説明

コアシェルポリマー

本発明は、(i)Tgが−15〜35℃の範囲のポリマーを含有するコア(前記ポリマーは、少なくとも1の共役ジエンモノマーを含有するモノマー混合物から形成される)、及び(ii)Tgが40〜180℃の範囲のポリマーを含有するシェル(前記ポリマーは、少なくとも1の芳香族ビニルモノマーを含有するモノマー混合物から形成される)を含むコアシェルポリマーを提供し、この際コアポリマーのゲル含分は、62%未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
基材、例えば紙又は板紙は、1又は1より多い被覆層で被覆することができ、当該被覆層は、水蒸気、湿気、水、油、及び/又はグリースに対する遮断層として役立つ。とりわけ、包装、個別的には油っぽい食品(フライドポテト、フライドチキン、又はバター風味のポップコーン)の包装のために使用される紙及び板紙は通常、高い耐油性及び/又は耐グリース性(OGR)をもたらす少なくとも1の被覆層で被覆される。
【0002】
JP2004−076189は、改善された耐油性を有し、かつ油っぽい商品の包装に使用可能な塗工紙について言及している。この塗工紙は、アクリル樹脂、スチレン/ブタジエンコポリマー及びポリエステルを混合することにより得られる被覆組成物(I)によって、或いはアクリル樹脂をコアとして、かつスチレンブタジエンコポリマーをシェルとして含有するコアシェル粒子と、ポリエステルとを混合することによって得られる被覆組成物(II)によって、紙を被覆することにより得られる。このコアシェル粒子は、スチレンブタジエンコポリマーの存在下、アクリル樹脂を形成するモノマーを重合させることにより得られる。実施例1は、ポリエステル15質量部を、70/10/20(w/w/w)のメチルメタクリラート/ブチルアクリラート/スチレンコポリマーであるアクリル樹脂60質量部、及び35/65(w/w)スチレン/ブタジエンコポリマー40質量部と混合することにより得られる被覆組成物(I)を記載している。JP2004−076189の組成物は、所望の効果を得るために3つの成分が必要となるという点で不利である。
【0003】
JP1995−258308は、コアシェルポリマーを含有するラテックスを記載している。これらのラテックスで被覆された紙は、改善された表面強度、耐ブリスター性、及び湿潤強度を示す。このコアシェルポリマーのコアは、Tgが−20℃未満のコポリマーを含有しており、このコポリマーは、その都度モノマー混合物の質量に対して、共役ジエンモノマーを40〜64.5質量%、疎水性モノマーを35〜59.5質量%、及び親水性モノマーを0.5〜25質量%含有するモノマー混合物から形成される。コアシェルポリマーのシェルは、その都度モノマー混合物の質量に対して、共役ジエンモノマーを5〜35質量%、疎水性モノマーを25〜40質量%、親水性モノマーを25〜70質量%含有するモノマー混合物から形成されるコポリマーを含み、前記親水性モノマーは、(a)不飽和カルボン酸モノマー、(b)ヒドロキシエステルモノマー、及び(c)アミドモノマー、ならびに他の親水性モノマーから選択されている少なくとも1の要素を含有する。改善された耐油性/耐グリース性(OGR)を示す塗工紙を提供することは、JP1995−258308の対象ではなかった。
【0004】
JP2005−089895は、コアシェルポリマーを含有するラテックスを記載している。これらのラテックスとワックスとの混合物を紙に被覆すると、水分に対する遮断層を形成する。塗工紙はまた、ブロッキングを示さず、リサイクル可能である。このラテックスのポリマー粒子は、コア、第一シェル及び第二シェルから成っており、この際に前記コアは、Tgが−90℃〜10℃のコポリマーから成り、第一シェルはTgが0℃〜180℃のコポリマーから成り、かつ第二シェルはTgが0℃〜50℃のコポリマーから成り、そしてこの際に第一シェルのコポリマーのTgは、第二シェルのコポリマーのTgよりも少なくとも4℃高く、かつ第一シェルと第二シェルのコポリマーのTgは両方とも、コアのコポリマーのTgよりも高い。例えば、粒径120nmのポリマー粒子(このポリマー粒子は、30/10/60の質量比のコア、第一シェル、及び第二シェルから成る)を含有するラテックスDが記載されており、この際に前記コアは、Tgが7℃の63/37(w/w)のスチレン/ブタジエンコポリマーから成り、前記第一シェルは、Tgが69℃の80/20(w/w)のスチレン/2−エチルヘキシルアクリレートコポリマーから成り、かつ前記第二シェルは、Tgが32℃の60/37/3(w/w/w)のスチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/アクリル酸コポリマーから成る。ラテックスDのポリマー粒子のコアのスチレン/ブタジエンコポリマーのゲル含分を我々が測定したところ、68%であることが判明した。他の例は、コア、第一シェル、及び第二シェル(質量比は30/10/60)から成る粒径119nmのポリマー粒子を含有するラテックスaであり、この際に前記コアはTgが15℃の67/33(w/w)のスチレン/ブタジエンコポリマーから成り、第一シェルはTgが69℃の80/20(w/w)のスチレン/2−エチルヘキシルアクリレートコポリマーから成り、かつ第二シェルはTgが31℃の60/37/3(w/w/w)のスチレン2−エチルヘキシルアクリレート/アクリル酸コポリマーから成る。ラテックスaのポリマー粒子のコアのスチレン/ブタジエンコポリマーのゲル含分を我々が測定したところ、64%であることが判明した。ここでも、改善された耐油性/耐グリース性(OGR)を示す塗工紙を提供することは、JP2005−089895の対象ではなかった。
【0005】
本発明の課題は、改善された耐油性/耐グリース性(OGR)を基材に付与する被覆層により被覆された基材を提供することである。加えて、被覆された基材は、ブロッキングに対して耐性があるのが望ましい。
【0006】
本課題は、請求項1に記載のコアシェルポリマー、請求項7に記載の被覆組成物、請求項8及び9に記載の方法、並びに前記方法により得られる被覆された基材により解決される。
【0007】
本発明のコアシェルポリマーは、
(i)Tgが−15〜35℃の範囲にあるポリマー(このポリマーは、少なくとも1の共役ジエンモノマーを含有するモノマー混合物から形成される)を含有するコア、及び
(ii)Tgが40〜180℃の範囲にあるポリマー(このポリマーは、少なくとも1の芳香族ビニルモノマーを含有するモノマー混合物から形成される)を含有するシェル
を含み、この際コアポリマーのゲル含分は62%未満である。
【0008】
Tg(ガラス転移温度)とは、当該温度未満になると、非晶質材料の物理的特性が結晶質相(ガラス状状態)の物理的特性と同じように変わり、当該温度以上では非晶質材料が液体のように振る舞う(ゴム状状態)温度である。Tgはまた、当該温度未満になると分子が相対的な移動性をほとんど失う温度である。
【0009】
Tgは、乾燥したコアシェルポリマーについて、示差走査熱量測定(DSC)を用いて、以下の熱的なサイクルを適用して測定する:1)20℃/分の速度で−60℃から120℃への温度上昇、2)20℃/分の速度で120℃から60℃への温度降下、及び3)20℃/分の速度で−60℃から120℃への再度の温度上昇、そしてTgの測定。
【0010】
ゲル含分とは、コアシェルポリマーのクロロホルム不溶性フラクション/コアシェルポリマーの質量比である。
【0011】
ゲル含分は、以下のように測定する:所定の質量(P0)を有するガラス繊維紙(2.5×11cm)を、pH8に調整したコア/シェルポリマーの25質量%水性エマルションに浸し、そして50℃で2時間乾燥する。被覆されたガラス繊維紙の乾燥質量(P1)を測定する。被覆されたガラス繊維紙を、ソックスレー装置に配置し、クロロホルムで7時間抽出する。抽出されたガラス繊維紙を取り除き、そして105℃で2時間乾燥する。抽出されたガラス繊維紙の乾燥質量(P2)を測定する。ゲル含分(%)を、次のように計算する:(P2−P0)/(P1−P0)×100。
【0012】
好ましくは、コアポリマーのTgは、少なくとも−5℃、より好ましくは少なくとも0℃、さらに好ましくは少なくとも5℃、及び最も好ましくは少なくとも8℃である。
【0013】
好ましくは、コアポリマーのTgは、最大30℃、より好ましくは最大25℃、さらに好ましくは最大20℃、及び最も好ましくは最大15℃である。
【0014】
好ましくは、コアポリマーのTgは−5〜30℃の範囲、より好ましくは0〜25℃の範囲、さらに好ましくは5〜20℃の範囲、及び最も好ましくは8〜15℃の範囲である。
【0015】
コアポリマーのゲル含分は好ましくは、60%未満、より好ましくは55%未満、及び最も好ましくは50%未満である。好ましくは、ゲル含分は少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも25%である。
【0016】
共役ジエンモノマーの例は、ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレン、及び2−クロロ−1−3ブタジエンである。好ましい共役ジエンは、ブタジエンである。
【0017】
コアポリマーを形成するモノマー混合物中の共役ジエンモノマー(又はこれらの混合物)の量は、コアポリマーを形成するモノマー混合物の質量に対して好ましくは最大60質量%、より好ましくは最大55質量%、さらに好ましくは最大50質量%、及び最も好ましくは最大45質量%である。好ましくは共役ジエンの量は、コアポリマーを形成するモノマー混合物の質量に対して少なくとも1質量%、より好ましくは少なくとも10質量%、さらに好ましくは少なくとも20質量%、及び最も好ましくは少なくとも30質量%である。
【0018】
コアポリマーを形成するモノマー混合物中の共役ジエンモノマー(又はこれらの混合物)の量は、コアポリマーを形成するモノマー混合物の質量に対して好ましくは1〜60質量%の範囲、より好ましくは10〜55質量%の範囲、さらに好ましくは20〜50質量%の範囲、及び最も好ましくは30〜45質量%の範囲である。
【0019】
コアポリマーを形成するモノマー混合物は好ましくは、さらにエチレン性不飽和モノマーを含有する。さらなるエチレン性不飽和モノマーの例は、芳香族ビニルモノマー、α,β−不飽和カルボン酸、及びこれらの塩、α,β−不飽和カルボン酸の誘導体、脂肪族ビニルモノマー、及びオレフィンモノマーである。
【0020】
芳香族ビニルモノマーの例は、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、及びo−ヒドロキシスチレン、並びにこれらの混合物である。スチレンは、好ましい芳香族ビニルモノマーである。
【0021】
α,β−不飽和カルボン酸の例は、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、及びマレイン酸モノエチル、及びこれらの混合物である。α,β−不飽和カルボン酸の好ましい例は、アクリル酸、フマル酸、及びイタコン酸、並びにこれらの混合物である。これらの塩は、ナトリウム塩、又はアンモニウム塩であってよい。
【0022】
α,β−不飽和カルボン酸誘導体の例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、マレイミド、及び無水マレイン酸、並びにこれらの混合物である。
【0023】
脂肪族ビニルモノマーの例は、ビニルアルコール、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルイソブチルエーテル、及び酢酸ビニル、並びにこれらの混合物である。
【0024】
オレフィンモノマーの例は、エチレン、プロピレン、ブタジエン、及びイソプレン、並びに塩化された、及びフッ化されたこれらの誘導体、例えばテトラフルオロエチレン、並びにこれらの混合物である。
【0025】
コアポリマーを形成するモノマー混合物は、より好ましくは少なくとも1の芳香族ビニルモノマーをさらに含む。
【0026】
コアポリマーを形成するモノマー混合物は、最も好ましくは、少なくとも1の芳香族ビニルモノマー、及び少なくとも1のα,β−不飽和カルボン酸をさらに含む。
【0027】
コアポリマーを形成するモノマー混合物中の芳香族ビニルモノマー(又はこれらの混合物)の量は、コアポリマーを形成するモノマー混合物の質量に対して好ましくは10〜90質量%の範囲、より好ましくは40〜80質量%の範囲、及び最も好ましくは50〜70質量%の範囲である。
【0028】
コポリマーを形成するモノマー混合物中のα,β−不飽和カルボン酸(又はこれらの混合物)の量は、コアポリマーを形成するモノマーの質量に対して好ましくは0.1〜50質量%の範囲、より好ましくは0.2〜10質量%の範囲、及び最も好ましくは0.5〜5質量%の範囲である。
【0029】
好ましくは、コアポリマーを形成するために使用されるモノマー混合物は、シアノ基を有するエチレン性不飽和モノマー、例えば(メタ)アクリロニトリルを含有しない。
【0030】
シェルポリマーのTgは好ましくは、少なくとも50℃、より好ましくは少なくとも60℃、さらに好ましくは少なくとも70℃、及び最も好ましくは少なくとも80℃である。
【0031】
好ましくは、シェルポリマーのTgは最大220℃、より好ましくは最大200℃、さらに好ましくは最大190℃、及び最も好ましくは最大180℃である。
【0032】
好ましくは、シェルポリマーのTgは、50〜220℃の範囲、より好ましくは60〜200℃の範囲、さらに好ましくは70〜190℃の範囲、及び最も好ましくは80〜180℃の範囲である。
【0033】
好ましくは、シェルポリマーのゲル含分は20%未満、より好ましくは10%未満、及び最も好ましくは0%である。
【0034】
芳香族ビニルモノマーの例は、上記の通りである。シェルポリマーを形成するために好ましい芳香族ビニルモノマーは、スチレンである。
【0035】
シェルポリマーを形成するモノマー混合物中の芳香族ビニルモノマー(又はこれらの混合物)の量は、シェルポリマーを形成するために使用されるモノマー混合物の質量に対して好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、さらに好ましくは少なくとも80質量%、及び最も好ましくは90質量%である。
【0036】
シェルポリマーを形成するモノマー混合物はまた、エチレン性不飽和モノマーをさらに含むことができる。さらなるエチレン性不飽和モノマーの例は、芳香族ビニルモノマー、α,β−不飽和カルボン酸、及びこれらの塩、α,β−不飽和カルボン酸の誘導体、脂肪族ビニルモノマー、及びオレフィンモノマーである。
【0037】
コアポリマー/シェルポリマーの質量比は、好ましくは30/70〜95/5の範囲、より好ましくは50/50〜90/10の範囲、さらに好ましくは55/45〜85/15の範囲、及び最も好ましくは60/40〜80/20の範囲である。
【0038】
コアシェルポリマーの平均粒径は、好ましくは100〜150nmである。
【0039】
好ましくは、コアシェルポリマーはポリエステルを含有しない。
【0040】
ポリエステルは、ヒドロキシ基もカルボキシ基も有する少なくとも1のモノマーから、或いは2つのヒドロキシ基を有する少なくとも1のモノマー、及び2つのカルボキシ基又は1つのラクトン基を有する少なくとも1のモノマーから、形成されるポリマーであってよい。ヒドロキシ基もカルボキシ基も有するモノマーの例は、アジピン酸である。ジオールの例は、エチレングリコールである。ラクトン基を有するモノマーの例は、カプロラクトンである。ジカルボン酸の例は、テレフタル酸、イソフタル酸、及び1,4−ナフタレンジカルボン酸である。ポリエステルの例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。いわゆるアルキド樹脂もまた、ポリエステルポリマーに属すると考えられる。
【0041】
本発明の被覆組成物は、
(i)Tgが−15〜35℃の範囲のポリマーを含有するコア(前記ポリマーは、少なくとも1の共役ジエンモノマーを含有するモノマー混合物から形成される)、及び
(ii)Tgが40〜180℃の範囲のポリマーを含有するシェル(前記ポリマーは、少なくとも1の芳香族ビニルモノマーを含有するモノマー混合物から形成される)
を含むコアシェルポリマーと、水性媒体とを含み、この際に前記コアポリマーのゲル含分は62%未満である。
【0042】
コアシェルポリマーに対する上記の情報はまた、本発明の被覆組成物のコアシェルポリマーにも適用される。
【0043】
好ましくはこの被覆組成物は、ポリエステルを含有しない。
【0044】
本発明の被覆組成物はとりわけ、紙又は板紙用の被覆組成物である。
【0045】
この被覆組成物のpHは、好ましくは5〜10の範囲、より好ましくは6〜8の範囲、最も好ましくは7〜8の範囲である。
【0046】
この被覆組成物は好ましくは、被覆組成物の質量に対して1〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは25〜60質量%、及び最も好ましくは35〜50質量%、コアシェルポリマーを含有する。
【0047】
被覆組成物の粘度は、好ましくは50〜1000mPa×s(ブルックフィールド 20回転/分、25℃)の範囲、より好ましくは100〜500mPa×sの範囲である。
【0048】
好ましくは水性媒体は水である。
【0049】
本発明の一部となるのはまた、本発明の被覆組成物の第一の製造方法であって、該方法は、
i)水性媒体を準備する工程と、
ii)コアポリマーを形成するモノマー混合物を工程i)の水性媒体に供給して、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてコアポリマーを形成する工程と、
iii)シェルポリマーを形成するモノマー混合物を工程ii)のコアポリマーに供給し、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させて本発明の被覆組成物を形成する工程と、
を含む。
【0050】
工程i)の水性媒体は、シードポリマーを含んでいてよい。このシードポリマーは、あらゆる種類の適切なシードポリマーであってよい。このシードポリマーは好ましくは、ポリスチレンである。このシードポリマーは好ましくは、平均粒径が10〜50nmの範囲である。
【0051】
コアポリマーを形成するモノマーのうち、コアポリマーを形成するモノマー混合物の質量に対して少量の質量部、例えば最大10質量%、好ましくは最大5質量%、より好ましくは最大2質量%が、工程i)で存在していることが可能である。
【0052】
あらゆる適切な開始剤を使用することができる。開始剤は例えば、過酸化物、過硫酸塩、アゾ化合物、又はレドックス系、或いはこれらの混合物であってよい。
【0053】
過酸化物の例は、過酸化水素、過酸化アンモニウム、過酸化ナトリウム、又は過酸化カリウム、t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、及びベンゼンペルオキシドである。過硫酸塩の例は、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、又は過硫酸カリウムである。アゾ化合物の例は、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、及び4,4’−(4−シアノバレリン酸)である。レドックス系は、酸化剤と還元剤とから成る。酸化剤は、先に挙げたうちの1の過酸化物、過硫酸塩、若しくはアゾ化合物、又は塩化ナトリウム若しくは塩化カリウム、又は臭化ナトリウム若しくは臭化カリウムである。還元剤の例は、アスコルビン酸、グルコース、又はアンモニウム、硫酸水素ナトリウム若しくは硫酸水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム若しくは亜硫酸水素カリウム、ナトリウムチオスルフェート若しくはカリウムチオスルフェート、又は硫化ナトリウム若しくは硫化カリウム、又は鉄(II)アンモニウムスルフェートである。
【0054】
好ましくは、開始剤は過硫酸塩、より好ましくは過硫酸アンモニウムである。
【0055】
工程ii)及びiii)におけるモノマー混合物の重合は、さらなる添加剤、例えば界面活性剤、連鎖移動剤、及びキレート剤の存在下で、例えば界面活性剤及び連鎖移動剤の存在下で行うことができる。
【0056】
さらなる添加剤は、既に工程i)で存在しているか、及び/又はモノマー混合物と一緒に供給するか、かつ/又は工程ii)及び/又はiii)で別個の供給物で供給することができる。
【0057】
界面活性剤の例は、二ナトリウムドデシルジフェニルオキシド、ジスルホン酸塩である。
【0058】
連鎖移動剤の例は、α−メチルスチレン二量体、チオグリコール酸、亜リン酸水素ナトリウム、2−メルカプトエタノール、N−ドデシルメルカプタン、及びt−ドデシルメルカプタンである。好ましい連鎖移動剤は、t−ドデシルメルカプタンである。
【0059】
キレート剤の例は、エチレンジアミン四酢酸である。
【0060】
界面活性剤の量は、工程ii)及びiii)の混合物の質量に対して0〜15質量%、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜6質量%、最も好ましくは2〜4質量%であり得る。
【0061】
連鎖移動剤の量は、工程ii)及びiii)のモノマー混合物の質量に対して0〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.2〜15質量%、最も好ましくは0.5〜10質量%であり得る。
【0062】
好ましくは、工程ii)及びiii)でのモノマー混合物の重合を、界面活性剤及び連鎖移動剤の存在下で行う。
【0063】
工程ii)及びiii)でのモノマー混合物の重合は通常、50〜130℃、より好ましくは60〜120℃、最も好ましくは80〜110℃の温度で行う。
【0064】
工程iii)の後、残っているあらゆるモノマーを、例えばストリッピング法により除去することができる。
【0065】
本発明の一部となるのはまた、本発明の被覆組成物を製造するための第二の方法であって、この方法は、
i)コアポリマーを準備する工程と、
ii)シェルポリマーを準備する工程と、
iii)水性媒体の存在下で、工程i)のコアポリマーと、工程ii)のシェルポリマーとを混合する工程と、
を含む。
【0066】
工程i)のコアポリマー、及び工程ii)のシェルポリマーは、固体形態、又は水性媒体への溶液、エマルション、若しくは懸濁液の形態であり得る。
【0067】
工程iii)における水性媒体は、工程i)若しくはii)から誘導するか、又は工程iii)で加えることができる。
【0068】
工程ii)でのコアポリマーとシェルポリマーとのの混合は通常、周囲温度で、例えば5〜45℃の温度、好ましくは15〜30℃で行う。
【0069】
工程i)のコアポリマーと工程ii)のシェルポリマーは、開始剤の存在下でコアポリマー及びシェルポリマーをそれぞれ形成するモノマー混合物を重合させることにより製造することができる。
【0070】
好ましくは本発明の被覆組成物を、第二の方法を用いて製造する。本発明は第二の方法により製造された被覆組成物に関する。
【0071】
本発明の一部となるのはまた、本発明のコアシェルポリマーの製造方法であり、この方法は、水性媒体を本発明の被覆組成物から除去することを含む。
【0072】
本発明の一部となるのはまた、本発明の被覆組成物により基材を被覆する方法であり、この方法は本発明の被覆組成物を基材に適用する工程を含む。
【0073】
この基材はまた、二次元の物体、例えばシート若しくはフィルム、又はあらゆる三次元的な物体であってよい;当該物体は、透明、又は不透明であり得る。前記基材は、紙、板紙、木材、皮革、金属、繊維、ガラス、セラミック、及び/又はポリマーから作られていてよい。好ましくは、基材は紙又は板紙である。
【0074】
本発明の被覆組成物は、標準的な被覆適用、例えばバーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、浸漬塗布、エアー塗布、ナイフ塗布、ブレード塗布、又はロール塗布を用いて基材に適用することができる。この組成物はまた、様々な印刷法、例えばシルクスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、及びフレキソ印刷によって、基材に適用することもできる。
【0075】
基材に適用された被覆組成物は、例えば周辺温度又は上昇させた温度で乾燥させて、被覆層を形成させることができる。
【0076】
被覆層は通常、厚さが0.1〜100μmの範囲である。好ましくはこの厚さは、1〜50μmの範囲、より好ましくは1〜20μmの範囲である。
【0077】
さらに本発明の一部となるのは、上記方法により得られる被覆された基材である。
【0078】
本発明の一部となるのはまた、基材を本発明の被覆組成物で被覆することにより、耐油性/耐グリース性を上昇させるための方法である。
【0079】
本発明の被覆組成物で被覆された紙及び板紙には、優れたブロッキング特性と組み合わされた、高い耐油性/耐グリース性を示すという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】オイルキット試験の結果を示す。
【図2】ターペンタイン試験の結果(平面)を示す。
【図3】ターペンタイン試験の結果(折りたたみ状)を示す。
【図4】「ボート」試験の結果(表面)を示す。
【図5】「ボート」試験の結果(縁)を示す。
【図6】ブロッキング試験の結果(表−表)を示す。
【図7】ブロッキング試験の結果(表−裏)を示す。
【0081】
図1は、実施例1c、比較例1及び2の被覆組成物で、並びにCiba(登録商標)Latexia(登録商標)302で被覆されたAscoflex40及びM−real boardについて行った、オイルキット試験の結果を示す。
【0082】
図2と3は、実施例1c、比較例1及び2の被覆組成物で、並びにCiba(登録商標)Latexia(登録商標)302で被覆されたAscoflex40及びM−real boardについて行った、ターペンタイン試験の結果を示す。
【0083】
図4と5は、実施例1c、比較例1及び2の被覆組成物で、並びにCiba(登録商標)Latexia(登録商標)302で被覆されたAscoflex40及びM−real boardについて行った、「ボート」試験の結果を示す。
【0084】
図6と7は、実施例1c、比較例1及び2の被覆組成物で、並びにCiba(登録商標)Latexia(登録商標)302で被覆されたAscoflex40及びM−real boardについて行った、ブロッキング試験の結果を示す。
【0085】
実施例
実施例1a
スチレン/ブタジエン/フマル酸/アクリル酸コポリマーのコアと、スチレン/アクリル酸コポリマーのシェルとから成るコアシェルポリマーを含有する被覆組成物の製造
水1500g、フマル酸22.00g、二ナトリウムドデシルジフェニルオキシドの45質量%溶液13.33g、ジスルホン酸塩、エチレンジアミン四酢酸0.80g、及び平均粒径30nmのポリスチレンシード粒子の30質量%水性懸濁液67.11gを反応器に装入し、360回転/分の速度で撹拌する。この混合物を90℃に加熱し、そして窒素で脱気する。スチレン1394.23g、アクリル酸50.57g、及びα−メチルスチレン二量体140.0gから成る第一原料を4時間25分以内に、T0からT45minは4.80g/分の速度、T45minからT145minは7.20g/分の速度、T145minからT265minは5.40g/分の速度で、反応器に供給する。ブタジエン518.00gから成る第二原料を2時間25分以内に、T0からT45minは2.63g/分の速度、T45minからT145minは4.00g/分の速度で反応器に供給する。二ナトリウムドデシルジフェニルオキシドの45質量%溶液40.00g、ジスルホン酸塩、ペレット状水酸化ナトリウム0.80g、及び水177.0gから成る第三原料、及び水173.00g、及び過硫酸アンモニウム23.60gから成る第四原料を、T0で開始して5時間25分以内に連続的な速度で並行して反応器に供給する。
【0086】
4時間(T240min)後、30分以内に温度を90℃から100℃に上昇させ、そして第三原料及び第四原料の反応が終わるまで100℃に保つ。原料の反応完了後、残っているモノマーを含む揮発性有機化合物を、真空及び直接蒸気流下でストリッピング法によって反応混合物から除去する。
【0087】
こうして得られる被覆組成物は、濾過してグリットを除去し、固体含分は約44.9%(w/w)に、pHは5.9に、そして25℃での粘度(ブルックフィールド20回転/分)は376mPa×sに調整する。こうして得られる被覆組成物は、ゲル含分約60%、Tg約4℃の60.3/38.0/1.6/0.1(w/w/w/w)スチレン/ブタジエン/フマル酸/アクリル酸コポリマー約70質量部(これがコアポリマーとして機能する)と、Tg約89℃の(94/4)(w/w)スチレン/アクリル酸コポリマー約30質量部(これがシェルポリマーとして機能する)とから成る、平均粒径114nmのコアシェルポリマーの水性懸濁液である。
【0088】
実施例1b
スチレン/ブタジエン/フマル酸/アクリル酸コポリマーのコアと、スチレン/アクリル酸コポリマーのシェルとから成るコアシェルポリマーを含有する被覆組成物の製造
実施例1aのコアシェルポリマーに倣ってコアシェルポリマーを製造するのだが、その相違点は、二ナトリウムドデシルジフェニルオキシドの45質量%溶液を13.33gではなく7.56g使用すること、ジスルホン酸塩を当初の反応器バッチに使用すること、及び、二ナトリウムドデシルジフェニルオキシドの45質量%溶液を40.00gではなく19.51g使用すること、ジスルホン酸塩を第三原料で使用することである。
【0089】
こうして得られる被覆組成物は、濾過してグリットを除去し、固体含分は約46.2%(w/w)に、pHは5.8に、そして25℃での粘度(ブルックフィールド20回転/分)は132mPa×sに調整する。こうして得られる被覆組成物は、ゲル含分約52%、Tg約15℃の60.3/38.0/1.6/0.1(w/w/w/w)スチレン/ブタジエン/フマル酸/アクリル酸コポリマー約70質量部(これがコアポリマーとして機能する)と、Tg約100℃の(94/4)(w/w)スチレン/アクリル酸コポリマー約30質量部(これがシェルポリマーとして機能する)とから成る、平均粒径140nmのコアシェルポリマーの水性懸濁液である。
【0090】
実施例1c
スチレン/ブタジエン/アクリル酸/フマル酸/イタコン酸コポリマーのコアと、スチレン/アクリル樹脂のシェルとから成る、コアシェルポリマーを含有する被覆組成物の製造
水1500g、イタコン酸6.0g、フマル酸16.00g、二ナトリウムドデシルジフェニルオキシドの45質量%溶液13.33g、ジスルホン酸塩、エチレンジアミン四酢酸0.88g、及び平均粒径が30nmのポリスチレンシード粒子の30質量%水性懸濁液67.11gを、20℃で反応器に装入し、そしてこうして得られる混合物を360回転/分の速度で撹拌する。この混合物を85℃に加熱し、そして窒素で脱気する。アクリル酸42.60g、スチレン1180.00g、及びt−ドデシルメルカプタン38.00gから成る第一原料、ブタジエン740.00gから成る第二原料を、T0から開始して4時間30分以内に並行して反応器に供給する。二ナトリウムドデシルジフェニルオキシドの45質量%溶液42.22g、ジスルホン酸塩、錠剤形の水酸化ナトリウム0.8g、及び水170gから成る第三原料、及び過硫酸アンモニウム23.60g、及び水180.00gから成る第四原料を、T0から開始して6時間以内に並行して反応器に供給する。4時間後に、温度を30分で85℃から100℃に上昇させ、そして第三原料及び第四原料が反応完了するまで100℃に保つ。原料の反応完了後、残っているモノマーを含有する揮発性有機化合物を、真空及び直接蒸気流下でストリッピング法によって反応混合物から除去する。こうして得られる、スチレン/ブタジエン/アクリル酸/フマル酸/イタコン酸(59.5/37.3/2.1/0.8/0.3)コポリマーの水性懸濁液を濾過してグリットを除去し、25℃での粘度(ブルックフィールド20回転/分)は約350mPa×sに、pHは7〜8に、そして固体含分は約50%(w/w)に調整する。このスチレンブタジエンアクリル酸コポリマーは、平均粒径が111nm、ゲル含分が60%、そしてTgが約10℃である。
【0091】
BASF社製のJoncryl(登録商標)DFC 3024(分子量8500g/mol、酸価222、及びTg約101℃の、スチレン/アクリル樹脂の32質量%水溶液)2412.00gを、40℃で3時間以内にスチレン/ブタジエン/アクリル酸/フマル酸/イタコン酸コポリマーの水性懸濁液に加える。
【0092】
こうして得られる被覆組成物は、ゲル含分約60%、Tg約10℃のスチレン/ブタジエン/アクリル酸/フマル酸/イタコン酸(59.5/37.3/2.1/0.8/0.3)(w/w/w/w)約72質量部(これがコアポリマーとして機能する)と、分子量約8500g/mol、酸価222、及びTg約101℃のスチレン/アクリル樹脂約28質量部(これがシェルポリマーとして機能する)とから成る、平均粒径約120nmのコアシェルポリマーの水性懸濁液である。この被覆組成物は、固体含分が約43.6%(w/w)、pH7.9、及び25℃での粘度(ブルックフィールド 20回転/分)が224mPa×sである。
【0093】
比較例1
スチレン/2−エチルヘキシルアクリレートコポリマーのコアと、スチレン/アクリル酸、アンモニウム塩コポリマーのシェルとから成るコアシェルポリマーを含有する被覆組成物の製造
酢酸ブチル(250g)を反応器に装入し、そして加熱して還流させる(125℃)。t−ブチルペルベンゾアート(7.8g)を、反応器に加える。スチレン(162.5g)、及び氷アクリル酸(glacial acrylic acid)87.5gから成るモノマー原料を製造する。t−ブチルペルベンゾアート(23.4g)から成る開始剤原料を製造する。このモノマー原料を5時間以内に反応器に加え、そして開始剤原料を5.5時間以内に反応器に加える。これらの原料が反応完了したら直ちに、この反応混合物をさらに1時間、125℃に保つ。20質量%のアンモニア水溶液(100g)と、水(700g)との混合物を反応器に加え、酢酸ブチルを留去する。蒸留物は分けられ、水は反応器に戻し、そして酢酸ブチルは受け器に戻す。反応混合物の温度は蒸留の間93℃に低下し、すべての酢酸ブチルが除去された時に、100℃に上昇する。蒸留が完了した時、反応混合物を40℃未満に冷まし、得られた65/35(w/w)スチレン/アクリル酸、アンモニウム塩の溶液を、25質量%の固体含分、及びpH9.0に調整する。
【0094】
スチレン/アクリル酸、アンモニウム塩コポリマーの25質量%水溶液(576g)、及び水(71g)を反応器に装入し、85℃に加熱し、そして窒素で30分間脱気する。過硫酸アンモニウム(0.5g)を加える。スチレン(184.8g)及び2−エチルヘキシルアクリレート(151.2g)から成るモノマー原料を製造する。過硫酸アンモニウム(1.5g)及び水(15.0g)から成る開始剤原料を用意する。このモノマー原料を3時間以内に反応器に加え、そして開始剤原料を4時間以内に反応器に加える。この反応混合物の温度は、重合の間85℃に保つ。原料が反応完了したら直ちに、中身をさらに1時間85℃に保ち、その後40℃未満に冷まし、そしてActicide(登録商標)LG(塩化された、及び塩化されていないメチルイソチアゾロンを含有する殺生剤)0.9gを加える。
【0095】
こうして得られる被覆組成物は、Mwが100000g/mol、及びTgが約15℃の55/45(w/w)スチレン/2−エチルヘキシルアクリレートコポリマー(このコポリマーがコアとして機能する)約70質量部と、Mwが8000g/mol、及びTgが約105℃のスチレン/アクリル酸(65/35)(w/w)、アンモニウム塩コポリマー(このコポリマーがシェルとして機能する)約30質量部とから成るコアシェルポリマーの水性エマルションである。この被覆組成物は、固体含分が約46%(w/w)、pH8.5、及び25℃での粘度(ブルックフィールド 20回転/分)が700mPa×sである。
【0096】
比較例2
比較例1の被覆組成物と、ワックスとの混合物である被覆組成物の製造
比較例1の被覆組成物と、「Aquabead 525E」(Micro Powders Inc(USA)により市販されており、これは精製パラフィンワックス(CAS No.63231−60−7)と、カルナウバ蝋(CAS No.8015−86−9)との混合物の水性エマルションである)との80/20(w/w)混合物を、2つの成分を混合することにより製造する。得られる被覆組成物は、固体含分が約40%(w/w)、pHが8.5〜9.5、及び25℃での粘度(ブルックフィールド 20回転/分)が、50〜300mPa×sである。
【0097】
実施例2
実施例1cの被覆組成物で被覆されたAscoflex40、及びM−real boardの製造
Acoflexとは、坪量が40g/m2の紙であり、この片面に顔料被覆を塗布する。M−read boardは、坪量が255g/m2の板紙であり、この片面に顔料被覆を塗布する。顔料被覆が塗布されていないAscoflex40、M−real boardの面にそれぞれ、手動式コーター(Hand Draw Down Coater)を用いて実施例1cの被覆組成物を塗布し、実験室レベルの非接触式織物乾燥機、赤外線及び熱気を用いて乾燥し、被覆の質量が8g/m2である被覆を得る。
【0098】
比較のため、Ascoflex40とM−real boardを、比較例1及び2の被覆組成物で、並びにCiba(登録商標)Latexia(登録商標)302で被覆し、これは、固体含分50%(w/w)、及びpH5.5のカルボキシル化されたスチレンブタジエンコポリマーの水性懸濁液であり、このpHは7.8に調整する。
【0099】
実施例1cの被覆組成物で被覆されたAscoflex40及びM−real boardの対照試験
実施例1cの被覆組成物で被覆されたAscoflex40とM−real boardと、その対照群を以下の紙試験に供する:
オイルキット試験(TAPPI法441)
オイルキット試験は、紙又は板紙の耐油性を測定する試験である。様々な量のひまし油、ヘプタン、及びトルエンから成る混合物を12個用意する(混合物番号1が最も弱く、混合物番号12が最も強い)。紙を15秒間この混合物で処理し、そして処理された紙で油汚れを示さない最も大きい番号の混合物を確定する。オイルキット試験での値が高ければ、紙の耐油性は相応して高い。
【0100】
図1にその結果が示されている。実施例1cの被覆組成物か、又はコントロールの被覆組成物のどちらかで被覆されたAscoflex40とM−real boardは、すべて最高のオイルキット値12を示す(例外:Ciba(登録商標)Latexia(登録商標)302で被覆したM−real boardは、オイルキット値が約9である。)。
【0101】
ターペンタイン試験(TAPPI法T454)
ターペンタイン試験は、テレビン油に対する紙又は板紙の耐性を測定する試験である。被覆された紙(平面、又は折りたたみ状)の上に砂を置き、そして砂で覆われた紙を吸い取り紙の上に置く。この後、赤く染めたテレビン油を、砂の中に滴下する。赤く染めた油が紙を浸透して吸い取り紙まで来るのに必要となる時間を測定する。油が紙を浸透するのに必要となる時間が長ければ、紙の耐油性は相応して高い。
【0102】
その結果は、図2(平面)、及び図3(折りたたみ状)に示されている。
【0103】
図2から見て取れるのは、赤く染めた油が、実施例1cの被覆組成物で被覆されたM−real boardを浸透するのに必要となる時間は、コントロールの被覆組成物で被覆されたM−real boardを浸透するのに必要となる時間よりも、ずっと長いということである。赤く染めた油が実施例1cの被覆組成物により被覆されたAscoflex40を浸透するのに必要となる時間は、比較例1及び2の被覆組成物で被覆されたAscoflex40を浸透するのに必要となる時間に匹敵するものであり、かつCiba(登録商標)Latexia(登録商標)302で被覆されたAscoflex40を浸透するのに必要となる時間よりも長い。
【0104】
図3から見て取れるのは、赤く染めた油が実施例1cの被覆組成物により被覆されたAscoflex40を浸透するのに必要となる時間は、コントロールの被覆組成物により被覆されたAscoflex40を浸透するのに必要となる時間よりも、ずっと長いということである。
【0105】
ボート試験
ボート試験とは、トウモロコシ油に対する紙又は板紙の耐性を測定する試験である。正方形の紙をそれぞれの側から1cm折りたたむむと、「ボート」のように見える。トウモロコシ油を1滴(赤く染めた油を1%含有)、紙の表面又は縁のどちらかに加える。この油が紙を浸透するのに必要な時間を記録する。油が紙を浸透するのに必要となる時間が長ければ、紙の耐油性は相応して高い。
【0106】
その結果は、図4(表面)及び図5(縁)に示されている。
【0107】
図4から見て取れるのは、赤く染めた油が実施例1cの被覆組成物により被覆されたM−real board及びAscoflex40をそれぞれ浸透するのに必要となる時間は、比較例2の被覆組成物により被覆されたたM−real board及びAscoflex40をそれぞれ浸透するのに必要となる時間に匹敵するものであり、かつ比較例1若しくはCiba(登録商標)Latexia(登録商標)302の被覆組成物で被覆されたM−real board及びAscoflex40をそれぞれ浸透するのに必要となる時間よりも、ずっと長いということである。
【0108】
図5から見て取れるのは、赤く染めた油が実施例1cの被覆組成物により被覆されたAscoflex40を浸透するのに必要となる時間は、コントロールの被覆組成物により被覆されたAscoflex40を浸透するのに必要となる時間よりも、ずっと長いということである。
【0109】
ブロッキング試験(ASTM D918−99)
ブロッキング試験とは、紙又は板紙のブロッキング性を測定する試験である。二枚の紙を相互に重ねて(表−表、または表−裏)置き、これら二枚の紙に対して60℃で3.4kPaの圧力を掛ける。この処置後に、紙相互のスティッキングを測定し、0〜3に格付けする。0はスティッキングが無いことを示し、ブロッキングは良好である。3は完全なスティッキングを示し、ブロッキングは不良である。
【0110】
この結果は、図6(表−表)、及び図7(表−裏)に示されている。
【0111】
図6及び7から見て取れるように、実施例1cの被覆組成物で被覆されたAscoflex40及びM−real boardは、ブロッキングを全く示さない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)Tgが−15〜35℃の範囲のポリマーを含有するコア(前記ポリマーは、少なくとも1の共役ジエンモノマーを含有するモノマー混合物から形成される)、及び
(ii)Tgが40〜180℃の範囲のポリマーを含有するシェル(前記ポリマーは、少なくとも1の芳香族ビニルモノマーを含有するモノマー混合物から形成される)
を含み、この際に前記コアポリマーのゲル含分が62%未満である、コアシェルポリマー。
【請求項2】
コアポリマーを形成するモノマー混合物中の前記共役ジエンモノマー(又はこれらの混合物)の量が、最大60%である、請求項1に記載のコアシェルポリマー。
【請求項3】
コアポリマーを形成するモノマー混合物が、さらに少なくとも1の芳香族ビニルモノマーを含有する、請求項1又は2に記載のコアシェルポリマー。
【請求項4】
コアポリマーを形成するモノマー混合物が、さらに少なくとも1のα,β−不飽和カルボン酸を含有する、請求項3に記載のコアシェルポリマー。
【請求項5】
シェルポリマーのゲル含分が20%未満である、請求項1から4までのいずれか1項に記載に記載のコアシェルポリマー。
【請求項6】
コアポリマー/シェルポリマーの質量比が、30/70〜95/5の範囲である、請求項1から5までのいずれか1項に記載に記載のコアシェルポリマー。
【請求項7】
(i)Tgが−15〜35℃の範囲のポリマーを含有するコア(前記ポリマーは、少なくとも1の共役ジエンモノマーを含有するモノマー混合物から形成される)、及び
(ii)Tgが40〜180℃の範囲のポリマーを含有するシェル(前記ポリマーは、少なくとも1の芳香族ビニルモノマーを含有するモノマー混合物から形成される)
を含むコアシェルポリマーと、水性媒体とを含み、この際に前記コアポリマーのゲル含分が62%未満である、被覆組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の被覆組成物の製造方法であって、
i)水性媒体を準備する工程と、
ii)コアポリマーを形成するモノマー混合物を工程i)の水性媒体に供給して、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させてコアポリマーを形成する工程と、
iii)シェルポリマーを形成するモノマー混合物を工程ii)のコアポリマーに供給し、開始剤の存在下、このモノマー混合物を重合させて本発明の被覆組成物を形成する工程と、
を含む、請求項7に記載の被覆組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の被覆組成物の製造方法であって、
i)コアポリマーを準備する工程と、
ii)シェルポリマーを準備する工程と、
iii)水性媒体の存在下で、工程i)のコアポリマーと、工程ii)のシェルポリマーとを混合する工程と、
を含む、請求項7に記載の被覆組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項7の被覆組成物で基材を塗布することによって、基材に高められた耐油性/耐グリース性を付与するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−534750(P2010−534750A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518611(P2010−518611)
【出願日】平成20年7月21日(2008.7.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059494
【国際公開番号】WO2009/016053
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】