説明

コアシェル型マイクロカプセル

【課題】フレグランスの送達や放出が制御されたコアシェル型マイクロカプセルを提供する。
【解決手段】成分(A):密度が0.950〜1.500g/cmおよびClogP値が1.00〜6.00である脂環式アロマケミカル化合物の少なくとも1種以上を40〜100質量%、成分(B):密度が0.630〜0.950g/cmの香料成分の少なくとも1種以上を0〜80質量%、成分(C):密度が0.950〜1.500g/cmの油溶性有機溶媒の少なくとも1種以上を0〜50質量%、を含有し、成分(A)、成分(B)および成分(C)の総和が100重量%となるフレグランス組成物が、コア内に封入されていることを特徴とするコアシェル型マイクロカプセル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の家庭用製品、洗濯用製品、パーソナルケア製品および化粧用製品中にフレグランス組成物を配合する際に(場合によっては他の有効成分と一緒に)、コアシェル型マイクロカプセルのコア内に封入させることにより、フレグランスの送達や放出が制御されたことを特徴とするコアシェル型マイクロカプセルに関するものである。
本発明はさらに、低セン断条件下ではゲル状態である糊状およびセン断粘状の液体を含む液体消費者向け製品、特に家庭用洗浄剤、洗濯用製品、ならびにパーソナルケア製品、および化粧用製品におけるこれらのマイクロカプセルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
香料または他の有効成分とを、保護・送達および放出に関する多様な理由のために、通例1〜1000マイクロメートル(ミクロン)の直径を有するマイクロカプセルと呼ばれる小型カプセル内に、非水溶性香料または他の非香気成分をカプセル化することが知られている。
マイクロカプセルの調製方法としては、非特許文献1及び特許文献1〜3ならびにこれらの参考文献にも記載されている。例えば、マイクロカプセルの1種としては、ウォールまたはシェルまたはコアシェル型マイクロカプセルと呼ばれ、非水溶性および非油溶性物質、通例網目ポリマー物質の一般的には球形のシェルを備え、シェルの中に香料または他の物質が含有されている。
このようなカプセルが液体消費者向け製品、たとえばシャンプー、ヘアコンディショナー、ボディウォッシュ、シャワージェルなどのパーソナルケア製品、ファブリックコンディショナーまたは液体洗濯洗剤などの洗濯用製品あるいはキッチン表面洗浄剤などの家庭用洗浄剤に含まれるときに、特に製品が貯蔵される場合、マイクロカプセルが時間とともにクリーム化(表面へ浮上)するか、または沈降するかのどちらの問題が発生することがある。クリーム化または沈降は、マイクロカプセル、その内容物および周囲液体の間での密度の差によるものである。多くの液体家庭用洗浄剤、液体洗濯用製品ならびにパーソナルケア製品および化粧用製品は1立方センチメートル当たり約1.00g(g/cm)の密度を有するが、多くの有機化合物は1.00g/cm未満の密度を有する。そのため非水溶性香料または他の疎水性油を高い割合で含有するマイクロカプセルは、マイクロカプセルが分散されている製品の液相よりも低い密度を有することがあるので、これらのマイクロカプセルは時間とともに浮上またはクリーム化する傾向がある。
【0003】
一方、公知の物理法則から、カプセルが液体中で安定して分散を維持するための理論的最大サイズを計算することが可能である。
以下は、ストークスの法則から導いたエマルジョンのクリーム化/沈降速度の式である:
[式1]
【0004】




ν=クリーム化/沈降の速度;
a=粒子半径;
=連続相の密度;
d=分散相(マイクロカプセル)の密度;
g=重力定数
η=ニュートンセン断を取る連続相の粘度。
この式は粒子が球形、均質であり、凝集していないと仮定していることに注目すべきである。サイズが混合した粒子には、より複雑であるが、本質的には同じ形式の式を誘導することができる。この式も、超小型粒子の分散を維持するであろうブラウン運動による効果をいずれも含んでいない。式は、理想的なモデルを記述して、それゆえ実際のサンプルにとっては正確ではないが、それゆえ粒子のクリーム化または沈降を支配する重要な因子を設定する。
異なる(通常はより小さい)サイズのマイクロカプセルを調製してクリーム化または沈降を低減することが可能でない、または望ましくないのは、これがたとえば内容物放出のための破砕性に依存するこのようなマイクロカプセルの壁の破壊しやすさに影響するなどの、他の結果をもたらす可能性があるためである。その上、より小型のマイクロカプセルにはより少量の物質がカプセル化され、内容物に対してより高い割合の壁物質と、同量のコア物質を含有するためにより多くのマイクロカプセルが必要となるので、結果として色などの製品属性や、重要なことには製造コストに影響を及ぼすことがある。マイクロカプセルが分散されている液体製品の粘度を上昇させることも望ましくない可能性があり、それゆえマイクロカプセルと液相の密度をより同等にバランスさせることができれば好ましい。
【0005】
特許文献4は、コアシェル型カプセル化芳香剤に溶媒を添加することを記載しているが、芳香剤は3.3を超える、好ましくは8を超えるClogpを有する必要があることを明記している。それらの示された芳香剤の大部分が1.0g/cm未満の密度を有するので、これらの物質を選択する際に密度は考慮事項ではないことは文脈から明らかであり、より高いClogP要件によって、グリセリルトリアセテートは密度上昇成分として好ましいが、グリセリルトリアセテートよりはむしろグリセリルトリブチレートなどのより大きいアルキル基が好ましいことが示唆されている。
特許文献5は、洗剤液体製品用のコアセルベート型マイクロカプセルの密度調節剤について記載しているが、マイクロカプセルの密度を低下させる物質のみ記載している。
特許文献6も、密度と周囲液体とのバランスを取るためにマイクロカプセル内容物を調節することについて記載している。しかし、密度を上昇させるために提案された物質は、ある高密度塩または高密度疎水性液体、たとえばハロゲンを含むものであり、パーソナルケア製品、洗濯用製品および家庭用製品にはあまり適していない。家庭用消費者向け製品のためのマイクロカプセル中にハロゲン化有機化合物を含めることは望ましくないのは、または多くの場合許容されないのは、このような化合物の多くが環境および/または健康に悪影響を及ぼすと考えられるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第2,800,457号
【特許文献2】米国特許第3,415,758号
【特許文献3】米国特許第6,251,483号
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/112,152号
【特許文献5】欧州特許出願公開第7,502,646号
【特許文献6】国際公開第2000/059,616号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kirk Othmer’s Encyclopaedia of Chemical Technology 5th edition
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
驚くべきことに、0.950g/cmを超える密度を有する有機化合物が少数であり、特にハロゲン原子を含有するすべての有機化合物が排除される場合、1.00g/cmを超える密度を有するのはなお少数である。より高い密度を有する化合物は、かなりの割合の酸素、窒素および硫黄原子をその原子式中に含むか、または芳香環などの環をその化学構造中に所有する傾向がある。しかしこのような化合物は、酸素、窒素または硫黄原子を含有する多くの官能基の極性性質により、完全に親水性であることが多い。結果として、このような親水性化合物は、乳化重合技法によって効率的にカプセル化することができない。
さらなる要件は、カプセル化された分子が貯蔵中にマイクロカプセルから漏出すべきでないことであり、小型分子および/またはさらに水溶性の分子が、特にアミンおよびアルデヒド縮合反応によって生成されたマイクロカプセルから非常に高速に漏出することが観察されている。
そしてマイクロカプセルの密度をマイクロカプセルが分散される液体製品の密度に接近するようにバランスさせることが可能ならば好都合であるが、1.010g/cmを超える密度を有する液体製品では、これを達成することは特に困難である。さらにマイクロカプセルコア物質の特性に対する種々の制約や、芳香剤が上質の市販製品で受け入れられるために十分な品質でなければならないという要求があるので、高密度フレグランス化合物から内容物を調合することだけで、コアシェル型マイクロカプセル用のフレグランス組成物の密度が0.950g/cm近くに、または0.950g/cmよりなお高くなるように制御可能であるかは、ただちに明らかにはならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記に関する。
<1> 成分(A):密度が0.950〜1.500g/cmおよびClogP値が1.00〜6.00である脂環式アロマケミカル化合物の少なくとも1種以上を40〜100質量%、
成分(B):密度が0.630〜0.950g/cmの香料成分の少なくとも1種以上を0〜80質量%、
成分(C):密度が0.950〜1.500g/cmの油溶性有機溶媒の少なくとも1種以上を0〜50質量%、
を含有し、成分(A)、成分(B)および成分(C)の総和が100重量%となるフレグランス組成物が、コア内に封入されていることを特徴とするコアシェル型マイクロカプセル。
<2> 成分(A):密度が1.000〜1.500g/cmおよびClogP値が1.50〜5.00である脂環式アロマケミカル化合物を30〜100質量%含有することを特徴とする<1>に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
<3> 成分(A):ClogP値が2.00〜4.50である脂環式アロマケミカル化合物を75〜100質量%含有することを特徴とする<1>または<2>に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
<4> 成分(B):密度が0.630〜0.950g/cmの香料成分の少なくとも1種以上を5〜60質量%含有することを特徴とする<1>〜<3>のいずれか一項に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
<5> 成分(A)および成分(B)が共に少なくとも10種以上の香料成分であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか一項に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
<6> 成分(C):密度が0.950〜1.500g/cmである油溶性有機溶媒を10〜50質量%含有することを特徴とする<1>〜<5>のいずれか一項に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
<7> 成分(A):酢酸ベンジル、ベンゾフェノン、サリチル酸ベンジル、サリチル酸シス−3−ヘキセニル、クマリン、サリチル酸シクロヘキシル、酢酸トリシクロデセニル、エチルバニリン、オイゲノール、ヘリオトロピン、インドール、イソオイゲノール、アンスラニル酸メチル、安息香酸メチル、オキサン(2−メチル−4−プロピル−1,3−オキサチアン)、2−フェニルエタノール、バニリン、バニリンイソブチレートおよびウォーターメロンケトンならびにその混合物の中から選択される脂環式アロマケミカル化合物であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか一項に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
<8> 成分(B):カプロン酸アリル、シトロネロール、γ−デカラクトン、ジヒドロミルセノール、酢酸シス−3−ヘキセニル、リモネン、リナロール、酢酸プレニルおよび酢酸ブチルシクロヘキシルならびにその混合物の中から選択される香料成分であることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか一項に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
<9> 成分(C):アセチル トリエチル シトレート、ジエチル マレアート、ジエチル マロネート、ジエチル アジペート、ジメチル アジペート、ジエチル スクシナート、ジエチル タータレート、ジメチル テレフタレート、グリセリル トリアセテート、プロピレングリコール ジアセテート、スクロース オクタ−アセテート、スクロース ジアセテートヘキサイソブチレート、グリセリル トリプロピオナート、トリエチル シトレートならびにその混合物の中から選択される油溶性有機溶媒であることを特徴とする<1>〜<8>のいずれか一項に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
<10> フレグランス組成物に追加成分として、成分(D):密度が0.800〜0.950g/cmの油溶性有機溶媒の少なくとも1種以上を0〜50質量%、
を含有し、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の総和が100重量%であり、成分(C)および成分(C)の和が0〜50質量%であること特徴とする<1>〜<9>のいずれか一項に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
<11> 密度が0.950g/cmを超える密度を有するフレグランス組成物であることを特徴とする<1>〜<10>のいずれか一項に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
<12> <1>〜<10>のいずれか一項に記載のコアシェル型マイクロカプセルを含有し、25℃〜40℃の条件において、1.010g/cmを超える密度および10mPas〜5000mPasの粘度を有することを特徴とする液体消費者向け製品。
<13> 25℃〜40℃の条件において10mPas〜2500mPasの粘度を有していることを特徴とする<12>に記載の液体消費者向け製品。
<14> 少なくとも2質量%の界面活性剤を含有する家庭用組成物、洗濯用組成物、パーソナルケア組成物または化粧組成物であることを特徴とする<12>または<13>に記載の界面活性剤含有液体消費者向け製品。
<15> 質量パーセンテージにおいて水が最大成分であることを特徴とする<14>岸アの界面活性剤含有液体消費者向け製品。
【0010】
好ましいフレグランス組成物は、0.950〜1.500g/cmの、好ましくは1.000〜1.500g/cm、さらに好ましくは1.050〜1.400g/cmの密度と、1.50〜5.00の、なおさらに好ましくは2.00〜4.50のClogP値を有する脂環式アロマケミカル化合物を30〜100重量%含む、フレグランス組成物である。
さらに好ましいフレグランス組成物は、0.950〜1.500g/cmの、好ましくは1.000〜1.500g/cmの、さらに好ましくは1.050〜1.400g/cmの密度と、1.50〜5.00の、なおさらに好ましくは2.00〜4.50のClogP値を有する脂環式アロマケミカル化合物を40〜100重量%含む、フレグランス組成物である。
なおさらに好ましいフレグランス組成物は、0.950〜1.500g/cmの、好ましくは1.000〜1.500g/cmの、さらに好ましくは1.050〜1.400g/cmの密度と、1.50〜5.00の、なおさらに好ましくは2.00〜4.50のClogP値を有する脂環式アロマケミカル化合物を50〜100重量%含む、フレグランス組成物である。
特に好ましいフレグランス組成物は、0.950〜1.500g/cmの、好ましくは1.000〜1.500g/cmの、さらに好ましくは1.050〜1.400g/cmの密度と、1.50〜5.00の、なおさらに好ましくは2.00〜4.50のClogP値を有する脂環式アロマケミカル化合物を60〜100重量%含む、フレグランス組成物である。
さらに特に好ましいフレグランス組成物は、0.950〜1.500g/cmの、好ましくは1.000〜1.500g/cmの、さらに好ましくは1.050〜1.400g/cmの密度と、1.50〜5.00の、なおさらに好ましくは2.00〜4.50のClogP値を有する脂環式アロマケミカル化合物を75〜100重量%含む、フレグランス組成物である。
【0011】
本発明の一態様において、主にアルデヒドとアミンまたは尿素との縮合によってコアシェルマイクロカプセルが形成されれば好ましい。主にとは、カプセル壁の50重量%超を意味する。カプセル壁の残りは、他のポリマー、たとえばポリウレタンまたはゼラチンまたはカラギナン、あるいはビニルまたはアクリルモノマーからのフリーラジカル付加ポリマー、たとえばポリアクリルアミド、またはポリアクリレートエステルポリビニルアセテートあるいはこれらのいずれかのコポリマーを含むことができる。
本発明のカプセル用のフレグランス組成物は、20℃にて1.010g/cmを超える密度を有し、25℃〜40℃の条件で測定したときに10〜5,000mPasの、好ましくは10〜2,500mPasの粘度を、好ましくは25℃で測定したときに10〜5,000mPasの、好ましくは10〜2,500mPasの粘度を有する液体界面活性剤含有消費者向け製品での使用に適している。
【0012】
本発明の一態様において、主にアルデヒドとアミンまたは尿素との縮合によってコアシェル型マイクロカプセルが形成されれば好ましい。主にとは、カプセル壁の50重量%超を意味する。カプセル壁の残りは、他のポリマー、たとえばポリウレタンまたはゼラチンまたはカラギナン、あるいはビニルまたはアクリルモノマーからのフリーラジカル付加ポリマー、たとえばポリアクリルアミド、またはポリアクリレートエステルポリビニルアセテートあるいはこれらのいずれかのコポリマーを含むことができる。
本発明のカプセル化フレグランス組成物は、20℃にて1.010g/cmを超える密度を有し、25℃または40℃のどちらかで測定したときに10〜5,000mPasの、好ましくは10〜2,500mPasの粘度を、好ましくは25℃で測定したときに10〜5,000mPasの、好ましくは10〜2,500mPasの粘度を有する液体界面活性剤含有消費者向け製品での使用に適している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書では、引用したすべてのパーセンテージは別途指摘しない限り、質量パーセントである。フレグランス組成物を指すパーセンテージは、カプセル化されたフレグランス組成物ではなく、乳化およびカプセル化の前の組成物に基づく。本明細書で引用したすべての文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
物質の密度はその質量と体積の商として定義され、立方センチメートル当たりのグラム数で表される(g/cm)。物質の密度を決定するには、複数の方法が利用できる。最も一般的な方法は、1995年7月27日にCouncilによって採用されたOECD Guideline for the Testing of chemicals No 109である。ASTM D4052は、振動U字管原理を使用してデジタル密度計で液体の密度を測定する手順について記載している。
本明細書で述べた液体混合物の密度は、別途指摘しない限り、ASTM D4052の手順の後に20℃にてMettler Toledo DR40デジタル密度計を使用して測定した。液体成分の密度は、同じ方法で測定するか、または値を2次データソースとしての公開文献、たとえばSigma Aldrich companyの2008〜2009化学カタログまたはElsevier Information Systems GmbHによるBeilsteinデータベース(2008/02)から得る。融点が35℃を超える固体物質の密度は、記載した温度にて液体として測定するか、文献から得て参照する。
密度は2つの測定値の比であるので、使用した方法や試験条件によって偏りや変動を受ける。比重瓶法と比較して、デジタル密度計による再現性は0.001g/cm未満であり、偏りも0.001g/cm未満である。それゆえ本明細書の目的では、密度は小数点以下第3位までのみを引用して、第4位は通常の慣例にしたがって切り上げるか、または切り下げる。周囲温度において液体サンプルの値が議論される場合には、ASTM D4052に記載された密度決定のための指定された方法は、デジタル密度計である。
本明細書において、「高密度」という用語は、20℃にて0.950g/cmを超える密度に使用する。
粘度は、別途指摘しない限り、30rpmにて30番のスピンドルでBrookfield LVT粘度計を使用して、25℃にて測定する。
本明細書の目的では、「有機化合物」という用語は、次の:炭素、水素、酸素、硫黄および窒素の中からの原子のみを含有するが、必ずしもその全部を含有するわけではない化学化合物を意味する。高密度有機化合物は、炭素、水素、酸素、硫黄および窒素の群の中からの原子より成り、0.950g/cm、好ましくは1.000g/cmを超える、なおさらに好ましくは1.050g/cmを超える密度を有する化合物である。
「脂環式」という用語または「脂環」という語は本明細書の分子構造の文脈において、分子内で閉環脂肪族化合物ヘキサンではなく、閉環、たとえばシクロヘキサンを形成する一連の原子を指す。芳香環は、非芳香族不飽和化合物によって起こる付加反応ではなく、求電子置換反応を受けることができる芳香環である。芳香環はまた、Huckels則に従って(4n+2)π電子を有する平面環として定義され、アレーンおよびヘテロアレーンを含むことが可能である。環式という用語は、複素環および置換環分子も含む。本文で使用される化学命名法のさらなる定義は、“G.P.Moss,P.A.S.Smith and D.Tavernier,Pure and Applied chemistry,vol.67 pp1307−1375 1995に見出すことができる。
【0014】
<香料成分>
本明細書の文脈では、フレグランス組成物という用語は、「香料組成物」または「香料」と同意であり、快い匂いを与える嗅覚活性物質の混合物を指すと理解される。「芳香剤構成要素」、「フレグランス成分」および「香料構成要素」という用語とも同意である「フレグランス成分」という用語は、そのフレグランス成分自体が多くの個々の化学化合物を含み、快い匂いを有するとしても、フレグランス組成物中の成分であり得るいずれの個々の物質も意味するものと解釈される。この区別は、香料創出の分野の精通者によって理解される。
【0015】
香料用途には、アルケン、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、ニトリル、アミン、オキシム、アセタール、ケタール、チオール、チオケトン、イミンなどの物質を含む、多種多様の臭気物質が公知である。制限されるものではないが、コア組成物のフレグランス成分は好ましくは、マイクロカプセル放出時に認められるのに十分なほど揮発性であるように、325原子質量単位より小さい、好ましくは300質量単位より小さい、さらに好ましくは275質量単位より小さい分子量を有するであろう。さらに、より小さい質量はあまりに揮発性で芳香剤の一部としては無効である、またはあまりに水溶性であってカプセル化の間に乳化しないので、フレグランス成分は好ましくは、75質量単位を超える、好ましくは150原子質量単位を超える分子量を有するであろう。フレグランス組成物の成分は、強いイオン化官能基、たとえばスルホナート、サルフェート、または第4級アンモニウムイオンも含有せず、それらはハロゲン原子も一切含有しないであろう。本発明の実際にフレグランス成分は、次の:水素、炭素、酸素、窒素および硫黄の中からの、しかし必ずしもその全部ではない原子のみを含有する化合物より構成されるであろう。
フレグランス成分および香料用溶媒は、S.Arctander,Perfume Flavors and Chemicals.Vols.I and II,ニュージャージー州、モントクレアおよびAllured Publishing Corp.によって出版されたAllured’s Flavor and Fragrance Materials 2007 ISBN 978−1−93263326−9により十分に記載されている。
【0016】
好ましくは、コアシェル型マイクロカプセルのコアに封入するのに適したフレグランス成分は、カプセル化工程の化学反応によって悪影響を受けない。
各種の化学構成要素の複合混合物を含む天然型植物油および浸出物も香料として使用されることが公知であり、このような物質は本明細書で使用可能であるが、大半の天然抽出物が化合物の混合物であることが周知であるにもかかわらず、各物質は単一の成分として見なされる。大半の関連する天然物質の主要な化学構成要素は公知であり、それゆえ大抵の天然物質は合成アロマケミカル化合物と同じ方法で評価することができる。
【0017】
<香料用溶媒>
固体フレグランス成分用の液体可溶化剤またはより強力な成分の希釈剤のどちらかとして、あるいは芳香剤の蒸気圧および蒸発特徴を制御するために、香料中で溶媒を使用することは一般的である。溶媒は、フレグランス成分の特徴の多くを有することができるが、それ自体に強い匂いはない。実際に溶媒をフレグランス成分から区別することが可能であるのは、フレグランス組成物の匂い品質を著しく変化させずに、溶媒をフレグランス組成物に高い割合で、たとえば30重量%で、または50重量%も添加できるためである。溶媒は成分(Ciii)または成分(D)に属するとして扱われることになっている。香料用溶媒の一部の例としては、アセチル トリエチル シトレート、ベンジルベンゾエート、ジプロピレングリコールジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、プロピレングルコールおよびトリエチルシトレートが挙げられる。
【0018】
<油溶性有効成分>
有効成分は、カプセルコアに封入されて、カプセルが破裂して内容物が放出されるときに香気以外の利点を与える非香料成分として定義される。本明細書の文脈で油溶性とは、20℃にて48時間後に、ジエチルフタレート100g当たり1.5gを超える溶解度を有する物質を意味する。代表的な有効成分としては、サンスクリーン化合物、防虫剤、フレグランス前駆体およびM ErmanによってCosmetics and Toiletries Vol.120 No5 p.105に記載されたような加温または冷却効果を与える物質および提案された多くの機構のいずれかによって悪臭およびその知覚を抑制または低減する物質が挙げられる。カプセル化前のコアエマルジョンの特性、またはカプセル自体の特性を改善する物質も有効成分である。時として、香料成分は2次機能を有して、組成物に別の利点をもたらすことがある。たとえばサリチレートエステルはサンスクリーン剤としてはもちろんのこと、芳香分子としても作用することができる。フレグランス成分でもある有効成分は、有効成分が香料用溶媒として扱われない限り、フレグランス成分、すなわち成分AまたはBのどちらかに属するとして分類されるであろう。
【0019】
カプセル化芳香剤が放出時に著しい芳香を与えて、上質な消費者向け製品に適切な高品質芳香剤として認識されるために、カプセル化用のフレグランス組成物は、任意の所望の匂いを創出するために選択された天然および合成成分の混合物を含むことができる、好ましくは少なくとも4つのフレグランス成分、さらに好ましくは少なくとも10個のフレグランス成分、なおさらに好ましくは少なくとも15個のフレグランス成分を含有すべきである。さらに、ただ1つの化学化合物も70重量%を超える全フレグランス組成物を含まないこと、さらに好ましくはただ1つの化学組成物も60重量%を超える全フレグランス組成物を含まないこと、なおさらに好ましくはただ1つの化学化合物も50重量%を超える全フレグランス組成物を含まないこと、が好ましい。
【0020】
ClogPは、フレグランス成分のオクタノール/水分配係数(p)を指す。フレグランス成分のオクタノール/水分配係数は、オクタノール中および水中でのその平衡濃度の間の比である。フレグランス成分の分配係数はより好都合には、10を底とするその対数、logPの形で与えられる。それゆえ本発明のフレグランス成分は、約1.00〜6.00の、好ましくは1.50〜5.00の範囲の、さらに好ましくは2.00〜4.50の範囲のlogPを有する。多くのフレグランス成分のLogP値が報告されている。たとえば、カリフォルニア州アーバインのDaylight Chemical Information Systems,Inc.(Daylight CIS)より入手できるPomona92データベースには、原文献への引用と共に多くが記載されている。しかし、本明細書で報告するClogP値は、CambridgeSoft Corporation,100 CambridgePark Drive,Cambridge,MA 02140 米国またはCambridgeSoft Corporation,8 Signet Court,Swanns load,Cambridge CB5 8LA 英国より入手できるChemoffice Ultra Software version 9内で利用できる“CLOGP”プログラムによってより好都合に計算される。ClogP値は好ましくは、本発明で有用であるフレグランス成分の選択の際に実験logP値の代わりに使用される。天然油または抽出物では、このような油の組成物は、分析によって、またはBACIS(Boelens Aroma Chemical Information Service,Groen van Prinsterlaan 21,1272 GB Huizen,オランダ)によって出版されたESO2000データベースで公開された組成物を使用して決定することができる。
【0021】
フレグランス組成物は、カプセル化工程の一部としてエマルジョンを形成するほど十分に非水溶性であることが好ましい。水溶性はClogPとほぼ逆の相関があるので、50重量%を超える、好ましくは70重量%を超えるフレグランス組成物が1.00〜6.00のClogP値を有する脂環式アロマケミカル化合物を含むことが好ましく、50重量%超、さらに好ましくは70重量%超が1.50〜5.00のClogP値を有することがさらに好ましく、50重量%超、好ましくは70重量%超が2.00〜4.50のClogP値を有することがなおさらに好ましい。
【0022】
<高密度脂環式アロマケミカル化合物:成分(A)>
本発明の重要な特徴は、20〜100%のカプセル化用フレグランス組成物は、0.950〜1.500g/cmの密度を有する、少なくとも1つの脂環式アロマケミカル化合物を含有することである。好ましくは、フレグランス組成物は、20〜100%の、0.950〜1.500g/cmの密度を有する、少なくとも3つの、さらに好ましくは少なくとも6つの、特に好ましくは少なくとも10個の高密度環式芳香剤または香料成分で構成される。適切な高密度脂環式アロマケミカル化合物は、脂環式、複素環式、芳香族または大環状であり得る化学構造中に少なくとも1個の環を含有するフレグランス成分として定義され、0.950〜1.500g/cmの、好ましくは1.000〜1.500g/cmの、さらに好ましくは1.050〜1.400g/cmの密度を有し、1.00〜6.00の、好ましくは1.50〜5.00の、さらに好ましくは2.00〜5.00の、なおさらに好ましくは2.00〜4.50のClogP値を有する。好ましくは、本発明の目的のために有用である高密度フレグランス成分は、150質量単位を超えて300質量単位を下回る分子量を有する。下の表1に、本発明の目的に適切であるいくつかの一般的な高密度脂環式アロマケミカル化合物の例を挙げる。このリストは、香料成分を例示することを意図しており、包括的でもなく、本発明を決して制限するものでもない。
【0023】
表1−1:成分(A)の脂環式アロマケミカル化合物の例
【0024】
【表1】


【0025】
表1−2:成分(A)の脂環式アロマケミカル化合物の例
【0026】
【表2】


【0027】
a)サリチル酸シクロヘキシルは花王のMSDSによる報告
b)JCS Perkin Trans2 p199−200(2002)で報告された60℃にて測定
c)Beilstein
d)Sigma−Aldrichカタログ2008−2009およびその参考文献
シクラセットは、International Flavors and Fragramcesの商標である。
【0028】
カプセルコア中に封入するための脂環式アロマケミカル化合物の特に好ましい群としては:酢酸ベンジル、ベンゾフェノン、サリチル酸ベンジル、シス−3−ヘキシルサリチレート、クマリン、サリチル酸シクロヘキシル、酢酸トリシクロデセニル、エチルバニリン、オイゲノール、ヘリオトロピン、インドール、イソオイゲノール、アンスラニル酸メチル、安息香酸メチル、オキサン(2−メチル−4−プロピル−1,3−オキサチアン)、2−フェニルエタノール、バニリン、バニリンイソブチレート、ウォーターメロンケトンが挙げられる。
高密度脂環式アロマケミカル化合物は20〜100重量%のフレグランス組成物を含む必要があり、好ましくは、それらは3〜100重量%のフレグランス組成物を含むべきであり、さらに好ましくは、それらは40〜100重量%のフレグランス組成物を含むべきであり、なおさらに好ましくは、それらは50〜100重量%のフレグランス組成物を含むべきであり、特に好ましくは、それらは60〜100重量%のフレグランス組成物を含むべきであり、さらに好ましくは、それらは75〜100重量%のフレグランス組成物を含むべきである。
0.950g/cmを超える密度を有し、Clogp値が1.00〜6.00の脂環式アロマケミカル化合物を50重量%超で含有するエッセンシャルオイルも、脂環式アロマケミカル化合物の部分だけでなく、その全体が脂環式アロマケミカル化合物であると見なされる。
【0029】
<従来の香料成分:成分(B)>
成分B香料成分は、それらがその分子構造中に環式単位を有していても、有していなくてもよいが、その密度が20℃または密度が適正に測定できるようなより高い温度にて0.950g/cmより低いことを特徴とする。それらも1.00〜6.00のClogP値および75〜325amuの分子量を有するという点で、香料成分の上の定義に従う。下の表2に、分子構造の一部として環状単位を有する、または有さないことがあり、0.630〜0.950g/cmの密度および1.00〜6.00のClogP値を有する、いくつかの一般的な香料成分の例を挙げる。このリストは、成分Bの香料成分を例示することを意図しており、包括的でもなく、本発明を決して制限するものでもない。
【0030】
表2:成分(B)の香料成分の例
【0031】
【表3】


【0032】
好ましくは、成分Aおよび成分Bの香料成分は共に、少なくとも10個の香料成分を含む。
【0033】
<高密度有機油溶性成分:成分(C)>
本発明の場合による、しかししばしば好ましい特徴は、マイクロカプセルコアへ0〜50%の、好ましくは10〜50%の、さらに好ましくは20〜50%の1つ以上の高密度有機化合物が含まれることである。「有機」および「高密度」は、明細書で先に定義したように同じ意味を有する。一部の高密度有機成分は、その分子式内に環状構造を有することができるが、有する必要はない。一般に、高密度有機成分はフレグランス成分として通常使用されないが、それらは匂いを有することがあり、フレグランス組成物で使用することができる。高密度有機成分は芳香剤で溶媒または希釈剤として使用することも可能であり、あるいは食品製品で成分として使用することも可能である。高密度有機油溶性化合物は、さらに次のように定義される:
【0034】
i)高密度油溶性有機ポリエステル化合物:成分(Ci)
本明細書の文脈において油溶性とは、20℃にて48時間後に、ジエチルフタレート100g当たり1.5g超の溶解性を有する物質を意味する。「ポリアシル」は、少なくとも2個のエステル基を所有する化合物を意味する。さらに高密度油溶性ポリエステル化合物は、100〜1500amuの、好ましくは125〜1000amuの、さらに好ましくは150〜750amuの分子量を有し、1分子当たり少なくとも2個のエステル基を含有し、0.950〜1.500g/cmの、好ましくは1.000〜1.500g/cm、なおさらに好ましくは1.050〜1.500g/cmの、特に好ましくは1.100〜1.500g/cmの、特に好ましくは1.150〜1.400g/cmの密度を有する必要があるか、または次の式を有する化合物である:
【0035】
【化1】


【0036】
(式中:RおよびRは、同一又は異なって、直鎖または分枝の炭素数1〜6のアルキル基を表し、Yは、1個または複数の水酸基またはフェニル基によって場合により置換された炭素数1〜6のアルケニレン基またはアルキニレン基であり、mおよびpは、同一又は異なって、1〜4の整数である。)
【0037】
【化2】


【0038】
(式中:Rは、水素原子あるいは直鎖または分枝の炭素数1〜6アルキルカルボニル基であり、RおよびRは、同一又は異なって、直鎖または分枝の炭素数1〜6のアルキル基を表し、nは、1〜3の整数である。)
上の式において、RおよびRは、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、Rは、好ましくは炭素数1〜3のアルキルカルボニルであり、Yは、好ましくは炭素数1〜3のアルケニレン基またはアルキニレン基である。
【0039】
【化3】


【0040】
(式中:Xは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、−CH(R)COORであり、Wは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、−CH(R)COOR、−(CHCH(R)COORであり、Rは、直鎖または分枝の炭素数1〜3のアルキル基であり、RおよびRは、同一又は異なって、水素原子あるいは直鎖または分枝の炭素数1〜3のアルキル基であり、nは1〜4の整数である。但し、少なくともXまたはWがエステル基である。)
【0041】
【化4】


【0042】
(式中:RおよびRは、同一又は異なって、Rが直鎖または分枝の炭素数1〜6のアルキル基である−CO−R基である。)
表3は、いくつかの高密度油溶性有機成分を挙げており、高密度有機油溶性ポリエステル物質の範囲を例示するが、包括的でなく、決して本発明を限定するものではない。
【0043】
表3:高密度有機油溶性ポリエステル成分の例:成分(Ci)
【0044】
【表4】


【0045】
Sigma Aldrichカタログ2008−2009で報告
**Dowanol PGDAについて、Dow Chemicals technical datasheetにて25℃にて報告
【0046】
しかし高密度有機油溶性ポリエステル有機物質は、パーソナルケア製品や化粧用製品で使用するために安全でなければならず、それら環境へ放出するのにも安全でなければならない。この理由で、ハロゲン含有有機物質は、マイクロカプセルへの取り込みに適切とは見なされない。好ましい高密度油溶性ポリエステル化合物としては、スクロース オクタアセテート、グリセリル トリアセテート、グリセリル トリプロピオナート、ジエチル タータレート、トリエチル シトレートおよびアセチル トリエチル シトレートが挙げられる。
【0047】
ii)高密度有機ポリマー:成分(Cii)
モノマー分子量に基づいて、またはコポリマーの場合には、重合反応前のモノマーのいずれかの混合物の重量平均分子量に基づいて計算された、少なくとも19重量%の、好ましくは25重量%を超える酸素、窒素および硫黄原子の1つまたは混合物のどちらかを含有して、1.000〜1.500g/cmの、好ましくは1.050〜1.500g/cmの、なおさらに好ましくは1.100〜1.500g/cmの、特に好ましくは1.150〜1.400の密度を有する、分子量が2,000〜250,000amu、好ましくは5,000〜100,000amuの有機ポリマーは、カプセル化用フレグランス組成物に包含させるために、フレグランス組成物中に0〜50重量%、好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは20〜50重量%包含されることが可能である。
ポリマー(群Cii)である高密度有機成分の場合、ポリマーが産生されるモノマーは好ましくは、少なくとも19重量%の酸素、窒素または硫黄化合物原子のいずれかの組み合せを、好ましくは25%超のこれらの原子のいずれかの組み合せを、さらに好ましくは30%超の酸素、窒素または硫黄原子のいずれかの組み合せを含有する必要がある。ポリマーは好ましくは、2000〜250,000amuの、好ましくは5000〜200,000amuの、さらに好ましくは10,000〜100,000amuの分子量範囲を有する必要がある。さらにモノマーは、炭素、水素、酸素、窒素および硫黄原子の中からの原子を、必ずしもすべてではないが含む。モノマーは、スルホン酸塩または硫酸塩あるいは第4級アンモニウム塩などの強いイオン化基をいずれも含有すべきではない。ポリマーは、ポリビニルアセテートまたはポリアクリルアミドまたはポリアクリレートなどのポリマーを産生するための、ビニルまたはアクリルモノマー、たとえばビニルアセテートなどの不飽和モノマーのラジカル重合などのいずれの標準手段によっても調製できる。あるいは、ポリマーは、ポリプロピレングリコールまたはポリテレフタレートエステルまたはポリアミドなどの、ポリエーテルまたはポリエステルを導く反応などの縮合反応によって産生することができる。
【0048】
2つ以上のモノマー種を含有するポリマーも、ポリマーが好ましくは、モノマーの質量パーセントについて平均された少なくとも19%の酸素、窒素、または硫黄原子のいずれかの組み合せを、好ましくは25%超の酸素、窒素および硫黄原子のいずれかの組み合せを、好ましくは30%超の酸素、窒素および硫黄原子のいずれかの組み合せを含有するという条件で、本発明の一部と見なされる。
表4は、いくつかの高密度有機ポリマーを挙げ、物質の範囲を例示することを意図しているが、包括的でもなく、本発明を決して制限するものでもない。ポリマーの密度はサンプルの履歴に応じて変化するかもしれないので、データの一部が範囲内に引用される。データは、2005年にJ Wiley and Sonsによって出版されたJ BrandupらによるPolymer Handbook 4th Editionから得られる(ISBN 978−0−471−16628−3)。
【0049】
表4:成分(Cii)の高密度有機ポリマー物質の例
【0050】
【表5】


【0051】
iii)香料用溶媒:成分(Ciii)
固体フレグランス成分用の液体可溶化剤またはより強力な成分の希釈剤のどちらかとして、あるいは芳香剤の蒸気圧および蒸発特徴を制御するために、香料中で溶媒を使用することは一般的である。本明細書の目的のために、香料用溶媒は、香調を実質的に変化させることなく芳香剤に25℃にて50重量%添加することが可能である液体として定義される。表5は、いくつかの香料用溶媒を挙げ、溶媒の範囲を例示することを意図しているが、包括的でもなく、本発明を決して制限するものでもない。
【0052】
表5:成分(Ciii)の香料用溶媒
【0053】
【表6】


【0054】
Sigma Aldrichカタログ2008−2009で報告
**25℃でのDow Chemicals technical datasheetからの密度
***イソパールLは、密度が15℃にて測定されたとして報告されている、Exxon Mobil Chemicalsの登録商標である。
【0055】
高密度有機成分は、いずれの割合の成分Ci)、Cii)およびCiii)からの物質の混合物も含むことができる。
【0056】
他の溶媒:成分(D)
本発明のカプセル用のフレグランス組成物には、成分(Ciii)に含まれない1種以上の油溶性有機溶媒を任意成分として用いることができる。
表5−aにおいて、通常、密度が0.800〜0.950g/cmであるこれら油溶性有機溶媒を例示するが、包括的でなく、決して本発明を限定するものではない。
【0057】
表5:成分(D)の油溶性有機溶媒
【0058】
【表7】


【0059】
Sigma Aldrichカタログ2008−2009で報告
**25℃でのDow Chemicals technical datasheetからの密度
***イソパールLは、密度が15℃にて測定されたとして報告されている、Exxon Mobil Chemicalsの登録商標である。
【0060】
本発明において、成分(D)の油溶性有機溶媒を、0〜50質量%の、好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは10〜50質量%、なおさらに好ましくは20〜50質量%、カプセル用のフレグランス組成物中に含むものである。いうまでもなく、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の総和が100重量%である。ただし、成分(C)および成分(C)の和が0〜50質量%の範囲である。。
カプセル化のためのフレグランス組成物は、少なくとも20%の成分(A)の物質からの少なくとも1つの成分と、場合により、上で定義したような成分(B)の香料成分と、香料用溶媒(成分(Ciii)または成分(D))と、有効成分と、成分Cの高密度有機油溶性剤とを含む必要がある。
【0061】
<マイクロカプセル>
本発明のフレグランス組成物は、カプセル化芳香剤製品または芳香剤含有コアシェル型マイクロカプセルを作製するのに特に適切である。「マイクロカプセル」という用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、通例は1〜500マイクロメートルの、好ましくは2〜200マイクロメートルの、さらに好ましくは5〜100マイクロメートルの、特に好ましくは10〜50マイクロメートルの平均粒径を有する小型カプセル(すなわちマイクロカプセル)内への香料および他の物質または活性剤のカプセル化を含む。平均粒径は複数の異なる方法で決定することができるが、好ましい技法はMalvern Masterizerを使用する光散乱により、平均粒径は中央粒径D(0.5)値と見なされる。
コアシェル型マイクロカプセルは通例、非水溶性の、または少なくとも部分的に非水溶性の物質の、通例はポリマー材料の球状中空シェルを含み、シェルの中に香料と他の物質が含有されている。マイクロカプセルは次の特許出願または特許、すなわち米国特許出願公開第2003/215,417(A1)号;米国特許出願公開第2003/216,488(A1)号;米国特許出願公開第2003/165,692(A1)号;米国特許出願公開第2004/071,742(A1)号;米国特許出願公開第2004/071,746(A1)号;米国特許出願公開第2004/072,719(A1)号;米国特許出願公開第2004/072,720(A1)号;欧州特許第1,393,706(A1)号;米国特許出願公開第2003/203,829(A1)号;米国特許出願公開第2003/195,133(A1)号;米国特許出願公開第2004/087,477(A1)号;米国特許出願公開第2004/0,106,536(A1)号;米国特許第6,200,949号;米国特許第4,882,220号;米国特許第4,917,920号;米国特許第4,514,461号;米国特許第RE 32,713号;米国特許第4,234,627号に記載されている。
【0062】
マイクロカプセルは、コアシェル型マイクロカプセルを作製するための当業者に公知の一連の従来方法、たとえばコアセルベーション、界面重合、および重縮合を使用して調製できる。たとえば米国特許第3,516,941号、米国特許第4,520,142号、米国特許第4,528,226号、米国特許第4,681,806号、米国特許第4,145,184号;英国特許第2,073,132号;国際公開第99/17871号;およびMICROENCAPSULATION:Methods and Industrial Applications Edited by Benita and Simon(Marcel Dekker,Inc.1996)を参照。しかし、なお本質的にコアシェル型マイクロカプセルを製造する間に、物質や工程ステップに関して多くの変形例が可能であることが認識される。マイクロカプセルのシェルを作製するのに適切な物質の非制限的な例としては、尿素−ホルムアルデヒド、メラミン−ホルムアルデヒド、フェノール−ホルムアルデヒド、ポリメタクリレートエステル、ポリビニル化合物、ゼラチン、カラギナン、ポリウレタン、ポリアミド、または上のいずれかの組み合せが挙げられる。
【0063】
本発明の好ましい一実施形態において、マイクロカプセルのシェルは、アミノプラスト樹脂を主に含む。このようなシェルマイクロカプセルを形成する方法としては、重縮合反応が挙げられる。アミノプラスト樹脂は、1つ以上のアミンと、1つ以上のアルデヒド、通例はホルムアルデヒドとの反応生成物である。適切なアミンの非制限的な例としては、尿素、チオ尿素、メラミンおよびその誘導体、ベンゾグアナミンおよびアセトグアナミンならびにアミンの組み合せが挙げられる。適切な架橋剤(たとえばトルエンジイソシアナート、ジビニルベンゼン、ブタンジオールジアクリレートなど)も使用可能であり、必要に応じて2次壁ポリマー、たとえば無水物およびその誘導体、特に米国特許出願公開第2004/0,087,477(A1)号に開示されているようなマレイン酸無水物のポリマーおよびコポリマーも使用可能である。本発明の好ましい実施形態において、マイクロカプセルのシェルは、尿素−ホルムアルデヒド;メラミン−ホルムアルデヒド;またはその組み合せを含み、得られたマイクロカプセルは、アミノプラスト・コアシェル型マイクロカプセルとしてよく知られている。
【0064】
カプセル製造の当業者は、成分比率および/または工程パラメータの変更などの、コアシェル型マイクロカプセルの製造に導入できるが、本明細書および引用参考文献に記載されたコアシェル調製の一般的な説明になお含まれる、多くの変形例があることを認識する。しかし注目できる1つの変形例は、アルカリ金属またはアンモニアおよびアミン誘導体の塩をカプセル化反応前の水相に溶解させて、あまり疎水性でない成分がコア組成物中に存在するときに安定なエマルジョン相の形成を補助することである。これらの塩は、塩酸、硫酸、リン酸または硝酸などの無機酸の塩であってもよい。
決して特許を制限したくないが、カプセル分散を調製する代表的な工程は、次のステップを含む。
【0065】
フレグランス成分およびいずれかの有効成分または乳化剤または乳化安定剤を含み得る改質剤のエマルジョンの調製は、激しい撹拌の下で行われる。
第1のステップは、上のエマルジョンを、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂(適切なモル比1:3:2〜1:6:4の、メラミン:ホルムアルデヒド:メタノール混合物)および乳化剤と混合することである。これらのモノマーはあらかじめ縮合できるか、モノマーは直接使用することができる。メラミンの一部は尿素によって置換することができる。これらのポリマーでは、ホルムアルデヒドは、好ましくはメチルエーテルとして部分的にエーテル化することができる。
好ましくは、シェルは、50〜100%のホルムアルデヒド−メラミンまたはホルムアルデヒド−メラミン−尿素またはホルムアルデヒド−尿素縮合ポリマーあるいは部分的に対応するエーテル化ホルムアルデヒド縮合ポリマーより、好ましくはメチルエーテルとして構成される。シェルは、50〜100%のメタクリレートまたはウレタンより構成することもできる。
【0066】
次に酸を上の混合物に添加して、pH3.5〜6.5に調整し、温度を30〜45℃に上昇させる。分散物が油を含まなくなるまで、撹拌を進行させる。たとえばギ酸または酢酸などの、有害な特性を有さないいずれの酸も本工程で使用できる。
中程度の撹拌下で温度を60〜100℃まで数時間加熱することによってカプセルが硬化されれば、特に好都合である。
硬化の早期の間に、尿素、メラミンまたは他のアミン、あるいはその混合物のさらなる添加が行われて、最終分散中のホルムアルデヒド濃度を低下させて、壁厚を増大させられれば、特に好都合である。
通例、10〜30%の追加のメラミンおよび/または尿素をこの段階で添加することができ、特に好都合な比は5:1〜1:1 メラミン:尿素である。
硬化が完了したら、温度を約50℃に低下させて、分散を中和してから、pH約9.5まで調整する。
【0067】
一実施形態において、本発明のマイクロカプセルは本来、脆性である。脆性は、マイクロカプセルが直接の外圧またはセン断力を受けたときに破裂または壊裂する傾向を指す。本発明の目的では、マイクロカプセルによって処理された織布に付着している間に、マイクロカプセル含有織布が着用されるまたは取り扱われることによって操作されるときに遭遇する力によって、マイクロカプセルを破裂させることができる(それによってマイクロカプセルの内容物が放出される)場合に、利用されたマイクロカプセルは「脆性」である。一実施形態において、コアシェル型マイクロカプセルは通例、1〜500マイクロメートルの、好ましくは5〜200マイクロメートルの、さらに好ましくは5〜100マイクロメートルの、特に好ましくは10〜50マイクロメートルの範囲の平均外径を有する。粒径分布は狭くても、広くても、多峰性でもよい。
本発明のマイクロカプセルは、コアシェル型マイクロカプセルとは見なされない米国特許第5,246,603号に記載されているマイクロカプセルなどの水分との接触時に破裂するデンプンからなるマイクロカプセルなどの、水分活性化マイクロカプセルとは区別される。
【0068】
液体の家庭用製品、洗濯用製品、パーソナルケア製品および化粧用製品
本発明のフレグランス組成物を含有するマイクロカプセルを使用できる液体の家庭用製品、洗濯製品、パーソナルケア製品および化粧用製品の調合物および成分は、当業者に公知であり、参照により本明細書に組み入れられている次の研究:
AOCS pressが出版したFormulating Detergents and Personal Care Products A guide to Product Development by L.Ho Tan Tai,ISBN 1−893997−10−3。またSurfactant Science Series Liquid DetergentsのVolume 67 ISBN 0−8247−9391−9(Marcel Dekker Inc)はもちろんのこと、次の特許または特許出願も参照することができる。
【0069】
<液体洗濯用洗剤>
米国特許第5,929,022号、米国特許第5,916,862号、米国特許第5,731,278号、米国特許第5,470,507号、米国特許第5,466,802号、米国特許第5,460,752号、および米国特許第5,458,810号。
<シャンプーおよびヘアコンディショナー>
米国特許第6,162,423号、米国特許第5,968,286号、米国特許第5,935,561号、米国特許第5,932,203号、米国特許第5,837,661号、米国特許第5,776,443号、米国特許第5,756,436号、米国特許第5,661,118号、米国特許第5,618,523号。
液体の家庭用製品、洗濯製品、パーソナルケア製品および化粧用製品は、通例0.800〜1.600g/cmの、さらに好ましくは、溶解されたか、または調合物に懸濁されたかのどちらかの、界面活性剤、乳化油、溶媒および無機物質を含有する液体組成物では、0.900〜1.400g/cmの密度範囲を有することができる。主に水性組成物である製品は、1.000g/cmに近い密度を有する傾向にあるだろう。主に水性の液体製品という用語は、重量パーセンテージで水が最大成分である製品を意味する。
一部の非水性または低水性液体製品調合物は、アルコールおよびグリコールなどの極性溶媒をかなりの割合で含有し、結果としてその密度は、図6に示すように1,000g/cmを超えるかもしれない。
ファブリックコンディショナーと呼ばれることがある大半の水性液体衣類柔軟剤は、主に水およびカチオン性界面活性剤を含有し、その密度は1.000g/cmであり、特に濃縮調合物はより高濃度のカチオン性界面活性剤を含有する。それゆえ、50%を超える水および4〜30%の柔軟カチオン性界面活性剤を含有する、家庭での衣類洗濯のすすぎステップで使用される製品として定義される水性液体衣類柔軟剤は、本発明から除外される。下の表6は、ある市販ブランドの液体の家庭用製品、洗濯用製品、パーソナルケア製品および化粧用製品の密度の具体例いくつかを含む。この場合もリストは例証的であり、包括的でも、本発明を制限するものでもないものとする。
【0070】
表6:市販の液体の家庭用製品、洗濯用製品、パーソナルケア製品および化粧用製品の密度
【0071】
【表8】


【0072】
上述したように、5ミクロンを超える平均粒径を有し、液体製品に包含されたマイクロカプセルは、特に長期貯蔵時または高温、たとえば40℃にてクリーム化または沈降のどちらかによって分離する傾向を有する。しかし高い粘度を有する液体製品の場合、製品が特に粘度が分離を防止できる非常に低いセン断率において高い粘度を有する場合、式から製品粘度と、カプセルと液体製品との間の密度差との関係があることが明らかである。密度差が大きくなるほど、製品は、カプセルを懸濁させるためにより粘性である必要がある。このことは、気泡をかなり長期間懸濁させることができるように十分に粘性である製品によって容易に例証される。温度は、液体製品の粘度に影響を及ぼすことができる。20℃の周囲温度にて高い粘性を有する製品は、より高い温度で貯蔵したときにはるかに低い粘度を有するかもしれない。
表7は、欧州のヘンケルが製造した液体洗剤パーシル・クラフト・ジェル濃縮物の粘度に対するセン断率および温度の影響を示す。セン断率の上昇時に粘度が降下するだけでなく、37℃で測定したときに粘度もはるかに低い。37℃またはそれ以上の温度で所定の期間貯蔵したときに一部の製品の粘度が上昇することも公知である。
【0073】
表7:パーシル・クラフト・ジェル濃縮液体洗濯用洗剤の粘度
【0074】
【表9】


【0075】
周囲温度は、地域および季節変化のために変動するので、カプセルが懸濁された状態を維持するためには、密度が十分に適合しない限り、粘度を高く維持する必要がある。それゆえ本発明のフレグランス組成物を含有するマイクロカプセルが導入される液体の家庭用製品、洗濯用製品、パーソナルケアア製品または化粧用製品は、スピンドルNo 31を用いて30rpmにてBrookfield LVT粘度計を使用してより低い値を与える25℃または40℃のどちらかにおいて測定された、10〜2,500mPasの、好ましくは20〜2,000mPasの、さらに好ましくは50〜1500mPasの粘度を有すれば好ましい。一部の調合物では、製品粘度は高温での長期貯蔵の間に変化することがある。それゆえ上で与えた値は、新たに作製されたサンプルだけでなく、40℃にて12週間貯蔵されたサンプルにも適用すべきである。
液体製品のマイクロカプセル芳香剤の用量は、送達される有効成分の総ペイロードによって変化する。各種の点、すなわちマイクロカプセル分散濃度、マイクロカプセル内の芳香剤の割合および所望の効果を生じるのに必要な物質の量が用量に影響を及ぼす。マイクロカプセル調合物からすべての水および溶媒を除去した後にマイクロカプセルの乾燥重量として測定した、液体製品中へのマイクロカプセルの用量は、液体製品組成物の0.01〜10重量%の、好ましくは0.05〜2.5重量%の、さらに好ましくは組成物の0.1〜1.25重量%の範囲であるべきである。マイクロカプセルはいずれの従来手段によって、通常は工程の適切な段階にて、ただし通常は高セン断混合の後に添加される液体分散物として製品中に包含させることができる。
【実施例】
【0076】
本発明の組成物およびプロセスをさらに例証するために、以下の実施例を記載する。これらの実施例は、単なる例示であって、決して本発明の範囲を制限しりものではない。
【0077】
[実施例1]
マイクロカプセルの調製
2lの円筒状撹拌溶器に直径50mmの市販標準分散ディスクを有する調節式分散器を装着した。
容器に:
本発明のフレグランス組成物400g;
Brookfield粘度275mPasおよびpH8.5の、メチル化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂(モル比、メラミン:ホルムアルデヒド:メタノール 1:3.9:2.4)の70%強度水溶液86g;
ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩の20%強度溶液80g;
水350g;
10重量%強度ギ酸水溶液15g;
を続けて注入した。
この注入物を、撹拌速度を約20ms−1の周囲速度に調整することによって処理してマイクロカプセル分散物とした。温度を約35℃に維持した。
60分後、分散物は油を含んでいなかった。約20〜30μmの粒径が確立された。分散ディスクの撹拌速度を次に、容器内容物を均質に循環させるのに十分なレベルまで低下させた。
約80℃の硬化温度を設定して、高温蒸気の注入によって80℃に達したら、ギ酸による(pHをpH4.5に調整するため)のメラミン−尿素(比2.5:1、メラミン:尿素)の27%懸濁物の供給量を、予成形されたマイクロカプセルの分散物に一定の質量流量で添加して、1時間の経過にわたって計量した。メラミン−尿素の懸濁物が合計46g計量された。
90℃における硬化期間が120分間続く。
分散物を約55℃まで冷却した後、ジエタノールアミンでpH7.0まで中和して、アンモニアを使用してpH8.5まで調整した。
分散剤を添加して、固体含有率50%および粘度83mPasの均質なマイクロカプセル分散物を得た
【0078】
[実施例2]
フレグランス組成物1
下の表8に、すべてが0.950g/cmを超える密度および1.00〜5.00のClogPを有する4つの香料成分を含むフレグランス組成物を示す。そのため1.0553g/cmの密度を有するフレグランス組成物1は、100%の高密度脂環式アロマケミカル化合物を含有して、実施例1の手順によるカプセル化に適切であるか、またはアコードとして扱われ、カプセル化前に最大80重量%の低密度香料成分とブレンドすることが可能である。
【0079】
表8:フレグランス組成物1
【0080】
【表10】


【0081】
a)20℃にて測定;
b)Sigma Aldrich Catalogue 2008−2009より
【0082】
[実施例3]
フレグランス組成物2
表9は、実施例1のような縮合反応によるカプセル化に適したフレグランス組成物のさらなる例を示す。フレグランス組成物2は、0.950g/cmを超える密度および1.00〜5.00のClogPを有する脂環式アロマケミカル化合物を81%と、高密度油溶性有機溶媒を15%含む。このフレグランス組成物の密度は1.1549g/cmである。
表9と続いての実施例では、発明をより容易に例証するために組成物の成分が成分A、BまたはCに割り当てられている。
【0083】
表9:フレグランス組成物2
【0084】
【表11】


【0085】
[実施例4]
フレグランス組成物3
フレグランス組成物3は下の表10に、実施例1の手順によってマイクロカプセル内へ封入されるのに適したフレグランス組成物を示す。フレグランス組成物3は0.9384g/cmの密度を有し、フレグランス組成物の45.65重量%を構成する5つの環式高密度フレグランス成分を含有する。
【0086】
表10:フレグランス組成物3
【0087】
【表12】


【0088】
[実施例5]
フレグランス組成物4〜10
カプセル化のためのコア組成物は下の表11にように調合することが可能であり、表11は、各種の割合の高密度油溶性有機成分をフレグランス組成物3に添加して密度を上昇させて、密度を目標とする液体消費者向け製品の密度により適合させることによって、コア組成物の密度を変更する方法を示している。
【0089】
表11:フレグランス組成物
【0090】
【表13】


【0091】
[実施例6]
フレグランス組成物11
マイクロカプセルコア組成物内に封入されるのに適したフレグランス組成物は、下の表12のように調合される。
【0092】
表12:フレグランス組成物11
【0093】
【表14】


【0094】
フレグランス組成物10は、本発明の組成物を52.05%含み、0.9973gcm−3の密度を有する。このフレグランス組成物は、実施例1の手順によってホルムアルデヒドメラミンコアシェル型マイクロカプセル内にカプセル化された。最終組成物はTAKAPS47であった。
【0095】
[実施例7]
フレグランス組成物12
エッセンシャルオイルを含む本発明のフレグランス組成物のさらなる例を下の表13に示す。
【0096】
表13:フレグランス組成物12
【0097】
【表15】


【0098】
アミリスオイルの構成要素の70.3%を占めるアミリスオイルの主な構成要素を下の表14に示す。使用したオイルは、0.959g/cmの密度を有し、主な成分はその化学構造内に脂環式環を含有し、1.5を超えるが6.00を下回るClogP値を有する。それゆえアミリスオイルは、本発明の高密度成分をフレグランス組成物に与えている。Clogp値が1.50〜6.00の他の7つの高密度成分と1つの高密度非フレグランス成分(トリエチルシトレート)は、高密度成分の合せた総パーセンテージをフレグランス組成物の93.07重量%としている。このフレグランス組成物は0.950g/cmを超える密度を有し、実施例の方法によるカプセル化に適している。
【0099】
表14:アミリスオイルの主成分
【0100】
【表16】


【0101】
ジンギベレンおよびセリナ−3,7(11)ジエンは、本発明で請求された1.00〜6.00の範囲外のClogP値を有する。
【0102】
[実施例8]
貯蔵安定性
この実施例は、カプセルが液体洗濯用製品中に貯蔵されているときに、本発明のフレグランス組成物を含有するマイクロカプセルの貯蔵安定性を従来の芳香組成物と比較する。フレグランス組成物3、7および11のサンプルを、本発明以外の従来の芳香剤と共に実施例1の手順によってカプセル化した。得られたカプセル分散物にそれぞれTaka21、Taka46、Taka47およびTaka160という符号を付けた。各カプセル分散物0.3gを19.7gのパーシル・クラフト・ジェル濃縮洗濯液に添加して、混合後に40℃にて貯蔵した。わずか5時間後に、Taka160を含有しているサンプルは分離しているように見えたが、残りのサンプルは分散したままであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):密度が0.950〜1.500g/cmおよびClogP値が1.00〜6.00である脂環式アロマケミカル化合物の少なくとも1種以上を40〜100質量%、
成分(B):密度が0.630〜0.950g/cmの香料成分の少なくとも1種以上を0〜80質量%、
成分(C):密度が0.950〜1.500g/cmの油溶性有機溶媒の少なくとも1種以上を0〜50質量%、
を含有し、成分(A)、成分(B)および成分(C)の総和が100重量%となるフレグランス組成物が、コア内に封入されていることを特徴とするコアシェル型マイクロカプセル。
【請求項2】
成分(A):密度が1.000〜1.500g/cmおよびClogP値が1.50〜5.00である脂環式アロマケミカル化合物を30〜100質量%含有することを特徴とする請求項1に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
【請求項3】
成分(A):ClogP値が2.00〜4.50である脂環式アロマケミカル化合物を75〜100質量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
【請求項4】
成分(B):密度が0.630〜0.950g/cmの香料成分の少なくとも1種以上を5〜60質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
【請求項5】
成分(A)および成分(B)が共に少なくとも10種以上の香料成分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
【請求項6】
成分(C):密度が0.950〜1.500g/cmである油溶性有機溶媒を10〜50質量%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
【請求項7】
成分(A):酢酸ベンジル、ベンゾフェノン、サリチル酸ベンジル、サリチル酸シス−3−ヘキセニル、クマリン、サリチル酸シクロヘキシル、酢酸トリシクロデセニル、エチルバニリン、オイゲノール、ヘリオトロピン、インドール、イソオイゲノール、アンスラニル酸メチル、安息香酸メチル、オキサン(2−メチル−4−プロピル−1,3−オキサチアン)、2−フェニルエタノール、バニリン、バニリンイソブチレートおよびウォーターメロンケトンならびにその混合物の中から選択される脂環式アロマケミカル化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
【請求項8】
成分(B):カプロン酸アリル、シトロネロール、γ−デカラクトン、ジヒドロミルセノール、酢酸シス−3−ヘキセニル、リモネン、リナロール、酢酸プレニルおよび酢酸ブチルシクロヘキシルならびにその混合物の中から選択される香料成分であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
【請求項9】
成分(C):アセチル トリエチル シトレート、ジエチル マレアート、ジエチル マロネート、ジエチル アジペート、ジメチル アジペート、ジエチル スクシナート、ジエチル タータレート、ジメチル テレフタレート、グリセリル トリアセテート、プロピレングリコール ジアセテート、スクロース オクタ−アセテート、スクロース ジアセテート ヘキサイソブチレート、グリセリル トリプロピオナート、トリエチル シトレートならびにその混合物の中から選択される油溶性有機溶媒であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
【請求項10】
フレグランス組成物の追加成分として、成分(D):密度が0.800〜0.950g/cmの油溶性有機溶媒の少なくとも1種以上を0〜50質量%、
を含有し、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の総和が100重量%であり、成分(C)および成分(C)の和が0〜50質量%であること特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
【請求項11】
密度が0.950g/cmを超える密度を有するフレグランス組成物であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のコアシェル型マイクロカプセル。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のコアシェル型マイクロカプセルを含有し、25℃〜40℃の条件において、1.010g/cmを超える密度および10mPas〜5000mPasの粘度を有することを特徴とする液体消費者向け製品。
【請求項13】
25℃〜40℃の条件において10mPas〜2500mPasの粘度を有していることを特徴とする請求項12に記載の液体消費者向け製品。
【請求項14】
少なくとも2質量%の界面活性剤を含有する家庭用組成物、洗濯用組成物、パーソナルケア組成物または化粧組成物であることを特徴とする請求項12または13に記載の界面活性剤含有液体消費者向け製品。
【請求項15】
質量パーセンテージにおいて水が最大成分であることを特徴とする請求項14岸アの界面活性剤含有液体消費者向け製品。

【公開番号】特開2010−155992(P2010−155992A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297038(P2009−297038)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】