説明

ゲーム装置

【課題】載置領域に載置されたゲーム媒体の有無を精度良く検出することが可能なゲーム装置を提供する。
【解決手段】複数の載置領域が構成され、そのいずれかに所定の識別情報が付与された所望数のゲーム媒体12を載置可能なゲーム台10と、前記複数の載置領域のそれぞれに配設され、且つ当該載置領域に前記ゲーム媒体が載置されているか否かを検出するために用いられる複数の検出手段Atと、前記複数の検出手段を駆動制御し、当該検出手段から前記載置領域を通る方向に所定の電波を発信させることにより、前記載置領域に載置されている前記ゲーム媒体から前記識別情報を読み取って、前記ゲーム媒体の有無を判定する処理を実行する制御手段14とを備えており、前記制御手段は、隣り合って配設されている前記検出手段から発信させる電波の極性が互いに反転するように、前記複数の検出手段を同時に駆動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲーム台に構成された複数の載置領域(例えば、ベット領域など)のいずれかに、所定の識別情報が付与された所望数のゲーム媒体(例えば、遊技チップ、遊技カードなど)を載置してゲームを行うゲーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カジノなどの遊技場でゲームを行う際、遊技者は、まず所定の通貨を遊技チップや遊技カードなどのゲーム媒体と交換する。そして、交換した遊技チップ等を用いてルーレットやトランプなどのゲームを行い、当該ゲームによって得られた遊技チップ等を所定の通貨に換金する。
例えば、ルーレットなどでは、ベット時に各遊技者(プレイヤ)を識別するため、当該各プレイヤにはそれぞれ異なる色の遊技チップが付与されており、当該各遊技チップには、ディーラが容易に識別することが可能となるように、その価値(例えば、1,5,10,100セントなど)に応じた数字や異なるマークが付与(例えば、刻印など)されている。そして、ベットされた遊技チップの価値とその場の倍率などに応じ、1ゲーム終了ごとにプレイヤに対して所定の遊技チップの払出が行われ、さらにゲームが進行されていく。プレイヤは、かかるゲームによって払い出された遊技チップをいつでも通貨に換金することができる。
【0003】
近年、上述したゲームでは、遊技チップに独自の識別コードや遊技価値を示すコードが付与されたICタグを埋設した遊技チップ等が用いられ、かかる識別コード等を判別しながらゲームをスムーズに進行させるシステムなどが導入されている。
【0004】
ところで、ルーレットなどのテーブルゲームにおいては、ゲーム台に構成されたゲーム媒体を載置させる複数の載置領域(一例として、遊技チップをベットさせるベット領域)が隣接配置されているため、各載置領域(ベット領域)が非常に狭くなってしまう場合がある。この場合、多数のプレイヤが同時にゲームに参加すると、各プレイヤがベットした遊技チップは、隣接配置されたベット領域に接近して載置されることとなる。
このような場合であっても、ゲームの進行を妨げることなく、各プレイヤがベット領域にベットした遊技チップの載置状態を確実に検出するために、従来から遊技チップに埋設されたICタグを用いた各種の方策が講じられている。
【0005】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、遊技チップに埋設されたICタグの情報を読み取るために、ゲーム台のX方向(一例として、長尺方向)に対して電波を発信させるアンテナと、Y方向(一例として、短尺方向)に対して電波を発信させるアンテナとが設けられたテーブル状のゲーム装置の構成が開示されている。かかるゲーム装置では、アンテナからX方向及びY方向へ電波を発信させることで、これらの電波が交差するポイント(クロスポイント)において、ゲーム装置のゲーム台(テーブル面)に対して垂直方向の上向きへフラックス(flux)による電波(フラックス電波)を送出させている。これにより、クロスポイント上に載置された遊技チップに埋設されたICタグの情報を読み取り、当該遊技チップの載置状態の検出を行っている。なお、この場合、各クロスポイントは、プレイヤが遊技チップをベットするための各ベット領域と対応させて配置されている。
【特許文献1】特開2004−105321号公報
【特許文献2】特開2004−102953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1及び2に開示されたゲーム装置では、遊技チップの載置状態の検出を行う際、各クロスポイントにおいて同一方向(ゲーム台に対して垂直方向の上向き)へ電波(フラックス電波)を送出させながら、全てのクロスポイントを順にスキャンしていく構成となっている。その際、各クロスポイントにおいては、フラックス電波が同一方向(ゲーム台に対して垂直方向の上向き)へ送出されているため、かかる電波(具体的には、磁力線)は、アンペールの右ねじの法則によって同心円状に拡散されてしまう。このため、送出されるフラックス電波の出力レベル(大きさ)によっては、本来の検出対象のクロスポイント(すなわち、ベット領域)だけでなく、隣り合うクロスポイント(隣接ベット領域)に載置された遊技チップの状態も検出されてしまう虞がある。
【0007】
したがって、上述したような誤検出を防止するためには、フラックス電波の出力レベルを抑えることが必要となり、そのための出力制御を別途行わなければならない。また、その際、出力レベルを小さく設定し過ぎると、検出対象のクロスポイント(ベット領域)に遊技チップが多数積層して載置された場合に、検出されるべき遊技チップの状態が検出されなくなる(すなわち、これらの遊技チップに埋設されたICタグの情報を正確に読み取れなくなる)虞がある。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされており、その目的は、載置領域に載置されたゲーム媒体の有無を精度良く検出することが可能なゲーム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、第1の発明は、ゲーム台に構成された複数の載置領域(例えば、ベット領域など)のいずれかに、所定の識別情報が付与された所望数のゲーム媒体(例えば、遊技チップ、遊技カードなど)を載置してゲームを行うゲーム装置であって、前記複数の載置領域のそれぞれに配設され、且つ当該載置領域に前記ゲーム媒体が載置されているか否かを検出するために用いられる複数の検出手段(例えば、アンテナ)と、前記複数の検出手段を駆動制御し、当該検出手段から前記載置領域を通る方向に所定の電波を発信させることにより、前記載置領域に載置されている前記ゲーム媒体から前記識別情報を読み取って、前記ゲーム媒体の有無を判定する処理を実行する制御手段(例えば、RFIDリーダ機能を有するアンテナ制御装置)とを備えており、前記制御手段は、隣り合って配設されている前記検出手段から発信させる電波の極性が互いに反転するように、前記複数の検出手段を同時に駆動制御する。
【0010】
第1の発明によれば、隣り合う検出手段から極性を反転させた電波を発信させることにより、検出手段から放出される電波をそれらのアンテナに導き、狭い範囲に閉じ込めることができ、載置領域にゲーム媒体が載置されているか否かを精度良く検出することができる。また、隣り合う載置領域に隣接してゲーム媒体が載置されている場合でも、検出対象となる特定の載置領域に対するゲーム媒体の有無を正確に判定することができる。
【0011】
第2の発明において、前記制御手段は、隣り合って配設されている前記検出手段から発信させる磁界の方向が互いに反転するように、前記複数の検出手段を同時に駆動制御する。
【0012】
第2の発明によれば、隣り合う検出手段から発信させる磁界の方向を互いに反転させることにより、検出手段から放出される電波を不必要に拡散させることなく、したがって当該エリア外(載置領域外)に隣接して載置されたゲーム媒体を同時に検出すること無く、特定の載置領域に対するゲーム媒体の有無だけを確実に判定することができる。
【0013】
第3の発明において、前記制御手段は、隣り合って配設されている前記検出手段を前記複数の載置領域に沿って少なくとも2つ以上を同時に駆動制御する。
【0014】
第3の発明によれば、全載置領域内のゲーム媒体を迅速に検出可能となり、ゲームの進行効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、載置領域に載置されたゲーム媒体の有無を精度良く検出することが可能なゲーム装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態に係るゲーム装置について添付図面を参照して説明する。
本実施の形態に係るゲーム装置は、ゲーム台に構成された複数の載置領域のいずれかに、所定の識別情報が付与された所望数のゲーム媒体を載置してゲームが行われる装置であれば、その種類、大きさや形状などは特に限定されない。例えば、かかるゲーム装置は、遊技場(カジノやゲームセンタ等)などにおいて同時に複数の遊技者(プレイヤ)が参加し、各プレイヤが共用の載置領域(一例として、ベット領域)にゲーム媒体(一例として、遊技チップ)をベットしてゲームが行われるルーレットゲーム機や、各プレイヤが個別のベット領域に遊技チップをベットしてゲームが行われるポーカーやブラックジャック等のトランプゲーム機などのテーブルゲーム装置として適用することができる。
【0017】
この場合、ゲーム媒体である遊技チップに付与される所定の識別情報としては、例えば、遊技チップの遊技価値を示すコードや遊技場(カジノやゲームセンタ等)ごとに独自に割り振られた識別コード(遊技場コード)などが想定できる。かかる識別情報を遊技チップなどに付与し、当該識別コードの認識を行うことで、ゲームの進行をスムーズにすることができるとともに、プレイヤによって不正が行われること(例えば、交換レートや換金レートの設定が異なる別カジノの遊技チップが自カジノで使用されることなど)を有効に防止することができる。
【0018】
かかるゲーム装置には、複数の載置領域(例えば、ベット領域)のそれぞれに配設され、且つ当該載置領域にゲーム媒体(例えば、遊技チップ)が載置されているか否かを検出するために用いられる複数の検出手段と、前記複数の検出手段を駆動制御し、当該検出手段から前記載置領域を通る方向に所定の電波(電磁波)を発信させることにより、前記載置領域に載置されている前記ゲーム媒体から前記識別情報を読み取って、前記ゲーム媒体の有無を判定する処理を実行する制御手段とが備えられている。
【0019】
本実施形態においては、一例として、所定の識別情報(遊技価値及び遊技場コード)がRFID(Radio Frequency IDentification)として記録された無線ICチップ(ICタグ)が遊技チップに埋設されているとともに、RFユニットであるアンテナが検出手段として複数の載置領域(ベット領域)の下側(ゲーム台の背面側)にそれぞれ配設されている。また、制御手段としては、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信インターフェイス部(通信IF部)、及び記憶部(磁気ディスク装置)などから成る制御機構(一例として、RFIDリーダ機能を有するアンテナ制御装置)が備えられている。
【0020】
これにより、制御手段において、内部メモリであるROMに上述した各種処理(アンテナの駆動制御、及び遊技チップからの識別情報の読み取りなど)を実行させるためのプログラムを記憶し、これをRAMを作業領域としてCPUによって実行することで、所定の載置領域(ベット領域)における遊技チップの有無を判定することができる。この場合、プログラムは、必ずしもROMに記憶させる必要は無く、例えば外部サーバなどの装置から通信網を介して提供される構成であってもよい。
【0021】
なお、識別情報としてICタグに記録される情報は、ゲーム媒体に刻印等された数字や遊技価値、遊技場コードと同一である必要はなく、各々がユニークなID情報を持っており、所定の識別情報は、制御手段(アンテナ制御装置)の記憶部や外部サーバの記憶領域などに構築した一覧テーブルに前記IDと対応させて記録し、当該一覧テーブルを参照して取得するようにしてもよい。
【0022】
そして、各アンテナからゲーム台を介してその上方に位置するベット領域へ向けて電波を発信させた際、前記ICタグの識別情報が読取り可能か否かによって、かかるベット領域に遊技チップが載置されているか否かの判定が行われている。
【0023】
本実施形態に係るゲーム装置としてルーレットゲーム機を想定した場合、当該ルーレットゲーム機には、図4に示すようにそのゲーム台10に対し、ゲーム媒体である遊技チップが載置される各種のベット領域(例えば、0〜36までの数字記載エリア、偶数・奇数エリアや所定数字の連続エリアなど)が構成されており、一人あるいは複数のプレイヤがベット領域(載置領域)を共用し、当該共用ベット領域に所望数の遊技チップ(ゲーム媒体)を任意にベット(載置)することで各ゲームが行われる。
【0024】
この場合、ルーレットゲーム機には、ゲーム台10に構成されたベット領域に対応し、詳細な位置を計測するために必要なアンテナが配設されており、当該アンテナAtは、図1(a),(b)に示すように各ベット領域20の下側(ゲーム台10の背面側)に当該ベット領域20と計測位置に対向して配設されている。各アンテナAtは、図5〜7に示すように個別に切り換えられるように接続されるとともに、それぞれ制御手段14にアンテナ切換装置15を介して接続されており(図1(g),(h))、当該制御手段14によって駆動制御され、ベット領域20を通る方向に所定の出力レベルの電波を所定のタイミングで発信させている(同図)。なお、各アンテナAtから発信される電波の出力レベルは、ゲーム台10に積重ねて載置される遊技チップ12が全て読めるように調整されればよいため、ここでは特に限定しない。
【0025】
以下、制御手段14による各アンテナAtの駆動制御の具体的内容について、図1(a)〜(h)を参照しながら説明する。
図1(a)〜(h)には、本発明の一実施形態に係るルーレットゲーム機(ゲーム装置)の構成が示されており、この場合、アンテナAtは、同図(c)に示すように縦列(ラインA〜I…)、及び横列(ライン1〜5…)にそれぞれ沿って位置付けられたベット領域20(同図(a),(b))に対向してゲーム台10に配設され、制御手段14(同図(g),(h))によって駆動制御されている。この場合、制御手段14は、アンテナ切換装置15の動作を制御しており、当該アンテナ切換装置15は、制御手段14と各アンテナAtとを通信ケーブルなどを介して相互に接続させ、当該各アンテナAtへの駆動電流もしくは誘導電流の供給(ON)とその停止(OFF)との切り換えを行っている。
【0026】
その際、制御手段14は、遊技チップ12が載置されているか否かの判定対象となる所定のベット領域(以下、特定ベット領域という)に対向するアンテナAt(以下、特定アンテナという)を順次選択し、当該特定アンテナと隣り合うアンテナAt(以下、隣接アンテナという)とを一組として(以下、当該一組のアンテナAtをアンテナセットという)駆動制御を行う。すなわち、制御手段14は、ゲーム台10に配設されたアンテナAtの中からアンテナセットを設定(特定アンテナ及び隣接アンテナを選択)し、設定したアンテナセットをアンテナ切換装置15を動作制御することでONに切り換え、それ以外の残りのアンテナAtはOFF状態に維持する。
【0027】
なお、アンテナONの状態とは、駆動電流もしくは誘導電流の流れる状態を意味し、アンテナOFFの状態とは、制御手段14から切り離されて駆動電流もしくは誘導電流の供給が停止された状態(オープンの状態)を意味する。
【0028】
制御手段14(具体的には、アンテナ切換装置15)には、図5に示すようにX側スキャンドライバ30とY側スキャンドライバ40が備えられており、各アンテナAtは、これらのスキャンドライバ30,40によって個別に切換可能となるように接続されている。X側スキャンドライバ30からは互いに平行な複数本のX側送信ライン32が延びており、一方、Y側スキャンドライバ40からは互いに平行な複数本のY側送信ライン42が延びている。この複数本のX側送信ライン32と複数本のY側送信ライン42とは一方が縦方向、他方が横方向に延びて各所で交差している。そして、各クロスポイントにはリレー回路50が設けられている。
図6に示すように、各リレー回路50は、そのコイル50の一端側がX側送信ライン32、他端側がY側送信ライン42に接続され、当該コイル50のX側送信ライン32側には、当該X側送信ライン32側をカソード側、コイル側をアノード側としてダイオード54が介装されている。
【0029】
通常、各リレー回路50をOFFにしておく場合は、各X側送信ライン32をHレベルに維持しておき、各Y側送信ライン42をLレベルに維持しておく。そして、いずれかのリレー回路50のスイッチ56をONにしたいときは、所望のリレー回路50がそのクロスポイントにおいて接続されているX側送信ライン32をLレベルに切り換え、同様にそのクロスポイントにおいて接続されているY側送信ライン42をHレベルに切り換える。これによりコイル52に通電してスイッチ56が閉じる。
【0030】
このような各リレー回路50は、図7に示すように、各アンテナAtに1対1で対応して設けられている。すなわち、1つのアンテナAtは1つのリレー回路50と直列に接続されていて、あるリレー回路50がOFFであれば当該リレー回路50と直列接続されたアンテナAtは駆動せず、リレー回路50がONになれば当該リレー回路50と直列接続されたアンテナAtが駆動する。なお、図7に示す送受信部60は、アンテナAtを介してベット領域20に載置された遊技チップ12に埋設されたICタグ16と無線により交信し、当該ICタグ16に記録された遊技価値及び遊技場コードなどのID情報(識別情報)の読み取りを行う機能を有する。
【0031】
そして、隣り合うアンテナAtを組み合わせて構成されるアンテナセットは、予め互いに隣り合うアンテナAtのコイルの向きが反転するように接続されており、各アンテナAtを駆動した場合、隣同士のアンテナAtは互いに極性の反転した電波を送出するようになっている。したがって、コイルによって誘起される磁界の向きは、発振回路から同位相で駆動制御した場合、隣同士で互いに反転するので、これらを同時に駆動すると隣同士のアンテナAtで磁束のループを構成する。
【0032】
例えば、図1(c)に示す状態においては、縦列がラインBで横列がライン2の位置に配設されたアンテナAt(以下、アンテナB2という)を特定アンテナとし、当該アンテナB2に対してライン2に沿って隣り合う2つのアンテナAt(同、アンテナA2及びアンテナC2という)を隣接アンテナとしてアンテナセットが構成されている。この場合、制御手段14による駆動制御により、アンテナAtのうち、かかるアンテナセット(アンテナA2、アンテナB2、アンテナC2)のみがONとなっているのに対し、それ以外のアンテナAtは制御手段14から切り離されてOFF(オープンの状態)となっている。
さらに、互いに隣り合うアンテナAt同士は予めコイルの向きが反転するように接続されているので、制御手段14で駆動され送出される電波はその磁界の向きが互いに反転しており、同時に駆動した場合、磁束のループを構成する。
【0033】
この状態においては、電波はアンテナセット(アンテナA2、アンテナB2、アンテナC2)のみから発信されており、アンテナAtからの電波の発信位置をライン2に沿ったラインA〜Cまでの領域に限定し、磁束を狭い範囲に閉じ込めることができる。ここで、各アンテナAtから発信される電波(具体的には、電磁波によって生ずる磁力線(磁束))は、図1(g),(h)に示すようにアンテナAt(例えば、アンテナB2)を中心として放射され、隣接する極性の反転したアンテナA2,C2との間でループを作り、磁界を不必要に拡散させることはない。
【0034】
制御手段14(具体的には、アンテナ切換装置15)によりON状態となったアンテナセット(アンテナA2、アンテナB2、アンテナC2)からは、そのアンテナA2,B2,C2に対応した領域に載置された遊技チップ12のID情報(識別情報)を読み取ることができる。このデータをアンテナB2の横列のデータとするが、実際にはこのデータには、隣接するアンテナA2,C2で読み取られたデータも含まれている。
一方、図1(e)に示すように、アンテナB2を含み、縦列(ラインB)に沿って当該アンテナB2と隣り合うアンテナB1,B3の組(アンテナセット)をONにして読み取りを行うと、横列(ライン2)の場合と同様に、アンテナB1,B2,B3に対応した領域に載置された遊技チップ12のID情報(識別情報)を読み取ることになる。
【0035】
ここで、その読み取ったデータを横列の組(アンテナA2,B2,C2で構成されるアンテナセット)のデータと比較し、両方に含まれるデータの論理和を取ることで、縦列がラインBで横列がライン2に位置付けられるベット領域20(以下、ベット領域B2という(他のベット領域20についても同様に縦横ラインで特定する))に載置された遊技チップ12のID情報(識別情報)のみを得ることができる。例えば、図8に示すように、横列のアンテナセット(アンテナA2,B2,C2)をONにした際に読み取られた遊技チップ12の識別情報がア、イ、ウ、エ、オであり、縦列のアンテナセット(アンテナB1,B2,B3)をONにした際に読み取られた当該識別情報がキ、ウ、エ、オ、クであった場合、横列と縦列で共通する識別情報を選択する(論理和(AND処理)演算により抽出する)ことで、ベット領域B2に載置された遊技チップ12の識別情報がウ、エ、オとして特定できる(s801)。
【0036】
したがって、アンテナセット(アンテナA2,B2,C2、あるいはアンテナB1,B2,B3)から電波を発信し、特定アンテナ(アンテナB2)から発信された電波によって何らかの識別情報が読み取られた場合、制御手段14において、ベット領域(ベット領域A2,B2,C2、あるいはベット領域B1,B2,B3)に遊技チップ12が載置されているものと判定することができるとともに、特定ベット領域(ベット領域B2)に載置された遊技チップ12の識別情報を特定することができる。
一方、特定アンテナ(アンテナB2)から発信された電波によって何らの識別情報が読み取られなかった場合、制御手段14において、ベット領域(ベット領域A2,B2,C2、あるいはベット領域B1,B2,B3)には遊技チップ12が載置されていないものと判定することができる。
【0037】
なお、いずれの場合であっても、制御手段14は、ベット領域(ベット領域A2,B2,C2、及びベット領域B1,B2,B3)における遊技チップ12の載置有無の判定結果を記憶部に記憶する。
【0038】
そして、ライン1に沿ってラインA〜I…まで、特定アンテナをアンテナA1からアンテナI1…まで順に変更設定してアンテナセットを構成し、当該アンテナセットごとに電波を発信すべく駆動制御を行うことで、ベット領域A1からベット領域I1…における遊技チップ12の載置状態(載置の有無)を順次判定していく。次いで、ベット領域A1からベット領域I1…における遊技チップ12の載置状態(載置の有無)の判定が終了した場合、ライン2に沿ってラインA〜I…まで、特定アンテナをアンテナA2からアンテナI2…まで順に変更設定してアンテナセットを構成し、当該アンテナセットごとに駆動制御を行う。
さらに、ライン3からライン5…に沿っても同様のアンテナセットごとの駆動制御を繰り返すことで、全てのベット領域(ベット領域A1からベット領域I5…まで)における遊技チップ12の載置状態(載置の有無)の判定を行う。
【0039】
一例として、図1(d)には、同図(c)に示すアンテナセット(アンテナA2,B2,C2)をライン2に沿ってスライドさせ、特定アンテナをアンテナC2として選択し、当該アンテナC2と隣り合うアンテナB2,D2を隣接アンテナとして選択したアンテナセット(アンテナB2,C2,D2)の構成を示す。
なお、特定アンテナを縦列の端に位置するライン(例えば、ラインA)のアンテナAt(一例として、アンテナA1)に設定してアンテナセットが構成される場合、隣接アンテナは1つのみ(一例として、アンテナB1)となる。
【0040】
さらに、本実施の形態に係るルーレットゲーム機(ゲーム装置)においては、横列(ライン1〜5…)を基準として縦列(ラインA〜I…)方向へ特定アンテナを順次スライドさせてアンテナセットが構成され、各ベット領域(特定ベット領域)における遊技チップ12の載置状態(載置の有無)の判定が行われるとともに(図1(c),(d))、同図(e),(f)に示すように、縦列(ラインA〜I…)を基準として横列(ライン1〜5…)方向へ特定アンテナを順次スライドさせてアンテナセットを構成し、各ベット領域(特定ベット領域)における遊技チップ12の載置状態(載置の有無)の判定を行い、最終的に各ベット領域に載置された遊技チップ12のID情報(識別情報)の特定を行う。
【0041】
一例として、図1(e)には、縦列がラインBで横列がライン2の位置に配設されたアンテナB2を特定アンテナとし、当該アンテナB2に対してラインBに沿って隣り合うアンテナB1,B3を隣接アンテナとしてアンテナセットが構成された状態を示す。また、図1(f)には、かかるアンテナセット(アンテナB1,B2,B3)をラインBに沿ってスライドさせてアンテナセット(アンテナB2,B3,B4)が構成された状態を示す。
【0042】
なお、横列(ライン1〜5…)を基準とした遊技チップ12の載置状態(載置の有無)の判定結果と縦列(ラインA〜I…)を基準とした判定結果の照合、並びに識別情報の特定は、制御手段14の記憶部にそれぞれ記憶されたベット領域の横列基準の判定結果と縦列基準の判定結果を所定のタイミングでRAMに読み出し、当該RAMを作業領域として所定のプログラム(判定プログラム)をCPUによって実行させることで行えばよい。
【0043】
また、かかる判定結果の照合、並びに識別情報の特定のタイミングは任意に設定すればよく、例えば、特定ベット領域における横列(ライン1〜5…)を基準とした判定と縦列(ラインA〜I…)を基準とした判定が行われた際、各特定ベット領域ごと個別に照合と特定を行ってもよいし、全ての特定ベット領域における横列基準の判定及び縦列基準の判定を行った後、各々の特定ベット領域に対する照合と特定をまとめて行ってもよい。
【0044】
ここで、上述した本実施の形態においては、アンテナセットを特定アンテナ、及び当該特定アンテナと隣り合う2つの隣接アンテナを一組とした3つのアンテナ構成としているが、図2(a),(b)に示すように、特定アンテナ、及び当該特定アンテナと隣り合ういずれか1つのアンテナAtを一組とした2つのアンテナAtでアンテナセットを構成してもよい。
【0045】
一例として、図2(a)には、横列がライン1で縦列がラインBの位置に配設されたアンテナB1が特定アンテナとして選択され、当該アンテナB1に対してライン1に沿って隣り合うアンテナA1が隣接アンテナとして選択されたアンテナセットの構成を示す。この場合、制御手段14による駆動制御により、かかるアンテナセット(アンテナA1,B1)はONとなっているのに対し、それ以外のアンテナAtはOFFとなっている。
同様に、図2(b)には、アンテナB1が特定アンテナとして選択され、当該アンテナB1に対してラインBに沿って隣り合うアンテナB2が隣接アンテナとして選択されたアンテナセットの構成を示す。この場合、制御手段14による駆動制御により、かかるアンテナセット(アンテナB1,B2)はONとなっているのに対し、それ以外のアンテナAtはOFFとなっている。
なお、この場合、アンテナセットをONにするということは、駆動電流もしくは誘導電流を流すことを意味する。
また、図3は、全てのアンテナAtを同時に駆動した場合のアンテナコイルの向きによる磁界の方向を模式的に示したものである。
【0046】
ここで、上述した本実施の形態のゲーム装置では、個々のゲーム台10において、複数の検出手段(例えば、アンテナAt)を駆動制御する制御手段14(例えば、アンテナ制御装置)に、各載置領域(例えば、ベット領域20)におけるゲーム媒体(例えば、遊技チップ12)の載置状態(載置の有無)をゲーム台10の横列方向、及び縦列方向を基準としてそれぞれ判定するとともに、その判定結果を記憶する判定記憶手段としての機能と、当該横列及び縦列の判定結果を載置領域ごとに照合することで、当該載置領域に載置されたゲーム媒体のID情報(識別情報)を特定する照合特定手段としての機能とを併用させた場合を想定したが、例えば、判定記憶手段及び照合特定手段としての機能を管理サーバ(図示しない)に別途持たせる構成としてもよい。
【0047】
この場合、管理サーバを所定のインタフェース(図示しない)を介してゲーム装置(例えば、アンテナ制御装置)に接続させることにより、ゲーム媒体の載置状態(載置の有無)の判定、並びに当該ゲーム媒体の識別情報を特定するための各種処理(判定記憶手段による判定処理及び記憶処理、照合特定手段による照合処理及び特定処理など)を制御手段14(アンテナ制御装置)及び管理サーバの一方又は双方で実行することができる。これによれば、比較的大きな容量を必要とする判定記憶処理・照合特定処理などにかかる負荷を分散させることができるため、より短時間に且つ正確に各載置領域におけるゲーム媒体の載置状態(載置の有無)の判定、並びに識別情報の特定を行うことが可能となり、その結果、よりスムーズにゲームを進行させることができる。
【0048】
さらに、上述した管理サーバを複数種類のゲーム装置が設置された遊技場に構築し、それぞれのゲーム装置で行われる各種ゲームの進行処理(例えば、ゲーム媒体の載置状態(載置の有無)の判定処理と識別情報の特定処理、ゲームの履歴処理、配当金の算出処理など)を集中管理するようにしても良い。この場合、管理サーバの負荷を分散させるために、各種ゲームの進行処理ごとに専用サーバ(図示しない)を構築することが好ましい。例えば、ゲーム媒体の載置状態(載置の有無)の判定記憶処理、並びにゲーム媒体の識別情報の照合特定処理を実行するベット処理サーバ、ゲームの履歴処理を実行するPTS(プレーヤートラッキングシステム)サーバ、及び配当金の算出を実行する配当金算出サーバなどをそれぞれ構築する。
【0049】
ここで、これら各専用サーバを用いたゲームシステムの動作について、ルーレットゲーム(図4参照)を例にとって簡単に説明する。
まず、ディーラーがルーレット盤(図示しない)を廻してルーレット球(図示しない)を投入する。この間、遊技参加者は、手持ちの遊技チップ12をゲーム台10のベット領域20にベットする(図1(g),(h))。このとき、制御手段14(アンテナ制御装置)は、各検出手段(アンテナAt)を介して各ベット領域20に対し、遊技チップ12の無線ICチップ(ICタグ)16から識別信号の受信、すなわち当該遊技チップ12に付与された識別情報の読み取りを試みる。
【0050】
ベット処理サーバは、制御手段14による識別情報の読取可否によって、ベット領域20ごとに遊技チップ12の載置状態(載置の有無)の判定を横列方向、及び縦列方向に対してそれぞれ行うとともに、その判定結果を記憶する(判定記憶処理)。次いで、記憶された判定結果(具体的には、載置有りの判定結果)をベット領域20ごとに照合し、当該ベット領域20へ載置された遊技チップ12に付与された識別情報を特定する(照合特定処理)。そして、特定した遊技チップ12の識別情報は、そのベット領域20の位置情報とともにベット処理サーバから例えばPTSサーバへベットデータとして送信される。
【0051】
PTSサーバでは、ベット処理サーバから送信されたベットデータに基づいて、遊技チップ12のベット位置、枚数、種類すなわち価値(1ドル、5ドル、10ドルなどの掛け金)が算出され、その算出結果に基づいて所定の履歴処理が実行される。これにより、ルーレットゲームの履歴が一括管理される。そして、算出したベット位置や掛け金に関するデータは、当該PTSサーバから例えば配当金算出サーバに送信される。
【0052】
この場合、ルーレット盤には、当該ルーレット盤上におけるルーレット球の出目位置や出目種類を検出する出目検出装置が設けられており、当該出目検出装置の検出結果に関するデータは、リアルタイムで配当金算出サーバに送信されている。このとき、配当金算出サーバでは、ルーレット盤上におけるルーレット球の位置(出目)と、PTSサーバから送信された遊技チップ12のベット位置及び価値(掛け金)とに基づいて、当該ルーレットゲームの配当金が算出される。更には、ルーレット球に無線ICチップ(ICタグ)を設け、出目検出装置で当該ルーレット球のICタグを読み取らせることで検出結果に関するデータを取得させるようにしてもよい。
【0053】
以上、専用サーバを用いたゲームシステムによれば、より短時間に且つ正確に遊技チップ12のベット位置、枚数、種類を特定するとともに、ルーレットゲームの履歴を一括管理しながら同時に、配当金の算出を行うことが可能となり、その結果、ルーレットゲームをスムーズに且つ公正に進行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態に係るゲーム装置の構成を示す図であって、(a)は、ベット領域を示す平面図、(b)は、アンテナの配設状態を示す平面図、(c)は、アンテナB2を特定アンテナとする横列方向へのアンテナセット構成、並びにその磁界方向を示す模式図、(d)は、同図(c)のアンテナセットを横列方向へスライドさせたアンテナセットの構成、並びにその磁界方向を示す模式図、(e)は、アンテナB2を特定アンテナとする縦列方向へのアンテナセット構成、並びにその磁界方向を示す模式図、(f)は、同図(e)のアンテナセットを縦列方向へスライドさせたアンテナセットの構成、並びにその磁界方向を示す模式図、(g)は、アンテナから発信された電波がベット領域に載置された遊技チップ(ICタグ)を通過する状態を示す断面図、(h)は、磁界がループ状を成した状態を示す断面図。
【図2】2つのアンテナで成るアンテナセットの構成例を示す図であって、(a)は、アンテナB1を特定アンテナとする横列方向へのアンテナセット構成、並びにその磁界発信方向を示す模式図、(b)は、アンテナB1を特定アンテナとする縦列方向へのアンテナセット構成、並びにその磁界方向を示す模式図。
【図3】全てのアンテナを同時に駆動した場合の磁界方向を模式的に示す図。
【図4】ルーレットゲーム機のゲーム台に構成されたベット領域を示す平面図。
【図5】制御手段の構成を説明するための回路図。
【図6】制御手段の構成を説明するための回路図。
【図7】制御手段の構成を説明するための回路図。
【図8】特定ベット領域に載置された遊技チップのID情報(識別情報)の特定方法(横列及び縦列のアンテナセットから読み取ったデータの論理和処理)を説明するための図。
【符号の説明】
【0055】
10 ゲーム台
12 遊技チップ(ゲーム媒体)
14 制御手段
At アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の載置領域が構成され、且つ当該複数の載置領域のいずれかに、所定の識別情報が付与された所望数のゲーム媒体を載置可能なゲーム台と、
前記複数の載置領域のそれぞれに配設され、且つ当該載置領域に前記ゲーム媒体が載置されているか否かを検出するために用いられる複数の検出手段と、
前記複数の検出手段を駆動制御し、当該検出手段から前記載置領域を通る方向に所定の電波を発信させることにより、前記載置領域に載置されている前記ゲーム媒体から前記識別情報を読み取って、前記ゲーム媒体の有無を判定する処理を実行する制御手段とを備えており、
前記制御手段は、隣り合って配設されている前記検出手段から発信させる電波の極性が互いに反転するように、前記複数の検出手段を同時に駆動制御することを特徴とするゲーム装置。
【請求項2】
前記制御手段は、隣り合って配設されている前記検出手段から発信させる磁界の方向が互いに反転するように、前記複数の検出手段を同時に駆動制御することを特徴とする請求項1に記載のゲーム装置。
【請求項3】
前記制御手段は、隣り合って配設されている前記検出手段を前記複数の載置領域に沿って少なくとも2つ以上を同時に駆動制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のゲーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−112490(P2009−112490A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288192(P2007−288192)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(598098526)アルゼ株式会社 (7,628)