説明

コア−シェル耐衝撃性改良剤と、加水分解性に優れた耐衝撃性に優れた熱可塑性組成物の製造方法

【課題】耐衝撃改良剤と、耐衝撃性が改良された熱可塑性成形組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】耐衝撃性が改良されたポリカーボネートまたはポリカーボネート/ポリエステルブレンドである。回収段階の前に必要に応じてpH値を制御および調整することを含む多段操作によって製造されるコア-シェル構造を有するポリマーの耐衝撃改良剤の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐衝撃性改良剤(インパクト・モディファイア)と、耐衝撃性熱可塑性組成物、特に、耐衝撃性が改良されたポリカーボネートおよびポリカーボネート/ポリエステルブレンドの製造方法とに関するものである。
本発明は特に、回収段階の前に必要に応じてpH値を制御および調整することを含む多段操作で作られるコア-シェル構造を有するポリマーの耐衝撃改良剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
耐衝撃性改良剤は、室温または零度以下の温度で起こる熱可塑性プラスチックおよび熱硬化性樹脂に固有な脆さ、脆化、ノッチ感度およびクラック伝搬を補償して、衝撃強度を改良するために広く使われている。耐衝撃性を改良したポリマーは、ゴム状材料のミクロドメインを添加することで耐衝撃性および強靱性を増加させたポリマー物質である。これは一般に衝撃エネルギーを吸収または放散できる高分子マトリックス中にサブミクロンのゴム粒子を導入して行われる。その一つの方法はコア−シェル粒子の形をしたゴム粒子を導入することである。一般に、このコアシェル粒子は有効な強靭性を与えるのに適した粒径を有するゴムのコアに熱可塑性マトリックスに対する接着性と相容性を与えるシェルがグラフトされたゴムのコアとポリマーのシェルとを有している。
【0003】
衝撃改造性能は粒子サイズ、特にゴムの粒子の寸法と量の関数である。所与量の耐衝撃性改良剤粒子に対して最も高い衝撃強度を与える最適な平均粒径がある。
【0004】
この耐衝撃性改良剤の一次粒子は一般に粉末粒子の形で熱可塑性原料中に加えられる。この粉末粒子は凝集した耐衝撃性改良剤の一次粒子から成る。熱可塑性原料中に粉末粒子をブレンディングする間に、耐衝撃性改良剤の一次粒子が回復され、熱可塑性原料中にある程度均一に分散される。
【0005】
耐衝撃性改良剤粒子の粒径はnm範囲であるため、凝集粉粒子の範囲はマイクロメータの範囲にある。
【0006】
回収時の凝集物(アグロメレーション)はいくつかの方法、例えば噴霧乾燥、凝集、凍結乾燥または噴霧乾燥と凝集法とを組み合わせて得ることができる。
【0007】
熱可塑性ポリマーにネガティブな影響を与えない耐衝撃性改良剤粉末であることが重要である。ネガティブな影響の例は、時間または温度またはこれら両方を関数とする色の安定性、熱的安定性、耐衝撃性改良剤を含む熱可塑性ポリマーの加水解離安定性である。
【0008】
これらの全ての影響はコア−シェルの構造、特に耐衝撃性改良剤粉末合成時の不純物と処理に使用した化合物に起因する。一般に、耐衝撃性改良剤に特殊な浄化段階はなく、液体と固体の分離だけである。従って、耐衝撃性改良剤中にはいずれにせよ多くの化合物(不純物、副産物)が含まれている。これらの化合物は熱可塑性原料に大きな影響を与えてはならず、例えば光学特性および/または機械特性および/または流動特性が時間および/または温度および/または湿度の関数で劣化してはならない。
【0009】
さらに重要なことは、反応媒体か耐衝撃性改良剤を最も簡単な方法で且つできるだけ少ない資源を使用して分離できることである。この資源には使用する機器、エネルギおよび化合物が含まれる。
【0010】
コア−シェル耐衝撃性改良剤の合成方法およびラテックスの凝集方法は周知で
特許文献1(米国特許第US 5,514,772号明細書)には粉末状および顆粒状ポリマーの製造方法が記載されている。この方法は2つの凝集段階を含む。最初の凝集段階で硫酸エステルおよび/またはスルホン酸のアニオン界面活性剤を含むポリマーのラテックスをポリマーの量の40〜80重量%の酸で固まらせ、第2の凝集段階で酸または塩で完全に凝集させる。得られる粉末は鋭い粒径分布を有している。この特許に記載のプロセスは4つのタンクを含み、pHは常に3以下である。
【0011】
特許文献2(米国特許第US 4,897,462号明細書)には凝集時にpH2〜6の低pH範囲で低速凝集し、その後にpH<2で高速凝集して微粉末を含まない球形粉末を得る方法が記載されている。低速凝集は希釈した塩の添加すなわち多量の水を添加して行う。
【0012】
特許文献3(国際特許第WO2006/057777号公報)には、エマルショングラフト重合によってコア-シェルMBS粒子を合成する方法が記載されている。ポリマー粒子を硫酸で固まらせ、さらに85℃まで加熱する。
【0013】
特許文献4(国際特許第WO 2009/126637号公報)には、多段乳化重合で合成した官能性MBS耐衝撃性改良剤が記載されてきる。最後に得られた反応物を凝固してポリマーを分離する。この凝固処理は反応物を食塩溶液(塩化カルシウムまたは塩化アルミニウム、CaCl2またはAlCl3)または濃硫酸の酸化溶液と接触させて行う。その後、濾過で凝集した固形生成物を分離し、固形の生成物を洗浄、乾燥してグラフト共ポリマーの粉末を得る。
【0014】
特許文献5(欧州特許第EP 0900 827号公報)には熱可塑性ポリマー(この場合にはポリカーボネート)のグレードを下げる成分を含まない、エマルショングラフトされたポリマー、特にMBSコアシェル・ポリマーが記載されている。従って、これら成分は合成中に除かれる。一般に、衝撃変成されたポリカーボネートの熱的安定度を増加させるためには耐衝撃性改良剤の合成中に全ての塩基性化合物を避ける必要がある。乳化重合中に特定クラスの界面活性剤、特にサルフェート-およびスルホネート-を含む界面活性剤を使用することを主張している。
【0015】
上記の全ての従来技術には、耐衝撃性改良剤に傾斜ポリマーを使用することは記載がなく、凝集された耐衝撃性改良剤粒子の粒径分布、特に細粒子の含有量に関する記載はなく、合成後の粉末の回収または単離方法、そのpH、電解液の選択方法、熱可塑性組成物中での耐衝撃性改良剤の性能は記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第US 5,514,772号明細書
【特許文献2】米国特許第US 4,897,462号明細書
【特許文献3】際特許第WO2006/057777号公報
【特許文献4】国際特許第WO 2009/126637号公報
【特許文献5】欧州特許第EP 0900 827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
驚くことに、本発明者は、沈殿凝集段階でのpH値が熱可塑性樹脂中の生成物の凝集および性能に重要であるということを発見した。これは最終生産物が所定pHを有するだけでは十分でなく、回収段階でもし予定のpHにしなければならないことを意味する。さらに、pHを制御するのに用いる化学種の種類(酸性か塩基性か)も熱可塑性樹脂中での生成物の性能にとって重要である。
【0018】
さらに、合成中および凝集中の条件をバランスさせて選択することで衝撃変性した熱可塑性樹脂の性能が良くなり、特に衝撃強度、黄変性、加水分解性および溶融安定性を良くバランスさせることができる。
【0019】
さらに驚くことに、コア-シェル・耐衝撃改良剤の構造、特に勾配ポリマーを含む中間シェルを有することが重要であるということを発明者は発見した。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の観点から、本発明は下記工程から成る耐衝撃性改良剤の製造方法に関するものである:
(a) 乳化重合でコアシェルコポリマーを合成し、
(b) 合成段階後にコア−シェル・ポリマー粒子のpH値を制御、調整し、
(c) 水溶性電解質溶液を添加してコアシェル・ポリマーをpH4〜8で凝集させる。
【0021】
本発明の第2の観点から、本発明は下記(A)と(B)から成る熱可塑性ポリマー組成物に関するものである:
(A) 熱可塑性ポリマー
(B) 上記方法で得られるコアコア-シェル衝撃緩衝剤。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】コア−シェルから成るコア−シェル粒子の図。
【図2a】一つのコアと3つのシェルから成るコア−シェル粒子。傾斜シェルはシェル1またはシェル2にすることができる。
【図2b】一つのコアと、3層コア2と、シェル1と、シェル2とから成るコアシェル粒子。傾斜シェルはコア1とシェル2である。
【図3】一つのコアと、2つのシェルから成るコア−シェル粒子。傾斜シェルはシェル1である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
「ゴム」という用語はガラス転移点以上でのポリマーの熱力学状態を示す。
「アルキル(メタ)アクリレート」という用語はアクリル酸アルキルおよびアルキルメタクリレートを表す。
「コポリマー」という用語は少なくとも2つの異なるモノマーから成るポリマーを表す。
「傾斜(gradient)ポリマー」という用語はコポリマー鎖の一部または全体に沿って大部分がモノマーAであるものから大部分がモノマーBになる繰返し単位が傾斜したコポリマーを表すのに使用する。
【0024】
「多段ポリマー」とは組成が異なる少なくとも2つの段階をシーケンシャルに有する多段エマルション重合プロセスであられるポリマーを表す。この多段エマルション重合プロセスでは最初の重合段階で最初のポリマーを重合し、第2の重合段階で第2のポリマーを重合する、すなわち、第1の乳化ポリマーの存在下で第2ポリマーを重合するのが好ましい。
「コア−シェル・ポリマー」という用語は[図1]〜[図3]に示すような構造を有するポリマーを示すのに使用する。しかし、これらの例に限定されるものではない。
【0025】
「粒径」という用語は粒子を球面とみなしたときの容積平均直径を意味し、レーザー・スペクトロメトリを使用した光拡散によって測定する。
「部」という用語はここでは重量部を意味する。特に断らない限り「全重量部」は必ずしも100に足す必要はない。
「中性pH」という用語は、ここではpH 6.0〜7.5を表すのち使用する。
【0026】
コア−シェルコポリマーはゴムのコアと、少なくとも一つの熱可塑性のシェルとを有する微粉末の形をしており、一般に1μm以下の粒径、好ましくは50nm〜500nm、より好ましくは100nm〜400nm、さらに好ましくは150nm〜350nm、有利には170nm〜350nmの粒径を有する。
【0027】
コア−シェル粒子は複数のシェルを有するのが好ましい。熱可塑性のマトリックスと接触する少なくとも外側のシェルのガラス遷移温度(Tg)は25℃以上、好ましくは50℃以上である。
【0028】
コア-シェルの耐衝撃性改良剤は乳化重合で製造される。それに適した方法は例えばコアとシェルを2つのシーケンシャルな乳化重合段階で製造される二段重合法である。より多くのシェルがある場合にはさらに他の乳化重合段階を続ける。
【0029】
コア−シェルの重量比は特に制限されないが、10/90〜90/10の間が好ましく、好ましくは40/60〜90/10、さらに好ましくは60/40〜90/10、最も有利には70/30〜85/15の間である。
【0030】
本発明のコアはゴムのポリマーである。このゴムのコアのガラス遷移温度(Tg)は0℃以下、好ましくは−10℃以下、有利には−20℃以下、さらに有利には−25℃以下である。
【0031】
ゴムのコアのガラス遷移温度は−120℃〜−10℃の間が好ましく、特に−90℃〜−40℃の間、より好ましくは−80℃〜−50℃の間であるのが好ましい。
ゴムのコアのポリマーの例としてはイソプレンのホモポリマーまたはブタジエンのホモポリマー、イソプレン−ブタジエンコポリマー、イソプレンと98重量%以下のビニルモノマーとのコポリマー、ブタジエンと98重量%以下のビニルモノマーとのコポリマーが挙げられる。ビニルモノマーはスチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、アルキル(メタ)アクリレートまたはブタジエンまたはイソプレンにすることができる。好ましい実施例のコアはブタジエンのホモポリマーである。
【0032】
コア−シェル・コポリマーのコアは完全または部分的に架橋できる。必要なことはコアの製造時に少なくとも二官能性モノマーを加えることだけであり、そのモノマーはポリオールのポリ(メタ)アクリ酸エステル、例えばブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレートの中から選択できる。他の多官能性モノマーの例はジビニールベンゼン、トリビニルベンゼン、トリアリルシアヌレーである。重合中にコモノマーとして不飽和カルボン酸、無水不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドのような官能性不飽和モノマーを導入するか、グラフトによってコアを架橋することができる。例としては無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸およびメタクリル酸グリシジルを挙げることができる。また、モノマー、例えばジエンモノマーの固有の反応性を用いて架橋することもできる。
【0033】
また、コアをコア層で被覆することもできる。これはコアが0℃以下、好ましくは−10℃以下、有利には−20℃ 以下、より有利には−25℃以下のガラス遷移温度(Tg)を有するポリマー組成物のコア層を有することを意味する。
【0034】
このコア層は傾斜ポリマーであるのが好ましい。
【0035】
直径が50〜250nmであるコア−シェル粒子のゴムのコアは種々の方法:グローアウト(grow-out)法、シードグローアウト(seed grow-out)法および凝集(agglomation)法で製造できる。微粉末を避け、粒径分布の狭い均一粒子を製造するにはグローアウト(grow-out)法が好ましい。コアポリマーの形成には連鎖移動剤も有効である。有用な連鎖移動剤はter-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタンおよび連鎖移動剤の混合物であるが、これらに限定されるものではない。連鎖移動剤はコア・モノマーの全含有量に対して0〜2重量%のレベルで使用される。好ましい実施例ではコアポリマーを形成する際に0.1〜1%の連鎖移動剤を使用する。
【0036】
本発明のシェルはスチレンのホモポリマー、アルキルスチレンのホモポリマーまたはメチルメタクリレートのホモポリマーか、これらのモノマーの少なくともの一つを70重量%以上含む少なくとも一つコモノマーとのコポリマーである。コモノマーは他のアルキル(メタ)アクリレート、酢酸ビニールおよびアクリロニトリルから選択される。重合中にコモノマーとして不飽和カルボン酸、無水不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドのような官能性不飽和モノマーを導入するか、グラフトしてシェルを官能化することもできる。例としては無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、メタクリル酸グリシジル、ヒドロキシエチルメタクリラートおよびアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。例としてポリスチレンのシェルを有するコアシェル・コポリマー、PMMAのシェルを有するコア-シェルコポリマーが挙げられる。マレイミドを共重合するか、第一アミンでPMMAを化学的に修飾してイミド官能基を含むシェルにすることもできる。イミド官能基のモル濃度はシェル全体に対して30〜60%にするのが有利である。
【0037】
また、2つのシェルを有するコア−シェルコポリマー、例えば一方をポリスチレンにし、他方(外側)をPMMAにすることもできる。コポリマーとその製造方法の例は下記特許文献に記載されている:
【特許文献6】米国特許第US 4 180 494号明細書
【特許文献7】米国特許第US 3 808 180号明細書
【特許文献8】米国特許第US 4 096 202号明細書
【特許文献9】米国特許第US 4 260 693号明細書
【特許文献10】米国特許第US 3 287 443号明細書
【特許文献11】米国特許第US 3 657 391号明細書
【特許文献12】米国特許第US 4 299 928号明細書
【特許文献13】米国特許第US 3 985 704号明細書
【特許文献14】米国特許第US 5 773 320号明細書
【0038】
シェルはシェルの製造中に少なくとも一つの多官能性モノマーを加えることによって架橋できる。
【0039】
本発明の傾斜コポリマーについて述べると、コア−シェル粒子の少なくとも一つの層が2つの層の間の組成が変化するコポリマーであり、すなわち傾斜を有する。傾斜帯域の最初のポリマー組成は近隣する層よりモノマー/ポリマーがリッチで、傾斜帯域の終わりではコポリマーは次の層を形成する第2のモノマー/ポリマーがよりリッチである。コアとシェルとの間または2つのポリマーシェルの間の傾斜帯域は異なる共重合パラメータを有するモノマーを用いるか、反応速度よりモノマーの添加速度を低速にした不足供給条件下で半連続的に反応を実行して製造できる。後者のモードは各瞬間のコポリマーの組成はモノマーの供給組成で決まる。
【0040】
コア-シェル粒子の最外側層は傾斜ポリマーではない。傾斜ポリマーのモノマーは上記コアおよび各シェルについて述べたモノマーの中から隣接する層の関数で選択される。本発明の好ましい実施例では、傾斜ポリマーはモノマーとしてブタジエンとスチレンから成るか、メチルメタクリレートとスチレンから成る。
【0041】
製造方法について述べると、本発明のコア-シェル耐衝撃性改良剤はブタジエンベースのコア・ポリマーと、一種以上のシェル・ポリマーとを有するエマルション・グラフト共ポリマーである。このグラフト共ポリマーはブタジエン-ベースのゴム・ポリマーを含むラテックス粒子の存在下で、少なくとも芳香族ビニル、アルキルメタクリレートまたはアクリル酸アルキルを含むモノマーまたはモノマー混合物をグラフト重合することで得られる。
【0042】
グラフト共ポリマーを製造するのに有用な重合開始剤にはペルオキソ硫酸塩、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムおよび過硫酸ナトリウム、有機過酸化物、例えばtert-ブチル・ヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、ラウロイル・パーオキサイド、p-メンタン・ヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼン・ヒドロペルオキシド、アゾ化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスイソバレロニトリル、またはレドックス開始剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。しかし、パーオキサイド化合物、例えば上記のものと、還元剤、特にアルカリ金属サルファイト、アルカリ金属ビサルファイト、ナトリウムホルムアルデヒド・スルホキシレート(NaHSO2HCHO)、アスコルビン酸、グルコースとを組み合わせたレドックス型の触媒系、特に、水溶性の過硫酸カリウム/メタ亜硫酸ナトリウムまたはジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド/ナトリウム・ホルムアルデヒド・スルホキシレートまたは硫酸第一鉄/デキストロース/ピロリン酸ナトリウムのような触媒系を使用するのが好ましい。
【0043】
乳化剤としてはアニオン、ノニオンまたはカチオンの公知の任意の面活性を使用することができる。特に、乳化剤はアニオン乳化剤、例えば脂肪酸ナトリウムまたはカリウム塩、特にラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、パルミン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、脂肪アルコールの硫酸エステルのナトリウムまたはカリウム混合物、特にドデシル硫酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムまたはカリウム、アルキルアリールスルホン酸ナトリウムまたはカリウム、特に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、脂肪酸モノグリセリドモノスルホネートのナトリウムまたはカリウム塩、さらには、非イオン性界面活性剤、例えば、エチレンオキシド、アルキルフェノールまたは脂肪族アルコール、アルキルフェノールの反応生成物から選択できる。必要に応じて、これら界面活性剤の混合物を使用することもできる。
【0044】
一般に、ワーキングアップ(working up)または回収(エマルションからコア-シェル・ポリマーを単離することを意味する)は噴霧乾燥、沈殿、凝集また分散水の分離で実施される。
【0045】
本発明では、ワーキングアップは凝集と分散水の分離とによって実施される。凝集沈殿は電解液の添加で行われる。本発明では、腐食の問題のある塩素アニオンを含む塩基電解液の使用は避けるのが好ましい。
【0046】
無機凝集塩のカチオンは元素周期律表の第Ia、IIaおよびIIIa族の中から選択するのが好ましい。特にナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムが好ましい。
【0047】
本発明で凝集薬剤として使われる電解液は、無機塩、例えば硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、二水素燐酸ナトリウム、燐酸水素ジナトリウム、二水素燐酸カリウム、燐酸水素ジカリウム、次亜リン酸カルシウムおよび有機酸塩、例えば酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、ぎ酸カリウム、カルシウムアセチルアセトネートである。無機塩は無水または水和物の形で使用でき(それが存在する場合)、例えば、無水硫酸マグネシウムまたはマグネシウム七水和物にすることができる。電解液は無機塩、好ましくはホスファートおよびサルフェートアニオン、特にナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムカチオン、例えば硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸水素ジナトリウム、二水素燐酸カリウムから選択するのが有利である。電解液はこれらの一種以上の水溶液の形で使用する。
【0048】
凝集段階でのpH値は重要である。多くの場合、粉末のpHは例えば凝集によって回収した後の最終生産物に適用されるが、本発明の場合にはpHの制御は凝集段階の前および凝集段階中に実施される。
【0049】
凝集段階の前および凝集段階中のpH値は4〜8の間になければならない。凝集前のpHは5〜7.5、好ましくは6〜7の間、より好ましくは6.7〜7の間にする。凝集はpHが4〜8、好ましくは5〜7.5、より好ましくは6〜7.2、有利には6〜7で行う。
【0050】
グラフトされたコア-シェル・ポリマー分散物を凝集によって回収する前のpH値は当業者に公知の方法、例えばpH値が高い場合には有機酸または無機酸の溶液の添加によって調整でき、また、pHが低い場合には、有機または無機のアルカリ溶液の添加によって調節でき、また、多量の酸性またはアルカリ性化合物を溶液に加えた時に、所定変動内に納まるように、緩衝液の添加によってほぼ一定のpH値に保つことができる。
【0051】
上記アルカリ性溶液からNaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)2のような強い無機塩基は除かれ、より一般的にはアムモニアおよび解離ではない加水分解でOH-イオンを放出する大部分の有機塩基は除かれるのが好ましい。
【0052】
緩衝液は弱酸とその共役塩基または弱塩基とその共役酸との混合物から成る水溶液である。緩衝液の例としては血漿中に存在するpHを7.35〜7.45の間に維持する炭酸(H2CO3)と重炭酸塩(HCO3-)の緩衝液、クエン酸とクエン酸ナトリウム、ジナトリウムとリン酸ナトリウム、ジカリウムとリン酸カリウム、クエン酸とリン酸二ナトリウムとをベースにした緩衝液がある。
【0053】
本発明ではリン酸緩衝液を用いるのが好ましく、特にpH値を6〜7の間に保つことができるリン酸緩衝液を用いるのが好ましい。
【0054】
凝集は5℃〜100℃の温度、好ましくは10℃〜100℃、特に15℃〜100℃、有利には20℃〜90℃の温度で実行する。凝集に使う合成から来るラテックス粒子の固形分は15〜60重量%、好ましくは25〜50重量%の間である。
【0055】
電解液の水溶液は25℃での水に対する溶解度定数を考慮して、化学種の溶解性を保証するのに十分な少量の塩濃度を含む。
【0056】
凝固および沈澱したポリマーと水との分離は従来法、例えば篩分け、濾過、デカンテーションまたは遠心分離またはこれらの組合せによって行うことができる。分散水の分離後、湿ったグラフトポリマーが得られる。その残差含水率は通常75重量%以下である。
【0057】
本発明方法では、補助物質、例えば乳化剤、ラジカル形成剤の分解物、緩衝剤は一部しか分離されないので、補助物質のかなりの部分(ほぼ100%)がグラフトポリマー(最終産物すなわち湿ったグラフトポリマー)中に残る。
【0058】
これ以上の精製段階は無いので、水から分離しなかった全ての副産物と不純物はコアシェル・ポリマー粉末中に残る。
【0059】
回収での凝集段階前のコア-シェル・コポリマー粒子のラテックス粒子のpHは4〜7.5の間、好ましくは6〜7の間にある。凝集段階(c)のpHは6〜7の間にあるのが好ましい。段階(b)のpH値は水溶性緩衝液、好ましくは燐酸塩緩衝液の添加により調整される。段階(c)の凝集で使用する電解液は硫酸マグネシウムであるのが好ましい。
【0060】
好ましい実施例では凝集後に凝集段階後のコアシェル・ポリマーのpH値を6〜7.5の間に調整する追加の段階を有するのが好ましい。
【0061】
凝集後のpH調整は無機塩の溶液で行うことができる。無機塩の例は硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、二水素リン酸ナトリウム、水素リン酸ジナトリウム、二水素リン酸カリウム、五水素リン酸ジカリ、次亜リン酸カルシウムである。無機塩は無水または水和物の形で使用でき(それが存在する場合)、例えば、無水硫酸マグネシウムまたはマグネシウム七水和物にすることができる。電解液は無機塩、好ましくはホスファートおよびサルフェートアニオン、特にナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムカチオン、例えば硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸水素ジナトリウム、二水素燐酸カリウムから選択するのが有利である。電解液はこれらの一種以上の水溶液の形で使用する。
【0062】
無機の強塩基、例えばNaOH、KOH、LiOH、(Ca(OH)2、より一般的にはアムモニアおよび加水分解でOH-イオンを放出する有機塩基は避ける。
【0063】
抗酸化剤を加えられることもできる。抗酸化剤としてはチバ(Ciba)社、クラリアン(Clariant)社またはソングノー(Songnox)社のポリマーを安定させる製品が周知である。
【0064】
ブロック防止(antiblocking)剤を加えることもできる。炭酸カルシウムのような無機塩またはシリカを使用できる。シリカが好ましい。
【0065】
本発明の更に別の態様は、少なくとも一種の熱可塑性ポリマーと、上記方法で得られるコア-シェル・コポリマー・耐衝撃性改良剤粒子とを含む衝撃変成された熱可塑性組成物にある。
【0066】
熱可塑性ポリマーは本発明の熱可塑性組成物の一部で、特に制限されないが、下記の中から選択できる:ポリ(ビニルクロライド)(PVC)、ポリエステル、例えばポリ(エチレン・テレフタレート)(PET)またはポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)またはポリ乳酸(PLA)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、(メタ)アクリル酸コポリマー、熱可塑性ポリ(メチルメタクリレート-co エチルアクリレート)、ポリ(アルキレン−テレフタレート)、ポリビニリデンフルオライド、ポリ(ビニリデンクロライド)、ポリオキシメチレン(POM)、半結晶ポリアミド、アモルファスポリアミド、半結晶コポリアミド、アモルファス・コポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミド、スチレンとアクリロニトリルのコポリマー(SAN)およびこれらの混合物。本発明の好ましい実施例では、熱可塑性樹脂組成物はポリカーボネート(PC)および/またはポリエステル(PETまたはPBT)またはPCまたはポリエステルのアロイから成る。アロイは例えばPC/ABS(ポリ(アクリロニトリル-co- ブタジエン-co- スチレン、PC/ポリエステルまたはPC/PLAが挙げられる。
【0067】
組成物の成分に関して、本発明のコアシェル・ポリマーと熱可塑性ポリマーとの間の比率は0.5/99.5〜20/80の間、好ましくは2/98〜15/75の間にある。
【0068】
方法
乳化重合の終わりの初期耐衝撃性改良剤の粒径は毛細管流体力学分画(CHDF)で実行される。重量平均粉末粒径、粒径分布および微粉末の比は300mmレンズを有するマルヴァーンマスターサイザー(Malvern Mastersizer)Sを使用して0,5-880μmの範囲で測定する。
D(v、0.5)はサンプルの50%がその粒径より小さく、サンプルの50%がその粒径より大きい粒径すなわち50%累積容積での等価容積直径を言う。このサイズはメディアン径ともよばれ、粒子に寸法独立濃度とみなした粒子濃度でマスメディアン直径に関連する。
D(v、0.1)はサンプルの10%がそれより小さい粒径である粒径すなわち10%累積容積での等価容積を言う。
D(v、0.9)はサンプルの90%がそのサイズより少ない粒径である。
D[4,3]は容積平均直径である。
【0069】
スパン(Span)は粒径分布の幅を表す。このパラメータが小さいほど粒径分布はより小さい。規格9276-1「粒度分析のパート1:グラフ表示」および規格9276-2「粒度分析結果の表示、パート2:平均値粒径/直径の計算と粒径分布からのモーメント」を使用。
【0070】
最終粉末のpHを得る手順
乾燥した5gの粉末を20mLの脱イオン水に分散させ、45℃で10分間の撹拌する。得られたスラリーをWattmanフィルタ紙で濾過し、濾過水のpHを室温で測定する。このpH値は予め標準緩衝液で較正したpHメータ(Eutech Instrument pH 200シリーズ)に接続したガラス・プローブ(Fisher Scientific)を使用して得た。
【0071】
衝撃変成組成物の製造
各耐衝撃性改良剤粉末をSABICからの熱可塑性樹脂ポリカーボネートLexan ML5221と混合した(5重量%、押出機Clextral(ダブル直径25mm、長さ700mm)を用い、押出機全体の帯域に応じて100℃〜320℃の温度を使用)。
熱可塑性組成物の衝撃強度はISO規格180-2000で測定した。テストサンプルはタイプ1Aである。
【0072】
以下の実施例では、ポリマー組成物のメルトフローインデックス(MVI)はISO規格1333-2005で、2.16kgの荷重下で、300℃で測定した。サンプルは調製した。
【0073】
MVIの変化は300℃で製造サンプルを25分後に6分後のものと比較した変化の百分比である。ポリマー組成物が劣化すると、25分後のMVI値は6分後の値より大きくなる。本発明の場合には、MVI値の相対変化が20%以下であれば許容範囲内であるとみなされる。すなわち、ポリマー組成物の粘度が大きく添加しないことが重要である。
【0074】
変色はパラメータb*を測定して観測される。b*値はサンプルの主たる黄変度を特徴づけるのに用いる。b*値では青色および黄色を測定する。黄色への変色はポジのb*値を有し、青色への変色はネガティブのb*値を有する。b*値は色彩計を使用して測定する(特にASTM規格 E 308)。
【0075】
初期の色がゼロに近い場合、本発明の耐衝撃性改良剤を含む熱可塑性組成物は許容範囲内であるとみなされる。b*は4以上であってはならない。色の変化を時間の関数で異なる条件下に観測する。サンプルを120℃に保ち且つサンプルを90℃かつ95%湿分値に維持する。
【実施例】
【0076】
商用製品として下記製品をテストした:「Paraloid(登録商標)EXL2691A」はローム(ROHM HAAS)社から市販のMBS耐衝撃性改良剤である。
【0077】
比較例1([図1]のラテックス粒子)
第1段階(コアの重合)
20リットルの高圧反応装置に、116.5部の脱イオン水、0.1部の牛脂脂肪酸の乳化カリウム塩、21.9部の1,3-ブタジエン、0.1部のt ドデシルメルカプタン、0.1部のp-メンタンヒドロペルオキシドとを初期釜チャージとして導入した。概略を以下に記載する。溶液を加熱し、攪拌した。43℃でレドックス-ベースの触媒液を添加し(4.5部の水、0.3部のテトラピロリン酸ナトリウム、0.004部の硫酸第一鉄、0.3部のデキストロース)、重合を効果的に開始する。それから溶液を56℃にさらに加熱、3時間この温度を保持した。
【0078】
重合開始後から3時間、第2のモノマーを導入する(77.8部のBD、0.2部のt-ドデシルメルカプタン)、追加の乳化剤の半分およびリダクタントの導入(30.4部の脱イオン水、2.8部の牛脂脂肪酸の乳化カリウム塩、0.5部のデキストロース)および追加の開始剤(0.8部のp−メタンヒドロペルオキシド)を8時間以上連続的に加える。第2のモノマーの添加の完了後、残りの乳化剤およびリダクタントチャージに開始剤を加えたものを追加の5時間にわたって連続的に加えた。重合開始から13時間後に溶液を68℃まで加熱し、重合開始から少なくとも20時間が経過するまで反応させて、ポリブタジエンゴム・ラテックス粒子、R1を製造した。得られたポリブタジエンゴム・ラテックス粒子(R1)は38%の固形物を含み、約170nmの平均値粒径を有する
【0079】
第2段階:(シェル1(外部シェル)の重合)
3.9リットルの反応装置に75.0部(固形物基準)のポリブタジエンゴム・ラテックス粒子R1と、37.6部の脱イオン水と、0.1部のホルムアルデヒド・スルホキシ酸ナトリウムとを導入した。溶液を攪拌し、窒素パージし、77℃に加熱した。溶液を77℃に達した時に22.6部のメチルメタクリレートと、1.1部のアクリル酸エチルと、1.4部のジビニールベンゼンと、0.1部のt-ブチルヒドロペルオキシド開始剤との混合物を70分かけて連続的に加え、80分間その状態を保持した。この保持時間の開始から30分後に0.1部のホルムアルデヒド・スルホキシ酸ナトリウムと、0.1部のt-ブチル・ヒドロペルオキシドとを反応装置に加えた。80分の保持時間後、グラフト共ポリマーラテックス粒子に安定化エマルションを加えた。この安定化エマルションは5.4部(グラフト共重合ポリマーベース)の脱イオン水と、0.1部のオレイン酸と、0.02部の水酸化カリウムと、0.1部のチオジプロピオン酸ジラウリルと、0.24部のトリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)−プロピオネート]とを混合して調製した。得られたコアシェルラテックス粒子(E2)は約180nmの平均粒径を有した。
【0080】
実施例2(本発明)([図2b]のラテックス粒子)
最初の段階(コア1およびコア2のの重合)
20リットルの高圧反応装置に初期投入物として116.5部の脱イオン水と、0.1部のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムエマルジョンと、20部の1,3-ブタジエンと、0.1部のt-ドデシルメルカプタンと、0.1部のp-メンタン・ヒドロペルオキシドとを入れ、溶液を攪拌下に43℃まで加熱し、その温度でレドックス-ベースの触媒(4.5部の水、0.3部のテトラピロホスフェートと、0.004部の硫酸第一鉄と、0.3部のデキストロース)を加えて重合を有効に開始した。それから溶液をさらに56℃まで加熱し、3時間この温度を保持した。
【0081】
重合開始から3時間後に、第2のモノマー材料(71部のBD、0.2部のt-ドデシルメルカプタン)と、追加の乳化剤と、リダクタント(30.4部の脱イオン水と、0.9部のドデシルベンゼンスルホン酸の乳化剤ソーダ塩と、0.5部のデキストロース)と、追加の開始剤(0.8部のp-メンタンヒドロペルオキシド)とを8時間かけて連続的に加えた。第2のモノマーの添加完了後、追加の5時間かけて残りの開始剤、乳化剤およびリダクタントを連続的に加えた。重合開始から13時間後に、溶液を68℃まで加熱し、追加の開始剤(0.09部のp-メンタンヒドロペルオキシド)と、スチレン(0.9部)とを追加の3時間かけて連続的に加え、反応させた。重合開始から少なくとも20時間経過後にブタジエンコア1-BD/ST傾斜コア2ラテックス粒子(R2)を得た。得られたポリブタジエンゴムラテックス粒子(R2)は40.3重量%の固形物を含み、約180nmの平均値粒径を有する。
【0082】
第2段階(シェル1とシェル2の重合)
3.9リットルの反応装置に80.75部(固形物基準)のポリブタジエンゴムラテックス粒子R2と、1.3部の脱イオン水と、0.004部のホルムアルデヒド・スルホキシ酸ナトリウムとを入れた。溶液を攪拌したに窒素パージし、55℃に加熱した。溶液が62℃に達した時に60分かけて7.1部のスチレンと、0.09部のジビニールベンゼンと、0.03部のt-ブチル・ヒドロペルオキシドとを連続的に加えた。その後、温度を40分間かけて75℃に上げる。バッチで、1.4部の脱イオン水と、0.003部のホルムアルデヒド・スルホキシ酸ナトリウムとの混合物を加え、それから10.5部のメチルメタクリレートと、0.13部のジビニールベンゼンと、0.04部のt-ブチル・ヒドロペルオキシド開始剤とを30分以上かけて連続的に加える。この添加の30分後に0.1部のt-ブチル・ヒドロペルオキシドを反応装置に一度に加え、60分間維持する。この60分の保持時間後、安定化エマルションを上記グラフト共重合ポリマーラテックス粒子に加えた。安定化エマルションは5.4部(グラフト共重合ポリマーの質量ベース)の脱イオン水と、0.1部のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムと、0.1部のチオジプロピオン酸ジラウリルと、0.24部のトリエチレングリコール−ビス[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)−プロピオネート]とを混合して調製した。得られたコアシェル・ラテックス粒子(E2)は約190nmの平均値粒径を有する。
【0083】
凝集前のpHを調整するための緩衝液
2リットルの較正済みフラスコに9.45gのNa2HPO4 (ジナトリウム水素ホスフェート)と、9.06gのKH2PO4 (カリウム二水素ホスフェート)を入れ、全体を脱塩水で2リットルにした。測定されたpHは6.8(0.066mol/l)である。
【0084】
凝集の実施例
撹拌機を備えた3Lのジャケット付き容器に、500 gの比較例1または実施例例2のそれぞれのコアシェル粒子のラテックス粒子を連続的に入れ、pH=6.8での緩衝液を入れて、14.1%の固形分にする。300r/分での撹拌下に溶液を30℃に加熱し、塩の溶液(300mLの脱イオン水中に16.1gの硫酸マグネシウム)を噴射した。迅速に凝集が起こる。15分間、30℃の温度で撹拌した後、80℃まで上げ、さらに30分間この温度を維持する。その後、40℃まで冷却する。pHを測定し、必要に応じて0.066mol/lのNa2HPO4の水溶液で調整した。スラリーをブフナー紙濾過器で濾過し、粉末を回収した。粉末は換気式乾燥器に入、50℃で48時間乾燥した後、回収した。
実施例2は上記凝集沈降法ではなく凍結乾燥でも乾燥した。
粒径を分析した。詳細は[表1]と[図4]に示す。
比較例3は最後にpH調整しなかった。
実施例2は硫酸マグネシウムで凝集し、凝凝集後に、Na2HPO4の水溶液で中和点までpH調整しなかった。
比較例4はNaOHでpH調整した。実施例2は硫酸マグネシウムで凝集し、凝集の後にpHをNa2HPO4でなくて水酸化ナトリウム(NaOH)の水溶液で調整した。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
上記実施例から、本発明方法を用いることで初期b*に優れ、120℃でエージングした後の時間を関数とするb*値が低い変成されたPCが得られるということが分かる。
【0088】
比較例3から、最終pH値を制御せず、中性pHに調整した場合には、初期b*は許容範囲内にあるが、本発明の条件に従って製造したものと比較して時間の経過とともに変色が進化することが分かる。
【0089】
比較例4から、最終pH値を制御し、中性pHに調整するが、十分な電解液を用いない場合には、初期b*は許容範囲内にあるが、本発明の条件に従って製造したものと比較して時間の経過とともに変色が進化することが分かる。
【0090】
【表3】

【0091】
[表3]の例から分かるように、本発明方法では室温および低温で優れた衝撃抵抗を有する変成されたPCを得ることができる。
【0092】
【表4】

【0093】
[表4]の実施例から分かるように、本発明方法の構造および方法を用いることで良好な衝撃抵抗を有する変性したPCを得ることができる。これに対して、本発明ではない操作条件で回収した、または、本発明の構造(傾斜)を有しない変成PCは時間の経過とともにそのMVIが劣化する。
【0094】
添付の[図1]〜[図3]はコア-シェル構造の例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程から成る耐衝撃性改良剤の製造方法:
(a) 乳化重合でコアシェルコポリマーを合成し、
(b) 合成段階後にコア−シェル・ポリマー粒子のpH値を制御、調整し、
(c) 水溶性電解質溶液を添加してコアシェル・ポリマーをpH4〜8で凝集させる。
【請求項2】
凝集段階の前のコア-シェル・コポリマー粒子のラテックスのpHを4〜7.5の間にする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
凝集段階の前のコアシェル・コポリマー粒子のラテックスのpHを6〜7の間にする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
凝集段階(c)でのpHを6〜7の間にする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
段階(b)でのpH値を水溶性緩衝液の添加で調整する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
水溶性緩衝液が水溶性ホスフェートの緩衝液である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
段階(c)での凝集に使用する電解液が硫酸マグネシウムである請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
段階(c)の後に追加の段階(d)を有するし、この段階(d)で凝集段階後のコアシェル・ポリマーのpH値をpH 6〜7.5の間に調整する請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
段階(d)のpHの調整を無機塩;好ましくはリン酸塩および硫酸塩アニオンの中、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムカチオン中、有利には硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素ジナトリウムおよびリン酸水素カリウムまたはこれらの混合物の中から選択される電解質水溶液によって行う請求項8に記載の方法。
【請求項10】
下記(A)と(B)から成る熱可塑性ポリマー組成物:
(A) 熱可塑性ポリマー
(B) 請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法で得られるコアコア-シェル衝撃緩衝剤。
【請求項11】
熱可塑性ポリマーがポリ(ビニルクロライド)(PVC)、ポリエステル、例えばポリ(エチレン・テレフタレート)(PET)またはポリ(ブチレン・テレフタレート)(PBT)またはポリ乳酸(PLA)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン、ポリ(メチルメタアクリレート)、(メタ)アクリルコポリマー、熱可塑性ポリ(メチルメタメタアクリレート -co- エチルアクリレート)、ポリ(アルキレンテトラフタレート)、ポリビニリデンフルオライド、ポリ(ビニリデンクロライドル)、ポリオキシメチレン(POM)、半結晶ポリアミド、アモルファス・ポリアミド、半結晶コポリアミド、アモルファス・コポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミド、スチレンとアクリロニトリルのコポリマー(SAN)またはこれらの混合物の中から選択される請求項10に記載の衝撃変成熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項12】
熱可塑性ポリマーはポリカーボネート(PC)および/またはポリエステル(PETまたはPBT)またはPCまたはポリエステルのアロイお中から選択される請求項10に記載の衝撃変成熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項13】
コア-シェル・コポリマーがポリマーのコアと、各層が異なるポリマー組成物を有す少なくとも2つのポリマーの層とから成り、その少なくとも一つのポリマーの層が傾斜ポリマーであるポリマーから成る、請求項10〜12のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項14】
一つのポリマーの層がポリマーのコア層であり、異なるポリマー組成物を有する上記コア層コアが上記コアであり、上記ポリマーのコア層が傾斜ポリマーであるポリマーから成る請求項13に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項15】
少なくとも一つのポリマーのコア層と、少なくとも2つのポリマーのシェル層とから成り、異なる組成物を有するコア層ポリマーがポリマーのコア層およびシェル層であり、上記ポリマーのコア層が傾斜ポリマーであるポリマーから成り、各シェルが異なるポリマー組成物を有し、少なくとも一つのポリマーのシェル層が傾斜ポリマーである請求項13に記載のコア-シェル・コポリマーの熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項16】
ポリマーのコアのガラス遷移温度が0℃以下である請求項13〜14のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項17】
ポリマーのコアのガラス転移温度が-40℃以下である請求項13〜16のいずれか一項に記載のコア-シェルコポリマーの熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項18】
ポリマーのコアのガラス遷移温度が-80℃〜-40℃の間にある請求項13〜17のいずれか一項に記載のコア-シェルコポリマーの熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項19】
ポリマーのコアがポリブタジエンから成る請求項13〜18のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項20】
ポリマーのコア層がブタジエンとスチレンとから請求項13〜19のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項21】
ポリマーのシェル層がメタアクリル酸メチルから成る請求項13〜20のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項22】
勾配ポリマーがスチレンから成る請求項13〜21のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリマー組成物。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−126903(P2012−126903A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−274860(P2011−274860)
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】