説明

ゲーム機用蝶番

【課題】前扉と筐体間の蝶番側の隙間に、不正器具を差し込んで行うこじ開けを防止することができるゲーム機用蝶番を提供する。
【解決手段】固定取付板の上突出支持部に上ピン3が下向きに突設され、下突出支持部に下ピン7が上向きに突設される。可動部材10の上突出板部12上に固定部材側の上ピンを軸支する軸受部材13が設けられる。軸受部材13の軸受孔の一部を開閉する回動部材15が回動可能に取り付けられ、可動部材10の下部に設けた下突出板部16上には固定部材側の下ピン7を軸支する下軸受孔17が設けられる。固定取付板4に、第1補強部材8が固定され、可動取付板10に、第2補強部材18が固定される。前扉の閉鎖時、相互に嵌合して前扉の移動をロックする嵌合孔部18cが第2補強部材18に設けられ、嵌合ピン8bが第1補強部材8に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットマシン、パチンコ機などのゲーム機の前扉(前枠)を筐体(本体枠)に対し開閉自在に取り付ける着脱式のゲーム機用蝶番に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機などのゲーム機の前枠を本体枠に対し開閉自在に取り付ける蝶番として、上部に取り付けられる上部蝶番と下部に取り付けられる下部蝶番からなる構造の蝶番が、通常、使用されている。この蝶番は、上部蝶番、下部蝶番共に固定部と可動部とに分かれて形成され、ピンと軸受部の嵌合により可動部側が固定部側に対し回動可能に支持される。
【0003】
つまり、上部蝶番の固定部は本体枠の上角部に固定され、上部蝶番の可動部は前枠の上角部に固定され、下部蝶番の固定部は本体枠の下角部に固定され、下部蝶番の可動部は前枠の下角部に固定される。そして、前枠を本体枠に対し取り付ける場合、前枠を持ってその下部蝶番の可動部を本体枠側の固定部にピンと軸受の嵌合により嵌め込み、同時に、その上部蝶番の可動部を本体枠側の固定部にピンと軸受の嵌合により嵌め込む。
【0004】
このために、前枠を本体枠に対し装着する際には、上角部と下角部に設けた両蝶番のピンと軸受を上下同時に嵌め合わせて行なう必要があり、加えて、ゲーム機の前枠には、各種の機械機器、電気機器が数多く取り付けられており、前枠の重量は非常に重い。また、これらの前枠は、作業者の手作業により本体枠側に装着されるため、このような前枠の取り付け作業は、かなり難しく、労力を必要とし、ピンと軸受の嵌合が良好にできない場合には、蝶番や他の部材を傷つけてしまうなどの不具合があった。
【0005】
そこで、本出願人は、従来、下記特許文献1などにおいて、パチンコ機等のゲーム機の前扉と筐体に、着脱可能に固定される蝶番の可動部材と固定部材を、容易に嵌合して組み付けることができるようにしたゲーム機用蝶番を提案している。
【0006】
このゲーム機用蝶番は、ゲーム機の筐体側に固定される固定部材と、固定部材にピンと軸受部との嵌合により回動可能に支持されゲーム機の前扉側に取り付けられる可動部材と、を備え、固定部材の上部に設けた上突出支持部に上ピンが下向きに突設され、固定部材の下部に設けた下突出支持部に下ピンが上向きに突設され、可動部材の上部に設けた上突出板部上に固定部材側の上ピンを軸支する軸受部材が設けられる。さらに、軸受部材の軸受孔の一部を開閉する回動部材が回動可能に取り付けられ、可動部材の下部に設けた下突出板部上には固定部材側の下ピンを軸支する軸受孔が設けられ、可動部材側の下突出板部の軸受孔を固定部材側の下突出支持部上の下ピンに嵌合した状態で、固定部材側の上ピンを可動部材側の上突出板部の軸受部材の軸受孔に、回動部材を開口側に回動させながら嵌合させるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−16355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このゲーム機用蝶番は、パチンコ機等のゲーム機の前扉を筐体に対し開閉可能に組み付ける際、可動部材側の下突出板部の軸受孔を固定部材側の下突出支持部上の下ピンに嵌合した状態で、固定部材側の上ピンを可動部材側の上突出板部の軸受部材の軸受孔に、回動部材を開口側に回動させながら嵌合させることにより、蝶番の可動部材と固定部材を、容易に嵌合して組み付けることができるものの、その構造上、蝶番の上ピンと下ピンの平面位置が、前扉と筐体の角部より前に偏位して(オフセットして)位置しているため、前扉を閉鎖した状態において、蝶番側の角部間で隙間が生じやすい。そのために、上記ゲーム機用蝶番では、固定部材と可動部材の縦フレーム部に、当接壁部と閉鎖壁部を設け、前扉を閉鎖したとき、固定部材の当接壁部と可動部材の閉鎖壁部が当接する構造とし、隙間が生じないようにしている。
【0009】
然るに、前扉の閉鎖時、固定部材の当接壁部と可動部材の閉鎖壁部を当接させて、蝶番側の隙間を最小にして前扉を閉鎖したとしても、ゲーム機の性質上、バールなどの不正器具により、その隙間を押し広げて不正にこじ開ける可能性があり、ゲーム機用蝶番では、その取付位置の前扉と筐体の角部間で、不正なこじ開けの防止対策が要望されていた。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、前扉と筐体間の隙間のこじ開けを防止することができるゲーム機用蝶番を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のゲーム機用蝶番は、ゲーム機の筐体側に固定される固定部材と、固定部材にピンと軸受部との嵌合により回動可能に支持されゲーム機の前扉側に取り付けられる可動部材と、を備えたゲーム機用蝶番において、
該固定部材は縦長の固定取付板の上部と下部に上突出支持部と下突出支持部を設けて形成され、該可動部材は縦長の可動取付板の上部と下部に上突出板部と下突出板部を設けて形成され、該固定取付板の該上突出支持部に上ピンが下向きに突設されるとともに、該下突出支持部に下ピンが上向きに突設され、
該可動部材の上突出板部上に固定部材側の上ピンを軸支する軸受部材が設けられるとともに、該軸受部材の軸受孔の一部を開閉する回動部材が回動可能に取り付けられ、該可動部材の下部に設けた下突出板部上には固定部材側の下ピンを軸支する下軸受孔が設けられ、
該固定取付板の内側に、縦長の第1補強部材が縦方向に沿って固定され、該可動取付板の内側に、縦長の第2補強部材が縦方向に沿って固定され、前扉の閉鎖時に、相互に嵌合して該前扉の上下左右方向及び前後方向への移動をロックする嵌合部が該第1補強部材及び該第2補強部材に設けられたことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、筐体に対し前扉を閉鎖したとき、固定部材に固定した第1補強部材と可動部材に固定した第2補強部材の嵌合部が相互に嵌合し、前扉の上下左右方向及び前後方向への移動をロックするとともに、第1補強部材が固定部材を補強し第2補強部材が可動部材を補強しているので、筐体と前扉間の蝶番側の隙間をバール等な不正器具でこじ開けようとしても、第1補強部材と第2補強部材の嵌合部の嵌合により開くことができず、バールなどによる不正解錠を防止することができる。
【0013】
また、蝶番の補強部材として第1補強部材と第2補強部材を固定部材と可動部材に固定するので、すでに設計されている既存の蝶番に対しても、簡単に適用することができことができる。
【0014】
ここで、上記第1補強部材に、上記嵌合部として、複数の嵌合ピンを突設し、上記第2補強部材には、該第1補強部材の嵌合ピンが嵌合可能な嵌合孔部を設けることができる。或いは、上記第1補強部材に、上記嵌合部として、複数の略コ字状の嵌合枠部を突設し、上記第2補強部材には、該第1補強部材の嵌合枠部が嵌合可能な方形孔部を設けることができる。
【0015】
さらに、上記固定取付板の縁部には縦方向に沿って当接壁部を設け、上記可動取付板の縁部には、可動部材の閉動作時に固定部材側の当接壁部に当接する閉鎖壁部を縦方向に沿って設けることが好ましい。
【0016】
これによれば、前扉を閉じたとき、可動部材の閉鎖壁部が固定側の当接壁部に当接し、筐体と前扉との間に生じやすい隙間を最小とし、バールなどの不正器具の不正な差し込みを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のゲーム機用蝶番によれば、筐体に対し前扉を閉鎖した状態で、筐体と前扉間の蝶番側の隙間から、バールなどの不正器具を差し込み、前扉をこじ開けようとする不正行為を、効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態を示すゲーム機用蝶番の斜視図である。
【図2】可動部材を開いた状態の同蝶番の斜視図である。
【図3】可動部材を開いた状態の同蝶番の正面図である。
【図4】別の角度から見た同蝶番の斜視図である。
【図5】固定部材と可動部材を分解した状態の斜視図である。
【図6】固定部材から第1補強部材を分解した状態の斜視図である。
【図7】別の角度から見た同固定部材の斜視図である。
【図8】可動部材から第2補強部材を分解した状態の斜視図である。
【図9】別の角度から見た同可動部材の斜視図である。
【図10】第1補強部材の斜視図(a)と第2補強部材の斜視図(b)である。
【図11】固定部材の上突出支持部と可動部材の上突出板部の部分拡大斜視図である。
【図12】固定部材の下突出支持部と可動部材の下突出板部の部分拡大斜視図である。
【図13】蝶番の使用形態を示す閉鎖時の平面図(a)と開放時の平面図(b)である。
【図14】図2のA−A線に対応した蝶番閉鎖時の断面図である。
【図15】図2のA−A線に対応した蝶番開放時の断面図である。
【図16】他の実施形態のゲーム機用蝶番の斜視図である。
【図17】可動部材を開いた状態の同蝶番の斜視図である。
【図18】可動部材を開いた状態の同蝶番の正面図である。
【図19】別の角度から見た同蝶番の斜視図である。
【図20】固定部材と可動部材を分解した状態の同蝶番の斜視図である。
【図21】固定部材から第1補強部材を分解した状態の斜視図である。
【図22】可動部材から第2補強部材を分解した状態の斜視図である。
【図23】他の実施形態の蝶番に使用される第1補強部材の斜視図(a)と第2補強部材の斜視図(b)である。
【図24】同蝶番の図17のB−B線に対応した閉鎖時の断面図である。
【図25】同蝶番の図17のB−B線に対応した開放時の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。このゲーム機用蝶番は、スロットマシンなどのゲーム機の筐体側に固定される固定部材1とその前扉側に固定される可動部材10とから構成され、図1,2に示すように、可動部材10が上ピン3と下ピン7を軸に、固定部材1に対し回動して開閉される、脱着式の蝶番である。
【0020】
固定部材1は、板状の縦長の固定取付板4の上端に、上突出支持部2が略水平に形成され、固定取付板4の下端に下突出支持部6が略水平に形成され、上突出支持部2の先端の下面に上ピン3が下向きに突設され、下突出支持部6の延設部上に下ピン7が上向きに突設されて構成される。
【0021】
図1、2に示すように、固定部材1の上突出支持部2は鋼板を略コ字状に裁断して形成され、その先端に上ピン3を固定し、下突出支持部6は前方に延設部を設けて形成され、その延設部に下ピン7を固定し、これにより、上ピン3と下ピン7つまり蝶番の軸心位置を、筐体の前部左側面寄りに設定している。上ピン3と下ピン7の軸心位置は、縦長の固定取付板4の平面に沿った1本の軸線上に一致するようになっている。
【0022】
また、略コ字状の上突出支持部2により、可動部材10側の上突出板部12に設けたストッパ12aが可動部材10の回動時に上突出支持部2に当接するまで回動可能とされ、可動部材10の回動可能な空間範囲を設定している。また、下突出板部16には、可動部材10が開動作をしたとき、その回動端で固定部材1の下突出支持部6の縁部に当接するように折曲縁部16aが下向きに突設され、この折曲縁部16aにより、可動部材10の最大開放角度が略90度と設定される。
【0023】
さらに、固定取付板4の正面側の縁部には、当接壁部5が縁部を正面側に略直角に曲げるように形成され、この当接壁部5は、可動部材10の可動取付板11の閉鎖壁部19に対し閉鎖時に当接し、固定部材1と可動部材10間の隙間をなくした状態で、蝶番を閉じることができるようになっている。
【0024】
可動部材10は、図8、図9に示すように、縦長の可動取付板11の上端に上突出板部12を水平状に設け、可動取付板11の下端に下突出板部16を水平状に設け、図11のように、上突出板部12上には軸受部材13を固定し、下突出板部16には下軸受孔17を穿設して構成される。上突出板部12上に固定される軸受部材13は、固定部材1側の上ピン3を嵌入させるために軸受孔14を設けて形成され、図11に示すように、軸受孔14はその一部の側壁が切り欠かれ、その切欠き開口部から上ピン3を嵌めこみ、その状態で、回動部材15により軸受孔14の開口部を閉鎖する構造としている。
【0025】
下軸受孔17と軸受部材13の軸受孔14の軸心位置は、可動取付板11の平面に沿った1本の軸線上に一致するように形成され、且つこの軸心位置つまり蝶番の軸位置は、可動部材10の正面寄りで左側面寄りの角部に位置するように形成される。また、可動取付板11の縁部には、固定部材1に対し可動部材10を閉じる方向に回動させたとき、所定の回動位置で停止し、縁部を正面側に曲げた板部として、閉鎖壁部19が縦方向に沿って形成される。
【0026】
さらに、図11に示す如く、軸受孔14の切欠き開口部を閉じるために、上突出板部12上に回動部材15が回動軸15aを軸にして回動可能に軸支される。回動部材15は、軸受孔14の切欠き開口部を閉鎖する円弧部を有するとともに、その円弧部に続いて上ピン3を案内するためのピン案内部15cを凹部状に設けて形成される。
【0027】
さらに、可動部材10を外す際、手動操作により容易に回動できるように、回動部材15の端部にはレバー操作部15dが設けられ、このレバー操作部15dと軸受部材13の端部間に、ばね部材15bがかけられている。回動部材15はこのばね部材15bにより軸受孔14の切欠開口部を閉じる方向に付勢され、上ピン3は、このばね部材15bの付勢力に抗して回動部材15を回動させながら、ピン案内部15cに沿って、軸受部材13の軸受孔14内に進入するようになっている。
【0028】
固定部材1の固定取付板4には、図6に示すように、第1補強部材8が縦方向に沿ってリベットなどで固定され、固定取付板4の強度を補強する構造となっている。第1補強部材8の補強部材本体8aは、帯状の鋼板から形成され、その中間位置の3箇所に、間隔をおいて嵌合ピン8bが先端を内側に突出させてかしめ固定されている。
【0029】
一方、可動部材10の可動取付板11には、図8に示すように、第2補強部材18が縦方向に沿ってリベットなどで固定され、可動取付板11の強度を補強する構造となっている。第2補強部材18の補強部材本体18aは、帯状の鋼板を断面略L字状に曲折してアングル材状に形成され、その補強部材本体18aの中間位置の3箇所に、間隔をおいて嵌合孔部18cが設けられる。アングル材状の補強部材本体18aの他の一面は、取付板18bとして形成され、取付板18bに複数の取付孔が設けられ、その取付孔を用いて第2補強部材18は可動取付板11の内側にリベット止めされる。
【0030】
可動部材10の第2補強部材18は、蝶番の固定部材1と可動部材10が組みつけられ、可動部材10が閉鎖されたとき、つまり、可動部材10が図2、図5のように、軸受孔14を上ピン3に嵌合させ、下軸受孔17を下ピン7に嵌合させて、固定部材1に組み付けられ、その状態で、固定部材1に対し閉鎖したとき、図1のように、第2補強部材18の嵌合孔部18cが固定部材1の第1補強部材8の嵌合ピン8bと嵌合する構造となっている。
【0031】
そして、この第2補強部材18の嵌合孔部18cと固定部材1の第1補強部材8の嵌合ピン8bの嵌合状態は、図14に示すように、固定部材1が固定される筐体20と可動部材10が固定される前扉21間に生じる隙間にバールなどの不正器具を差し込んだとき、嵌合ピン8bの軸方向及び嵌合孔部18cの厚さ方向が、その隙間を開く方向に対し直角方向となるようになっている。これにより、バールなどの不正器具を差し込まれてこじ開けようとしたとき、そのこじ開け力を嵌合ピン8bと嵌合孔部18c間で堅固に保持できる構造である。
【0032】
上記構成の蝶番の固定部材1は、その固定取付板4に設けた取付孔と固定ねじを使用して、図12、図13に示すように、ゲーム機の筐体20の内側の左側面に、その上突出支持部2と下突出支持部6を前方に出して固定される。
【0033】
一方、蝶番の可動部材10は、ゲーム機の前扉21の内側の左側面に、その可動取付板11とそこに穿設した取付孔及び固定ねじを用いて、その上突出板部12と下突出板部16を前扉21の内側に入れた状態で、縦に固定される。
【0034】
脱着式の本蝶番を介して筐体20に前扉21を開閉可能に組み付ける場合、先ず、前扉21を持ち筐体20に対し約45度−約90度開いた状態で、図12のように、可動部材10の下突出板部16の下軸受孔17を、筐体20側の固定部材1の下突出支持部6の下ピン7に嵌め込む。下軸受孔17は鋼板に穿設した孔であり、ピンと孔の嵌め合いには多少の間隙があるため、前扉21は多少傾動可能である。
【0035】
次に、その下突出支持部6の下ピン7を支点にして前扉21を少し傾けながら、可動部材10の上突出板部12の軸受部材13を、図11のように、その固定部材1の上突出支持部2の上ピン3の近傍に近づけ、その上ピン3を上突出板部12上の進入路に進入させ、回動部材15のピン案内部15cを上ピン3で押すように動かす。
【0036】
これにより、上ピン3は、回動部材15をばね部材15bの付勢力に抗して回動させて、軸受孔14を開くと共に、回動部材15の回動によって開口した軸受孔14内に滑るように進入する。そして、上ピン3が軸受孔14内に嵌入した後、回動部材15がばね部材15bの付勢力で元の位置に戻り、軸受孔14の切欠き開口部が閉鎖され、上ピン3は軸受部材13の軸受孔14に嵌合し、可動部材10は固定部材1に対し回動可能に正常位置に支持される状態となる。
【0037】
上述の如く、可動部材10の下軸受孔17を固定部材1側の下ピン7に嵌め、次に、下ピン7を支点にして前扉21を少し水平方向に傾けながら、上突出板部12上の軸受部材13を、固定部材1の上ピン3に近づけ、上ピン3によって回動部材15を回動させながら、軸受部材13の軸受孔14に上ピン3を滑り込ませるように嵌合させるため、上部蝶番と下部蝶番のピンと軸受部の嵌合を、前枠を持ちながら同時に行なう必要がなく、重量のある前扉21を非常に簡単に、筐体20に対し蝶番を介して取り付けることができる。
【0038】
蝶番を介して開閉可能に取り付けられた前扉21は、図13(a)、図14に示すように、その閉鎖位置では、固定部材1に固定した第1補強部材8の嵌合ピン8bが可動部材10に固定した第2補強部材18の嵌合孔部18cに嵌合し、前扉21と筐体20の境界面は、嵌合ピン8bの軸方向と平行で第2補強部材18の平面方向と直角つまり直交方向となる。
【0039】
このため、前扉21の上下左右方向及び前後方向への移動が、嵌合ピン8bと嵌合孔部18cの嵌合により完全にロックされる。さらに、第1補強部材8が固定部材1を補強し第2補強部材18が可動部材10を補強しているので、筐体20と前扉21間の蝶番側の隙間をバール等な不正器具でこじ開けようとしても、第1補強部材8と第2補強部材18の嵌合により開くことができず、バールなどによる不正解錠を効果的に防止することができる。
【0040】
また、その閉鎖位置では、固定部材1の当接壁部5に可動部材10の閉鎖壁部19が当接して所定の閉鎖位置を確保するため、その当接によって筐体20と前扉21間の隙間を最小とすることができる。
【0041】
一方、前扉21を開放側に回動したときには、図13(b)、図15のように、可動部材10が上ピン3及び下ピン7を軸に開放側に回動して前扉21が開放され、このとき、可動部材10の上突出板部12のストッパ12aが固定部材1の上突出支持部2の側部に当接した状態が回動端となって、この例では約90度の最大開放角度が設定される。
【0042】
図16〜図25は他の実施形態の蝶番を示している。この実施形態では、上記第1補強部材8に代えて、略コ字状の嵌合枠部38bを突設した第1補強部材38を使用し、上記第2補強部材18に代えて、第1補強部材38の嵌合枠部38bが嵌合可能な方形孔部48cを設けた第2補強部材48を使用している。上記実施形態の蝶番と同様な部分については、図16〜図25に上記実施形態と同じ符号を付してその説明は省略する。
【0043】
図21に示すように、固定部材1の固定取付板4には、第1補強部材38が縦方向に沿ってリベットなどで固定され、固定取付板4の強度を補強する構造となっている。第1補強部材38の補強部材本体38aは、帯状の鋼板から形成され、その中間位置の3箇所に、間隔をおいて略コ字状の嵌合枠部38bが内側に突出するように鋼板の一部を切り起こして形成されている。
【0044】
一方、可動部材10の可動取付板11には、図22に示すように、第2補強部材48が縦方向に沿ってリベットなどで固定され、可動取付板11の強度を補強する構造となっている。第2補強部材48の補強部材本体48aは、帯状の鋼板を断面略L字状に曲折してアングル材状に形成され、その補強部材本体48aの中間位置の3箇所に、間隔をおいて方形孔部48cが設けられる。方形孔部48cは上記嵌合枠部38bが嵌合可能な形状と大きさに形成される。アングル材状の補強部材本体48aの他の一面は、取付板48bとして形成され、取付板48bに複数の取付孔が設けられ、その取付孔を用いて第2補強部材48は可動取付板11の内側にリベット止めされる。
【0045】
可動部材10の第2補強部材48は、蝶番の固定部材1と可動部材10が組みつけられ、可動部材10が閉鎖されたとき、つまり、可動部材10が図17、図20のように、軸受孔14を上ピン3に嵌合させ、下軸受孔17を下ピン7に嵌合させて、固定部材1に組み付けられ、その状態で、固定部材1に対し閉鎖したとき、図16のように、第2補強部材48の方形孔部48cが固定部材1の第1補強部材38の嵌合枠部38bと嵌合する構造となっている。
【0046】
そして、この第2補強部材48の方形孔部48cと固定部材1の第1補強部材38の嵌合枠部38bの嵌合状態は、図24に示すように、固定部材1が固定される筐体20と可動部材10が固定される前扉21間に生じる隙間にバールなどの不正器具を差し込んだとき、嵌合枠部38bの突出方向及び補強部材本体48aの厚さ方向が、その隙間を開く方向に対し直角方向となるようになっている。これにより、バールなどの不正器具を差し込まれてこじ開けようとしたとき、そのこじ開け力を嵌合枠部38bと方形孔部48c間で堅固に保持できる構造である。
【0047】
蝶番の固定部材1と可動部材10を組み付ける場合、上記と同様に、下突出支持部6の下ピン7に可動部材10の下軸受孔17をはめ込み、その下ピン7を支点にして前扉21を少し傾けながら、可動部材10の上突出板部12の軸受部材13を、その固定部材1の上突出支持部2の上ピン3の近傍に近づけ、その上ピン3を上突出板部12上の進入路に進入させ、回動部材15のピン案内部15cを上ピン3で押すように動かす。
【0048】
これにより、上ピン3は、回動部材15をばね部材15bの付勢力に抗して回動させて、軸受孔14を開くと共に、回動部材15の回動によって開口した軸受孔14内に滑るように進入する。そして、上ピン3が軸受孔14内に嵌入した後、回動部材15がばね部材15bの付勢力で元の位置に戻り、軸受孔14の切欠き開口部が閉鎖され、上ピン3は軸受部材13の軸受孔14に嵌合し、可動部材10は固定部材1に対し回動可能に正常位置に支持される状態となる。
【0049】
蝶番を介して開閉可能に取り付けられた前扉21は、図24に示すように、その閉鎖位置では、固定部材1に固定した第1補強部材8の嵌合枠部38bが可動部材10に固定した第2補強部材48の嵌合孔部48cに嵌合し、前扉21と筐体20の境界面は、嵌合枠部38bの厚さ方向と平行で第2補強部材48の補強部材本体48aの平面方向と直角つまり直交方向となる。
【0050】
このため、前扉21の上下左右方向及び前後方向への移動が、嵌合枠部38bと方形孔部48cの嵌合により完全にロックされる。さらに、第1補強部材38が固定部材1を補強し第2補強部材48が可動部材10を補強しているので、筐体20と前扉21間の蝶番側の隙間をバール等な不正器具でこじ開けようとしても、第1補強部材38と第2補強部材48の嵌合により開くことができず、バールなどによる不正解錠を効果的に防止することができる。
【0051】
なお、第1補強部材8の嵌合ピン8bや第1補強部材38の嵌合枠部38bのほか、各種の形状の突起部を嵌合部として設けてもよく、第2補強部材18の嵌合孔部18cや第2補強部材48の方形孔部48cのほか、各種形状の開口孔部を嵌合部として設けることもできる。第1補強部材8,38、第2補強部材18、48の固定は、上記リベット止めのほか、かしめ固定や溶接など他の固定手段を用いて固定することもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 固定部材
2 上突出支持部
3 上ピン
4 固定取付板
5 当接壁部
6 下突出支持部
7 下ピン
8 第1補強部材
8a 補強部材本体
8b 嵌合ピン
10 可動部材
11 可動取付板
12 上突出板部
12a ストッパ
13 軸受部材
14 軸受孔
15 回動部材
15a 回動軸
15b ばね部材
15c ピン案内部
15d レバー操作部
16 下突出板部
16a 折曲縁部
17 下軸受孔
18 第2補強部材
18a 補強部材本体
18b 取付板
18c 嵌合孔部
19 閉鎖壁部
20 筐体
21 前扉
38 第1補強部材
38a 補強部材本体
38b 嵌合枠部
48 第2補強部材
48a 補強部材本体
48b 取付板
48c 方形孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲーム機の筐体側に固定される固定部材と、該固定部材にピンと軸受部との嵌合により回動可能に支持されゲーム機の前扉側に取り付けられる可動部材と、を備えたゲーム機用蝶番において、
該固定部材は縦長の固定取付板の上部と下部に上突出支持部と下突出支持部を設けて形成され、
該可動部材は縦長の可動取付板の上部と下部に上突出板部と下突出板部を設けて形成され、
該固定取付板の該上突出支持部に上ピンが下向きに突設されるとともに、該下突出支持部に下ピンが上向きに突設され、
該可動部材の上突出板部上に固定部材側の上ピンを軸支する軸受部材が設けられるとともに、該軸受部材の軸受孔の一部を開閉する回動部材が回動可能に取り付けられ、該可動部材の下部に設けた下突出板部上には固定部材側の下ピンを軸支する下軸受孔が設けられ、
該固定取付板の内側に、縦長の第1補強部材が縦方向に沿って固定され、該可動取付板の内側に、縦長の第2補強部材が縦方向に沿って固定され、
該前扉の閉鎖時に、相互に嵌合して該前扉の上下左右方向及び前後方向への移動をロックする嵌合部が該第1補強部材及び該第2補強部材に設けられたことを特徴とするゲーム機用蝶番。
【請求項2】
前記第1補強部材に、前記嵌合部として、複数の嵌合ピンが突設され、前記第2補強部材には、該第1補強部材の嵌合ピンが嵌合可能な嵌合孔部が設けられたことを特徴とする請求項1記載のゲーム機用蝶番。
【請求項3】
前記第1補強部材に、前記嵌合部として、複数の略コ字状の嵌合枠部が突設され、前記第2補強部材には、該第1補強部材の嵌合枠部が嵌合可能な方形孔部が設けられたことを特徴とする請求項1記載のゲーム機用蝶番。
【請求項4】
前記固定取付板の縁部には縦方向に沿って当接壁部が設けられ、前記可動取付板の縁部には、前記可動部材の閉動作時に該当接壁部に当接する閉鎖壁部が縦方向に沿って設けられたことを特徴とする請求項1乃至3記載のゲーム機用蝶番。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−85614(P2013−85614A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227092(P2011−227092)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(591016138)中東産業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】