説明

コアシェル型無機酸化物微粒子の分散液、その製造方法および該分散液を含む塗料組成物

【課題】分散安定性および透明性が高く、塗膜に配合した際の耐光性および耐候性に優れた分散液を提供する。
【解決手段】チタニウムを含む金属酸化物微粒子を核粒子として、その表面をジルコニウム等の金属元素の水和物および/または酸化物で処理した表面処理粒子の表面を、さらにケイ素と、アルミニウム、ジルコニウム、アンチモンから選ばれた1種または2種以上からなる金属元素との複合酸化物で被覆してなるコアシェル型無機酸化物微粒子を使用することで、分散液の分散安定性および透明性、塗膜に配合した際の耐光性および耐候性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコアシェル型無機酸化物微粒子の分散液、特に、チタン系核粒子がシリカジルコニアまたはシリカアルミナ等で被覆されたコアシェル型粒子の分散液とその製造方法、および該分散液を含む塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン粒子は高屈折率フィラーとして、塗布液や樹脂組成物に配合され用いられている。このような塗布液や樹脂は様々の用途に使用されるが、特に、眼鏡レンズなどの高屈折率光学基材用の被膜形成用塗布液としては好ましく使用される。
光学用レンズの塗膜には透明性が求められるため、粒子径の小さな酸化チタン微粒子が好ましく用いられているが、粒子径の小さな酸化チタン微粒子は活性が高く、被膜や被膜付き基材の耐候性や耐光性が低下し、膜はがれが起きたり、また膜の黄変や青変が起こりやすいという問題があった。
【0003】
膜の劣化を抑制し、耐候性を向上させる手段として、特許文献1には、酸化チタンを含む核粒子の表面を酸化ケイ素と酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムからなる複合酸化物の被覆層で被覆した無機酸化物微粒子を含むコーティング膜が記載されている。
また、特許文献2には、酸化チタンの表面がアモルファス酸化ジルコニウムで被覆されている酸化チタン超微粒子、および該微粒子を含むコーティング液が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−146131号公報
【特許文献2】特開2004−018311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の無機酸化物微粒子は、優れた耐候性を有するものであったが、この効果をさらに向上させることが求められていた。
また特許文献2に記載の酸化チタン超微粒子についても、耐候性および耐光性をさらに向上させることが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコアシェル型無機酸化物微粒子を含む分散液は、チタニウムを含む金属酸化物微粒子を核粒子として、その表面をジルコニウム、スズ、ニオブ、バリウム、ランタニウム、ストロンチウム、セリウム、リチウムから選ばれた1種または2種以上からなる金属元素の水和物および/または酸化物で処理した表面処理粒子の表面を、さらにケイ素と、アルミニウム、ジルコニウム、アンチモンから選ばれた1種または2種以上からなる金属元素との複合酸化物で被覆してなることを特徴とする。
【0007】
前記核粒子がチタニウムをTiO2換算基準で50〜100重量%の範囲で含む金属酸化物微粒子であることが好ましい。
前記核粒子が、チタニウムと、スズ、ケイ素、ジルコニウムから選ばれた1種以上の金属元素との複合酸化物を含む金属酸化物微粒子であることが好ましい。
前記核粒子が、結晶性の金属酸化物微粒子であることが好ましい。
前記核粒子の表面に処理された金属元素の水和物および/または酸化物の量が、該核粒子中に含まれる金属元素に対して酸化物換算基準で0.1〜20モル%の範囲にあることが好ましい。
【0008】
前記表面処理粒子を被覆する複合酸化物の量が、該表面処理粒子100重量部に対して5〜100重量部の範囲にあることが好ましい。
前記コアシェル型無機酸化物微粒子の表面負電荷量が、pH6の分散液中で測定したときに0.85〜1.50μeq/m2の範囲にあることが好ましい。
前記コアシェル型無機酸化物微粒子の表面に存在する固体酸量が、0.001〜0.15 mmol/gの範囲にあることが好ましい。
前記コアシェル型無機酸化物微粒子の平均粒子径が8〜60nmの範囲にあることが好ましい。
【0009】
前記分散液の分散媒が、水および/またはメタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロピルアルコ-ル等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン、γ−ブチロラクトン等のケトン類から選ばれた有機化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
本発明のコアシェル型金属酸化物微粒子を含む分散液の製造方法は、
(1)平均粒子径5〜50nmの範囲にある、チタニウムを含む金属酸化物微粒子を含む水分散液にジルコニウム、スズ、ニオブ、バリウム、ランタニウム、ストロンチウム、セリウム、リチウムから選ばれた1種または2種以上からなる金属元素の金属塩または金属アルコキシドを前記金属酸化物微粒子に含まれる金属元素に対して酸化物換算基準で0.1〜20重量モル%の範囲となるように添加したのち、熟成して、表面処理粒子の水分散液を調製する工程、
(2)前記工程で得られた、表面処理粒子の水分散液に、ケイ素化合物と、アルミニウム、ジルコニウム、アンチモンから選ばれた1種または2種以上からなる金属元素の化合物とを添加する工程、および
(3)前記工程(2)で得られた分散液を60〜250℃で0.5〜20時間加熱処理する工程
を含むことを特徴とする。
【0011】
前記工程(1)の後に、さらに下記工程
(1.1)前記工程(1)で得られた水分散液を乾燥させて乾燥粉体を得る工程、
(1.2)前記工程(1.1)で得られた乾燥粉体を300〜800℃の温度条件下で焼成して表面処理粒子の焼成粉末を得る工程
(1.3)前記工程(1.2)で得られた表面処理粒子を水に再分散させる工程
を含むことが好ましい。
【0012】
前記工程(1)において、前記結晶性酸化物微粒子を含む水分散液に前記金属元素の金属塩または金属アルコキシドを添加したときのpHが、5〜11の範囲にあることが好ましい。
【0013】
本発明の被膜形成用塗料組成物は、前記コアシェル型金属酸化物微粒子と、下記一般式(I)で示されるバインダー成分とを含むことを特徴とする。
1a2bSi(OR34-(a+b) (I)
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基、ビニル基を含有する炭素数8以下の有機基、エポキシ基を含有する炭素数8以下の有機基、メタクリロキシ基を含有する炭素数8以下の有機基、メルカプト基を含有する炭素数1〜5の有機基またはアミノ基を含有する炭素数1〜5の有機基であり、R2は炭素数1〜3のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基またはアリル基であり、R3は炭素数1〜3のアルキル基、アルキレン基またはシクロアルキル基である。また、aは0または1の整数、bは0、1または2の整数である。)
また、本発明の被膜形成用塗料組成物は、前記コアシェル型金属酸化物微粒子と、熱硬化性有機樹脂、熱可塑性有機樹脂または紫外線硬化性有機樹脂とを含むことを特徴とする。
【0014】
前記塗料組成物が、光学基材用塗料組成物であることが好ましい。
前記光学基材用塗料組成物が、ハードコート層膜形成用塗料組成物であることが好ましい。
前記光学基材用塗料組成物が、プライマー層膜形成用塗料組成物であることが好ましい。
【0015】
本発明の硬化性塗膜は、前記塗料組成物を基材上に塗布して得られるものであり、前記基材が、プラスチックレンズ基材であることが好ましく、前記硬化性塗膜が、ハードコート層膜またはプライマー層膜であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るコアシェル型無機酸化物微粒子は、分散安定性および透明性が高く、塗膜に配合した際の耐光性および耐候性に非常に優れている。
これは、核粒子の表面をジルコニウム、スズ、バリウム、ランタニウム、ストロンチウム、セリウム、リチウムから選ばれた1種または2種以上からなる金属元素の水和物および/または酸化物で処理し、さらに、その上からケイ素と、アルミニウム、ジルコニウム、アンチモンから選ばれた1種または2種以上からなる金属元素との複合酸化物で被覆していることによって、該コアシェル型無機酸化物微粒子表面の固体酸量が少なく、該微粒子表面の被覆率と、負電荷密度の高い微粒子が得られるためである。
【0017】
このような微粒子を含む塗料から得られた被膜や被膜付き基材は密着性に優れ、黄変もなく、また青変(すなわち、ブルーイング)を引き起こすこともない。
また、本発明のコアシェル型無機酸化物微粒子を含む塗膜は塗膜の硬度が向上する。これは該コアシェル型無機酸化物微粒子の表面負電荷密度が増加することによって、安定性、およびバインダー成分との反応性が高まり、塗膜中で均一に分散し安定な膜を形成するためであると考えられる。
【0018】
本発明のコアシェル型無機酸化物微粒子は、核粒子や表面処理粒子を被覆する複合酸化物の量が少量でも優れた耐候性や耐光性を発揮することができるので、コアシェル型無機酸化物微粒子の屈折率を高めることができる。さらに、結晶性の核粒子を用いた場合には、前記コアシェル型無機酸化物微粒子の屈折率をさらに高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
核粒子
本発明に係る核粒子は、チタニウムを含む金属酸化物微粒子である。
前記核粒子に含まれるチタニウムの量が、TiO2換算基準で50〜100重量%、より好ましくは52〜100重量%の範囲にあることが好ましい。
前記チタニウムの含有量が50重量%未満の場合には、コアシェル型無機酸化物微粒子の屈折率が低下するので好ましくない。
【0020】
前記核粒子は、チタニウムと、スズ、ケイ素、ジルコニウムから選ばれた1種または2種以上の金属元素との複合酸化物を含む金属酸化物微粒子であることが好ましい。
このような核粒子は、安定性がより高く、耐光性、耐候性も向上するため好ましい。
【0021】
前記核粒子は、結晶性の金属酸化物微粒子であることが好ましい。結晶性の金属酸化物微粒子を核粒子として用いると、コアシェル型無機酸化物微粒子の屈折率が向上するので好ましい。
ここで、核粒子が結晶性であるとは、X線回折パターンより求めた核粒子の結晶子径が3nmを超えるものであることを意味する。前記結晶子径が3nm以下である場合には、核粒子の屈折率が低下する場合があるので好ましくない。
前記核粒子は、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイトから選ばれた1種または2種以上の結晶構造を有することが好ましい。
前記核粒子がルチル型の結晶構造を有するものであると、コアシェル型無機酸化物微粒子の紫外線吸収能、耐候性、耐光性および屈折率が向上するのでより好ましい。
【0022】
前記核粒子の平均粒子径は5〜50nm、より好ましくは5〜30nmの範囲にあることが好ましい。前記平均粒子径が5nm未満の場合には、核粒子の安定性が低下する場合があるので好ましくない。また、前記平均粒子径が50nmを超えると本発明に係るコアシェル型無機酸化物微粒子を含む被膜の透明性が低下する場合があるので好ましくない。
【0023】
前記核粒子の形状は、どのような形状であってもよく、例えば球状、鎖状、金平糖状などが挙げられる。鎖状の核粒子を用いたコアシェル型無機酸化物微粒子は膜に配合した際の膜硬度や耐擦傷性が高く、金平糖状の核粒子を用いたコアシェル型無機酸化物微粒子は膜に配合した際に膜の密着性が向上する。
形状球状粒子の場合はBET法またはTEM写真より求めた平均粒子径が、金平糖状粒子はTEM写真より求めた平均粒子径が、鎖状粒子についてはTEM写真から求めた鎖状粒子の長手方向の長さをLとし、短手方向の長さをDとしたとき、計算式(L+D)/2で表される平均粒子径がそれぞれ上記の範囲内にあることが好ましい。
【0024】
表面処理粒子
本発明に係る表面処理粒子は、前記核粒子の表面をジルコニウム、スズ、ニオブ、バリウム、ランタニウム、ストロンチウム、セリウム、リチウムから選ばれた1種以上の金属元素の水和物および/または酸化物によって処理した粒子である。
前記処理とは、前記金属元素の水和物および/または酸化物が核粒子表面を部分的または全体的に被覆した状態を意味する。該水和物および/または酸化物に含まれる金属元素の少なくとも一部が、核粒子表面および表面近傍にドープされていてもよい。
また、ここで、水和物とは、下記式(1)により表される化合物を指す。
MOx(OH)y (1) (Mはジルコニウム、スズ、ニオブ、バリウム、ランタニウム、ストロンチウム、セリウム、リチウムから選ばれた1種以上の金属元素を指し、2x+y=Mの価数、かつx>0、y>0とする。)
【0025】
核粒子に前記処理を施すことにより、表面処理粒子の表面の固体酸量が減少し、チタニウムに由来する核粒子の活性が抑制され、表面処理粒子の耐候性および耐光性が向上する。
また、前記処理により、表面処理粒子の表面負電荷密度が増加する。
さらに、このような処理を行うことによって、表面処理粒子の表面にさらに複合酸化物を被覆した際の最終的な被覆率を向上させ、コアシェル型無機酸化物微粒子の耐候性、耐光性および安定性を向上させる効果がある。
【0026】
核粒子の表面に処理された前記金属元素の水和物および/または酸化物の処理量は、核粒子中に含まれる金属元素に対して、ジルコニウム、スズ、ニオブ、バリウム、ランタニウム、ストロンチウム、セリウム、リチウムから選ばれた1種以上の金属元素が酸化物換算基準、すなわちそれぞれZrO2、SnO2、Nb25、BaO、La23、SrO、CeO2、Li2O換算基準で0.1〜20モル%、より好ましくは0.1〜10モル%の範囲にあることが好ましい。
【0027】
前記処理量が0.1モル%未満の場合には、コアシェル型無機酸化物粒子表面の固体酸低減効果、表面負電荷密度の向上効果、シェル被覆率の向上効果などが充分得られず耐候性が低下したり、膜硬度が充分向上しない場合があるので好ましくない。また、前記処理量が20モル%を超えるとコアシェル型無機酸化物微粒子の表面負電荷密度が低下し膜硬度が低下したり、表面処理粒子同士が凝集し膜の透明性が低下する場合があるので好ましくない。
【0028】
コアシェル型無機酸化物微粒子
本発明に係るコアシェル型無機酸化物微粒子は、前記表面処理粒子の表面を、さらにケイ素と、アルミニウム、ジルコニウム、アンチモンから選ばれた1種または2種以上からなる金属元素との複合酸化物で被覆してなることを特徴とする。
前記表面処理粒子は、そのままでは、耐光性や耐候性が不十分であるが、その表面をさらにケイ素と、アルミニウム、ジルコニウム、アンチモンから選ばれた1種または2種以上の金属元素との複合酸化物で被覆することによって、高い耐候性と耐光性を発揮することができる。
【0029】
これは、前記複合酸化物の被覆による効果だけではなく、一旦核粒子を表面処理した上で、さらに複合酸化物を被覆することで、コアシェル型無機酸化物微粒子の最終的な被覆率が向上することによる。すなわちこの効果は、核粒子を表面処理せずに、直接前記複合酸化物で被覆した場合よりも著しく顕著である。このようなコアシェル型微粒子は表面固体酸量が少ないため耐候性が高く、塗膜としたときに膜はがれや黄変、青変を起こさず、分散安定性に優れている。
【0030】
また、核粒子の表面を一旦金属元素の水和物および/酸化物で処理することによって、コアシェル型無機酸化物微粒子の表面負電荷密度が増加するため、本発明に係るコアシェル型無機酸化物微粒子の分散液は分散安定性が高く、また該微粒子を含む被膜は膜硬度が高く、耐擦傷性、透明性、密着性に優れる。
これは、表面負電荷密度の高いコアシェル型無機酸化物微粒子は、高濃度の濃縮条件下や酸性のpH領域下でも安定で、かつバインダー成分との反応性が高いため、塗料中で均一に高分散できるためであると考えられる。
【0031】
前記コアシェル型無機酸化物微粒子の表面負電荷密度は、pH6の分散液中で測定したときに0.85〜1.50μeq/m2、より好ましくは0.9〜1.50 μeq/m2の範囲にあることを特徴としている。
前記表面負電荷密度が0.85μeq/m2未満の場合には、コアシェル型無機酸化物微粒子を含む被膜の膜硬度が低下するので好ましくない。また、前記表面負電荷密度が1.50μeq/m2を超えると分散液の安定性が低下するので好ましくない。
【0032】
前記コアシェル型無機酸化物微粒子の表面に存在する固体酸量は、0.001〜0.15mmol/g、より好ましくは0.001〜0.10 mmol/gの範囲にあることが好ましい。
前記固体酸量が0.001mmol/g未満の場合には、コアシェル型無機酸化物微粒子とバインダー成分との反応性が低下して膜硬度が低下する場合があるので好ましくない。前記固体酸量が0.15mmol/gを超えると、該コアシェル型金属酸化物微粒子を含む被膜の耐光性や耐候性が低下するので好ましくない。
【0033】
前記表面処理粒子に対する、ケイ素と、アルミニウム、ジルコニウム、アンチモンから選ばれた1種または2種以上の金属元素との複合酸化物の被覆量は、表面処理粒子100重量部に対して5〜100重量部、より好ましくは7〜50重量部の範囲にあることが好ましい。前記被覆量が5重量部未満の場合には、コアシェル型無機酸化物微粒子の耐光性、耐候性および安定性が低下する場合があるので好ましくない。前記被覆量が100重量部を超えると、コアシェル型無機酸化物微粒子の屈折率が低下するので好ましくない。
【0034】
前記コアシェル型無機酸化物微粒子の平均粒子径は、8〜60nm、より好ましくは8〜30nmの範囲にあることが好ましい。前記平均粒子径が8nm未満の場合には、コアシェル型無機酸化物微粒子の安定性が低下するので好ましくない。前記平均粒子径が60nmを超えると、該コアシェル型無機酸化物微粒子を含む被膜の透明性が低下するので好ましくない場合がある。
必要に応じて、本発明に係るコアシェル型無機酸化物微粒子の表面を、さらに公知の表面処理剤やシランカップリング剤等により処理してもよい。
【0035】
コアシェル型無機酸化物微粒子を含む分散液
本発明に係るコアシェル型無機酸化物微粒子を含む分散液は、前記コアシェル型無機酸化物微粒子を含む分散液であることを特徴としている。
該分散液の分散媒は、水および/またはメタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、メチルエチルケトン、γ−ブチロラクトン等のケトン類から選ばれた有機化合物より選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0036】
前記分散液の固形分濃度は、10〜50重量%、さらに20〜40重量%の範囲にあることが好ましい。前記固形分濃度が10重量%未満の場合には、この分散液を塗料組成物に配合した際に所望の被膜性能が得られにくい場合があるので好ましくない。該固形分濃度が50重量%を超えると、分散液の安定性が低下する場合があるので好ましくない。
【0037】
このコアシェル型無機酸化物微粒子を含む分散液は、該微粒子の表面被覆率および表面電荷密度が高いため分散安定性と透明性が高く耐候性に優れている。
この分散液を配合した塗料組成物から得られる被膜は、屈折率が高く、耐候性、耐光性、膜硬度、耐擦傷性、密着性、透明性が高く、膜はがれや黄変、青変等を起こしにくいため、光学基材用塗料組成物、特にハードコート層膜形成用塗料やプライマー層膜形成用塗料に配合するのに適している。
【0038】
コアシェル型無機酸化物微粒子の分散液の製造方法
以下に、本発明に係るコアシェル型無機酸化物微粒子の製造方法を具体的に述べる。
本発明に係るコアシェル型無機酸化物微粒子の製造方法は、下記工程
(1)平均粒子径5〜50nmの範囲にある、チタニウムを含む金属酸化物微粒子(核粒子)を含む水分散液にジルコニウム、スズ、ニオブ、バリウム、ランタニウム、ストロンチウム、セリウム、リチウムから選ばれた1種または2種以上からなる金属元素の金属塩または金属アルコキシドを前記金属酸化物微粒子に含まれる金属元素に対して酸化物換算基準で0.1〜20重量モル%の範囲となるように添加したのち、熟成させる工程、
(2)前記工程で熟成して得られた水分散液に、ケイ素化合物と、アルミニウム、ジルコニウム、アンチモンから選ばれた1種または2種以上からなる金属元素の化合物とを添加する工程、および
(3)前記工程(2)で得られた分散液を60〜250℃で0.5〜20時間加熱処理する工程
を含むことを特徴としている。
次に、各工程について具体的に述べる。
【0039】
工程(1)
この工程は、平均粒子径5〜50nmの、チタニウムを含む金属酸化物微粒子、すなわち核粒子を含む分散液に、ジルコニウム、スズ、ニオブ、バリウム、ランタニウム、ストロンチウム、セリウム、リチウムから選ばれた1種または2種以上の金属元素の金属塩または金属アルコキシドを添加したのち、熟成して、前記金属元素を核粒子表面と結合または反応させて、表面処理粒子の水分散液を調製する工程である。
【0040】
前記核粒子の水分散液は、あらゆる公知の方法で製造することができる。
好ましい一例としては、過酸化チタン酸と、スズ酸カリウムおよび/またはケイ素化合物とを含む混合水溶液をオートクレーブにて150〜250℃の温度で水熱処理する方法により核粒子の水分散液を製造することができる。
ここで、必要に応じて、核粒子の水分散液を加熱処理して、核粒子を結晶性のものとさせてもよい。その場合は、核粒子を加熱して得られた粉末を粉砕し、水に再分散させて水分散液を作成し、後の工程に処すことができる。
【0041】
前記ジルコニウム、スズ、ニオブ、バリウム、ランタニウム、ストロンチウム、セリウム、リチウムから選ばれた1種または2種以上の金属元素の金属塩としては、例えば塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、炭酸アンモニウム塩、酢酸塩などを用いることができる。より好ましくは、塩酸塩、炭酸塩、炭酸アンモニウム塩、酢酸塩を使用することができる。
【0042】
前記ジルコニウム、スズ、ニオブ、バリウム、ランタニウム、ストロンチウム、セリウム、リチウムから選ばれた1種または2種以上の金属元素の金属塩または金属アルコキシドの前記水分散液に対する添加量は、核粒子中に含まれる金属元素に対して前記ジルコニウム、スズ、ニオブ、バリウム、ランタニウム、ストロンチウム、セリウム、リチウムの総量が酸化物換算基準で0.1〜20重量モル%、より好ましくは0.1〜10重量モル%の範囲となるように添加することが好ましい。
前記添加量が0.1重量モル%未満の場合には、前記金属元素による核粒子の処理が不十分となり、コアシェル型無機酸化物微粒子の耐候性、耐光性、安定性が低下するので好ましくない。前記添加量が20重量モル%を超えると、表面処理粒子同士が架橋凝集しやすくなるので好ましくない。
【0043】
核粒子の水分散液に前記金属元素の金属塩または金属アルコキシドを添加したのち、熟成する際の、熟成の条件は、30〜90℃で1〜24時間、より好ましくは攪拌下で熟成することが好ましい。このような条件で熟成することにより前記金属元素を核粒子表面に結合または反応させる。
【0044】
前記核粒子の水分散液に、前記金属元素の金属塩または金属アルコキシドを添加したときのpHは、5〜11、より好ましくは6〜9の範囲にあることが好ましい。
前記pHが5未満の場合には、核粒子が凝集しやすくなるので好ましくない。また、前記pHが11を超えると、金属元素が析出し難くなるので好ましくない。前記pHは必要に応じて鉱酸、有機酸、炭酸ガスなどのpH調整剤を用いて調整することができる。
【0045】
工程(2)
ついで、工程(1)より得られた水分散液に、ケイ素化合物と、アルミニウム、ジルコニウム、アンチモンから選ばれた1種または2種以上の金属元素の化合物とを添加して、水分散液に含まれる粒子の表面に、ケイ素と、アルミニウム、ジルコニウム、アンチモンから選ばれた1種または2種以上の金属元素との複合酸化物の前駆体を形成させる。
前記ケイ素化合物としては、珪酸および/またはシランアルコキシドを用いることが好ましい。アルミニウムの化合物としては、アルミン酸塩および/またはアルミニウムアルコキシドを用いることが好ましい。ジルコニウムの化合物としてはジルコン酸塩および/またはジルコニウムアルコキシドを用いることが好ましい。アンチモンの化合物としてはジルコン酸塩を用いることが好ましい。
【0046】
前記化合物の添加量は、工程(1)で調製した水分散液に含まれる表面処理粒子に対する、ケイ素と、アルミニウム、ジルコニウム、アンチモンから選ばれた1種または2種以上の金属元素との複合酸化物の被覆量が、該表面処理粒子100重量部に対して5〜100重量部、より好ましくは7〜50重量部の範囲となるように添加することが好ましい。前記被覆量が5重量部未満の場合には、コアシェル型無機酸化物微粒子の耐光性、耐候性および安定性が低下する場合があるので好ましくない。前記被覆量が100重量部を超えると、コアシェル型無機酸化物微粒子の屈折率が低下するので好ましくない。
【0047】
工程(3)
ついで、前記工程(2)より得られた水分散液を60〜250℃で0.5〜20時間加熱処理することにより、前記ケイ素と、アルミニウム、ジルコニウム、アンチモンから選ばれた1種または2種以上の金属元素との複合酸化物の前駆体の脱水、縮合反応を行うことにより、コアシェル型無機酸化物微粒子の水分散液を得ることができる。
【0048】
また、さらに、前記工程(1)と前記工程(2)の間に、下記工程
(1.1)前記工程(1)で得られた水分散液を乾燥させて乾燥粉体を得る工程、
(1.2)前記工程(1.1)で得られた乾燥粉体を300〜800℃の温度条件下で焼成して表面処理粒子の焼成粉末を得る工程
(1.3)前記工程(1.2)で得られた表面処理粒子を水に再分散させる工程
を含むことが好ましい。
以下に、各工程について具体的に説明する。
【0049】
工程(1.1)
この工程は、前記工程(1)より得られた水分散液を乾燥させて乾燥粉体を得る工程である。
乾燥の方法としては、どのような方法であってもよいが、噴霧乾燥、凍結乾燥がより好ましい。このような方法で乾燥させた粒子は再分散性がより高いため好ましい。
【0050】
工程(1.2)
この工程は、前記工程(1.1)より得られた乾燥粉体を300〜800℃、より好ましくは400〜700℃の温度条件下で30〜240時間焼成して表面処理粒子の焼成粉末を得る工程である。
この工程により、核粒子が結晶性となり、屈折率、耐光性、耐候性を高めるとともに、核粒子表面にジルコニウム、スズ、ニオブ、バリウム、ランタニウム、ストロンチウム、セリウム、リチウムから選ばれた1種または2種以上の金属元素を水和物および/または酸化物として処理される。
【0051】
この工程により、核粒子表面に前記金属元素の水和物および/または酸化物を強く結合させることができるため、コアシェル型無機酸化物微粒子の耐光性、耐候性、安定性などをより向上させることができる。また、この工程により、前記金属元素の少なくとも一部が、核粒子の表面もしくは表面近傍にドープされ、コアシェル型酸化物微粒子の耐候性と耐光性をより向上させることができる。
【0052】
この工程を行わない場合には、表面処理粒子は工程(3)の加熱処理にてコアシェル型金属酸化物微粒子と同時に形成される。これは、すなわち、加熱処理を行わない時点では前記金属元素は核粒子表面に主に水酸化物として結合しており、水和物および/または酸化物の形態となっていないためである。核粒子に処理された前記金属元素が水和物および/または酸化物の形態として処理されていないと、核粒子との結合力が弱くコアシェル型無機酸化物微粒子の安定性、耐候性、耐光性が低下する場合があるので好ましくない。
【0053】
工程(1.3)
この工程では、前記工程(1.2)で得られた表面処理粒子を水に再分散させる。
この時、前記表面処理粒子の焼成粉末を粉砕してから再分散させることが好ましい。
具体的には、必要に応じて、酒石酸、KOH等を添加して、pHを3〜11の範囲に調整し、これをアルミナビーズ等を用いてサンドミル等で粉砕し、その後ビーズを分離して、得られた表面処理粒子の焼成粉体の粉砕物を水に再分散させることが好ましい。
【0054】
ついで、必要に応じて、陰イオン交換樹脂を添加して、過剰な酒石酸やカリウムイオンを除去したのち、陰イオン交換樹脂を分離除去して、得られた水分散液を必要に応じて遠心分離処理に処して粗大粒子を除去することが好ましい。
このような方法により再分散させた表面処理粒子の分散液は透明性が高く、安定性が高いので好ましい。
以上のような方法で、本発明に係るコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散液を製造することができる。
【0055】
このようにして得られたコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散液を、必要に応じて濃縮、溶媒置換してもよい。
前記溶媒置換に用いる溶媒としてはメタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロピルアルコ-ル等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン、γ−ブチロラクトン等のケトン類から選ばれる有機化合物を使用することができる。またこれらを混合して用いてもよい。
また、コアシェル型無機酸化物微粒子の水分散液に公知のシランカップリング剤や表面処理剤を添加して、コアシェル型無機酸化物微粒子の表面を必要に応じて処理してもよい。
【0056】
塗料組成物
本発明に係る塗料組成物は、本発明に係るコアシェル型無機酸化物微粒子と、下記一般式(I)で示されるバインダー成分とを含む被膜形成用塗料組成物であることが好ましい。
1a2bSi(OR34-(a+b) (I)
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基、ビニル基を含有する炭素数8以下の有機基、エポキシ基を含有する炭素数8以下の有機基、メタクリロキシ基を含有する炭素数8以下の有機基、メルカプト基を含有する炭素数1〜5の有機基またはアミノ基を含有する炭素数1〜5の有機基であり、R2は炭素数1〜3のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基またはアリル基であり、R3は炭素数1〜3のアルキル基、アルキレン基またはシクロアルキル基である。また、aは0または1の整数、bは0、1または2の整数である。)
【0057】
このようなバインダー成分と、前記コアシェル型無機酸化物微粒子とを含む塗料組成物を用いて得られた被膜は、被膜の成膜性が良好で、屈折率が高く、耐光性、耐候性が高く、黄変および青変することがなく、膜硬度、耐擦傷性、密着性、透明性が高いので好ましい。
前記塗料組成物は、光学基材用塗料組成物であることが好ましい。
前記塗料組成物は、ハードコート層膜形成用塗料組成物であることがより好ましい。
【0058】
また、本発明に係る塗料組成物は、本発明に係るコアシェル型無機酸化物微粒子と、熱硬化性有機樹脂、熱可塑性有機樹脂、および紫外線硬化性有機樹脂から選ばれる1種以上のバインダー成分とを含む被膜形成用塗料組成物であることが好ましい。
このようなバインダー成分と、前記コアシェル型無機酸化物微粒子を含む塗料組成物を用いて得られた被膜は、被膜の成膜性が良好で、屈折率が高く、耐光性、耐候性が高く、黄変および青変することがなく、膜硬度、耐衝撃性、耐擦傷性、密着性、透明性が高いので好ましい。
前記塗料組成物は、光学基材用塗料組成物であることが好ましい。
前記塗料組成物は、プライマー層膜形成用塗料組成物であることがより好ましい。
【0059】
本発明に係る塗料組成物を基材上に塗布して、これを硬化させることにより、硬化性塗膜を得ることができる。この硬化性塗膜は屈折率が高く、耐光性、耐候性が高く、黄変および青変することがなく、膜硬度、耐擦傷性、密着性、透明性に優れる。
前記基材としては、プラスチック、ガラス、金属などがあげられるが、より好ましくは。プラスチックレンズ基材が好ましい。
前記硬化性塗膜は、ハードコート層膜であることが好ましい。
前記硬化性塗膜は、プライマー層膜であることが好ましい。
本発明に係る塗料組成物は、本発明に係る水分散液または有機溶媒分散液を、前記バインダー成分と混合することにより製造することができる。
【0060】
[測定方法]
次に、本発明の実施例その他で使用された測定方法および評価試験法を具体的に述べれば、以下の通りである。
【0061】
(1)粒子の平均粒子径
ナノサイズの粒子径を有するチタン系微粒子または金属酸化物微粒子の水分散ゾル(固形分含有量20重量%)0.15gに純水19.85gを混合して調製した固形分含有量0.15%の試料を、長さ1cm、幅1cm、高さ5cmの石英セルに入れて、動的光散乱法による超微粒子粒度分析装置(大塚電子(株)製、型式ELS−Z2)を用いて、粒子群の粒子径分布を測定する。なお、本発明でいう平均粒子径は、この測定結果をキュムラント解析して算出された値を示す。ただし、前記超微粒子粒度分析装置を用いた動的光散乱法で測定された前記微粒子の粒子径分布より得られる粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡で撮った前記微粒子のTEM写真より得られる粒子の平均粒子径の約3倍の値を示すことが分かった。よって、本発明で規定される前記微粒子の平均粒子径は、他の測定方法より得られる平均粒子径とは異なるものである。因みに、この測定方法は、3〜1000nmの粒子径をもつ粒子群の平均粒子径を測定するのに適している。
【0062】
(2)粒子の比表面積
複合酸化物粒子(チタン系粒子)またはチタン系微粒子の乾燥粉体を磁性ルツボ(B−2型)に約30ml採取し、300℃の温度で2時間乾燥後、デシケータに入れて室温まで冷却する。次に、サンプルを1g取り、全自動表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製、マルチソーブ12型)を用いて、比表面積(m2/g)をBET法にて測定する。なお、本発明でいう比表面積は、この測定結果から算出された値を示す。
【0063】
(3)粒子の結晶形態
複合酸化物粒子(チタン系粒子)またはチタン系微粒子の水分散ゾルを磁性ルツボ(B−2型)に約30ml採取し、110℃12時間乾燥後、デシケータに入れて室温まで冷却する。次に、乳鉢にて15分粉砕後、X線回折装置(理学電気(株)製、RINT1400)を用いて結晶形態を測定する。なお、本発明でいう結晶形態は、この測定結果から判定された形態(たとえば、ルチル型など)を示す。
【0064】
(4)粒子のX線回折結晶子径
前記(3)で使用したX線回折装置を用いて、焼成した複合酸化物粒子(チタン系粒子)またはチタン系微粒子の結晶構造を測定した結果より求める。なお、本発明でいうX線回折結晶子径(D)は、以下のシェラー(Scheller)の式を用いて算出された値を示す。
D=λ/βcosθ
(ここで、λはX線波長、βは半価幅、θは反射角を意味する。なお、本測定で使用されるX線(CuKα線)の波長λは、0.154056nmである。また、反射角θは測定されたルチル結晶面(110)の2θを用いて算出した。)
【0065】
(5)粒子中に含まれる金属酸化物の含有量
金属酸化物微粒子を含む水分散ゾル(試料)をジルコニアボールに採取し、乾燥、焼成した後、Na22とNaOHを加えて溶融する。さらに、H2SO4とHClで溶解し、純水で希釈した後、ICP装置(島津製作所(株)製、ICPS−8100)を用いて、チタニウム、スズ、アルミニウム、アンチモンおよび/またはシリカの含有量を酸化物換算基準(すなわち、TiO2、SnO2、Al23、Sb25および/またはSiO2)で測定する。
【0066】
次いで、前記試料を白金皿に採取し、HFとH2SO4を加えて加熱し、HClで溶解する。さらに、これを純水で希釈した後、ICP装置((株)島津製作所製、ICPS−8100)を用いてジルコニウムの含有量を酸化物換算基準(ZrO2)で測定する。
次に、前記試料を白金皿に採取し、HFとH2SO4を加えて加熱し、HClで溶解する。さらに、これを純水で希釈した後、原子吸光装置((株)日立製作所製、Z−5300)を用いてカリウムの含有量を酸化物換算基準(K2O)で測定する。
なお、本発明でいう各金属酸化物の含有量は、これらの測定結果から算出された値を示す。
【0067】
(6)粒子の光触媒活性試験
金属酸化物微粒子を含む水分散ゾル(固形分含有量20重量%)0.66gに純水9.34gを混合して調製した、固形分含有量6.6重量%の試料0.33gに、固形分含有量0.02重量%のサンセットイエロー染料のグリセリン溶液9.70gを混合する。次いで、これを長さ1mm、幅1cm、高さ5cmの石英セルに入れて密閉する。次に、I線(波長365nm)の波長域が選択された紫外線ランプ(AS ONE製SLUV−6)を用いて、前記石英セルに照射距離5.5cmから照射強度0.4mW/cm2(波長365nm換算)で180分、紫外線を照射する。
一方、紫外線照射前後において、前記試料の波長490nmにおけるそれぞれの吸光度(A0とA180)を測定して、以下の式から染料の退色変化率を算出する。さらに、以下の基準に基づき粒子の光触媒活性を評価する。
退色変化率(%)=(1−A180/A0)x100
【0068】
評価基準
○:退色変化率が20%未満
△:退色変化率が20%以上〜50%未満
×:退色変化率が50%以上
【0069】
(7)粒子の耐光性試験
金属酸化物微粒子を含む水分散ゾル(固形分含有量20重量%)0.90gに、純水4.50gおよびメタノール12.6gを混合して調製した、固形分含有量1.0重量%の試料18.00gを長さ1mm、幅1cm、高さ5cmの石英セルに入れて密封する。次いで、I線(波長365nm)の波長域が選択された紫外線ランプ(AS ONE製SLUV−6)を用いて、前記石英セルに照射距離5.5cmから照射強度0.4mW/cm2(波長365nm換算)で60分、紫外線を照射する。この紫外線に暴露された前記混合液の色の変化について目視による観測を行い、以下の基準で評価する。
【0070】
評価基準
○:1時間以上で青変色が始まる
△:0.5時間以上〜1時間未満で青変色が始まる
×:0.5時間未満で青変色が始まる
【0071】
(8)塗膜の外観(干渉縞)
内壁が黒色である箱の中に蛍光灯「商品名:メロウ5N」(東芝ライテック(株)製、三波長型昼白色蛍光灯)を取り付け、蛍光灯の光を試料基板のハードコート層膜(前記金属酸化物微粒子を含む)上に形成された反射防止膜表面で反射させ、光の干渉による虹模様(干渉縞)の発生を目視にて確認し、以下の基準で評価する。
S:干渉縞が殆ど無い
A:干渉縞が目立たない
B:干渉縞が認められるが、許容範囲にある
C:干渉縞が目立つ
D:ぎらつきのある干渉縞がある。
【0072】
(9)塗膜の外観(曇り)
内壁が黒色である箱の中に蛍光灯「商品名:メロウ5N」(東芝ライテック(株)製、三波長型昼白色蛍光灯)を取り付け、前記金属酸化物微粒子を含むハードコート層膜を有する試料基板を蛍光灯の直下に垂直に置き、これらの透明度(曇りの程度)を目視にて確認し、以下の基準で評価する。
A:曇りが無い
B:僅かに曇りがある
C:明らかな曇りがある
D:著しい曇りがある。
【0073】
(10)塗膜の耐擦傷性試験
ハードコート層膜を形成した試料基板の表面をボンスタースチールウール♯0000(日本スチールウール(株)製)で手擦りし、傷の入り具合を目視にて判定し、以下の基準で評価する。
A:殆ど傷が入らない
B:若干の傷が入る
C:かなりの傷が入る
D:擦った面積のほぼ全面に傷が入る。
【0074】
(11)塗膜の密着性試験
ハードコート層膜を形成した試料基板のレンズ表面に、ナイフにより1mm間隔で切れ目を入れ、1平方mmのマス目を100個形成し、セロハン製粘着テープを強く押し付けた後、プラスチックレンズ基板の面内方向に対して90度方向へ急激に引っ張り、この操作を合計5回行い、剥離しないマス目の数を数え、以下の基準で評価する。
良好:剥離していないマス目の数が95個以上
不良:剥離していないマス目の数が95個未満。
【0075】
(12)塗膜の耐候性試験
ハードコート層膜を形成した試料基板をキセノンウエザーメーター(スガ試験機(株)製X−75型)で曝露試験をした後、外観の確認および前記の密着性試験と同様の試験を行い、以下の基準で評価する。なお、曝露時間は、反射防止膜を有している基板は200時間、反射防止膜を有していない基板は50時間とする。
良好:剥離していないマス目の数が95個以上
不良:剥離していないマス目の数が95個未満。
【0076】
(13)塗膜の耐光性試験
退色試験用水銀ランプ(東芝(株)製H400−E)により紫外線を50時間照射し、試験前後のレンズ色の目視確認を行い、以下の基準で評価する。なお、ランプと試験片との照射距離は、70mmとし、ランプの出力は、試験片の表面温度が45±5℃となるように調整する。また、この試験は、反射防止膜をハードコート層の表面に施したプラスチックレンズを対象として行ったものである。
○:あまり変色が認められない
△:若干の変色が認められる
×:明らかな変色が認められる。
(14)膜硬度(Bayer値)の測定方法
磨耗試験機BTM(米コルツ社製)およびヘーズ値測定装置(NIPPON DENSGOKU製NDH2000)を使用し、実施例の調製例にて作成した被試験レンズと、基準レンズとのヘーズ値の変化によりBayer値を測定する。基準レンズは市販のプラスチックレンズ基材CR−39基材(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、PPG社製モノマー使用、基材の屈折率1.60)を使用し、まずそれぞれのヘーズ値を測定する。基準レンズの初期ヘーズ値をD(std0)、被試験レンズの初期ヘーズ値をD(test0)とする。それぞれのレンズを耐摩耗性試験機パンに設置し、その上に研磨材(専用砂)500gを充填し、600回左右に振動させ試験を行う。試験後の基準レンズの初期ヘーズ値をD(stdf)、被試験レンズの初期ヘーズ値をD(testf)とする。Bayer試験値(R)は以下の数式から算出する。
R=[D(stdf)−D(std0)]/[D(testf)−D(test0)]
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。しかし、本発明は、これらの実施例に記載された範囲に限定されるものではない。
【0078】
[実施例1]
核微粒子の水分散ゾル(P−1)の調製
四塩化チタン(大阪チタニウムテクノロジーズ(株)製)をTiO2換算基準で7.75重量%含む四塩化チタン水溶液7.63kgと、アンモニアを15重量%含むアンモニア水(宇部興産(株)製)2.96kgとを混合し、pH9.5の白色スラリー液を調製した。次いで、このスラリーを濾過した後、イオン交換水で洗浄して、固形分含有量が10重量%の含水チタン酸ケーキ6.22kgを得た。
次に、このケーキに、過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製)7.11kgとイオン交換水20.00kgとを加えた後、80℃の温度で1時間、撹拌下で加熱し、さらにイオン交換水28.89kgを加えて、過酸化チタン酸をTiO2換算基準で1重量%含む過酸化チタン酸水溶液を62.22kg得た。この過酸化チタン酸水溶液は、透明な黄褐色でpHは8.5であった。
【0079】
次いで、前記過酸化チタン酸水溶液62.22kgに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)3.00kgを混合して、これに、スズ酸カリウム(昭和化工(株)製)をSnO2換算基準で1重量%含むスズ酸カリウム水溶液7.78kgを撹拌下で徐々に添加した。
次に、カリウムイオンなどを取り込んだ陽イオン交換樹脂を分離した後、オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、120L)中で165℃の温度で18時間、加熱した。
【0080】
次に、得られた混合水溶液を室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、ACV−3010)で濃縮して、固形分含有量が10重量%の核微粒子の水分散液7.00kgを得た。
このようにして得られた金属酸化物微粒子を含む水分散ゾルは透明な乳白色であった。
さらに、この金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO287.5重量%、SnO210.6重量%およびK2O1.8重量%であった。さらに、平均粒子径が18nmで、比表面積が161m2/gで、電荷密度が1.447μeq/m2であった。さらに、この金属酸化物微粒子のX線回折ではルチル型結晶であり、結晶子径は9.1nmであった。
【0081】
表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)の調製
上記で得られた核微粒子の水分散ゾル(P−1)7.00kgに、水酸化カリウム水溶液でpHを7.0に調整しながらZrO2重量換算で3.6%濃度のオキシ塩化ジルコニウム八水和物水溶液1.53kgを徐々に添加し、40℃にて1時間で攪拌混合してジルコニウムで表面処理された金属酸化物微粒子の水分散液を得た。このとき、ジルコニウムの量は核微粒子中に含まれる金属元素に対して酸化物換算基準で5.0モル%であった。
【0082】
次いで、上述のジルコニウム表面処理金属酸化物微粒子の水分散液8.53kgをスプレードライヤー(NIRO社製NIRO ATOMIZER)に供して噴霧乾燥した。これにより、平均粒子径が約2μmの表面処理金属酸化物微粒子からなる乾燥粉体0.92kgを得た。
【0083】
次に、上記で得られた表面処理金属酸化物微粒子の乾燥粉体0.92kgを、空気雰囲気下、500℃の温度にて2時間焼成して、表面処理金属酸化物微粒子の焼成粉体0.85kgを得た。
上記で得られた表面処理金属酸化物微粒子の焼成粉体0.20kgを純水0.18kgに分散させ、これに、濃度28.6%の酒石酸水溶液0.13kg、濃度50重量%のKOH水溶液0.06kgを加えて充分攪拌した。ついで、粒子径0.1mmのアルミナビーズ(大明化学工業(株)製 高純度アルミナビース)を加え、これを湿式粉砕機(カンペ(株)製バッチ式卓上サンドミル)に供して180分間、前記チタニア系複合酸化物微粒子の焼成粉体の粉砕及び分散処理を行った。その後、アルミナビーズを目開き44μmのステンレス製フィルターを用いて分離・除去したのち、さらに純水1.36kgを添加して撹拌し、固形分含有量が11重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散液1.72kgを得た。
【0084】
ついで、限外濾過膜を用いてイオン交換水で洗浄した後、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SANUPC)0.09kgを加えて脱イオン処理をした後、遠心分離機(日立工機(株)製CR−21G)に供して12,000rpmの速度で1時間処理した後、イオン交換水を添加して固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)1.87kgを調製した。
前記表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾルに含まれる微粒子の比表面積は144m2/gで、ルチル型結晶でありその結晶子径は9.1nmであった。さらに、固体酸は0.180mmol/gであった。
さらに、この表面処理金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO282.6重量%、SnO210.3重量%、ZrO24.9重量%およびK2O2.2重量%であった。
【0085】
コアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)の調製
過酸化ジルコン酸水溶液の調製
オキシ塩化ジルコニウム(太陽鉱工(株)製)をZrO2換算基準で2.0重量%含むオキシ塩化ジルコニウム水溶液13.16kgに、アンモニアを15.0重量%含むアンモニア水を撹拌下で徐々に添加して、ジルコニウムの水和物を含むpH8.5のスラリー液を得た。次いで、このスラリーを濾過した後、純水で洗浄して、ジルコニウム成分をZrO2換算基準で10.0重量%のケーキ2.50kgを得た。
次に、このケーキ72.0gに純水0.65kgを加え、さらに水酸化カリウム(関東化学(株)製)を10.0重量%含む水酸化カリウム水溶液43.2gを加えてアルカリ性にした後、過酸化水素を35.0重量%含む過酸化水素水144.0gを加えて、50℃の温度に加熱してこのケーキを溶解した。さらに純水0.53kgを加えて、過酸化ジルコン酸をZrO2に換算基準で0.5重量%含む過酸化ジルコン酸水溶液1.44kgを得た。なお、この過酸化ジルコン酸水溶液のpHは、12であった。
【0086】
珪酸液の調製
一方、市販の水ガラス(AGCエスアイテック(株)製)0.31kgを純水にて希釈したのち、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)を用いて脱アルカリして、珪酸をSiO2換算基準で2.0重量%含む珪酸水溶液3.00kgを得た。なお、この珪酸水溶液のpHは、2.3であった。
【0087】
コアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)の調製
前記で調製された表面処理金属酸化物微粒子ST−1の水分散ゾル(固形分含有量が2.0重量%)1.80kgに純水3.30kgを加えて撹拌して90℃の温度に加熱したのち、これに前記過酸化ジルコン酸水溶液1.44kgと珪酸水溶液1.08kgを徐々に添加し、さらに添加終了後、90℃の温度に保ちながら攪拌下で1時間熟成した。このとき、前記表面処理粒子を被覆する複合酸化物の量は、該表面処理粒子100重量部に対して25重量部であった。
次いで、この混合液をオートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、50L)に入れて、165℃の温度で18時間、加熱処理を行った。
【0088】
次に、得られた混合溶液を室温まで冷却してから、限外濾過膜(旭化成(株)製、SIP−1013)を用いて濃縮して固形分含有量が10.0重量%の水分散ゾルを調製した。
これにより、前記表面処理金属酸化物微粒子の表面をケイ素とジルコニウムとを含む複合酸化物で被覆してなる金属酸化物微粒子(以下、「CST−1」という。)を含む水分散ゾル0.64kgを得た。
【0089】
このようにして得られた金属酸化物微粒子を含む水分散ゾルは透明な乳白色であった。
さらに、この金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO265.2重量%、SnO28.0重量%、SiO213.9重量%、ZrO29.4重量%およびK2O3.3重量%であった。さらに、平均粒子径が19nmで、比表面積が172m2/gで、電荷密度が1.37μeq/m2であった。さらに、固体酸は0.034mmol/gであった。
上記の測定結果のうち、本発明に関係する主要データを表1に示す。
【0090】
コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−1−M)の調製
上記で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CST−1)0.64kgに陽イオン交換樹脂9.6gを攪拌下で添加して後、樹脂を分離して脱イオンされたコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液を調製した。ついで、上記脱イオンされたコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液を、表面処理剤としてのテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製)42.9gを溶解させたメタノール溶液0.64kgに撹拌下で添加した後、50℃の温度で6時間、加熱した。
ついで、冷却した後に限外濾過膜装置(旭化成(株)製濾過膜、SIP−1013)を用いて分散媒を水からメタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)に置換してコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)0.32kgを得た。その結果、得られたメタノール分散液中に含まれる固形分濃度は約30重量%であり、また水分含有量は約0.3重量%であった。
【0091】
また、このコアシェル型無機酸化物微粒子の単位表面積あたりの負電荷量は1.32μeq/m2であった。
このコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散液の光触媒活性試験を行ったところ、退色変化率は2%で、評価は○であった。さらに、耐光性評価を行ったところ、評価は○であった。
【0092】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6040)89.2gおよびメタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)15.8gの混合液を入れた容器を用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液30.4gを滴下した。更に、この混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、メタノール131.5g、上記で調製した固形分濃度30重量%のコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)300.2g、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル(ダウケミカル製)24.2g、トリス(2,4-ペンタンジオナト)アルミニウムIII(東京化成工業(株)製)1.8gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.2gを加え、室温で一昼夜攪拌して、光学基材用塗料組成物としてのハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)を調製した。
【0093】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H10)の調製
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6040)79.2gおよびメタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)14.0gの混合液を入れた容器を用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液27.0gを滴下した。更に、この混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、メタノール113.8g、上記で調製した固形分濃度30重量%のコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)333.4g、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル(ダウケミカル製)24.2g、トリス(2,4-ペンタンジオナト)アルミニウムIII(東京化成工業(株)製)1.8gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.7gを加え、室温で一昼夜攪拌して、光学基材用塗料組成物としてのハードコート層膜形成用塗料組成物(H10)を調製した。
【0094】
プライマー層膜形成用塗料組成物(P1)の調製
市販の熱可塑性樹脂であるポリウレタンエマルジョン「スーパーフレックス150」(第一工業製薬製、水分散型ウレタンエラストマー固形分含有量30%)162.8gを入れた容器を用意し、これに、コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)206.7gおよびイオン交換水96.9gを加えて、1時間攪拌した。
次いで、これらの混合液に、メタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)528.8g、更にレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7604)0.3gを加えて、室温で一昼夜攪拌して、プライマー層膜形成用塗料組成物(P1)を調製した。
【0095】
プライマー層膜形成用塗料組成物(P2)の調製
市販の熱可塑性樹脂であるポリウレタンエマルジョン「スーパーフレックス150」(第一工業製薬製、水分散型ウレタンエラストマー固形分含有量30%)140.0gを入れた容器を用意し、これに、コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)229.5gおよびイオン交換水96.9gを加えて、1時間攪拌した。
次いで、これらの混合液に、メタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)531.1g、更にレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7604)0.3gを加えて、室温で一昼夜攪拌して、プライマー層膜形成用塗料組成物(P2)を調製した。
【0096】
[実施例2]
表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−2)の調製
実施例1の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)を調製する工程において、ZrO2重量換算で3.6%濃度のオキシ塩化ジルコニウム八水和物水溶液1.53kgを徐々に添加するかわりに、ZrO2重量換算で3.6%濃度のオキシ塩化ジルコニウム八水和物水溶液0.31kgを徐々に添加する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−2)1.87kgを調製した。このとき、ジルコニウムの量は核微粒子中に含まれる金属元素に対して酸化物換算基準で1.0モル%であった。
前記表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾルに含まれる微粒子の比表面積は144m2/gで、ルチル型結晶でありその結晶子径は9.9nmであった。さらに、固体酸は0.146mmol/gであった。
さらに、この表面処理金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO286.1重量%、SnO210.4重量%、ZrO21.5重量%およびK2O2.0重量%であった。
【0097】
コアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−2)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)を調製する工程において、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)1.80kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−2)1.80kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−2)0.64kgを調製した。
このようにして得られた金属酸化物微粒子を含む水分散ゾルは透明な乳白色であった。
さらに、この金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO268.4重量%、SnO28.3重量%、SiO215.2重量%、ZrO25.2重量%およびK2O2.9重量%であった。さらに、平均粒子径が19nmで、比表面積が175m2/gで、電荷密度が1.29μeq/m2であった。さらに、固体酸は0.028mmol/gであった。
上記の測定結果のうち、本発明に関係する主要データを表1に示す。
【0098】
コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−2−M)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−1−M)を調製する工程において、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)0.64kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−2)0.64kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度20重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−2−M)0.32kgを調製した。
【0099】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H2)の調製
実施例1のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)を調製する工程において、コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)300.2gのかわりにコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−2−M)297.9gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H2)を調製した。
【0100】
[実施例3]
表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−3)の調製
実施例1の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)を調製する工程において、ZrO2重量換算で3.6%濃度のオキシ塩化ジルコニウム八水和物水溶液1.53kgを徐々に添加するかわりに、ZrO2重量換算で3.6%濃度のオキシ塩化ジルコニウム八水和物水溶液3.06kgを徐々に添加する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−3)1.87kgを調製した。このとき、ジルコニウムの量は核微粒子中に含まれる金属元素に対して酸化物換算基準で10.0モル%であった。
前記表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾルに含まれる微粒子の比表面積は158m2/gで、ルチル型結晶でありその結晶子径は8.6nmであった。さらに、固体酸は0.151mmol/gであった。
さらに、この表面処理金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO275.2重量%、SnO29.1重量%、ZrO213.6重量%およびK2O2.1重量%であった。
【0101】
コアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−3)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)を調製する工程において、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)1.80kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−3)1.80kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−3)0.64kgを調製した。
このようにして得られた金属酸化物微粒子を含む水分散ゾルは透明な乳白色であった。
さらに、この金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO259.7重量%、SnO27.3重量%、SiO215.2重量%、ZrO214.9重量%およびK2O2.9重量%であった。さらに、平均粒子径が19nmで、比表面積が163m2/gで、電荷密度が1.48μeq/m2であった。さらに、固体酸は0.029mmol/gであった。
上記の測定結果のうち、本発明に関係する主要データを表1に示す。
【0102】
コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−3−M)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−1−M)を調製する工程において、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)0.64kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−3)0.64kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度20重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−3−M)0.32kgを調製した。
【0103】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H3)の調製
実施例1のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)を調製する工程において、コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)300.2gのかわりにコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−3−M)300.6gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H3)を調製した。
【0104】
[実施例4]
表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−4)の調製
実施例1の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)を調製する工程において、ZrO2重量換算で3.6%濃度のオキシ塩化ジルコニウム八水和物水溶液1.53kgを徐々に添加するかわりに、SnO2重量換算で9.9%濃度のスズ酸カリウム三水和物水溶液0.66kgを徐々に添加する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−4)1.87kgを調製した。このとき、スズの量は核微粒子中に含まれる金属元素に対して酸化物換算基準で5.0モル%であった。
前記表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾルに含まれる微粒子の比表面積は147m2/gで、ルチル型結晶でありその結晶子径は8.6nmであった。さらに、固体酸は0.050mmol/gであった。
さらに、この表面処理金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO280.2重量%、SnO216.2重量%およびK2O3.6重量%であった。
【0105】
コアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−4)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)を調製する工程において、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)1.80kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−4)1.80kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−4)0.64kgを調製した。
このようにして得られた金属酸化物微粒子を含む水分散ゾルは透明な乳白色であった。
さらに、この金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO263.4重量%、SnO212.8重量%、SiO215.9重量%、ZrO23.3重量%およびK2O4.6重量%であった。さらに、平均粒子径が19nmで、比表面積が175m2/gで、電荷密度が1.11μeq/m2であった。さらに、固体酸は0.009mmol/gであった。
上記の測定結果のうち、本発明に関係する主要データを表1に示す。
【0106】
コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−4−M)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−1−M)を調製する工程において、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)0.64kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−4)0.64kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度20重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−4−M)0.32kgを調製した。
【0107】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H4)の調製
実施例1のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)を調製する工程において、コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)300.2gのかわりにコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−4−M)296.7gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H4)を調製した。
【0108】
[実施例5]
核微粒子の水分散ゾル(P−2)の調製
四塩化チタン(大阪チタニウムテクノロジ-ズ(株)製)をTiO2換算基準で7.75重量%含む四塩化チタン水溶液6.56kgと、アンモニアを15重量%含むアンモニア水(宇部興産(株)製)2.54kgとを混合し、pH9.5の白色スラリー液を調製した。次いで、このスラリーを濾過した後、イオン交換水で洗浄して、固形分含有量が10重量%の含水チタン酸ケーキ5.35kgを得た。
次に、このケーキに、過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製)6.12kgとイオン交換水20.00kgとを加えた後、80℃の温度で1時間、撹拌下で加熱し、さらにイオン交換水22.04kgを加えて、過酸化チタン酸をTiO2換算基準で1重量%含む過酸化チタン酸水溶液を53.51kg得た。この過酸化チタン酸水溶液は、透明な黄褐色でpHは8.5であった。
【0109】
次いで、前記過酸化チタン酸水溶液53.51kgに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)2.60kgを混合して、これに、スズ酸カリウム(昭和化工(株)製)をSnO2換算基準で1重量%含むスズ酸カリウム水溶液6.69kgを撹拌下で徐々に添加した。
次に、カリウムイオンなどを取り込んだ陽イオン交換樹脂を分離した後、平均粒子径が7nmのシリカ微粒子を15重量%含むシリカゾル(日揮触媒化成(株)製)0.65kgとイオン交換水9.15kgとを混合して、オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、120L)中で165℃の温度で18時間、加熱した。
【0110】
次に、得られた混合水溶液を室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、ACV−3010)で濃縮して、固形分含有量が10重量%の核微粒子の水分散ゾル7.00kgを得た。
このようにして得られた金属酸化物微粒子を含む水分散ゾルは透明な乳白色であった。
さらに、この金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO271.9重量%、SnO29.1重量%、SiO217.4重量%およびK2O1.6重量%であった。さらに、平均粒子径が13nmで、比表面積が218m2/gで、電荷密度が1.147μeq/m2であった。さらに、この金属酸化物微粒子のX線回折ではルチル型結晶であり、結晶子径は7.1nmであった。
【0111】
表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−5)の調製
実施例1の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)を調製する工程において、核微粒子の水分散ゾル(P−1)7.00kgを使用するかわりに、核微粒子の水分散ゾル(P−2)7.00kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−5)1.87kgを調製した。
前記表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾルに含まれる微粒子の比表面積は192m2/gで、ルチル型結晶でありその結晶子径は8.9nmであった。さらに、固体酸は0.112mmol/gであった。
さらに、この表面処理金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO267.0重量%、SnO28.4重量%、SiO218.3重量%、ZrO24.8重量%およびK2O1.5重量%であった。
【0112】
コアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−5)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)を調製する工程において、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)1.80kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−5)1.80kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−5)0.64kgを調製した。
このようにして得られた金属酸化物微粒子を含む水分散ゾルは透明な乳白色であった。
さらに、この金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO253.6重量%、SnO26.7重量%、SiO229.7重量%、ZrO27.5重量%およびK2O2.6重量%であった。さらに、平均粒子径が14nmで、比表面積が221m2/gで、電荷密度が1.17μeq/m2であった。さらに、固体酸は0.021mmol/gであった。
上記の測定結果のうち、本発明に関係する主要データを表1に示す。
【0113】
コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−5−M)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−1−M)を調製する工程において、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)0.64kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−5)0.64kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度20重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−5−M)0.32kgを調製した。
【0114】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H5)の調製
実施例1のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)を調製する工程において、コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)300.2gのかわりにコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−5−M)314.5gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H5)を調製した。
【0115】
[実施例6]
コアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−6)の調製
ケイ酸液の調製
市販の水ガラス(AGCエスアイテック(株)製)0.31kgを純水にて希釈したのち、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)を用いて脱アルカリして、ケイ酸をSiO2換算基準で2.0重量%含むケイ酸液3.00kgを得た。なお、このケイ酸液のpHは、2.3であった。
【0116】
工程(1)
実施例1と同様に調製された表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)(固形分含有量が10.0重量%)1.80kgにイオン交換水4.74kgを加えて、撹拌しながら90℃の温度に加熱したのち、これに前記ケイ酸液1.08kgおよびAl23換算基準で0.67重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液1.07kgのそれぞれを同時に4時間かけて徐々に添加し混合した。前記ケイ酸液に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、前記アルミン酸ナトリウム水溶液に含まれるアルミニウム成分をAl23で表したとき、酸化物換算基準の重量比はSiO2/Al23=4.0であった。また、シェルの被覆量は核微粒子100重量部に対して25重量部であった。
【0117】
工程(2)
次に、上記工程により調製された混合液を90℃の温度に保ちながら1時間攪拌することによって、表面処理金属酸化物微粒子をケイ素とアルミニウムからなる複合酸化物で被覆したコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散液を得た。
【0118】
工程(3)
次いで、上記工程により得られたコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散液に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製ダイアイオンSK1BH)0.06kgを混合してpH3.5に調整した後、樹脂を分離せず、攪拌下で80℃に保ちながら7時間熟成した。その後、前記陽イオン交換樹脂を目開き44μmのステンレス製フィルターを用いて分離・除去したのち、固形分含有量が0.85重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散液7.62kgを得た。
次に、得られたコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液を室温まで冷却してから、限外濾過膜(旭化成(株)製、SIP−1013)を用いて濃縮して固形分含有量が10.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(以下、「CST−6」という)1.07kgを調製した。
【0119】
上記コアシェル型無機酸化物微粒子の水分散液(CST−6)に含まれるコアシェル型無機酸化物微粒子中の金属元素の含有量を測定したところ、各金属元素の酸化物換算基準で、TiO267.1重量%、SnO28.7重量%、ZrO24.9重量%、SiO217.0重量%、Al231.8重量%、Na2O0.4重量%およびK2O0.2重量%であった。なお、シェルのSiO2/Al23は6.6であった。また、前記コアシェル型無機酸化物微粒子の平均粒子径は19nm、比表面積は172m2/g、電荷密度は1.37μeq/m2であった。さらに、固体酸量は0.034mmol/gであった。
【0120】
コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−6−M)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−1−M)を調製する工程において、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)0.64kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−6)0.64kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度20重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−6−M)0.32kgを調製した。
【0121】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H6)の調製
実施例1のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)を調製する工程において、コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)300.2gのかわりにコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−6−M)281.3gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H6)を調製した。
【0122】
[実施例7]
表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−7)の調製
実施例4の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−4)を調製する工程において、核微粒子の水分散ゾル(P−1)7.00kgを使用するかわりに、核微粒子の水分散ゾル(P−2)7.00kgを使用する以外は実施例4と同様の方法で、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−7)1.87kgを調製した。
前記表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾルに含まれる微粒子の比表面積は218m2/gで、ルチル型結晶でありその結晶子径は7.1nmであった。さらに、固体酸は0.048mmol/gであった。
さらに、この表面処理金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO267.0重量%、SnO213.2重量%、SiO218.3重量%およびK2O1.5重量%であった。
【0123】
コアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−7)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)を調製する工程において、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)1.80kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−7)1.80kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−7)0.64kgを調製した。
このようにして得られた金属酸化物微粒子を含む水分散ゾルは透明な乳白色であった。
さらに、この金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO253.6重量%、SnO211.5重量%、SiO229.7重量%、ZrO22.7重量%およびK2O2.55重量%であった。さらに、平均粒子径が14nmで、比表面積が220m2/gで、電荷密度が1.20μeq/m2であった。さらに、固体酸は0.007mmol/gであった。
上記の測定結果のうち、本発明に関係する主要データを表1に示す。
【0124】
コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−7−M)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−1−M)を調製する工程において、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)0.64kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−7)0.64kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度20重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−7−M)0.32kgを調製した。
【0125】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H7)の調製
実施例1のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)を調製する工程において、コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)300.2gのかわりにコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−7−M)315.4gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H7)を調製した。
【0126】
[実施例8]
表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−8)の調製
実施例7の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−7)を調製する工程において、スズ酸カリウム三水和物水溶液0.70kgを添加するかわりに、スズ酸カリウム三水和物水溶液1.40kgを添加する以外は実施例7と同様の方法で、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−8)1.87kgを調製した。
前記表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾルに含まれる微粒子の比表面積は192m2/gで、ルチル型結晶でありその結晶子径は8.9nmであった。さらに、固体酸は0.046mmol/gであった。
さらに、この表面処理金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO263.3重量%、SnO217.7重量%、SiO215.6重量%およびK2O3.2重量%であった。
【0127】
コアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−8)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)を調製する工程において、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)1.80kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−8)1.80kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−8)0.64kgを調製した。
このようにして得られた金属酸化物微粒子を含む水分散ゾルは透明な乳白色であった。
さらに、この金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO252.5重量%、SnO210.5重量%、SiO229.6重量%、ZrO22.7重量%およびK2O4.7重量%であった。さらに、平均粒子径が14nmで、比表面積が218m2/gで、電荷密度が1.22μeq/m2であった。さらに、固体酸は0.006mmol/gであった。
上記の測定結果のうち、本発明に関係する主要データを表*に示す。
【0128】
コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−8−M)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−1−M)を調製する工程において、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)0.64kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−8)0.64kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度20重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−8−M)0.32kgを調製した。
【0129】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H8)の調製
実施例1のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)を調製する工程において、コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)300.2gのかわりにコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−8−M)317.0gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H8)を調製した。
【0130】
[実施例9]
コアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−9)の調製
実施例6のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−6)を調製する工程において、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−6)1.80kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−7)1.80kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−9)0.64kgを調製した。
このようにして得られた金属酸化物微粒子を含む水分散ゾルは透明な乳白色であった。
さらに、この金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO253.5重量%、SnO211.8重量%、SiO232.4重量%、Al231.8重量%、Na2O0.4重量%およびK2O0.2重量%であった。さらに、平均粒子径が14nmで、比表面積が219m2/gで、電荷密度が1.22μeq/m2であった。さらに、固体酸は0.008mmol/gであった。
上記の測定結果のうち、本発明に関係する主要データを表1に示す。
【0131】
コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−9−M)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−1−M)を調製する工程において、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)0.64kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−9)0.64kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度20重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−9−M)0.32kgを調製した。
【0132】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H9)の調製
実施例1のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)を調製する工程において、コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)300.2gのかわりにコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−9−M)314.3gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H9)を調製した。
【0133】
[比較例1]
無機酸化物微粒子の水分散ゾル(RC−1)の調製
実施例1においてシリカおよびジルコニウムで被覆することなく、表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)をそのまま用いて、固形分濃度10重量%の無機酸化物微粒子の水分散ゾル(RC−1)0.64kgを調製した。
このようにして得られた金属酸化物微粒子を含む水分散ゾルは透明な乳白色であった。
さらに、この金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO282.6重量%、SnO210.3重量%、ZrO24.9重量%およびK2O2.2重量%であった。さらに、平均粒子径が18nmで、比表面積が144m2/gで、電荷密度が1.95μeq/m2であった。さらに、固体酸は0.180mmol/gであった。
上記の測定結果のうち、本発明に関係する主要データを表1に示す。
【0134】
コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(RC−1−M)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−1−M)を調製する工程において、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)0.64kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%の無機酸化物微粒子の水分散ゾル(RC−1)0.64kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度20重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(RC−1−M)0.32kgを調製したが、直後にゲル化した。
【0135】
[比較例2]
表面処理無金属酸化物微粒子の水分散ゾル(R−2)の調製
実施例1の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)を調製する工程において、オキシ塩化ジルコニウム八水和物水溶液1.53kgを添加しない以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度10重量%の表面処理しない金属酸化物微粒子の水分散ゾル(R−2)1.87kgを調製した。
前記表面処理無金属酸化物微粒子の水分散ゾルに含まれる微粒子の比表面積は153m2/gで、ルチル型結晶でありその結晶子径は9.0nmであった。さらに、固体酸は0.180mmol/gであった。
さらに、この表面処理無金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO288.2重量%、SnO211.1重量%およびK2O0.7重量%であった。
【0136】
コアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(RC−2)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)を調製する工程において、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)1.80kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%の表面処理無金属酸化物微粒子の水分散ゾル(R−2)1.80kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(RC−2)0.64kgを調製した。
このようにして得られた金属酸化物微粒子を含む水分散ゾルは透明な乳白色であった。
さらに、この金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO270.1重量%、SnO28.8重量%、SiO215.5重量%、ZrO23.87重量%およびK2O1.7重量%であった。さらに、平均粒子径が19nmで、比表面積が168m2/gで、電荷密度が0.80μeq/m2であった。さらに、固体酸は0.065mmol/gであった。
上記の測定結果のうち、本発明に関係する主要データを表1に示す。
【0137】
コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(RC−2−M)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−1−M)を調製する工程において、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)0.64kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(RC−2)0.64kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度20重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(RC−2−M)0.32kgを調製した。
【0138】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(C2)の調製
実施例1のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)を調製する工程において、コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)300.2gのかわりにコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RC−2−M)298.6gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(C2)を調製した。
【0139】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(C5)の調製
実施例1のハードコート層膜形成用塗料組成物(H10)を調製する工程において、コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)333.4gのかわりにコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RC−2−M)333.4gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H10)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(C5)を調製した。
【0140】
プライマー層膜形成用塗料組成物(Y2)の調製
実施例1のプライマー層膜形成用塗料組成物(P1)を調製する工程において、コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)298.6gのかわりにコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RC−2−M)206.7gを用いた以外は実施例1に記載のプライマー層膜形成用塗料組成物(P1)の調製と同様の方法でプライマー層膜形成用塗料組成物(Y2)を調製した。
【0141】
プライマー層膜形成用塗料組成物(Y3)の調製
実施例1のプライマー層膜形成用塗料組成物(P2)を調製する工程において、コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)229.5gのかわりにコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RC−2−M)229.5gを用いた以外は実施例1に記載のプライマー層膜形成用塗料組成物(P2)の調製と同様の方法でプライマー層膜形成用塗料組成物(Y3)を調製した。
【0142】
[比較例3]
表面処理無金属酸化物微粒子の水分散ゾル(R−3)の調製
実施例5の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−5)を調製する工程において、オキシ塩化ジルコニウム八水和物水溶液1.53kgを添加しない以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度10重量%の表面処理しない金属酸化物微粒子の水分散ゾル(R−3)1.87kgを調製した。
前記表面処理無金属酸化物微粒子の水分散ゾルに含まれる微粒子の比表面積は210m2/gで、ルチル型結晶でありその結晶子径は7.1nmであった。さらに、固体酸は0.266mmol/gであった。
さらに、この表面処理無金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO271.9重量%、SnO29.1重量%、SiO217.4重量%およびK2O1.6重量%であった。
【0143】
コアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(RC−3)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)を調製する工程において、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)1.80kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%の表面処理無金属酸化物微粒子の水分散ゾル(R−3)1.80kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(RC−3)0.64kgを調製した。
このようにして得られた金属酸化物微粒子を含む水分散ゾルは透明な乳白色であった。
さらに、この金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO257.1重量%、SnO27.3重量%、SiO226.9重量%、ZrO24.69重量%およびK2O4.0重量%であった。さらに、平均粒子径が14nmで、比表面積が218m2/gで、電荷密度が0.80μeq/m2であった。さらに、固体酸は0.089mmol/gであった。
上記の測定結果のうち、本発明に関係する主要データを表1に示す。
【0144】
コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(RC−3−M)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−1−M)を調製する工程において、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)0.64kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(RC−3)0.64kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度20重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(RC−3−M)0.32kgを調製した。
【0145】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(C3)の調製
実施例1のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)を調製する工程において、コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)300.2gのかわりにコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RC−3−M)314.6gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(C3)を調製した。
【0146】
[比較例4]
表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(R−4)の調製
実施例1の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)を調製する工程において、オキシ塩化ジルコニウム八水和物水溶液1.53kgを添加するかわりに、オキシ塩化ジルコニウム八水和物水溶液9.17kgを添加する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(R−4)1.87kgを調製した。
前記表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾルに含まれる微粒子の比表面積は121m2/gで、ルチル型結晶でありその結晶子径は9.1nmであった。さらに、固体酸は0.072mmol/gであった。
さらに、この表面処理金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO261.6重量%、SnO27.7重量%、ZrO229.3重量%およびK2O1.4重量%であった。
【0147】
コアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(RC−4)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)を調製する工程において、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(ST−1)1.80kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%の表面処理金属酸化物微粒子の水分散ゾル(R−4)1.80kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(RC−4)0.64kgを調製した。
このようにして得られた金属酸化物微粒子を含む水分散ゾルは透明な乳白色であった。
さらに、この金属酸化物微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO248.8重量%、SnO26.1重量%、SiO215.7重量%、ZrO227.0重量%およびK2O2.4重量%であった。さらに、平均粒子径が28nmで、比表面積が151m2/gで、電荷密度が0.74μeq/m2であった。さらに、固体酸は0.041mmol/gであった。
上記の測定結果のうち、本発明に関係する主要データを表1に示す。
【0148】
コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(RC−4−M)の調製
実施例1のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(CST−1−M)を調製する工程において、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(CST−1)0.64kgを使用するかわりに、固形分濃度10重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子の水分散ゾル(RC−4)0.64kgを使用する以外は実施例1と同様の方法で、固形分濃度20重量%のコアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル(RC−4−M)0.32kgを調製した。
【0149】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(C4)の調製
実施例1のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)を調製する工程において、コアシェル型無機酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)300.2gのかわりにコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RC−4−M)303.6gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(C4)を調製した。
【0150】
[実施例10]
試験用プラスチックレンズ基板(試験片)の作成
(1)プラスチックレンズ基材の前処理
市販のプラスチックレンズ基材「モノマー名:MR−7」(三井化学(株)製、基材の屈折率1.67)および「モノマー名:MR−174」(三井化学(株)製、基材の屈折率1.74)を、40℃に保った10重量%濃度のKOH水溶液に2分間浸漬してエッチング処理を行った。更に、これらを取り出して水洗したのち、十分に乾燥させた。
【0151】
(2)プライマー層膜の形成
前処理を行ったプラスチックレンズ基材にプライマー層膜形成用塗料組成物をそれぞれ塗布して塗膜を形成した。なお、この塗料組成物の塗布は、ディッピング法(引き上げ速度120mm/分)を用いて行った。
次に、前記塗膜を100℃で10分間、加熱処理して、塗膜(プライマー層)の予備乾燥を行った。
このようにして形成された前記プライマー層の予備硬化後の膜厚は、概ね0.5〜0.7μmであった。
【0152】
(3)ハードコート層膜の形成
前記前処理を行ったプラスチックレンズ基材、またはプライマー層膜を形成したプラスチックレンズ基材の表面に、ハードコート層膜形成用の塗料組成物を塗布して塗膜を形成した。なお、この塗料組成物の塗布は、ディッピング法(引き上げ速度250mm/分)を用いて行った。
次に、前記塗膜を90℃で10分間、乾燥させた後、110℃で2時間、加熱処理して、塗膜(ハードコート層)の硬化を行った。この際、前記プライマー層の本硬化も同時に行った。
なお、このようにして形成された前記ハードコート層膜の硬化後の膜厚は、概ね3.0〜3.5μmであった。
【0153】
(4)反射防止膜層の形成
前記ハードコート層膜の表面に、以下に示す構成の無機酸化物成分を真空蒸着法によって蒸着させた。ここでは、ハードコート層側から大気側に向かって、SiO2:0.06λ、ZrO2:0.15λ、SiO2:0.04λ、ZrO2:0.25λ、SiO2:0.25λの順序で積層された反射防止層膜の層をそれぞれ形成した。また、設計波長λは、520nmとした。
【0154】
外観、耐擦傷性、密着性、耐候性の評価
実施例1〜9、比較例2〜4で得られたハードコート層膜形成用の塗料組成物H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9,C2,C3、C4と、プライマー層膜形成用塗料組成物P1およびY2を用いて、表2に示す組み合わせで前処理を行ったプラスチックレンズ基材上にプライマー層膜およびハードコート層膜を形成して試験片1〜12を作製した。
【0155】
なお、プライマー層膜形成用塗料組成物P1とハードコート層膜形成用塗料組成物H1を塗布し反射防止層膜を形成した試験片13の基材、および、プライマー層膜形成用塗料組成物Y2とハードコート層膜形成用塗料組成物C2を塗布し反射防止層膜を形成した試験片14を作成した。
【0156】
さらに、プライマー層膜形成用塗料組成物P2とハードコート層膜形成用塗料組成物H10を塗布し反射防止層膜を形成した試験片15の基材、および、プライマー層膜形成用塗料組成物Y3とハードコート層膜形成用塗料組成物C5を塗布し反射防止層膜を形成した試験片16の基材としては「モノマー名:MR−174」(三井化学(株)製、基材の屈折率1.74)を用い、それ以外の試験片の基材には「モノマー名:MR−7」(三井化学(株)製、基材の屈折率1.67)を用いた。
【0157】
このようにして得られた試験片1〜16について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、膜硬度、密着性、耐候性、耐光性を試験して評価した。その結果を表3に示す。
この結果から明らかなように、実施例で作成した塗料組成物を塗布して得られた試験片では耐擦傷性が比較的高いとともに、曇りがなく透明度が高いことがわかった。また、密着性、耐候性および耐光性が高いことがわかった。
【0158】
【表1】

【0159】
【表2】

【0160】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタニウムを含む金属酸化物微粒子を核粒子として、その表面をジルコニウム、スズ、ニオブ、バリウム、ランタニウム、ストロンチウム、セリウム、リチウムから選ばれた1種または2種以上からなる金属元素の水和物および/または酸化物で処理した表面処理粒子の表面を、さらにケイ素と、アルミニウム、ジルコニウム、アンチモンから選ばれた1種または2種以上からなる金属元素との複合酸化物で被覆してなることを特徴とするコアシェル型無機酸化物微粒子を含む分散液。
【請求項2】
前記核粒子がチタニウムをTiO2換算基準で50〜100重量%の範囲で含む金属酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
前記核粒子が、チタニウムと、スズ、ケイ素、ジルコニウムから選ばれた1種以上の金属元素との複合酸化物を含む金属酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の分散液。
【請求項4】
前記核粒子が、結晶性の金属酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分散液。
【請求項5】
前記核粒子の表面に処理された金属元素の水和物および/または酸化物の量が、該核粒子中に含まれる金属元素に対して酸化物換算基準で0.1〜20モル%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の分散液。
【請求項6】
前記表面処理粒子を被覆する複合酸化物の量が、該表面処理粒子100重量部に対して5〜100重量部の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の分散液。
【請求項7】
前記コアシェル型無機酸化物微粒子の表面負電荷量が、pH6の分散液中で測定したときに0.85〜1.50μeq/m2の範囲にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の分散液。
【請求項8】
前記コアシェル型無機酸化物微粒子の表面に存在する固体酸量が、0.001〜0.15 mmol/gの範囲にあることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の分散液。
【請求項9】
前記コアシェル型無機酸化物微粒子の平均粒子径が8〜60nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の分散液。
【請求項10】
分散媒が水および/またはメタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロピルアルコ-ル等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン、γ−ブチロラクトン等のケトン類から選ばれた有機化合物の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の分散液。
【請求項11】
コアシェル型無機酸化物微粒子を含む分散液の製造方法であって、
(1)平均粒子径5〜50nmの範囲にある、チタニウムを含む金属酸化物微粒子を含む水分散液にジルコニウム、スズ、ニオブ、バリウム、ランタニウム、ストロンチウム、セリウム、リチウムから選ばれた1種または2種以上からなる金属元素の金属塩または金属アルコキシドを前記金属酸化物微粒子に含まれる金属元素に対して酸化物換算基準で0.1〜20重量モル%の範囲となるように添加したのち、熟成して、表面処理粒子の水分散液を調製する工程、
(2)前記工程で得られた、表面処理粒子の水分散液に、ケイ素化合物と、アルミニウム、ジルコニウム、アンチモンから選ばれた1種または2種以上からなる金属元素の化合物とを添加する工程、および
(3)前記工程(2)で得られた分散液を60〜250℃で0.5〜20時間加熱処理する工程
を含むことを特徴とするコアシェル型金属酸化物微粒子を含む分散液の製造方法。
【請求項12】
前記工程(1)の後に、さらに下記工程
(1.1)前記工程(1)で得られた水分散液を乾燥させて乾燥粉体を得る工程、
(1.2)前記工程(1.1)で得られた乾燥粉体を300〜800℃の温度条件下で焼成して表面処理粒子の焼成粉末を得る工程
(1.3)前記工程(1.2)で得られた表面処理粒子を水に再分散させる工程
を含むことを特徴とする請求項11に記載のコアシェル型無機酸化物微粒子を含む分散液の製造方法。
【請求項13】
前記工程(1)において、前記結晶性酸化物微粒子を含む水分散液に前記金属元素の金属塩または金属アルコキシドを添加したときのpHが、5〜11の範囲にあることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のコアシェル型無機酸化物微粒子を含む分散液の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のコアシェル型金属酸化物微粒子と、下記一般式(I)で示されるバインダー成分とを含む被膜形成用塗料組成物。
1a2bSi(OR34-(a+b) (I)
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基、ビニル基を含有する炭素数8以下の有機基、エポキシ基を含有する炭素数8以下の有機基、メタクリロキシ基を含有する炭素数8以下の有機基、メルカプト基を含有する炭素数1〜5の有機基またはアミノ基を含有する炭素数1〜5の有機基であり、R2は炭素数1〜3のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基またはアリル基であり、R3は炭素数1〜3のアルキル基、アルキレン基またはシクロアルキル基である。また、aは0または1の整数、bは0、1または2の整数である。)
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載のコアシェル型金属酸化物微粒子と、熱硬化性有機樹脂、熱可塑性有機樹脂または紫外線硬化性有機樹脂とを含む被膜形成用塗料組成物。
【請求項16】
前記塗料組成物が、光学基材用塗料組成物であることを特徴とする請求項14〜15のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項17】
前記光学基材用塗料組成物が、ハードコート層膜形成用塗料組成物であることを特徴とする請求項16に記載の塗料組成物。
【請求項18】
前記光学基材用塗料組成物が、プライマー層膜形成用塗料組成物であることを特徴とする請求項16に記載の塗料組成物。
【請求項19】
請求項14〜18のいずれかに記載の塗料組成物を基材上に塗布して得られる硬化性塗膜。
【請求項20】
前記基材が、プラスチックレンズ基材であることを特徴とする請求項19に記載の硬化性塗膜。
【請求項21】
前記硬化性塗膜が、ハードコート層膜であることを特徴とする請求項19〜20のいずれかに記載の硬化性塗膜。
【請求項22】
前記硬化性塗膜が、プライマー層膜であることを特徴とする請求項19〜20のいずれかに記載の硬化性塗膜。

【公開番号】特開2012−56816(P2012−56816A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203323(P2010−203323)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】