説明

コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法

【課題】合成に際してのコアシェル型ハイパーブランチポリマー分子間における架橋に起因するゲル化を防止して、工業スケールでの合成に際してのプロセスの安定化を図ることができるコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法を提供すること。
【解決手段】モノマーのリビングラジカル重合を経てコアシェル型ハイパーブランチポリマーを合成するコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法であって、モノマーおよびラジカル捕捉剤が存在する反応系において前記リビングラジカル重合をおこない、リビングラジカル重合によって合成された重合物をコア部とし、当該コア部の末端に酸分解性基および酸基を含むシェル部を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーとは、繰り返し単位に枝分かれ構造をもつ多分岐高分子の総称である。コアシェル型ハイパーブランチポリマーは、一般的な従来の高分子が紐状の形状であるのに対して積極的に分岐を導入しているという特異な構造を有する、ナノメートルオーダーのサイズである、表面に多くの官能基を保持することができる、などの点から様々な応用が期待されている。
【0003】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーは、一般的に、ABx型モノマーの一段階重合によって合成される他、近年では重合開始基とビニル基とを併せ持つモノマーの重合によっても合成されている。このような重合は、自己縮合型ビニル重合(SCVP:Self−Condensing Vinyl Polymerization)と呼ばれている。
【0004】
SCVPによるコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成においては、副反応によるゲル化や分子量分布の目的とする範囲以上への広がりを抑制するために、リビングカチオン重合や原子移動ラジカル重合法(ATRP)、NMPなどのリビングラジカル重合などのリビング系を用いることが提案されている。原子移動ラジカル重合法は、一般に有機ハロゲン化物を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒として重合されるリビングラジカル重合法である。
【0005】
従来では、たとえば、4−クロロメチルスチレンの塩化銅(I)、2,2'−ビピリジン存在下、ベンゼンやクロロベンゼン中あるいは無溶媒系で重合することによってハイパーブランチポリスチレンが得られることが報告されている(たとえば、下記非特許文献1を参照。)。この反応系では、重合中に1級および2級のベンジルラジカル種が生成され、生成された1級および2級のベンジルラジカル種どうしの反応性の差異が分岐構造に影響を与え、触媒となる塩化銅の濃度が低いときは分岐度の低いポリマーが生成し、触媒濃度の上昇にともなって分岐度の高いコアシェル型ハイパーブランチポリマーを得ることができる。
【0006】
【非特許文献1】JEAN M.J.Frechet,J.Poly.Sci.,36,955(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の技術では、高い分岐度のコアシェル型ハイパーブランチポリマーを得るために触媒濃度を高くすると、重合速度が速まることでポリマーの分子量が急激に増加する結果となり、目的とする範囲の分子量を有するコアシェル型ハイパーブランチポリマーをブレなく得ることが難しいという問題があった。また、上述した従来の技術では、触媒濃度を高くしすぎると、分子同士のカップリング反応が起こり、ゲル化してしまうという問題があった。
【0008】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、合成に際してのコアシェル型ハイパーブランチポリマー分子間における架橋に起因するゲル化を防止して、工業スケールでの合成に際してのプロセスの安定化を図ることができるコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかるコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法は、モノマーのリビングラジカル重合を経てコアシェル型ハイパーブランチポリマーを合成するコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法であって、前記モノマーおよびラジカル捕捉剤が存在する反応系において前記リビングラジカル重合をおこなう重合工程と、前記重合工程によって合成された重合物をコア部とし、当該コア部の末端に酸分解性基および酸基を含むシェル部を形成するシェル部形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかるスターポリマーの合成方法は、モノマーのリビングラジカル重合を経てスターポリマーを合成する方法であって、前記モノマーおよびラジカル捕捉剤が存在する反応系において前記リビングラジカル重合をおこなう重合工程と、前記重合工程によって合成された重合物をアーム部とし、当該アーム部を重合することによってアーム部同士をカップリングさせたコア部を形成するコア部形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
上記の発明によれば、合成に際してのコアシェル型ハイパーブランチポリマーあるいはスタポリマーの分子間における架橋に起因するゲル化を防止して、工業スケールでの合成に際してのプロセスの安定化を図ることができるコアシェル型ハイパーブランチポリマーまたはスターポリマーの合成方法を提供することができる。
【0012】
また、この発明にかかるコアシェル型ハイパーブランチポリマーは、上記のコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法にしたがって製造されたことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、ゲル化が防止されて工業的に安定したプロセスを経て合成されたコアシェル型ハイパーブランチポリマーを得ることができる。
【0014】
また、この発明にかかるレジスト組成物は、上記のコアシェル型ハイパーブランチポリマーを包含することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、より安全性が高く、ゲル化が防止されて工業的に安定したプロセスを経て合成されコアシェル型ハイパーブランチポリマーを含むレジスト組成物を得ることができる。
【0016】
また、この発明にかかる半導体集積回路は、上記のレジスト組成物を用いて、電子線、遠紫外線(DUV)、または極紫外線(EUV)リソグラフィなどによりパターンを形成されることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、安全性が高く性能が安定しており、高集積、高容量な半導体集積回路を製造することができる。
【0018】
また、この発明にかかる半導体集積回路の製造方法は、上記のレジスト組成物を用いて、電子線、遠紫外線(DUV)、または極紫外線(EUV)リソグラフィなどによりパターンを形成する工程を含むことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、安全性が高く性能が安定しており、高集積、高容量な半導体集積回路を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、実施の形態のコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法、コアシェル型ハイパーブランチポリマー、レジスト組成物、半導体集積回路、および半導体集積回路の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。この実施の形態は、ATRP(原子移動ラジカル重合)法を用いたコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法、コアシェル型ハイパーブランチポリマー、レジスト組成物、半導体集積回路、および半導体集積回路の製造方法について説明する。
【0021】
(実施の形態1)
以下に、コアシェル型ハイパーブランチポリマーを例にあげ、本発明の詳細を説明する。なお、後述する、モノマー、金属触媒、還元剤、溶媒、ラジカル捕捉剤、などは、スターポリマーの合成においても使用する事ができる。
【0022】
(コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる物質)
以下に、実施の形態1のコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法を用いて合成されるコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる物質について説明する。コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に際しては、モノマー、金属触媒、還元剤、溶媒、およびラジカル捕捉剤を用いる。
【0023】
(コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる物質)
はじめに、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法を用いて合成されるコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる物質について説明する。コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に際しては、リビングラジカル重合の開始種となる官能基を有するビニルモノマーとその他のモノマーおよび溶媒を用いる。
【0024】
(モノマー)
はじめに、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いるモノマーについて説明する。コアシェル型のハイパーブランチポリマーを合成する場合、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いるモノマーとしては、大別して、コア部を構成するモノマーとシェル部を構成するモノマーとがある。
【0025】
<コア部を構成するモノマー>
まず、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いるモノマーのうち、コア部を構成するモノマーについて説明する。コアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部は、当該コアシェル型ハイパーブランチポリマー分子の核を構成する。コアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部は、少なくとも下記式(I)であらわされるモノマーを重合させてなる。
【0026】
【化1】

【0027】
上記式(I)中のYは、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基をあらわしている。Yにおける炭素数は、1〜8であることが好ましい。Yにおけるより好ましい炭素数は、1〜6である。上記の式(I)中のYは、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を含んでいてもよい。
【0028】
上記式(I)中のYとしては、具体的には、たとえば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、アミレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基などが挙げられる。また、上記式(I)中のYとしては、上記の各基が結合した基、あるいは、上述した各基に「−O−」、「−CO−」、「−COO−」が介在した基が挙げられる。
【0029】
上述した各基の中で、式(I)中のYとしては、炭素数1〜8のアルキレン基が好ましい。炭素数1〜8のアルキレン基の中で、上記式(I)中のYとしては、炭素数1〜8の直鎖アルキレン基がより好ましい。より好ましいアルキレン基としては、たとえば、メチレン基、エチレン基、−OCH2−基、−OCH2CH2−基が挙げられる。上記式(I)中のZは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子(ハロゲン基)をあらわしている。上記式(I)中のZとして、具体的には、たとえば、上述したハロゲン原子の中で、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0030】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部合成に用いるモノマーの中で、上記式(I)であらわされるモノマーとしては、具体的には、たとえば、クロロメチルスチレン、ブロモメチルスチレン、p−(1−クロロエチル)スチレン、ブロモ(4−ビニルフェニル)フェニルメタン、1−ブロモ−1−(4−ビニルフェニル)プロパン−2−オン、3−ブロモ−3−(4−ビニルフェニル)プロパノール、などが挙げられる。より具体的に、コアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部合成に用いるモノマーの中で、上記式(I)であらわされるモノマーとしては、たとえば、クロロメチルスチレン、ブロモメチルスチレン、p−(1−クロロエチル)スチレンなどが好ましい。
【0031】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部を構成するモノマーとしては、上記式(I)であらわされるモノマーに加え、他のモノマーを含むことができる。他のモノマーとしては、ラジカル重合が可能なモノマーであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0032】
ラジカル重合が可能な他のモノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸、および(メタ)アクリル酸エステル類、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸エステル類、スチレン類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類などから選ばれるラジカル重合性の不飽和結合を有する化合物が挙げられる。
【0033】
ラジカル重合が可能な他のモノマーとして挙げられた(メタ)アクリル酸エステル類としては、具体的には、たとえば、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−メチルブチル、アクリル酸2−メチルペンチル、アクリル酸2−エチルブチル、アクリル酸3−メチルペンチル、アクリル酸2−メチルヘキシル、アクリル酸3−メチルヘキシル、アクリル酸トリエチルカルビル、アクリル酸1−メチル−1−シクロペンチル、アクリル酸1−エチル−1−シクロペンチル、アクリル酸1−メチル−1−シクロヘキシル、アクリル酸1−エチル−1−シクロヘキシル、アクリル酸1−メチルノルボニル、アクリル酸1−エチルノルボニル、アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、アクリル酸テトラヒドロフラニル、アクリル酸テトラヒドロピラニル、アクリル酸1−メトキシエチル、アクリル酸1−エトキシエチル、アクリル酸1−n−プロポキシエチル、アクリル酸1−イソプロポキシエチル、アクリル酸n−ブトキシエチル、アクリル酸1−イソブトキシエチル、アクリル酸1−sec−ブトキシエチル、アクリル酸1−tert−ブトキシエチル、アクリル酸1−tert−アミロキシエチル、アクリル酸1−エトキシ−n−プロピル、アクリル酸1−シクロヘキシロキシエチル、アクリル酸メトキシプロピル、アクリル酸エトキシプロピル、アクリル酸1−メトキシ−1−メチル−エチル、アクリル酸1−エトキシ−1−メチル−エチル、アクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリエチルシリル、アクリル酸ジメチル−tert−ブチルシリル、α−(アクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、β−(アクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、γ−(アクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、α−メチル−α―(アクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、β−メチル−β−(アクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、γ−メチル−γ−(アクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、α−エチル−α―(アクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、β−エチル−β−(アクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、γ−エチル−γ−(アクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、α−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、β−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、γ−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、δ−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、α−メチル−α―(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、β−メチル−β−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、γ−メチル−γ−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、δ−メチル−δ−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、α−エチル−α―(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、β−エチル−β−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、γ−エチル−γ−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、δ−エチル−δ−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、アクリル酸1−メチルシクロヘキシル、アクリル酸アダマンチル、アクリル酸2−(2−メチル)アダマンチル、アクリル酸クロルエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2,2−ジメチルヒドロキシプロピル、アクリル酸5−ヒドロキシペンチル、アクリル酸トリメチロールプロパン、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ナフチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸2−メチルブチル、メタクリル酸2−メチルペンチル、メタクリル酸2−エチルブチル、メタクリル酸3−メチルペンチル、メタクリル酸2−メチルヘキシル、メタクリル酸3−メチルヘキシル、メタクリル酸トリエチルカルビル、メタクリル酸1−メチル−1−シクロペンチル、メタクリル酸1−エチル−1−シクロペンチル、メタクリル酸1−メチル−1−シクロヘキシル、メタクリル酸1−エチル−1−シクロヘキシル、メタクリル酸1−メチルノルボニル、メタクリル酸1−エチルノルボニル、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、メタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、メタクリル酸テトラヒドロフラニル、メタクリル酸テトラヒドロピラニル、メタクリル酸1−メトキシエチル、メタクリル酸1−エトキシエチル、メタクリル酸1−n−プロポキシエチル、メタクリル酸1−イソプロポキシエチル、メタクリル酸n−ブトキシエチル、メタクリル酸1−イソブトキシエチル、メタクリル酸1−sec−ブトキシエチル、メタクリル酸1−tert−ブトキシエチル、メタクリル酸1−tert−アミロキシエチル、メタクリル酸1−エトキシ−n−プロピル、メタクリル酸1−シクロヘキシロキシエチル、メタクリル酸メトキシプロピル、メタクリル酸エトキシプロピル、メタクリル酸1−メトキシ−1−メチル−エチル、メタクリル酸1−エトキシ−1−メチル−エチル、メタクリル酸トリメチルシリル、メタクリル酸トリエチルシリル、メタクリル酸ジメチル−tert−ブチルシリル、α−(メタクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、γ−(メタクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、α−メチル−α―(メタクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、β−メチル−β−(メタクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、γ−メチル−γ−(メタクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、α−エチル−α―(メタクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、β−エチル−β−(メタクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、γ−エチル−γ−(メタクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、α−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、β−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、γ−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、δ−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、α−メチル−α―(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、β−メチル−β−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、γ−メチル−γ−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、δ−メチル−δ−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、α−エチル−α―(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、β−エチル−β−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、γ−エチル−γ−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、δ−エチル−δ−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、メタクリル酸1−メチルシクロヘキシル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸2−(2−メチル)アダマンチル、メタクリル酸クロルエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2,2−ジメチルヒドロキシプロピル、メタクリル酸5−ヒドロキシペンチル、メタクリル酸トリメチロールプロパン、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ナフチル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(分子量300)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)ジアクリレート、などが挙げられる。
【0034】
ラジカル重合が可能な他のモノマーとして挙げられたビニル安息香酸エステル類としては、具体的には、たとえば、ビニル安息香酸tert−ブチル、ビニル安息香酸2−メチルブチル、ビニル安息香酸2−メチルペンチル、ビニル安息香酸2−エチルブチル、ビニル安息香酸3−メチルペンチル、ビニル安息香酸2−メチルヘキシル、ビニル安息香酸3−メチルヘキシル、ビニル安息香酸トリエチルカルビル、ビニル安息香酸1−メチル−1−シクロペンチル、ビニル安息香酸1−エチル−1−シクロペンチル、ビニル安息香酸1−メチル−1−シクロヘキシル、ビニル安息香酸1−エチル−1−シクロヘキシル、ビニル安息香酸1−メチルノルボニル、ビニル安息香酸1−エチルノルボニル、ビニル安息香酸2−メチル−2−アダマンチル、ビニル安息香酸2−エチル−2−アダマンチル、ビニル安息香酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、ビニル安息香酸テトラヒドロフラニル、ビニル安息香酸テトラヒドロピラニル、ビニル安息香酸1−メトキシエチル、ビニル安息香酸1−エトキシエチル、ビニル安息香酸1−n−プロポキシエチル、ビニル安息香酸1−イソプロポキシエチル、ビニル安息香酸n−ブトキシエチル、ビニル安息香酸1−イソブトキシエチル、ビニル安息香酸1−sec−ブトキシエチル、ビニル安息香酸1−tert−ブトキシエチル、ビニル安息香酸1−tert−アミロキシエチル、ビニル安息香酸1−エトキシ−n−プロピル、ビニル安息香酸1−シクロヘキシロキシエチル、ビニル安息香酸メトキシプロピル、ビニル安息香酸エトキシプロピル、ビニル安息香酸1−メトキシ−1−メチル−エチル、ビニル安息香酸1−エトキシ−1−メチル−エチル、ビニル安息香酸トリメチルシリル、ビニル安息香酸トリエチルシリル、ビニル安息香酸ジメチル−tert−ブチルシリル、α−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、β−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、γ−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、α−メチル−α―(4−ビニルベンゾイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、β−メチル−β−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、γ−メチル−γ−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、α−エチル−α―(4−ビニルベンゾイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、β−エチル−β−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、γ−エチル−γ−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、α−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、β−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、γ−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、δ−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、α−メチル−α―(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、β−メチル−β−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、γ−メチル−γ−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、δ−メチル−δ−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、α−エチル−α―(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、β−エチル−β−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、γ−エチル−γ−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、δ−エチル−δ−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、ビニル安息香酸1−メチルシクロヘキシル、ビニル安息香酸アダマンチル、ビニル安息香酸2−(2−メチル)アダマンチル、ビニル安息香酸クロルエチル、ビニル安息香酸2−ヒドロキシエチル、ビニル安息香酸2,2−ジメチルヒドロキシプロピル、ビニル安息香酸5−ヒドロキシペンチル、ビニル安息香酸トリメチロールプロパン、ビニル安息香酸グリシジル、ビニル安息香酸ベンジル、ビニル安息香酸フェニル、ビニル安息香酸ナフチルなどが挙げられる。
【0035】
ラジカル重合が可能な他のモノマーとして挙げられたスチレン類としては、具体的には、たとえば、スチレン、ベンジルスチレン、トリフルオルメチルスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオルスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレン、ビニルナフタレン、1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、1,2−ジイソプロペニルベンゼン、1,3ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ジビニルナフタレン、1,8−ジビニルナフタレン、2,4−ジビニルジフェニル、1,2−ジビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジビニル−4,5,8−トリブチルナフタレン、2,2−ジビニル−4−エチル−4−プロピルビフェニル、ジビニルトルエン、トリビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0036】
ラジカル重合が可能な他のモノマーとして挙げられたアリル化合物としては、具体的には、たとえば、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル、アリルオキシエタノールなどが挙げられる。
【0037】
ラジカル重合が可能な他のモノマーとして挙げられたビニルエーテル類としては、具体的には、たとえば、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロルフェニルエーテル、ビニル−2,4−ジクロルフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテルなどが挙げられる。
【0038】
ラジカル重合が可能な他のモノマーとして挙げられたビニルエステル類としては、具体的には、たとえば、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレートなどが挙げられる。
【0039】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いるモノマーとして上述した各種のモノマーの中で、コアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部を構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、4−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸エステル類、スチレン類が好ましい。前述の各種モノマー中でも、コアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部を構成するモノマーとしては、具体的には、たとえば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、4−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸tert−ブチル、スチレン、ベンジルスチレン、クロルスチレン、ビニルナフタレンが好ましい。
【0040】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーにおいて、コア部を構成するモノマーは、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に際して用いる全モノマーに対して、10〜90モル%の量で含まれていることが好ましい。コアシェル型ハイパーブランチポリマーにおいて、コア部を構成するモノマーは、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に際して用いる全モノマーに対して、10〜80モル%がより好ましい。コアシェル型ハイパーブランチポリマーにおいて、コア部を構成するモノマーは、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に際して用いる全モノマーに対して、10〜60モル%の量で含まれていることがより一層好ましい。
【0041】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーにおいて、コア部を構成するモノマーの量が上記の範囲内となるように調整することで、たとえば、コアシェル型ハイパーブランチポリマーを当該コアシェル型ハイパーブランチポリマーを含むレジスト組成物として利用する場合に、当該コアシェル型ハイパーブランチポリマーが現像液に対し適度な疎水性を付与することができる。これによって、コアシェル型ハイパーブランチポリマーを含むレジスト組成物を用いて、たとえば、半導体集積回路、フラットパネルディスプレイ、プリント配線板などの微細加工をおこなう際に、未露光部分の溶解を抑制することができるので、好ましい。
【0042】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーにおいて、上記式(I)で表わされるモノマーは、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に際して用いる全モノマーに対して、5〜100モル%の量で含まれていることが好ましい。コアシェル型ハイパーブランチポリマーにおいて、コア部を構成するモノマーは、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に際して用いる全モノマーに対して、20〜100モル%の量で含まれていることがより好ましい。
【0043】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーにおいて、コア部を構成するモノマーはコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に際して用いる全モノマーに対して、50〜100モル%の量で含まれていることがより一層好ましい。コアシェル型ハイパーブランチポリマーにおいて、上記式(I)で表わされるモノマーの量が上記の範囲内にあると、コア部が球状形態をとるため、分子間の絡まり抑制に有利であり、好ましい。
【0044】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部が、上記式(I)であらわされるモノマーとその他のモノマーとの共重合物であるとき、コア部を構成するする仕込み時における全モノマー中の上記式(I)の量は、仕込み時において、10〜99モル%であるのが好ましい。コアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部が、式(I)であらわされるモノマーとその他のモノマーとの共重合物であるとき、コア部を構成する仕込み時における全モノマー中の上記式(I)の量は、仕込み時において、20〜99モル%であるのがより好ましい。
【0045】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部が、上記式(I)であらわされるモノマーとその他のモノマーとの共重合物であるとき、コア部を構成する仕込み時における全モノマー中の上記式(I)の量が、仕込み時において、30〜99モル%であるのがより一層好ましい。コアシェル型ハイパーブランチポリマーにおいて、上記式(I)で表わされるモノマーの量が上記の範囲内にあると、コア部が球状形態をとるため、分子間の絡まり抑制に有利であり、好ましい。
【0046】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーにおいて、上記式(I)で表わされるモノマーの量が上記の範囲内にあると、コア部の球状形態を保ちつつ、基板密着性やガラス転移温度の上昇などの機能が付与されるので好ましい。なお、コア部における上記式(I)であらわされるモノマーとそれ以外のモノマーとの量は、目的に応じて重合時の仕込み量比により調節することができる。
【0047】
<シェル部を構成するモノマー>
つぎに、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いるモノマーのうち、シェル部を構成するモノマーについて説明する。コアシェル型ハイパーブランチポリマーのシェル部は、当該コアシェル型ハイパーブランチポリマー分子の末端を構成する。コアシェル型ハイパーブランチポリマーのシェル部は、下記式(II)、(III)であらわされる繰り返し単位の少なくとも一方を備えている。
【0048】
下記式(II)、(III)であらわされる繰り返し単位は、酢酸、マレイン酸、安息香酸などの有機酸あるいは塩酸、硫酸または硝酸などの無機酸の作用により、好ましくは光エネルギーによって酸を発生する光酸発生剤の作用により分解する酸分解性基を含む。酸分解性基は分解して親水基となるのが好ましい。
【0049】
【化2】

【0050】
【化3】

【0051】
上記式(II)中のR1および上記式(III)中のR4は、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示している。このうち、上記式(II)中のR1および上記式(III)中のR4としては、水素原子およびメチル基が好ましい。上記式(II)中のR1および上記式(III)中のR4としては、水素原子がさらに好ましい。
【0052】
上記式(II)中のR2は、水素原子、アルキル基、またはアリール基を示している。上記式(II)中のR2におけるアルキル基としては、たとえば、炭素数が1〜30であることが好ましい。上記式(II)中のR2におけるアルキル基のより好ましい炭素数は、1〜20である。上記式(II)中のR2におけるアルキル基のより一層好ましい炭素数は、1〜10である。アルキル基は、直鎖状、分岐状もしくは環状構造を有している。具体的に、上記式(II)中のR2におけるアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、などが挙げられる。
【0053】
上記式(II)中のR2におけるアリール基としては、たとえば、炭素数6〜30であることが好ましい。上記式(II)中のR2におけるアリール基のより好ましい炭素数は、6〜20である。上記式(II)中のR2におけるアリール基のより一層好ましい炭素数は、6〜10である。具体的に、上記式(II)中のR2におけるアリール基としては、たとえば、フェニル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。このうち、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基などが挙げられる。上記式(II)中のR2として、もっとも好ましい基の1つとして水素原子が挙げられる。
【0054】
上記式(II)中のR3および上記式(III)中のR5は、水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基、オキソアルキル基、または下記式(i)であらわされる基を示している。上記式(II)中のR3および上記式(III)中のR5におけるアルキル基としては、炭素数1〜40であることが好ましい。上記式(II)中のR3および上記式(III)中のR5におけるアルキル基のより好ましい炭素数は、1〜30である。
【0055】
上記式(II)中のR3および上記式(III)中のR5におけるアルキル基のより一層好ましい炭素数は、1〜20である。上記式(II)中のR3および上記式(III)中のR5におけるアルキル基は、直鎖状、分岐状もしくは環状構造を有している。上記式(II)中のR3および上記式(III)中のR5としては、炭素数1〜20の分岐状アルキル基がより好ましい。
【0056】
上記式(II)中のR3および上記式(III)中のR5における各アルキル基の好ましい炭素数は1〜6であり、より好ましい炭素数は1〜4である。上記式(II)中のR3および上記式(III)中のR5におけるオキソアルキル基のアルキル基の炭素数は4〜20であり、より好ましい炭素数は4〜10である。
【0057】
【化4】

【0058】
上記式(i)中のR6は、水素原子またはアルキル基を示している。上記式(i)であらわされる基のR6におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状構造を有している。上記式(i)であらわされる基のR6におけるアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましい。上記式(i)であらわされる基のR6におけるアルキル基のより好ましい炭素数は、1〜8であり、より好ましい炭素数は1〜6である。
【0059】
上記式(i)中のR7およびR8は、水素原子またはアルキル基である。上記式(i)中のR7およびR8における水素原子またはアルキル基は、互いに独立していてもよいし、一緒になって環を形成しても良い。上記式(i)中のR7およびR8におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状構造を有している。上記式(i)中のR7およびR8におけるアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましい。上記式(i)中のR7およびR8におけるアルキル基のより好ましい炭素数は、1〜8である。上記式(i)中のR7およびR8におけるアルキル基のより一層好ましい炭素数は、1〜6である。上記式(i)中のR7およびR8としては、炭素数1〜20の分岐状アルキル基が好ましい。
【0060】
上記式(i)で示される基としては、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−n−プロポキシエチル基、1−イソプロポキシエチル基、1−n−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、1−sec−ブトキシエチル基、1−tert−ブトキシエチル基、1−tert−アミロキシエチル基、1−エトキシ−n−プロピル基、1−シクロヘキシロキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、1−メトキシ−1−メチル−エチル基、1−エトキシ−1−メチル−エチル基などの直鎖状または分岐状アセタール基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基などの環状アセタール基、などが挙げられる。上記式(i)で示される基としては、前述した各基の中でも、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、エトキシプロピル基、テトラヒドロピラニル基が特に好適である。
【0061】
上記式(II)中のR3および上記式(III)中のR5において、直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、トリエチルカルビル基、1−エチルノルボニル基、1−メチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、2−(2−メチル)アダマンチル基、tert−アミル基などが挙げられる。このうち、tert−ブチル基が特に好ましい。
【0062】
上記式(II)中のR3および上記式(III)中のR5において、トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基などの、各アルキル基の炭素数が1〜6のものが挙げられる。オキソアルキル基としては、3−オキソシクロヘキシル基などが挙げられる。
【0063】
上記式(II)であらわされる繰り返し単位を与えるモノマーとしては、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸tert−ブチル、ビニル安息香酸2−メチルブチル、ビニル安息香酸2−メチルペンチル、ビニル安息香酸2−エチルブチル、ビニル安息香酸3−メチルペンチル、ビニル安息香酸2−メチルヘキシル、ビニル安息香酸3−メチルヘキシル、ビニル安息香酸トリエチルカルビル、ビニル安息香酸1−メチル−1−シクロペンチル、ビニル安息香酸1−エチル−1−シクロペンチル、ビニル安息香酸1−メチル−1−シクロヘキシル、ビニル安息香酸1−エチル−1−シクロヘキシル、ビニル安息香酸1−メチルノルボニル、ビニル安息香酸1−エチルノルボニル、ビニル安息香酸2−メチル−2−アダマンチル、ビニル安息香酸2−エチル−2−アダマンチル、ビニル安息香酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、ビニル安息香酸テトラヒドロフラニル、ビニル安息香酸テトラヒドロピラニル、ビニル安息香酸1−メトキシエチル、ビニル安息香酸1−エトキシエチル、ビニル安息香酸1−n−プロポキシエチル、ビニル安息香酸1−イソプロポキシエチル、ビニル安息香酸n−ブトキシエチル、ビニル安息香酸1−イソブトキシエチル、ビニル安息香酸1−sec−ブトキシエチル、ビニル安息香酸1−tert−ブトキシエチル、ビニル安息香酸1−tert−アミロキシエチル、ビニル安息香酸1−エトキシ−n−プロピル、ビニル安息香酸1−シクロヘキシロキシエチル、ビニル安息香酸メトキシプロピル、ビニル安息香酸エトキシプロピル、ビニル安息香酸1−メトキシ−1−メチル−エチル、ビニル安息香酸1−エトキシ−1−メチル−エチル、ビニル安息香酸トリメチルシリル、ビニル安息香酸トリエチルシリル、ビニル安息香酸ジメチル−tert−ブチルシリル、α−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、β−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、γ−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、α−メチル−α―(4−ビニルベンゾイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、β−メチル−β−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、γ−メチル−γ−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、α−エチル−α―(4−ビニルベンゾイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、β−エチル−β−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、γ−エチル−γ−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、α−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、β−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、γ−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、δ−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、α−メチル−α―(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、β−メチル−β−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、γ−メチル−γ−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、δ−メチル−δ−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、α−エチル−α―(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、β−エチル−β−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、γ−エチル−γ−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、δ−エチル−δ−(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、ビニル安息香酸1−メチルシクロヘキシル、ビニル安息香酸アダマンチル、ビニル安息香酸2−(2−メチル)アダマンチル、ビニル安息香酸クロルエチル、ビニル安息香酸2−ヒドロキシエチル、ビニル安息香酸2,2−ジメチルヒドロキシプロピル、ビニル安息香酸5−ヒドロキシペンチル、ビニル安息香酸トリメチロールプロパン、ビニル安息香酸グリシジル、ビニル安息香酸ベンジル、ビニル安息香酸フェニル、ビニル安息香酸ナフチルなどが挙げられる。このうち、4−ビニル安息香酸と4−ビニル安息香酸tert−ブチルの共重合体が好ましい。
【0064】
上記式(III)であらわされる繰り返し単位を与えるモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−メチルブチル、アクリル酸2−メチルペンチル、アクリル酸2−エチルブチル、アクリル酸3−メチルペンチル、アクリル酸2−メチルヘキシル、アクリル酸3−メチルヘキシル、アクリル酸トリエチルカルビル、アクリル酸1−メチル−1−シクロペンチル、アクリル酸1−エチル−1−シクロペンチル、アクリル酸1−メチル−1−シクロヘキシル、アクリル酸1−エチル−1−シクロヘキシル、アクリル酸1−メチルノルボニル、アクリル酸1−エチルノルボニル、アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、アクリル酸テトラヒドロフラニル、アクリル酸テトラヒドロピラニル、アクリル酸1−メトキシエチル、アクリル酸1−エトキシエチル、アクリル酸1−n−プロポキシエチル、アクリル酸1−イソプロポキシエチル、アクリル酸n−ブトキシエチル、アクリル酸1−イソブトキシエチル、アクリル酸1−sec−ブトキシエチル、アクリル酸1−tert−ブトキシエチル、アクリル酸1−tert−アミロキシエチル、アクリル酸1−エトキシ−n−プロピル、アクリル酸1−シクロヘキシロキシエチル、アクリル酸メトキシプロピル、アクリル酸エトキシプロピル、アクリル酸1−メトキシ−1−メチル−エチル、アクリル酸1−エトキシ−1−メチル−エチル、アクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリエチルシリル、アクリル酸ジメチル−tert−ブチルシリル、α−(アクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、β−(アクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、γ−(アクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、α−メチル−α―(アクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、β−メチル−β−(アクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、γ−メチル−γ−(アクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、α−エチル−α―(アクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、β−エチル−β−(アクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、γ−エチル−γ−(アクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、α−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、β−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、γ−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、δ−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、α−メチル−α―(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、β−メチル−β−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、γ−メチル−γ−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、δ−メチル−δ−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、α−エチル−α―(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、β−エチル−β−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、γ−エチル−γ−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、δ−エチル−δ−(アクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、アクリル酸1−メチルシクロヘキシル、アクリル酸アダマンチル、アクリル酸2−(2−メチル)アダマンチル、アクリル酸クロルエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2,2−ジメチルヒドロキシプロピル、アクリル酸5−ヒドロキシペンチル、アクリル酸トリメチロールプロパン、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ナフチル、メタクリル酸、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸2−メチルブチル、メタクリル酸2−メチルペンチル、メタクリル酸2−エチルブチル、メタクリル酸3−メチルペンチル、メタクリル酸2−メチルヘキシル、メタクリル酸3−メチルヘキシル、メタクリル酸トリエチルカルビル、メタクリル酸1−メチル−1−シクロペンチル、メタクリル酸1−エチル−1−シクロペンチル、メタクリル酸1−メチル−1−シクロヘキシル、メタクリル酸1−エチル−1−シクロヘキシル、メタクリル酸1−メチルノルボニル、メタクリル酸1−エチルノルボニル、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、メタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、メタクリル酸テトラヒドロフラニル、メタクリル酸テトラヒドロピラニル、メタクリル酸1−メトキシエチル、メタクリル酸1−エトキシエチル、メタクリル酸1−n−プロポキシエチル、メタクリル酸1−イソプロポキシエチル、メタクリル酸n−ブトキシエチル、メタクリル酸1−イソブトキシエチル、メタクリル酸1−sec−ブトキシエチル、メタクリル酸1−tert−ブトキシエチル、メタクリル酸1−tert−アミロキシエチル、メタクリル酸1−エトキシ−n−プロピル、メタクリル酸1−シクロヘキシロキシエチル、メタクリル酸メトキシプロピル、メタクリル酸エトキシプロピル、メタクリル酸1−メトキシ−1−メチル−エチル、メタクリル酸1−エトキシ−1−メチル−エチル、メタクリル酸トリメチルシリル、メタクリル酸トリエチルシリル、メタクリル酸ジメチル−tert−ブチルシリル、α−(メタクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、γ−(メタクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、α−メチル−α―(メタクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、β−メチル−β−(メタクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、γ−メチル−γ−(メタクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、α−エチル−α―(メタクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、β−エチル−β−(メタクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、γ−エチル−γ−(メタクロイル)オキシ−γ−ブチロラクトン、α−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、β−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、γ−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、δ−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、α−メチル−α―(4−ビニルベンゾイル)オキシ−δ−バレロラクトン、β−メチル−β−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、γ−メチル−γ−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、δ−メチル−δ−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、α−エチル−α―(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、β−エチル−β−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、γ−エチル−γ−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、δ−エチル−δ−(メタクロイル)オキシ−δ−バレロラクトン、メタクリル酸1−メチルシクロヘキシル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸2−(2−メチル)アダマンチル、メタクリル酸クロルエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2,2−ジメチルヒドロキシプロピル、メタクリル酸5−ヒドロキシペンチル、メタクリル酸トリメチロールプロパン、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ナフチル、などが挙げられる。このうち、アクリル酸とアクリル酸tert−ブチルの共重合体が好ましい。
【0065】
なお、シェル部を構成するモノマーとしては、4−ビニル安息香酸またはアクリル酸の少なくとも一方と、4−ビニル安息香酸tert−ブチルまたはアクリル酸tert−ブチルの少なくとも一方と、の共重合体も好ましい。シェル部を構成するモノマーとしては、ラジカル重合性の不飽和結合を有する構造であれば、上記式(II)および上記式(III)であらわされる繰り返し単位を与えるモノマー以外のモノマーであってもよい。
【0066】
使用することができる共重合モノマーとしては、たとえば、上記以外のスチレン類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、クロトン酸エステル類などから選ばれるラジカル重合性の不飽和結合を有する化合物などが挙げられる。
【0067】
シェル部を構成するモノマーとして使用することができる共重合モノマーとして挙げられたスチレン類としては、具体例には、たとえば、スチレン、tert−ブトキシスチレン、α−メチル−tert−ブトキシスチレン、4−(1−メトキシエトキ)シスチレン、4−(1−エトキシエトキ)シスチレン、テトラヒドロピラニルオキシスチレン、アダマンチルオキシスチレン、4−(2−メチル−2−アダマンチルオキシ)スチレン、4−(1−メチルシクロヘキシルオキシ)スチレン、トリメチルシリルオキシスチレン、ジメチル−tert−ブチルシリルオキシスチレン、テトラヒドロピラニルオキシスチレン、ベンジルスチレン、トリフルオルメチルスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオルスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。
【0068】
シェル部を構成するモノマーとして使用することができる共重合モノマーとして挙げられたアリルエステル類としては、具体例には、たとえば、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル、アリルオキシエタノール、などが挙げられる。
【0069】
シェル部を構成するモノマーとして使用することができる共重合モノマーとして挙げられたビニルエーテル類としては、具体例には、たとえば、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロルフェニルエーテル、ビニル−2,4−ジクロルフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル、などが挙げられる。
【0070】
シェル部を構成するモノマーとして使用することができる共重合モノマーとして挙げられたビニルエステル類としては、具体例には、たとえば、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレート、などが挙げられる。
【0071】
シェル部を構成するモノマーとして使用することができる共重合モノマーとして挙げられたクロトン酸エステル類としては、具体例には、たとえば、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、グリセリンモノクロトネート、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、ジメチルマレレート、ジブチルフマレート、無水マレイン酸、マレイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリルなどが挙げられる。
【0072】
また、シェル部を構成するモノマーとして使用することができる共重合モノマーとしては、具体的には、たとえば、下記式(IV)〜式(XIII)なども挙げられる。
【0073】
【化5】

【0074】
【化6】

【0075】
【化7】

【0076】
【化8】

【0077】
【化9】

【0078】
【化10】

【0079】
【化11】

【0080】
【化12】

【0081】
【化13】

【0082】
【化14】

【0083】
シェル部を構成するモノマーとして使用することができる共重合モノマーの中で、スチレン類、クロトン酸エステル類が好ましい。シェル部を構成するモノマーとして使用することができる共重合モノマーの中でもスチレン、ベンジルスチレン、クロルスチレン、ビニルナフタレン、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、無水マレイン酸が好ましい。
【0084】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーにおいて、上記式(II)または上記式(III)の少なくとも一方であらわされる繰り返し単位を与えるモノマーは、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いるモノマー全体の仕込み量に対して、仕込み時において、10〜90モル%の範囲で含まれていることが好ましい。前述した繰り返し単位を与えるモノマーは、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いるモノマー全体の仕込み量に対して、仕込み時において、20〜90モル%の範囲で含まれていることがより好ましい。
【0085】
前述した繰り返し単位を与えるモノマーは、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いるモノマー全体の仕込み量に対して、仕込み時において、30〜90モル%の範囲でポリマーに含まれるのがより一層好ましい。特に、シェル部において上記式(II)または上記式(III)であらわされる繰り返し単位が、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いるモノマー全体の仕込み量に対して、仕込み時において、50〜100モル%、好ましくは80〜100モル%の範囲で含まれるのが好適である。
【0086】
前述した繰り返し単位を与えるモノマーが、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いるモノマー全体での仕込み量に対して、仕込み時において、前述の範囲内にあると、当該コアシェル型ハイパーブランチポリマーを含んだレジスト組成物を用いたリソグラフィの現像工程において、露光部が効率よくアルカリ溶液に溶解し除去されるので好ましい。
【0087】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーのシェル部が、上記式(II)または上記式(III)であらわされる繰り返し単位を与えるモノマーとその他のモノマーとの共重合物であるとき、シェル部を形成する全モノマー中における上記式(II)または上記式(III)の少なくとも一方の量は、30〜90モル%であるのが好ましく、50〜70モル%であるのがより好ましい。シェル部を形成する全モノマー中における上記式(II)または上記式(III)の少なくとも一方の量が前述の範囲内にあると、露光部の効率的アルカリ溶解性を阻害せずに、エッチング耐性、ぬれ性、ガラス転移温度の上昇などの機能が付与されるので好ましい。
【0088】
なお、シェル部における上記式(II)または上記式(III)の少なくとも一方であらわされる繰り返し単位とそれ以外の繰り返し単位との量は、目的に応じてシェル部導入時のモル比の仕込み量比により調節することができる。
【0089】
(溶媒)
つぎに、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる溶媒について説明する。コアシェル型ハイパーブランチポリマーの重合反応は、無溶媒でも可能であるが、以下に示した各種の溶媒中でおこなうことが望ましい。コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる溶媒の種類としては、特に限定はされないが、たとえば、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、ニトリル系溶媒、エステル系溶媒、カーボネート系溶媒、アミド系溶媒、などが挙げられる。
【0090】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる溶媒である炭化水素系溶媒としては、具体的には、たとえば、ベンゼン、トルエン、などが挙げられる。コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる溶媒であるエーテル系溶媒としては、具体的には、たとえば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン、などが挙げられる。
【0091】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる溶媒であるハロゲン化炭化水素系溶媒としては、具体的には、たとえば、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、などが挙げられる。コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる溶媒であるケトン系溶媒としては、具体的には、たとえば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、などが挙げられる。コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる溶媒であるアルコール系溶媒としては、具体的には、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、などが挙げられる。
【0092】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる溶媒であるニトリル系溶媒としては、具体的には、たとえば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、などが挙げられる。コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる溶媒であるエステル系溶媒としては、具体的には、たとえば、酢酸エチル、酢酸ブチル、などが挙げられる。コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる溶媒であるカーボネート系溶媒としては、具体的には、たとえば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、などが挙げられる。
【0093】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる溶媒であるアミド系溶媒としては、具体的には、たとえば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、などが挙げられる。コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる溶媒として前述した各種の溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
(金属触媒)
つぎに、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる金属触媒について説明する。コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に際しては、銅、鉄、ルテニウム、クロムなどの遷移金属化合物と配位子との組み合わせからなる金属触媒を使用することが可能である。遷移金属化合物としては、たとえば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅、塩化第一鉄、臭化第一鉄、ヨウ化第一鉄、などが挙げられる。
【0095】
配位子としては、未置換、あるいはアルキル基、アリール基、アミノ基、ハロゲン基、エステル基などにより置換されたピリジン類、ビピリジン類、ポリアミン類、ホスフィン類などが挙げられる。好ましい金属触媒としては、たとえば、塩化銅と配位子により構成される銅(I)ビピリジル錯体、銅(I)ペンタメチルジエチレントリアミン錯体、塩化鉄と配位子より構成される鉄(II)トリフェニルホスフィン錯体、鉄(II)トリブチルアミン錯体、などを挙げることができる。また、配位子としては、他にも、Chem.rev.2001,101,3689−に記載の配位子を使用することもできる。
【0096】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる金属触媒の使用量は、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いるモノマーの全量に対して、仕込み時において、0.01〜70モル%であることが好ましい。コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる金属触媒の使用量は、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いるモノマーの全量に対して、仕込み時において、0.1〜60モル%であることがより好ましい。コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる金属触媒の使用量を前述した量でとすることで、反応性を向上させ、好適な分岐度を有するコアシェル型ハイパーブランチポリマーを合成することができる。
【0097】
コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる金属触媒の使用量が前述した範囲を下回った場合、反応性が著しく低下し、重合が進行しない。一方、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる金属触媒の使用量が前述した範囲を上回った場合、重合反応が過剰に活発になり、生長末端のラジカル同士がカップリング反応しやすくなり、重合の制御が困難になる傾向がある。また、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる金属触媒の使用量が前述の範囲を上回った場合、ラジカル同士のカップリング反応により、反応系のゲル化が誘発される。
【0098】
(還元剤)
つぎに、ハイパーブランチポリマーの合成に用いる還元剤について説明する。ハイパーブランチポリマーの合成に際しては、上述した遷移金属化合物(錯体)と還元剤とを組み合わせて使用する。ハイパーブランチポリマーの合成に用いる還元剤は、特に限定はされないが、使用する遷移金属化合物(錯体)の中心金属よりも酸化数が小さな金属化合物であることが好ましい。具体的に、ハイパーブランチポリマーの合成に用いる還元剤は、たとえば、0価の銅や鉄、あるいは、スズ(II)2−エチルヘキサノエイト、グルコース、アスコルビン酸であることが好ましい。
【0099】
ハイパーブランチポリマーの合成に用いる還元剤の使用量は、金属触媒に対して、0.01〜10モル当量であることが好ましい。還元剤のより好ましい使用量は、金属触媒に対して、0.05〜3モル当量であることがより好ましい。上述した還元剤を前述の量比で使用するとことにより、重合の反応性を低下させることなく、かつ好適な分岐度を有するハイパーブランチポリマーを得ることができる。
【0100】
(金属触媒の調整方法)
つぎに、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる金属触媒の調整方法について説明する。コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる金属触媒は、遷移金属化合物と配位子とからなり、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成における重合反応において、遷移金属化合物と配位子とを装置内で混合し、錯体化されてもよい。遷移金属化合物と配位子からなる金属触媒は、活性を持つ錯体の状態で装置に加えられてもよい。遷移金属化合物と配位子とを装置内で混合し、錯体化される方が、合成作業の簡便化を図ることができる。
【0101】
また、触媒が酸化され、失活するのを防ぐため、重合前には、重合に使用する全ての物質、すなわち、金属触媒、溶媒、モノマーなどは、減圧、あるいは、窒素やアルゴンのような不活性ガスの吹き込みにより、十分に脱酸素されることが好ましい。
【0102】
(金属触媒の添加方法)
つぎに、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる金属触媒の添加方法について説明する。コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いる金属触媒の添加方法は、特に限定されるものではなく、たとえば、重合前に一括して添加することができる。また、重合開始後、金属触媒の失活具合に応じて、金属触媒を追加して添加してもよい。たとえば、金属触媒となる錯体の反応系全体での分散状態が不均一である場合には、遷移金属化合物を装置内にあらかじめ添加しておき、配位子のみを後から添加するようにしてもよい。
【0103】
(ラジカル捕捉剤)
つぎに、ハイパーブランチポリマーの合成に用いるラジカル捕捉剤について説明する。ハイパーブランチポリマーの合成に用いるラジカル捕捉剤としては、特に限定されないが、ラジカルを捕捉し、重合を抑制するために、連鎖移動剤あるいは重合禁止剤を使用することができる。
【0104】
(連鎖移動剤)
連鎖移動剤としては、公知のものを使用することができるが、例えば、アルコール類、目ルカカプタン類、チオカルボン酸類、ハロゲン系炭化水素、ニトロキシド等をあげることができる。
【0105】
<アルコール類>
メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど
【0106】
<メルカプタン類>
エタンチオール、1−ドデカンチオール、1−オクタンチオール、1−ブタンチオール、1−ヘキサデカンチオール、2−メルカプトエタノール、チオグリセロールなど
【0107】
<チオカルボン酸類>
チオグリコール酸、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸オクチル、チオサリチル酸、チオサリチル酸メチル、チオサリチル酸エチル、など
【0108】
<ハロゲン系炭化水素>
ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、臭化アセチル、トリクロロアセチルクロリド、1,1,1-トリクロロー3−ブロモー3−フェニルプロパン、など
【0109】
<ニトロキシド>
2,2,6,6−テトラメチルー1−ピペリジニルオキシ、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルー1−ピペリジニルオキシ、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルー1−ピペリジニルオキシ、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルー1−ピペリジニルオキシ、4,4−ジメチル3−オキサゾリニルオキシ、フェニルーt−ブチルニトロキシド、2,2,5,5−テトラメチルー1−ピロリジニルオキシ、2,2,2−ジ(4−t−オクチルフェニル)−1−ピクリルヒドラジル
【0110】
他に、モノメトキシハイドロキノン、アントラセン、ジフェニルアミン、トリエチルアミン、トリブチルホスフィン、アクロレインオキシム、アズレン、アントラセン、塩化鉄(III)、クロロホスフィン、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、2,4,6−トリニトロトルエン、2,4,6−トリニトロフェノール、1,3,5-トリニトロベンゼン、1−ナフトール、ピロガロール、ベンゼンスルホン酸クロリド等があげられる。
【0111】
(重合禁止剤)
重合禁止剤としては、公知のものを使用することができるが、例えば、キノン系、アルキリフェノール系、アミン系、ジチオカルバミン酸銅系等をあげることができる。
【0112】
<キノン系重合禁止剤>
ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、デュロキノン、ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン、2 , 5 − ジ− t − ブチルベンゾキノン、2 , 6 − ジ− t − ブチルベンゾキノン、p − t e r t − ブチルカテコール
【0113】
<アルキルフェノール系重合禁止剤>
2 , 6 − ジ− t e r t − ブチルフェノール、2 , 4 − ジ− t e r t − ブチルフェノール、2 − t e r t − ブチル− 4 , 6 − ジメチルフェノール、2 , 6 − ジ− t e r t − ブチル− 4 − メチルフェノール、2 , 4 , 6 − トリ−t e r t − ブチルフェノール、1,1−ジフェニルエチレン
【0114】
<アミン系重合禁止剤>
アルキル化ジフェニルアミン、N , N ’ − ジフェニル− p − フェニレンジアミン、フェノチアジン、4 − ヒドロキシ−2 , 2 , 6 , 6 − テトラメチルピペリジン、4 − ベンゾイルオキシ− 2 , 2 , 6 , 6 − テトラメチルピペリジン、1 , 4 − ジヒドロキシ− 2 , 2 , 6 , 6 − テトラメチルピペリジン、1 − ヒドロキシ− 4 − ベンゾイルオキシ− 2 , 2 , 6 , 6 − テトラメチルピペリジン
【0115】
<ジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤>
ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等) 、N − オキシル系重合禁止剤( 2 , 2 , 6 , 6 − テトラメチルピペリジン− N − オキシル、4 − ヒドロキシ− 2 , 2 ,6 , 6 − テトラメチルピペリジン− N − オキシル、4 − ベンゾイルオキシ− 2 , 2 , 6 ,6 − テトラメチルピペリジン− N − オキシル、4 − ヒドロキシ− 2 , 2 , 6 , 6 − テトラメチルピペリジン− N − オキシルのエステル
【0116】
好ましいラジカル捕捉剤としては、ハイドロキノン、モノメトキシハイドロキノン、ベンゾキノン、アントラセン、ジフェニルアミン、トリエチルアミン、トリブチルホスフィン、アクロレインオキシム、アズレン、アントラセン、エタンチオール、塩化鉄(III)、クロロホスフィン、四塩化炭素、臭化アセチル、トリクロロアセチルクロリド、1,1,1-トリクロロー3−ブロモー3−フェニルプロパン、1,1−ジフェニルエチレン、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、2,4,6−トリニトロトルエン、2,4,6−トリニトロフェノール、1,3,5-トリニトロベンゼン、1−ナフトール、ピロガロール、1−ブタンチオール、1−ドデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール、ベンゼンチオールスルホン酸フェニル、ベンゼンスルホン酸クロリド等があげられる。
【0117】
(ラジカル捕捉剤の添加)
ここで、ラジカル捕捉剤の添加について説明する。ラジカル捕捉剤の使用量は、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に用いるすべてのモノマーに対して0.01〜5質量%であることが好ましい。ラジカル捕捉剤を添加するタイミングは、特に限定されるものではなく、たとえば、コア重合を開始するタイミングで添加してもよいし、コア重合が終了するタイミングで添加してもよい。
【0118】
(コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成工程)
つぎに、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法について説明する。実施の形態では、以下に示したコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法を説明する。
【0119】
つぎに、実施の形態1のコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成工程について説明する。コアシェル型ハイパーブランチポリマーの製造に際しては、まず、上述したモノマーを用いてコア重合をおこない、コアシェル型ハイパーブランチポリマーにおけるコア部を生成する。コア重合に際しては、反応系に対して、上述したラジカル捕捉剤を添加する。コア重合に際しては、ラジカルが酸素の影響を受けることを防ぐために、窒素や不活性ガス存在あるいはフロー下、酸素不存在条件の下でおこなわれることが好ましい。
【0120】
また、コア重合は、バッチ方式、連続式のいずれの方法にも適用することができる。コア重合は、たとえば、反応容器内にモノマーを滴下しながら重合をおこなうことができる。触媒が低量である場合、滴下スピードをコントロールすることで、生成されるコア部における高い分岐度を保つことができる。生成されるコア部における高い分岐度を保つために、滴下するモノマーの濃度は、反応全量に対して、1〜50質量%であることが好ましい。滴下するモノマーのより好ましい濃度は、反応全量に対して、2〜20質量%である。
【0121】
重合時間は、重合物の分子量に応じて、0.1〜30時間の間でおこなうのが好ましい。コア重合に際して、反応温度は、0〜200℃の範囲であることが好ましい。コア重合に際してのより好ましい反応温度は、50〜150℃の範囲である。使用溶媒の沸点よりも高い温度で重合させる場合は、たとえば、オートクレープ中で加圧してもよい。
【0122】
コア重合に際しては、反応系を均一に分散することが好ましい。反応系は、たとえば、撹拌することによって均一に分散することができる。コア重合に際しての具体的な撹拌条件としては、たとえば、単位容積当たりの攪拌所要動力が、0.01kW/m3以上であることが好ましい。
【0123】
コア重合に際しては、さらに、重合の進行や触媒の失活の程度に応じて、触媒を追加したり、触媒を再生させる還元剤を添加したりしてもよい。コア重合は、コア重合が所定レベル進行した時点で重合反応を停止させる。コア重合の停止方法は、特に限定されるものではないが、たとえば、冷却する、酸化剤やキレート剤などの添加によって触媒を失活させる、などの方法を用いることができる。
【0124】
シェル重合は、上述したコア重合の後におこなう。シェル重合は、ラジカルが酸素の影響を受けることを防ぐために、窒素や不活性ガス存在下あるいはフロー下、酸素不存在条件の下でおこなわれることが好ましい。シェル重合は、バッチ方式、連続式のいずれの方法にも適用することができる。シェル重合は、上述したコア重合と連続しておこなってもよいし、コア重合後に金属触媒とモノマーを除去してから、再度、金属触媒を添加することでおこなってもよい。
【0125】
シェル重合に際しては、上述したコア重合によって合成された重合物を、反応開始前にあらかじめ反応系内に金属触媒を設けておき、この反応系にコア部およびモノマーを滴下する。あるいは、あらかじめ金属触媒とコア部が存在する反応用の釜に、上述したシェル部を構成するモノマーを滴下するようにしてもよい。また、重合前、あるいは、重合中にラジカル捕捉剤を添加しても良い。
【0126】
シェル重合に際してのコア部の濃度は、仕込み時において、反応全量に対して0.1〜30質量%であることが好ましい。シェル重合に際してのコア部の濃度は、仕込み時において、反応全量に対して1〜20質量%であることがより好ましい。
【0127】
シェル重合に際してのシェル部を構成するモノマーの濃度は、コア部の反応活性点に対して、仕込み時において、0.5〜20モル当量であることが好ましい。シェル重合に際してのシェル部を構成するモノマーの濃度は、コア部の反応活性点に対して、仕込み時において、1〜15モル当量であることがより好ましい。シェル重合に際してのシェル部を構成するモノマー量を適切にコントロールすることで、コアシェル型ハイパーブランチポリマーにおけるコア/シェル比をコントロールすることができる。
【0128】
シェル重合に際しての重合時間は、重合物の分子量に応じて、たとえば、0.1〜30時間の間でおこなうのが好ましい。シェル重合に際しての反応温度は、0〜200℃の範囲であることが好ましい。シェル重合に際しての反応温度は、50〜150℃の範囲であることがより好ましい。使用溶媒の沸点よりも高い温度で重合させる場合は、たとえば、オートクレープ中で加圧するようにしてもよい。
【0129】
シェル重合に際しては、反応系を均一にする。反応系は、たとえば、撹拌することによって均一にすることができる。シェル重合に際しての具体的な撹拌条件としては、たとえば、単位容積当たりの攪拌所要動力が、0.01kW/m3以上とすることが好ましい。
【0130】
シェル重合に際しては、さらに、重合の進行や金属触媒の失活に応じて、金属触媒の追加や金属触媒を再生させる還元剤を添加してもよい。シェル重合に際しては、シェル重合が所定レベル進行した時点で重合反応を停止させる。シェル重合の停止方法は、特に限定されるものではないが、たとえば、冷却する、酸化剤やキレート剤などの添加によって金属触媒を失活させる、などの方法用いることができる。
【0131】
上述したシェル重合をおこなった後は、金属触媒の除去と、モノマーの除去と、をおこなう。なお、金属触媒の除去やモノマーの除去を含む精製の処理に際しては、上述したラジカル捕捉剤も同時に除去される。
【0132】
(金属触媒の除去と、モノマーの除去)
金属触媒の除去は、上述したシェル重合終了後におこなう。金属触媒の除去方法は、たとえば、以下に示す(S−1)〜(S−3)の方法を、単独あるいは複数組み合わせておこなうことができる。
【0133】
(S−1)キョーワードのような各種吸着剤を使用する。
(S−2)濾過や遠心分離によって不溶物を除去する。
(S−3)キレート効果のある物質を含む水溶液で抽出する。
【0134】
上記の(S−3)の方法を用いた触媒除去に用いるキレート効果のある物質としては、たとえば、蟻酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、マロン酸等の有機カルボン酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミノ五酢酸等のアミノカーボネート、ヒドロキシアミノカーボネート、などが挙げられる。上記の(S−3)の方法を用いた触媒除去に用いるキレート効果のある物質としては、たとえば、無機酸である塩酸、硫酸などが挙げられる。キレート能を持つ物質の水溶液中の濃度は、化合物のキレート能に応じて異なるが、たとえば、0.05質量%〜10質量%であることが好ましい。
【0135】
(モノマーの除去)
モノマーの除去は、金属触媒の除去後におこなっても、金属触媒の除去に引き続く金属洗浄までおこなった後におこなってもどちらでも良い。モノマーの除去に際しては、上述したコア重合およびシェル重合に際して滴下したモノマーのうち、未反応のモノマーを除去する。未反応のモノマーを除去する方法としては、たとえば、以下に示す(S−4)〜(S−5)の方法を、単独あるいは複数組み合わせておこなうことができる。
【0136】
(S−4)良溶媒に溶解した反応物に貧溶媒を添加することにより、ポリマーを沈殿させる。
(S−5)良溶媒と貧溶媒の混合溶媒でポリマーを洗浄する。
【0137】
上記の(S−4)〜(S−5)において、良溶媒としては、たとえば、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、ニトリル、エーテル、ケトン、エステル、炭酸エステルまたはこれらを含む混合溶媒が挙げられる。具体的には、たとえば、テトラヒドロフランやクロロベンゼン、クロロホルムなどが挙げられる。貧溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、水、またはこれらの溶媒を組み合わせた溶媒が挙げられる。なお、未反応のモノマーを除去する方法としては、上述した方法に特に限定されるものではない。
【0138】
(微量金属の除去)
つぎに、微量金属の除去について説明する。微量金属の除去に際しては、上述した金属触媒の除去およびモノマーの除去後に、ポリマー中に残存する微量の金属を低減させる。ポリマー中に残存する微量の金属を低減させる方法としては、たとえば、以下に示す(S−6)〜(S−7)の方法を単独、あるいは複数組み合わせておこなうことができる。
【0139】
(S−6)キレート能を持つ有機化合物の水溶液、無機酸水溶液、および純水によって液々抽出する。
(S−7)吸着剤、イオン交換樹脂を使用する。
【0140】
上記の(S−6)における液々抽出に用いる有機溶媒としては、たとえば、クロロベンゼンやクロロホルムのようなハロゲン化炭化水素、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミルのような酢酸エステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタン、2−ペンタノンのようなケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルアセテート類、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類などが好ましいものとして挙げられる。
【0141】
より好ましくは、上記の(S−6)における液々抽出に使用する有機溶媒としては、たとえば、クロロホルム、メチルイソブチルケトン、酢酸エチルなどが挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。上記の(S−6)にしたがった場合の液々抽出に際して、上述した精製後のコアシェル型ハイパーブランチポリマーの有機溶媒に対する質量%は、1〜30質量%程度であるのが好ましい。さらに好ましい有機溶媒に対するレジストポリマー中間体の質量%は、5〜20質量%程度である。
【0142】
上記の(S−6)にしたがった場合の液々抽出に用いるキレート能を持つ有機化合物としては、たとえば、蟻酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、マロン酸などの有機カルボン酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミノ五酢酸などのアミノカーボネート、ヒドロキシアミノカーボネートなどがあげられる。上記の(1)における液々抽出に用いる無機酸としては、塩酸、硫酸があげられる。
【0143】
上記の(S−6)にしたがった場合の液々抽出に際して、キレート能を持つ有機化合物および無機酸の水溶液中の濃度は、たとえば、0.05質量%〜10質量%であることが好ましい。なお、上記の(S−6)における液々抽出に際しての、キレート能を持つ有機化合物および無機酸の水溶液中の濃度は、化合物のキレート能に応じて異なる。
【0144】
金属除去に際して、キレート能を持つ有機化合物の水溶液、無機酸水溶液を用いる場合、キレート能を持つ有機化合物の水溶液と無機酸水溶液とを混合して用いてもよいし、キレート能を持つ有機化合物の水溶液と無機酸水溶液とを別々に用いてもよい。キレート能を持つ有機化合物の水溶液と無機酸水溶液とを別々に用いる場合、キレート能を持つ有機化合物の水溶液または無機酸水溶液のどちらを先に用いてもよい。
【0145】
金属除去に際して、キレート能を持つ有機化合物の水溶液と無機酸水溶液とを別々に用いる場合に、無機酸水溶液を後半におこなう方がより好ましい。これは、キレート能を持つ有機化合物の水溶液が、銅触媒や多価金属の除去に有効であり、無機酸水溶液が、実験器具などに由来する1価金属の除去に有効であるためである。
【0146】
このため、キレート能を持つ有機化合物の水溶液と無機酸水溶液とを混合して用いる場合においても、後半に単独の無機酸水溶液を用いてシェル部の洗浄をおこなうことが望ましい。抽出回数は特に制限されるものではないが、たとえば、2〜5回おこなうのが望ましい。実験器具などに由来する金属の混入を防止するため、特に銅イオンが減少した状態で用いる実験器具は、予備洗浄をおこなったものを用いることが好ましい。予備洗浄の方法は特に限定されないが、たとえば、硝酸水溶液による洗浄などがあげられる。
【0147】
無機酸水溶液単独による洗浄の回数は、1〜5回が好ましい。無機酸水溶液単独による洗浄を1〜5回おこなうことにより、1価金属を十分に除去することができる。また、残留する酸成分を除去するため、最後に純水による抽出処理をおこない、酸を完全に除去することが好ましい。純水による洗浄の回数は、1〜5回が好ましい。純水による洗浄を1〜5回おこなうことにより、残留する酸を十分に除去することができる。
【0148】
金属除去に際して、精製されたコアシェル型ハイパーブランチポリマーを含む反応溶媒(以下、単に「反応溶媒」という。)とキレート能を持つ有機化合物の水溶液、無機酸水溶液、および純水との比率は、いずれも体積比にして1:0.1〜1:10が好ましい。より好ましい上記の比率は、体積比にして、1:0.5〜1:5である。このような比率の溶媒を用いて洗浄することにより、適度な回数で、金属を容易に除去することができる。これによって、操作の容易化、操作の簡易化を図ることができ、コアシェル型ハイパーブランチポリマーを効率よく合成する上で好適である。反応溶媒に溶解しているレジストポリマー中間体の質量濃度は、溶媒に対して、通常1〜30質量%程度であることが好ましい。
【0149】
上記の(S−6)における液々抽出処理は、たとえば、反応溶媒とキレート能を持つ有機化合物の水溶液、無機酸水溶液、および純水を混合した混合溶媒(以下、単に「混合溶媒」という。)を、2層に分離させ、金属イオンが移行した水層をデカンテーションなどにより、除去することによりおこなう。
【0150】
混合溶媒を2層に分離させる方法としては、たとえば、反応溶媒に、キレート能を持つ有機化合物の水溶液、無機酸水溶液、および純水を添加し、攪拌などにより十分に混合した後、静置することによっておこなう。また、混合溶媒を2層に分離させる方法としては、たとえば、遠心分離法を用いてもよい。
【0151】
上記の(S−6)における液々抽出処理は、たとえば、10〜50℃の温度においておこなうことが好ましい。上記の(S−6)における液々抽出処理は、20〜40℃の温度においておこなうことがより好ましい。
【0152】
(脱保護)
つぎに、脱保護について説明する。脱保護は、金属除去後に、酸分解性基の部分的分解をおこなう。酸分解性基の部分的分解に際しては、たとえば、酸分解性基の一部を上述した酸触媒用いて酸基に分解する。
【0153】
酸分解性基の一部を上述した酸触媒用いて酸基に分解する(酸分解性基を部分的に分解する)際には、コアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマー中の酸分解性基に対して、通常、0.001〜100当量の酸触媒を用いる。酸触媒としては、たとえば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ギ酸、などが挙げられる。
【0154】
酸分解性基を部分的に分解する反応に使用される有機溶媒は、上述した金属除去後のコアシェル型ハイパーブランチポリマーを溶解しうるものであり、かつ、水に対する相溶性を有するものであることが好ましい。具体的に、酸分解性基を部分的に分解する反応に使用される有機溶媒としては、入手のしやすさや、扱いの容易さから、たとえば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、およびこれらの混合物からなる群から選ばれるのが好ましい。
【0155】
酸分解性基を部分的に分解する反応に使用される有機溶媒の量は、上述した金属除去後のコアシェル型ハイパーブランチポリマーと酸触媒が溶解していれば、特に限定はされないが、上述した金属除去後のコアシェル型ハイパーブランチポリマーに対して、5〜500質量倍であることが好ましい。
【0156】
酸分解性基を部分的に分解する反応に使用される有機溶媒の量は、上述した金属除去後のコアシェル型ハイパーブランチポリマーに対して、8〜200質量倍であることがより好ましい。酸分解性基を部分的に分解する反応は、50〜150℃で10分〜20時間加熱攪拌することによりおこなうことができる。
【0157】
上述した脱保護後のコアシェル型ハイパーブランチポリマーにおける、酸分解性基と酸基との比率は、導入した酸分解性基を含有するモノマー中の5〜80モル%が脱保護されて酸基に変換されていることが好ましい。酸分解性基と酸基との比率が上記のような範囲にあると、高感度と露光後の効率的なアルカリ溶解性が達成されるため好ましい。
【0158】
なお、たとえば、上述した脱保護後のコアシェル型ハイパーブランチポリマーをフォトレジストなどのレジスト組成物に利用した場合、当該レジスト組成物の組成によって、当該コアシェル型ハイパーブランチポリマーの酸分解性基と酸基との比率の最適値は異なる。酸分解性基と酸基との比率は、酸触媒の量、温度、反応時間を適宜選択することで、調節することができる。
【0159】
酸分解性基を部分的分解する反応後は、反応液を超純水と混合し、酸分解性基を部分的分解する反応後のコアシェル型ハイパーブランチポリマーを析出させた後、析出されたコアシェル型ハイパーブランチポリマーを含む溶液を用いて遠心分離、濾過、デカンテーションなどをおこなうことで、酸分解性基を部分的分解する反応後のコアシェル型ハイパーブランチポリマーを分離する。その後、析出されたコアシェル型ハイパーブランチポリマーを再度有機溶媒に溶解し、析出されたコアシェル型ハイパーブランチポリマーを溶解した溶液と超純水とを用いて液々抽出をおこなって、残存する酸触媒を除去する。
【0160】
前述の液々抽出において使用される有機溶媒は、析出されたコアシェル型ハイパーブランチポリマーを溶解しうるものであり、かつ、水に対する相溶性が低いあるいは相溶性がないものであることが好ましい。このような性質を有している有機溶媒であれば特に限定されるものではないが、前述した液々抽出において使用される有機溶媒としては、たとえば、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、などが挙げられる。
【0161】
析出されたコアシェル型ハイパーブランチポリマーの、前述した液々抽出において使用される有機溶媒に対する溶解度は、当該コアシェル型ハイパーブランチポリマー分子内の酸分解性基と酸基との割合に応じて異なる。このため、前述した液々抽出において使用される有機溶媒中における、析出されたコアシェル型ハイパーブランチポリマーの濃度は、特に限定されるものではないが、たとえば、1〜40質量%の範囲にあることが好ましい。
【0162】
前述した液々抽出に使用される超純水は、有機溶媒に対して、超純水/有機溶媒=0.1/1〜1/0.1の範囲にあることが好ましい。この範囲の中でも、酸分解性基の一部を上述した酸触媒用いて酸基に分解する際には、前述した液々抽出に使用される超純水を、超純水/有機溶媒=0.5/1〜1/0.5の範囲で用いることで、廃液量の減少を図ることができるので、好ましい。
【0163】
前述した液々抽出は、10〜50℃の範囲において、水層のpHが中性を示すようになるまで繰り返されることが好ましい。抽出回数は、使用する酸の濃度に応じて決定されるが、工業化のためのコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成のスケールアップにともなう廃液量の増加を抑制するためには、1〜10回の範囲にあることが好ましい。前述した液々抽出抽出後は、液々抽出に用いた有機溶媒を留去し、乾燥させる。これによって、所望する構造を有するコアシェル型ハイパーブランチポリマーを得ることができる。
【0164】
(分子構造)
つぎに、上述したコアシェル型ハイパーブランチポリマーの分子構造について説明する。コアシェル型ハイパーブランチポリマーにおけるコア部の分岐度(Br)は、0.3〜0.5であるのが好ましい。より好ましい分岐度(Br)は、0.4〜0.5である。コアシェル型ハイパーブランチポリマーにおけるコア部の分岐度(Br)が、上記の範囲にある場合、ポリマー分子間での絡まりが小さく、パターン側壁における表面ラフネスが抑制されるので好ましい。
【0165】
ここで、コアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーにおけるコア部の分岐度(Br)は、生成物の1H−NMRを測定し、以下のようにして求めることができる。すなわち、4.6ppmに現われる−CH2Cl部位のプロトンの積分比H1°と、4.8ppmに現われる−CHCl部位のプロトンの積分比H2°を用いて、下記数式(A)の演算をおこなうことにより算出できる。−CH2Cl部位と−CHCl部位との両方で重合が進行し、分岐が高まった場合、分岐度(Br)の値は0.5に近づく。
【0166】
【数1】

【0167】
コアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーにおけるコア部の重量平均分子量は、300〜8,000であるのが好ましく、500〜8,000であるのもまた好ましく、1,000〜8,000であるのが最も好ましい。コア部の分子量がこのような範囲にあると、コア部は球状形態をとり、また酸分解性基導入反応において、反応溶媒への溶解性を確保できるので好ましい。さらに、成膜性に優れ、上記分子量範囲のコア部に酸分解性基を誘導したコアシェル型ハイパーブランチポリマーおいて、未露光部の溶解抑止に有利となるので好ましい。
【0168】
コアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーにおけるコア部の多分散度(Mw/Mn)は1〜3であるのが好ましく、1〜2.5であるのがさらに好ましい。このような範囲にあると、露光後に不溶化などの悪影響を招く恐れがなく、望ましい。
【0169】
上述したコアシェル型ハイパーブランチポリマーの重量平均分子量(M)は、500〜21,000が好ましく、2,000〜21,000がより好ましく、最も好ましくは3,000〜21,000である。コアシェル型ハイパーブランチポリマーの重量平均分子量(M)がこのような範囲にあると、該コアシェル型ハイパーブランチポリマーを含有するレジストは、成膜性が良好であり、リソグラフィ工程で形成された加工パターンの強度があるため形状を保つことができる。またドライエッチング耐性にも優れ、表面ラフネスも良好である。
【0170】
ここで、コアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーにおけるコア部の重量平均分子量(Mw)は、たとえば、0.05質量%のテトラヒドロフラン溶液を調製し、温度40℃でGPC(Gel Permeation Chromatography)測定をおこなって求めることができる。測定に際しては、移動溶媒としてはテトラヒドロフランを用い、標準物質としてはポリスチレンを使用するとともに、GPC HLC−8020型装置を用いて、カラムをTSKgel HXL−M(東ソー株式会社製)2本を連結する。
【0171】
上述したコアシェル型ハイパーブランチポリマーの重量平均分子量(M)は、酸分解性基が導入されたポリマーの各繰り返し単位の導入比率(構成比)を1H−NMRにより求め、コアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部分の重量平均分子量(Mw)をもとにして、各構成単位の導入比率および、各構成単位の分子量を使って計算により求めることができる。なお、合成されたコアシェル型ハイパーブランチポリマーの形状は、NMRによる1級と2級との水素から球状であると判断できる。
【0172】
上述したように、実施の形態によれば、ゲル化することなく、安定してリビングラジカル重合をおこなうことができるので、容易な処理によって、レジスト用コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成を実現することができる。また、実施の形態によれば、金属触媒を用いることなくリビングラジカル重合をおこなうことができるので、反応系が均一であり、安定した製造も可能となる。
【0173】
また、このようなコアシェル型ハイパーブランチポリマーまたはスターポリマーを含むレジスト組成物によれば、フォトレジストにおいて、パターン状に露光された後、現像をおこなってパタニング処理することができる。
【0174】
当該レジスト組成物は、表面平滑性がナノオーダーで求められる電子線、遠紫外線(DUV)、および極紫外線(EUV)光源に対応し得、半導体集積回路製造用の微細パターンを形成することができる。これによって、この発明にかかる製造方法を用いて生成されたコアシェル型ハイパーブランチポリマーを含むレジスト組成物は、波長の短い光を照射する光源を用いて製造される半導体集積回路を用いる各種分野において好適に用いることができる。
【0175】
また、実施の形態のコアシェル型ハイパーブランチポリマーを含むレジスト組成物を用いて製造される半導体集積回路においては、製造に際して露光および加熱し、アルカリ現像液に溶解させた後、水洗などによって洗浄した場合に、露光面に溶け残りが殆ど無く、ほぼ垂直なエッジを得ることができる。これによって、性能が安定し、高集積、高容量な半導体集積回路を得ることができる。
【0176】
(レジスト組成物)
つぎに、コアシェル型ハイパーブランチポリマーを用いたレジスト組成物について説明する。コアシェル型ハイパーブランチポリマーを用いたレジスト組成物(以下、単に「レジスト組成物」という。)における、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの配合量は、レジスト組成物の全量に対し、4〜40質量%が好ましく、4〜20質量%がより好ましい。
【0177】
レジスト組成物は、上述したコアシェル型ハイパーブランチポリマーと、光酸発生剤と、を含んでいる。レジスト組成物は、さらに、必要に応じて、酸拡散抑制剤(酸捕捉剤)、界面活性剤、その他の成分、および溶剤などを含んでいてもよい。
【0178】
レジスト組成物に含まれる光酸発生剤としては、たとえば、紫外線、X線、電子線など
が照射された場合に酸を発生するものであれば特に制限はなく、公知の各種光酸発生剤の中から目的に応じて適宜選択することができる。具体的に、光酸発生剤としては、たとえば、オニウム塩、スルホニウム塩、ハロゲン含有トリアジン化合物、スルホン化合物、スルホネート化合物、芳香族スルホネート化合物、N−ヒドロキシイミドのスルホネート化合物、などが挙げられる。
【0179】
上述した光酸発生剤に含まれるオニウム塩としては、たとえば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールセレノニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、などが挙げられる。前記ジアリールヨードニウム塩としては、たとえば、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、などが挙げられる。
【0180】
上述したオニウム塩に含まれるトリアリールセレノニウム塩としては、具体的には、たとえば、トリフェニルセレノニウムヘキサフロロホスホニウム塩、トリフェニルセレノニウムホウフツ化塩、トリフェニルセレノニウムヘキサフロロアンチモネート塩、などが挙げられる。上述したオニウム塩に含まれるトリアリールスルホニウム塩としては、たとえば、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスホニウム塩、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート塩、ジフェニル−4一チオフエノキシフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート塩、ジフェニル−4−チオフエノキシフェニルスルホニウムペンタフロロヒドロキシアンチモネート塩、などが挙げられる。
【0181】
上述した光酸発生剤に含まれるスルホニウム塩としては、たとえば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、p−トリルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−(2−ナフトイルメチル)チオラニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−(2−ナフトイルメチル)チオラニウムトリフルオロアンチモネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、などが挙げられる。
【0182】
上述した光酸発生剤に含まれるハロゲン含有トリアジン化合物としては、具体的には、たとえば、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチルト1,3,5−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチルト1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシ−1−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソラン−5−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−メトキシスチリル)4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−ブトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−ベンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、などが挙げられる。
【0183】
上述した光酸発生剤に含まれるスルホン化合物としては、具体的には、たとえば、ジフェニルジスルホン、ジ−p−トリルジスルホン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−tert−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−キシリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロへキシルスルホニル)ジアゾメタン、(ベンゾイル)(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニルアセトフェノン、などが挙げられる。
【0184】
上述した光酸発生剤に含まれる芳香族スルホネート化合物としては、具体的には、たとえば、α−ベンゾイルベンジルp−トルエンスルホネート(通称ベンゾイントシレート)、β−ベンゾイル−β−ヒドロキシフェネチルp−トルエンスルホネート(通称α−メチロールベンゾイントシレート)、1,2,3−ベンゼントリイルトリスメタンスルホネート、2,6−ジニトロベンジルp−トルエンスルホネート、2−ニトロベンジルp−トルエンスルホネート、4−ニトロベンジルp−トルエンスルホネート、などが挙げられる。
【0185】
上述した光酸発生剤に含まれるN−ヒドロキシイミドのスルホネート化合物としては、具体的には、たとえば、N−(フェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(p−クロロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(シクロへキシルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(1−ナフテルスルホニルオキシ)スクシンイミド、n−(ベンジルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−5−ノルポルネン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフタルイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ナフタルイミド、などが挙げられる。
【0186】
上述した各種の光酸発生剤のうち、スルホニウム塩が好ましい。特に、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート;スルホン化合物、特に、ビス(4−tert−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタンが好ましい。
【0187】
上述した光酸発生剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。光酸発生剤の配合率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、コアシェル型ハイパーブランチポリマー100質量部に対し0.1〜30質量部が好ましい。より好ましい光酸発生剤の配合率は、0.1〜10質量部である。
【0188】
レジスト組成物に含まれる酸拡散抑制剤としては、露光により酸発生剤から生じる酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する作用を有する成分であれば特に制限はない。レジスト組成物に含まれる酸拡散抑制剤は、公知のも各種の酸拡散抑制剤の中から、目的に応じて適宜選択することができる。
【0189】
レジスト組成物に含まれる酸拡散抑制剤としては、たとえば、同一分子内に窒素原子を1個有する含窒素化合物、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物、同一分子内に窒素原子を3個以上有するポリアミノ化合物や重合体、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物、などが挙げられる。
【0190】
上記の酸拡散抑制剤として挙げられた、同一分子内に窒素原子を1個有する含垂素化合物としては、たとえば、モノ(シクロ)アルキルアミン、ジ(シクロ)アルキルアミン、トリ(シクロ)アルキルアミン、芳香族アミン、などが挙げられる。モノ(シクロ)アルキルアミンとしては、具体的には、たとえば、n−ヘキシルアミン、n−へブチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、シクロへキシルアミン、などが挙げられる。
【0191】
同一分子内に窒素原子を1個有する含垂素化合物に含まれるジ(シクロ)アルキルアミンとしては、たとえば、ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ベンチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−ヘブチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ノニルアミン、ジ−n−デシルアミン、シクロへキシルメチルアミン、などが挙げられる。
【0192】
同一分子内に窒素原子を1個有する含垂素化合物に含まれるトリ(シクロ)アルキルアミンとしては、たとえば、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ベンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−へブチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、などが挙げられる。
【0193】
同一分子内に窒素原子を1個有する含垂素化合物に含まれる芳香族アミンとしては、たとえば、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ナフチルアミン、などが挙げられる。
【0194】
上記の酸拡散抑制剤として挙げられた、同一分子内に窒素原子を2個有する含窒素化合物としては、たとえば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、1,3−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、などが挙げられる。
【0195】
上記の酸拡散抑制剤として挙げられた、同一分子内に窒素原子を3個以上有するポリアミノ化合物や重合体としては、たとえば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、N−(2−ジメチルアミノエチル)アクリルアミドの重合体、などが挙げられる。
【0196】
上記の酸拡散抑制剤として挙げられた、アミド基含有化合物としては、たとえば、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロへキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4,−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミンN,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノへブタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N,−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N,−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N,−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダソール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、などが挙げられる。
【0197】
上記の酸拡散抑制剤として挙げられたウレア化合物としては、具体的には、たとえば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア、などが挙げられる。
【0198】
上記の酸拡散抑制剤として挙げられた含窒素複素環化合物としては、具体的には、たとえば、イミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミグゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、2−メチル−4−フェニルピリジン、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、4−ヒドロキシキノリン、8−オキシキノリン、アクリジン、ピベラジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピベラジン、ピラジン、ピラソール、ビリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピベリジン、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1,4−ジメチピベラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、などが挙げられる。
【0199】
上記の酸拡散抑制剤は、単独または2種以上を混合して使用することができる。上記の酸拡散抑制剤の配合量としては、光酸発生剤100質量部に対して0.1〜1000質量部が好ましい。上記の酸拡散抑制剤のより好ましい配合量は、光酸発生剤100質量部に対して0.5〜10質量部である。なお、上記の酸拡散抑制剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0200】
レジスト組成物に含まれる界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、などが挙げられる。なお、レジスト組成物に含まれる界面活性剤としては、塗布性、ストリエーション、現像性などを改良する作用を示す成分であれば特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。
【0201】
レジスト組成物に含まれる界面活性剤として挙げられたポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、具体的には、たとえば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、などが挙げられる。レジスト組成物に含まれる界面活性剤挙げられたポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルとしては、たとえば、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、などが挙げられる。
【0202】
レジスト組成物に含まれる界面活性剤として挙げられたソルビタン脂肪酸エステルとしては、具体的には、たとえば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルヒ゛タンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート、などが挙げられる。レジスト組成物に含まれる界面活性剤として挙げられたポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのノニオン系界面活性剤としては、具体的には、たとえば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、などが挙げられる。
【0203】
レジスト組成物に含まれる界面活性剤として挙げられたフッ素系界面活性剤としては、具体的には、たとえば、エフトップEF301、EF303、EF352(新秋田化成(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SX102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)、などが挙げられる。
【0204】
レジスト組成物に含まれる界面活性剤として挙げられたシリコン系界面活性剤としては、たとえば、オルガノシロキサンボリマーKP341(信越化学工業(株)製)、などが挙げられる。上述した各種の界面活性剤は、単独または2種以上を混合して使用することができる。上述した各種の界面活性剤の配合量としては、たとえば、実施の形態の合成方法にしたがって合成されたコアシェル型ハイパーブランチポリマー100質量部に対して0.0001〜5質量部が好ましく、0.0002〜2質量部であることがより好ましい。なお、上述した各種の界面活性剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0205】
レジスト組成物に含まれるその他の成分としては、たとえば、増感剤、溶解制御剤、酸解離性基を有する添加剤、アルカリ可溶性樹脂、染料、顔料、接着助剤、消泡剤、安定剤、ハレーション防止剤、などが挙げられる。レジスト組成物に含まれるその他の成分として挙げられた増感剤としては、具体的には、たとえば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ビレン類、アントラセン類、フェノチアジン類、などが挙げられる。上記の増感剤としては、放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを光酸発生剤に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を示し、レジスト組成物のみかけの感度を向上させる効果を有するものであれば特に制限はない。上記の増感剤は、単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0206】
レジスト組成物に含まれるその他の成分として挙げられた溶解制御剤としては、具体的には、たとえば、ポリケトン、ポリスピロケタール、などが挙げられる。レジスト組成物に含まれるその他の成分として挙げられた溶解制御剤は、レジストとしたときの溶解コントラストおよび溶解速度をより適切に制御するものであれば特に制限はない。レジスト組成物に含まれるその他の成分として挙げられた溶解制御剤は、単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0207】
レジスト組成物に含まれるその他の成分として挙げられた酸解離性基を有する添加剤としては、具体的には、たとえば、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル、1−アダマンタンカルボン酸t−ブトキシカルボニルメチル、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジ−t−ブチル、1−アダマンタン酢酸t−ブチル、1−アダマンタン酢酸t−ブトキシカルボニルメチル、1,3−アダマンタンジ酢酸ジ−t−ブチル、デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−フェトキシエチル、デオキシコール酸2−シクロヘキシルオキシエチル、デオキシコール酸3−オキソシクロヘキシル、デオキシコール酸テトラヒドロピラニル、デオキシコール酸メバロノラクトンエステル、リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル、リトコール酸2−シクロヘキシルオキシエチル、リトコール酸3−オキソシクロヘキシル、リトコール酸テトラヒドロピラニル、リトコール酸メバロノラクトンエステル、などが挙げられる。上記各種の酸解離性基を有する添加剤は、単独または2種以上を混合して使用することができる。なお、上記各種の酸解離性基を有する添加剤は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性などをさらに改善するものであれば特に制限はない。
【0208】
レジスト組成物に含まれるその他の成分として挙げられたアルカリ可溶性樹脂としては、具体的には、たとえば、ポリ(4−ヒドロキシスチレン)、部分水素添加ポリ(4−ヒドロキシスチレン)、ポリ(3−ヒドロキシスチレン)、ポリ(3−ヒドロキシスチレン)、4−ヒドロキシスチレン/3−ヒドロキシスチレン共重合体、4−ヒドロキシスチレン/スチレン共重合体、ノボラック樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などが挙げられる。
【0209】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、通常、1000〜1000000、好ましくは2000〜100000である。上記のアルカリ可溶性樹脂は、単独または2種以上を混合して使用することができる。なお、レジスト組成物に含まれるその他の成分として挙げられたアルカリ可溶性樹脂としては、この発明のレジスト組成物のアルカリ可溶性を向上させるものであれば特に制限はない。
【0210】
レジスト組成物に含まれるその他の成分として挙げられた染料あるいは顔料は、露光部の潜像を可視化させる。露光部の潜像を可視化させることによって、露光時のハレーションの影響を緩和することができる。また、レジスト組成物に含まれるその他の成分として挙げられた接着助剤は、レジスト組成物と基板との接着性を改善することができる。
【0211】
レジスト組成物に含まれるその他の成分として挙げられた溶剤としては、具体的には、たとえば、ケトン、環状ケトン、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル、3−アルコキシプロピオン酸アルキル、その他の溶剤などが挙げられる。レジスト組成物に含まれるその他の成分として挙げられた溶剤は、たとえば、レジスト組成物に含まれるその他の成分などを溶解することができる限り特に制限はなく、レジスト組成物に安全に使用可能なものの中から適宜選択することができる。
【0212】
レジスト組成物に含まれるその他の成分として挙げられた溶剤に含まれるケトンとしては、具体的には、たとえば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−メチル−2−ブタノン、2−ヘキサノン、4−メチル−2−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノン、2−へブタノン、2−オクタノン、などが挙げられる。
【0213】
レジスト組成物に含まれるその他の成分として挙げられた溶剤に含まれる環状ケトンとしては、具体的には、たとえば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2−メチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、イソホロン、などが挙げられる。
【0214】
レジスト組成物に含まれるその他の成分として挙げられた溶剤に含まれるプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、具体的には、たとえば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−i−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−i−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−SeC−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテルアセテート、などが挙げられる。
【0215】
レジスト組成物に含まれるその他の成分として挙げられた溶剤に含まれる2−ヒドロキシプロピオン酸アルキルとしては、具体的には、たとえば、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸n−プロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸i−プロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸n−ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸i−ブチル、2−ヒドロキシアロビオン酸sec−ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸t−ブチル、などが挙げられる。
【0216】
レジスト組成物に含まれるその他の成分として挙げられた溶剤に含まれる3−アルコキシプロピオン酸アルキルとしては、たとえば、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、などが挙げられる
【0217】
レジスト組成物に含まれるその他の成分として挙げられた溶剤に含まれるその他の溶剤としては、たとえば、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルプチレート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルピン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンジルエチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、γ−プチロラクトン、トルエン、キシレン、カブロン酸、カプリル酸、オクタン、デカン、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、しゆう酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。上記の溶剤は、単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0218】
上述したように、実施の形態のコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法によれば、合成に際してのコアシェル型ハイパーブランチポリマー分子間における架橋に起因するゲル化を防止して、工業スケールでの合成に際してのプロセスの安定化を図ることができる。
【0219】
ラジカル捕捉剤の添加量や添加するタイミングを、たとえば、モノマーの重合によって得られるコアシェル型ハイパーブランチポリマーの分子量などに応じて調整することで、目的とする分子量を有するコアシェル型ハイパーブランチポリマーを、ゲル化させることなく合成することができる。
【0220】
また、実施の形態のコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法によれば、コアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部となりうるコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成に際しての、当該コアシェル型ハイパーブランチポリマー分子間における架橋に起因するゲル化を防止して、工業スケールでの合成に際してのプロセスの安定化を図ることができるコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法を提供することができる。
【0221】
また、実施の形態のコアシェル型ハイパーブランチポリマーを含むレジスト組成物は、パターン状に露光された後、現像をおこなってパタニング処理することができる。当該レジスト組成物は、表面平滑性がナノオーダーで求められる電子線、遠紫外線(DUV)、および極紫外線(EUV)光源に対応し得、半導体集積回路製造用の微細パターンを形成することができる。これによって、実施の形態のコアシェル型ハイパーブランチポリマーを含むレジスト組成物は、波長の短い光を照射する光源を用いて製造される半導体集積回路を用いる各種分野において好適に用いることができる。
【0222】
また、実施の形態のコアシェル型ハイパーブランチポリマーを含むレジスト組成物を用いて製造される半導体集積回路においては、製造に際して露光および加熱し、アルカリ現像液に溶解させた後、水洗などによって洗浄した場合に、露光面に溶け残りが殆ど無く、ほぼ垂直なエッジを得ることができる。
【0223】
以下に、上述した実施の形態の実施例について説明する。この発明にかかる、上述した実施の形態の実施例は、以下に示した具体例に限るものではなく、以下に示した具体例によって何等限定的に解釈されるものではない。
【0224】
実施例においては、以下に示すようにハイパーブランチポリマーを製造し、製造されたハイパーブランチポリマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分岐度(Br)、およびコア/シェル比を測定した。
【0225】
<重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)>
はじめに、実施例におけるハイパーブランチポリマー(コア部)の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)について説明する。実施例におけるハイパーブランチポリマー(コア部)の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、0.05質量%のテトラヒドロフラン溶液を調製し、東ソー株式会社製GPC HLC−8020型装置、カラムをTSKgel HXL−M(東ソー株式会社製)2本を連結、温度40℃の環境下において測定することで求めた値である。測定に際しは、移動溶媒として、テトラヒドロフランを用いた。測定に際しては、標準物質として、ポリスチレンを使用した。
【0226】
<分岐度(Br)>
つぎに、実施例におけるハイパーブランチポリマーの分岐度(Br)について説明する。実施例におけるハイパーブランチポリマーの分岐度は、生成物の1H−NMRを測定し、以下のようにして求めた。具体的には、4.6ppmに現われる−CH2Cl部位のプロトンの積分比H1°と、4.8ppmに現われる−CHCl部位のプロトンの積分比H2°と、を用いて、下記数式を用いた演算により算出した。なお、−CH2Cl部位と−CHCl部位との両方で重合が進行し、分岐が高まると、Br値は0.5に近づく。
【0227】
<コア/シェル比>
ハイパーブランチポリマーのコア/シェル比は、生成物の1H−NMRを測定し、以下のようにして求めた。すなわち、1.4ppmに現われるt−ブチル部位のプロトンの積分比と、702ppmに現われる芳香族部位のプロトンの積分比を用いて算出した。
【0228】
この実施例においては、アドバンテック東洋(株)製GSR−200にて製造した超純水を用いた。超純水は、25℃における金属含有量が1ppb以下であり、比抵抗値18MΩ・cmである。また、この実施例においては、Krzysztof Matyjaszewski, Macromolecules.,29,1079(1996)およびJean M.J.Frecht,J.Poly.Sci.,36、955(1998)に掲載されている合成方法を参考にし、以下の合成を行った。
【0229】
<微量金属分析>
ハイパーブランチポリマー中の金属含量の測定は、ICP質量分析装置(日立製作所製 P-6000型MIP-MS)、又はパーキンエルマー社製フレームレス原子吸光法によりおこなった。
【0230】
(実施例1)
(コアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部の合成)
つぎに、実施例1のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部の合成について説明する。実施例1のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部の合成に際しては、まず、攪拌機および冷却管を取り付けた2Lの4つ口反応容器に、2.2’−ビピリジル46.0g、塩化銅(I)15.0g、ヘキサデカンチオール1.52gを量り取り、反応容器を含む反応系全体を真空化して、十分に脱気した。つづいて、アルゴンガス雰囲気下で、反応溶媒のクロロベンゼン400mLを反応容器に加えてから、クロロメチルスチレン90.0gを5分間で滴下した。滴下後、反応容器の内部温度を125℃一定に保ちながら反応系を加熱攪拌した。滴下時間を含めた反応時間は、27分とした。
【0231】
反応終了後、反応系を濾過することによって不溶物を除去した。つづいて、濾過によって得られた濾液に、超純水を用いて調製した3質量%シュウ酸水溶液500mLを加えて、20分攪拌した。攪拌後、攪拌後の反応系から水層を取り除いた。水層を取り除いた後の反応系に上述した3質量%シュウ酸水溶液を加えて攪拌し、撹拌した後の反応系から水層を取り除く操作を4回繰り返すことで、反応触媒である銅を取り除いた。
【0232】
そして、銅が取り除かれた溶液に、メタノール700mLを加えて、固形分を再沈させた。再沈の結果得られた固形分に、THF(テトラヒドロキシフラン):メタノール=2:8の混合溶媒500mLを加えて、再沈によって得られた固形分を洗浄した。洗浄後、再沈によって得られた固形分を含む溶媒を、デカンテーションによって取り除いた。
【0233】
溶媒が取り除かれた固形分にメタノールを加えて、再沈によって得られた固形分を再度再沈させた。その後、再沈によって得られた固形分にTHF:メタノール=2:8の混合溶媒を加えて、再沈によって得られた固形分を洗浄した。そして、洗浄した後の固形分ををデカンテーションによって取り除く操作(洗浄操作)を2回繰り返した。
【0234】
その後、洗浄操作後の固形分を40℃/0.1mmHgの条件下において2時間乾燥させることによって、精製物である実施例1のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部(以下、「ハイパーブランチコアポリマー」という)64.8gを得た。実施例1のハイパーブランチコアポリマーの収率は、72%であった。実施例1のハイパーブランチコアポリマーの重量平均分子量(Mw)は2000であり、分岐度(Br)は0.5であった。
【0235】
(コアシェル型ハイパーブランチポリマーのシェル部の合成)
つぎに、実施例1のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのシェル部の合成について説明する。実施例1のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのシェル部の構成に際しては、まず、攪拌機および冷却管を取り付けた1Lの4つ口反応容器に、上述した実施例1のハイパーブランチコアポリマー10g、2.2’−ビピリジル5.1g、塩化銅(I)1.6gを量り取り、反応容器を含む反応系全体を真空化して、十分に脱気した。つづいて、アルゴンガス雰囲気下で、反応溶媒のクロロベンゼン400mLを反応容器に加えてから、アクリル酸tertブチルエステル48mLをシリンジで注入し、120℃で5時間加熱攪拌した。
【0236】
上述した加熱攪拌による重合反応終了後、重合反応終了後の反応系を濾過することによって不溶物を除去した。つづいて、濾過によって得られた濾液に、超純水を用いて調製した3質量%のシュウ酸水溶液300mLを加えて、20分攪拌した。攪拌した後、攪拌した後の反応系から水層を取り除いた。そして、水層を取り除いた後の反応系に上述したシュウ酸水溶液を加えて攪拌し、各反語の反応系から水層を取り除く操作を4回繰り返すことで、反応触媒である銅を取り除いた。
【0237】
銅が取り除かれた淡黄色の溶液における溶媒を留去してから、溶媒が除去された溶液にメタノール700mLを加えて、固形分を再沈させた。再沈によって得られた固形分をTHF50mLに溶解させた溶液に、メタノール500mLを加えて、再度、固形分を再沈させた。その後、再沈によって得られた固形分をTHFに溶解させた溶液にメタノール500mLを加えて、固形分を再沈殿させる操作を2回繰り返した。
【0238】
前述した、繰り返しての再沈操作後、反応系を40℃/0.1mmHgの条件下において2時間乾燥させることによって、精製物である淡黄色の固体を得た。シェル部が形成されたコアシェル型ハイパーブランチポリマーの収量は17.1gであり、収率は76%であった。1H−NMRによって、共重合体(シェル部が形成されたコアシェル型ハイパーブランチポリマー)のモル比率を計算した。シェル部が形成されたコアシェル型ハイパーブランチポリマー(以下、「コアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマー」という。)のコア/シェルの比率は、モル比で4/6であった。
【0239】
(微量金属の除去)
つぎに、実施例1の微量金属の除去について説明する。実施例1のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマー6gを100gのクロロホルムに溶解した溶液を生成し、生成された溶液と、超純水を用いて調製された3質量%シュウ酸水溶液100gと、を合わせて30分間激しく攪拌した。攪拌後、攪拌後の溶液から有機層を取り出し、有機層を取り出した後の溶液に、再び、超純水を用いて調製した3質量%シュウ酸水溶液100gを合わせて、30分間激しく攪拌した。
【0240】
攪拌後、攪拌後の溶液から有機層を取り出し、有機層を取り出した後の溶液に、再び、超純水を用いて調製した3質量%シュウ酸水溶液を合わせて激しく攪拌操作を、計5回繰り返した。攪拌後、攪拌後の溶液と3質量%塩酸水溶液100gとを合わせて、30分間激しく攪拌してから、有機層を取り出した。有機層を取り出した後の溶液と超純水100gとを合わせて激しく攪拌後、有機層を取り出す操作を3回繰り返した。最終的に得られた有機層から溶媒を留去し、乾燥させた後に得られる共重合体における鉄、ナトリウム、アルミニウムの含有金属量を、原子吸光光度計を用いて測定した。測定の結果、反応系における鉄、ナトリウム、アルミニウムの含有量は20ppb以下であった。
【0241】
(脱保護)
つぎに、実施例1の脱保護について説明する。実施例1の脱保護に際しては、まず、還流管付反応容器に、共重合体(上述した微量金属の除去後のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマー)2.0gを採取してから、ジオキサン8.0g、30質量%硫酸3.5gを加えた。その後、還流管付反応容器を含む反応系全体を95℃に加熱した状態で、60分還流攪拌した。還流攪拌後、還流攪拌後の反応粗製物を980mLの超純水に注いで固形分を再沈させた。
【0242】
再沈によって得られた固形分をジオキサン80mLに溶解させてから、再沈によって得られた固形分が溶解された溶液に超純水を800mLを加えて、再び、固形分を再沈させた。そして、再沈された固形分を回収し、回収された固形分を、40℃/0.1mmHgの条件下において2時間乾燥させることによって、実施例1のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーを得た。実施例1のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーにおける酸分解性基と酸基との割合は60/40であった。実施例1のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーの収量は、1.6gであり、収率は82%であった。
【0243】
(実施例2)
(コアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部の合成)
つぎに、実施例2のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部の合成について説明する。実施例2のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部の合成に際しては、まず、攪拌機および冷却管を取り付けた2Lの4つ口反応容器にトリブチルアミン54.6g、塩化鉄(II)18.7g、ヘキサデカンチオール1.52gを量り取り、反応容器を含む反応系全体を真空化して、十分に脱気した。つづいて、アルゴンガス雰囲気下で、反応溶媒のクロロベンゼン430mLを反応容器に加えてから、クロロメチルスチレン90.0gを5分間で滴下した。滴下後、反応容器の内部温度を125℃一定に保ちながら反応系を加熱攪拌した。滴下時間を含めた反応時間は、27分とした。
【0244】
加熱攪拌による反応終了後、超純水を用いて調製した3質量%シュウ酸水溶液500mLを加えて、20分攪拌した。攪拌した後、攪拌した後の溶液から水層を取り除いた。3質量%シュウ酸水溶液を加えて攪拌し、攪拌した後の溶液から水層を取り除く操作を4回繰り返すことで、反応溶液から反応触媒である鉄を取り除いた。
【0245】
鉄が取り除かれた溶液にメタノール700mLを加えて、固形分を再沈させた。再沈によって得られた固形分にTHF:メタノール=2:8の混合溶媒を1200mL加えて、再沈によって得られた固形分を洗浄した。
【0246】
洗浄後、洗浄後の溶液からデカンテーションによって溶媒を取り除き、デカンテーションの結果得られた固形分にTHF:メタノール=2:8の混合溶媒500mLを加えて、当該固形分を洗浄した。固形分の洗浄後、固形分を含む溶液からデカンテーションによって溶媒を取り除き、乾燥させた。この結果、精製物である実施例2のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部(ハイパーブランチコアポリマー)72gを得た。
【0247】
実施例2のハイパーブランチコアポリマーの収率は80%であった。実施例2のハイパーブランチコアポリマーの重量平均分子量(Mw)は2000であり、分岐度(Br)は0.5であった。
【0248】
つぎに、実施例2のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのシェル部の合成について説明する。実施例2のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのシェル部の合成に際しては、まず、攪拌機および冷却管を取り付けた1Lの4つ口反応容器に、上述した実施例2のハイパーブランチコアポリマー10g、トリブチルアミン6.1g、塩化鉄(II)2.0g、ヘキサデカンチオール152mgを量り取り、反応容器を含む反応系全体を真空化して、十分に脱気した。つづいて、アルゴンガス雰囲気下で、反応溶媒のクロロベンゼン260mLを加えてから、アクリル酸tertブチルエステル48mLをシリンジで注入し、120℃で5時間加熱攪拌した。
【0249】
重合終了後、超純水を用いて調製した3質量%シュウ酸水溶液300mLを加え、20分攪拌した。攪拌した後、攪拌した後の溶液から水層を取り除いた。超純水を用いて調製した3質量%シュウ酸水溶液を加えて攪拌し、攪拌した後の溶液から水層を取り除く操作を4回繰り返すことで、反応触媒である鉄を取り除いた。
【0250】
つぎに、鉄が除去された溶液に、メタノール700mLを加えて、固形分を再沈させた。そして、再沈によって得られた固形分をTHF50mLに溶解させた後、メタノール500mLを加えて再度固形分を再沈させる操作を、2回繰り返した。その後、再沈によって得られた固形分を乾燥させた。
【0251】
これにより、精製物である淡黄色の固体として、実施例2のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーを得た。実施例2のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーの収量は22gであり、収率は74%であった。1H−NMRによって、実施例3のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのモル比率を計算した。その結果、実施例3のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア/シェルモル比は、3/7であった。
【0252】
(微量金属の除去)
つぎに、実施例3の微量金属の除去について説明する。実施例3の微量金属の除去に際しては、上述した実施例3のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマー6gを100gのクロロホルムに溶解した溶液に、超純水を用いて調製した3質量%シュウ酸水溶液50gと1質量%塩酸水溶液50gとを合わせて、30分間激しく攪拌した。
【0253】
攪拌した後、攪拌した後の溶液から有機層を取り出した。そして、有機層を取り出した溶液に、再び、超純水を用いて調製した3質量%シュウ酸水溶液50gと1質量%塩酸水溶液50gと合わせて、30分間激しく攪拌した。攪拌した後の溶液から有機層を取り出し、有機層を取り出した溶液に、再び、超純水を用いて調製した3質量%シュウ酸水溶液と1質量%塩酸水溶液50gと合わせて激しく攪拌する操作を、計5回繰り返した。攪拌した後は、有機層を取り出した。
【0254】
攪拌した後に有機層を取り出した溶液に、超純水100gを合わせて、30分激しく攪拌後、有機層を取り出す操作を3回繰り返した。そして、最終的に得られた有機層から溶媒を留去し、乾燥させた後に得られる共重合体における鉄、ナトリウム、アルミニウムの含有金属量を、原子吸光光度計を用いて測定した。測定の結果、反応系における鉄、ナトリウム、アルミニウムの含有量は20ppb以下であった。
【0255】
(脱保護)
つぎに、実施例3の脱保護について説明する。実施例3の脱保護に際しては、還流管付反応容器に共重合体2.0gを採取し、ジオキサン8.0g、パラトルエンスルホン酸0.2gを加えて、95℃で120分還流攪拌して、反応粗製物を得た。つづいて、得られた反応粗製物を80mLの超純水に注いて再沈させ、固形分を得た。
【0256】
再沈によって得られた固形分をメチルイソブチルケトン 50mL に溶解させ、超純水を50mL を加えて、室温において30分、激しく攪拌した。水層を分離後、再び、超純水を50mL を加えて、室温において30分、激しく攪拌後、水層を分離した。メチルイソブチルケトン溶液を減圧下、留去し、40℃/0.1mmHgの条件下において2時間乾燥させることによって、実施例3のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーを得た。実施例3のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーにおける酸分解性基と酸基との割合は、70/30であった。実施例3のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーの収量は1.4gであり、収率は72%であった。
【0257】
(実施例3)
(コアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部の合成)
実施例3のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部(以下、「ハイパーブランチコアポリマー」という。)の合成について説明する。実施例1のハイパーブランチコアポリマーの合成に際しては、まず、攪拌機および冷却管を取り付けた2Lの4つ口反応容器に2.2’−ビピリジル9.2g、塩化銅(I)2.9g、銅粉1.9g、ヘキサデカンチオール1.52gを採り、4つ口反応容器内を真空化して十分に脱気した。
【0258】
脱気後の4つ口反応容器内に、アルゴンガス雰囲気下で、反応溶媒のクロロベンゼン480mLを加え、クロロメチルスチレン90.0gを5分間で滴下し、内部温度を125℃一定に保ちながら加熱攪拌した。滴下時間を含めた反応時間は、27分とした。反応終了後、濾過により、不溶物を除去し、濾液に500mLの超純水を加え、20分攪拌した。その後、水層を取り除いた。この操作を4回繰り返すことで、反応触媒である銅を取り除いた。銅が取り除かれた溶液にメタノール700mLを加えることで再沈させ、精製前のハイパーブランチコアポリマーを得た。
【0259】
精製前のハイパーブランチコアポリマー80gに、THF(テトラヒドロキシフラン):メタノール=2:8の混合溶媒を500mL加え、30分間激しく攪拌した。攪拌後、デカンテーションによって、溶媒を取り除いた。溶媒を取り除いた後、THF:メタノール=2:8の混合溶媒を300mL加え、30分間激しく攪拌した。攪拌後、デカンテーションによって、溶媒を取り除き、精製物であるハイパーブランチコアポリマーを得た。
【0260】
その結果、精製物であるハイパーブランチコアポリマー64.8gを得た。収率は、72%であった。上述した方法で、精製物であるハイパーブランチコアの重量平均分子量(Mw)および分岐度(Br)を測定した。実施例1におけるハイパーブランチコアポリマーの重量平均分子量(Mw)は2000であり、分岐度(Br)は0.5であった。
【0261】
(コアシェル型ハイパーブランチポリマーのシェル部の合成)
つぎに、実施例3のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのシェル部の合成について説明する。実施例3のコアシェル型ハイパーブランチポリマーシェル部の合成に際しては、まず、攪拌機および冷却管を取り付けた2Lの4つ口反応容器に、上述した精製物であるハイパーブランチコアポリマー10g、2.2’−ビピリジル1.0g、塩化銅(I)0.3g、銅粉0.2g、ヘキサデカンチオール152mgを採り、4つ口反応容器内を真空化して十分に脱気した。
【0262】
脱気後の4つ口反応容器内に、アルゴンガス雰囲気下で、反応溶媒のクロロベンゼン130mLを加え、アクリル酸tertブチルエステル48mLをシリンジで注入し、120℃で5時間加熱攪拌して、重合をおこなった。重合終了後、濾過によって不溶物を除去し、濾液に100mLの超純水を加えて、20分攪拌した。攪拌後、水層を取り除いた。超純水を加えて20分撹拌後水層を取り除く操作を4回繰り返すことで、反応触媒である銅を取り除き、淡黄色の溶液を得た。
【0263】
得られた淡黄色の溶液を減圧留去し、粗生成物ポリマーを得た。粗生成物ポリマーをTHF20mLに溶解させた後、メタノール320mLを加え再沈させた。再沈溶液を、遠心分離し固形分を分離した。分離された固形分をTHFに溶解させた後にメタノールを加えた再沈を、遠心分離する再沈操作を、さらに2回おこなった。
【0264】
その結果、精製物である淡黄色の固体(コアシェル型ハイパーブランチポリマー)を得た。コアシェル型ハイパーブランチポリマーの収量は17.1gであった。収率は76%であった。1H−NMRより共重合体のモル比率を計算し、コア/シェルモル比は4/6であった。
【0265】
(微量金属の除去)
つぎに、実施例3のコアシェル型ハイパーブランチポリマーに対する微量金属の除去について説明する。上述した方法によって合成されたコアシェル型ハイパーブランチポリマー6gを100gのクロロホルムに溶解し、溶解した溶液と3質量%シュウ酸100gと合わせて、30分間激しく攪拌した。撹拌後、撹拌後の溶液から有機層を取り出し、取り出した有機層に再び3質量%シュウ酸100gを合わせ、30分間激しく攪拌した。撹拌後の溶液から有機層を取り出した後、取り出した有機層に再び3質量%シュウ酸を合わせて攪拌して有機層を取り出す操作を10回繰り返した。
【0266】
その後、撹拌後の溶液と3質量%塩酸水溶液100gとを合わせて30分間激しく攪拌し、撹拌後の溶液から有機層を取り出した後、取り出した有機層に再び3質量%塩酸水溶液を合わせて攪拌して有機層を取り出す操作を、5回繰り返しておこなった。さらに、撹拌後の溶液と超純水100gと合わせ、30分間激しく攪拌し、撹拌後の溶液から有機層を取り出した後、取り出した有機層に再び超純水を合わせて攪拌して有機層を取り出す操作を、3回繰り返しておこなった。
【0267】
最終的に得られた有機層から溶媒を留去して共重合体を得た。得られた共重合体に含まれる含有金属量を、原子吸光によって計測した。計測した結果、銅、ナトリウム、鉄、アルミニウムの含有量は、10ppb以下であった。
【0268】
(脱保護)
つぎに、実施例3の脱保護について説明する。実施例3の脱保護に際しては、まず、還流管付反応容器に、共重合体(上述した微量金属の除去後のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマー)2.0gを採取してから、ジオキサン8.0g、50質量%硫酸0.2gを加えた。その後、還流管付反応容器を含む反応系全体を95℃に加熱した状態で、60分還流攪拌した。還流攪拌後、還流攪拌後の反応粗製物を80mLの超純水に注いで固形分を再沈させた。
【0269】
再沈によって得られた固形分をメチルイソブチルケトン 50mL に溶解させ、超純水を50mL を加えて、室温において30分、激しく攪拌した。水層を分離後、再び、超純水を50mL を加えて、室温において30分、激しく攪拌後、水層を分離した。メチルイソブチルケトン溶液を減圧下、留去し、40℃/0.1mmHgの条件下において2時間乾燥させることによって、実施例3のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーを得た。実施例1のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーにおける酸分解性基と酸基との割合は60/40であった。実施例3のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーの収量は、1.6gであり、収率は82%であった。
【0270】
(参考例1)
つぎに、参考例1として、4−ビニル安息香酸−tert−ブチルエステルの合成について説明する。4−ビニル安息香酸−tert−ブチルエステルの合成に際しては、Synthesis,833−834(1982)を参考にし、以下に示す合成方法で合成をおこなった。
【0271】
4−ビニル安息香酸−tert−ブチルエステルの合成に際しては、まず、滴下ロートを取り付けた1Lの反応容器にアルゴンガス雰囲気下、4−ビニルベンゾイックアシッド91g、1,1'-カルボジイミダゾール 99.5g、4−tertブチルピロカテコール、脱水ジメチルホルムアミド500gを加えて、30℃に保った状態で1時間攪拌した。攪拌した後、攪拌した後の溶液に、1.8ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン93gおよび脱水2−メチル−2−プロパノール91gを加えて、4時間攪拌した。
【0272】
攪拌による反応終了後、ジエチルエーテル300mLおよび、10%炭酸カリウム水溶液を加え、目的物をエーテル層に抽出した。その後、ジエチルエーテル層を減圧乾燥することによって、淡黄色の液体を得た。1H−NMRによって、目的物である4−ビニル安息香酸−tert−ブチルエステルが得られていることを確認した。参考例1の4−ビニル安息香酸−tert−ブチルエステルの収率は、88%であった。
【0273】
(実施例4)
(コアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部の合成)
つぎに、実施例4のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部の合成について説明する。実施例4のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部の合成に際しては、まず、攪拌機および冷却管を取り付けた2Lの4つ口反応容器に、ペンタメチルジエチレントリアミン25.5g、塩化銅(I)14.6g、ヘキサデカンチオール1.52gを量り取り、反応容器を含む反応系全体を真空化して、十分に脱気した。つづいて、アルゴンガス雰囲気下で、反応溶媒のクロロベンゼン460mLを加えてから、クロロメチルスチレン90.0gを5分間で滴下し、内部温度を125℃一定に保ちながら加熱攪拌した。滴下時間を含めた反応時間は、27分とした。
【0274】
反応終了後、濾過によって不溶物を除去し、超純水を用いて調製した3質量%シュウ酸水溶液500mLを加えて、20分攪拌した。攪拌した後、攪拌した後の溶液から水層を取り除いた。超純水を用いて調製した3質量%シュウ酸水溶液500mLを加えて攪拌し、攪拌した後の溶液から水層を取り除く操作を4回繰り返すことで、反応触媒である銅を取り除いた。
【0275】
銅が取り除かれた溶液に、メタノール700mLを加えて、実施例4のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部(実施例4のハイパーブランチコアポリマー)を再沈させ、得られた実施例4のハイパーブランチコアポリマーにTHF:メタノール= 2:8の混合溶媒を1200mL加えて、ポリマーを洗浄する洗浄操作をおこない、洗浄操作後に、洗浄操作後の溶液からデカンテーションによって溶媒を取り除いた。
【0276】
そして、前述した洗浄操作を2回繰り返した後、40℃/0.1mmHgの条件下において2時間乾燥させることによって、精製物である実施例4のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア部(ハイパーブランチコアポリマー)を得た。実施例4のハイパーブランチコアポリマーの収率は、72%であった。また、実施例4のハイパーブランチコアポリマーの重量平均分子量(Mw)は2000であり、分岐度(Br)は0.5であった。
【0277】
(コアシェル型ハイパーブランチポリマーのシェル部の合成)
つぎに、実施例4のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのシェル部の合成について説明する。実施例4のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのシェル部の合成に際しては、まず、攪拌機および冷却管を取り付けた1Lの4つ口反応容器に、上述した実施例4のハイパーブランチコアポリマー10g、ペンタメチルジエチレントリアミン2.8g、塩化銅(I)1.6g、ヘキサデカンチオール152mgを量り取り、反応容器を含む反応系全体を真空化して、十分に脱気した。
【0278】
つづいて、アルゴンガス雰囲気下で、反応溶媒のクロロベンゼン400mLを加えて、参考例1で合成した4−ビニル安息香酸−tert−ブチルエステル40gをシリンジで注入し、120℃で3時間加熱攪拌した。加熱攪拌による重合終了後、濾過によって、不溶物を除去した。
【0279】
濾過によって得られた濾液に、超純水を用いて調製した3質量%シュウ酸水溶液を加えて20分攪拌した後、攪拌した後の溶液から水層を取り除いた。超純水を用いて調製した3質量%シュウ酸水溶液を加えて攪拌した後、攪拌した後の溶液から水層を取り除く操作を4回繰り返すことで、反応触媒である銅を取り除いた。
【0280】
銅が除去された溶液にメタノール700mLを加えて、シェル部が形成された実施例4のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーを再沈させた。再賃によって得られた実施例4のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーをTHF50mLに溶解させた後、メタノール500mLを加えて再沈させる操作を、2回繰り返した。この結果得られた溶液を40℃/0.1mmHgの条件下において2時間乾燥させることによって、実施例4のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーとして、精製物である淡黄色の固体を得た。
【0281】
実施例4のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーの収量は20gであり、収率は48%であった1H−NMRによって、共重合体(実施例4のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマー)のモル比率を計算した。その結果、実施例4のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーのコア/シェル比は、モル比で3/7であった。
【0282】
(微量金属の除去)
つぎに、実施例4の微量金属の除去について説明する。実施例4の微量金属の除去に際しては、まず、上述した実施の形態5のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマー6gを100gのクロロホルムに溶解した溶液に、超純水を用いて調製した3質量%シュウ酸水溶液50gと1質量%塩酸水溶液50gと合わせて、30分間激しく攪拌した。攪拌した後、攪拌した後の溶液から有機層を取り出し、有機層を取り出した溶媒に、再び、超純水を用いて調製した3質量%シュウ酸水溶液50gと1質量%塩酸水溶液50gとを合わせて、30分間激しく攪拌した。
【0283】
攪拌した後の溶液から有機層を取り出し、有機層を取り出した溶媒に、再び、超純水を用いて調製した3質量%シュウ酸水溶液と1質量%塩酸水溶液とを合わせて激しく攪拌する操作を、計5回繰り返した。その後、攪拌した後の溶液から有機層を取り出して、3質量%塩酸水溶液100gを合わせて、30分間激しく攪拌した。攪拌した後、攪拌した後の溶液から有機層を取り出した。
【0284】
その後、有機層を取り出した溶液と超純水100gとを合わせて、30分激しく攪拌し、攪拌した後に有機層を取り出す操作を、3回繰り返した。そして、最終的に得られた有機層から溶媒を留去して乾燥させ、乾燥させた後に得られる共重合体における、銅、ナトリウム、鉄、アルミニウムの含有量を原子吸光光度計を用いて測定した。その結果、乾燥させた後に得られる共重合体における銅、ナトリウム、鉄、アルミニウムの含有量は20ppb以下であった。
【0285】
(脱保護化工程)
つぎに、実施例4の脱保護化工程について説明する。実施例4の脱保護化工程に際しては、まず、還流管付反応容器に、上述した共重合体2.0gを採取し、ジオキサン8.0g、トリフルオロ酢酸0.1gを加えて、95℃で120分還流攪拌した。つづいて、還流攪拌によって得られた反応粗製物を、80mLの超純水に注いで再沈させ、固形分を得た。
【0286】
その後、得られた固形分を、固形分をメチルイソブチルケトン 50mL に溶解させ、超純水を50mL を加えて、室温において30分、激しく攪拌した。水層を分離後、再び、超純水を50mL を加えて、室温において30分、激しく攪拌後、水層を分離した。メチルイソブチルケトン溶液を減圧下、留去し、40℃/0.1mmHgの条件下において2時間乾燥させることによって、実施の形態5のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーを得た。実施の形態5のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーにおける酸分解性基と酸基との割合は、50/50であった。実施の形態5のコアシェル型のコアシェル型ハイパーブランチポリマーの収量は1.8gであり、収率は70%であった。
【0287】
(比較例1)
比較例1においては、ヘキサデカンチオールを用いないこと以外は、実施例1と同様の方法で、コアシェル型ハイパーブランチポリマーのコアポリマー合成反応を2回おこなった。反応で得られた重合体の重量平均分子量は、1回目が4000であり、2回目が3100であり、1回目と2回目とでは重量平均分子量にバラツキがあった。
【0288】
(比較例2)
比較例2においては、ヘキサデカンチオールを用いないこと以外は、実施例2と同様の方法で、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成反応を5回おこなった。その結果、そのうちの1回目のシェル合成反応の途中でゲル化が起こった。
【0289】
(比較例3)
比較例3においては、ヘキサデカンチオールを用いないこと以外は、実施例3と同様の方法で、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成反応を2回おこなった。その結果、そのうちの1回目のシェル合成反応の途中でゲル化が起こった。
【0290】
(比較例4)
比較例3においては、ヘキサデカンチオールを用いないこと以外は、実施例4と同様の方法で、コアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成反応を2回おこなった。その結果、そのうちの1回目のシェル合成反応の途中でゲル化が起こった。
【0291】
以上のように、ラジカル捕捉剤を使用せずに、重合を行うと、複数回重合するうちの何回かはゲル化してしまうことがわかる。
【0292】
(レジスト組成物の調製)
上述した実施例1〜4において得られたコアシェル型ハイパーブランチポリマーを用いたレジスト組成物は、微量金属が除去されたコアシェル型ハイパーブランチポリマーを4.0質量%、光酸発生剤としてのトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネートを0.16質量%含有するプロピレングリコールモノメチルアセテート(PEGMEA)溶液を、細孔径0.45μmのフィルターで濾過することによって調製した。
【0293】
調整されたレジスト組成物をシリコンウエハ上にスピンコートし、調整されたレジスト組成物が塗布されたシリコンウエハを90℃にて1分間熱処理して、調整されたレジスト組成物に含まれる溶媒を蒸発させて、溶媒蒸発後のシリコンウエハ上に、厚さ100nmの薄膜を成膜した。
【0294】
(紫外線照射感度)
つぎに、シリコンウエハ上に成膜された薄膜の紫外線照射感度について説明する。シリコンウエハ上に作成された薄膜の紫外線照射感度は、以下の方法によって測定した。紫外線照射感度の測定に際しては、光源として、放電管式紫外線照射装置(アトー株式会社製、DF−245型ドナフィックス)を用いた。
【0295】
紫外線照射感度の測定に際しては、シリコンウエハ上に成膜した厚さ約100nmの試料薄膜に対して、波長245nmの紫外線を照射した。紫外線は、シリコンウエハ上に成膜された薄膜のうち、縦10mm×横3mmの長方形の部分に照射した。紫外線の照射に際しては、照射された紫外線のエネルギー量を0mJ/cm2から50mJ/cm2の範囲内で変化させた。
【0296】
紫外線照射後のシリコンウエハに対して、100℃にて4分間の熱処理をおこない、熱処理後のシリコンウエハをテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)2.4質量%水溶液中に25℃にて2分間浸漬させて現像した。現像後、シリコンウエハを水洗し、乾燥させた。乾燥後の膜厚を、Filmetrics株式会社製薄膜測定装置F20で測定し、現像後の膜厚がゼロになる照射エネルギー値(感度)を測った。結果を表1に示す。
【0297】
【表1】

【0298】
以上に示すように、本発明により得られたコアシェル型ハイパーブランチポリマーは、良好な感度を示すことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマーのリビングラジカル重合を経てコアシェル型ハイパーブランチポリマーを合成するコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法であって、
前記モノマーおよびラジカル捕捉剤が存在する反応系において前記リビングラジカル重合をおこなう重合工程と、
前記重合工程によって合成された重合物をコア部とし、当該コア部の末端に酸分解性基および酸基を含むシェル部を形成するシェル部形成工程と、
を含むことを特徴とするコアシェル型ハイパーブランチポリマーの合成方法。
【請求項2】
モノマーのリビングラジカル重合を経てスターポリマーを合成する方法であって、
前記モノマーおよびラジカル捕捉剤が存在する反応系において前記リビングラジカル重合をおこなう重合工程と、
前記重合工程によって合成された重合物をアーム部とし、当該アーム部を重合することによってアーム部同士をカップリングさせたコア部を形成するコア部形成工程と、
を含むことを特徴とするスターポリマーの合成方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコアシェル型ハイパーブランチポリマー、または、スターポリマーの合成方法にしたがって製造されたことを特徴とするコアシェル型ハイパーブランチポリマー、または、スターポリマー。
【請求項4】
請求項3に記載のコアシェル型ハイパーブランチポリマー、およびまたは、スターポリマーを包含することを特徴とするレジスト組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のレジスト組成物によってパターンを形成されることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項6】
請求項5に記載のレジスト組成物を用いてパターンを形成する工程を含むことを特徴とする半導体集積回路の製造方法。

【公開番号】特開2008−163247(P2008−163247A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355882(P2006−355882)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】