバ2に蓄積され、チェックアウト時に全ての支払請求金額がフロント4の端末4aに表示される。すなわち、ハウスカード20は、後述するカジノ22におけるゲーム管理のためにシステムとリンク可能であり、少なくとも商品購入時や飲食代の支払時におけるクレジットカードとしての機能を有している。
【0033】
PTSサーバ56は、カジノ22における客(プレーヤ)のゲーム結果(例えば、ルーレットゲームの結果)の履歴などを一括管理するものである。集計・分析サーバ62には、配当金算出機能が構築されている。例えば、ルーレットゲームであれば、集計・分析サーバ62の配当金算出機能は、ルーレット盤上におけるルーレット球の位置(出目)と、集計したゲームチップのベット位置及び価値(掛け金)とに基づいて、今回のルーレットゲームの配当金を算出する。カジノデポジットサーバ66は、カジノ22内のデポジットを一括管理しているものである。
【0034】
次に、カジノゲームの構成例として、ルーレットゲームに係る構成を説明する。図2〜図4は、ルーレットゲームに係る構成を示す説明図である。図2は、ルーレット盤に係る構成を示している。図3は、ルーレットゲームに係る遊技台68の概略構成を示している。図4は、ゲームチップのベットの様子を示している。
【0035】
ルーレットゲームは、周知のように、ルーレット盤24に投入されるルーレット球28の出目位置を予想して、予想出目位置に対応するベット部位にゲームチップ30をベットすることにより、出目位置の予想の正否を争うゲームである。
【0036】
ルーレットゲームに係る構成として、ベット用ボード32と、チップ情報記録手段34と、出目検出手段36と、ベット情報検出手段38と、配当金算出手段62aと、ゲームチップ回収手段68aと、ゲームチップ供給手段68bとを有している。
【0037】
ベット用ボード32は、遊技台68上に設けられるものであり、ルーレット盤24の出目位置に対応する複数のベット部位(例えば、0,00,1,2,…,35,36の数字で区分けされた各スポットや、列や行を特定するように区分けされた各スポット等)が割り当てられ、ゲームチップ30をベットするためのものである。
【0038】
チップ情報記録手段34は、ゲームチップ30に設けられ、当該ゲームチップ30に関する情報が記録されたものである。チップ情報記録手段34は、IDタグとして各ゲームチップ30に埋め込まれている。
【0039】
チップ情報記録手段34に記録されているゲームチップ30に関する情報には、図5に示すように、当該ゲームチップ30を特定する固有番号(ゲームチップを識別する番号)INF1、価値(1ドル、5ドル、10ドル等)や色INF2、当該ゲームチップ30を使用可能な場所(カジノ22)INF3、当該ゲームチップ30を所持可能な者を特定する情報(例えば、その者に対応付けられているハウスカード20の情報)INF4等に関する情報が含まれる。ここで、少なくともゲームチップ30を所持可能な者の情報INF4は、原データがハッシュ関数で圧縮されている。また、全ての情報INF1、INF2、…は、秘密鍵によって暗号化された上で、ゲームチップ30に記録されている。
【0040】
出目検出手段36は、ルーレット盤24に設けられ、当該ルーレット盤24上におけるルーレット球28の出目位置や出目種類を検出するものである。
【0041】
ベット情報検出手段38は、ベット用ボード32に設けられ、ベット部位にゲームチップ30がベットされた際に、チップ情報記録手段34に記録されたゲームチップ30に関する情報を読み取ることによって、当該ゲームチップ30のベット位置及び価値を検出するものである。
【0042】
出目検出手段36及びベット情報検出手段38は、その基本構成が同様であり、図4に示すように、ID読取装置と計量装置40とから構成されている。ID読取装置は、X側スキャンドライバ42から互いに平行に延出し、先端が互いに結ばれてループアンテナを形成しているX側アンテナ要素44a及び44b(以下、X側アンテナ44と呼ぶ)と、Y側スキャンドライバ48から互いに平行に延出し、先端が互いに結ばれてループアンテナを形成しているY側アンテナ要素50a及び50b(以下、Y側アンテナ50と呼ぶ)、とを直交配置して構成されている。
【0043】
ID読取装置によれば、例えば、ゲームチップ30がベット用ボード32のベット部位にベットされた状態において、X側アンテナ44から読取用電波(質問電波)を発信させると、そのX側アンテナ44が敷設されている近傍が読取領域となり、Y側アンテナ50からスキャン電波を発信させると、そのY側アンテナ50が敷設されている近傍が読取領域となり、その結果、アンテナ相互のクロスポイント付近が読取領域となる。あるクロスポイント付近にゲームチップ28がベットされていると、そのゲームチップ28のチップ情報記録手段(IDタグ)34は、読取用電波(質問電波)の到来に応じて、記録している情報を含む応答電波を返信し、X側アンテナ44及びY側アンテナ50が応答電波を捕捉する。
【0044】
X側アンテナ44及びY側アンテナ50が捕捉した応答電波が、スキャンドライバ42及び48を介して与えられたベット情報検出手段本体(図示せず)は、ゲームチップ30のベット位置、及び、ゲームチップ30に記録されている情報の原データを認識する。応答電波を捕捉したX側アンテナ44及びY側アンテナ50の組み合わせは、ベット位置を規定するものとなっている。
【0045】
ベット情報検出手段本体は、ゲームチップ30の記録情報が与えられると、図6に示すような処理を実行する。
【0046】
ベット情報検出手段本体は、与えられた記録情報に対して公開鍵を用いて復号を行う(S1)。
【0047】
次に、この復号で得られた、ゲームチップ30を特定する固有番号(ゲームチップを識別する番号)INF1、価値(1ドル、5ドル、10ドル等)や色INF2、当該ゲームチップ30を使用可能な場所(カジノ22)INF3から、ゲームチップ30の正当性を判定する(S2)。この判定時には、必要に応じて、PTSサーバ56と通信を行うようにしても良い。例えば、復号で得られたゲームチップ30の固有番号が、当該カジノで割り当てている固有番号の一つかを確認するようにしても良い。なお、固有番号の一覧データを、ベット情報検出手段本体が保持している場合には、このような通信による確認は不要となる。
【0048】
正当性が確認できない場合には、例えば、当該遊技台や各種サーバで不正の報知動作を行う(S3)。情報INF1〜INF3からは正当と判定したときには、PTSサーバ56から、当該遊技台68でルーレットゲームを楽しんでいるプレーヤP1、P2、P3のハウスカード情報を入手する(S4)。入手したハウスカード情報をそれぞれ、ハッシュ関数で圧縮する(S5)。PTSサーバ56が、ハウスカード情報を送信するに先立ち、ハッシュ関数で圧縮する処理を行うようにしても良い。ベット情報検出手段本体は、今回圧縮した後のハウスカード情報の中に、復号で得られた所持可能な者を特定する情報INF4と一致するものがあるかを判定する(S6)。なお、このステップS6の処理は、デジタル署名の確認処理に該当している。
【0049】
ステップS6の判定の結果、一致するものがなければ、例えば、不正の報知動作を行う(S3)。これに対して、今回圧縮した後のハウスカード情報の中に、復号で得られた所持可能な者を特定する情報INF4と一致するものがあれば、すなわち、デジタル署名の確認が得られれば、ベットされたゲームチップ30を有効なものに設定する(S7)。
【0050】
以上のようにして、検出され、正当性が確認されたデータは、PTSサーバ56や集計・分析サーバ62に送られ、その履歴が一括管理されたり、配当金の算出に利用されたりする。
【0051】
次に、ID読取装置を出目検出手段36に適用する場合について説明する。図2に示すように、ルーレット盤24は、円形の回転体構造を成しており、その中心軸24aに対して同心円状に合計38個のポケット54(図では一部のみを示す)が形成されている。各ポケット54には、ベット用ボード32に割り当てられた複数のベット部位に対応した数字が印刷されている。出目検出手段36は、38個のポケット54にそれぞれ設けられており、ポケット54にルーレット球28が入ったとき、そのルーレット球28は、上述したID読取装置のクロスポイント上に位置付けられる。上述した読取用電波は、遊技中に常時立ち上がった状態にあるため、クロスポイント上にルーレット球28が位置付けられると、そのポケット54の受信状態のみが変化する。この結果、ルーレット盤24のどこの位置(どこのポケット54)にルーレット球28が入ったのかを検出することができる。このとき、検出されたデータは、PTSサーバ56や集計・分析サーバ62に送られ、その履歴が一括管理されたり、配当金の算出に利用されたりする。
【0052】
計量装置40は、ベット用ボード32のベット領域を覆うように配置されており、例えば、半導体圧力センサ等の電子計量計を適用することが可能である。計量装置40には、ゲームチップ一枚当たりのチップ重量が記録されており、ベット用ボード32にベットされたゲームチップ30の総計量値を1チップ重量で割ることによってベットされたゲームチップ30の枚数を算出することができる。この場合、算出されたゲームチップ30の枚数とベット情報検出手段38の検出結果との比較を行って、互いに異なっている場合には、偽造チップが使用されたものと判断して、その旨を例えばディーラーに通知する。
【0053】
なお、ルーレット球28には、当該ルーレット球28を識別するルーレット球識別情報が記録されたルーレット球識別情報記録手段(図示しない)が設けられている。ルーレット球識別情報記録手段は、IDタグとしてルーレット球28に埋め込まれており、ルーレット球識別情報には、当該ルーレット球28の出所や使用可能な場所(カジノ22)、球の種類等の情報が含まれている。
【0054】
ルーレット球識別情報記録手段に記録されたルーレット球識別情報は、出目検出手段36のID読取装置によって読み取ることができる。そして、読み取られた情報に基づいて、使用できるルーレット球28と、そうでないものとの判別を行うことができる。このため、偽造されたルーレット球28を持ち込んで使用するといった不正行為や侵害行為などの発生を完全に防止することが可能となる。
【0055】
集計・分析サーバ62上に構築された配当金算出手段62aは、ルーレット盤24上におけるルーレット球28の位置とゲームチップ30のベット位置及び価値とに基づいて、当該遊技(ルーレットゲーム)の配当金を算出するものである。なお、配当金算出手段62aを、遊技台68に設けるようにしても良い。
【0056】
遊技台68に設けられているゲームチップ回収手段68aは、回収口を有する。1階のルーレットゲームの終了時に、ベット用ボード32にベットされていたゲームチップ30を、熊手状又はT字状の回収道具で引き寄せられて回収口から貯蔵部に移動される。貯蔵部では、回収されたゲームチップ30が価値やそのときのプレーヤによって分別されて貯蔵される。ここで、貯蔵部は、ゲームチップ30の情報の読取、認識構成を有している。
【0057】
遊技台68に設けられているゲームチップ供給手段68bは、配当金に相当するゲームチップ30を、該当するプレーヤのチップ受け台70に供給するものである。チップ受け台70は、例えば、遊技台68に設けられているものであり、後述するハウスカード読取手段60の近傍に設けられているものである。ゲームチップ供給手段68bは、貯蔵部に配当対象のプレーヤに係るゲームチップが配当分だけ存在する場合には、それを供給する。
【0058】
ゲームチップ供給手段68bは、貯蔵部に配当対象のプレーヤに係るゲームチップが配当分より少なく貯蔵されている場合(全く貯蔵されていない場合を含む)には、配当対象のプレーヤ以外の、しかも、現在のプレーヤではないプレーヤに係るゲームチップから供給するものを決定し、供給する。
【0059】
配当対象のプレーヤ以外の、しかも、現在のプレーヤではないプレーヤに係るゲームチップを供給する際には、図7に示すような情報の更新処理を行ってから供給を行う。
【0060】
ゲームチップ供給手段68bは、配当対象のプレーヤのハウスカード情報を、配当対象のプレーヤのハウスカード20が載置されているハウスカード読取手段60から得る(S10)。そのハウスカード情報を、ハッシュ関数で圧縮する(S11)。
【0061】
供給しようとするゲームチップ30から記録情報を読取ってバッファリングした後(S12)、供給しようとするゲームチップ30の記録情報をクリア(例えばオール0を書き込む)させる(S13)。
【0062】
読み取って得た記録情報を公開鍵で復号する(S14)。復号された情報列のうち、当該ゲームチップ30を所持可能な者を特定する情報INF4の部分を、ステップS11で圧縮したハウスカード情報に置き換える(S15)。この置き換えた情報列を秘密鍵で暗号化し(S16)、暗号化された情報を、供給しようとするゲームチップ30に書き込む(S17)。
【0063】
以下、ルーレットゲームを希望する者(プレーヤ)がカジノ22に入場した以降の処理の流れを説明する。
【0064】
カジノ22でのルーレットゲームを希望するプレーヤP1、P2、P3は、上述したハウスカード20を持ってカジノ22に入場した際には、ゲームチップ発行/精算機58で所望枚数のゲームチップ30を入手する。ゲームチップ発行/精算機58は、ハウスカード20の読取構成を備えており、貯蔵しているゲームチップを発行する際には、上述した図7に示すような処理を行って、ハウスカード情報INF4を、ゲームチップ30を入手する者用に書き換えた後、発行する。なお、この発行時には、ゲームチップ発行/精算機58は、PTSサーバ56等に発行に係る情報を送信する。
【0065】
ゲームチップ発行/精算機58からゲームチップ30の発行を受けたプレーヤP1、P2、P3は、ルーレットゲームの遊技台68に出向き、ベット用ボード32のハウスカード読取手段60にハウスカード20をセットする。このとき、ハウスカード読取手段60がハウスカード20の内容を読み取って、そのプレーヤP1、P2、P3を特定し、参加者として認識する。ハウスカード読取手段60による認識データは、PTSサーバ56に送られ、現在のゲームにおける参加者P1、P2、P3として登録される。
【0066】
そして、ルーレットゲームにおいては、まず、ディーラーがルーレット盤24を廻してルーレット球28を投入する。この間、参加者P1、P2、P3は、手持ちのゲームチップ30をベット用ボード32のベット部位にベットする。このとき、ベット情報検出手段38によって、図6に示すようにして、各参加者P1、P2、P3のベット位置と価値(1ドル、5ドル、10ドル等:掛け金)等が検出され、その検出結果がPTSサーバ56に送られ、その履歴が一括管理される。
【0067】
ルーレット盤24の回転が緩やかになって、ルーレット球28がいずれかのポケット54に入ると、出目が定まり、出目検出手段36によってルーレット球28の出目位置が検出され、その検出結果がPTSサーバ56に送られ、その履歴が一括管理される。
【0068】
集計・分析サーバ62には、配当金算出手段62aが構築されており、ルーレット盤24上におけるルーレット球28の位置(出目)とゲームチップ30のベット位置及び価値(掛け金)等とに基づいて、当該遊技(ルーレットゲーム)の配当金が算出される。
【0069】
ディーラーは、ベットされたゲームチップ30を回収させる。出目と合致する位置にゲームチップをベットしていたプレーヤがいた場合には、ゲームチップ供給手段68bは、配当金算出手段62aが算出した配当金に相当するゲームチップ30を、該当するプレーヤのチップ受け台70に供給する。
【0070】
カジノ22から退出しようとしたプレーヤが、その際に、ゲームチップ30を所持していた場合には、ゲームチップ発行/精算機58によってゲームチップを精算させる。ゲームチップ発行/精算機58は、精算時にも、ハウスカード20の情報を読取ることを行い、図6に示すような処理を行って、ゲームチップ30の正当性を確認する。正当性が確認されると、そのゲームチップ30の価値に対応する通貨が排出され、又は、ハウスカード20の情報に関連するデポジットがその分だけ増大される。
【0071】
上記実施形態によれば、ゲームチップに記録する情報を、秘密鍵で暗号化して記録すると共に、公開鍵で復号できるようにしたので、以下の効果を奏することができる。
【0072】
暗号化及び復号を同じ鍵で行う場合には、鍵が盗難されると、ゲームチップを偽造することが容易であるが、上記実施形態では、ゲームチップから鍵が見破られてもその鍵は公開鍵であるため、ゲームチップを偽造することができない。
【0073】
また、暗号化及び復号を同じ鍵で行う場合には、鍵の盗難時の不都合を考慮し、復号をセンタ側のサーバで実行することが考えられる。しかし、このようにした場合には、センタ側サーバの処理が過負荷になりやすく、処理が遅くなる恐れがあり、また、センタ側サーバとの通信路に障害が発生した場合には復号を行うことができない。上記実施形態では、ゲームチップに記録する情報を秘密鍵で暗号化しているため偽造し難く、そのため、センタ側サーバではなく、各ゲーム装置に復号を実行させることができる。すなわち、復号処理をカジノ内で分散して実行できるため、処理が集中して処理が遅くなることや、通信路に障害が発生したときの復号できない状態を、未然に防止することができる。
【0074】
また、上記実施形態によれば、ゲームチップの所持者に係る情報を、デジタル署名方式で記録し、確認し得るようにしたので、正当なゲームチップの不正者による使用も検知することができる。
【0075】
(B)他の実施形態
上記実施形態では、ゲームチップを利用するゲームがルーレットゲームとして説明したが、ゲームチップを利用するゲームの種類は問われないものである。
【0076】
また、ゲームチップに記録する情報は上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、チップの有効期限や、発行したゲームチップ発行/精算機58の識別情報を記録情報を含めるようにしても良い。
【0077】
上記実施形態の説明では、秘密鍵及び公開鍵の組が1組のように説明したが、複数組を利用するようにしても良い。
【0078】
例えば、1日毎、1週毎に組を変更するようにしても良い。この場合において、変更前のゲームチップを無効として扱うようにしても良く、また、有効として扱うようにしても良い。後者の場合には、復号を行う装置は、複数の公開鍵で並行して復号を行い、その中の1つでも正当に復号できればその情報を処理に用いるようにすれば良い。又は、どの組を適用したかを表す情報を暗号することなく、ゲームチップに記録し、その情報に基づいて、公開鍵を選定するようにしても良い。
【0079】
また例えば、ゲームチップ発行/精算機58の種類毎に、秘密鍵及び公開鍵の組を変更するようにしても良い。この場合においても、復号を行う装置は、複数の公開鍵で並行して復号を行い、その中の1つでも正当に復号できればその情報を処理に用いるようにすれば良い。又は、どの組を適用したかを表す情報を暗号することなく、ゲームチップに記録し、その情報に基づいて、公開鍵を選定するようにしても良い。
【0080】
上記実施形態においては、デジタル署名に係る情報が、プレーヤについての情報(ハウスカード情報)であるものを示したが、これに代え、又は、これに加え、他の情報をデジタル署名に係る情報とするようにしても良い。例えば、チップの有効期限を、デジタル署名に係る情報とするようにしても良い。また、ゲームチップ発行/精算機58や遊技台68でキー入力させた氏名やパスワードなどを、デジタル署名に係る情報とするようにしても良い。
【0081】
上記実施形態においては、ゲームチップが記録情報を書き換えられるものを示したが、書換え不可能なように記録したものであっても良い。
【0082】
また、上記実施形態では、秘密鍵を用いた暗号化を、ゲームチップ発行/精算機58や遊技台68で行うものを示したが、秘密鍵を用いた暗号化を、センタ側のサーバで行い、暗号情報の書込みを、ゲームチップ発行/精算機58や遊技台68で行うようにしても良い。この場合であっても、復号処理は、ゲームチップ発行/精算機58や遊技台68で行うようにすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】実施形態のカジノシステム(ゲームチップ監視システム)を含む、ホテルシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態のルーレット盤に係る構成を示す概略平面図である。
【図3】実施形態のルーレットゲームに係る遊技台の構成を示す概略平面図である。
【図4】実施形態のゲームチップのベットの様子を示す概略斜視図である。
【図5】実施形態のゲームチップに記録する情報の説明図である。
【図6】実施形態におけるゲームチップの記録情報が与えられた際に実行する処理を示すフローチャートである。
【図7】実施形態におけるゲームチップの記録情報が記録する際に実行する処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0084】
20…ハウスカード、24…ルーレット盤、30…ゲームチップ、32…ベット用ボード、34…チップ情報記録手段、36…出目検出手段、38…ベット情報検出手段、58…ゲームチップ発行/精算機、62a…配当金算出手段、68…遊技台、68a…ゲームチップ回収手段、68b…ゲームチップ供給手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも識別情報を含む記録用情報を記録している、ゲームに用いられるゲームチップであって、
上記記録用情報の少なくとも一部を秘密鍵で暗号化して記録していることを特徴とするゲームチップ。
【請求項2】
暗号化される情報の少なくとも一部は、原データをハッシュ関数を用いて圧縮したものであることを特徴とする請求項1に記載のゲームチップ。
【請求項3】
少なくとも識別情報を含む記録用情報を、ゲームに用いられるゲームチップに書き込むゲームチップ書込装置であって、
上記記録用情報の少なくとも一部を秘密鍵で暗号化する暗号化手段と、
暗号化された情報を上記ゲームチップに書き込む書込手段と
を有することを特徴とするゲームチップ書込装置。
【請求項4】
暗号化される情報の少なくとも一部を構成する原データを、ハッシュ関数を用いて圧縮し、上記暗号化手段に引き渡す圧縮手段をさらに有することを特徴とする請求項3に記載のゲームチップ書込装置。
【請求項5】
少なくとも一部の情報が秘密鍵で暗号化されている記録用情報を、ゲームに用いられるゲームチップから読み取るゲームチップ読取装置であって、
暗号化された情報を上記ゲームチップから読み取る読取手段と、
読み取られた情報を公開鍵で復号する復号手段と
を有することを特徴とするゲームチップ読取装置。
【請求項6】
デジタル署名用の原データを外部から取り込む原データ取込手段と、
外部から取り込んだ原データを、ハッシュ関数を用いて圧縮する外部原データ圧縮手段と、
上記外部原データ圧縮手段による圧縮後の原データと、復号された情報の中に挿入されている圧縮されている原データとを照合する署名確認手段と
を有することを特徴とする請求項5に記載のゲームチップ読取装置。
【請求項7】
請求項1に記載のゲームチップと、請求項3に記載のゲームチップ書込装置と、請求項5に記載のゲームチップ読取装置とを有することを特徴とするゲームチップ監視システム。
【請求項8】
請求項2に記載のゲームチップと、請求項4に記載のゲームチップ書込装置と、請求項6に記載のゲームチップ読取装置とを有することを特徴とする請求項7に記載のゲームチップ監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−95497(P2009−95497A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270589(P2007−270589)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(598098526)アルゼ株式会社 (7,628)