説明

ゲーム装置、ゲーム処理方法、ならびに、プログラム

【課題】仮想聴取点ならびに仮想発音体が配置される仮想空間における音像定位制御を、簡易に行うことができるゲーム装置、ゲーム処理方法、並びにこれらをコンピュータにおいて実現するプログラムを提供する。
【解決手段】ゲーム装置200において、記憶部201に記憶された環境情報をもとに拡張比計算部203により仮想発音体が発する原音に対する拡張比cを求め、原音声の左標本値及び右標本値と拡張比cを用いて、中間計算部204、左計算部205、右計算部206及び出力計算部207を用い、簡易な計算式により出力音声を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想聴取点ならびに仮想発音体が配置される仮想空間における音像定位制御を、簡易に行うことができるゲーム装置、ゲーム処理方法、並びにこれらをコンピュータにおいて実現するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、仮想空間に配置される仮想の発音体から発せられるゲーム音を、より聞き易く出力できるゲーム音出力装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−245984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、仮想空間における音像定位制御は、入力された信号の位相をシフトするなどの波形処理が必要となり、複雑な計算と大きなメモリ領域を必要としていた。メモリ容量が限られ、プレイヤの操作に即応性が必要とされるゲーム装置では、ゲーム装置の特性に適応する処理が要望されている。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するもので、仮想聴取点ならびに仮想発音体が配置される仮想空間における音像定位制御を、簡易に行うことができるゲーム装置、ゲーム処理方法、並びにこれらをコンピュータにおいて実現するプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るゲーム装置は、記憶部、受付部、拡張比計算部、中間計算部、左計算部、右計算部、出力計算部、音声出力部と、を備える。
ここで、記憶部は、仮想聴取点ならびに仮想発音体が配置される仮想空間の環境情報を記憶し、受付部は、仮想発音体が発する仮想音声を所定の聴取条件で聴取したときに得られると想定される原音声の時刻tにおける左標本値L0(t)ならびに右標本値R0(t) (-M≦L0(t)≦M,-M≦R0(t)≦M)の入力を受け付け、拡張比計算部は、記憶部に記憶される環境情報から、受け付けられた原音声の拡張比c (0≦c≦2)を計算する。
【0007】
すなわち、記憶部には、ゲームの仮想空間において、仮想聴取点、例えば自キャラクタが配置される位置や、仮想発音体が配置された仮想空間の大きさなどの仮想空間の環境情報が記憶される。
【0008】
受付部は、仮想発音体が発する仮想音声を所定の聴取条件で聴取したと想定される原音声のある時刻における左標本値と右標本値を受け付けるものである。
【0009】
すなわち、アナログ信号である原音が有する音圧の特性を標本化(サンプリング)して、数値信号(デジタル)に変更し、これを左標本値及び右標本値として受け付けるものである。サンプリングは、所定時間間隔(t)毎に、左右の原音声の標本値を測定して、デジタル化を図る。
尚、右標本値及び左標本値には、雑音を排除するために上限値(M)と下限値(−M)が設定されている。
【0010】
拡張比計算部は、記憶部に記憶される環境情報、例えば、仮想空間の大きさ、に応じた拡張比を計算する。
【0011】
中間計算部は、受け付けられた原音声の左標本値L0(t)ならびに右標本値R0(t)と、計算された拡張比cと、から、第1中間音声の左標本値L1(t)ならびに右標本値R1(t)を、
L1(t) =〔(1+c)×L0(t) + (1-c)×R0(t)〕/2;
R1(t) =〔(1-c)×L0(t) + (1+c)×R0(t)〕/2
により計算し、
左計算部は、第1中間音声の左標本値L1(t)を上限値Mならびに下限値-Mと比較して、第2中間音声の左標本値L2(t)ならびに第3中間音声の左標本値L3(t)を、
L2(t) = L1(t), L3(t) = 0 (-M≦L1(t)≦M);
L2(t) = M, L3(t) = L1(t)-M (M<L1(t));
L2(t) = -M, L3(t) = L1(t)+M (L1(t)<-M)
により計算し、
右計算部は、第1中間音声の右標本値R1(t)を、上限値Mならびに下限値-Mと比較して、第2中間音声の右標本値R2(t)ならびに第3中間音声の右標本値R3(t)を、
R2(t) = R1(t), R3(t) = 0 (-M≦R1(t)≦M);
R2(t) = M, R3(t) = R1(t)-M (M<R1(t));
R2(t) = -M, R3(t) = R1(t)+M (R1(t)<-M)
により計算する。
【0012】
すなわち、中間計算部で、原音声の右標本値、左標本値に、環境情報に応じた拡張比を用いて各標本値を拡張する計算を行う。
【0013】
右計算部と左計算部では、上限値(M)と下限値(−M)を超えた右標本値と左標本値の差分を、第3中間音声の左標本値、右標本値として残す計算を行う。
【0014】
出力計算部は、出力音声の左標本値L4(t)ならびに右標本値R4(t)を、
L4(t) = L2(t) - R3(t);
R4(t) = R2(t) - L3(t)
により計算し、音声出力部は、出力音声の左標本値L4(t)ならびに右標本値L4(t)を、ステレオ音声出力する。
【0015】
すなわち、出力計算部では、拡張比により修正された第2中間音声の左標本値と右標本値を、上限値、下限値の差分として求められた第3中間音声で逆位相化することで、左右のバランスを調整し、音声出力部によりスピーカから音声として出力される。
【0016】
また、ゲーム装置において、環境情報には、仮想発音体の大きさが含まれ、仮想発音体の大きさが大きくなると、拡張比cは大きくなる。
【0017】
すなわち、仮想発音体の大きさが大きくなると、拡張比cが大きくなり、反響音の度合いが増し、より大きな音が出力されているように聞こえる。
【0018】
ゲーム装置において、仮想発音体は、仮想空間内に複数配置され、原音声は、複数の仮想発音体のすべてが発する仮想音声を所定の聴取条件で聴取したときに得られると想定される音声であり、環境情報には、複数の発音体が配置されている領域の広さが含まれ、領域の広さが大きくなると、拡張比cは大きくなる。
【0019】
すなわち、複数の発音体が配置される場合には、その複数の発音体が配置されている領域の広さが大きくなればなるほど、音の広がり度合いが増し、複数の発音体が離れて発音してるように聞くことができる。
【0020】
また、ゲーム装置において、環境情報には、仮想聴取点と仮想発音体とを含む部屋の大きさが含まれ、部屋の大きさが小さくなると、拡張比cは大きくなる。
【0021】
すなわち、部屋の大きさが小さくなればなるほど、拡張比が大きくなり、反響音の度合いが増し、小さな部屋で音を聞いているように聞こえる。
【0022】
本発明のその他の観点に係るゲーム処理方法は、ゲーム装置において、実行されるゲーム処理方法であって、ゲーム装置は、記憶部、受付部、拡張比計算部、中間計算部、左計算部、右計算部、出力計算部、音声出力部を有し、記憶工程、受付工程、拡張比計算工程、中間計算工程、左計算工程、右計算工程、出力計算工程、音声出力工程を備え、以下のように構成する。
【0023】
すなわち、記憶工程では、仮想聴取点ならびに仮想発音体が配置される仮想空間の環境情報を記憶する。
【0024】
受付工程では、仮想発音体が発する仮想音声を所定の聴取条件で聴取したときに得られると想定される原音声の時刻tにおける左標本値L0(t)ならびに右標本値R0(t) (-M≦L0(t)≦M,-M≦R0(t)≦M)の入力を受け付ける。
【0025】
拡張比計算工程では、記憶部に記憶される環境情報から、受け付けられた原音声の拡張比c (0≦c≦2)を計算する。
【0026】
中間計算工程では、受け付けられた原音声の左標本値L0(t)ならびに右標本値R0(t)と、計算された拡張比cと、から、第1中間音声の左標本値L1(t)ならびに右標本値R1(t)を、
L1(t) =〔(1+c)×L0(t) + (1-c)×R0(t)〕/2;
R1(t) =〔(1-c)×L0(t) + (1+c)×R0(t)〕/2
により計算する。
【0027】
左計算工程では、第1中間音声の左標本値L1(t)を上限値Mならびに下限値-Mと比較して、第2中間音声の左標本値L2(t)ならびに第3中間音声の左標本値L3(t)を、
L2(t) = L1(t), L3(t) = 0 (-M≦L1(t)≦M);
L2(t) = M, L3(t) = L1(t)-M (M<L1(t));
L2(t) = -M, L3(t) = L1(t)+M (L1(t)<-M)
により計算する。
【0028】
右計算工程では、第1中間音声の右標本値R1(t)を、上限値Mならびに下限値-Mと比較して、第2中間音声の右標本値R2(t)ならびに第3中間音声の右標本値R3(t)を、
R2(t) = R1(t), R3(t) = 0 (-M≦R1(t)≦M);
R2(t) = M, R3(t) = R1(t)-M (M<R1(t));
R2(t) = -M, R3(t) = R1(t)+M (R1(t)<-M)
により計算する。
【0029】
出力計算工程では、出力音声の左標本値L4(t)ならびに右標本値R4(t)を、
L4(t) = L2(t) - R3(t);
R4(t) = R2(t) - L3(t)
により計算する。
【0030】
音声出力工程では、出力音声の左標本値L4(t)ならびに右標本値L4(t)を、ステレオ音声出力する。
【0031】
本発明のその他の観点に係るプログラムは、コンピュータを、ゲーム装置として機能させるプログラムであって、ゲーム装置は、記憶部、受付部、拡張比計算部、中間計算部、左計算部、右計算部、出力計算部、音声出力部を備える。
【0032】
ここで、記憶部は、仮想聴取点ならびに仮想発音体が配置される仮想空間の環境情報が記憶し、受付部は、仮想発音体が発する仮想音声を所定の聴取条件で聴取したときに得られると想定される原音声の時刻tにおける左標本値L0(t)ならびに右標本値R0(t) (-M≦L0(t)≦M,-M≦R0(t)≦M)の入力を受け付け、拡張比計算部は、記憶部に記憶される環境情報から、受け付けられた原音声の拡張比c (0≦c≦2)を計算する。
【0033】
中間計算部は、受け付けられた原音声の左標本値L0(t)ならびに右標本値R0(t)と、計算された拡張比cと、から、第1中間音声の左標本値L1(t)ならびに右標本値R1(t)を、
L1(t) =〔(1+c)×L0(t) + (1-c)×R0(t)〕/2;
R1(t) =〔(1-c)×L0(t) + (1+c)×R0(t)〕/2
により計算する。
【0034】
左計算部は、第1中間音声の左標本値L1(t)を上限値Mならびに下限値-Mと比較して、第2中間音声の左標本値L2(t)ならびに第3中間音声の左標本値L3(t)を、
L2(t) = L1(t), L3(t) = 0 (-M≦L1(t)≦M);
L2(t) = M, L3(t) = L1(t)-M (M<L1(t));
L2(t) = -M, L3(t) = L1(t)+M (L1(t)<-M)
により計算し、右計算部は、第1中間音声の右標本値R1(t)を、上限値Mならびに下限値-Mと比較して、第2中間音声の右標本値R2(t)ならびに第3中間音声の右標本値R3(t)を、
R2(t) = R1(t), R3(t) = 0 (-M≦R1(t)≦M);
R2(t) = M, R3(t) = R1(t)-M (M<R1(t));
R2(t) = -M, R3(t) = R1(t)+M (R1(t)<-M)
により計算する。
【0035】
出力計算部は、出力音声の左標本値L4(t)ならびに右標本値R4(t)を、
L4(t) = L2(t) - R3(t);
R4(t) = R2(t) - L3(t)
により計算し、音声出力部は、出力音声の左標本値L4(t)ならびに右標本値L4(t)を、ステレオ音声出力する。
【0036】
また、本発明のプログラムは、コンパクトディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、ディジタルビデオディスク、磁気テープ、半導体メモリ等のコンピュータ読取可能な情報記憶媒体に記録することができる。
上記プログラムは、プログラムが実行されるコンピュータと独立して、コンピュータ通信網を介して配布、販売することができる。また、上記情報記憶媒体は、コンピュータとは独立して配布、販売することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、仮想聴取点ならびに仮想発音体が配置される仮想空間における音像定位制御を、簡易に行うことができるゲーム装置、ゲーム処理方法、並びにこれらをコンピュータにおいて実現するプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係るゲーム装置が実現される典型的な情報装置の概要構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態の1つ係るゲーム装置の概要構成を示す説明図である。
【図3】原音のアナログ波形の変化を時間経過に沿って示したグラフである。
【図4】原音のアナログ波形を一定時間毎にサンプリングしたサンプリング値を、時間経過に沿って示すグラフである。
【図5】拡張比cと環境情報との関係を示す図である。
【図6】拡張比cと発音体の大きさとの関係を示す図である。
【図7】拡張比cと複数の仮想発音体が配置されている領域の広さとの関係を示す図である。
【図8】複数の仮想発音体が配置されている領域の広さが相違する例を模式的に示す図である。
【図9】拡張比cと仮想聴取点と仮想発音体とを囲む部屋との関係を示す図である。
【図10】仮想発音体を囲む部屋の大きさが相違する例を模式的に示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係るゲーム装置における音声出力処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】原音信号L0、R0から第1中間音声信号L1を出力する回路構成を示した回路図である。
【図13】第1中間音声信号L1から第2中間音声信号L2及び第3中間音声信号L3を出力する回路構成を示した回路図である。
【図14】原音信号L0、R0から第1中間音声信号R1を出力する回路構成を示した回路図である。
【図15】第1中間音声信号R1から第2中間音声信号R2及び第3中間音声信号R3を出力する回路構成を示した回路図である。
【図16】第2中間音声信号L2、R2及び第3中間音声信号L3、R3から出力音声信号L4、R4を出力する回路構成を示した回路図である。
【図17】本実施形態を用いて、ステレオ音声を出力した場合の概念図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、本発明の実施形態に係るゲーム装置が実現される典型的な情報処理装置100の概要構成を示す模式図である。以下、本図を参照して説明する。
【0040】
情報処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、インターフェース104と、コントローラ105と、外部メモリ106と、DVD−ROM(Digital Versatile Disk - Read Only Memory)ドライブ107と、画像処理部108と、音声処理部109と、NIC(Network Interface Card)110と、を備える。
【0041】
ゲーム用のプログラムおよびデータを記憶したDVD−ROMをDVD−ROMドライブ107に装着して、情報処理装置100の電源を投入することにより、当該プログラムが実行され、本実施形態のゲーム装置が実現される。
【0042】
CPU 101は、情報処理装置100全体の動作を制御し、各構成要素と接続され制御信号やデータをやりとりする。また、CPU 101は、レジスタ(図示せず)という高速アクセスが可能な記憶域に対してALU(Arithmetic Logic Unit)(図示せず)を用いて加減乗除等の算術演算や、論理和、論理積、論理否定等の論理演算、ビット和、ビット積、ビット反転、ビットシフト、ビット回転等のビット演算などを行うことができる。さらに、マルチメディア処理対応のための加減乗除等の飽和演算や、三角関数等、ベクトル演算などを高速に行えるように、CPU 101自身が構成されているものや、コプロセッサを備えて実現するものがある。
【0043】
ROM 102には、電源投入直後に実行されるIPL(Initial Program Loader)が記録され、これが実行されることにより、DVD−ROMに記録されたプログラムをRAM 103に読み出して、CPU 101による実行が開始される。また、ROM 102には、情報処理装置100全体の動作制御に必要なオペレーティングシステムのプログラムや各種のデータが記録される。
【0044】
RAM 103は、データやプログラムを一時的に記憶するためのもので、DVD−ROMから読み出したプログラムやデータ、その他ゲームの進行やチャット通信に必要なデータが保持される。また、CPU 101は、RAM 103に変数領域を設け、当該変数に格納された値に対して直接ALUを作用させて演算を行ったり、RAM 103に格納された値を一旦レジスタに格納してからレジスタに対して演算を行い、演算結果をメモリに書き戻す、などの処理を行う。
【0045】
インターフェース104を介して接続されたコントローラ105は、プレイヤーがダンスゲームやサッカーゲームなどのゲームの実行の際に行う操作入力を受け付ける。インターフェース104には、複数のコントローラ105が接続されていてもよい。
【0046】
インターフェース104を介して着脱自在に接続された外部メモリ106には、ゲームのプレイ状況(過去の成績等)を示すデータ、ゲームの進行状態を示すデータ、ネットワークを用いたゲームのチャット通信のログ(記録)のデータなどが書き換え可能に記憶される。プレイヤーは、コントローラ105を介して操作入力を行うことにより、これらのデータを適宜外部メモリ106に記録することができる。
【0047】
ここで、チャットとは、プレイヤー同士が直接会って会話をするかのように、プレイヤーの一方が情報を発してから他方にその情報が提示されるまでの時間差がないように、リアルタイムで情報をやりとりできる仕組みである。例えば、プレイヤーからキーボード等で文字が入力され、相手のモニターに表示されることによって、文字によるチャット(文字チャット)が行われる。また、例えば、プレイヤーが発した音声がマイクロフォンで集音され、相手のスピーカーから音声が出力されることによって、音声によるチャット(音声チャット)が行われる。
【0048】
DVD−ROMドライブ107に装着されるDVD−ROMには、ゲームを実現するためのプログラムとゲームに付随する画像データや音声データが記録される。CPU 101の制御によって、DVD−ROMドライブ107は、これに装着されたDVD−ROMに対する読み出し処理を行って、必要なプログラムやデータを読み出し、これらはRAM 103等に一時的に記憶される。
【0049】
画像処理部108は、DVD−ROMから読み出されたデータをCPU 101や画像処理部108が備える画像演算プロセッサ(図示せず)によって加工処理した後、これを画像処理部108が備えるフレームメモリ(図示せず)に記録する。フレームメモリに記録された画像情報は、所定の同期タイミングでビデオ信号に変換され画像処理部108に接続されるモニター(図示せず)へ出力される。これにより、各種の画像表示が可能となる。
【0050】
画像演算プロセッサは、2次元の画像の重ね合わせ演算やαブレンディング等の透過演算、各種の飽和演算を高速に実行できる。
【0051】
また、仮想3次元空間に配置され、各種のテクスチャ情報が付加されたポリゴン情報を、Zバッファ法によりレンダリングして、所定の視点位置から仮想3次元空間に配置されたポリゴンを所定の視線の方向へ俯瞰したレンダリング画像を得る演算の高速実行も可能である。
【0052】
さらに、CPU 101と画像演算プロセッサが協調動作することにより、文字の形状を定義するフォント情報にしたがって、文字列を2次元画像としてフレームメモリへ描画したり、各ポリゴン表面へ描画することが可能である。
【0053】
また、ゲームの画像などの情報をDVD−ROMに用意しておき、これをフレームメモリに展開することによって、ゲームの様子などを画面に表示することができるようになる。
【0054】
音声処理部109は、DVD−ROMから読み出した音声データをアナログ音声信号に変換し、これに接続されたスピーカー(図示せず)から出力させる。また、CPU 101の制御の下、ゲームの進行の中で発生させるべき効果音や楽曲データを生成し、これに対応した音声をスピーカーから出力させる。
【0055】
音声処理部109では、DVD−ROMに記録された音声データがMIDIデータである場合には、これが有する音源データを参照して、MIDIデータをPCMデータに変換する。また、ADPCM(Adaptive Differential Pulse Code Modulation)形式やOgg Vorbis形式等の圧縮済音声データである場合には、これを展開してPCMデータに変換する。PCMデータは、そのサンプリング周波数に応じたタイミングでD/A(Digital/Analog)変換を行って、スピーカーに出力することにより、音声出力が可能となる。
【0056】
NIC 110は、情報処理装置100をインターネット等のコンピュータ通信網(図示せず)に接続するためのものであり、LAN(Local Area Network)を構成する際に用いられる10BASE−T/100BASE−T規格にしたがうものや、電話回線を用いてインターネットに接続するためのアナログモデム、ISDN(Integrated Services Digital Network)モデム、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)モデム、ケーブルテレビジョン回線を用いてインターネットに接続するためのケーブルモデム等と、これらとCPU 101との仲立ちを行うインターフェース(図示せず)により構成される。
【0057】
このほか、情報処理装置100は、ハードディスク等の大容量外部記憶装置を用いて、ROM 102、RAM 103、外部メモリ106、DVD−ROMドライブ107に装着されるDVD−ROM等と同じ機能を果たすように構成してもよい。
【0058】
以上で説明した情報処理装置100は、いわゆる家庭用テレビゲーム装置に相当するものであるが、携帯電話、携帯ゲーム機器、カラオケ装置、一般的なビジネス用コンピュータなど、種々の計算機上で本発明を実現することが可能である。
【0059】
例えば、一般的なコンピュータは、上記情報処理装置100と同様に、CPU、RAM、ROM、DVD−ROMドライブ、及びNICを備え、情報処理装置100より簡易な機能を備えた画像処理部を備え、外部記憶装置としてハードディスクを有する他、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、磁気テープ等が利用できるようになっている。また、コントローラ105ではなく、キーボードやマウスなどを入力装置として利用する。
【0060】
図2は、本発明の実施形態の1つ係るゲーム装置の概要構成を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
【0061】
ゲーム装置200は、記憶部201、受付部202、拡張比計算部203、中間計算部204、左計算部205、右計算部206、出力計算部207、音声出力部208と、からなる。
【0062】
記憶部201には、仮想聴取点の位置、仮想発音体が配置される仮想空間の環境情報が、記憶されている。
ここで、仮想空間の環境情報とは、仮想発音体の大きさ、仮想聴取点と仮想発音体とを囲む部屋の大きさ、仮想発音体が複数ある場合には、複数の仮想発音体が配置されている領域の広さなどである。
ゲーム装置においては、仮想聴取点の位置とは、プレイヤまたは自キャラクタの配置された仮想空間の位置であり、仮想発音体とは、敵キャラクタや武器など音声を発するオブジェクトである。
また、発音体の大きさは、例えば、キャラクタの大きさであり、一般的にキャラクタの大きさが大きくなるほど、発音する音声の大きさも大きく設定される。
【0063】
仮想発音体が複数ある場合とは、ゲーム中で複数のキャラクタが登場する場合、複数の発音するオブジェクトがある場合が該当する。複数の発音体が配置されている領域とは、複数のキャラクタが配置されている領域を含む領域のことであり、領域が広いほど、音が広がりを持って聞くことができる。
部屋の大きさとは、例えば、キャラクタが配置される仮想空間の大きさであり、部屋が小さくなれば、反響音は大きくなる。
【0064】
CPU 101は、DVD−ROMディバイス等に記憶された音声データを読み出し、仮想聴取位置、環境情報を記憶部201に記憶する。
尚、記憶部201はROM 102に該当する。
【0065】
受付部202は、仮想発音体が発する仮想音声を所定の聴取条件で聴取したときに得られると想定される原音声の時刻tにおける左標本値L0(t)及び右標本値R0(t)を受け付ける。
すなわち、時刻tにおける仮想聴取点の位置において聴取された原音であるアナログ情報をデジタル情報に変換したデータをサンプリング標本化した値を、左標本値L0(t)及び右標本値R0(t)として受け付ける。
【0066】
図3に示すように、所定の聴取条件で聴取した原音は、連続的に変化する音圧の波形として捉えることができる。これを一定の時間間隔で標本化(サンプリング)して、グラフとして示すと図4のように示される。尚、1秒間に標本化する回数をサンプリング周波数とする。
本発明の実施形態では、ある時刻tにおける左標本値をL0(t)とし、右標本値をR0(t)とし、図4では、左標本値L0の値を、時間(t)の経過に即して示している。
ここで示されるM値は、+Mと−Mがあり、それぞれサンプリングする最大値及び最小値を示している。
右標本値R0(t)についても、同様の手法でサンプリングされる。
【0067】
拡張比計算部203は、記憶部201に記憶される環境情報から、受け付けられた原音声の拡張比cを計算する。
図5に示すように、環境情報と拡張比との間には一定の関連性がある。
すなわち、仮想発音体の大きさが大きくなるほど、c値は大きくなり、複数の発音体の配置された領域が広くなるほど、c値は大きくなり、発音体の置かれた部屋の大きさが小さいほど、c値は大きくなる。
c値は、0から2までの間で設定され、0はモノラル、1は原音のまま 、2は左右にできるだけ広げた場合の値である。
【0068】
ゲーム音を発生する際には、発音するオブジェクトが、聴取する位置(プレイヤ)を基準にどの方向にいるかを認識する必要がある。発音体の位置を決定するためには、一般的には、音像定位の処理を行なっている。すなわち、敵キャラクタが自キャラクタの右前にいる場合には、仮想空間内の自キャラクタと敵キャラクタの位置を取得し、音像をその方向に定位させた位置から発音させる必要がある。
また、空間の大きさ或いはキャラクタの大きさに応じて、反響音を異ならせる場合にはエフェクト処理、例えばデレイ処理を行っている。
これらの処理は、波形の位相を制御すること等により対処しており、処理量が多く、処理時間も要している。
本実施態様においては、音像定位の一般的処理を行わず、キャラクタ大きさなどの、仮想空間の環境情報から拡張比を計算して、簡易的に音像定位の処理を行うものである。
【0069】
拡張比cは、記憶部201に記憶された環境情報から計算される。
図6は、環境情報の1つである発音体の大きさとc値との対応を示す表である。
発音体の大きさは、発音体X<発音体Y<発音体Z<発音体Wと、設定されている。
従って、発音体Xのときのc値は0.4、発音体Yのときのc値は0.6、発音体Zのときのc値は1.0、発音体Wのときのc値は1.5と計算される。
c値は、発音体の大きさに比例する式を用いて計算したり、他の任意の計算式を用いることができる。
同一空間内で、発音体の大きさが大きくなればなるほど、c値は大きくなるので、音は広がりをもって出力される。従って、ユーザは、大きな反響音をともなって出力されているように聞こえる。
【0070】
図7は、仮想空間内に仮想発音体が複数配置された場合において、その複数の仮想発音体が配置されている領域の広さとc値との関係を示す図である。
同図に示すように、領域の広さが小さいときは、c値は0.5、領域の広さが中のときには、c値は1.0と、領域の広さが大のときには、c値は1.5と計算される。
拡張比cの値は、環境情報の性質やゲーム内容との関係を考慮して、領域の広さとともに大きくなるような、任意の計算方法が採用される。
【0071】
ここで、複数の仮想発音体が配置されている領域とは、配置された複数の仮想発音体の全てを含む領域をいう。このような領域としては、たとえば、以下のような態様を採用することができる。
(a)すべての発音体を含む最小の直方体。典型的には、直方体の各辺は、仮想空間にあらかじめ設定されたグローバル座標系の座標軸に平行に設定する。
(b)すべての発音体を含む最小の球。各発音体の位置から当該最小球を求める公知のアルゴリズムを利用することができる。
(c)すべての発音体を含む最小の凸多面体。凸包とも呼ばれ、各発音体の位置から凸包を求める公知のアルゴリズムを利用することができる。
(d)すべての発音体の重心を中心とする最小球。重心は、発音体の位置の平均から求めることができる。球の半径は、重心から各発音体への距離のうち最大のものとすればよい。
(e)上記(a)−(d)の各領域を、所定の厚さだけ大きくした領域。
【0072】
図8に複数の仮想発音体が仮想空間に配置される例を示す。
図8(a)には、仮想空間801内に仮想発音体802が5つ配置されている。複数の仮想発音体が配置されいる領域(以下、「領域A」という。)を定めるための方法として、凸包という概念を用いることができる。凸包は、複数の点を含む最小の多角形のことであり、幾何学的アルゴリズムにより求めることができる。
本図においては、凸包の概念を用いて求められる領域Aは、5つの仮想発音体801を含む最小の多角形となり、点線803で囲まれた領域となる。
【0073】
図8(b)にも、仮想空間804内に仮想発音体805が5つ配置されている。図8(a)の場合と同様に、複数の仮想発音体が配置されている領域(以下、「領域B」という。)を定めるために、凸包の領域を幾何学的アルゴリズムにより求める。
本図において、凸包の概念を用いて求められる領域Bは、仮想発音体805を含む最小の多角形となり、点線806で囲まれた領域である。
領域の求め方は、凸包の概念を用いることに限定されることはなく、複数の仮想発音体を全て含むような領域が求められれば、他の方法を用いることができる。
【0074】
両図から明らかなように、領域Bは、領域Aよりも広いことになり、図5に示すように、領域Bのc値は、領域Aのc値より大きく設定されることになる。
計算は、領域の大きさに比例して大きくなるような計算式、あるいは、その他任意の計算式を用いて計算する。
このように求められたc値を用いることで、図8(b)の仮想空間で発生される音声は、図8(a)の仮想空間で発生される音声より、広がりを持って出力されることになる。
【0075】
図9は、環境情報の1つである仮想聴取点と仮想発音体とを囲む部屋の大きさとc値との対応を示す図である。部屋A,部屋B、部屋C、部屋D、部屋Eに対応したc値が計算される。
すなわち、部屋A〜Eの大きさは、空間E<空間D<空間C<空間B<空間Aと設定されている。
部屋Aが設定されている場合にはc値は0.6、部屋Bが設定されているときにはc値は0.8、部屋Cが設定されている時にはc値は1.0、部屋Dが設定されているときにはc値は1.2、部屋Eが設定されているときのc値は1.4と計算される。
部屋の大きさから拡張比を算出する方法は、反比例する式を用いてもよいし、その他任意の計算式を用いることができる。
【0076】
図10に仮想発音体と仮想発音体を含む部屋の大きさの例を示す。
図10(a)は、仮想発音体1002を含む部屋1001を示し、図10(b)は、仮想発音体1003を含む部屋1004を示す。仮想聴取点は、仮想発音体と同一の位置にあると仮定する。
部屋1001は、部屋1004より小さいので、仮想発音体1002が発する音が壁に衝突して、仮想聴取点まで戻って来る時間は、仮想発音体1003が発する音が壁に衝突して戻ってくるまでの時間より早い。
従って、部屋1001のほうが、部屋1004より反響音が大きく聞こえる。
【0077】
このような反響音を出力するためには、部屋が小さいほど、より反響音が大きいようにc値を求める必要がある。
すなわち、図5に示すように、仮想発音体の置かれた部屋の大きさが小さいほどc値を大きく設定するように計算する。
【0078】
中間計算部204は、原音声信号L0、R0を入力して、第1中間音声信号L1、R1を出力する。
具体的には、左標本値L0(t)と右標本値R0(t)と、計算されたc値にも基づいて、第1中間音声の左標本値L1(t)と右標本値R1(t)を、以下の式(1a)(1b)の演算式に基づいて求める。
L1(t) =〔(1+c)×L0(t) + (1-c)×R0(t)〕/2 ・・(1a)
R1(t) =〔(1-c)×L0(t) + (1+c)×R0(t)〕/2 ・・(1b)
【0079】
左計算部205は、第1中間音声信号L1から第2中間音声信号L2及び第3中間音声信号L3を出力する。
具体的には、第1中間音声の左標本値L(1)を上限値Mと下限値−Mと比較して、第2中間音声の左標本値L2(t)並びに第3中間音声の左標本値L3(t)を、以下の式(2a)(2b)(2c)に基づいて求める。
L2(t) = L1(t), L3(t) = 0 (-M≦L1(t)≦M)・・(2a)
L2(t) = M, L3(t) = L1(t)-M (M<L1(t)) ・・・(2b)
L2(t) = -M, L3(t) = L1(t)+M (L1(t)<-M) ・・・(2c)
【0080】
右計算部206は、第1中間音声信号R1から第2中間音声信号R2及び第3中間音声信号R3を出力する。
具体的には、第1中間音声の右標本値R1(t)を、上限値Mならびに下限値-Mと比較して、第2中間音声の右標本値R2(t)ならびに第3中間音声の右標本値R3(t)を、以下の式(3a)(3b)(3c)から求める。
R2(t) = R1(t), R3(t) = 0 (-M≦R1(t)≦M)・・(3a)
R2(t) = M, R3(t) = R1(t)-M (M<R1(t)) ・・・(3b)
R2(t) = -M, R3(t) = R1(t)+M (R1(t)<-M) ・・・(3c)
【0081】
出力計算部207は、第2中間音声信号L2、R2及び第3中間音声信号L3、R3から出力音声信号L4、R4を出力する。
具体的には、出力音声の左標本値L4(t)ならびに右標本値R4(t)を、以下の式(4a)(4b)から求める。
L4(t) = L2(t) - R3(t)・・(4a)
R4(t) = R2(t) - L3(t)・・(4b)
【0082】
なお、CPU 101が、受付部202、拡張比計算部203、中間計算部204、左計算部205、右計算部、出力計算部207として機能する。
【0083】
音声出力部208は、左標本値L4(t)ならびに右標本値L4(t)を出力音声信号L4、R4としてアナログ化して、スピーカからステレオ音声出力する。
尚、音声処理部109が、音声出力部208として機能する。
【0084】
上述の構成を有するゲーム装置おける音声出力処理の流れを図11に示すフローチャートを用いて説明する。
【0085】
音声出力処理が開始されると、受付部202により原音声の時刻tにおける左標本値L0(t)ならびに右標本値R0(t) が受け付けられる(ステップS1101)。各標本値は、上限値Mと下限値-Mが設定され、その範囲内で、すなわち、-M≦L0(t)≦M,-M≦R0(t)≦Mの範囲で受け付ける。
【0086】
そして、記憶部201に記憶される環境情報から、拡張比計算部203により受け付けられた原音声の拡張比c (0≦c≦2)を計算される(ステップS1102)。
【0087】
中間計算部204により、原音声の左標本値L0(t)ならびに右標本値R0(t)と、計算された拡張比cと、から、第1中間音声の左標本値L1(t)ならびに右標本値R1(t)を、計算する(ステップS1103)。
【0088】
左計算部205により第1中間音声の左標本値L1(t)を上限値Mならびに下限値-Mと比較して、第2中間音声の左標本値L2(t)ならびに第3中間音声の左標本値L3(t)を、計算する(ステップS1104)。
この計算により、過大な振幅値を有する標本値を差分として残す。
【0089】
右計算部206により第1中間音声の右標本値R1(t)を、上限値Mならびに下限値-Mと比較して、第2中間音声の右標本値R2(t)ならびに第3中間音声の右標本値R3(t)を計算する(ステップS1105)。
ステップS904と同様に、過大な振幅値を有する標本値を差分として残す。
【0090】
そして、出力計算部207により、出力音声の左標本値L4(t)ならびに右標本値R4(t)を、計算する(ステップS1106)。
左標本値L4(t)ならびに右標本値R4(t)は、第2中間音声の左標本値L2(t)と右標本値R2(t)から、過大な振幅値の差分値である第3中間音声の左標本値L3(t)と右標本値R3(t)を減算して求められる。
【0091】
音声出力部208により、出力音声の左標本値L4(t)ならびに右標本値L4(t)を、ステレオ音声として、スピーカから出力する(ステップS1107)。
【0092】
その後、t値が終了したか否かが判断され(ステップS1108)、終了していれば、(YES;ステップS1108)、音声出力処理は終了する。
t値が終了していなければ(NO;ステップS1108)、RAM 103等に記憶するt値を更新して、t+1とし、再度、同様の処理を開始する。処理工程は、次のt値のデータが来るまで待機することになる。
音声出力処理は、t=0、1、2、・・・と、RAM 103等のt値を更新して、t値が最終値になるまで繰り返し行われる。
最終値は、予めゲームデータで定められた仮想発音体が発する音が完了する時と定めることができる。従って、t値が予め定められた一定値になると終了する。また、ユーザの意志により途中で終了する場合、例えば、ゲームを中断する場合には、意志表示を受け付けた時のt値が最終値となる。
【0093】
このように本実施態様における音声出力処理は、拡張比cを含んだ簡易な計算式でt値を更新させるだけで進めることができる。従って、処理速度は速くなり、時間遅れによる不都合を生じることなく、処理を進めることができる。
【0094】
次に、本実施態様における回路信号の流れを、図12〜図16の回路構成を示す回路図を参照して説明する。
【0095】
右のスピーカから出力される音声は、図12及び図13に示す回路構成に従って、処理が進められる。
すなわち、受け付けられた原音声信号L0と、拡張比計算部203により計算された拡張比cを乗算加算器1201に入力し、(1+c)×L0を計算する。
また、原音声信号R0と、拡張比cを乗算加算器1202へ入力して、(1−c)×R0を計算する。そして、各々の演算結果を加算器1203により加算する。
さらに、上述の加算された結果に、乗算器1204により1/2が乗算されて、中間音声信号L1を出力する。
【0096】
図13に示すように、上述の回路で出力された中間音声信号L1と、上限値または下限値であるMを比較器1301、1302、1303に入力する。
比較器1301で、M<L1の条件を満たしていば、L2=M、L3=L1-Mという結果を出力する。
比較器1302で、-M≦L1≦Mという条件を満たしていれば、L2=L1, L3=0という結果を出力する。
比較器1303で、L1<-Mという条件を満たしていれば、L2=-M、L3=L1+Mという結果を出力する。
【0097】
比較器1301、1302、1303の結果は加算器1304で加算され、最終的に得られた結果が、第2中間音声信号L2、第3中間音声信号L3として出力される。
【0098】
同様に、左のスピーカから出力される音声は、図14及び図15に示す回路構成により処理が進められる。
すなわち、受け付けられた原音声信号L0と、拡張比計算部203により計算された拡張比cを乗算加算器1401に入力し、(1−c)×L0を計算する。
原音声信号R0と、拡張比cを乗算加算器1402へ入力して、(1+c)×R0を計算する。そして、各々の演算結果を加算器1403により加算する。
さらに、乗算器1404により1/2が乗算されて、中間音声信号R1を出力する。
【0099】
図15に示すように、上述の回路で算出された中間音声信号R1と、上限値または下限値Mを比較器1501、1502、1503に入力する。
比較器1501で、M<L1の条件を満たしていれば、L2=M、L3=L1-Mという結果を出力する。
比較器1502で、-M≦L1≦Mという条件を満たしていれば、L2=L1, L3=0という結果を出力する。
比較器1503で、L1<-Mという条件を満たしていれば、L2=-M、L3=L1+Mという結果を出力する。
【0100】
比較器1501、1502、1503の結果は加算器1504で加算され、最終的に得られた結果が、第2中間音声信号R2、第3中間音声信号R3として出力される。
【0101】
更に、図16に示す回路構成のように、上述の回路構成により求められた第2中間音声信号L2、R2と第3中間音声信号L3、R3が減算器1601、1602に入力されることにより、出力音声信号L4、R4が出力される。
出力音声信号L4とR4は、D/A変換器を介してデジタル信号からアナログ信号に変換されて、スピーカから音声として出力される。
【0102】
図17には、本実施形態を用いて、ステレオ音声を出力した場合の概念図を示す。
ゲーム装置200に入力された原音声信号L0、R0は、本実施態様にける音声処理を経て、右スピーカ1702と左スピーカ1703に達し、出力音声信号L4、R4となり音声として出力される。
【0103】
ユーザ1701の音が聞こえる範囲は、図17で点線で示すような音場の範囲として示すことができる。内側の音場1(1705)は、c値が小さい場合、外側の音場2(1704)は、c値が大きい場合を示している。
【0104】
c値が小さい場合は、音場1(1705)で示すように、部屋の大きさが大きい場合、発音体が小さい場合、複数の発音体の置かれた領域が狭い場合の音環境を表現することができる。
【0105】
c値が大きい場合には、音場2(1704)で示すように、部屋の大きさが小さい場合、発音体が大きい場合、複数の発音体が置かれた領域が広い場合の音環境を表現することができる。
【0106】
尚、本発明は、上述の実施形態で示したように、環境情報に応じた拡張比cを計算して、簡易的な処理を行うことを目的とする。そして、その環境情報としては、発音体の大きさや部屋の大きさなど、そもそものゲーム環境に関連する環境情報であり、発音体1つに対して拡張比cは、一定であることが前提であった。
【0107】
本発明は、発音体が移動するような環境情報において、c値を連続的に変化する場合にも適用することができる。
【0108】
例えば、拡張比cを連続的に変化させることにより、発音体からの音が正面から徐々に横に定位するように変化させることができる。この時、ユーザは、c値が連続的に変化することで、音が正面から横に移動しているように聞こえる。
このような連続的に変化する拡張比cをゲーム仕様に適用することもでき、例えば、音が正面から徐々に横に移動し、真横に聞こえたときに入力装置を操作させることに使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上説明したように、仮想聴取点ならびに仮想発音体が配置される仮想空間における音像定位制御を、簡易に行うことができるゲーム装置、ゲーム処理方法、並びにこれらをコンピュータにおいて実現するプログラムを提供することができる。
【符号の説明】
【0110】
100 情報処理装置
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 インターフェイス
105 コントローラ
106 外部メモリ
107 DVD−ROMドライブ
108 画像処理部
109 音声処理部
110 NIC
200 ゲーム装置
201 記憶部
202 受付部
203 拡張比計算部
204 中間計算部
205 左計算部
206 右計算部
207 出力計算部
208 音声出力部
801 仮想空間
802 仮想発音体
803 領域A
804 仮想空間
805 仮想発音体
806 領域B
1001 仮想空間
1002 仮想発音体
1003 仮想発音体
1004 仮想空間
1201 乗算加算器
1202 乗算加算器
1203 加算器
1204 乗算器
1301 比較器
1302 比較器
1303 比較器
1304 乗算器
1401 乗算加算器
1402 乗算加算器
1403 加算器
1404 乗算器
1501 比較器
1502 比較器
1503 比較器
1504 加算器
1601 減算器
1602 減算器
1701 ユーザ
1702 スピーカ
1703 スピーカ
1704 音場2
1705 音場1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想聴取点ならびに仮想発音体が配置される仮想空間の環境情報が記憶される記憶部、
前記仮想発音体が発する仮想音声を所定の聴取条件で聴取したときに得られると想定される原音声の時刻tにおける左標本値L0(t)ならびに右標本値R0(t) (-M≦L0(t)≦M,-M≦R0(t)≦M)の入力を受け付ける受付部、
前記記憶部に記憶される環境情報から、前記受け付けられた原音声の拡張比c (0≦c≦2)を計算する拡張比計算部、
前記受け付けられた原音声の左標本値L0(t)ならびに右標本値R0(t)と、前記計算された拡張比cと、から、第1中間音声の左標本値L1(t)ならびに右標本値R1(t)を、
L1(t) =〔(1+c)×L0(t) + (1-c)×R0(t)〕/2;
R1(t) =〔(1-c)×L0(t) + (1+c)×R0(t)〕/2
により計算する中間計算部、
前記第1中間音声の左標本値L1(t)を前記上限値Mならびに前記下限値-Mと比較して、第2中間音声の左標本値L2(t)ならびに第3中間音声の左標本値L3(t)を、
L2(t) = L1(t), L3(t) = 0 (-M≦L1(t)≦M);
L2(t) = M, L3(t) = L1(t)-M (M<L1(t));
L2(t) = -M, L3(t) = L1(t)+M (L1(t)<-M)
により計算する左計算部、
前記第1中間音声の右標本値R1(t)を、前記上限値Mならびに前記下限値-Mと比較して、前記第2中間音声の右標本値R2(t)ならびに前記第3中間音声の右標本値R3(t)を、
R2(t) = R1(t), R3(t) = 0 (-M≦R1(t)≦M);
R2(t) = M, R3(t) = R1(t)-M (M<R1(t));
R2(t) = -M, R3(t) = R1(t)+M (R1(t)<-M)
により計算する右計算部、
出力音声の左標本値L4(t)ならびに右標本値R4(t)を、
L4(t) = L2(t) - R3(t);
R4(t) = R2(t) - L3(t)
により計算する出力計算部、
前記出力音声の左標本値L4(t)ならびに右標本値L4(t)を、ステレオ音声出力する音声出力部
を備えることを特徴とするゲーム装置。
【請求項2】
請求項1に記載のゲーム装置であって、
前記環境情報には、前記仮想発音体の大きさが含まれ、
前記仮想発音体の大きさが大きくなると、前記拡張比cは大きくなる
ことを特徴とするゲーム装置。
【請求項3】
請求項1に記載のゲーム装置であって、
前記仮想発音体は、前記仮想空間内に複数配置され、
前記原音声は、前記複数の仮想発音体のすべてが発する仮想音声を前記所定の聴取条件で聴取したときに得られると想定される音声であり、
前記環境情報には、前記複数の仮想発音体が配置されている領域の広さが含まれ、
前記領域の広さが大きくなると、前記拡張比cは大きくなる
ことを特徴とするゲーム装置。
【請求項4】
請求項1に記載のゲーム装置であって、
前記環境情報には、前記仮想聴取点と前記仮想発音体とを囲む部屋の大きさが含まれ、
前記部屋の大きさが小さくなると、前記拡張比cは大きくなる
ことを特徴とするゲーム装置。
【請求項5】
ゲーム装置にて実行されるゲーム処理方法であって、
前記ゲーム装置は、記憶部、受付部、拡張比計算部、中間計算部、左計算部、右計算部、出力計算部、音声出力部を有し、
記憶部が、仮想聴取点ならびに仮想発音体が配置される仮想空間の環境情報を記憶する記憶工程と、
受付部が、前記仮想発音体が発する仮想音声を所定の聴取条件で聴取したときに得られると想定される原音声の時刻tにおける左標本値L0(t)ならびに右標本値R0(t) (-M≦L0(t)≦M,-M≦R0(t)≦M)の入力を受け付ける受付工程と、
拡張比計算部が、前記記憶部に記憶される環境情報から、前記受け付けられた原音声の拡張比c (0≦c≦2)を計算する拡張比計算工程と、
中間計算部が、前記受け付けられた原音声の左標本値L0(t)ならびに右標本値R0(t)と、前記計算された拡張比cと、から、第1中間音声の左標本値L1(t)ならびに右標本値R1(t)を、
L1(t) =〔(1+c)×L0(t) + (1-c)×R0(t)〕/2;
R1(t) =〔(1-c)×L0(t) + (1+c)×R0(t)〕/2
により計算する中間計算工程と、
左計算部が、前記第1中間音声の左標本値L1(t)を前記上限値Mならびに前記下限値-Mと比較して、第2中間音声の左標本値L2(t)ならびに第3中間音声の左標本値L3(t)を、
L2(t) = L1(t), L3(t) = 0 (-M≦L1(t)≦M);
L2(t) = M, L3(t) = L1(t)-M (M<L1(t));
L2(t) = -M, L3(t) = L1(t)+M (L1(t)<-M)
により計算する左計算工程と、
右計算部が、前記第1中間音声の右標本値R1(t)を、前記上限値Mならびに前記下限値-Mと比較して、前記第2中間音声の右標本値R2(t)ならびに前記第3中間音声の右標本値R3(t)を、
R2(t) = R1(t), R3(t) = 0 (-M≦R1(t)≦M);
R2(t) = M, R3(t) = R1(t)-M (M<R1(t));
R2(t) = -M, R3(t) = R1(t)+M (R1(t)<-M)
により計算する右計算工程と、
出力計算部が、出力音声の左標本値L4(t)ならびに右標本値R4(t)を、
L4(t) = L2(t) - R3(t);
R4(t) = R2(t) - L3(t)
により計算する出力計算工程と、
音声出力部が、前記出力音声の左標本値L4(t)ならびに右標本値L4(t)を、ステレオ音声出力する音声出力工程と、
を備えることを特徴とするゲーム処理方法。
【請求項6】
コンピュータを、ゲーム装置として機能させるプログラムであって、前記プログラムは、前記コンピュータを
仮想聴取点ならびに仮想発音体が配置される仮想空間の環境情報が記憶される記憶部、
前記仮想発音体が発する仮想音声を所定の聴取条件で聴取したときに得られると想定される原音声の時刻tにおける左標本値L0(t)ならびに右標本値R0(t) (-M≦L0(t)≦M,-M≦R0(t)≦M)の入力を受け付ける受付部、
前記記憶部に記憶される環境情報から、前記受け付けられた原音声の拡張比c (0≦c≦2)を計算する拡張比計算部、
前記受け付けられた原音声の左標本値L0(t)ならびに右標本値R0(t)と、前記計算された拡張比cと、から、第1中間音声の左標本値L1(t)ならびに右標本値R1(t)を、
L1(t) =〔(1+c)×L0(t) + (1-c)×R0(t)〕/2;
R1(t) =〔(1-c)×L0(t) + (1+c)×R0(t)〕/2
により計算する中間計算部、
前記第1中間音声の左標本値L1(t)を前記上限値Mならびに前記下限値-Mと比較して、第2中間音声の左標本値L2(t)ならびに第3中間音声の左標本値L3(t)を、
L2(t) = L1(t), L3(t) = 0 (-M≦L1(t)≦M);
L2(t) = M, L3(t) = L1(t)-M (M<L1(t));
L2(t) = -M, L3(t) = L1(t)+M (L1(t)<-M)
により計算する左計算部、
前記第1中間音声の右標本値R1(t)を、前記上限値Mならびに前記下限値-Mと比較して、前記第2中間音声の右標本値R2(t)ならびに前記第3中間音声の右標本値R3(t)を、
R2(t) = R1(t), R3(t) = 0 (-M≦R1(t)≦M);
R2(t) = M, R3(t) = R1(t)-M (M<R1(t));
R2(t) = -M, R3(t) = R1(t)+M (R1(t)<-M)
により計算する右計算部、
出力音声の左標本値L4(t)ならびに右標本値R4(t)を、
L4(t) = L2(t) - R3(t);
R4(t) = R2(t) - L3(t)
により計算する出力計算部、
前記出力音声の左標本値L4(t)ならびに右標本値L4(t)を、ステレオ音声出力する音声出力部、
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−249031(P2012−249031A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118508(P2011−118508)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(506113602)株式会社コナミデジタルエンタテインメント (1,441)
【Fターム(参考)】