説明

コアシェル型トナーの製造方法とコアシェル型トナー及び画像形成方法

【課題】無機微粒子がトナー粒子表面に均一に存在し外添剤の脱離が抑制され、キャリアの汚染を防ぐことが出来、帯電量のバラツキがなく、それによりトナーの飛び散りを防止することが出来るコアシェル型トナー製造方法とコアシェル型トナー、それを用いた画像形成方法を提供する。
【解決手段】少なくとも下記1〜4の工程を経て製造されることを特徴とするコアシェル型トナーの製造方法。
1:コアシェル型トナーのコア粒子を作製する工程
2:無機微粒子をモノマーに分散させ、これを界面活性剤水溶液に分散する工程
3:上記モノマーを重合させシェル層用樹脂粒子を作製する工程
4:前記コア樹脂粒子表面をシェル層用樹脂粒子で被覆し、シェル層を形成する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル型トナー製造方法とコアシェル型トナー、それを用いた画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成方法として、現在いろいろの方法が知られているが、いずれも光導電性物質を利用した感光体上に電気的潜像を形成する工程(露光工程)と、該潜像をトナーを用いて現像する現像工程を含むものである。その後、一般的には紙等の転写材(記録媒体)にトナー画像を転写する転写工程と、定着ローター等を用いて熱により、前記トナー画像を定着する定着工程とを有している。
【0003】
上記のような電子写真法に用いられるトナーは、通常、樹脂成分と着色剤を主成分として含むトナー粒子により構成されている。
【0004】
さらに、今日トナー粒子は、粒子表面に、殆ど例外なくシリカ、アルミナ、チタニア等の微粒子が外添剤として添加され、外添剤はトナーに流動性を付与し、トナーの帯電性を制御するために、トナー製造の最終工程で添加されるものとされてきた(例えば特許文献1)。
【0005】
このような外添剤は、一般に、粉体用混合機として用いられるヘンシェルミキサーや、表面改質機として用いられるハイブリダイザーなどを用いて、トナー粒子と混合することにより外添される。しかしながら、このような方法で外添剤が付与されたトナーは、外添剤の機能を十分に発揮できるものではなかった。
【0006】
すなわち、上記のような混合機を用いて、トナー粒子と外添剤を混合しても、外添剤のトナー粒子への付着量が不十分であったり、また、いったんトナー粒子に付着した外添剤も、トナー粒子から脱離しやすく、トナー粒子表面に留めておくことが困難であった。
【0007】
このように、トナー粒子に附着しなかった外添剤や、トナー粒子から脱離した外添剤は、トナー中において遊離外添剤として存在する。遊離外添剤は、凝集体を形成しやすい。このような凝集体により、現像装置内が汚染されたり、トナーが接する部材の表面に傷をつけてしまう等が原因となり、形成されるトナー画像の画質が悪化するといった問題があった。また、外添剤のトナー粒子への付着量を十分なものとするため、混合時間を長くしたり、より大きなせん断力をかけると、トナー粒子の変形、破断、などを引き起こし、トナー粒子同士の凝集が起こり易くなる等の不具合が生じるという問題点があった。
【0008】
さらに上記のような混合方法では、外添剤がトナー粒子の表面付近の一部において偏析してしまい、外添剤をトナー粒子の表面に均一に付着させることが難しかった。
【0009】
このような問題点を解決するためにトナー製造の凝集時にシリカを添加する方法が知られているが(特許文献2参照)、この方法ではシリカ同士が凝集してしまい、画質に問題が生じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−137348号公報
【特許文献2】特開2008−89919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記課題を解決するために成された。
【0012】
即ち、本発明の目的は、無機微粒子がトナー粒子表面に均一に存在し外添剤の脱離が抑制され、キャリアの汚染を防ぐことが出来、帯電量のバラツキがなく、それによりトナーの飛び散りを防止することが出来るコアシェル型トナー製造方法とコアシェル型トナー、それを用いた画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の発明者が鋭意検討した結果、本発明の目的は、下記発明構成を採ることにより達成されることがわかった。
【0014】
(1)
少なくとも下記1〜4の工程を経て製造されることを特徴とするコアシェル型トナーの製造方法。
【0015】
1:コアシェル型トナーのコア粒子を作製する工程
2:無機微粒子をモノマーに分散させ、これを界面活性剤水溶液に分散する工程
3:上記モノマーを重合させシェル層用樹脂粒子を作製する工程
4:前記コア粒子表面をシェル層用樹脂粒子で被覆し、シェル層を形成する工程
(2)
前記無機微粒子が数平均粒子径5nm以上200nm以下のシリカ粒子であることを特徴とする(1)記載のコアシェル型トナーの製造方法。
【0016】
(3)
前記無機微粒子の表面が親水性処理してあることを特徴とする(1)又は(2)記載のコアシェル型トナーの製造方法。
【0017】
(4)
前記シェル層用樹脂粒子に含まれる結着樹脂の重量平均分子量(Mw)が10,000以上、100,000以下であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項記載のコアシェル型トナーの製造方法。
【0018】
(5)
(1)〜(4)のいずれか1項記載のコアシェル型トナーの製造方法により製造されたことを特徴とするコアシェル型トナー。
【0019】
(6)
(5)記載のコアシェル型トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、無機微粒子がトナー粒子表面に均一に存在し外添剤の脱離が抑制され、キャリアの汚染を防ぐことが出来、帯電量のバラツキがなく、それによりトナーの飛び散りを防止することが出来るコアシェル型トナー製造方法とコアシェル型トナー、それを用いた画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のコアシェル型トナーの断面模式図。
【図2】本発明に係わる一例の画像形成装置の概要断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明につき、さらに詳しく説明する。
【0023】
本発明においては、コアシェル型トナーのシェル層用結着樹脂重合前に無機微粒子をモノマー中に分散させるため、無機微粒子が該結着樹脂中に、凝集することなく均一に分散した状態で保持される。図1は本発明のコアシェル型トナーを模式的に図示した断面図である。コアシェル型トナー1のコア粒子4の表面を被覆しているシェル層2に無機微粒子3が均等に分散されている。
【0024】
この様にシェル層用結着樹脂をコア粒子表面に被覆することでシェル層に均一に無機微粒子を分散させることが出来る。この無機微粒子が外添剤と同様のはたらきをするため、トナー帯電時の帯電量分布がシャープになり、画像形成時の飛び散りなどが抑えられて画質が向上すると考えられる。また、無機微粒子が樹脂中にしっかり保持されているため、トナー表面からの脱離が起こりにくいためキャリア汚染を起こしにくくなると考えられる。結果として現像剤の耐久性の向上が実現される。特にモノマーに無機微粒子を分散機にて分散された液滴を滴下しながら、重合することでより高分散状態の樹脂を作製することが可能となった。
【0025】
この様な方法で、無機微粒子をシェル層に含有させると顕著な効果が得られることは、知られていないことであり、例え添加時に分散機等で強制的に分散しても、例えば、重合工程や、シェル用樹脂粒子をコア粒子上に被覆する工程で分離し、無機微粒子同士が合体してしまうのではないかと懸念された。しかし、実際には均一な分散状態は、トナーシェル層作製まで保持されることが判明した。
【0026】
なお、後記する如く無機微粒子の表面を親水化処理することは、本発明のコアシェル型トナーを安定的に造る上で有効な手段である。
【0027】
〔無機微粒子〕
本発明における無機微粒子とは、通常の外添剤として使用されているものである。好ましくはシリカ、チタニアやアルミナが挙げられ、トナーの表層で外添剤として機能する必要があるため、一次数平均粒子径は5nm以上100nm以下が好ましい。
【0028】
具体的には、シリカ微粒子として、例えば日本アエロジル社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
【0029】
チタン微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
【0030】
アルミナ微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0031】
シェル用樹脂の対する無機微粒子の添加比率は、シェル用樹脂質量100部当たり無機微粒子0.5〜50部の範囲であることが多く、無機微粒子の外添剤としての効果が発輝できる量比であればよい。
【0032】
無機微粒子の分散機としては、一定以上のせん断力を有するものが必要であり、無機微粒子を安定的に分散させないと重合時以降、無機微粒子が沈降する恐れがあり、本発明の効果を減ずる可能性がある。具体的にはホモミキサー、超音波、マントンゴーリン等の強い撹拌または超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
【0033】
(無機微粒子の粒径測定)
無機微粒子の数平均一次粒子径は、具体的には下記の方法によって測定されるものである。
【0034】
走査型電子顕微鏡にてトナーの3万倍写真を撮影し、この写真画像をスキャナーにより取り込む。画像処理解析装置LUZEX AP(ニレコ製)にて、該写真画像のトナー表面に存在する外添剤について2値化処理し、外添剤1種につき100個についての水平方向フェレ径を算出、その平均値を数平均一次粒子径とする。
【0035】
また、無機微粒子が、単体で得られた場合においてはマイクロトラックUPA150(日機装社製)にて測定しても良い。
【0036】
測定方法は、無機微粒子0.5gを100ml容量のビーカーに入れ、界面活性剤を数滴滴下し、イオン交換水50mlを加え、超音波ホモジナイザーUS−150Tを用いて5分間分散させた後、前述した装置を用いて算出される個数平均径を無機微粒子の数平均一次粒子径とする。
【0037】
前記無機微粒子とは、表面に親水化処理をしたシリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ等が挙げられるが、中でもシリカが好ましい。さらにそのシリカは、湿式法で製造されることが好ましい。湿式法としては特に限定されるものではなく、沈降法またはゾルゲル法が挙げられる。湿式法で製造されるシリカは粒径分布が狭く、さらに形状が真球に近い球状のものが得られる。また湿式法の特徴として、従来の乾式法で得られるものに比べて比表面積が大きくなることから、前述の結着樹脂との付着力向上効果を得ることができる。また、該無機微粒子の表面処理法としては、疎水化処理を行わないヒュームドシリカが好ましい。
【0038】
〔コアシェル型トナーの製造方法〕
次に、本発明に係る電子写真用のコアシェル型トナーの製造方法について説明する。
【0039】
本発明においてシェル層用樹脂粒子の重量平均粒径(分散粒子径)は、10〜1000nmの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは30〜300nmの範囲がよい。
【0040】
この重量平均粒径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定された値である。
【0041】
本発明に係るトナーを製造する場合、先ず、樹脂粒子と着色剤粒子とを会合融着させてコアとなる粒子(以下コア粒子という)を作製する。次に、コア粒子分散液中に樹脂粒子を添加して、コア粒子表面にこの樹脂粒子を凝集、融着させることによりコア粒子表面を被覆してコアシェル構造を有する着色粒子を作製する。このように、本発明に係るトナーは、各種製法で作製されたコア粒子の分散液中に、樹脂粒子を添加してコア粒子に融着させてコアシェル型トナーを作製するものである。
【0042】
そして、シェル化を行う時に最終的にトナーの形状制御を行って適切な形状を付与させるものであるが、それには粒径が揃った均一な形状を有するコア粒子を作製するのが最も重要である。この様なコア粒子であれば、その表面にシェルを形成する樹脂微粒子が均一に付着し、結果として極めて均一な膜厚を有するトナー粒子を作製することが出来る。
【0043】
本発明に係るトナーを構成するコア粒子は、樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集、融着させる製法により作製される。コア粒子の形状は、たとえば、凝集・融着工程の加熱温度、第1の熟成工程の加熱温度と時間を制御することにより制御される。
【0044】
この中で、第1の熟成工程における時間制御が最も効果的である。熟成工程は、会合粒子の円形度を調整することを目的としていることから、この時間を制御することにより、目的の円形度に到達する。
【0045】
本発明のコアシェル型トナーは、以下のような工程を経て作製されるものである。
【0046】
〔コア粒子を作製する工程〕
(1)ラジカル重合性単量体を溶解或いは分散した溶解/分散液を造る
(2)樹脂粒子の分散液を調製するために単量体を重合する
(3)水系媒体中で樹脂粒子と着色剤粒子を凝集、融着させてコア粒子(会合粒子)を得る凝集・融着
(4)会合粒子を熱エネルギーにより熟成して形状を調整する第1の熟成
〔無機微粒子をモノマーに分散させ、これを界面活性剤水溶液に分散する工程〕
(5)無機微粒子をモノマーに分散させて、これを界面活性剤水溶液であるコア粒子分散液中に分散させる
〔モノマーを重合させシェル層用樹脂粒子を作製する工程〕
(6)モノマー粒子を重合させて作製された、シェル層用樹脂粒子を作製する
〔コア粒子の表面をシェル層用樹脂粒子で被覆し、シェル層を形成する工程〕
(7)コア粒子表面にシェル層用樹脂粒子を凝集、融着させてコアシェル構造の着色粒子を形成するシェル化工程
(8)コアシェル構造の着色粒子を熱エネルギーにより熟成して、コアシェル構造の着色粒子の形状を調整する第2の熟成工程
(9)冷却された着色粒子分散液から着色粒子を固液分離し、当該着色粒子から界面活性剤などを除去してトナー粒子を得る洗浄工程(尚、トナー粒子の集合体をトナーと呼ぶ)
〔その後の工程〕
(10)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程
必要に応じて乾燥工程の後に、乾燥処理されたトナー粒子に更に外添剤を添加する工程をいれてもよい)
上記各工程について、次にその代表的な例につき詳述する。
【0047】
〔コア粒子を作製する工程〕
(1)溶解/分散工程
この工程では、ラジカル重合性単量体(モノマー)に必要に応じて離型剤化合物等を溶解させ、ラジカル重合性単量体溶液を調製する工程である。
【0048】
(2)重合工程
この重合工程の好適な一例においては、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体中に、ワックスを溶解或いは分散含有したラジカル重合性単量体溶液を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで水溶性のラジカル重合開始剤を添加し、当該液滴中において重合反応を進行させる。尚、前記液滴中に油溶性重合開始剤が含有されていてもよい。このような重合工程においては、機械的エネルギーを付与して強制的に乳化(液滴の形成)処理が必須となる。かかる機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサー、超音波、マントンゴーリンなどの強い撹拌又は超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
【0049】
この重合工程により、ワックス等と結着樹脂とを含有する樹脂微粒子が得られる。かかる樹脂粒子は、着色された微粒子であってもよく、着色されていない微粒子であってもよい(前記、工程の説明ではこのケースについて記載した)。着色された樹脂粒子は、着色剤を含有する単量体組成物を重合処理することにより得られる。又、着色されていない樹脂粒子を使用する場合には、後述する凝集・融着工程において、樹脂粒子の分散液に、着色剤粒子の分散液を添加し、樹脂粒子と着色剤粒子とを融着させることで着色粒子とすることができる。
【0050】
(3)凝集・融着工程
前記融着工程における凝集、融着の方法としては、重合工程により得られた樹脂粒子(着色樹脂粒子でない場合は、着色剤粒子も加える)を用いた塩析/融着法が好ましい。また、当該凝集・融着工程においては、樹脂粒子や着色剤粒子とともに、離型剤粒子や荷電制御剤などの添加剤粒子も併せて凝集、融着させることができる。
【0051】
尚、ここでいう「塩析/融着」とは、凝集と融着を並行して進め、所望の粒子径まで成長したところで、凝集停止剤を添加して粒子成長を停止させ、さらに、必要に応じて粒子形状を制御するための加熱を継続して行うことをいう。
【0052】
前記凝集・融着工程における「水系媒体」とは、主成分(50質量%以上)が水からなるものをいう。ここに、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶媒を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0053】
着色剤粒子は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、水中で界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われる。着色剤の分散処理に使用する分散機は特に限定されないが、好ましくは超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリンや圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、サンドグラインダー、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。又、使用される界面活性剤としては、後述の界面活性剤と同様のものを挙げることができる。尚、着色剤粒子は表面改質されていてもよい。着色剤の表面改質法は、溶媒中に着色剤を分散させ、その分散液中に表面改質剤を添加し、この系を昇温することにより反応させる。反応終了後、着色剤を濾別し、同一の溶媒で洗浄濾過を繰り返した後、乾燥することにより、表面改質剤で処理された着色剤(顔料)が得られる。
【0054】
好ましい凝集、融着方法である塩析/融着法は、樹脂微粒子と着色剤微粒子とが存在している水中に、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩及び3価の塩等からなる塩析剤を臨界凝集濃度以上の凝集剤として添加し、次いで、前記樹脂粒子のガラス転移点以上であって、且つ前記混合物の融解ピーク温度(℃)以上の温度に加熱することで塩析を進行させると同時に融着を行う工程である。ここで、塩析剤であるアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、アルカリ金属として、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられ、好ましくはカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムが挙げられる。
【0055】
凝集、融着を塩析/融着で行う場合、塩析剤を添加した後に放置する時間をできるだけ短くすることが好ましい。この理由として明確では無いが、塩析した後の放置時間によって、粒子の凝集状態が変動し、粒径分布が不安定になったり、融着させたトナーの表面性が変動したりする問題が発生する。また、塩析剤を添加する温度としては少なくとも樹脂粒子のガラス転移温度以下であることが必要である。この理由としては、塩析剤を添加する温度が樹脂粒子のガラス転移温度以上であると樹脂粒子の塩析/融着は速やかに進行するものの、粒径の制御を行うことができず、大粒径の粒子が発生したりする問題が発生する。この添加温度の範囲としては樹脂のガラス転移温度以下であればよいが、一般的には5〜55℃、好ましくは10〜45℃である。
【0056】
また、塩析剤を樹脂微粒子のガラス転移温度以下で加え、その後にできるだけ速やかに昇温し、樹脂微粒子のガラス転移温度以上であって、かつ、前記混合物の融解ピーク温度(℃)以上の温度に加熱する。この昇温までの時間としては1時間未満が好ましい。更に、昇温を速やかに行う必要があるが、昇温速度としては、0.25℃/分以上が好ましい。上限としては特に明確では無いが、瞬時に温度を上げると塩析が急激に進行するため、粒径制御がやりにくいという問題があり、5℃/分以下が好ましい。この融着工程により、樹脂微粒子及び任意の微粒子が塩析/融着されてなる会合粒子(コア粒子)の分散液が得られる。
【0057】
(4)第1の熟成工程
そして、本発明では、凝集・融着工程の加熱温度や特に第1の熟成工程の加熱温度と時間の制御をすることにより、粒径が一定で分布が狭く形成したコア粒子表面が平滑だが均一な形状を有するものになるように制御する。具体的には、凝集・融着工程で加熱温度を低めにして樹脂粒子同士の融着の進行を抑制させて均一化を促進させ、第1の熟成工程で加熱温度を低めに、かつ、時間を長くしてコア粒子の表面が均一な形状のものに制御する。
【0058】
〔無機微粒子をモノマーに分散させ、これを界面活性剤水溶液に分散する工程〕
(5)無機微粒子をモノマーに分散させて、これを界面活性剤水溶液であるコア粒子分散液中に分散させる工程
無機微粒子の分散機としては、一定以上のせん断力を有するものが必要であり、無機微粒子を安定的に分散させないと重合時以降、無機微粒子が沈降する恐れがあり、本発明の効果を減ずる可能性がある。具体的にはホモミキサー、超音波、マントンゴーリン等の強い撹拌または超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
【0059】
〔コア粒子の表面をシェル層用樹脂粒子で被覆し、シェル層を形成する工程〕
(6)のシェル化工程
シェル化工程では、コア粒子分散液中にシェル層用の樹脂粒子分散液を添加してコア粒子表面にシェル層用の樹脂粒子を凝集、融着させ、コア粒子表面にシェル層用の樹脂粒子を被覆させて着色粒子を形成する。
【0060】
具体的には、コア粒子分散液は上記凝集・融着工程及び第1の熟成工程での温度を維持した状態でシェル用樹脂粒子の分散液を添加し、加熱撹拌を継続しながら数時間かけてゆっくりとシェル用樹脂粒子をコア粒子表面に被覆させて着色粒子を形成する。加熱撹拌時間は、1時間〜7時間が好ましく、3時間〜5時間が特に好ましい。
【0061】
〔トナーの最終形状を調整する工程〕
(7)の第2熟成工程
シェル化により着色粒子が所定の粒径になった段階で塩化ナトリウムなどの停止剤を添加して粒子成長を停止させ、その後もコア粒子に付着させたシェル用樹脂粒子を融着させるために数時間加熱撹拌を継続する。そして、シェル化工程ではコア粒子表面に厚さが100〜300nmのシェルを形成する。このようにして、コア粒子表面に樹脂粒子を固着させてシェルを形成し、丸みを帯び、しかも形状の揃った着色粒子が形成される。
【0062】
本発明では、第2の熟成工程の時間を長めに設定したり、熟成温度を高めに設定することで着色粒子の形状を真球方向に制御することが可能である。
【0063】
(8)及び(9)の冷却工程・固液分離・洗浄工程
この工程は、前記着色粒子の分散液を冷却処理(急冷処理)する工程である。冷却処理条件としては、1〜20℃/minの冷却速度で冷却する。冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
【0064】
この固液分離・洗浄工程では、上記の工程で所定温度まで冷却された着色粒子の分散液から当該着色粒子を固液分離する固液分離処理と、固液分離されたトナーケーキ(ウエット状態にある着色粒子をケーキ状に凝集させた集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。ここに、濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
【0065】
〔その後の工程〕
(10)乾燥工程
この工程は、洗浄処理されたケーキを乾燥処理し、乾燥された着色粒子を得る工程である。この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などを使用することが好ましい。乾燥された着色粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。尚、乾燥処理された着色粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。これにより作製された粒子がトナー粒子である。
【0066】
外添処理工程は、乾燥されたトナー粒子に必要に応じ外添剤を混合する工程である。
【0067】
外添剤の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル等の機械式の混合装置を使用することができる。
【0068】
〔トナー〕
本発明のトナーは、コアシェル型トナーであり、質量平均粒径が3.0〜8.0μmの粒度分布が小さい均一な大きさのものが望ましい。具体的には、通常の方法で測定した円形度として0.940〜0.98、好ましくは0.95〜0.97のものがよい。理由は通常のトナーと同様であり、低円形度では中抜けが起こりやすく、あまりに高円形度ではクリーニング不良を起こす恐れがあるためである。
【0069】
又、トナーシェル比率(シェルの樹脂質量/全トナー樹脂質量×100)が3〜20%が望ましい。この比率があまりに高いとシェル用樹脂は一般的に高ガラス転移点(Tg)、高軟化点であるため、定着不良を起こす恐れがあるためである。
【0070】
尚、後記する如く、本発明のトナー中には、必要に応じて通常のトナーに含有させる離型剤、荷電制御剤等を含有させることが出来る。
【0071】
トナー粒子の体積基準のメディアン径は、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出することができる。
【0072】
本発明のトナーを構成するトナー粒子は、転写効率の向上の観点から、平均円形度が0.930〜1.000であることが好ましく、より好ましくは0.950〜0.995である。
【0073】
トナー粒子の平均円形度については、「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定することができる。具体的には、トナー(トナー粒子)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−2100」(Sysmex社製)により、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3,000〜10,000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式(T)に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出される。
【0074】
式(T):平均円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子役影像の周囲長)
〔本発明で用いられるトナー素材等〕
(1)結着樹脂
コア粒子を形成する樹脂Aおよびシェル層を形成する樹脂Bは、スチレンーアクリル系共重合樹脂が好ましい。また、コア部を形成する樹脂を作製する単量体には、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の共重合体のガラス転移温度(Tg)を引き下げる重合性単量体を共重合することが好ましい。また、シェル層を形成する樹脂を作製するための単量体には、スチレン、メチルメタクリレート、メタクリル酸等の共重合体のガラス転移温度(Tg)を引き上げる重合性単量体を共重合することが好ましい。
【0075】
本発明に係るトナーを構成する樹脂についてさらに詳しく説明する。
【0076】
本発明に係るトナーのコアやシェルの構成に各々用いられる樹脂としては、下記に記載のような重合性単量体を重合して得られた重合体を用いることが出来る。
【0077】
本発明に係る樹脂は少なくとも1種の重合性単量体を重合して得られた重合体を構成成分として含むものであるが、前記重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの様なスチレンあるいはスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等の、アクリル酸エステル誘導体、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン系ビニル類、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体がある。これらビニル系単量体は単独あるいは組み合わせて使用することができる。
【0078】
また、樹脂を構成する重合性単量体としてイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることがさらに好ましい。例えば、カルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基等の置換基を単量体の構成基として有するもので、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマール酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0079】
さらに、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等の多官能性ビニル類を使用して架橋構造の樹脂とすることもできる。
【0080】
本発明のシェル用樹脂の質量平均分子量(Mw)は、10,000から100,000が適正ある。
【0081】
樹脂の分子量測定に当たっては、標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。具体的には、装置「HLC−8220」(東ソー社製)およびカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流し、測定試料としてドメイン樹脂(ドメイン樹脂による樹脂粒子)を室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出される。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
【0082】
(2)着色剤
本発明のトナーに使用する着色剤としてはカーボンブラック、磁性体、染料、顔料等を任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が使用される。磁性体としては鉄、ニッケル、コバルト等の強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイト等の強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理する事により強磁性を示す合金、例えばマンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−錫等のホイスラー合金と呼ばれる種類の合金、二酸化クロム等を用いる事ができる。
【0083】
染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いる事ができ、またこれらの混合物も用いる事ができる。顔料としてはC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同93、同94、同138、同156、同158、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同60等を用いる事ができ、これらの混合物も用いる事ができる。数平均一次粒子径は種類により多様であるが、概ね10〜200nm程度が好ましい。
【0084】
着色剤の添加方法としては、樹脂微粒子を凝集剤の添加にて凝集させる段階で添加し重合体を着色する。なお、着色剤は表面をカップリング剤等で処理して使用することができる。
【0085】
(3)ワックス(離型剤)
本発明に係るトナーに使用可能なワックスとしては、従来公知のものが挙げられる。具体的には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンジベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
【0086】
ワックスの融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点を上記範囲内にすることにより、トナーの耐熱保存性が確保されるとともに、低温で定着を行う場合でもコールドオフセットなどを起こさずに安定したトナー画像形成が行える。また、トナー中のワックス含有量は、1質量%〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは5質量%〜20質量%である。
【0087】
上記トナーの製造方法で使用可能な重合開始剤、連鎖移動剤及び界面活性剤について説明する。
【0088】
(4)本発明に使用可能なラジカル重合開始剤
本発明に係るトナーを構成するコアやシェルを構成する樹脂は、前述の重合性単量体を重合して生成されるが、本発明に使用可能なラジカル重合開始剤には以下のものがある。具体的には、油溶性重合開始剤としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤などを挙げられる。
【0089】
また、乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素等を挙げることができる。
【0090】
複合樹脂粒子を構成する樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。
【0091】
連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく、例えばオクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、四臭化炭素およびα−メチルスチレンダイマー等が使用される。
【0092】
(5)分散安定剤
又、反応系中に重合性単量体等を適度に分散させておくために分散安定剤を使用することも可能である。分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等を挙げることができる。さらに、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、エチレンオキサイド付加物、高級アルコール硫酸ナトリウム等の界面活性剤として一般的に使用されているものを分散安定剤として使用することができる。
【0093】
本発明に用いられる界面活性剤について説明する。
【0094】
前述のラジカル重合性単量体を使用して重合を行うためには、界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行う必要がある。この際に使用することのできる界面活性剤としては特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適なものの例として挙げることができる。
【0095】
イオン性界面活性剤としては、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
【0096】
また、ノニオン性界面活性剤も使用することができる。具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等を挙げることができる。
【0097】
〔画像形成方法、画像形成装置〕
本発明のトナーは、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成方法、画像形成装置に好適に用いられる。
【0098】
図1は、カラー画像形成装置の一例を示す断面構成図である。
【0099】
このカラー画像形成装置10は、タンデム型フルカラー複写機と称せられるもので、自動原稿送り装置13と、原稿画像読み取り装置14と、複数の露光手段13Y、13M、13C、13Kと、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、中間転写体ユニット17と、給紙手段15及び定着手段124とからなる。
【0100】
画像形成装置の本体12の上部には、自動原稿送り装置13と原稿画像読み取り装置14が配置されており、自動原稿送り装置13により搬送される原稿dの画像が原稿画像読み取り装置14の光学系により反射・結像され、ラインイメージセンサCCDにより読み込まれる。
【0101】
ラインイメージセンサCCDにより読み取られた原稿画像を光電変換されたアナログ信号は、図示しない画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、露光手段13Y、13M、13C、13Kに各色毎のデジタル画像データとして送られ、露光手段13Y、13M、13C、13Kにより対応する第1の像担持体としてのドラム状の感光体11Y、11M、11C、11Kに各色の画像データの潜像を形成する。
【0102】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、垂直方向に縦列配置されており、感光体11Y、11M、11C、11Kの図示左側方にローラ171、172、173、174を巻回して回動可能に張架された半導電性でシームレスベルト状の第2の像担持体である本発明の中間転写体(以下、中間転写ベルトともいう)170が配置されている。
【0103】
そして、本発明の中間転写ベルト170は図示しない駆動装置により回転駆動されるローラ171を介し矢印方向に駆動されている。
【0104】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、感光体11Yの周囲に配置された帯電手段12Y、露光手段13Y、現像手段14Y、1次転写手段としての1次転写ローラ15Y、クリーニング手段16Yを有する。
【0105】
マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、感光体11M、帯電手段12M、露光手段13M、現像手段14M、1次転写手段としての1次転写ローラ15M、クリーニング手段16Mを有する。
【0106】
シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、感光体11C、帯電手段12C、露光手段13C、現像手段14C、1次転写手段としての1次転写ローラ15C、クリーニング手段16Cを有する。
【0107】
黒色画像を形成する画像形成部10Kは、感光体11K、帯電手段12K、露光手段13K、現像手段14K、1次転写手段としての1次転写ローラ15K、クリーニング手段16Kを有する。
【0108】
トナー補給手段141Y、141M、141C、141Kは、現像装置14Y、14M、14C、14Kにそれぞれ新規トナーを補給する。
【0109】
ここで、1次転写ローラ15Y、15M、15C、15Kは、図示しない制御手段により画像の種類に応じて選択的に作動され、それぞれ対応する感光体11Y、11M、11C、11Kに中間転写ベルト170を押圧し、感光体上の画像を転写する。
【0110】
この様にして、画像形成部10Y、10M、10C、10Kにより感光体11Y、11M、11C、11K上に形成された各色の画像は、1次転写ローラ15Y、15M、15C、15Kにより、回動する中間転写ベルト170上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。
【0111】
即ち、中間転写ベルトは感光体の表面に担持されたトナー画像をその表面に1次転写され、転写されたトナー画像を保持する。
【0112】
又、給紙カセット151内に収容された記録媒体としての転写材Pは、給紙手段15により給紙され、次いで複数の中間ローラ122A、122B、122C、122D、レジストローラ123を経て、2次転写手段としての2次転写ローラ117まで搬送され、2次転写ローラ117により中間転写体上の合成されたトナー画像が転写材P上に一括転写される。
【0113】
即ち、中間転写体上に保持したトナー画像を被転写物の表面に2次転写する。
【0114】
ここで、2次転写手段6は、ここを転写材Pが通過して2次転写を行う時にのみ、転写材Pを中間転写ベルト170に圧接させる。
【0115】
カラー画像が転写された転写材Pは、定着装置124により定着処理され、排紙ローラ125に挟持されて機外の排紙トレイ126上に載置される。
【0116】
一方、2次転写ローラ117により転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した中間転写ベルト170は、クリーニング手段8により残留トナーが除去される。
【0117】
ここで、中間転写体は前述したような回転するドラム状のものに置き換えても良い。
【0118】
次に、中間転写ベルト170に接する1次転写手段としての1次転写ローラ15Y、15M、15C、15K、と、2次転写ローラ117の構成について説明する。
【0119】
1次転写ローラ15Y、15M、15C、15Kは、例えば外径8mmのステンレス等の導電性芯金の周面に、ポリウレタン、EPDM、シリコーン等のゴム材料に、カーボン等の導電性物質を分散させたり、イオン性の導電材料を含有させたりして、体積抵抗が1×10〜1×10Ω・cm程度のソリッド状態又は発泡スポンジ状態で、厚さが5mm、ゴム弾性率が20〜70°程度(アスカー弾性率C)の半導電弾性ゴムを被覆して形成される。
【0120】
2次転写ローラ117は、例えば外径8mmのステンレス等の導電性芯金の周面に、ポリウレタン、EPDM、シリコーン等のゴム材料に、カーボン等の導電性物質を分散させたり、イオン性の導電材料を含有させたりして、体積抵抗が1×10〜1×10Ω・cm程度のソリッド状態又は発泡スポンジ状態で、厚さが5mm、ゴム弾性率が20〜70°程度(アスカー弾性率C)の半導電弾性ゴムを被覆して形成される。
【0121】
〔転写材〕
本発明に用いられる転写材としては、トナー画像を保持する支持体で、通常画像支持体、転写材或いは転写紙といわれるものである。好ましくは薄紙から厚紙までの普通紙、アート紙やコート紙等の塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等の各種転写材を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0122】
以下、本発明の代表的実施態様を示し本発明をさらに説明する。しかし、無論、本発明の態様はこれに限定されるものではない。なお、文中「部」とは「質量部」を示す。
【0123】
〔コア粒子の作製〕
(コア粒子1の調製)
下記のように、第1段重合、第2段重合、次いで、第3段重合を行い、多層構造を有する「コア粒子1」を調製した。
【0124】
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5L(リットル)の反応容器に、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4部をイオン交換水3040部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)10部をイオン交換水400部に溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン532部、n−ブチルアクリレート200部、メタクリル酸68部、n−オクチルメルカプタン16.4部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することによって重合(第1段重合)を行い樹脂粒子を調製した。これを「樹脂粒子A1」とする。
【0125】
第1段重合で調製した「樹脂粒子A1」の質量平均分子量(Mw)は16,500であった。
【0126】
(2)第2段重合(中間層の形成)
撹拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン101.1部、n−ブチルアクリレート62.2部、メタクリル酸12.3部、n−オクチルメルカプタン1.75部からなるモノマー混合液に、離型剤として、パラフィンワックス「HNP−57」(日本精鑞社製)93.8部を添加し、90℃に加温して溶解させてモノマー溶液を調製した。
【0127】
一方、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム3部をイオン交換水1560部に溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、樹脂粒子A1の分散液である「樹脂粒子A1」を固形分換算で32.8部添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、前記ワックスのモノマー溶液を8時間混合分散させ、分散粒子径340nmを有する乳化粒子を含む分散液を調製した。
【0128】
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム6部をイオン交換水200部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱撹拌することにより重合(第2段重合)を行い樹脂粒子を得た。この樹脂粒子を「樹脂粒子A2」とする。第2段重合で調製した「樹脂粒子A2」のMwは23,000であった。
【0129】
(3)第3段重合(外層の形成)
上記のようにして得られた「樹脂粒子A2」に、過硫酸カリウム5.45部をイオン交換水220部に溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン293.8部、n−ブチルアクリレート154.1部、n−オクチルメルカプタン7.08部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合(第3段重合)を行った後、28℃まで冷却し、「コア部用樹脂粒子1」を得た。第3段重合で調製した「樹脂粒子A3」のMwは26,800であった。
【0130】
「コア部用樹脂粒子1」を構成する複合樹脂粒子(樹脂粒子)の体積平均粒径は125nmであった。又、この樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は28.1℃であった。
【0131】
ガラス転移温度は、DSC−7示差走査カロリーメーター(パーキンエルマー社製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラー(パーキンエルマー社製)を用いて、2nd Heatにおけるデータとした。
【0132】
〔シェル粒子の作製〕
(シェル層用樹脂粒子1の調製)
撹拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン548部、2−エチヘキシルアクリレート156部、メタクリル酸96部、n−オクチルメルカプタン16.5部からなる単量体混合液に、無機微粒子として、AEROSIL 150(日本アエロジル社製)80部を添加し、60℃に加温して無機微粒子の単量体混合溶液を調製した。
【0133】
一方、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4部をイオン交換水3040部に溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、前記無機微粒子のモノマー混合溶液を8時間混合分散させ、分散粒子径410nmを有する乳化粒子を含む分散液を調製した。
【0134】
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム10部をイオン交換水400部に溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後この系を75℃にて5時間にわたり加熱、撹拌することによって重合を行い「シェル層用樹脂粒子1」を調製した。シェル層用樹脂粒子のガラス転移点(Tg)は54.0℃であった。
【0135】
(シェル層用樹脂粒子2の調製)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lのステンレス釜(SUS釜)に、ドデシル硫酸ナトリウム8gをイオン交換水3Lに溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの速度で撹拌しながら、液温80℃に昇温した。
【0136】
この界面活性剤溶液に、過硫酸カリウム10gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を80℃とした後、下記単量体混合液を100分かけて滴下し、この系を80℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することにより重合を行い、シェル層用樹脂粒子2を調製した。
【0137】
スチレン 570部
n−ブチルアクリレート 165部
メタクリル酸 70部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 5.5部
〔トナー用母体粒子の作製〕
(着色剤粒子の分散液1の調製)
ドデシル硫酸ナトリウム90部をイオン交換水1600部に撹拌溶解した。この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「リーガル330」(キャボット社製)400部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エムテクニック社製)を用いて分散処理を行い、「着色剤粒子分散液1」を調製した。
【0138】
この「着色剤粒子分散液1」における着色剤粒子の粒子径を、電気泳動光散乱計(ELS−800:大塚電子社製)を用いて測定したところ、110nmであった。
【0139】
(トナー用母体粒子1の調製)
塩析/融着(会合・融着)工程(コア部の形成)
420部(固形分換算)の「コア部用樹脂粒子1」と、イオン交換水900部と、「着色剤粒子分散液1」200部とを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を取り付けた反応容器に入れて撹拌した。容器内の温度を30℃に調製した後、この溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9.0±0.2に調整した。
【0140】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物2部をイオン交換水1000部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて65℃まで昇温した。その状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、粒子の体積基準におけるメディアン径(D50)が6.3μmになった時点で、塩化ナトリウム40.2部をイオン交換水1000部に溶解した水溶液を添加して粒径成長を停止させ、更に、熟成処理として液温度70℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより融着を継続させ、「コア部1」を形成した。
【0141】
「コア部1」の円形度を「FPIA2100」(システックス社製)にて測定したところ0.920であった。
【0142】
(シェル層の形成(シェリング操作))
次いで、65℃において「シェル層用樹脂粒子1」を51.5部(固形分換算)添加し、さらに塩化マグネシウム・6水和物2部をイオン交換水1000部に溶解した水溶液を、10分間かけて添加した後、70℃(シェル化温度)まで昇温し、1時間にわたり撹拌を継続し、「コア部1」の表面に、「シェル層用樹脂粒子1」の粒子を融着させた後、75℃で所定の円形度まで熟成処理を行い、シェル層を形成させた。その後、塩化ナトリウム40.2部を加え、8℃/分の条件で30℃まで冷却し撹拌を停止した。
【0143】
(洗浄・乾燥工程)
上記工程にて生成した融着粒子をバスケット型遠心分離機「MARKIII型式番号60×40」(松本機械(株)製)で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで45℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥してトナー用母体粒子1を作製した。
【0144】
(トナー用母体粒子2の調製)
シェル層用樹脂粒子1の調製においてAEROSIL 150のかわりにAEROXIDE TiO P25を用いた以外はトナー用母体粒子1の作製と同様に操作してトナー用母体粒子2を作製した。
【0145】
(トナー用母体粒子3の調製)
シェル層用樹脂粒子1の調製においてAEROSIL 150のかわりにAEROSIL 130を用いた以外はトナー用母体粒子1の作製と同様に操作してトナー用母体粒子3を作製した。
【0146】
〔本発明外の比較用トナーの作製〕
(トナー用母体粒子4の調製)
〈樹脂H1(高分子量樹脂(架橋型ポリエステル樹脂)の合成)
50リットルの反応釜に、下記の組成の酸、アルコール成分、触媒等の原材料を入れて、常圧窒素気流下にて240℃で12時間反応を行った。その後、順次減圧し、10mmHg(1330kPa)で反応を続行した。反応はASTM E28−517に基づいて軟化点により追跡し、該軟化点が160℃に達した時点で反応を終了した。
【0147】
テレフタル酸 : 9.06質量部
イソフタル酸 : 3.90質量部
エチレングリコール : 2.54質量部
ネオペンチルグリコール: 4.26質量部
テトラブチルチタネート: 0.1質量部
エピクロン830 : 0.3質量部
大日本インキ化学工業製ビスフェノールF型エポキシ樹脂エポキシ当量170(g/eq)
カージュラE : 0.1質量部
(シェルジャパン製アルキルグリシジルエステル)エポキシ当量250(g/eq)
得られた重合体は、無色の固体であり、酸価10.0KOHmg/g、ガラス転移温度(Tg)64℃、軟化温度(T1/2)が176℃であった。また、重量平均分子量は210000であった。ただし、重量平均分子量はGPC測定装置(東ソー製HLC−8120GPC)によって、分離カラムとして東ソー製TSK−GEL G5000HXL・G4000HXL・G3000HXL・G2000HXLを組み合わせて使用し、カラム温度:40℃・溶媒:テトラヒドロフラン・溶媒濃度0.5質量%、フィルター:0.2μm・流量:1ml/minにて測定し標準ポリスチレンを用いて換算し分子量を求めた。また、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(島津製作所社製、DSC60−A)を用いて、測定温度領域:20〜150℃、昇温速度:6℃/min、試料質量:20mgの条件で、セカンドランの昇温時の曲線を、オンセット法により解析することにより求めた。重合体は、粉砕し、目開き2mmのふるいでふるい、粉体とした。
【0148】
シリカ微粒子(日本アエロジル社製、AEROSIL130):1200質量部と、ヘキサメチルジシラザン(HMDS):24質量部とを有機溶剤に混合し混合し、有機溶剤を蒸発させ100℃で十分乾燥させて、シリカ微粒子表面に疎水化処理をほどこした。該シリカ微粒子と、樹脂H1(粉末):2800質量部とを、ST/A0羽根をセットした20Lヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)へ投入し、翼先端速度:10m/秒で2分間撹拌し、混合物を得た。該混合物をオープンロール連続押し出し混練機(三井鉱山社製、ニーデックス MOS140−800)を用いて溶融混練し、シリカ含有マスターチップを得た。配合比率は、質量比で、シリカ微粒子:樹脂H1=30:70であった。
【0149】
次に、高速分散機(プライミクス社製、T.K.ホモデスパーMARKII2.5型翼)付属の3L円筒容器に、メチルエチルケトン:1050質量部を仕込み、撹拌下に、上記シリカ含有マスターチップ:700質量部を徐々に添加して、予備混合液を調製した後、該混合液をアイガーモーターミル(米国アイガー社製、M−1000)で混合を行い、微細化を行った。固形分含有量を40%に調製して、シリカ含有マスター溶液を調製した。
【0150】
次に、高速分散機(プライミクス社製、T.K.ロボミクス/T.K.ホモデスパー2.5型翼)付属の2L円筒容器(デスパー翼の翼径40mm)にメチルエチルケトン(希釈メチルエチルケトン):300質量部仕込み、撹拌下に、樹脂H1:200質量部を徐々に添加した。その後、温度を30〜50℃の範囲内、翼先端速度:7.5m/秒の撹拌条件下で、60分間かけて溶解・分散を行った。その後、シリカ含有マスター溶液:250質量部を添加して、さらに30分間撹拌を継続した。該樹脂溶液の組成は、シリカ微粒子:H1:MEK=30:270:450であった。その後、温度を40℃以下に下げて1規定アンモニア水:72質量部を添加した後、撹拌条件を、翼先端速度:7.5m/秒から、翼先端速度:14.65m/秒に調整し、該撹拌下に水:886質量部を、20質量部/分で滴下することにより、シリカ含有樹脂分散液SS−1を得た。乳化後、また得られたシリカ含有樹脂分散液SS−1の固形分含有量は17.31%で、固形分の組成は、シリカ微粒子:H1=10:90であった。また、メチルエチルケトン含有量は31.95%であった。
【0151】
《乳化懸濁液調製工程》
同一容器に、引き続き、1モル/Lアンモニア水:50質量部を加え、翼先端速度:7.5m/秒にて撹拌した後、温度が30℃以下となるように調製した。
【0152】
その後、翼先端速度:14.65m/秒に変更し、この状態で、350質量部の水(脱イオン水)を20質量部/分の速度で滴下し、分散液を調製した。脱イオン水を添加するにつれ、系の粘度は上昇していったが、水は滴下と同時に系内に取り込まれ、撹拌混合は均一であった。脱イオン水を210質量部添加した段階で粘度の低下が観察された(転相点)。さらに残りの脱イオン水を所定量滴下した後(350質量部の脱イオン水を滴下した後)、希釈水として143.5質量部の水を一括で添加した。この段階での分散液中におけるメチルエチルケトン(有機溶剤)の含有率は、29.0質量%であった。また、この分散液中において、分散性の悪い粗大粒子の存在は認められなかった。
【0153】
《合一工程》
次に、マックスブレンド翼(翼径:65mm)およびコンデンサー付属の2L円筒容器に、上記分散液を移送した後、翼先端速度:1.09m/秒に保持した状態で、温度を25℃に調整した。
【0154】
その後、マックスブレンド翼の翼先端速度を1.53m/秒に調整し、3.5質量%の硫酸ナトリウム水溶液:120質量部を10質量部/分で滴下した。滴下終了後、翼先端速度を15分間かけて、1.53m/秒から0.54m/秒まで減速し、さらに、0.54m/秒で20分間撹拌を行った。
【0155】
その後、マックスブレンド翼の翼先端速度を1.53m/秒に調整し、5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液を10質量部滴下した。滴下終了後、翼先端速度を0.54m/秒に調製し、分散質(着色樹脂微粒子)の粒径が4.5μmになるまで撹拌を継続した。
【0156】
なお、ここでは、粒径の測定をマイクロトラックMT3000(日機装社製)により行い、50%体積粒径Dv(50)[μm]の値を、分散質(着色樹脂微粒子)の粒径とした。
【0157】
分散質の粒径が4.5μmになった時点で、翼先端速度を0.85m/秒で30分間保持した。ここで、この分散液について、観察を行った。その結果、分散質(着色樹脂微粒子)の合一が進行しているのを確認した。さらに得られた合一粒子の粒径を測定した。
【0158】
その結果、50%体積粒径をDv(50)[μm]、50%個数粒径をDn(50)[μm]としたときの、Dv(50)は、5.02μm、Dv(50)/Dn(50)は、1.11であった。なお、得られた合一粒子の粒径、粒度分布等の測定は、100μmのアパーチャーチューブを用いたコールターカウンターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)により行った。また、以下に説明する他の粒子についても同様にして、粒径、粒度分布の測定を行った。また、合一粒子の平均円形度Rは0.983であった。なお、平均円形度は、フロー式粒子像分析装置(東亜医用電子社製、FPIP−1000)を用いた測定により求めた。また、以下に説明する他の粒子についても同様にして、平均円形度を求めた。
【0159】
《被覆工程》
上記合一工程を行った2L円筒容器内において、マックスブレンド翼の翼先端速度を0.85m/秒から1.53m/秒まで加速した状態で、シリカ含有樹脂分散液SS−1:208質量部(コア粒子100質量部に対して12質量%)を5質量部/分の速度で滴下した。滴下終了後に、マックスブレンド翼の翼先端速度を1.53m/秒から1.00m/秒に減速し、翼先端速度を保持した状態で、さらに、10分間撹拌を行った。その後、翼先端速度を1.53m/秒に調整し、5.0質量%の硫酸ナトリウム水溶液:20質量部を10質量部/分で滴下した。その後、15分間かけて翼先端速度を1.53m/秒から0.54m/秒まで減速し、翼先端速度を保持した状態で、粒径が5.8μmに成長するまで同条件下で撹拌を続けた。その後、水:400質量部を添加し、分散質の合一を停止した。これにより、合一粒子の表面に被膜が形成された。形成された被膜の厚さは、後述する乾燥工程後のトナー粒子の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより測定した。その結果、形成された被膜の厚さは、0.12μmであった。また、被膜を有する分散質(合一粒子)について、その粒径の測定を行った。その結果、その後、シリコーン系消泡剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、BY22−517):0.068質量部を添加し、減圧により、固形分含有量が23質量%以上となるまで、メチルエチルケトンおよび水の一部を留去し、スラリー(着色樹脂微粒子スラリー)を得た。
【0160】
以降の洗浄・乾燥工程はトナー用母体粒子1と同様の操作で行いトナー用母体粒子4を作製した。
【0161】
(トナー用母体粒子5の調製)
トナー用母体粒子4の作製において、AEROSIL 130のかわりにR−805を用いた以外はトナー用母体粒子4の作製と同様に操作してトナー用母体粒子5を作製した。
【0162】
(トナー用母体粒子6の調製)
トナー用母体粒子4の調製において、被覆工程での被膜の厚さを半分として、AEROSIL 130をAEROSIL 150にした以外はトナー用母体粒子4の作製と同様に操作して、トナー用母体粒子6を作製した。
【0163】
(トナー用母体粒子7の調製)
シェル層用樹脂粒子1の代わりにシェル層用樹脂粒子2を用いた以外はトナー用母体粒子1の作製と同様に操作してトナー用母体粒子7を作製した。
【0164】
〔トナーの作製〕
上記で作製したトナー母体粒子100質量部に対し、疎水性シリカ微粒子(数平均一次粒子径=80nm)を2.5質量%、疎水性チタニア微粒子(数平均一次粒子径=10nm)を0.3質量%添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工社製)を用いて、周速35m/secで25分間混合して、「トナー1〜7」を作製した。尚、トナーの体積基準におけるメディアン径(D50)はトナー母体粒子と同一であった。
【0165】
下記表1に作製したトナーシェル層に添加されている無機粒子の種類、トナーの粒子径、形状、シェル比率を纏めて示す。
【0166】
【表1】

【0167】
〔特性の評価〕
(微細ドットのチリ)
10%網点画像を形成し、ルーペにてドット周辺のチリを観察した。実写試料(A4)の紙面を観察し、下記基準でランク分けした。
◎:チリがほとんど検知できないもの
○:微かにチリがあるが、注視しなければ気づかない程度のもの
×:チリが容易に検知できるもの
(耐久性)
2万枚実写後におけるキャリアへの外添剤の移行の度合いを目視で観察し、下記基準でランク分けした。
◎:移行が観察されていないもの
○:僅かに移行が見られるが、中止しなければ気づかない程度のもの
×:移行が容易に検知できるもの
結果を表2に示す。
【0168】
【表2】

【0169】
本発明内の実施例1〜3は、いずれの特性も良好であるが、本発明外の比較例1〜4は少なくとも何れかの特性に問題があることがわかる。
【符号の説明】
【0170】
1 コアシェル型トナー
2 シェル層
3 無機微粒子
4 コア粒子
10Y、10M、10C、10K 画像形成部
14 原稿画像読み取り装置
13Y、13M、13C、13K 露光手段
17 中間転写体ユニット
170 中間転写ベルト
171、172、173、174 中間転写ベルト搬送用ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記1〜4の工程を経て製造されることを特徴とするコアシェル型トナーの製造方法。
1:コアシェル型トナーのコア粒子を作製する工程
2:無機微粒子をモノマーに分散させ、これを界面活性剤水溶液に分散する工程
3:上記モノマーを重合させシェル層用樹脂粒子を作製する工程
4:前記コア粒子表面をシェル層用樹脂粒子で被覆し、シェル層を形成する工程
【請求項2】
前記無機微粒子が数平均粒子径5nm以上200nm以下のシリカ粒子であることを特徴とする請求項1記載のコアシェル型トナーの製造方法。
【請求項3】
前記無機微粒子の表面が親水性処理してあることを特徴とする請求項1又は2記載のコアシェル型トナーの製造方法。
【請求項4】
前記シェル層用樹脂粒子に含まれる結着樹脂の重量平均分子量(Mw)が10,000以上、100,000以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のコアシェル型トナーの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のコアシェル型トナーの製造方法により製造されたことを特徴とするコアシェル型トナー。
【請求項6】
請求項5記載のコアシェル型トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−194231(P2012−194231A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56293(P2011−56293)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】