説明

コアシェル型有機無機複合体粒子の製造方法、コアシェル型有機無機複合体粒子、および導電性微粒子

【課題】コアシェル型の有機無機複合体粒子であって、コア部とシェル部のそれぞれの堅さを独立して幅広く制御できるので幅広い用途に適用可能であるコアシェル型有機無機複合体粒子の製造方法を提供する。その製造方法により得られるコアシェル型有機無機複合体粒子を提供する。そのような重合体微粒子を用いた導電性微粒子を提供する。
【解決手段】本発明のコアシェル型有機無機複合体粒子の製造方法は、重合性有機基を有する加水分解性シリコン化合物を必須として含むシリコン化合物群を加水分解および縮合して重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)を得る工程(I)と、該重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)を重合して有機無機複合体粒子(P1)を得る工程(II)と、該有機無機複合体粒子(P1)に重合性モノマー(M1)を添加して有機無機複合体粒子(P2)を得る工程(III)と、該有機無機複合体粒子(P2)を重合してコアシェル型有機無機複合体粒子(P3)を得る工程(IV)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル型有機無機複合体粒子の製造方法、コアシェル型有機無機複合体粒子、および導電性微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
コアシェル構造を有するコアシェル型複合体粒子は、コア部とシェル部の2種の組成で構成されている。このため、コアシェル型複合体粒子は、コア部とシェル部のそれぞれの特性に応じて、単一粒子では得られない種々の機能を発現できる。
【0003】
他方、粒子形状が略均一であることや柔軟で弾力性に優れるという特性を発現できることから、有機無機複合体粒子が提案されている。
【0004】
さらに、コアシェル型複合体粒子が発現し得る機能と有機無機複合体粒子が発現し得る特性とを併せて有するものとして、コアシェル型有機無機複合体粒子が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0005】
しかし、これまでに提案されているコアシェル型有機無機複合体粒子は、その原料や製造方法に起因して、コア部とシェル部のそれぞれの堅さを独立して幅広く制御することが困難であった。
【0006】
特許文献1には、球状コア粒子と該粒子表面に設けられた弾性被覆層と該層表面に設けられた導電性薄膜層とからなる導電性微粒子が開示されている。しかし、特許文献1に開示されている弾性被覆層は、アルコキシシラン化合物を加水分解・縮合して形成されるポリオルガノシロキサンからなるものであり、その堅さの制御はアルコキシシラン化合物の選択のみによる制御であるため、限界がある。
【0007】
特許文献2には、コアシェル構造を有する有機無機複合粒子であって、コア部とシェル部が共に同じ有機成分と無機成分を含み、シェル部よりもコア部に無機成分が多く含まれている接着性粒子が開示されている。しかし、特許文献2に開示されている有機無機複合粒子は、液晶表示装置用固着型面内スペーサーとして用いた場合の配向膜への接着性を向上させるために、コア部とシェル部の材料およびその組合せパターンが特定されたものであり、その堅さの制御には限界がある。
【0008】
特許文献3には、コア部がシリカ微粒子であり、シェル部がポリオルガノシロキサンおよび疎水性重合性モノマーの重合物を含む、コアシェル型微粒子が開示されている。しかし、特許文献3に開示されているコアシェル型微粒子は、液晶表示装置用固着型面内スペーサーとして用いた場合の基板への接着性、セルギャップの精度向上、耐久性を向上させるために、コア部をシリカ微粒子とし、シェル部を特定成分が含まれる層としたものであり、コア部とシェル部の材料およびその組合せパターンが特定されたものであり、その堅さの制御には限界がある。特に、コア部は、通常のシリカ微粒子であるため、堅い。
【0009】
コアシェル型有機無機複合体粒子において、コア部とシェル部のそれぞれの堅さを独立して幅広く制御できれば、該粒子を幅広い用途に適用することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−11503号公報
【特許文献2】特開2002−121536号公報
【特許文献3】特開2002−327030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、コアシェル型の有機無機複合体粒子であって、コア部とシェル部のそれぞれの堅さを独立して幅広く制御できるので幅広い用途に適用可能であるコアシェル型有機無機複合体粒子の製造方法を提供することにある。また、その製造方法により得られるコアシェル型有機無機複合体粒子を提供することにある。さらに、そのような重合体微粒子を用いた導電性微粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のコアシェル型有機無機複合体粒子の製造方法は、
重合性有機基を有する加水分解性シリコン化合物を必須として含むシリコン化合物群を加水分解および縮合して重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)を得る工程(I)と、
該重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)を重合して有機無機複合体粒子(P1)を得る工程(II)と、
該有機無機複合体粒子(P1)に重合性モノマー(M1)を添加して有機無機複合体粒子(P2)を得る工程(III)と、
該有機無機複合体粒子(P2)を重合してコアシェル型有機無機複合体粒子(P3)を得る工程(IV)と、
を含む。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記工程(II)の前に、重合性モノマー(M2)を乳化分散させたエマルションを上記工程(I)で得られる重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)と混合する。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記工程(IV)の前に、重合性モノマー(M2)を乳化分散させたエマルションを上記工程(III)で得られる有機無機複合体粒子(P2)と混合する。
【0015】
本発明のコアシェル型有機無機複合体粒子は、本発明の製造方法によって得られるコアシェル型有機無機複合体粒子である。
【0016】
本発明の導電性微粒子は、本発明のコアシェル型有機無機複合体粒子と金属層を含む。
【0017】
好ましい実施形態においては、上記金属層が、無電解めっき法により形成された層である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コアシェル型の有機無機複合体粒子であって、コア部とシェル部のそれぞれの堅さを独立して幅広く制御できるので幅広い用途に適用可能であるコアシェル型有機無機複合体粒子の製造方法を提供することができる。また、その製造方法により得られるコアシェル型有機無機複合体粒子を提供することができる。さらに、そのような重合体微粒子を用いた導電性微粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】コアシェル型有機無機複合体粒子(1)の電界放射型電子顕微鏡による断面の透過電子像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔A.コアシェル型有機無機複合体粒子の製造方法〕
本発明のコアシェル型有機無機複合体粒子の製造方法は、
重合性有機基を有する加水分解性シリコン化合物を必須として含むシリコン化合物群を加水分解および縮合して重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)を得る工程(I)と、
該重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)を重合して有機無機複合体粒子(P1)を得る工程(II)と、
該有機無機複合体粒子(P1)に重合性モノマー(M1)を添加して有機無機複合体粒子(P2)を得る工程(III)と、
該有機無機複合体粒子(P2)を重合してコアシェル型有機無機複合体粒子(P3)を得る工程(IV)と、
を含む。
【0021】
≪A−1.重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)を得る工程(I)≫
本発明における重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)とは、無機質部分としてのポリシロキサン骨格と、重合性有機基としての有機質部分とを含んでなる重合体粒子であり、有機質部分中の少なくとも1個の炭素原子が、ポリシロキサン骨格中のケイ素原子と直接化学結合した有機ケイ素原子を分子内に有している。上記ポリシロキサン骨格は、シロキサン単位(Si−O)が連続的に化学結合して網目構造のネットワークを有するものである。
【0022】
重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)を得る工程では、重合性有機基を有する加水分解性シリコン化合物を必須として含むシリコン化合物群を加水分解および縮合して重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)を得る。
【0023】
上記シリコン化合物群は、上記重合性有機基を有する加水分解性シリコン化合物を必須として含み、その含有割合は、50〜100重量%が好ましく、60〜100重量%がより好ましく、70〜100重量%がさらに好ましく、80〜100重量%が特に好ましく、90〜100重量%が最も好ましい。上記含有割合が50重量%未満の場合、加水分解および縮合による重合性オルガノポリシロキサン粒子の形成がうまく進行しないおそれがある。
【0024】
上記重合性有機基を有する加水分解性シリコン化合物としては、具体的には、例えば、一般式(1)で表される化合物およびその誘導体が挙げられる。

(Ra)SiX4−m ・・・(1)

【0025】
一般式(1)中、Raは、アルキル基、アリール基、アラルキル基、および不飽和脂肪族基から選ばれる少なくとも1種の基であり、重合性有機基を有しており、その他の置換基を有していてもよい。一般式(1)中、Xは、水酸基、アルコキシ基、アシロキシ基から選ばれる少なくとも1種の基である。一般式(1)中、mは1から3までの整数である。
【0026】
上記重合性有機基としては、例えば、一般式(2)、(3)、(4)で表される重合性有機基が挙げられる。
【0027】

CH=C(−Rb)−COORc− ・・・(2)

CH=C(−Rd)− ・・・(3)

CH=C(−Re)−Rf− ・・・(4)

【0028】
一般式(2)中、Rbは水素原子またはメチル基を表し、Rcは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。
【0029】
一般式(3)中、Rdは水素原子またはメチル基を表す。
【0030】
一般式(4)中、Reは水素原子またはメチル基を表し、Rfは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。
【0031】
上記一般式(2)で表される重合性有機基としては、例えば、アクリロキシ基、メタクリロキシ基が挙げられる。上記一般式(2)で表される重合性有機基を有する上記一般式(1)の加水分解性シリコン化合物としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン(または、γ−トリメトキシシリルプロピル−β−メタクリロキシエチルエーテルともいう)、11−メタクリロキシウンデカメチレントリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
上記一般式(3)で表される重合性有機基としては、例えば、ビニル基、イソプロペニル基が挙げられる。上記一般式(3)で表される重合性有機基を有する上記一般式(1)の加水分解性シリコン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、4−ビニルテトラメチレントリメトキシシラン、8−ビニルオクタメチレントリメトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシランが挙げられる。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記一般式(4)で表される重合性有機基としては、例えば、1−アルケニル基、ビニルフェニル基、イソアルケニル基、イソプロペニルフェニル基が挙げられる。上記一般式(4)で表される重合性有機基を有する上記一般式(1)の加水分解性シリコン化合物としては、例えば、1−ヘキセニルトリメトキシシラン、1−ヘキセニルトリエトキシシラン、1−オクテニルトリメトキシシラン、1−デセニルトリメトキシシラン、γ−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、ω−トリメトキシシリルウンデカン酸ビニルエステル、p−トリメトキシシリルスチレン、p−トリエトキシシリルスチレン、p−トリメトキシシリル−α−メチルスチレン、p−トリエトキシシリル−α−メチルスチレン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル−γ−アミノプロピル)トリメトキシシラン・塩酸塩、1−ヘキセニルメチルジメトキシシラン、1−ヘキセニルメチルジエトキシシランが挙げられる。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記シリコン化合物群は、上記重合性有機基を有する加水分解性シリコン化合物以外のシリコン化合物(他のシリコン化合物と称する)を含んでいても良い。
【0035】
他のシリコン化合物としては、具体的には、例えば、上記一般式(1)で表される化合物およびその誘導体が挙げられる。ここで、他のシリコン化合物が一般式(1)で表される場合は、一般式(1)中、Raは、アルキル基、アリール基、アラルキル基、および不飽和脂肪族基から選ばれる少なくとも1種の基であり、重合性有機基を有しておらず、その他の置換基を有していてもよい。一般式(1)中、Xは、水酸基、アルコキシ基、アシロキシ基から選ばれる少なくとも1種の基である。一般式(1)中、mは0から3までの整数である。
【0036】
他のシリコン化合物としては、具体的には、例えば、一般式(1)におけるm=0のものとして、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどの4官能性シラン;一般式(1)におけるm=1のものとして、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどの3官能性シラン;一般式(1)におけるm=2のものとして、ジメチルシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジメトキシジフェニルシランジオールなどの2官能性シラン;一般式(1)におけるm=3のものとして、トリメチル、トリメチルエトキシシラン、トリメチルシラノールなどの1官能性シラン;などが挙げられる。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
上記一般式(1)で表されるシリコン化合物の誘導体としては、具体的には、例えば、該シリコン化合物が有するアルコキシ基の少なくとも1つがβ−ジカルボニル基および/または他のキレート化合物を形成し得る基で置換された化合物、上記一般式(1)で表されるシリコン化合物および/またはそのキレート化合物を部分的に加水分解・縮合して得られた低縮合物が挙げられる。
【0038】
本発明における重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)は、重合性有機基を有する加水分解性シリコン化合物を必須として含む上記シリコン化合物群を加水分解および縮合して得られる。上記加水分解および縮合は、好ましくは、水を含む溶媒中で行う。
【0039】
上記加水分解および縮合については、一括、分割、連続等、任意の適切な方法を採用し得る。加水分解および縮合をさせるにあたり、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の触媒を用いてもよい。また、溶媒中には、水や触媒以外に有機溶剤が存在していても良い。
【0040】
上記有機溶剤としては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロヘキサン等の(シクロ)パラフィン類;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;などが挙げられる。これらは、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0041】
上記加水分解および縮合は、例えば、上記シリコン化合物群および有機溶剤等を、水を含む溶媒に添加し、好ましくは0〜100℃、より好ましくは0〜70℃の温度範囲で、好ましくは30分〜100時間攪拌することによって行う。
【0042】
本発明において重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)を得るにあたり、上記のようにして得られた粒子を1次粒子として、これを種粒子として予め合成系に仕込んでおき、そこに上記シリコン化合物群をさらに添加して上記種粒子を成長させることにより、2次粒子として得ることもできる。同様に繰り返して、3次粒子以上とすることもできる。
【0043】
上記のようにして、上記シリコン化合物群を、溶媒中で、任意の適切な条件下で、加水分解および縮合させることにより、粒子が析出しスラリーが生成する。
【0044】
上記加水分解および縮合を行うにあたっての任意の適切な条件は、例えば、得られたスラリーにおいて、上記一般式(1)で表されるシリコン化合物の濃度が20重量%以下、水濃度が50%以上、触媒濃度が10重量%以下となるような条件が好ましい。
【0045】
上記加水分解および縮合を行うにあたっての任意の適切な条件は、より好ましくは、水濃度が50〜99.99重量%、触媒濃度が0.01〜10重量%、有機溶剤濃度が0〜90重量%、上記シリコン化合物群の濃度が0.1〜30重量%、上記シリコン化合物群の添加時間が0.001〜500時間、反応温度が0〜100℃である。
【0046】
本発明において重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)を得るにあたり、上記のように2次粒子以上の粒子を得る場合には、上記種粒子の濃度は15重量%以下が好ましい。
【0047】
≪A−2.重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)を重合して有機無機複合体粒子(P1)を得る工程(II)≫
本発明において、有機無機複合体粒子(P1)は、重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)を重合して得られる。
【0048】
上記重合の方法は、任意の適切な重合方法を採用し得る。好ましくは、ラジカル重合による重合方法である。ラジカル重合としては、例えば、ラジカル重合開始剤を用いたラジカル重合、紫外線や放射線を照射することによるラジカル重合、熱を加えることによるラジカル重合が挙げられる。
【0049】
上記ラジカル重合開始剤としては、具体的には、例えば、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酢酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤類;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2'−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物類;などが挙げられる。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、任意の適切な使用量を採用し得る。例えば、重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)の総重量に対して、0.001重量%〜20重量%であることが好ましく、0.01重量%〜10重量%であることがより好ましく、0.1重量%〜5重量%であることがさらに好ましい。上記ラジカル重合開始剤の使用量が、0.001重量%未満の場合は、重合度が上がらないおそれがある。
【0051】
上記ラジカル重合を行う際の反応温度は、任意の適切な反応温度を採用し得る。例えば、40〜100℃であることが好ましく、50〜80℃であることがより好ましい。反応温度が低すぎる場合には、重合度が十分に上がらないおそれがある。反応温度が高すぎる場合には、重合中に重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)間の凝集が起こりやすくなるおそれがある。
【0052】
上記ラジカル重合を行う際の反応時間は、任意の適切な反応時間を採用し得る。例えば、5〜600分であることが好ましく、10〜300分であることがより好ましい。反応時間が短すぎる場合には、重合度が十分に上がらないおそれがある。反応時間が長すぎる場合には、重合中に重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)間の凝集が起こりやすくなるおそれがある。
【0053】
≪A−3.工程(II)の前におけるエマルション混合≫
上記工程(II)の前において、重合性モノマー(M2)を乳化分散させたエマルションを上記工程(I)で得られる重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)と混合しても良い。混合の形態としては、任意の適切な形態を採用し得る。例えば、一括添加、分割添加、連続添加が挙げられる。
【0054】
上記重合性モノマー(M2)としては、分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基を含有する化合物であれば、任意の適切な重合性モノマーを採用し得る。
【0055】
上記重合性モノマー(M2)としては、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単量体類;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、等のポリエチレングリコール成分を有する単量体類;(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等のアルキル(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタンフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロアミル(メタ)アクリレート等のフッ素原子含有(メタ)アクリレート類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、0−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;等が挙げられる。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
上記重合性モノマー(M2)として、架橋性モノマーを用いても良い。架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジアリルフタレートおよびその異性体、トリアリルイソシアヌレートおよびその誘導体、等が挙げられる。これらは1種のみで用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
上記重合性モノマー(M2)を上記工程(I)で得られる重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)と混合するに際しては、重合性モノマー(M2)を乳化分散させたエマルションを用いる。
【0058】
重合性モノマー(M2)を乳化分散させたエマルションを調製する際には乳化剤を用いることが好ましい。乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、分子中に1個以上の重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する重合性界面活性剤等がある。これらの中でも、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤は、分散状態をより十分に安定化させることができるので好ましい。これら乳化剤は、1種のみで用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
上記アニオン性界面活性剤としては、任意の適切なアニオン性界面活性剤を採用し得る。具体的には、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート等のアルカリ金属アルキルサルフェート類;アンモニウムドデシルサルフェート等のアンモニウムアルキルサルフェート類;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート、ナトリウムスルホシノエート、スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩類;スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート類;ナトリウムラウリレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩類;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート類;高級アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;等が挙げられる。
【0060】
上記カチオン性界面活性剤としては、任意の適切なカチオン性界面活性剤を採用し得る。具体的には、例えば、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート類;高級アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;等が挙げられる。
【0061】
上記非イオン界面活性剤としては、任意の適切な非イオン界面活性剤を採用し得る。具体的には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールのモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド類;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪酸アミン、アミドまたは酸との縮合生成物;等が挙げられる。
【0062】
上記両性界面活性剤としては、任意の適切な両性界面活性剤を採用し得る。具体的には、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。より具体的には、例えば、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型の両性界面活性剤(例えば、第一工業製薬(株)製の「アモーゲンK」など)が挙げられる。
【0063】
上記高分子界面活性剤としては、任意の適切な高分子界面活性剤を採用し得る。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドンおよびこれらの重合体の構成単位である重合性単量体の2種以上の共重合体または他の単量体との共重合体、クラウンエーテル類の相関移動触媒等が挙げられる。
【0064】
上記重合性界面活性剤としては、任意の適切な重合性界面活性剤を採用し得る。具体的には、例えば、プロペニル−2−エチルヘキシルベンゼンスルホコハク酸エステルナトリウム、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンの硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルエーテル硫酸アンモニウム塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンエステルのリン酸エステル等のアニオン性重合性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルベンゼンエーテル(メタ)アクリル酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(メタ)アクリル酸エステル等のノニオン性の重合性界面活性剤;等が挙げられる。
【0065】
上記乳化剤の使用量としては、任意の適切な使用量を採用し得る。具体的には、重合性モノマー(M2)の総重量に対して、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.05〜8重量%であることがより好ましく、0.1〜5重量%であることがさらに好ましい。上記乳化剤の使用量が、0.01重量%未満の場合は、安定な乳化分散物が得られないおそれがある。上記乳化剤の使用量が、10重量%を超える場合は、乳化重合等が副反応として併発してしまうおそれがある。
【0066】
上記乳化剤を用いて重合性モノマー(M2)を乳化分散する際には、ホモミキサーや超音波ホモジナイザー等を用いて水中で乳濁状態とすることが好ましい。
【0067】
上記乳化剤を用いて重合性モノマー(M2)を乳化分散する際には、重合性モノマー(M2)の総重量に対して0.3〜10倍の水や水溶性有機溶剤を使用することが好ましい。上記水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;などが挙げられる。
【0068】
上記エマルション中には、ラジカル重合開始剤を含有させておくことが好ましい。上記エマルション中におけるラジカル重合開始剤の量は、重合性モノマー(M2)の総総量に対して、0.01〜10重量%であることが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、前述したラジカル重合開始剤と同様のものを使用すれば良い。
【0069】
上記エマルションを上記工程(I)で得られる重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)と混合する際の温度は、任意の適切な温度を採用し得る。例えば、0〜60℃の温度範囲が好ましい。
【0070】
上記エマルションを上記工程(I)で得られる重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)と混合する際の添加時間は、任意の適切な時間を採用し得る。例えば、0.1〜720分間の時間が好ましい。混合後、好ましくは5〜720分間、より好ましくは20〜240分間、撹拌する。
【0071】
上記エマルションを上記工程(I)で得られる重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)と混合する際は、攪拌しながら行うことが好ましい。
【0072】
上記工程(II)の前において、重合性モノマー(M2)を乳化分散させたエマルションを上記工程(I)で得られる重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)と混合することにより、重合性モノマー(M2)が重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)に吸収される。この場合、重合性モノマー(M2)が重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)に吸収されたかどうかの判断は、重合性モノマー(M2)を混合する前および混合した後に、顕微鏡等により粒子を観察し、重合性モノマー(M2)の吸収により粒子径が大きくなっていること等で容易に判断することができる。
【0073】
上記工程(II)の前において、重合性モノマー(M2)を乳化分散させたエマルションを上記工程(I)で得られる重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)と混合する場合には、混合によって重合性モノマー(M2)が重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)に吸収された後に、分散液中の粒子濃度が40重量%以下となっていることが好ましく、30重量%以下となっていることがより好ましく、20重量%以下となっていることがさらに好ましい。上記分散液の粒子濃度が高すぎる場合には、続いて重合反応を行う場合において、重合反応に伴う発熱により温度のコントロールが困難となるおそれがある。上記分散液の粒子濃度が高すぎる場合には、水を添加して希釈することが好ましい。
【0074】
≪A−4.有機無機複合体粒子(P1)に重合性モノマー(M1)を添加して有機無機複合体粒子(P2)を得る工程(III)≫
本発明において、有機無機複合体粒子(P2)は、工程(II)で得られる有機無機複合体粒子(P1)に重合性モノマー(M1)を添加して得られる。工程(III)においては、工程(II)で得られる有機無機複合体粒子(P1)の表面に重合性モノマー(M1)の層が形成される。
【0075】
上記重合性モノマー(M1)としては、上記A−1項で説明した、重合性有機基を有する加水分解性シリコン化合物が好ましい。工程(II)で得られる有機無機複合体粒子(P1)の表面にはシラノール基が存在するため、上記重合性モノマー(M1)として重合性有機基を有する加水分解性シリコン化合物を用いると、該有機無機複合体粒子(P1)の表面に重合性モノマー(M1)の層が形成されやすくなる。
【0076】
上記重合性モノマー(M1)としては、より好ましくは、工程(I)で用いる重合性有機基を有する加水分解性シリコン化合物と同じ種類の重合性有機基を有する加水分解性シリコン化合物を用いることが好ましい。該有機無機複合体粒子(P1)の表面に重合性モノマー(M1)の層がより一層形成されやすくなるからである。
【0077】
工程(III)において、工程(II)で得られる有機無機複合体粒子(P1)に重合性モノマー(M1)を添加する方法としては、任意の適切な添加方法が採用され得る。例えば、重合性モノマー(M1)をそのまま添加しても良いし、任意の適切な溶媒に溶解または分散したものを添加しても良い。また、一括添加、分割添加、連続添加など、任意の適切な添加形態を採用し得る。
【0078】
上記溶媒は、水を含む溶媒が好ましい。溶媒中には有機溶剤が存在していても良い。
【0079】
上記有機溶剤としては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロヘキサン等の(シクロ)パラフィン類;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;などが挙げられる。これらは、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0080】
上記添加を行う際には、添加物中に、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の触媒が含まれていても良い。
【0081】
上記添加を行う際の添加温度は、任意の適切な添加温度を採用し得る。例えば、0〜100℃が好ましく、0〜70℃がより好ましい。
【0082】
上記添加を行う際の添加時間は、任意の適切な添加時間を採用し得る。例えば、30分〜100時間が好ましい。
【0083】
上記添加を行う際には、添加物中に、ラジカル重合開始剤を含有させておいても良い。上記添加物中におけるラジカル重合開始剤の量は、重合性モノマー(M1)の総総量に対して、0.01〜10重量%であることが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、前述したラジカル重合開始剤と同様のものを使用すれば良い。
【0084】
≪A−5.有機無機複合体粒子(P2)を重合してコアシェル型有機無機複合体粒子(P3)を得る工程(IV)≫
本発明において、コアシェル型有機無機複合体粒子(P3)は、有機無機複合体粒子(P2)を重合して得られる。
【0085】
上記重合の方法は、任意の適切な重合方法を採用し得る。好ましくは、ラジカル重合による重合方法である。ラジカル重合としては、例えば、ラジカル重合開始剤を用いたラジカル重合、紫外線や放射線を照射することによるラジカル重合、熱を加えることによるラジカル重合が挙げられる。
【0086】
上記ラジカル重合開始剤としては、上記A−2項で説明したラジカル重合開始剤が挙げられる。上記ラジカル重合開始剤は1種のみで用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、任意の適切な使用量を採用し得る。例えば、有機無機複合体粒子(P2)の総重量に対して、0.001重量%〜20重量%であることが好ましく、0.01重量%〜10重量%であることがより好ましく、0.1重量%〜5重量%であることがさらに好ましい。上記ラジカル重合開始剤の使用量が、0.001重量%未満の場合は、重合度が上がらないおそれがある。
【0088】
上記ラジカル重合を行う際の反応温度は、任意の適切な反応温度を採用し得る。例えば、40〜100℃であることが好ましく、50〜80℃であることがより好ましい。反応温度が低すぎる場合には、重合度が十分に上がらないおそれがある。反応温度が高すぎる場合には、重合中に有機無機複合体粒子(P2)間の凝集が起こりやすくなるおそれがある。
【0089】
上記ラジカル重合を行う際の反応時間は、任意の適切な反応時間を採用し得る。例えば、5〜600分であることが好ましく、10〜300分であることがより好ましい。反応時間が短すぎる場合には、重合度が十分に上がらないおそれがある。反応時間が長すぎる場合には、重合中に有機無機複合体粒子(P2)間の凝集が起こりやすくなるおそれがある。
【0090】
≪A−6.工程(IV)の前におけるエマルション混合≫
上記工程(IV)の前において、重合性モノマー(M2)を乳化分散させたエマルションを上記工程(III)で得られる有機無機複合体粒子(P2)と混合しても良い。混合の形態としては、任意の適切な形態を採用し得る。例えば、一括添加、分割添加、連続添加が挙げられる。
【0091】
上記重合性モノマー(M2)としては、具体的には、上記A−3項で説明した重合性モノマー(M2)から選択すれば良い。上記重合性モノマー(M2)は1種のみで用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0092】
上記重合性モノマー(M2)を選択するに際しては、上記A−3項で説明した重合性モノマー(M2)として選択する重合性モノマーと同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。
【0093】
上記重合性モノマー(M2)を上記工程(III)で得られる有機無機複合体粒子(P2)と混合するに際しては、重合性モノマー(M2)を乳化分散させたエマルションを用いる。
【0094】
重合性モノマー(M2)を乳化分散させたエマルションを調製する際には乳化剤を用いることが好ましい。乳化剤としては、上記A−3項で説明した乳化剤を選択し得る。
【0095】
上記乳化剤の使用量としては、任意の適切な使用量を採用し得る。具体的には、重合性モノマー(M2)の総重量に対して、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.05〜8重量%であることがより好ましく、0.1〜5重量%であることがさらに好ましい。上記乳化剤の使用量が、0.01重量%未満の場合は、安定な乳化分散物が得られないおそれがある。上記乳化剤の使用量が、10重量%を超える場合は、乳化重合等が副反応として併発してしまうおそれがある。
【0096】
上記乳化剤を用いて重合性モノマー(M2)を乳化分散する際には、ホモミキサーや超音波ホモジナイザー等を用いて水中で乳濁状態とすることが好ましい。
【0097】
上記乳化剤を用いて重合性モノマー(M2)を乳化分散する際には、重合性モノマー(M2)の総重量に対して0.3〜10倍の水や水溶性有機溶剤を使用することが好ましい。上記水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;などが挙げられる。
【0098】
上記エマルション中には、ラジカル重合開始剤を含有させておくことが好ましい。上記エマルション中におけるラジカル重合開始剤の量は、重合性モノマー(M2)の総総量に対して、0.01〜10重量%であることが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、前述したラジカル重合開始剤と同様のものを使用すれば良い。
【0099】
上記エマルションを上記工程(III)で得られる有機無機複合体粒子(P2)と混合する際の温度は、任意の適切な温度を採用し得る。例えば、0〜60℃の温度範囲が好ましい。
【0100】
上記エマルションを上記工程(III)で得られる有機無機複合体粒子(P2)と混合する際の添加時間は、任意の適切な時間を採用し得る。例えば、0.1〜720分間の時間が好ましい。混合後、好ましくは5〜720分間、より好ましくは20〜240分間、撹拌する。
【0101】
上記エマルションを上記工程(III)で得られる有機無機複合体粒子(P2)と混合する際は、攪拌しながら行うことが好ましい。
【0102】
上記工程(IV)の前において、重合性モノマー(M2)を乳化分散させたエマルションを上記工程(III)で得られる有機無機複合体粒子(P2)と混合することにより、重合性モノマー(M2)が有機無機複合体粒子(P2)の表面に形成される重合性モノマー(M1)の層に吸収される。この場合、重合性モノマー(M2)が有機無機複合体粒子(P2)の表面に形成される重合性モノマー(M1)の層に吸収されたかどうかの判断は、重合性モノマー(M2)を混合する前および混合した後に、顕微鏡等により粒子を観察し、重合性モノマー(M2)の吸収により粒子径が大きくなっていること等で容易に判断することができる。
【0103】
上記工程(IV)の前において、重合性モノマー(M2)を乳化分散させたエマルションを上記工程(III)で得られる有機無機複合体粒子(P2)と混合する場合には、混合によって重合性モノマー(M2)が有機無機複合体粒子(P2)の表面に形成される重合性モノマー(M1)の層に吸収された後に、分散液中の粒子濃度が40重量%以下となっていることが好ましく、30重量%以下となっていることがより好ましく、20重量%以下となっていることがさらに好ましい。上記分散液の粒子濃度が高すぎる場合には、続いて重合反応を行う場合において、重合反応に伴う発熱により温度のコントロールが困難となるおそれがある。上記分散液の粒子濃度が高すぎる場合には、水を添加して希釈することが好ましい。
【0104】
〔B.コアシェル型有機無機複合体粒子〕
上記製造方法により、本発明のコアシェル型有機無機複合体粒子が得られる。本発明のコアシェル型有機無機複合体粒子は、重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)を重合して得られるコア部分と、重合性モノマー(M1)から形成される層を重合して得られるシェル部分とを有する。
【0105】
本発明のコアシェル型有機無機複合体粒子のコア部分は、重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)を重合して得られるものであり、場合によっては、上記A−3項で説明したように、重合性モノマー(M2)が吸収された重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)を重合して得られるものである。したがって、上記A−1項で説明した重合性有機基を有する加水分解性シリコン化合物を必須として含むシリコン化合物群として何を選択するか、上記A−3項で説明した重合性モノマー(M2)として何を選択するか、上記M2/上記シリコン化合物群の重量比、によって、様々な特性(特に、堅さ)を有するコア部を設計できる。
【0106】
本発明のコアシェル型有機無機複合体粒子のシェル部分は、重合性モノマー(M1)から形成される層を重合して得られるものであり、場合によっては、上記A−6項で説明したように、重合性モノマー(M2)が吸収された重合性モノマー(M1)から形成される層を重合して得られるものである。したがって、上記A−4項で説明した重合性モノマー(M1)として何を選択するか、上記A−6項で説明した重合性モノマー(M2)として何を選択するか、上記M2/上記M1の重量比、によって、様々な特性(特に、堅さ)を有するシェル部を設計できる。
【0107】
本発明のコアシェル型有機無機複合体粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1〜30μm、さらに好ましくは1.5〜20μmである。本発明のコアシェル型有機無機複合体粒子の平均粒子径が上記範囲を外れると、本発明の効果が十分に発現できないおそれがある。
【0108】
本発明のコアシェル型有機無機複合体粒子においては、粒子径の変動係数(CV値)が、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは7%以下である。上記変動係数(CV値)が上記範囲内である場合は、例えば、導電性微粒子の原料として用いた際に粒子径の均一な導電性微粒子が得られ、該導電性微粒子を用いた電極間の電気的接続を行う場合には、接続信頼性が高くなるといった有利な効果を発揮することができる。
【0109】
〔C.導電性微粒子〕
本発明の導電性微粒子は、本発明のコアシェル型有機無機複合体粒子と金属層を含む。好ましくは、本発明の導電性微粒子は、本発明のコアシェル型有機無機複合体粒子と金属めっき層を含む。
【0110】
従来の金属めっきされた導電性微粒子は、基材粒子と金属めっき層との間の密着性が悪く、そのため、基材粒子を多孔質化させたり、エッチングにより基材粒子の表面に凹凸を発生させたりして、アンカー効果をもたせる等の必要がある。しかし、基材粒子を多孔質化させたり、エッチングにより基材粒子の表面に凹凸を発生させたりすると、基材粒子の強度が著しく低下し、電極端子に圧着する際に、基材粒子が破壊したり、圧縮変形したまま回復しない等の問題があり、導通が不安定になることがある。また、電極端子に圧着する際に、金属めっき層が割れたり、剥離したりして、導通不良が発生し、接続信頼性が低下するという問題がある。
【0111】
本発明の導電性微粒子は、基材粒子として本発明のコアシェル型有機無機複合体粒子を採用するため、異方導電材料に好適な硬さ/軟らかさが制御され、金属層の密着性に優れる。このため、使用時に破壊され難い導電性微粒子となり得る。
【0112】
上記金属層に用いる金属としては、任意の適切な金属を採用し得る。例えば、金、銀、銅、白金、鉄、鉛、アルミニウム、クロム、パラジウム、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、スズ、コバルト、インジウムなどの金属や、ニッケル−リン、ニッケル−ホウ素などの合金が挙げられる。
【0113】
上記金属層は、好ましくは、任意の適切なめっき法で形成することができる(例えば、特開2003−208813号公報、特開2005−325382号公報、特開2007−184278号公報参照)。具体的には、例えば、無電解めっき法;置換めっき法;金属微粉を単独またはバインダーに混ぜて得られるペーストを基材粒子(本発明の重合体微粒子)にコーティングする方法;真空蒸着、イオンプレーティング、イオンスパッタリング等の物理的蒸着法;などが挙げられる。
【0114】
本発明においては、上記めっき法の中でも、無電解めっき法が好ましい。大掛かりな装置を必要とせず、導電膜の厚みが制御された導電性金属膜を形成することができるからである。
【0115】
通常、無電解めっき法は、(1)親水化工程(エッチング)、(2)触媒化工程、(3)無電解めっき工程、の3工程からなる。本発明のコアシェル型有機無機複合体粒子は、表面の組成を制御することによって、親水化工程における方法や条件をマイルドな方法や条件に変更することも可能となる。
【0116】
上記親水化工程(エッチング)は、基材粒子の表面に微小な凹凸を形成して、金属めっき層の密着を良くするために行われる。上記親水化工程(エッチング)は、例えば、クロム酸、硫酸−クロム酸混液、過マンガン酸溶液等の酸化剤;塩酸、硫酸等の強酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ溶液;などを用いて、基材粒子の表面に微小な凹凸を形成する。
【0117】
上記触媒化工程は、基材粒子の表面に無電解めっき工程の起点となり得る触媒層を形成するために行われる。触媒層を形成する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、無電解めっき用として市販されている触媒化試薬などを用いて行うことができる。このような市販されている触媒化試薬としては、例えば、ピンクシューマー(日本カニゼン株式会社製)、レッドシューマー(日本カニゼン株式会社製)などが挙げられる。触媒層を形成する方法としては、具体的には、例えば、塩化パラジウムと塩化スズとからなる溶液に基材粒子を浸漬した後、硫酸、塩酸等の強酸や水酸化ナトリウム等の強アルカリ溶液で活性化してパラジウムを基材粒子表面に析出させる方法;硫酸パラジウム溶液に基材粒子を浸漬した後、ジメチルアミンボラン等の還元剤を含む溶液で活性化してパラジウムを基材粒子表面に析出させる方法;などが挙げられる。
【0118】
上記無電解めっき工程においては、好ましくは、基材粒子を水性媒体に十分に分散させ、水性スラリーを調製する。ここで、基材粒子は水性媒体に十分に分散させておくことが好ましい。基材粒子が凝集した状態で金属めっき層が形成すると、未処理面が露出するおそれがある。基材粒子の分散は、任意の適切な分散方法を採用し得る。例えば、通常撹拌、高速撹拌、コロイドミルやホモジナイザーのようなせん断分散装置を用いた分散、などが挙げられる。分散の際に、超音波照射を併用しても良い。また、分散の際に、界面活性剤などの分散剤を用いても良い。次いで、金属塩、還元剤、錯化剤などを含んだ無電解めっき浴に、上記分散処理した基材粒子スラリーを添加し、無電解めっきを行う。
【0119】
上記金属塩としては、例えば、ニッケル塩を用いる場合、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル等が挙げられる。
【0120】
上記還元剤としては、次亜燐酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ヒドラジンなどが挙げられる。
【0121】
上記錯化剤としては、例えば、クエン酸、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、またはそれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩などのカルボン酸塩、グリシンなどのアミノ酸、エチレンジアミン、アルキルアミンなどのアミン酸、アンモニウム化合物、EDTA、ピロリン酸(塩)などが挙げられる。上記錯化剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0122】
上記無電解めっき法におけるめっき浴のpHは、好ましくは4〜14である。
【0123】
無電解めっき法においては、基材粒子のスラリーを添加すると、速やかに反応が始まり、水素ガスの発生を伴う。無電解めっき法における、無電解めっき工程の終了は、その水素ガスの発生が完全に認められなくなった時点をもって終了とする。
【0124】
本発明の導電性微粒子は、基材粒子として本発明のコアシェル型有機無機複合体粒子を有するため、圧縮強度や圧縮後の変形回復性能等の各種物性に優れ、圧着処理を行っても導電性微粒子の破壊や永久変形を来すことなく導通性を維持することができる。
【0125】
本発明の導電性微粒子は、異方性導電材料の構成材料として好適である。上記異方性導電材料とは、さまざまな形態により相対向する基板同士や電極端子同士を電気的に接続するものである。
【0126】
上記異方性導電材料を用いて電極同士を電気的に接続する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、絶縁性のバインダー樹脂中に本発明の導電性微粒子を分散させて異方性導電接着剤を作製したうえで、この異方性導電接着剤により接続する方法;絶縁性のバインダー樹脂と本発明の導電性微粒子とを別々に使用して接続する方法;等が挙げられる。
【0127】
上記バインダー樹脂としては、任意の適切なバインダー樹脂を採用し得る。例えば、アクリレート樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の熱可塑性樹脂;グリシジル基を有するモノマーやオリゴマー及びイソシアネート等の硬化剤との反応により得られる硬化性樹脂組成物等の光や熱による硬化性樹脂組成物;等が挙げられる。
【0128】
上記異方性導電接着剤としては、任意の適切な異方性導電接着剤を採用し得る。例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電インク等が挙げられる。上記異方性導電フィルムは、例えば、異方性導電接着剤に溶媒を加えて溶液状にし、この溶液を離型フィルム上に流し込んだ後、溶媒を蒸発させて異方性導電接着剤を被膜状にすることにより得られる。得られた異方性導電フィルムは、例えば、接着すべき電極上に配置され、配置された異方性導電膜上に対向電極を重ね合わせ、加熱圧縮することにより電極間の接続に使用される。
【0129】
上記異方性導電ペーストは、例えば、異方性導電接着剤をペースト状にすることにより得られる。得られた異方性導電ペーストは、例えば、適当なディスペンサーに入れられ、接続すべき電極上に所望の厚さに塗工され、塗工された異方性導電ペースト上に対向電極を重ね合わせ、加熱するとともに加圧して樹脂を硬化させることにより、電極間の接続に使用される。
【0130】
上記異方性導電インクは、例えば、異方性導電接着剤に溶媒を加えて印刷に適した粘度にすることにより得られる。得られた異方性導電インクは、例えば、接着すべき電極上にスクリーン印刷し、その溶媒を蒸発させた後、印刷された異方性導電インクの上に対向電極を重ね合わせ、加熱圧縮することにより電極間の接続に使用される。
【0131】
上記異方性導電材料におけるフィルム膜厚、塗工膜厚及び印刷膜厚は、含有する導電性微粒子の平均粒子径と接続すべき電極の仕様とから計算し、接続すべき電極間に導電性微粒子が挟持され、接続すべき電極が形成された接合基板同士の空隙がバインダー樹脂層により充分に満たされるよう設定することが好ましい。
【0132】
本発明の導電性微粒子を用いた異方性導電材料は、高い導電性を示すばかりでなく、加重圧縮した際にも金属層が剥離、破壊されず、相対向する電極基板間の電気的な接続を確保することができる。また、経時安定性にも優れるので、長期間の使用においてもメッキ割れ等による導電性の低下を来すことなく、電極基板間の電気的な接続を堅持し信頼性の向上を図ることができる。
【0133】
本発明のコアシェル型有機無機複合体粒子は、導電性微粒子用の基材として有用である。しかし、用途は限定されることなく、有機無機のコアシェル構造に基づき、例えば、光拡散膜、防眩膜、反射膜などの光学膜用、光拡散フィルム、防眩フィルム、反射フィルムなどの光学フィルム用、各種基材の表面つや消し用、化粧品用などに用いられる光拡散剤として、また、液晶表示素子用スペーサーとして有用である。その他、アンチブロッキング剤などの、従来より樹脂粒子、無機粒子が使用されている各種用途分野で採用し得る。
【実施例】
【0134】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と記すことがある。また、「重量%」を「wt%」と記すことがある。また、本明細書において、「重量」とあるのは、「質量」と読み替えても良い。なお、各種評価は下記のように行った。
【0135】
〔実施例1−1〕
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水804部、25%アンモニア水1.2部、メタノール336部を入れ、攪拌しながらこの溶液に3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン62部とメタノール59部の混合液を滴下口から添加して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解・縮合を行って、重合性オルガノポリシロキサン粒子を調製した。反応開始から1時間後、得られた重合性オルガノポリシロキサン粒子(1次粒子)の乳濁液をサンプリングし、コールターマルチライザー(ベックマンコールター社製)により粒子径を測定したところ、平均粒子径は1.95μmであった。
次いで、反応液に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン14部に2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、V−65)0.76部を溶解した溶液を添加し、さらに1時間撹拌後、得られた重合性オルガノポリシロキサン粒子(2次粒子)の乳濁液をサンプリングし、コールターマルチライザー(ベックマンコールター社製)により粒子径を測定したところ、平均粒子径は2.12μmであった。
次いで、反応液を窒素雰囲気下で65℃に昇温させて、65℃で2時間保持し、ラジカル重合を行った。重合後の反応液をサンプリングし、コールターマルチライザー(ベックマンコールター社製)により得られた有機無機複合体粒子の粒子径を測定したところ、平均粒子径は2.12μmであった。
次いで、反応液に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン20部を追加し、1時間撹拌後、コールターマルチライザー(ベックマンコールター社製)により得られた有機無機複合体粒子の粒子径を測定したところ、平均粒子径は2.34μmであった。
次いで、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、ハイテノールNF−08)5部をイオン交換水200部で溶解した溶液に、トリメチロールプロパントリアクリレート200部、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、V−65)4.4部を溶解した溶液を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)により6000rpmで5分間乳化分散させてモノマーエマルションを調製し、得られたモノマーエマルションを有機無機複合体粒子の乳濁液中に添加して、さらに撹拌を行った。モノマーエマルション添加から2時間後、反応液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、有機無機複合体粒子がモノマーを吸収して肥大化していることが確認された。
次いで、反応液を窒素雰囲気下で65℃に昇温させて、65℃で2時間保持し、ラジカル重合を行った。ラジカル重合後、得られた乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、次いでメタノールで洗浄し、さらに80℃で12時間真空乾燥させて、コアシェル型有機無機複合体粒子(1)を得た。コアシェル型有機無機複合体粒子(1)の粒子径をコールターマルチナイザー(ベックマンコールター社製)により測定したところ、平均粒子径は3.5μm、変動係数(CV)は3.9%であった。
得られたコアシェル型有機無機複合体粒子(1)の電界放射型電子顕微鏡による断面の透過電子像を図1に示す。
【0136】
〔実施例1−2〕
ビーカーに「ピンクシューマー」(日本カニゼン株式会社製)50部とイオン交換水400部を入れ、混合して混合液を得た。別途、イオン交換水50部に実施例1で得られたコアシェル型有機無機複合体粒子(1)10部を加えて超音波分散を行ったものを準備し、上記混合液に投入し、30℃で10分間撹拌した後、懸濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、次いでメタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下100℃で2時間真空乾燥した。
次に、「レッドシューマー」(日本カニゼン株式会社製)100部とイオン交換水350部を入れ、混合して混合液を得た。別途、イオン交換水50部に上記で得られた乾燥粒子10部を加えて超音波分散を行ったものを準備し、上記混合液に投入し、30℃で10分間撹拌した後、懸濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、次いでメタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下100℃で2時間真空乾燥した。
以上の操作により、コアシェル型有機無機複合体粒子(1)の表面にパラジウムが吸着された。
上記で得られたパラジウム活性コアシェル型有機無機複合体粒子(1)をイオン交換水500部に添加し、超音波分散処理を30分間行い、粒子を十分に分散させて懸濁液を得た。この懸濁液を50℃で撹拌しながら、硫酸ニッケル6水和物50g/L、次亜リン酸ナトリウム1水和物20g/L、ジメチルアミンボラン2.5g/L、クエン酸50g/Lからなる無電解めっき液(pH=7.5)を徐々に懸濁液に添加して、無電解ニッケルめっきを行った。
めっき処理中の粒子を経時的にサンプリングして走査電子顕微鏡(SEM、HITACHI社製、「S−3500N」)による観察を行いながら、任意の10個の粒子径を測定し、めっき処理前のコアシェル型有機無機複合体粒子(1)の粒子径測定結果との差からめっき厚みを算出し、めっき厚みが0.1μmになった時点で無電解めっき液の添加をやめた。得られた導電性微粒子を濾別し、イオン交換水で洗浄した後、さらにメタノールで洗浄し、その後、60℃で12時間真空乾燥を行い、導電性微粒子(1)を得た。
【0137】
〔実施例2−1〕
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水804部、25%アンモニア水1.2部、メタノール336部を入れ、攪拌しながらこの溶液に3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン40部とメタノール59部の混合液を滴下口から添加して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解・縮合を行って、重合性オルガノポリシロキサン粒子を調製した。反応開始から1時間後、得られた重合性オルガノポリシロキサン粒子(1次粒子)の乳濁液をサンプリングし、コールターマルチライザー(ベックマンコールター社製)により粒子径を測定したところ、平均粒子径は1.61μmであった。
次いで、反応液に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン60部を添加し、さらに1時間撹拌後、得られた重合性オルガノポリシロキサン粒子(2次粒子)の乳濁液をサンプリングし、コールターマルチライザー(ベックマンコールター社製)により粒子径を測定したところ、平均粒子径は2.23μmであった。
次いで、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、ハイテノールNF−08)1.75部をイオン交換水70部で溶解した溶液に、スチレン70部、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、V−65)3.4部を溶解した溶液を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)により6000rpmで5分間乳化分散させてモノマーエマルションを調製し、得られたモノマーエマルションを重合性オルガノポリシロキサン粒子(2次粒子)の乳濁液中に添加して、さらに撹拌を行った。モノマーエマルション添加から2時間後、反応液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、重合性オルガノポリシロキサン粒子(2次粒子)がモノマーを吸収して肥大化していることが確認された。
次いで、反応液を窒素雰囲気下で65℃に昇温させて、65℃で2時間保持し、ラジカル重合を行った。重合後の反応液をサンプリングし、コールターマルチライザー(ベックマンコールター社製)により得られた有機無機複合体粒子の粒子径を測定したところ、平均粒子径は2.79μmであった。
次いで、冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、上記重合後の反応液300部、イオン交換水600部を入れ、撹拌しながら、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン7.5部を添加し、2時間撹拌後、得られた乳濁液をサンプリングし、コールターマルチライザー(ベックマンコールター社製)により得られた有機無機複合体粒子の粒子径を測定したところ、平均粒子径は2.96μmであった。
次いで、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、ハイテノールNF−08)0.2部をイオン交換水7.5部で溶解した溶液に、ジビニルベンゼン7.5部、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、V−65)0.3部を溶解した溶液を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)により6000rpmで5分間乳化分散させてモノマーエマルションを調製し、得られたモノマーエマルションを有機無機複合体粒子の乳濁液中に添加して、さらに撹拌を行った。モノマーエマルション添加から2時間後、反応液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、有機無機複合体粒子がモノマーを吸収して肥大化していることが確認された。
次いで、反応液を窒素雰囲気下で65℃に昇温させて、65℃で2時間保持し、ラジカル重合を行った。ラジカル重合後、得られた乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、次いでメタノールで洗浄し、さらに80℃で12時間真空乾燥させて、コアシェル型有機無機複合体粒子(2)を得た。コアシェル型有機無機複合体粒子(2)の粒子径をコールターマルチナイザー(ベックマンコールター社製)により測定したところ、平均粒子径は3.2μm、変動係数(CV)は4.1%であった。
【0138】
〔実施例2−2〕
コアシェル型有機無機複合体粒子(1)の代わりにコアシェル型有機無機複合体粒子(2)を用いた以外は、実施例1−2と同様に行い、導電性微粒子(2)を得た。
【0139】
〔実施例3−1〕
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水804部、25%アンモニア水1.2部、メタノール336部を入れ、攪拌しながらこの溶液に3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン40部とメタノール59部の混合液を滴下口から添加して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解・縮合を行って、重合性オルガノポリシロキサン粒子を調製した。反応開始から1時間後、得られた重合性オルガノポリシロキサン粒子(1次粒子)の乳濁液をサンプリングし、コールターマルチライザー(ベックマンコールター社製)により粒子径を測定したところ、平均粒子径は1.61μmであった。
次いで、反応液に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン60部を添加し、さらに1時間撹拌後、得られた重合性オルガノポリシロキサン粒子(2次粒子)の乳濁液をサンプリングし、コールターマルチライザー(ベックマンコールター社製)により粒子径を測定したところ、平均粒子径は2.23μmであった。
次いで、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、ハイテノールNF−08)1.75部をイオン交換水70部で溶解した溶液に、スチレン70部、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、V−65)3.4部を溶解した溶液を加え、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)により6000rpmで5分間乳化分散させてモノマーエマルションを調製し、得られたモノマーエマルションを重合性オルガノポリシロキサン粒子(2次粒子)の乳濁液中に添加して、さらに撹拌を行った。モノマーエマルション添加から2時間後、反応液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、重合性オルガノポリシロキサン粒子(2次粒子)がモノマーを吸収して肥大化していることが確認された。
次いで、反応液を窒素雰囲気下で65℃に昇温させて、65℃で2時間保持し、ラジカル重合を行った。重合後の反応液をサンプリングし、コールターマルチライザー(ベックマンコールター社製)により得られた有機無機複合体粒子の粒子径を測定したところ、平均粒子径は2.79μmであった。
次いで、冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、上記重合後の反応液300部、イオン交換水600部を入れ、撹拌しながら、ビニルトリメトキシシラン22.5部に2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、V−65)0.45部を溶解した溶液を添加し、2時間撹拌後、得られた乳濁液をサンプリングし、コールターマルチライザー(ベックマンコールター社製)により得られた有機無機複合体粒子の粒子径を測定したところ、平均粒子径は3.07μmであった。
次いで、反応液を窒素雰囲気下で65℃に昇温させて、65℃で2時間保持し、ラジカル重合を行った。ラジカル重合後、得られた乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、次いでメタノールで洗浄し、さらに80℃で12時間真空乾燥させて、コアシェル型有機無機複合体粒子(3)を得た。コアシェル型有機無機複合体粒子(3)の粒子径をコールターマルチナイザー(ベックマンコールター社製)により測定したところ、平均粒子径は3.0μm、変動係数(CV)は3.8%であった。
【0140】
〔実施例3−2〕
コアシェル型有機無機複合体粒子(1)の代わりにコアシェル型有機無機複合体粒子(3)を用いた以外は、実施例1−2と同様に行い、導電性微粒子(3)を得た。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の製造方法で得られるコアシェル型有機無機複合体粒子は、コア部とシェル部のそれぞれの堅さを独立して幅広く制御できるので、幅広い用途に適用可能である。例えば、導電性微粒子に適用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性有機基を有する加水分解性シリコン化合物を必須として含むシリコン化合物群を加水分解および縮合して重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)を得る工程(I)と、
該重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)を重合して有機無機複合体粒子(P1)を得る工程(II)と、
該有機無機複合体粒子(P1)に重合性モノマー(M1)を添加して有機無機複合体粒子(P2)を得る工程(III)と、
該有機無機複合体粒子(P2)を重合してコアシェル型有機無機複合体粒子(P3)を得る工程(IV)と、
を含む、コアシェル型有機無機複合体粒子の製造方法。
【請求項2】
前記工程(II)の前に、重合性モノマー(M2)を乳化分散させたエマルションを前記工程(I)で得られる重合性オルガノポリシロキサン粒子(S1)と混合する、請求項1に記載のコアシェル型有機無機複合体粒子の製造方法。
【請求項3】
前記工程(IV)の前に、重合性モノマー(M2)を乳化分散させたエマルションを前記工程(III)で得られる有機無機複合体粒子(P2)と混合する、請求項1または2に記載のコアシェル型有機無機複合体粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の製造方法によって得られる、コアシェル型有機無機複合体粒子。
【請求項5】
請求項4に記載のコアシェル型有機無機複合体粒子と金属層を含む、導電性微粒子。
【請求項6】
前記金属層が、無電解めっき法により形成された層である、請求項5に記載の導電性微粒子。


【図1】
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【公開番号】特開2010−229303(P2010−229303A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78842(P2009−78842)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】