説明

ゲーム機における楽曲切り替え装置

【課題】二つの楽曲を制作者が意図したタイミングで切り換えることの出来る、ゲーム機における楽曲切り替え装置を提供する。
【解決手段】楽曲ファイル10に格納された楽曲データを再生することで音声を出力させる手段11を有するゲーム機1において、楽曲ファイルMFLは、第1の楽曲及び第2の楽曲を格納しており、また、楽曲間での切り替え可能位置を格納したデータも格納している。第1及び第2の楽曲の内、どちらか一方の楽曲のみを各楽曲の再生音量を相違させることで選択的にスピーカーシステム12から出力させる手段7、イベント変化信号EF、FFが入力された時点以降の、直近の切り替え可能位置を検索抽出する手段9、抽出された切り替え可能位置で、再生されている楽曲を、第1の楽曲と第2の楽曲の間で切り替え、スピーカーシステム12から出力されていた楽曲を、それとは異なる楽曲に瞬時に切り替える手段9を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲームプログラムなどの一部として格納された楽曲データに基づいて再生される楽曲の切り換え制御に係わり、特に、二つの楽曲を制作者が意図したタイミングで切り換えることの出来る、ゲーム機における楽曲切り替え装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゲーム機において、二つの楽曲を切り換え制御する場合、それまで再生されていた楽曲の再生音量を徐々に小さくすると共に、切り換えるべき楽曲の再生音量を徐々に大きくしてゆく、所謂、クロクフェード制御が行われていた(特許文献1)。また、こうした滑らかな切り換え制御の他に、単純に再生中の曲を中断して、直ちに次の曲の再生を開始する、単純切り換え制御も行われている。
【0003】
クロスフェード制御の場合には、曲が滑らかに切り替わることが特徴であるが、ゲームのシナリオ展開によっては、単純に再生中の曲を中断して、直ちに次の曲の再生を開始する、単純切り換え制御を用いた方が、演出上好ましい場合もある。
【0004】
また、シナリオ展開上、楽曲の切り換えが楽曲における一定の時点にならないような場合がある。即ち、例えば、洞窟内をさまようプレイヤが操作するプレイヤキャラクタがモンスターを発見して、戦いを挑むような場合に、モンスターとの戦いが開始された時点で、二つの楽曲を切り換えようとしても、プレイヤキャラクタがモンスターを発見する時点が不明であり、単純切り換え制御では、二つの楽曲が不適切な時点で突然切り換えられてしまい、制作者が予定した演出効果を発揮できなくなる事態が考えられる。また、単純切り換え制御には、楽曲が切り替えられた時点でノイズが発生してしまう不都合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−300833
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、そうした事情に鑑み、シナリオ展開に応じて、二つの楽曲を制作者が意図した時点で、単純切り換え制御により切り換えることが出来、切り換え時のノイズも問題も緩和することの可能な、ゲーム機における楽曲切り替え装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、ゲームプログラム(GPR)に設定されたシナリオをに基づいて所定のゲームシーンをディスプレイ(15)に表示するゲームシーン表示手段(5,13)、仮想空間内をプレイヤにより操作されるプレイヤキャラクタが移動することにより、各種のイベントを発生制御するシナリオ進行制御手段(5)を有し、前記ゲームプログラムの指令に基づいて、前記ゲームシーンに使用する楽曲が格納された楽曲ファイル(MFL)をメモリ(6)から読み出し、当該楽曲ファイルに格納された複数の音声トラック(TRC)に格納された楽曲データをそれらの音声トラックを同時に再生することで、スピーカーシステム(12)から所定の音声を出力させることが出来る楽曲再生出力手段(7,11)を有する、ゲーム機(1)において、
前記楽曲ファイル(MFL)は、第1の楽曲(楽曲A又はB)及び第2の楽曲(楽曲B又はA)が前記音声トラック(TRC)にそれぞれ別個に格納されており、また、それら格納された楽曲の間での切り替え可能位置(TPn)を複数格納した切り替え可能位置データ(TPD)を格納しており、
前記ゲーム機は、
前記楽曲ファイルに格納された音声トラック(TRC)を、それら音声トラック間で同期を取りながら再生し、前記第1及び第2の楽曲の内、どちらか一方の楽曲(楽曲A又はB)のみを各楽曲の再生音量を相違させることで、選択的に前記スピーカーシステム(12)から出力させる楽曲再生手段(7、11)、
前記イベントが発生又は終了した場合に、イベント変化信号(EF,FF)を出力するイベント変化出力手段(5)、
前記イベント変化信号に基づいて、当該イベント変化信号(EF、FF)が入力された時点以降の、直近の前記切り替え可能位置(TP2,TPn)を検索抽出する切り替え位置抽出手段(9)、
検索抽出された前記切り替え可能位置(TP2,TPn)で、前記楽曲再生手段によって選択的に再生されている楽曲を、前記第1の楽曲(楽曲A又はB)と第2の楽曲(楽曲B又はA)の間で切り替え、それまで前記スピーカーシステム(12)から出力されていた楽曲を、それとは異なる楽曲に瞬時に切り替える楽曲切り替え手段(9)、
を有することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の第2の観点は、前記楽曲ファイル(MFL)には、前記第1の楽曲及び第2の楽曲に加えて、随伴音データを格納した第3の楽曲が、前記第1の楽曲及び第2の楽曲が格納された音声トラックとは異なる音声トラック(トラック5,6、TRC)に格納されており、
前記楽曲再生手段は、前記楽曲ファイルに格納された音声トラックを、それら音声トラック間で同期を取りながら再生する際に、前記第1の楽曲、第2及び第3の楽曲の内、前記第1の楽曲または第2及び第3の楽曲を、それら楽曲の再生音量を相違させることで、選択的に前記スピーカーシステムから出力させ、
前記楽曲切り替え手段は、前記楽曲再生手段によって選択的に再生されている楽曲を、前記第1の楽曲(例えば、楽曲A)と第2及び第3の楽曲(楽曲B及び随伴音データ)の間で切り替えるようにして構成したことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第3の観点は、前記随伴音データは、インパクト音データから構成されることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第4の観点は、前記随伴音データは、前記第1及び第2の楽曲が切り替わる際に生じるノイズを打ち消すための波形からなるノイズキャンセルデータから構成されることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の第5の観点は、第3の楽曲の再生時間は、前記楽曲切り替え手段が楽曲を切り換えた切り替え可能位置(TP2、TPn)と、該切り替え可能位置の直後に設定されている切り換え可能位置(TP3、TPn+1)の間の時間間隔ITn(n=1,2……)より短くなるように設定されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第6の観点は、前記楽曲ファイルは、ファイルに格納された楽曲内の任意の位置を指定することの出来るマーカー機能を有しており、前記切り換え可能位置は、前記マーカー機能をを利用して格納されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の観点によれば、第1の楽曲と第2の楽曲が同一の楽曲ファイルに格納され、更に、その切り替え可能位置が複数設定されているので、切り替え位置抽出手段(9)が、イベント変化信号に基づいて、イベント変化信号(EF、FF)が入力された時点以降の、直近の切り替え可能位置(TP2,TPn)を検索抽出し、楽曲切り替え手段(9)が、再生されている楽曲を、第1の楽曲(楽曲A又はB)と第2の楽曲(楽曲B又はA)の間で切り替える。これより、切り換え可能位置を適切に設定しておくことにより、シナリオ展開に応じて、二つの楽曲を制作者が意図した時点で、単純切り換え制御により、制作者が予定した演出効果を阻害することなく切り替えることが可能となる。
【0014】
本発明の第2の観点によれば、随伴音データを格納した第3の楽曲が第2の楽曲と共に、第1の楽曲から切り換えられるので、各種の効果音の演出や、ノイズのキャンセルなど各切り替え可能位置に応じた追加的な演出が可能となる。
【0015】
本発明の第3の観点によれば、随伴音データを、インパクト音データから構成すると、楽曲の切り替えに際したノイズを効果的に隠蔽することが出来る。
【0016】
本発明の第4の観点によれば、随伴音データを、第1及び第2の楽曲が切り替わる際に生じるノイズ打ち消すための波形からなるノイズキャンセルデータから構成すると、楽曲の切り替えに際したノイズを効果的に打ち消すことが出来る。
【0017】
本発明の第5の観点によれば、ある楽曲の切り替え可能位置TPn(n=1,2……)での楽曲の切り替えに際して、切り換え可能位置TPnを経過する時点では、直前の切り替え可能位置TPn−1で出力されるべきトラック5及び6の随伴音データのスピーカーシステム12からの出力は終了している。従って、直前の切り替え可能位置(TPn−1)で出力されるべきトラックの随伴音データが誤って切り替え可能位置(TPn)で再生されるようなことはなく、好都合である。
【0018】
本発明の第6の観点によれば、マーカー機能を有する楽曲ファイル利用することで、既存マーカーを利用することが出来、切り替え可能位置の設定をより簡単に行うことが出来る。
【0019】
なお、括弧内の番号等は、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明である楽曲切り替え装置の1実施例が適用されるゲーム機のブロック図。
【図2】図2は、楽曲ファイルの一例を示す模式図。
【図3】図3は、楽曲の切り替え処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【0022】
図1はコンピュータを構成するゲーム機1を示している。ゲーム機1は、図1に示すように、主制御部2を有しており、主制御部2にはバス線3を介して、シナリオ進行制御部5,ハードディスクや半導体メモリなどからなるゲームプログラムメモリ6,楽曲制御部7、楽曲切り替え制御部9,楽曲ファイルメモリ10,音声出力部11、表示制御部13及び入力手段としてのコントローラ16などが接続している。表示制御部13には、ディスプレイ15が接続されており、音声出力部11には、音声出力手段としての、スピーカー12a及び12bからなるスピーカーシステム12が接続している。なお、本明細書で言う、「音声」とは、所謂「音」全般を意味し、狭義の意味での「人間の声」だけを、意味するものではない。
【0023】
なお、ゲーム機1には、このほかにハードディスク、光学ディスク入出力装置など各種のハードウエアが接続しているが、本発明に直接関連のない部分は、その図示及び説明を省略する。ゲーム機1では、図示しない光学ディスクなどから読み込まれ、又は図示しないインターネットなどの通信回線を介してダウンロードされ、ゲームプログラムメモリ6に格納されたゲームプログラムGPRに基づいて、主制御部2が所定のシナリオを、シナリオ進行制御部5を介して進行制御させてゆくことで、プレイヤは所定のゲームを楽しむことが出来る。
【0024】
なお、本発明に係るゲームプログラムを機能させるコンピュータとして、例えば家庭用ゲーム機1を一例として説明したが、ゲーム機1としては、ゲーム専用の装置でなく、一般的な音楽や映像の記録媒体の再生なども可能な装置であってもよく、これに限らず、コンピュータが内蔵されている、例えばパーソナルコンピュータ、携帯電話機など、当該コンピュータを用いることでゲームプログラムを機能させることのできるものであれば何れのものでもよい。
【0025】
なお、ゲームプログラムGPRを構成する各種のプログラム及び楽曲データを初めとする各種のデータは、ゲームプログラムGPRのプログラム機能によって読み出し自在に有している限り、その格納態様は任意であり、本実施の形態のように、ゲームプログラムGPRのプログラムと共にゲームプログラムメモリ6中に格納するほかに、ゲーム機1とは独立したサーバーなどの外部のメモリ手段に格納しておき、ゲームプログラムGPR中に設けられた読み出しプログラムによって、インターネットなどの通信媒介手段を介してゲームプログラムメモリ6などのメモリにダウンロードするように構成してもよい。
【0026】
また、図1に示すゲーム機1は、実際にはコンピュータが、図示しないメモリに格納された所定のプログラムを読み出して、実行することで、図示しないCPUやメモリが、マルチタスクにより時分割的に動作し、図1に示す各ブロックに示された機能を実行してゆくこととなる。しかし、携帯型ゲーム装置1を、各ブロックに対応したハードウエアで構成することも可能であり、また各ブロックを各ブロックに分散的に設けられたCPU又はMPUにより制御するように構成することも可能である。
【0027】
ゲーム機1においては、所定の初期化操作(例えば電源の投入操作)が行われると、主制御部2がゲームプログラムメモリ6に格納された、ゲームプログラムGPRの読み込みを開始し、そのプログラムに従ってゲーム処理を開始する。プレーヤが入力手段であるコントローラ16を操作して所定のゲーム開始操作を行うと、主制御部2はゲームプログラムGPRの手順に従ってゲームの実行に必要な種々の制御を開始する。プレイヤはコントローラ16を操作することでプレイヤキャラクタを、ゲームプログラムGPRに基づいてゲーム装置1が図示しないメモリ内に生成した仮想空間内で、ゲームプログラムGPRに基づいて、自由に移動させることが出来る。より、具体的には、ゲームプログラムGPRで設定されたシナリオに基づいて、シナリオ進行制御5が、シナリオを進行させ、当該シナリオの中でプレイヤはプレイヤキャラクタを仮想空間内で自由に移動させる。その結果、シナリオ進行制御5は、ゲームプログラムGPRに基づいて各種のイベントを発生させて、プレイヤは当該イベントをプレイヤキャラクタのコントローラ16を介した操作を通して体験してゆく。
【0028】
ゲームのシナリオでは、例えば、プレイヤがコントローラ16を操作することで移動させることが出来るプレイヤキャラクタが、仮想空間内に形成された洞窟や迷路などのフールド内を、何かを探して移動すようなゲームシーンが度々、設定されており、その様子はゲームシーン表示手段を構成するシナリオ進行制御部5及び表示制御部13を介してディスプレイ15に表示される。こうしたゲームシーンでは、例えば、その場の雰囲気合わせた第1の楽曲Aが再生されるように、ゲームプログラムGPRで指示されている。
【0029】
こうした、ゲームの楽曲の再生動作は、シナリオ進行制御部5が、これから実行すべきゲームシーンで使用する楽曲をゲームプログラムGPRの指定(指令)に基づいて楽曲制御部7に対して再生を指令することで実行される。楽曲制御部7は、楽曲の再生指令がシナリオ進行制御部5から入力されると、ゲームプログラムメモリ6に格納されたゲームプログラムGPRを構成する楽曲データから当該シーンに使用することを指示された楽曲が格納された楽曲ファイルMFLを読み出して楽曲ファイルメモリ10に格納する。
【0030】
楽曲ファイルMFLには、通常、図2(a)に示すように、楽曲データ部MDTが設けられており、楽曲データ部MDTには、音声出力部11で同時に再生出力するように構成された複数の音声トラックTRCが設定されている。音声トラックTRCは本実施例の場合、トラック1〜6の6本設定されており、各トラックTRCには、それぞれ異なる内容の楽曲データ(データが異なるという意味であり、必ずしも互いに異なる曲という意味ではない)を格納することができる。音声出力部11ではこれらの楽曲データ部MDTを構成する各トラックTRCを同時に再生してスピーカーシステム12から所定の音声を出力することが出来る。従って、各トラック1〜6を構成する楽曲データは、スピーカーシステム12から同時に出力されるが、各トラックの出力音量はトラック1〜6毎に制御が可能である。なお、楽曲データ部MDTを構成する各音声トラックTRCの数は、任意であり、ゲームプログラムGPRの仕様などに応じて、適宜決定することが出来るが、本発明の実施には、少なくとも2個の音声トラックTRCが楽曲データ部MDTに設定されている必要がある。
【0031】
例えば、スピーカーシステム12が前後、センター、左右及び低音の6本のスピーカーからなるサラウンドシステムの場合には、トラック1〜6に再生すべき楽曲の、左右正面楽曲データ、センター楽曲データ、左右背面楽曲データ及び重低音楽曲データをそれぞれ格納しておき、トラック1に格納された左正面楽曲データを図示しない正面左スピーカーから、トラック2に格納された右正面楽曲データを図示しない正面右スピーカーから、トラック3に格納されたセンター楽曲データを図示しない正面センタースピーカーから、トラック4に格納された重低音楽曲データを図示しない低音スピーカーから、トラック5に格納された左背面楽曲データを図示しない背面左スピーカーから、トラック6に格納された右背面楽曲データを図示しない背面右スピーカーから、各トラック間で同期を取りながら出力することで、全体で一つの楽曲を再生出力することが出来る。なお、ここで言う、「楽曲データ」とは、直接的なメロディを構成するデータばかりではなく、ゲームの演出に必要な全ての音響データを含む広い意味を有するものである。
【0032】
また、本実施例の楽曲ファイルMFLの楽曲データ部MDTの6個の音声トラックTRCには、図2(a)に示すように、トラック1及び2には、第1の楽曲(後述の、イベント終了時においては、第2の楽曲)としての楽曲Aの右チャンネル(トラック1)及び左チャンネル(トラック2)の楽曲データがそれぞれ格納されており、トラック3及び4には、第2の楽曲(後述の、イベント終了時においては、第1の楽曲)としての楽曲Bの右チャンネル(トラック3)及び左チャンネル(トラック4)の楽曲データがそれぞれ格納され、更に、トラック5及び6には、第3の楽曲としての随伴音データの右チャンネル(トラック5)及び左チャンネル(トラック6)の楽曲データがそれぞれ格納されている。ここで、右チャンネル及び左チャンネルは、実施例のように、スピーカーシステム12が右スピーカー12a及び左スピーカー12bかならるステレオ構成の場合であり、既に述べたように、楽曲データ部MDTを構成する音声トラックTRCの数は、ゲーム機1で想定されるスピーカーシステム12の配置構成に応じて適宜設定することが出来る。本実施例の場合、トラック1、3,5の右チャンネルの楽曲データは、スピーカーシステム12を構成する右スピーカー12aから出力され、トラック2、4,6の左チャンネルの楽曲データは、スピーカーシステム12を構成する左スピーカー12bから出力される。
【0033】
また、本実施例の楽曲ファイルMFLには、更に、図2(a)で示すように、楽曲データ部MDTの先頭部分に、切り替え可能位置データ部TPDがへッダーとして設定されており、切り替え可能位置データ部TPDには、図2(b)に示すように、当該楽曲データ部MDTに格納されたトラック1〜6からなる楽曲データを再生する際に、楽曲A及び楽曲Bの切り替え可能位置が、切り替え可能位置TP(TP1〜TPn)として設定されている。この切り換え位置TPは、各切り換え可能位置TP毎に、楽曲データ部MDTに格納された楽曲の再生スタート位置SP(図2(c)参照)からの経過時間(切り替え時間)PTとして、設定されており、この切り換え位置TPは、ゲームプログラムGPRの作成時に、制作者(プログラマ、ディレクター、作曲者、編曲者など)が、楽曲データ部MDTに格納された楽曲A及び楽曲Bを切り替える際の最適な位置として、前もって複数個設定したものを格納している。例えば、図2(b)の場合、切り替え位置TP1の切り替え時間PTは、再生スタート位置SPから25.1秒後であり、切り替え位置TP2の切り替え時間PTは、再生スタート位置SPから26.0秒後であり、切り替え位置TP3の切り替え時間PTは、再生スタート位置SPから26.8秒後であり、切り替え位置TP4の切り替え時間PTは、再生スタート位置SPから27.5秒後に設定されている。
【0034】
なお、切り替え可能位置TPは、本実施例のように製作者が独自に設定するほかに、楽曲ファイルMFLがファイル内に格納された楽曲の任意の位置を指定することの出来るマーカー機能を持っている場合(例えば、Wavファイルなど)には、当該マーカー機能を利用して切り替え可能位置TPを指定するように構成することも出来る。
【0035】
すでに、述べたように、楽曲ファイルMFLの楽曲は、プレイヤキャラクタが、仮想空間内に形成された洞窟や迷路などのフールド内を、何かを探して移動するようなシーンで使用されることから、楽曲制御部7は、ゲームプログラムGPRに基づいてプレイヤキャラクタが何かを探している間は楽曲Aを流し、プレイヤキャラクタが何かを発見したり、モンスターと遭遇したりして、イベントが発生した際には、それまで再生していた楽曲Aから、楽曲Bに切り替える制御を実行する。この、楽曲の切り替え処理は、所定の切り替え可能位置で楽曲がそれまでの楽曲Aから楽曲Bに瞬時に切り替わる、単純切り替えにより制御される。
【0036】
まず、既に述べたように、シナリオ進行制御部5が、これから実行すべきシーンで使用する楽曲をゲームプログラムGPRの指定に基づいて楽曲制御部7に対して再生を指令すると、楽曲制御部7は、ゲームプログラムメモリ6に格納されたゲームプログラムGPRを構成する楽曲データから当該シーンに使用する楽曲ファイルMFLを読み出して楽曲ファイルメモリ10に格納し、図2(c)に示すように、直ちに音声出力部11を介して楽曲ファイルMFLに格納された楽曲データ部MDTの音声トラックTRCの再生を開始する(図3のステップS1)。
【0037】
楽曲制御部7は、図2(c)に示すように、楽曲ファイルMFLの再生が指令された時点、即ち再生スタート位置SP(時間T=0)から、楽曲データ部MDTに格納された全トラック1〜6の再生を各トラックの同期を取りながら開始するが、この際、楽曲の切り替え制御部9は音声出力部8に対して、再生中のトラック1〜6のうち、楽曲Aの楽曲データが格納されたトラック1及び2のみをスピーカーシステム12から出力し、楽曲B及び随伴音データが格納されたトラック3〜6の楽曲データについてはスピーカーシステム12からの出力は行わないように制御する(図3のステップS2)。具体的には、トラック1及び2を、通常の再生音量で再生し、トラック3〜6の音量は最小音量で再生する処理、即ち各楽曲の再生音量を相違させることで、スピーカーシステム12から出力される楽曲を選択する形で行う。これにより、スピーカーシステム12からからは、トラック1及び2の楽曲Aだけが選択的に再生され、トラック3及び4の楽曲Bは再生されていないようにプレイヤに認識される。なお、ここで、楽曲データ部MDTの各トラックの同期を取りながら再生するとは、ステレオや多チャンネル再生時における複数のトラックからなる楽曲データの再生と同様に、各トラック同士が同期を取りながら再生されるという意味であり、通常、複数トラック(例えば、左チャンネル及び左チャンネルの楽曲データをそれぞれ格納したトラック1及びトラック2など)からなる楽曲データの再生時に恒常的に行われる制御である。
【0038】
この状態では、ゲームシナリオは、プレイヤキャラクタが、仮想空間内に形成された洞窟や迷路などのフールド内を、何かを探して移動している状態であり、その様子がディスプレイ15に表示される。こうして、プレイヤキャラクタが移動する内に、ゲームシナリオに基づいてプレイヤキャラクタが何かを発見したり、モンスターと遭遇したりして、イベントが発生することとなる。イベントが発生すると、シナリオ進行制御部5からイベント発生信号EFが楽曲切り替え制御部9に出力される。
【0039】
これを受けて、楽曲切り替え制御部9は、再生中の楽曲ファイルMFLの切り替え可能位置データ部TPDを参照し、図2(c)に示すように、当該イベント発生信号EFが入力された時点以降の、直近の切り替え可能位置を検索抽出する(図3のステップS4)。図2(c)の場合、イベント発生信号EFが入力された時点以降の、直近の切り替え可能位置は、切り替え可能位置TP2となる。切り替え可能位置TP2が検索抽出されると、楽曲の切り替え制御部9は、切り替え可能位置TP2で、それまでスピーカーシステム12から出力していたトラック1及び2の楽曲Aの出力を停止して、代わりにトラック3及び4の楽曲Bのスピーカーシステム12からの出力を開始する処理を行い(図3のステップS5)、同時に、トラック5及び6の随伴音データをスピーカーシステム12から出力する処理も行う。
【0040】
この処理により、それまで通常音量で再生されていたトラック1及び2の音量は最小音量での再生となるように処理され、それまで最小音量で再生されていたトラック3〜6の音量は、通常音量での再生となるように処理される。これにより、スピーカーシステム12から出力される楽曲は、楽曲Aが聞こえなくなり、トラック3及び4の楽曲B及びトラック5及び6の随伴音データだけが選択的に再生されているようにプレイヤに認識される。楽曲Aが楽曲Bに、切り替え可能位置TP2で瞬時に切り替えられると、スピーカーシステム12から再生される楽曲データの不連続性に起因するノイズが発生するが、このノイズは、切り替え可能位置TP2で同時に通常音量での再生に切り替えられる随伴音データにより遮蔽され、プレイヤの耳には聞こえにくくなるように処理される。随伴音データは、通常、太鼓やシンバルなどの打楽器などの衝撃的な音色を持ったインパクト音データからなる楽曲データで構成されるので、楽曲A及びBの突然の切り替えに伴うノイズを効果的に隠蔽することが出来る。
【0041】
なお、各切り替え可能位置TPは、制作者が前もって楽曲A及びBの切り替えに適した位置として指定した位置であることから、二つの楽曲が不適切な時点で突然切り換えられてしまい、制作者が予定した演出効果を発揮できなくなる事態の発生は防止される。更に、イベント発生の時間、従って楽曲の切り替え時間は、プレイヤキャラクタの移動態様に応じて変化するが、切り替え可能位置データ部TPDには、イベント発生が可能な時間帯について、切り替え可能位置TPが複数設定されているので、イベント発生に伴う楽曲の切り替え処理は、どの時点でイベントが発生しても円滑に行うことが出来る。
【0042】
また、図2(c)に示すように、随伴音データの再生時間TMn(n=1,2……)、即ちスピーカーシステム12から出力される時間は、当該随伴音データの再生が開始される楽曲の切り替え可能位置(例えば位置TP2)と直後に設定されている切り替え可能位置(例えば位置TP3)との間の時間間隔ITn(n=1,2……)よりも短くなるように設定されているので、ある楽曲の切り替え可能位置TPn(n=1,2……)での楽曲の切り替えに際して、当該切り換え可能位置TPnを経過する時点では、直前の切り替え可能位置TPn−1で出力されるべきトラック5及び6の随伴音データの再生時間TMnは終了している。従って、直前の切り替え可能位置TPn−1で出力されるべきトラック5及び6の随伴音データが誤って切り替え可能位置TPnで再生されるようなことはない。
【0043】
この制御は、プレイヤキャラクタのイベントが終了した際、即ち、スピーカーシステム12から出力される楽曲がそれまでのトラック3及び4の楽曲B及びトラック5及び6の随伴音データから、トラック1及び2の楽曲Aに切り替わる際にも、同様の手順で行われる。
【0044】
即ち、イベントが終了してシナリオ進行制御5から所定のイベント終了信号FFが、楽曲の切り替え制御部9に入力されると、図2(c)に示すように、楽曲切り替え制御部9は、再生中の楽曲ファイルMFLの切り替え可能位置データ部TPDを参照し、図2(c)に示すように、当該イベント終了信号FFが入力された時点以降の、直近の切り替え可能位置を検索抽出する。図2(c)の場合、イベント終了信号FFが入力された時点以降の、直近の切り替え可能位置は、切り替え可能位置TPnとなる。切り替え可能位置TPnが検索抽出されると、楽曲の切り替え制御部9は、切り替え可能位置TPnで、それまでスピーカーシステム12から出力していたトラック3及4の楽曲Bの出力を停止して、代わりにトラック1及び2の楽曲Aのスピーカーシステム12からの出力を開始する処理を行い、また、トラック5及び6の随伴音データをスピーカーシステム12から出力する処理も行う。
【0045】
この処理により、それまで通常音量で再生されていたトラック3及び4の音量は最小音量での再生となるように処理され、それまで最小音量で再生されていたトラック1及び2の音量は、通常音量での再生となるように処理される。これにより、スピーカーシステム12から出力される楽曲は、楽曲Bが聞こえなくなり、トラック1及び2の楽曲A及びトラック5及び6の随伴音データだけが再生されて聞こえてくるようにプレイヤに認識される。楽曲Bが楽曲Aに、切り替え可能位置TPnで瞬時に切り替えられると、スピーカーシステム12から再生される楽曲データの不連続性に起因するノイズが発生するが、このノイズは、切り替え可能位置TPnで、同時に通常音量での再生に切り替えられる随伴音データにより遮蔽され、プレイヤの耳には聞こえにくくなるように処理される。随伴音データは、通常、太鼓やシンバルなどの打楽器などの衝撃的な音色を持った楽曲データ、即ちインパクト音データなどから構成されるので、楽曲B及びAの突然の切り替えに伴うノイズを効果的に隠蔽することが出来る。勿論、随伴音データを構成する楽曲データの内容は、任意であり、自由に制作設定することが出来る。
【0046】
なお、既に述べたように、随伴音データには、イベント発生や終了に伴う演出効果に加えて、楽曲の切り替えに際したノイズを隠蔽するための目的も有るので、ノイズを隠蔽することを主目的とした場合には、随伴音データとして、楽曲が切り替わる際に生じるノイズを打ち消すための波形からなるノイズキャンセルデータを格納するように構成することも可能である。楽曲の切り替え可能位置は予め決定されているので、それぞれの切り替え可能位置TPにおいて生じるノイズの波形は前もって簡単に知ることが出来る。従って、当該ノイズ波形をキャンセルするノイズキャンセルデータをそれぞれの随伴音データとして格納しておくことで、各切り替え可能位置TPにおけるノイズを効果的に低減することが出来る。
【符号の説明】
【0047】
1……ゲーム機
5……ゲームシーン表示手段、イベント変化出力手段、シナリオ進行制御手段(シナリオ進行制御部)
6……メモリ(ゲームプログラムメモリ)
7……楽曲再生手段(楽曲制御部)
9……楽曲の切り替え手段(楽曲の切り替え制御部)
11……楽曲再生手段(音声出力部)
12……スピーカーシステム
13……ゲームシーン表示手段(表示制御部)
15……ディスプレイ
EF……イベント変化信号(イベント発生信号)
FF……イベント変化信号(イベント終了信号)
GPR……ゲームプログラム
MFL……楽曲ファイル
TRC……音声トラック
TPn(n=1,2……)……切り替え可能位置
TPD……切り替え位置データ(切り替え位置データ部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲームプログラムに設定されたシナリオをに基づいて所定のゲームシーンをディスプレイに表示するゲームシーン表示手段、仮想空間内をプレイヤにより操作されるプレイヤキャラクタが移動することにより、各種のイベントを発生制御するシナリオ進行制御手段を有し、前記ゲームプログラムの指令に基づいて、前記ゲームシーンに使用する楽曲が格納された楽曲ファイルをメモリから読み出し、当該楽曲ファイルに格納された複数の音声トラックに格納された楽曲データをそれらの音声トラックを同時に再生することで、スピーカーシステムから所定の音声を出力させることが出来る楽曲再生出力手段を有する、ゲーム機において、
前記楽曲ファイルは、第1の楽曲及び第2の楽曲が前記音声トラックにそれぞれ別個に格納されており、また、それら格納された楽曲の間での切り替え可能位置を複数格納した切り替え可能位置データを格納しており、
前記ゲーム機は、
前記楽曲ファイルに格納された音声トラックを、それら音声トラック間で同期を取りながら再生し、前記第1及び第2の楽曲の内、どちらか一方の楽曲のみを各楽曲の再生音量を相違させることで、選択的に前記スピーカーシステムから出力させる楽曲再生手段、
前記イベントが発生又は終了した場合に、イベント変化信号を出力するイベント変化出力手段、
前記イベント変化信号に基づいて、当該イベント変化信号が入力された時点以降の、直近の前記切り替え可能位置を検索抽出する切り替え位置抽出手段、
検索抽出された前記切り替え可能位置で、前記楽曲再生手段によって選択的に再生されている楽曲を、前記第1の楽曲と第2の楽曲の間で切り替え、それまで前記スピーカーシステムから出力されていた楽曲を、それとは異なる楽曲に瞬時に切り替える楽曲切り替え手段、
を有することを特徴とするゲーム機における楽曲切り換え装置。
【請求項2】
前記楽曲ファイルには、前記第1の楽曲及び第2の楽曲に加えて、随伴音データを格納した第3の楽曲が、前記第1の楽曲及び第2の楽曲が格納された音声トラックとは異なる音声トラックに格納されており、
前記楽曲再生手段は、前記楽曲ファイルに格納された音声トラックを、それら音声トラック間で同期を取りながら再生する際に、前記第1の楽曲、第2及び第3の楽曲の内、前記第1の楽曲または第2及び第3の楽曲を、それら楽曲の再生音量を相違させることで、選択的に前記スピーカーシステムから出力させ、
前記楽曲切り替え手段は、前記楽曲再生手段によって選択的に再生されている楽曲を、前記第1の楽曲と第2及び第3の楽曲の間で切り替えるようにして構成したことを特徴とする、請求項1記載のゲーム機における楽曲切り換え装置。
【請求項3】
前記随伴音データは、インパクト音データから構成されることを特徴とする、請求項2記載のゲーム機における楽曲切り換え装置。
【請求項4】
前記随伴音データは、前記1及び第2の楽曲が切り替わる際に生じるノイズを打ち消すための波形からなるノイズキャンセルデータから構成されることを特徴とする、請求項2記載のゲーム機における楽曲切り換え装置。
【請求項5】
第3の楽曲の再生時間は、前記楽曲切り替え手段が楽曲を切り換えた前記切り替え可能位置と、該切り替え可能位置の直後に設定されている切り換え可能位置の間の時間間隔より短くなるように設定されていることを特徴とする、請求項2記載のゲーム機における楽曲切り換え装置。
【請求項6】
前記楽曲ファイルは、ファイルに格納された楽曲内の任意の位置を指定することの出来るマーカー機能を有しており、前記切り換え可能位置は、前記マーカー機能をを利用して格納されていることを特徴とする、請求項1記載のゲーム機における楽曲切り換え装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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