説明

コアシェル型複合酸化物微粒子の分散液および該分散液の製造方法、該コアシェル型複合酸化物微粒子を含む塗料組成物、硬化性塗膜および硬化性塗膜付き基材

【課題】 本発明は分散安定性が高いコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液および該分散液の製造方法、該コアシェル型複合酸化物微粒子を含む塗料組成物、硬化性塗膜および硬化性塗膜付き基材に関するものである。
【解決手段】 ケイ素および/またはアルミニウムを主成分として含まない酸化物微粒子または複合酸化物微粒子をコア粒子として、その表面をケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物からなるシェルで被覆したコアシェル型複合酸化物微粒子の、シェルに含まれるケイ素とアルミニウムの含有量が酸化物換算基準の重量比でSiO2/Al23=2.0〜30.0の範囲にあることによって、表面負電荷量およびコアに対するシェルの被覆率が高く、超安定なコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液および該分散液の製造方法、該コアシェル型複合酸化物微粒子を含む塗料組成物、硬化性塗膜および硬化性塗膜付き基材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジルコニウムやチタニウム、スズなどの酸化物微粒子や複合酸化物微粒子は、シリカ粒子などと比較して屈折率が高く、ハードコートなどの透明被膜用の屈折率調整用フィラーとして一般的に用いられている。
しかし、これらの高屈折率粒子は被膜形成用塗料組成物に配合した場合に、バインダー成分との反応性や、塗料組成物中や膜中での分散安定性が低いという問題があった。
【0003】
また、有機ケイ素化合物や樹脂組成物をバインダー成分とする塗料組成物では、酸性領域での保存や使用が望まれる場合があるが、このような高屈折率粒子の分散液は、酸性のpH領域では不安定であり凝集しやすいという問題があった。
粒子の分散性を向上させる方法として、シランカップリング剤による表面処理などが知られているが、このような粒子の表面にシランカップリング剤を充分に処理することが難しく、充分な分散安定性が得られない場合があったため、より効果的な処理方法の開発が望まれていた。
【0004】
また、粒子の分散性を向上させる方法として、特許文献1には、ジルコニア微粒子の表面を五酸化アンチモンおよび/またはシリカで被覆する方法が記載されている。
さらに、チタニウムの酸化物微粒子や複合酸化物微粒子については、チタニウムの活性により塗膜の耐候性や耐光性が低下することが問題となる。このような問題を解決する手法として特許文献2には、チタンおよびスズの酸化物核粒子をケイ素酸化物とジルコニウムまたは/およびアルミニウムの酸化物とで被覆した複合酸化物微粒子が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、酸化チタンゾル粒子がケイ素とアルミニウムの水和酸化物よりなる層で被覆された酸化チタンゾルについて記載されている。
さらに、特許文献4には、抗菌性無機酸化物微粒子の製造中間体として、表面にシリカ−アルミナ水和物を沈着した無機酸化物微粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−107872号公報
【特許文献2】特開2000−204301号公報
【特許文献3】特開2007−246351号公報
【特許文献4】特開2005−132724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の改質ジルコニア微粒子は、ジルコニア微粒子の表面が五酸化アンチモンおよび/またはシリカで被覆されることで分散性が向上し酸性での安定性も増すが、この効果をさらに発展させ、また膜に配合したときの硬度や耐擦傷性についてもさらに優れたものとすることが求められていた。
特許文献2に記載の複合酸化物微粒子は、屈折率が高く耐候性に優れるものであったが、粒子を塗料組成物や膜に配合した際の安定性や、得られる膜の硬度、耐擦傷性などのハードコート性をさらに向上させることが求められていた。
【0008】
また特許文献3に記載の酸化チタンゾル粒子は、ケイ素の酸化物とアルミニウムの酸化物とで被覆されたものであるが、このような粒子の分散液の安定性や膜としたときの強度などについてさらに改善することができる余地があった。
特許文献4に記載のシリカ−アルミナ水和物を沈着した無機酸化物微粒子は、アルカリ性のコア粒子にアルカリ性のアルミン酸ソーダと水硝子溶液を添加するために、シリカの溶解度が高く、条件によっては、充分な量のシリカーアルミナ層が均一に形成されにくい場合があり、このような粒子を分散液としたときの安定性も充分ではないという場合があった。
【0009】
また、一般に、ジルコニウムやチタニウムなどの酸化物粒子の表面にシリカなどを被覆させようとする場合には、均一に被覆させることが困難であるという問題があった。
本発明者らは、上記課題を解決するために創意研究を繰り返した結果、ケイ素やアルミニウムを主成分として含まないコア粒子の表面に、ケイ素とアルミニウムを特定の組成で含むシェルを被覆させることによって、特定の範囲内の高い負電荷密度を持ち、コアに対するシェルの被覆率が高いコアシェル型複合酸化物微粒子が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ケイ素および/またはアルミニウムを主成分として含まない酸化物微粒子または複合酸化物微粒子をコア粒子として、その表面をケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物からなるシェルで被覆したコアシェル型複合酸化物微粒子であって、前記シェルに含まれるケイ素とアルミニウムの含有量が酸化物換算基準の重量比でSiO2/Al23=2.0〜30.0の範囲にあることを特徴とする。
【0011】
前記シェルが、ケイ素とアルミニウムとからなる複合酸化物であることが好ましい。
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の単位表面積あたりに存在する表面負電荷量が、pH6で測定したときに、0.5〜1.5μeq/m2の範囲にあることが好ましい。
前記シェルに含まれるケイ素とアルミニウムの含有量が酸化物換算基準の重量比でSiO2/Al23=2.0〜15.0の範囲にあることが好ましい。
前記シェルの被覆量がコア粒子100重量部に対して5〜100重量部の範囲にあることが好ましい。
【0012】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の平均粒子径が8〜60nmの範囲にあることが好ましい。
前記コア粒子が、ジルコニウム、スズ、チタニウム、ニオブ、タングステン、アンチモン、インジウムから選ばれた1種以上の元素を主成分として含む酸化物微粒子または複合酸化物微粒子であることが好ましい。
前記コア粒子が、副成分としてチタニウム、スズ、ケイ素、ジルコニウム、アンチモン、バリウム、ストロンチウム、リチウム、インジウム、ランタニウム、カリウム、ナトリウムから選ばれる1種以上の元素を含む酸化物微粒子または複合酸化物微粒子であることが好ましい。
【0013】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の固形分濃度が5〜60重量%の範囲にあることが好ましい。
前記固形分濃度30重量%の時の粘度が0.8〜20mPa・sの範囲にあることが好ましい。
【0014】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の分散媒が水および/またはメタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン、γ−ブチロラクトン等のケトン類より選ばれたいずれか1種または2種以上であることが好ましい。
【0015】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の表面が有機ケイ素化合物またはアミン類により修飾されていることが好ましい。
前記コアシェル型複合酸化物微粒子のpHが3.0〜7.0の範囲にあることが好ましい。
【0016】
本発明の塗料組成物は、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の分散液とバインダー成分とを含むことを特徴とする。
前記塗料組成物において、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の含有量が固形分濃度で0.1〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
前記塗料組成物において、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の含有量が固形分濃度で30重量%のときの粘度が1〜100mPa・sの範囲にあることが好ましい。
前記塗料組成物は、さらに紫外線吸収剤を含むことが好ましい。
【0017】
本発明の硬化性塗膜は、前記塗料組成物を基材上に塗布して得られたことを特徴とする。
本発明の塗膜付基材は、前記硬化性塗膜を基材上に設けてなることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の製造方法は、
(1)平均粒子径が5.0〜50.0nmの範囲にあるコア粒子の水分散液に、シリコンアルコキシドおよび/またはケイ酸を含むケイ素化合物溶液と、アルミン酸塩の水溶液とを、該ケイ素化合物溶液に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、さらに該アルミン酸塩の水溶液に含まれるアルミニウム成分をAl23で表したとき、その酸化物換算基準の重量比がSiO2/Al23=2.0〜40.0となるような割合で混合する工程、
(2)前記工程により得られた混合液を60〜200℃の温度に加温して、0.5〜20時間攪拌する工程、
を含むことを特徴とする。
【0019】
前記製造方法はさらに、下記工程(3)を含むことが好ましい。
(3)前記工程(2)により得られた混合液を陽イオン交換樹脂と接触させて、該混合液中に含まれるアルカリ金属イオンをイオン交換により除去して、該混合液のpHを3.0〜7.0の範囲に調整する工程
【0020】
前記ケイ素化合物溶液と、アルミン酸塩の水溶液とを、それぞれ同時にコア粒子の水分散液に添加することが好ましい。
前記ケイ素化合物溶液が、pH3以下のケイ酸液であることが好ましい。
前記コア粒子が、ジルコニウム、スズ、チタニウム、ニオブ、タングステン、アンチモンおよびインジウムから選ばれた1種以上の元素を主成分として含む酸化物微粒子または複合酸化物微粒子であることが好ましい。
【0021】
前記コア粒子の比表面積が50〜250m2/gの範囲にあることが好ましい。
前記コア粒子がコア粒子を含む水分散液を噴霧乾燥して得られたもの、または噴霧乾燥したのち焼成して得られたものであることが好ましい。
【0022】
前記製造方法はさらに、有機ケイ素化合物またはアミン類によりコアシェル型複合酸化物微粒子の表面処理を行うことが好ましい。
前記製造方法はさらに、濃縮工程および/または有機溶媒置換工程に処することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液は、粒子の単位表面積あたりの表面負電荷量が高く、またコアに対するシェルの被覆率が高いため、分散液の粘度が低く安定性が非常に高い。このコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液は、高濃度でも安定であって、透明性にも優れる。
【0024】
本発明に係るコアシェル型複合酸化物微粒子は高〜中屈折率粒子として幅広い屈折率を自由に調整することができる。また、酸性のpH領域でも非常に安定であって、塗料組成物および硬化性塗膜中に配合した際の分散安定性、濃縮に対する安定性、分散性に優れる。さらに、粒子の活性なども抑えられており、該粒子を含む硬化性塗膜は優れた硬度、耐擦傷性、透明性、耐候性を兼ね備えている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液について具体的に説明する。
コア粒子
本発明に係るコア粒子は、ケイ素および/またはアルミニウムを主成分として含まない酸化物微粒子または複合酸化物微粒子であることが好ましい。
ここで、前記主成分とは、酸化物基準(SiO2およびAl23)での固形分重量がコア粒子の固形分重量の70重量%以上を占める成分を意味する。
コア粒子がケイ素および/またはアルミニウムを主成分として含むものであると、屈折率の高いコアシェル型複合酸化物粒子が得られないので好ましくない。
【0026】
前記コア粒子としては、ケイ素および/またはアルミニウムを主成分として含まないものであれば、どのようなものでも用いることができるが、中〜高屈折率のコアシェル型複合酸化物微粒子を得るためには、特にジルコニウム、スズ、チタニウム、ニオブ、タングステン、アンチモン、インジウムから選ばれる1種以上の金属元素を主成分として含む酸化物微粒子または複合酸化物微粒子をコア粒子として用いることが好ましい。
また、ここで、主成分とは酸化物基準(ZrO2、SnO2、TiO2、Nb25、WO3、Sb25、In23)でコア粒子の70重量%を超える固形分重量を有する成分を意味する。
【0027】
ジルコニウム、スズ、チタニウム、ニオブ、タングステン、アンチモン、インジウムから選ばれる1種以上の金属元素を主成分とする酸化物微粒子または複合酸化物微粒子をコア粒子として用いると、中〜高屈折率のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液を得ることができる。
また、前記コア粒子は、さらに副成分として、チタニウム、スズ、ケイ素、ジルコニウム、アンチモン、バリウム、ストロンチウム、リチウム、インジウム、ランタニウム、カリウム、ナトリウムから選ばれる1種以上の元素を含むものであることが好ましい。
【0028】
ただし、前記コア粒子の副成分には、主成分に用いた金属元素と同じ元素は含まないものとする。
コア粒子に前記副成分を含ませることによって、コア粒子の屈折率や紫外線吸収能を調節したり、活性などを抑制することができる。
【0029】
前記コア粒子が副成分を含む場合には、前記副成分の含有量は、酸化物換算基準(TiO2、SnO2、SiO2、ZrO2、Sb25、BaO、SrO、Li2O、In23、La2O、K2O、Na2O)の固形分濃度で0.1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%の範囲にあることが好ましい。前記含有量が0.1重量%未満の場合には、副成分を添加する効果が得られにくい。また、前記含有量が30重量%を超えると、コアシェル型複合酸化物微粒子の屈折率が低下したり、光学活性が高くなったり、またコア粒子の安定性が低下する場合があるので、好ましくない。
【0030】
前記コア粒子の平均粒子径は、5〜50nm、より好ましくは7〜40nmの範囲にあることが好ましい。前記平均粒子径が5nm未満の場合には、コア粒子の水分散液の安定性が低く、コアシェル型複合酸化物微粒子の分散液を製造する時に増粘する場合があるので好ましくない。
また、前記平均粒子径が50nmを超えると、これを用いたコアシェル型複合酸化物微粒子の平均粒子径が大きくなり、本発明に係る硬化性塗膜の透明性が低下する場合があるので、好ましくない。
【0031】
前記コア粒子の比表面積は、50〜240 m2/g、より好ましくは70〜220m2/gの範囲にあることが好ましい。前記比表面積が50 m2/g未満の場合には、コア粒子の粒子径が大きいためシェル被覆層の厚みが薄くなり所望の膜硬度がえられ難い場合があるので好ましくない。また、前記比表面積が240 m2/gを超えると、コア粒子の粒子径が小さいためコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の製造時に増粘したり、得られるコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液が凝集する場合があるので好ましくない。
【0032】
シェル
本発明に係るシェルは、ケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物からなり、シェルに含まれるケイ素とアルミニウムの含有量が、酸化物換算基準の重量比でSiO2/Al23=2.0〜30.0の範囲にあることを特徴としている。
ここで、前記主成分とは、ケイ素とアルミニウムをそれぞれの酸化物換算基準で表したときその合計がシェルの90重量%以上となることを意味する。
【0033】
シェルが上記のような特別な組成にあることにより、コア粒子に対するシェルの被覆率が向上し、均一に被覆された安定性と耐候性の高いコアシェル型複合酸化物微粒子が得られる。さらに、コアシェル型複合酸化物微粒子の単位表面積あたりに存在する負電荷量が特定の高い範囲にあるために、得られる分散液の安定性、透明性が高く、高濃度に濃縮可能となり、膜に配合した際の膜硬度、耐擦傷性、透明性が飛躍的に向上する。
また、ここで、前記ケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物とは、ケイ素の単独酸化物とアルミニウムの単独酸化物との複合体を意味するものではなく、アルミニウム原子がケイ素原子と酸素を介して結合した構造を均一に含む複合酸化物を意味する。
【0034】
シェルが前記構造を均一に含むことにより、表面被覆率が高く、また表面に高密度に負電荷が存在した安定なコアシェル型複合酸化物微粒子が得られる。
さらに、表面負電荷密度が高い安定なコアシェル型複合酸化物微粒子は塗膜中に均一に分散することができ、その表面に重縮合により収縮しやすいOH基を多く有しているためにこれを配合した膜の硬度を向上させることができる。
【0035】
前記シェルに含まれるケイ素に対するアルミニウム含有量は、酸化物換算基準の重量比がSiO2/Al23=2.0〜30.0、より好ましくは2.5〜25.0、さらに好ましくは2.5〜15の範囲にあることが好ましい。
前記重量比が2.0未満の場合には、コアシェル型複合酸化物微粒子同士の相互作用が強くなりすぎるため分散液の粘度が高くなって、ゲル化する場合があり、保存安定性が低下するため好ましくない。また、前記重量比が30.0を超えると、コアシェル型複合酸化物微粒子の表面負電荷量が充分でなかったり、コアに対するシェルの被覆率が低下するため、濃縮した際の安定性が低く、特に酸性領域では増粘したりゲル化し易くまた塗膜の硬度も低下するので、好ましくない。
【0036】
コアシェル型複合酸化物微粒子をさらに安定化するためには、前記シェルは、ケイ素とアルミニウムからなる複合酸化物であることが好ましい。前記シェルがケイ素とアルミニウム以外の元素を含むと、コアシェル型複合酸化物微粒子の表面負電荷量が減少することがあったり、コアに対するシェルの被覆率が低下する場合がある。
【0037】
コアシェル型複合酸化物微粒子
本発明のコアシェル型複合酸化物微粒子は、ケイ素および/またはアルミニウムを主成分として含まない酸化物微粒子または複合酸化物微粒子をコア粒子として、その表面をケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物からなるシェルで被覆したコアシェル型複合酸化物微粒子であって、前記シェルに含まれるケイ素とアルミニウムの含有量が酸化物換算基準の重量比でSiO2/Al23=2.0〜30.0の範囲にあることを特徴としている。
【0038】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の単位表面積あたりに存在する表面負電荷量は、pH6の水溶液中で測定したときに、0.5〜1.5μeq/m2、より好ましくは0.6〜1.4μeq/m2の範囲にあることが好ましい。
前記表面負電荷量が0.5 μeq/m2未満の場合には、コアシェル型複合酸化物微粒子同士の反発力が充分でないため、濃縮したときの安定性が低下したり、増粘やゲル化する場合があるので好ましくない。また、前記表面負電荷量が、1.5 μeq/m2を超えると、コアシェル型複合酸化物微粒子同士の相互作用が強くなり、粘度が高くなったりゲル化する場合があるので好ましくない。
【0039】
コア粒子に対する前記シェルの被覆量は、コア粒子の固形分100重量部に対してシェルの固形分が5〜100重量部、より好ましくは7〜80重量部となるような範囲にあることが好ましい。
前記シェルの被覆量が5重量部未満であると、コアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の安定性が低下し、これを配合して得られる硬化性塗膜の硬度が低下する場合があるので好ましくない。また、前記シェルの被覆重量が100重量部を超えると、コアシェル型複合酸化物微粒子の屈折率が低下しすぎて中〜高屈折率の基材に硬化性塗膜を形成するのに適さなくなる場合があるので好ましくない。
【0040】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の平均粒子径は、8〜60nm、より好ましくは10〜50nmの範囲にあることが好ましい。前記平均粒子径が8nm未満の場合には、高濃度に濃縮した時に増粘しやすく所望の膜硬度がえられ難くなるので好ましくない。また、前記平均粒子径が60nmを超えると、得られる硬化性塗膜の透明性が悪化する場合があるので、好ましくない。
【0041】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の比表面積は、60〜400 m2/g、より好ましくは80〜380m2/gの範囲にあることが好ましい。前記平均粒子径が60 m2/g未満の場合には、塗料組成物に含まれるバインダー成分との反応性が低く得られる硬化性塗膜の硬度が低くなるので好ましくない。また、前記平均粒子径が400 m2/gを超えると、バインダー成分との反応性が高くなり過ぎ細孔が形成しやすくなり硬化性塗膜の硬度が低下するので、好ましくない。
【0042】
また前記コアシェル型複合酸化物微粒子は、さらにシェルの表面をシランカップリング剤などの有機ケイ素化合物、またはアミン類など公知の表面処理剤を用いて処理したものであってもよい。
【0043】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の屈折率は、コア粒子がチタニウムの酸化物微粒子または複合酸化物微粒子である場合には、1.7〜2.7、より好ましくは1.85〜2.5の範囲にあることが好ましい。このようなコアシェル型複合酸化物微粒子は高屈折率粒子として好適に用いることができる。
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の屈折率は、コア粒子がジルコニウムまたはニオブの酸化物微粒子、あるいはジルコニウムかニオブを主成分とする複合酸化物微粒子である場合には、1.6〜2.2、より好ましくは1.7〜2.1の範囲にあることが好ましい。このようなコアシェル型複合酸化物微粒子は中〜高屈折率粒子として好適に用いることができる。
【0044】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の屈折率は、コア粒子がスズまたはタングステンの酸化物微粒子あるいはスズ、タングステン、アンチモンまたはインジウムを主成分とする複合酸化物微粒子である場合には、1.5〜2.0、より好ましくは1.6〜1.9の範囲にあることが好ましい。このようなコアシェル型複合酸化物微粒子は中屈折率粒子として好適に用いることができる。
【0045】
本発明に係るコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液は、前記コアシェル型複合酸化物微粒子が溶媒に分散してなる分散液であることを特徴としている。
前記溶媒は、水であっても有機溶媒であってもよく、水と有機溶媒の混合物であってもよい。
前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン、γ−ブチロラクトン等のケトン類などを使用することができる。
【0046】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の固形分濃度は5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%の範囲にあることが好ましい。前記固形分濃度が5重量%未満の場合には、塗布液の固形分濃度が低くなり塗膜を得るために蒸発させる溶媒重量が増えるため経済的でないので好ましくない。また、前記固形分濃度が60重量%を超えると、分散液が増粘したり保存安定性が低下する場合があるので、好ましくない。
【0047】
また、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の粘度は、固形分濃度が30重量%のときの測定値で0.8〜20mPa・s、より好ましくは1〜10 mPa・sの範囲にあることが好ましい。前記粘度が0.8mPa・s未満の場合には、これを配合して得られる塗料組成物の粘度が低くなるため塗工方法によっては基材への塗布が困難となる場合があるため好ましくない。また前記粘度が20mPa・sを超えると、これを配合した塗料組成物の粘度が高くなるため塗工方法によっては基材への塗布が困難となる場合があるので好ましくない。
【0048】
本発明に係るコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液は、分散安定性が高く、高濃度に濃縮することができ、透明性が高く、コアシェル型複合酸化物微粒子の屈折率および触媒活性や紫外線吸収能などを制御することによって様々な用途に使用することができる。
また、特に、本発明に係るコアシェル型複合酸化物微粒子は表面にケイ素とアルミニウムの複合酸化物による強い負の表面電荷を有するため、幅広いpH領域において安定に使用することができるが、特に、通常の中〜高屈折粒子の分散液が不安定化するpH3.0〜7.0の酸性領域において、非常に安定であるので、酸性領域で使用することが望まれる塗料組成物や樹脂組成物に配合するには特に好適である。
【0049】
また、コアシェル型複合酸化物微粒子の表面に水酸基が多く存在し、有機ケイ素化合物などのバインダー成分との加水分解反応の反応性が高いため、安定で高い膜硬度を有する塗膜を形成することができる。
特に、本発明に係るコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液を配合した塗料組成物によれば、高い膜硬度や耐擦傷性とともに高い透明性と耐候性を兼ね備えた硬化性塗膜を形成することができるため、眼鏡用プラスチックレンズなどの光学用途をはじめとした、ハードコート層やプライマー層などの硬化性塗膜形成用塗料組成物として特に好適に用いることができる。
【0050】
以下に、本発明に係るコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の製造方法について説明する。
コア粒子の製造方法
まずコア粒子の水分散液を調製する。
コア粒子の水分散液は、金属塩または金属アルコキシドなどを原料とした中和加水分解法、加水分解法、金属塩水溶液にアルカリを加えて得られた金属水酸化物を解膠する中和共沈法、あるいは水熱合成法などの公知の液相法により製造することができる。
またこのようなコア粒子の水分散液として、市販されている酸化物粒子や金属酸化物粒子の水分散液を用いてもよい。
【0051】
また、前記液相法によって得られた酸化物粒子または複合酸化物粒子の水分散液を一旦乾燥させたもの、あるいは乾燥させたのち焼成して得られた酸化物粒子または複合酸化物粒子を、粉砕したのち、水に再分散させ、必要に応じて脱イオンや分級を行ったものを、コア粒子の水分散液として用いても良い。
さらには、気相酸化法、気相分解法あるいは物理的蒸気合成(PVS)法などの気相法により得られた酸化物粒子または複合酸化物粒子の粉末を粉砕して、水に再分散させたものをコア粒子の水分散液として用いてもよい。
【0052】
液相法により得られた酸化物粒子または複合酸化物粒子の水分散液をコア粒子としてそのまま使用した場合、得られる塗料組成物や膜の安定性や透明性をさらに向上させる効果が得られる。また液相法により得られた酸化物粒子または複合酸化物粒子の水分散液を乾燥させた粉末、またはこれをさらに焼成した粉末、または気相法で得られた酸化物粒子や複合酸化物粒子の粉末を粉砕したのち水に再分散させて得られたものをコア粒子の水分散液として用いた場合には、コア粒子の屈折率が高まり、また活性も低下するので、得られる膜の屈折率や耐候性をさらに向上させる効果が得られる。
【0053】
液相法により得られた酸化物微粒子または複合酸化物微粒子の水分散液を乾燥または焼成したものをコア粒子として用いる場合には、一般的な熱風乾燥装置により乾燥させて得られた粉末を粉砕してもよいが、所望の粒子径のものを効率よく得るには、前記乾燥はスプレードライヤーなどによる噴霧乾燥を用いて行うことが好ましい。
また、さらにこれを焼成する場合には、上記で得られた乾燥粉末を焼成装置に供して、空気などの酸素含有雰囲気下あるいは窒素などの雰囲気下で300〜800℃の温度にて30〜240分間焼成することが好ましい。焼成を行うと得られるコア粒子の屈折率が非常に向上する。また活性の高いコア粒子の場合には焼成によって耐候性および耐光性も向上する。
【0054】
前記焼成温度が300℃未満であると、粒子の屈折率を高める効果が低く、また該温度が800℃を超えると、粒子同士の焼結(特に、一次粒子同士の焼結)が急激に進み、結果として粒子表面における比表面積が低下することになるので、上記の範囲から適宜選択した温度で焼成することが好ましい。さらに、前記焼成時間が30分間未満であると、前記複合酸化物微粒子の全体が十分に焼成されないことがあり、また該焼成時間が240分間を超えると、経済的でなくなるので、好ましくない。
【0055】
このようにして得られたコア粒子粉末、または気相法により製造されたコア粒子粉末は平均粒子径が1μm以上の大きな粒子径からなる粒子であるため、これを粉砕装置に供して、ゾル化できる程度の小さな粒子径を有する微粒子に粉砕、分散する。
この粉砕装置としては、従来公知の粉砕装置、たとえばサンドミル、ロールミル、ビーズミル、ジェットミル、超音波分散機、アルティマイザー、ナノマイザー(登録商標)などを用いることができる。前記粉砕装置の操作条件は、使用する粉砕装置や前記コア粒子粉末の性状などによっても異なるが、たとえばサンドミル(関西ペイント(株)製卓上サンドミル)を用いて行う場合には、セラミック製ディスクローターなどを備えた装置内に、粒子径0.1〜0.2mmの球状石英ビーズ゛と前記チタン系粒子を懸濁させた水溶液(固形分濃度5〜40重量%)を入れて、一般的な条件下(たとえば、ローター回転速度600〜2000rpm、処理時間1〜10時間など)で粉砕処理を行うことが好ましい。
【0056】
また、粉砕時に分散安定化剤または分散促進剤を加えてもよい。
分散安定化剤としては通常、カルボン酸またはカルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸(1分子内にカルボキシル基とアルコール性水酸基とを有する)、ヒドロキシカルボン酸塩が用いられる。具体的には、酒石酸、蟻酸、酢酸、蓚酸、アクリル酸(不飽和カルボン酸)、グルコン酸等のモノカルボン酸およびモノカルボン酸塩、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、などの多価カルボン酸および多価カルボン酸塩等が挙げられる。また、α−乳酸、β−乳酸、γ−ヒドロキシ吉草酸、グリセリン酸、酒石酸、クエン酸、トロパ酸、ベンジル酸のヒドロキシカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸塩が挙げられる。
【0057】
さらに、分散促進剤としては通常、NaOH、KOH等のアルカリ金属水酸化物の水溶液あるいは、アンモニア、有機アミンなどの塩基性化合物を用いることができる。
前記の粉砕、分散処理により、透明性の高いコア粒子の水分散液が得られる。前記コア粒子の水分散液は、該コア粒子を1〜50重量%、好ましくは5〜40重量%含み、しかも、そのヘーズが1〜20%、好ましくは2〜15%の範囲にあることが望まれる。前記コア粒子分散液は必要に応じて、遠心分離機等の公知な湿式分級装置に供して粒子径が100nm以上の粗大な粒子を分離・除去することができる。
【0058】
前記コア粒子の平均粒子径は、5.0〜50nm、より好ましくは7.0〜40nmの範囲にあることが好ましい。前記平均粒子径が5.0nm未満の場合には、コア粒子の水分散液の安定性が悪く増粘しやすくなるので好ましくない。また、前記平均粒子径が50nmを超えると、コア粒子表面にシェル層を形成したコアシェル粒子の粒子径が大きくなり塗膜に用いた場合に透明性が悪化する場合があるので、好ましくない。
【0059】
前記コア粒子の比表面積は、50〜240 m2/g、より好ましくは70〜220m2/gの範囲にあることが好ましい。前記比表面積が50 m2/g未満の場合には、コア粒子の粒子径が大きいためシェル被覆層の厚みが薄くなり所望の膜硬度がえられ難い場合があるので好ましくない。また、前記比表面積が240 m2/gを超えると、コア粒子の粒子径が小さいためコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の製造時に増粘したり、得られるコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液が凝集する場合があるので好ましくない。
このようにして得られたコア粒子の水分散液を用いて、下記の工程によりコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液を製造する。
【0060】
コアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の製造方法
工程(1)
平均粒子径が5.0〜30.0nmの範囲にあるコア粒子の水分散液に、シリコンアルコキシドおよび/またはケイ酸を含むケイ素化合物溶液と、アルミン酸塩の水溶液とを、該ケイ素化合物溶液に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、さらに該アルミン酸塩の水溶液に含まれるアルミニウム成分をAl23で表したとき、その酸化物換算基準の重量比がSiO2/Al23=2.0〜40.0となるような割合で混合する。
この工程により、アルミン酸とケイ酸とを均一に反応させ、コア粒子の表面にケイ素とアルミニウムを含む複合酸化物の前駆体を形成させる。
【0061】
また、前記ケイ素化合物溶液とアルミン酸塩の水溶液とは、それぞれが同時に、コア粒子の水分散液に一定の速度で同時に添加されることが好ましい。このときあらかじめ両者を混合してコア粒子の水分散液に添加したり、どちらかを添加したあとでもう一方を添加したりすると、コア粒子へのシェルの被覆率が低下したり、コアシェル型複合酸化物微粒子表面の負電荷量が減少するので、分散液の安定性、透明性、膜硬度などが低下し好ましくない。
【0062】
前記コア粒子分散液に混合するケイ素化合物溶液と、アルミン酸塩の水溶液との混合量は、該ケイ素化合物溶液中の珪素成分をSiO2で表し、さらに該アルミン酸塩の水溶液中のアルミニウム成分をAl23で表したとき、その酸化物換算基準の重量比SiO2/Al23が、2.0〜40.0、より好ましくは3.0〜20.0、さらに好ましくは4.0〜10.0の範囲にあることが好ましい。
前記ケイ素化合物としては、テトラメトキシシランもしくはその縮合物、テトラエトキシシランもしくはその縮合物などのシリコンアルコキシド、あるいはケイ酸であることが好ましい。
【0063】
ケイ素化合物がシリコンアルコキシドである場合には、これらを必要に応じてアルコールなどの有機溶媒に分散させたものをケイ素化合物溶液として用いればよい。
また、ケイ素化合物がケイ酸である場合には、水硝子などのケイ酸アルカリ溶液を脱イオン処理して得られるケイ酸液をケイ素化合物溶液として用いればよい。この時、ケイ酸液のpHが3以下のものを使用することが好ましい。前記ケイ酸液のpHが3を超えると、ケイ酸液の安定性が低下する場合があるためである。本発明に係るケイ素化合物溶液としては、特にケイ酸液が好ましい。
【0064】
また前記ケイ素化合物溶液の固形分濃度は、SiO2換算基準で0.1〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
前記SiO2換算基準の濃度が0.1重量%未満の場合にはアルミン酸とケイ酸との反応性が低下する場合があり、また前記濃度が10重量%を超えるとシリカやアルミニウム成分の凝集が起こることがあるため好ましくない。
【0065】
前記重量比が2.0未満の場合には、粒子間に作用する相互作用が強くなり粘度が高くなったりゲル化する場合もあり保存安定性が悪化するので、好ましくない。また、前記重量比が40.0を超えると、濃縮安定性が悪く増粘したりゲル化し易く塗膜硬度も低下する場合があるので、好ましくない。
また前記アルミン酸塩としては、アルミン酸ナトリウムおよび/またはアルミン酸カリウムであることが好ましい。
【0066】
また前記アルミン酸塩の水溶液の固形分濃度は、Al23換算基準で0.5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
前記Al23換算基準の濃度が0.5重量%未満の場合にはアルミン酸塩が加水分解して水酸化物を形成し易くなり、前記濃度が30重量%を超えると局所的なpHや塩濃度の上昇によるシリカやアルミニウム成分の凝集が起こることがあるため好ましくない。
【0067】
また前記アルミン酸塩の水溶液のM2O/Al23モル比(Mはアルカリ金属元素)は1.0〜1.5の範囲にあることが好ましい。前記モル比が1.0未満の場合には、アルミン酸塩が加水分解して水酸化物を形成し易くなり、また前記モル比が1.5を超えるとシリカ・アルミナ系複合酸化物の前駆体が形成されにくくなることがあるので、好ましくない。
また、コア粒子の水分散液にケイ素化合物溶液とアルミン酸塩の水溶液を添加する間、前記コア粒子の水分散液を100℃未満の温度で加熱していてもよい。前記温度が100℃を超えると、アルミン酸塩が加水分解して水酸化物の凝集物などを形成し易くなるので好ましくない。
【0068】
また、コア粒子の水分散液にケイ素化合物溶液とアルミン酸塩の水溶液を混合するときの添加速度は、該珪素化合物溶液に含まれるケイ素成分をSiO2と表し、アルミン酸塩の水溶液に含まれるアルミニウム成分をAl23と表したとき、SiO2およびAl23の成分総和としての添加速度は、該コア粒子の水分散液に含まれる複合酸化物粒子の固形分1gに対して0.005〜30g/Hrの範囲であることが好ましい。
前記添加速度が0.005未満の場合には、混合工程に時間がかかり経済的でなく、前記添加速度が30を超えると、コア粒子に対するシェルの被覆率が低下したり、ケイ素とアルミニウムを含む複合酸化物の均一性や緻密性が低下してコアシェル型複合酸化物粒子の安定性が低下する場合があるので好ましくない。
【0069】
前記コア粒子分散液の固形分濃度は1〜40重量%、さらには10〜30重量%の範囲にあることが好ましい。前記固形分濃度が1重量%未満では生産効率が低くなるので経済的でなくなり40重量%を超えると増粘したり保存安定性が低下する場合があるので好ましくない。
前記コア粒子分散液のpHは、7〜12、より好ましくは8〜11の範囲にあることが好ましい。コア粒子分散液のpHが7未満だとアルミン酸塩の水溶液に含まれるアルミン酸イオンが単独で加水分解して水酸化物を形成し凝集し、複合酸化物微粒子分散液の透明性や安定性が低下する場合があるので好ましくない。また前記pHが12を超えるとシリカの溶解度が高くなり過ぎるためにコア粒子表面にシリカ・アルミナ系複合酸化物が均質に形成しにくく、経時的に分散液の透明性が低下したり増粘したりする場合があるので好ましくない。またコア粒子の分散液のpHが上記範囲にあると、コア粒子が安定なため、シェルの被覆を緻密かつ均一に行うことができるので、コアシェル型複合酸化物微粒子の安定性がより向上する。
【0070】
また、コア粒子に対するシェルの被覆量は、コア粒子の固形分100重量部に対してシェルの固形分が5〜100重量部、より好ましくは7〜80重量部となる範囲にあることが好ましい。
前記シェルの被覆量が5重量部未満であると、濃縮安定性が充分でなく、塗膜高度が悪化する場合があるので好ましくない。また、前記シェルの被覆量が100重量部を超えると、屈折率が低下しすぎるため中〜高屈折率基材に硬化性塗膜を形成するのに適さない場合があるので、好ましくない。
【0071】
工程(2)
前記工程(1)により得られた混合液を60〜200℃の温度に加温して、0.5〜20時間攪拌する。
この工程により、コア粒子表面に形成させたケイ素とアルミニウムを含む複合酸化物の前駆体の脱水・縮重合反応を行わせてコア粒子の表面に安定化させることによってコア粒子の表面をケイ素とアルミニウムとを含む複合酸化物よりなるシェルで被覆する。この工程により、コアシェル型複合酸化物微粒子の表面負電荷密度が高まり、安定性も向上する。
【0072】
前記加温の温度は60〜200℃、より好ましくは80〜180℃の範囲にあることが好ましい。
前記温度が60℃未満であると、ケイ素とアルミニウムを含む複合酸化物の前駆体の脱水・縮重合反応が充分起こらずコアシェル型複合酸化物粒子の分散液の安定性や高濃縮性が低下する。また前記加熱温度が200℃を超えると、シリカの溶解度が高くなりすぎるため、前記シェルの緻密性が低下し、コア粒子分散液の安定性や高濃縮性が低下することがあるため好ましくない。
前記加温は公知の装置および方法を用いて行うことができる。前記加温は常圧下で行っても加圧下で行ってもよい。オートクレーブ装置などを用いて加圧下で加温を行った場合はシリカ系微粒子分散ゾルの安定性がより向上する。
【0073】
前記攪拌時間は0.5〜20時間の範囲にあることが好ましい。前記攪拌時間が0.5時間未満の場合には、前記脱水・縮重合反応が充分起こらずコアシェル型複合酸化物粒子の分散液の安定性が低下することがあるので好ましくない。前記攪拌時間が20時間を越えると、技術的に特に問題はないものの、製造時間が長くなり経済的でないため好ましくない。
このようにして、本発明に係るコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液を得ることができる。
また、さらに、得られたコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液を下記のイオン交換処理に処することにより、pHが3.0〜7.0の範囲にあるコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液を得ることができる。
【0074】
工程(3)
前記工程(2)により得られた混合液を陽イオン交換樹脂と接触させて、該混合液中に含まれるアルカリ金属イオンをイオン交換により除去して、該混合液のpHを3.0〜7.0の範囲に調整する。
前記pHは、3.0〜7.0、より好ましくは3.5〜6.3の範囲にあることが好ましい。
前記pHが3.0未満であると、コア粒子表面に修飾されたアルミニウムおよび/またはシリカの一部が溶解して陽イオン樹脂によりイオン交換除去され、コアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の安定性や得られる硬化性塗膜の硬度が低下することがあるので好ましくない。また前記pHが7.0を超えるとコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液が不安定化しゲル化することがあるので好ましくない。
【0075】
前記混合液と陽イオン交換樹脂を接触させる方法としてはバッチ式(樹脂循環式)、カラム式(樹脂充填式)、その他公知の方法を用いることができる。バッチ式においては、必要に応じて攪拌を行うことが好ましい。陽イオン交換を行う時間は適時調節すればよいが、通常、攪拌下で1〜20時間、前記シリカ系微粒子水分散ゾルと陽イオン交換樹脂の接触を行えば充分である。
また前記工程(3)において、前記混合液を加熱して、60〜95℃の温度条件下で前記陽イオン交換樹脂と接触させると、アルカリ金属イオンのイオン交換除去効果をより高めることができる。
これらの工程(1)〜工程(3)を行うことによって、pHが3.0〜7.0の酸性域にあるコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液を得ることができる。
【0076】
表面処理
さらに、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の表面をシランカップリング剤などの有機ケイ素化合物、またはアミン類など公知の表面処理剤を用いて処理することができる。
前記有機ケイ素化合物としてはトリメチルエトキシシラン、ジメチルフェニルエトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン等の単官能性シラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等の二官能性シラン、メチルトリエトシキシラン、フェニルトリエトシキシシラン等の三官能性シラン、テトラエトキシシラン等の四官能性シラン、前記アミン類としてはトリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、テトラメチルアンモニウム塩、テトラメチルアンミニウムハイドロオキサイド等の第四級アンモニウム塩または第四級アンモニウムハイドロオキサイドなどを用いることができる。
【0077】
前記表面処理方法としては特に制限されるものでなく、公知の方法を用いることができる。例えば表面処理剤として前記有機ケイ素化合物を用いる場合には、メタノールなどの有機溶媒に溶解した有機ケイ素化合物またはその部分加水分解物を前記水分散ゾル中に添加したのち、約40〜60℃の温度に加熱して約1〜20時間、撹拌して、前記有機ケイ素化合物またはその部分加水分解物を加水分解させることによって行うことができる。
なお、この表面処理の操作が終了した段階では、前記有機ケイ素化合物の有する加水分解性基のすべてが、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の被覆層の表面に存在するOH基と反応した状態となっていることが好ましいが、その一部が未反応のまま残存した状態であってもよい。
【0078】
濃縮および溶媒置換工程
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の分散液を必要に応じて限外ろ過法、エバポレータ、蒸発などの公知の方法によって濃縮することができる。
また、必要に応じて、コアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の分散媒を限外ろ過法、エバポレータなど公知の方法により有機溶媒で溶媒置換することができる。
前記有機溶媒としてはメタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロピルアルコ-ル等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン、γ−ブチロラクトン等のケトン類などを用いることができる。
【0079】
前記有機溶媒による溶媒置換は、濃縮工程の前に行ってもよく、後に行ってもよい。また限外ろ過法やエバポレータなどを用いてシリカ系微粒子分散ゾルの濃縮と溶媒置換を同時に行っても良い。
このようにして得られるコアシェル型複合酸化物微粒子の固形分濃度は5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%の範囲にあることが好ましい。前記固形分濃度が5重量%未満の場合には、塗料組成物に配合したときの固形分濃度が低くなり塗膜を得るために蒸発させる溶媒重量が増えるため経済的でないので好ましくない。また、前記固形分濃度が60重量%を超えると、分散液が増粘したり保存安定性が低下する場合があるので、好ましくない。
【0080】
被膜形成用塗料組成物
以下に、本発明に係る塗料組成物について具体的に説明する。
本発明に係る塗料組成物は、本発明に係るコアシェル型複合酸化物微粒子と、バインダー成分とを含むことを特徴としている。
前記バインダー成分としては塗料組成物の使用目的に応じて従来公知のもの、あるいは現在開発中のものから適宜選択して使用することができる。
具体的には、前記バインダー成分としては、有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物、熱硬化性有機樹脂または熱可塑性有機樹脂などが挙げられる。
【0081】
前記有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物として、下記式(I)で表される有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物が挙げられる。
1a2bSi(OR34-(a+b) (I)
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基、ビニル基を含有する炭素数8以下の有機基、エポキシ基を含有する炭素数8以下の有機基、メタクリロキシ基を含有する炭素数8以下の有機基、メルカプト基を含有する炭素数1〜5の有機基またはアミノ基を含有する炭素数1〜5の有機基であり、R2は炭素数1〜3のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基またはアリル基であり、R3は炭素数1〜3のアルキル基、アルキレン基またはシクロアルキル基である。また、aは0または1の整数、bは0、1または2の整数である。)
【0082】
前記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物としては、アルコキシシラン化合物が代表例として挙げられ、具体的には、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、α―グルシドキシメチルトリメトキシシラン、α―グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β―グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ―γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β―(3、4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、β―(3、4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリエトキシシラン、γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)―γ―アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)―γ―アミノプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。これらは1種で用いても2種以上を混合して用いても良い。
【0083】
このような有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物は、特に光学基材などのハードコート膜形成用塗料のバインダーとして好ましい。
このような有機ケイ素化合物をバインダー成分として本発明に係る塗料組成物を調製するには、前記有機ケイ素化合物を無溶媒下、またはアルコール等の極性有機溶媒中で、酸や水などの存在下で部分加水分解または加水分解した後にコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液と混合することが好ましい。ただし、前記有機ケイ素化合物とコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液を混合したあとに、これらを部分加水分解または加水分解してもよい。
【0084】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の分散液と前記有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物との混合は、前記有機ケイ素化合物をSiO2基準に換算した重量をXで表し、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の分散液に含まれるコアシェル型複合酸化物微粒子の重量をYで表したとき、その重量比が(X/Y)が30/70〜90/10、好ましくは35/65〜80/20となるように行うことが好ましい。ここで、前記重量比が30/70未満であると、基材や他の塗膜との密着性が低下することがあり、また前記重量比が90/10を超えると、塗膜の耐擦傷性が低下することがあるので好ましくない。
本発明に係るコアシェル型複合酸化物粒子の分散液は、表面がケイ素とアルミニウムの複合酸化物で被覆されており、表面水酸基の密度が高いために有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物との反応性が非常に高いため、これらをバインダー成分とする塗料組成物、特にハードコート層形成用塗料組成物としては特に好適に用いることができる。
【0085】
また前記熱硬化性有機樹脂としては、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂およびメラミン系樹脂から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
さらに具体的に述べれば、前記ウレタン系樹脂としては、たとえばヘキサメチレンジイソシアネート等のブロック型ポリイシシアネートとポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等の活性水素含有化合物との反応物などが挙げられ、また前記エポキシ樹脂
としては、たとえばポリアルキレンエーテル変性エポキシ樹脂や分子鎖に柔軟性骨格(ソフトセグメント)を導入したエポキシ基含有化合物などが挙げられる。
【0086】
さらに、前記メラミン系樹脂としては、たとえばエーテル化メチロールメラミンとポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールとの硬化物などが挙げられる。これらの中でも、ブロック型イシシアネートとポリオールとの硬化物であるウレタン系樹脂を使用することが好ましい。また、これらの熱硬化性有機樹脂は、1種類だけでなく2種類以上を使用してもよい。
また、前記熱可塑性有機樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂およびエステル系樹脂から選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、さらには自己乳化型の水系エマルジョン樹脂であることがより好ましい。
【0087】
さらに具体的に述べれば、前記アクリル系樹脂としては、たとえば(メタ)アクリル酸アルキスエステルモノマーから得られる水系エマルジョンや前記モノマーとスチレン、アクリロニトリル等とを共重合させたポリマーエマルジョンなどが挙げられ、また前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのポリオール化合物とポリイシシアネートとを反応させてなる水系エマルジョンなどが挙げられ、さらに前記エステル系樹脂としては、たとえばハードセグメントにポリエステル、ソフトセグメントにポリエーテルまたはポリエステルを用いたマルチブロック共重合体の水分散型エラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールとポリイシシアネートから得られる水分散型ウレタン系樹脂を使用することが好ましい。また、これらの熱可塑性有機樹脂は、1種類だけでなく2種類以上を使用してもよい。
【0088】
このような熱硬化性有機樹脂および前記熱可塑性樹脂をバインダー成分とした塗料組成物は、前記樹脂とコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液を混合することにより調製され、その混合割合は前記樹脂の重量をRで表し、コアシェル型複合酸化物微粒子の分散液に含まれるコアシェル型複合酸化物微粒子の重量をSで表したとき、その重量比(R/S)が90/10〜30/70、より好ましくは80/20〜35/65となるように行うことが好ましい。
ここで、前記重量比が30/70未満であると、基材や他の塗膜との密着性や基材の耐衝撃性が低下することがあり、また前記重量比が90/10を超えると、塗膜の屈折率や耐熱性が低下することがあるので好ましくない。
【0089】
前記塗料組成物は、光学基材用塗料組成物、さらに好ましくはハードコート層膜形成用塗料組成物であることが好ましい。
また、前記塗料組成物は、さらに、紫外線吸収剤を含むものであることが好ましい。
前記紫外線吸収剤としては、従来公知な紫外線吸収剤、或いは現在開発中の紫外線吸収剤などを用いることができ、典型的な紫外線吸収剤であるベンゾフェノン系、ケイ皮酸系、p−アミノ安息香酸系、サリチル酸系などの光学安定性がある有機化合物、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムなどのペロブスカイト構造複合酸化物等を用いることができる。
【0090】
これらの紫外線吸収剤は、特に、ジルコニウムなどの紫外線吸収能を持たない酸化物粒子または複合酸化物粒子をコア粒子として用いたコアシェル型複合酸化物粒子の分散液を配合した塗料組成物に併用すると、高い効果が得られる。
本発明の塗料組成物には、さらに各種の未架橋エポキシ化合物、界面活性剤、レべリング剤および/または光安定剤、希釈溶媒などの1種以上を含んでいても良い。
また本発明に係る塗料組成物のバインダー成分としてはチタニウムアルコキシドなどの金属アルコキシドや紫外線硬化性化合物(例えばアクリロイルオキシ基を有する多官能アクリル系化合物等)などの化合物、さらには前記熱硬化性有機樹脂や前記熱可塑性樹脂のかわりに前記紫外線硬化性化合物などの化合物を使用することもできる。
【0091】
[測定方法および評価試験方法]
次に、本発明の実施例その他で使用された測定方法および評価試験方法を具体的に述べれば、以下の通りである。
分散液について
【0092】
(1)平均粒子径の測定方法
(A)平均粒子径が200nm未満のもの
粒子の分散液(固形分含有量20重量%)0.15gに純水19.85gを混合して調製した固形分含有量0.15%の試料を、長さ1cm、幅1cm、高さ5cmの石英セルに入れて、動的光散乱法による超微粒子粒度分析装置(大塚電子(株)製、型式ELS−Z2)を用いて、粒子群の粒子径分布を測定する。なお、本発明でいう平均粒子径は、この測定結果をキュムラント解析して算出された値を示す。
【0093】
(B)平均粒子径が200nm以上のもの(乾燥粉末など)
粒子の分散液の乾燥粉末または焼成粉末を、濃度40重量%のグリセリン含有水溶液に分散させたスラリー液(固形分濃度1.0重量%)を調製し、これに超音波発生装置(iuchi社製、US−2型)を用いて5分間、超音波を照射して前記粒子を分散させたのち、このスラリー液をガラスセル(長さ10mm、幅10mm、高さ45cmのサイズ)に入れて、遠心沈降式粒度分布測定装置(堀場製作所製CAPA−700)を用いて300〜10000rpmの回転速度で2分〜2時間かけて平均粒子径を測定した。
【0094】
(2)比表面積の測定方法
コア粒子またはコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液を乾燥させて得られた粉体を磁性ルツボ(B−2型)に約30ml採取し、300℃の温度で2時間乾燥後、デシケータに入れて室温まで冷却する。次に、サンプルを1g取り、全自動表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製、マルチソーブ12型)を用いて、粒子の比表面積(m2/g)をBET法にて測定する。
【0095】
(3)コアシェル型複合酸化物微粒子中の金属元素の含有量の測定方法
コア粒子分散液あるいはコアシェル型複合酸化物微粒子分散液(試料)をジルコニアボールに採取し、乾燥、焼成した後、Na22とNaOHを加えて溶融する。さらに、H2SO4とHClで溶解し、純水で希釈した後、ICP装置(島津製作所(株)製、ICPS−8100)を用いて、チタニウム、スズ、ケイ素、アルミニウムの含有量を酸化物換算基準(TiO2、SnO2、SiO2、およびAl23)で測定する。
次いで、前記試料を白金皿に採取し、HFとH2SO4を加えて加熱し、HClで溶解する。さらに、これを純水で希釈した後、ICP装置((株)島津製作所製、ICPS−8100)を用いてジルコニウムの含有量を酸化物換算基準(ZrO2)で測定する。
【0096】
次に、前記試料を白金皿に採取し、HFとH2SO4を加えて加熱し、HClで溶解する。さらに、これを純水で希釈した後、原子吸光装置((株)日立製作所製、Z−5300)を用いてナトリウムおよびカリウムの含有量を酸化物換算基準(Na2O、K2O)で測定する。
なお、本発明でいう各金属酸化物の含有量は、これらの測定結果から算出された値を示す。
【0097】
(4)表面電荷量の測定方法
固形分濃度30重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液(分散媒は水であっても有機溶媒であっても良い)を1.67g採取し、蒸留水98.53gを添加して固形分濃度0.5重量%の混合溶液100.00gを調製した。得られた混合溶液に塩酸水溶液あるいはアンモニア水溶液を添加して25℃においてpHを6.0に調整した測定用水溶液を調製し、そのなかから20.00gを分取して流動電位測定装置(MUETEK社製、PCD-T3)によりカチオン標準滴定液としてPoly−Dadmacを用いてカチオン流動電位滴定値を測定して得られた流動電位滴定値を表面負電荷量とした。
なお、上記測定により得られる値はコアシェル型複合酸化物微粒子の固形分1gあたりの表面負電荷量(μeq/g)である。この値をコアシェル型複合酸化物微粒子の比表面積(m2/g)で割った値をコアシェル型複合酸化物微粒子の単位比表面積あたりに存在する負の電荷量とした。
【0098】
(5)pHの測定方法
試料50mlを入れたセルを、25℃の温度に保たれた恒温槽中で、pH4、7および9の標準液で更正が完了したpHメータ(堀場製作所製、F22)のガラス電極を挿入してpH値を測定した。
このとき、コアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の分散媒が水である場合には、固形分濃度30重量%の前記水分散液を試料とし、前記分散媒が有機溶媒である場合には、固形分濃度30重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の有機溶媒分散液を蒸留水で10倍に希釈して、固形分濃度を3.0重量%としたものを試料とした。
【0099】
(6)粘度の測定方法
固形分濃度30重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液(分散媒は水であっても有機溶媒であってもよい)をそれぞれ20ml秤量して、粘度計(東機産業株式会社製、TV−10M)を用いて室温にて粘度測定を行った。このとき、粘度計のローターは試料の粘度が1.0〜10.0mPa・sの範囲にあるときは回転数60rpm、粘度が10.0〜20.0mPa・sの範囲にあるときは回転数30rpm、粘度が20.0〜50.0mPa・sの範囲にあるときは回転数12rpm、粘度が50.0〜100.0mPa・sの範囲にあるときには回転数6rpmとして測定した。
さらに、固形分濃度30重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液を40℃の水浴に供して7日間加熱することにより、粘度の加速試験を行った。
【0100】
(7)ヘーズの測定方法
固形分濃度1.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液(分散媒は水であっても有機溶媒であっても良い)を光路長33mmの石英セルに収納して、色差・濁度測定器(日本電色工業(株)製、COH−300A)を用いて濁度(ヘーズ)を測定した。
【0101】
(8)粒子の屈折率
下記の2通りの方法により粒子の屈折率を測定した。
(A)塗膜屈折率からの算定法
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6040、SiO2換算で49.2重量%)141.0gと99.9重量%のメチルアルコールを含むメタノール(林純薬(株)製)71.0gとを混合し、これに0.01Nの塩酸水溶液36.0gを攪拌しながら滴下して得られたシラン化合物の加水分解物を含む混合液に、コアシェル型複合酸化物粒子の水分散液(固形分濃度30.0重量%)26.0g、さらにトリス(2.4-ペンタンジオナト)アルミニウムIII(東京化成工業(株)製)3.0gおよびレベリング剤として10重量%のシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7006)を含むメタノール溶液0.7gを加えて室温で一昼夜攪拌して塗料組成物A(粒子の重量分率:10重量%)を調製する。なお、ここでいう「粒子の重量分率」とは、該塗料組成物中に含まれる全固形分に対する前記コアシェル型複合酸化物粒子の重量分率を意味し、以下も同じとする。
【0102】
さらに、前記水分散液の混合量を51.5g、77.2g、102.9g、128.7gおよび141.5gに変化させた以外は前記と同様な方法で、塗料組成物B(粒子の重量分率:20重量%)、塗料組成物C(粒子の重量分率:30重量%)、塗料組成物D(粒子の重量分率:40重量%)、塗料組成物E(粒子の重量分率:50重量%)および塗料組成物F(粒子の重量分率:55重量%)をそれぞれ調製する。
次いで、前記塗料組成物A〜Fをスピンコーター(ミカサ(株)製、MS−A200)を用いて40℃の温度に保たれたシリコンウエハー基材上に300rpmの回転速度でそれぞれ塗布したのち、120℃の温度で2時間乾燥させて塗膜を形成する。次に、各シリコンウエハー基材上に形成された塗膜について、分光エリプソメーター(ソプラ社製、SOPRA ESVG)を用いて塗膜屈折率Nav’(実測値)を測定する。
【0103】
次に、以下に示す体積分率・重量分率の変換式(式1を参照のこと)とマクスウェル−ガーネット(Maxwell-Garnett)の式(式2を参照のこと)を用いて、上記の粒子重量分率に対して理論上の塗膜屈折率Nav (計算値)を算出する。
次いで、これらの式に基づき算出した塗膜屈折率Navと、上記で測定した塗膜屈折率Nav’との偏差を求め、これより偏差平方を算出し、算出された偏差平方の和から偏差平方和を求める。この偏差平方和を、想定される粒子屈折率Np(たとえば、1.70〜2.70の範囲から少なくとも0.01刻みで想定された複数の想定粒子屈折率)ごとに求め、その最小値を示す屈折率を前記粒子の屈折率Np’とする。すなわち、これは最小二乗法による粒子屈折率の測定方法である。(この場合、前記想定粒子屈折率を横軸とし、さらに前記偏差平方和を縦軸としたグラフに前記の値をプロットすることが好ましい。)
【0104】
【数1】

【0105】
上記の数式1において、f(m)は全固形分に対する粒子の体積分率、mは全固形分に対する粒子の重量分率、dmはマトリックス成分の比重(ここでは、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの比重である1.07とする。)、dpはコアシェル型複合酸化物粒子の比重を意味する。ここで、前記dpはコアシェル型複合酸化物粒子の金属成分の含有量から計算して求めた比重であり、これらの粒子中に含まれるZrO2、TiO2、SiO2、SnO2、Al23の比重をそれぞれ5.60、4.26、2.20、7.00、3.97とする。
【0106】
【数2】

【0107】
上記の数式2において、Navは塗膜の屈折率、Nmはマトリックス成分の屈折率(ここでは、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物の屈折率である1.499とする。)で、Npはコアシェル型複合酸化物粒子の屈折率を意味する。
なお、この測定方法においては、1.45〜2.70の屈折率をもつ粒子群の屈折率を測定することができ、特に、以下に示す標準液法では測定できない1.70未満の屈折率および2.31を超える屈折率をもつ粒子群の屈折率を測定するのに適している。なお、この測定方法で求めた粒子の屈折率は、標準液法で測定した粒子の屈折率(ただし、1.70〜2.31の範囲)とほぼ一致した結果が得られている。
【0108】
(9)粒子の光触媒活性試験
コアシェル型複合酸化物微粒子の有機溶媒ゾル(固形分含有量20重量%)0.66gに純水9.34gを混合して調製した、固形分含有量6.6重量%の試料0.33gに、固形分含有量0.02重量%のサンセットイエロー染料のグリセリン溶液9.70gを混合する。次いで、これを長さ1mm、幅1cm、高さ5cmの石英セルに入れて密閉する。次に、I線(波長365nm)の波長域が選択された紫外線ランプ(AS ONE製SLUV−6)を用いて、前記石英セルに照射距離5.5cmから照射強度0.4mW/cm2(波長365nm換算)で60分、紫外線を照射する。
一方、紫外線照射前後において、前記試料の波長490nmにおけるそれぞれの吸光度(A0とA3)を測定して、以下の式から染料の退色変化率を算出する。さらに、以下の基準に基づき粒子の光触媒活性を評価する。
退色変化率(%)=(1−A3/A0)×100
【0109】
[評価基準]
退色変化率の小さい試料ほど、粒子の光触媒活性が抑制されているとして、以下の基準により、評価した。
○:退色変化率が20%未満
△:退色変化率が20%以上〜50%未満
×:退色変化率が50%以上
【0110】
(10)コア粒子に対するシェルの被覆率の評価
コア粒子に対するシェルの被覆率を、下記に示すコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の酸安定性試験により評価した。
コアシェル型複合酸化物微粒子を含む分散液(固形分含有量30重量%)30.0gに、12%塩酸0.1gを混合して1時間攪拌して試料を調製し、光路長10mmの石英セルに収納して、分光光度計(日本分光(株)製 V−550)を用いて波長500nmの透過率(Tr1)を測定する。あらかじめコアシェル型複合酸化物微粒子を含む分散液の上記透過率(Tr0)を測定しておき、透過率変化(Tr0−Tr1)を算出し、以下の基準で評価する。
【0111】
[評価基準]
前記透過率変化が小さいほどコア粒子に対するシェルの被覆率が高いとして、以下の基準で評価した。
○:透過率変化が20%未満
△:透過率変化が20%以上、50%未満
×:透過率変化が50%以上
【0112】
硬化性塗膜について
(11)膜硬度(Bayer値)の測定方法
磨耗試験機BTM(米コルツ社製)およびヘイズ値測定装置(NIPPON DENSGOKU製NDH2000)を使用し、実施例の調製例にて作成した被試験レンズと、基準レンズとのヘイズ値の変化によりBayer値を測定する。基準レンズは市販のプラスチックレンズ基材CR−39基材(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、PPG社製モノマー使用、基材の屈折率1.60)を使用し、まずそれぞれのヘーズ値を測定する。基準レンズの初期ヘーズ値をD(std0)、被試験レンズの初期ヘーズ値をD(test0)とする。それぞれのレンズを耐摩耗性試験機パンに設置し、その上に研磨材(専用砂)500gを充填し、600回左右に振動させ試験を行う。試験後の基準レンズの初期ヘーズ値をD(stdf)、被試験レンズの初期ヘーズ値をD(testf)とする。Bayer試験値(R)は以下の数式から算出する。
R=[D(stdf)−D(std0)]/[D(testf)−D(test0)]
【0113】
(12)塗膜の外観(曇り)の測定方法
内壁が黒色である箱の中に蛍光灯「商品名:メロウ5N」(東芝ライテック(株)製、三波長型昼白色蛍光灯)を取り付け、前記金属酸化物微粒子を含むハードコート層膜を有する試料基板を蛍光灯の直下に垂直に置き、これらの透明度(曇りの程度)を目視にて確認し、以下の基準で評価する。
A:曇りが無い
B:僅かに曇りがある
C:明らかな曇りがある
D:著しい曇りがある。
【0114】
(13)耐擦傷性
実施例の調製例にて作成した試験片の表面を、ボンスタースチールウール♯0000(日本スチールウール(株)製)に1kgの荷重をかけ、3cmの距離を50往復/100秒の条件で擦った後、傷の入り具合を目視にて判定し、以下の基準で評価した。
A:殆ど傷が入らない
B:若干の傷が入る
C:かなりの傷が入る
D:擦った面積のほぼ全面に傷が入る。
【0115】
(14)塗膜の耐候性試験
ハードコート層膜を形成した試料基板をキセノンウエザーメーター(スガ試験機(株)製X−75型)で曝露試験をした後、外観の確認および前記の密着性試験と同様の試験を行い、以下の基準で評価する。なお、曝露時間は、反射防止膜を有している基板は200時間、反射防止膜を有していない基板は50時間とする。
良好:剥離していないマス目の数が95個以上
不良:剥離していないマス目の数が95個未満。
【0116】
(15)塗膜の耐光性試験
退色試験用水銀ランプ(東芝(株)製H400−E)により紫外線を50時間照射し、試験前後のレンズ色の目視確認を行い、以下の基準で評価する。なお、ランプと試験片との照射距離は、70mmとし、ランプの出力は、試験片の表面温度が45±5℃となるように調整する。また、この試験は、反射防止膜をハードコート層の表面に施したプラスチックレンズを対象として行ったものである。
○:あまり変色が認められない
△:若干の変色が認められる
×:明らかな変色が認められる。
【実施例】
【0117】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。しかし、本発明は、これらの実施例に記載された範囲に限定されるものではない。
【0118】
[実施例1]
ジルコニウムを主成分とするコア粒子の水分散液(CZ−1)の調製
純水18.58kgにオキシ塩化ジルコニウム8水和物(太陽鉱工(株)製、ZrOCl2・8H2O)0.50kgを溶解し、これに濃度10重量%のKOH水溶液17.55kgを添加してジルコニウム水酸化物ヒドロゲル(ZrO2濃度1重量%)を調製した。ついで、得られたジルコニウム水酸化物ヒドロゲルを、限外濾過膜法により電導度が0.5mS/cm以下になるまで洗浄した。
上記操作により得られたZrO2として濃度1重量%のジルコニウム水酸化物ヒドロゲル36.6kgに、濃度10重量%のKOH水溶液7.18kgを加えて十分攪拌した後、濃度35重量%の過酸化水素水溶液200gを加えた。このとき、激しく発泡して溶液は透明になり、pHは11.4であった。
ついで、この溶液に濃度28.8重量%のアンモニア水溶液2.00kgを加えて充分攪拌して、ジルコニア系複合酸化物微粒子の前駆体スラリーを得た。このとき、前記スラリーは薄黄色になり、pHは13.4であった。
この前駆体スラリーをオートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、100L)に充填し、150℃で11時間水熱処理を行った後、遠心沈降法によりジルコニア系複合酸化物微粒子を分離し、これを充分に洗浄したのちイオン交換水に分散させて、ジルコニア系複合酸化物微粒子の水分散液3.59kgを得た。この水分散液の固形分含有量はZrO2換算基準で10重量%であった。
次いで、前記ジルコニア系複合酸化物微粒子の水分散液3.59kgをスプレードライヤー(NIRO社製NIRO ATOMIZER)に供して噴霧乾燥した。これにより、ジルコニア系複合酸化物微粒子の乾燥粉体0.32kgを得た。得られた乾燥粉体に含まれるジルコニア系複合酸化物微粒子の平均粒子径は約2μmであった。
次に、上記で得られた乾燥粉体0.32kgを、空気雰囲気下、500℃の温度にて2時間焼成して、ジルコニア系複合酸化物微粒子の焼成粉体0.30kgを得た。
上記で得られた焼成粉体0.21kgを純水0.19kgに分散させ、これに、濃度28.6%の酒石酸水溶液0.14kg、濃度50重量%のKOH水溶液0.06kgを加えて充分攪拌した。ついで、粒子径0.1〜0.2mmの石英ビーズ(MRCユニテック(株)製高純度シリカビーズ015)を加え、これを湿式粉砕機(カンペ(株)製バッチ式卓上サンドミル)に供して180分間、前記焼成粉体の粉砕及び分散処理を行った。その後、石英ビーズを目開き44μmのステンレス製フィルターを用いて分離・除去したのち、さらに純水1.70kgを添加して撹拌し、ジルコニア系複合酸化物微粒子の水分散液2.26kgを得た。この水分散液の固形分含有量は11重量%であった。
ついで、限外濾過膜を用いてイオン交換水で洗浄した後、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SANUPC)0.11kgを加えて脱イオン処理をした後、遠心分離機(日立工機(株)製CR−21G)に供して12,000rpmの速度で1時間処理して、ZrO2換算基準の固形分濃度が10重量%のコア粒子の水分散液(CZ−1)2.43kgを得た。前記コア粒子の水分散液(CZ−1)に含まれるコア粒子の平均粒子径は28nm、比表面積は153m2/gであった。
さらに、このコア粒子に含まれる金属成分の含有量は、各金属成分の酸化物換算基準で、ZrO298.28重量%およびK2O1.72重量%であった。
【0119】
コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)の調製
ケイ酸液の調製
市販の水ガラス(AGCエスアイテック(株)製)0.62kgを純水にて希釈したのち、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)を用いて脱アルカリして、ケイ酸をSiO2換算基準で2.0重量%含むケイ酸液6.00kgを得た。なお、このケイ酸液のpHは、2.3であった。
【0120】
工程(1)
上記で調製されたコア粒子の水分散液(CZ−1)(固形分含有量が10.0重量%)2.43kgにイオン交換水9.73kgを加えて、撹拌しながら90℃の温度に加熱したのち、これに前記ケイ酸液3.24kgおよびAl23換算基準で0.67重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液2.42kgのそれぞれを同時に4時間かけて徐々に添加し混合した。前記ケイ酸液に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、前記アルミン酸ナトリウム水溶液に含まれるアルミニウム成分をAl23で表したとき、酸化物換算基準の重量比はSiO2/Al23=4.0であった。また、シェルの被覆量はコア粒子100重量部に対して25重量部であった。
【0121】
工程(2)
次に、上記工程により調製された混合液を90℃の温度に保ちながら1時間攪拌することによって、ジルコニウムを主成分とするコア粒子をケイ素とアルミニウムからなる複合酸化物で被覆したコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液を得た。
【0122】
工程(3)
次いで、上記工程により得られたコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製ダイアイオンSK1BH)0.30kgを混合してpH3.5に調整した後、樹脂を分離せず、攪拌下で80℃に保ちながら7時間熟成した。その後、前記陽イオン交換樹脂を目開き44μmのステンレス製フィルターを用いて分離・除去したのち、固形分含有量が1.8重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液17.83kgを得た。
次に、得られたコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液を室温まで冷却してから、限外濾過膜(旭化成(株)製、SIP−1013)を用いて濃縮して固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(以下、「CSZ−1」という。)1.07kgを調製した。
【0123】
上記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)に含まれるコアシェル型複合酸化物微粒子中の金属元素の含有量を測定したところ、各金属元素の酸化物換算基準で、ZrO278.30重量%、SiO218.36重量%、Al232.80重量%、Na2O0.45重量%およびK2O0.10重量%であった。なお、この金属元素の含有量より求められる前記コアシェル型複合酸化物微粒子の比重は4.32、シェルのSiO2/Al23は6.6であった。また、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の平均粒子径は29nm、比表面積は204m2/g、単位表面積あたりの負電荷量は0.82μeq/m2であった。
このコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)のpHは3.8で、ヘーズは6.0%、粘度は7.0mPa・s、40℃で7日間加速試験を行った後の粘度は7.0mPa・sであった。
【0124】
また、上記の「粒子の屈折率測定法A」に記載の方法に基づき、分光エリプソメーターを用いて測定された塗膜屈折率Nav’は、前記塗料組成物中に含まれる粒子の重量分率mが10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、55重量%であるとき、それぞれ1.519、1.539、1.554、1.574、1.595、1.601であった。さらに、前記塗膜屈折率Nav’と前記体積分率・重量分率の変換式およびマクスウェル−ガーネットの式から算出される塗膜屈折率Navとから求められる偏差平方和の最小値は0.000402であり、その最小値を示す粒子の屈折率は1.81であった。これにより、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の屈折率は1.81であるとみなすことができた。因みに、上記の屈折率測定法B(標準液法)で測定された前記コアシェル型複合酸化物微粒子の屈折率は1.81であった。
【0125】
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)の調製
上記で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)1.07kgを限外濾過膜装置(旭化成(株)製濾過膜、SIP−1013)を用いて分散媒を水からメタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)に置換してコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)1.06kgを得た。その結果、得られたメタノール分散液中に含まれる固形分濃度は約30重量%であり、また水分含有量は約0.3重量%であった。
このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)のpHは10倍希釈時で5.9で、ヘーズは6.5%、粘度は2.0mPa・s、40℃で7日間加速試験を行った後の粘度は2.0mPa・sであった。
【0126】
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子の単位表面積あたりの負電荷量は0.82μeq/m2であった。
このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の光触媒活性試験を行ったところ、退色変化率は1%で、評価は○であった。このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の酸安定性試験を行ったところ、透過率変化は12%で、評価は○であった。
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)をロータリーエバポレーターにより固形分濃度40重量%に濃縮したときの粘度は3.4mPa・sであった。
【0127】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6040)149.3gおよびメタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)26.4gの混合液を入れた容器を用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液50.9gを滴下した。更に、この混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、メタノール224.7g、上記で調製した固形分濃度30重量%のコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)502.3g、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル(ダウケミカル製)39.8g、トリス(2,4-ペンタンジオナト)アルミニウムIII(東京化成工業(株)製)3.0gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.4gを加え、室温で一昼夜攪拌して、光学基材用塗料組成物としてのハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)を調製した。
【0128】
[実施例2]
ジルコニウムを主成分とするコア粒子の水分散液(CZ−2)の調製
実施例1のコア粒子の水分散液(CZ−1)を調製する工程において、ジルコニア系複合酸化物微粒子の前駆体スラリーをオートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、100L)による水熱処理を行わないで噴霧乾燥し、得られた乾燥粉体を焼成せずに、湿式粉砕機により粉砕および分散処理した以外は実施例1と同様の方法で、ZrO2換算基準の固形分濃度が10重量%のコア粒子の水分散液(CZ−2)2.46kgを調製した。前記コア粒子の水分散液(CZ−2)に含まれるコア粒子の平均粒子径は24nm、比表面積は185m2/gであった。
さらに、このコア粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、ZrO298.24重量%およびK2O1.76重量%であった。
【0129】
コアシェル型複合酸化物微粒子水分散液(CSZ−2)の調製
コア粒子の水分散液として、コア粒子の水分散液(CZ−1)のかわりに本実施例で調製したコア粒子の水分散液(CZ−2)を用いた以外は実施例1に記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)と同様の工程により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−2)1.08kgを得た。
このときシェルの製造に用いたケイ酸液中のケイ素成分をSiO2で表し、アルミン酸ナトリウム水溶液中のアルミニウム成分をAl23でしたとき、その酸化物換算基準でSiO2/Al23重量比は4.0であった。また、シェル被覆量はコア粒子100重量部に対して25.0重量部であった。
【0130】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−2)に含まれるコアシェル型複合酸化物微粒子の金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、ZrO278.60重量%、SiO218.52重量%、Al232.84重量%、Na2O0.48重量%およびK2O0.13重量%であった。なお、この金属含有量より求められる前記金属酸化物微粒子の比重は4.31、SiO2/Al23重量比は6.5であった。
さらに、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の平均粒子径は25nm、比表面積は235m2/g、負電荷量は0.75μeq/m2であった。
【0131】
このコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−2)のpHは4.0で、ヘーズは2.7%、粘度は7.2mPa・s、40℃で7日間加速試験を行った後の粘度は7.2mPa・sであった。
また、上記の「粒子の屈折率測定法A」に記載の方法に基づき、分光エリプソメーターを用いて測定された塗膜屈折率Nav’は、前記塗料組成物中に含まれる粒子の重量分率mが10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、55重量%であるとき、それぞれ1.509、1.529、1.550、1.571、1.587、1.595であった。さらに、前記塗膜屈折率Nav’と前記体積分率・重量分率の変換式およびマクスウェル−ガーネットの式から算出される塗膜屈折率Navとから求められる偏差平方和の最小値は0.000107であり、その最小値を示す粒子の屈折率は1.79であった。これにより、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の屈折率は1.79であるとみなすことができた。因みに、上記の屈折率測定法B(標準液法)で測定された前記コアシェル型複合酸化物の屈折率は1.79であった。
【0132】
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−2−M)の調製
実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)を調製する工程において、コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)(固形分含有量が30.0重量%)のかわりに本実施例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−2)(固形分含有量が30.0重量%)を用いた以外は実施例1と同様な調製方法により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−2−M)1.07kgを得た。これより得られたメタノール分散液中に含まれる水分含有量は約0.3重量%であった。
また、10倍希釈時のpHは6.0で、ヘーズは3.1%、粘度は2.1mPa・s、40℃で7日間加速試験を行った後の粘度は2.1mPa・sであった。
【0133】
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子の単位表面積あたりの負電荷量は0.75μeq/m2であった。
このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の光触媒活性試験を行ったところ、退色変化率は1%で、評価は○であった。このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の酸安定性試験を行ったところ、透過率変化は18%で、評価は○であった。
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−2−M)をロータリーエバポレーターにより固形分濃度40重量%に濃縮したときの粘度は5.9mPa・sであった。
【0134】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H2)の調製
コアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)502.3gのかわりにコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−2−M)501.1gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H2)を調製した。
【0135】
[実施例3]
チタニウムを主成分とするコア粒子の水分散液(CT−1)の調製
四塩化チタン(大阪チタニウムテクノロジ-ズ(株)製)をTiO2換算基準で7.75重量%含む四塩化チタン水溶液6.56kgと、アンモニアを15重量%含むアンモニア水(宇部興産(株)製)2.54kgとを混合し、pH9.5の白色スラリー液を調製した。次いで、このスラリーを濾過した後、イオン交換水で洗浄して、固形分含有量が10重量%の含水チタン酸ケーキ5.35kgを得た。
次に、このケーキに、過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製)6.12kgとイオン交換水20.00kgとを加えた後、80℃の温度で1時間、撹拌下で加熱し、さらにイオン交換水22.04kgを加えて、過酸化チタン酸をTiO2換算基準で1重量%含む過酸化チタン酸水溶液を53.51kg得た。この過酸化チタン酸水溶液は、透明な黄褐色でpHは8.5であった。
【0136】
次いで、前記過酸化チタン酸水溶液53.51kgに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)2.60kgを混合して、これに、スズ酸カリウム(昭和化工(株)製)をSnO2換算基準で1重量%含むスズ酸カリウム水溶液6.69kgを撹拌下で徐々に添加した。
次に、カリウムイオンなどを取り込んだ陽イオン交換樹脂を分離した後、平均粒子径が7nmのシリカ微粒子を15重量%含むシリカゾル(日揮触媒化成(株)製)0.65kgとイオン交換水9.15kgとを混合して、オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、120L)中で165℃の温度で18時間、加熱した。
【0137】
次に、得られた混合水溶液を室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、ACV−3010)で濃縮して、固形分含有量が10重量%のチタニア系複合酸化物微粒子の水分散液7.00kgを得た。
次いで、前記チタニア系複合酸化物微粒子の水分散液7.00kgをスプレードライヤー(NIRO社製NIRO ATOMIZER)に供して噴霧乾燥した。これにより、平均粒子径が約2μmのチタニア系複合酸化物微粒子からなる乾燥粉体0.63kgを得た。
【0138】
次に、上記で得られたチタニア系複合酸化物微粒子の乾燥粉体0.63kgを、空気雰囲気下、500℃の温度にて2時間焼成して、チタニア系複合酸化物微粒子の焼成粉体0.59kgを得た。
上記で得られたチタニア系複合酸化物微粒子の焼成粉体0.21kgを純水0.39kgに分散させ、これに、濃度28.6%の酒石酸水溶液0.14kg、濃度50重量%のKOH水溶液0.06kgを加えて充分攪拌した。ついで、粒子径0.1〜0.2mmの石英ビーズ(MRCユニテック(株)製高純度シリカビーズ015)を加え、これを湿式粉砕機(カンペ(株)製バッチ式卓上サンドミル)に供して180分間、前記チタニア系複合酸化物微粒子の焼成粉体の粉砕及び分散処理を行った。その後、石英ビーズを目開き44μmのステンレス製フィルターを用いて分離・除去したのち、さらに純水1.37kgを添加して撹拌し、固形分含有量が11重量%のチタニア系複合酸化物微粒子の水分散液1.73kgを得た。
【0139】
ついで、限外濾過膜を用いてイオン交換水で洗浄した後、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SANUPC)0.09kgを加えて脱イオン処理をした後、遠心分離機(日立工機(株)製CR−21G)に供して12,000rpmの速度で1時間処理して、TiO2としてのが濃度10重量%のコア粒子の水分散液(CT−1)1.87kgを調製した。
前記コア粒子の水分散液に含まれるコア粒子の平均粒子径は25nm、比表面積は212m2/gであった。
さらに、このコア粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO277.20重量%、SnO29.73重量%、SiO211.46重量%およびK2O1.61重量%であった。
【0140】
コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CST−1)の調製
実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)を調製する工程において、コア粒子の水分散液(CZ−1)(固形分含有量が10.0重量%)を本実施例で調製したコア粒子の水分散液(CT−1)(固形分含有量が10.0重量%)に変更した以外は実施例1と同様な調製方法により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CST−1)0.82kgを得た。
この時、シェルの製造に用いたケイ酸液に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、アルミン酸ナトリウム水溶液に含まれるアルミニウム成分をAl23で表したとき、その酸化物換算基準での重量比SiO2/Al23は4.0であった。また、シェル被覆量はコア粒子100重量部に対して25.0重量部であった。
【0141】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CST−1)に含まれるコアシェル型複合酸化物微粒子中の金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO258.94重量%、SnO26.74重量%、SiO234.72重量%、Al234.01重量%、Na2O0.47重量%およびK2O0.12重量%であった。なお、この金属含有量より求められる前記コアシェル型複合酸化物微粒子の比重は3.27、シェルのSiO2/Al23重量比は6.7であった。
さらに、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の平均粒子径は26nm、比表面積は278m2/g、負電荷量は0.57μeq/m2であった。
【0142】
また、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液のpHは3.3で、ヘーズは9.9%、粘度は6.8mPa・sで、40℃で7日間加速試験を行った後の粘度は6.8mPa・sであった。
また、上記の「粒子の屈折率測定法A」に記載の方法に基づき、分光エリプソメーターを用いて測定された塗膜屈折率Nav’は、前記塗料組成物中に含まれる粒子の重量分率mが10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、55重量%であるとき、それぞれ1.541、1.561、1.576、1.596、1.615、1.619であった。さらに、前記塗膜屈折率Nav’と前記体積分率・重量分率の変換式およびマクスウェル−ガーネットの式から算出される塗膜屈折率Navとから求められる偏差平方和の最小値は0.001378であり、その最小値を示す粒子の屈折率は1.83であった。これにより、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の屈折率は1.83であるとみなすことができた。因みに、上記の屈折率測定法B(標準液法)で測定された前記コアシェル型複合酸化物の屈折率は1.83であった。
【0143】
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)の調製
実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)を調製する工程において、コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)(固形分含有量が30.0重量%)のかわりに本実施例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CST−1)(固形分含有量が30.0重量%)を用いた以外は実施例1と同様な調製方法により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)0.81kgを得た。これより得られたメタノール分散液中に含まれる水分含有量は約0.3重量%であった。
また、10倍希釈時のpHは5.2で、ヘーズは9.1%、粘度は2.4mPa・s、40℃で7日間加速試験を行った後の粘度は2.4mPa・sであった。
【0144】
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子の単位表面積あたりの負電荷量は0.57μeq/m2であった。
このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の光触媒活性試験を行ったところ、退色変化率は6%で、評価は○であった。このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の酸安定性試験を行ったところ、透過率変化は10%で、評価は○であった。
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)をロータリーエバポレーターにより固形分濃度40重量%に濃縮したときの粘度は3.8mPa・sであった。
【0145】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H3)の調製
コアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)502.3gのかわりに本実施例で調製したコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−1−M)395.3gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H3)を調製した。
【0146】
[実施例4]
チタニウムを主成分とするコア粒子の水分散液(CT−2)の調製
四塩化チタン(大阪チタニウムテクノロジ-ズ(株)製)をTiO2換算基準で7.75重量%含む四塩化チタン水溶液7.63kgと、アンモニアを15重量%含むアンモニア水(宇部興産(株)製)2.96kgとを混合し、pH9.5の白色スラリー液を調製した。次いで、このスラリーを濾過した後、イオン交換水で洗浄して、固形分含有量が10重量%の含水チタン酸ケーキ6.22kgを得た。
次に、このケーキに、過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製)7.11kgとイオン交換水20.00kgとを加えた後、80℃の温度で1時間、撹拌下で加熱し、さらにイオン交換水28.89kgを加えて、過酸化チタン酸をTiO2換算基準で1重量%含む過酸化チタン酸水溶液を62.22kg得た。この過酸化チタン酸水溶液は、透明な黄褐色でpHは8.4であった。
【0147】
次いで、前記過酸化チタン酸水溶液62.22kgに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)3.00kgを混合して、これに、スズ酸カリウム(昭和化工(株)製)をSnO2換算基準で1重量%含むスズ酸カリウム水溶液7.78kgを撹拌下で徐々に添加した。
次に、カリウムイオンなどを取り込んだ陽イオン交換樹脂を分離した後、オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、120L)中で165℃の温度で18時間、加熱した。
【0148】
次に、得られた混合水溶液を室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、ACV−3010)で濃縮して、固形分含有量が10重量%のチタニア系複合酸化物微粒子の水分散液7.00kgを得た。
次いで、前記チタニア系複合酸化物微粒子の水分散液7.00kgをスプレードライヤー(NIRO社製NIRO ATOMIZER)に供して噴霧乾燥した。これにより、平均粒子径が約2μmのチタニア系複合酸化物微粒子の乾燥粉体0.64kgを得た。
【0149】
次に、上記で得られた乾燥粉体0.64kgを、空気雰囲気下、500℃の温度にて2時間焼成して、チタニア系複合酸化物微粒子の焼成粉体0.59kgを得た。
上記で得られた焼成粉体0.21kgを純水0.40kgに分散させ、これに、濃度28.6%の酒石酸水溶液0.14kg、濃度50重量%のKOH水溶液0.06kgを加えて充分攪拌した。ついで、粒子径0.1〜0.2mmの石英ビーズ(MRCユニテック(株)製高純度シリカビーズ015)を加え、これを湿式粉砕機(カンペ(株)製バッチ式卓上サンドミル)に供して180分間、前記チタン系複合酸化物微粒子の焼成粉体の粉砕及び分散処理を行った。その後、石英ビーズを目開き44μmのステンレス製フィルターを用いて分離・除去したのち、さらに純水1.40kgを添加して撹拌し、固形分含有量が11重量%のチタニア系複合酸化物微粒子の水分散液1.77kgを得た。
【0150】
ついで、前記水分散液を限外濾過膜を用いてイオン交換水で洗浄した後、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SANUPC)0.09kgを加えて脱イオン処理をした後、遠心分離機(日立工機(株)製CR−21G)に供して12,000rpmの速度で1時間処理して、TiO2としての濃度10重量%のコア粒子の水分散ゾル(CT−2)1.91kgを調製した。上記コア粒子の水分散液(CT−2)に含まれるコア粒子の平均粒子径は26nm、比表面積は153m2/gであった。
さらに、このコア粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO287.29重量%、SnO210.91重量%およびK2O1.80重量%であった。
【0151】
コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CST−2)の調製
実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)を調製する工程において、コア粒子の水分散液(CZ−1)(固形分含有量が10.0重量%)のかわりに本実施例で調製したコア粒子の水分散液(CT−2)(固形分含有量が10.0重量%)を用いた以外は実施例1と同様な調製方法により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CST−2)0.84kgを得た。
この時、シェルの調製に用いたケイ酸液に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、アルミン酸ナトリウム水溶液中のアルミニウム成分をAl23で表したとき、その酸化物換算基準でのSiO2/Al23重量比は4.0であった。また、シェル被覆量はコア粒子100重量部に対して25.0重量部であった。
【0152】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CST−2)に含まれるコアシェル型複合酸化物微粒子中の金属成分の含有量は、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO265.47重量%、SnO28.18重量%、SiO218.44重量%、Al232.83重量%、Na2O0.46重量%およびK2O0.11重量%であった。なお、この金属含有量より求められる前記金属酸化物微粒子の比重は3.70、シェルのSiO2/Al23重量比は6.5であった。
さらに、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の平均粒子径は27nm、比表面積は204m2/g、負電荷量は0.70μeq/m2であった。
【0153】
また、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液のpHは3.7、ヘーズは9.9%、粘度は6.8mPa・sであって、40℃で7日間加速試験後の粘度は6.8であった。
また、上記の「粒子の屈折率測定法A」に記載の方法に基づき、分光エリプソメーターを用いて測定された塗膜屈折率Nav’は、前記塗料組成物中に含まれる粒子の重量分率mが10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、55重量%であるとき、それぞれ1.552、1.601、1.654、1.702、1.778、1.796であった。さらに、前記塗膜屈折率Nav’と前記体積分率・重量分率の変換式およびマクスウェル−ガーネットの式から算出される塗膜屈折率Navとから求められる偏差平方和の最小値は0.000619であり、その最小値を示す粒子の屈折率は2.37であった。これにより、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の屈折率は2.37であるとみなすことができた。
【0154】
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−2−M)の調製
実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1)を調製する工程において、コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)(固形分含有量が30.0重量%)のかわりに本実施例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CST−2)(固形分含有量が30.0重量%)を用いた以外は実施例1と同様な調製方法により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−2−M)0.83kgを得た。これより得られたメタノール分散液中に含まれる水分含有量は約0.3重量%であった。
また、10倍希釈時のpHは5.9で、ヘーズは10.4%、粘度は1.9mPa・s、40℃で7日間加速試験を行った後の粘度は1.9mPa・sであった。
【0155】
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子の単位表面積あたりの負電荷量は0.70μeq/m2であった。
このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の光触媒活性試験を行ったところ、退色変化率は12%で、評価は○であった。このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の酸安定性試験を行ったところ、透過率変化は14%で、評価は○であった。
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−2−M)をロータリーエバポレーターにより固形分濃度40重量%に濃縮したときの粘度は3.0mPa・sであった。
【0156】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H4)の調製
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)502.3gのかわりに本実施例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−2−M)309.8gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H4)を調製した。
【0157】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H10)の調製
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)502.3gのかわりにコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−2−M)516.3gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H10)を調製した。
【0158】
プライマー層膜形成用塗料組成物(P1)の調製
市販の熱可塑性樹脂であるポリウレタンエマルジョン「スーパーフレックス150」(第一工業製薬製、水分散型ウレタンエラストマー固形分含有量30%)142.1gを入れた容器を用意し、これに、実施例4で調製したコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−2−M)227.3gおよびイオン交換水97.1gを加えて、1時間攪拌した。
次いで、これらの混合液に、メタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)531.0g、更にレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7604)0.3gを加えて、室温で一昼夜攪拌して、プライマー層膜形成用塗料組成物(P−1)を調製した。
【0159】
[実施例5]
スズを主成分とするコア粒子の水分散液(CN−1)の調製
イオン交換水3.22kgに硝酸アンモニウム5.2gと15%アンモニア水8.0gを入れ攪拌し、50℃に昇温した。この中にイオン交換水1.72kgにスズ酸カリウム0.61kgを溶解した液を10時間かけてローラーポンプで添加した。このときpHコントローラーでpHを8.8に保つよう濃度10重量%の硝酸を添加して調整した。添加終了後1時間50℃をキープした後、濃度10重量%の硝酸を添加しpHを3.0まで下げた。
次に限外濾過膜で濾水電導度が10μS/cmになるまで純水で洗浄した後、限外濾過膜で濃縮し取り出した。このとき取り出した液量は2.10kgで固形分(SnO2)濃度は12重量%であった。このスラリーの中に濃度16重量%のリン酸水溶液18.6gを添加し、0.5時間攪拌して酸化スズ系複合酸化物微粒子の前駆体スラリーを得た。
【0160】
次いで、前記酸化スズ系複合酸化物微粒子の前駆体スラリー2.12kgをスプレードライヤー(NIRO社製NIRO ATOMIZER)に供して噴霧乾燥した。これにより、平均粒子径が約2μmの酸化スズ系複合酸化物微粒子の乾燥粉体0.28kgを得た。
次に、上記で得られた酸化スズ系複合酸化物微粒子の乾燥粉体0.28kgを、空気雰囲気下、700℃の温度にて2時間焼成して、酸化スズ系複合酸化物微粒子の焼成粉体0.25kgを得た。
【0161】
上記で得られた酸化スズ系複合酸化物微粒子の焼成粉体0.22kgを純水0.39kgに分散させ、これに濃度50重量%のKOH水溶液1.40gを加えて充分攪拌した。ついで、粒子径0.1〜0.2mmの石英ビーズ(MRCユニテック(株)製高純度シリカビーズ015)を加え、これを湿式粉砕機(カンペ(株)製バッチ式卓上サンドミル)に供して180分間、前記酸化スズ系複合酸化物微粒子の焼成粉体の粉砕及び分散処理を行った。その後、石英ビーズを目開き44μmのステンレス製フィルターを用いて分離・除去したのち、さらに純水1.76kgを添加して撹拌し、固形分含有量が11重量%の酸化スズ系複合酸化物微粒子の水分散液2.34kgを得た。
【0162】
ついで、この水分散液を遠心分離機(日立工機(株)製CR−21G)に供して12,000rpmの速度で1時間処理して、SnO2としての濃度10重量%のコア粒子の水分散液(CN−1)2.53kgを調製した。前記コア粒子の水分散液(CN−1)に含まれるコア粒子の平均粒子径は35nm、比表面積は70m2/gであった。
さらに、このコア粒子中に含まれる金属成分の含有量は、各金属成分の酸化物換算基準で、SnO297.51重量%、P251.00重量%およびK2O1.51重量%であった。
【0163】
コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSN−1)の調製
実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−2)を調製する工程において、コア粒子の水分散液(CZ−1)(固形分含有量が10.0重量%)を用いるかわりに本実施例で調製したコア粒子の水分散液(CN−1)(固形分含有量が10.0重量%)を用いた以外は実施例1と同様な調製方法により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSN−1)1.11kgを得た。
ここで、シェルの調製に用いたケイ酸液珪酸に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、アルミン酸ナトリウム水溶液に含まれるアルミニウム成分をAl23で表したとき、酸化物換算基準でのSiO2/Al23重量比は4.0であった。また、シェル被覆量はコア粒子100重量部に対して25.0重量部であった。
【0164】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSN−1)に含まれるコアシェル型複合酸化物微粒子中の金属成分の含有量は、各金属成分の酸化物換算基準で、SnO273.85重量%、P250.80重量%、SiO221.53重量%、Al233.34重量%、Na2O0.43重量%およびK2O0.10重量%であった。なお、この金属含有量より求められる前記金属酸化物微粒子の比重は4.66、シェルのSiO2/Al23重量比は6.4であった。
さらに、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の平均粒子径は36nm、比表面積は136m2/g、負電荷量は0.92μeq/m2であった。
【0165】
また、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSN−1)のpHは3.6で、ヘーズは2.3%、粘度は8.0mPa・sであって、40℃で7日間加速試験後の粘度は8.1mPa・sであった。
また、上記の「粒子の屈折率測定法A」に記載の方法に基づき、分光エリプソメーターを用いて測定された塗膜屈折率Nav’は、前記塗料組成物中に含まれる粒子の重量分率mが10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、55重量%であるとき、それぞれ1.509、1.520、1.532、1.541、1.551、1.558であった。さらに、前記塗膜屈折率Nav’と前記体積分率・重量分率の変換式およびマクスウェル−ガーネットの式から算出される塗膜屈折率Navとから求められる偏差平方和の最小値は0.000059であり、その最小値を示す粒子の屈折率は1.68であった。これにより、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の屈折率は1.68であるとみなすことができた。因みに、上記の屈折率測定法B(標準液法)で測定された前記コアシェル型複合酸化物の屈折率は1.68であった。
【0166】
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSN−1−M)の調製
実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)を調製する工程において、コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)(固形分含有量が30.0重量%)を用いるかわりに本実施例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSN−1)(固形分含有量が30.0重量%)を用いた以外は実施例1と同様な調製方法により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSN−1−M)1.10kgを得た。得られたメタノール分散液中に含まれる水分含有量は約0.3重量%であった。
また、このメタノール分散液の10倍希釈時のpHは6.4で、ヘーズは2.7%、粘度は2.8mPa・s、40℃で7日間加速試験を行った後の粘度は2.9mPa・sであった。
【0167】
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子の単位表面積あたりの負電荷量は0.92μeq/m2であった。
このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の光触媒活性試験を行ったところ、退色変化率は2%で、評価は○であった。このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の酸安定性試験を行ったところ、透過率変化は18%で、評価は○であった。
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSN−1−M)をロータリーエバポレーターにより固形分濃度40重量%に濃縮したときの粘度は8.2mPa・sであった。
【0168】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H5)の調製
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)502.3gを用いるかわりに本実施例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSN−1−M)541.9gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H5)を調製した。
【0169】
[実施例6]
コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−3)の調製
実施例1で調製したコア粒子の水分散液(CZ−1)を用いて、実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)を調製する工程において、工程(1)で使用したケイ酸液を3.24kgから3.64kgに変更し、アルミン酸ナトリウム水溶液を2.42kgから1.24kgに変更した以外は、実施例1と同様の工程により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−3)1.02kgを得た。
このとき、前記ケイ酸液に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、アルミン酸ナトリウム水溶液に含まれるアルミニウム成分をAl23で表したとき、その酸化物換算基準でのSiO2/Al23重量比は8.80であった。また、シェル被覆量はコア粒子100重量部に対して25.0重量部であった。
【0170】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−3)中に含まれるコアシェル型複合酸化物微粒子の金属成分の含有量は、各金属成分の酸化物換算基準で、ZrO274.84重量%、SiO223.15重量%、Al231.65重量%、Na2O0.25重量%およびK2O0.11重量%であった。なお、この金属含有量より求められる前記金属酸化物微粒子の比重は4.10、シェルのSiO2/Al23重量比は14.0であった。
さらに、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の平均粒子径は29nm、比表面積は195m2/g、負電荷量は0.66μeq/m2であった。
【0171】
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−3)のpHは3.4で、ヘーズは6.3%、粘度は7.4mPa・sで、40℃で7日間加速試験後の粘度は7.2 mPa・sであった。
また、上記の「粒子の屈折率測定法A」に記載の方法に基づき、分光エリプソメーターを用いて測定された塗膜屈折率Nav’は、前記塗料組成物中に含まれる粒子の重量分率mが10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、55重量%であるとき、それぞれ1.518、1.538、1.555、1.575、1.598、1.604であった。さらに、前記塗膜屈折率Nav’と前記体積分率・重量分率の変換式およびマクスウェル−ガーネットの式から算出される塗膜屈折率Navとから求められる偏差平方和の最小値は0.000139であり、その最小値を示す粒子の屈折率は1.81であった。これにより、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の屈折率は1.81であるとみなすことができた。因みに、上記の屈折率測定法B(標準液法)で測定された前記コアシェル型複合酸化物の屈折率は1.81であった。
【0172】
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−3−M)の調製
実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)を調製する工程において、コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)(固形分含有量が30.0重量%)を用いるかわりに、本実施例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−3)(固形分含有量が30.0重量%)を用いた以外は実施例1と同様な調製方法により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−3−M)1.01kgを得た。これより得られたメタノール分散液中に含まれる水分含有量は約0.3重量%であった。
また、10倍希釈時のpHは5.6で、ヘーズは6.8%、粘度は2.3mPa・s、40℃で7日間加速試験を行った後の粘度は2.4mPa・sであった。
【0173】
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子の単位表面積あたりの負電荷量は0.66μeq/m2であった。
このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の光触媒活性試験を行ったところ、退色変化率は1%で、評価は○であった。このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の酸安定性試験を行ったところ、透過率変化は15%で、評価は○であった。
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子(CSZ−3)メタノール分散ゾルをロータリーエバポレーターにより固形分濃度40重量%に濃縮したときの粘度は37.6mPa・sであった。
【0174】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H6)の調製
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)502.3gのかわりに本実施例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−3−M)476.7gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H6)を調製した。
【0175】
[実施例7]
コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−4)の調製
実施例で調製したコア粒子の水分散液(CZ−1)を用いて、実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)を調製する工程において、工程(1)で使用したケイ酸液を3.24kgから2.70kgに変更し、アルミン酸ナトリウム水溶液を2.42kgから4.04kgに変更した以外は、実施例1と同様の工程により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−4)1.13kgを得た。
上記珪酸水溶液中の珪素成分をSiO2で表し、さらにアルミン酸ナトリウム水溶液中のアルミニウム成分をAl23で表すとき、その酸化物換算基準でSiO2/Al23は2.0であった。また、シェル被覆量はコア粒子100重量部に対して25.0重量部であった。
【0176】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−4)含まれるコアシェル型複合酸化物微粒子の金属成分の含有量は、各金属成分の酸化物換算基準で、ZrO275.04重量%、SiO218.55重量%、Al235.75重量%、Na2O0.51重量%およびK2O0.15重量%であった。なお、この金属含有量より求められる前記金属酸化物微粒子の比重は4.27、シェルのSiO2/Al23重量比は3.2であった。
また、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の平均粒子径は29nm、比表面積は213m2/g、負電荷量は1.46μeq/m2であった。
【0177】
さらに、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液のpHは4.0で、ヘーズは5.8%、粘度は7.5mPa・s、40℃で7日間加速試験を行った後の粘度は7.5mPa・sであった。
また、上記の「粒子の屈折率測定法A」に記載の方法に基づき、分光エリプソメーターを用いて測定された塗膜屈折率Nav’は、前記塗料組成物中に含まれる粒子の重量分率mが10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、55重量%であるとき、それぞれ1.518、1.537、1.556、1.574、1.596、1.602であった。さらに、前記塗膜屈折率Nav’と前記体積分率・重量分率の変換式およびマクスウェル−ガーネットの式から算出される塗膜屈折率Navとから求められる偏差平方和の最小値は0.000171であり、その最小値を示す粒子の屈折率は1.81であった。これにより、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の屈折率は1.81であるとみなすことができた。因みに、上記の屈折率測定法B(標準液法)で測定された前記コアシェル型複合酸化物の屈折率は1.81であった。
【0178】
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−4−M)の調製
実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)を調製する工程において、コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)(固形分含有量が30.0重量%)を用いるかわりに本実施例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−4)(固形分含有量が30.0重量%)を用いた以外は実施例1と同様な調製方法により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−4−M)1.12kgを得た。得られたメタノール分散液中に含まれる水分含有量は約0.3重量%であった。
また、10倍希釈時のpHは6.2で、ヘーズは6.3%、粘度は2.4mPa・s、40℃で7日間加速試験を行った後の粘度は2.4mPa・sであった。
【0179】
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子の単位表面積あたりの負電荷量は1.46μeq/m2であった。
このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の光触媒活性試験を行ったところ、退色変化率は1%で、評価は○であった。このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の酸安定性試験を行ったところ、透過率変化は17%で、評価は○であった。
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−4−M)をロータリーエバポレーターにより固形分濃度40重量%に濃縮したときの粘度は3.6mPa・sであった。
【0180】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H7)の調製
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)502.3gのかわりにコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−4−M)496.5gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H7)を調製した。
【0181】
[実施例8]
コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−5)の調製
実施例で調製したコア粒子の水分散液(CZ−1)を用いて、実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)を調製する工程において、工程(1)で使用したケイ酸液を3.24kgから1.08kgに変更し、アルミン酸ナトリウム水溶液を2.42kgから0.81kgに変更した以外は、実施例1と同様の工程により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−5)1.13kgを得た。
このとき、シェルの調製に用いたケイ酸液に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、アルミン酸ナトリウム水溶液に含まれるアルミニウム成分をAl23で表すとき、その酸化物換算基準でのSiO2/Al23重量比は4.0であった。また、シェル被覆量はコア粒子100重量部に対して10.0重量部であった。
【0182】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−5)中に含まれるコアシェル型複合酸化物微粒子の金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、ZrO291.23重量%、SiO27.32重量%、Al231.14重量%、Na2O0.21重量%およびK2O0.10重量%であった。なお、この金属含有量より求められる前記金属酸化物微粒子の比重は5.01、シェルのSiO2/Al23重量比は6.4であった。
また、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の平均粒子径は29nm、比表面積は180m2/g、負電荷量は0.62μeq/m2であった。
【0183】
さらに、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液のpHは3.3で、ヘーズは2.3%、粘度は7.9mPa・s、40℃で7日間加速試験を行った後の粘度は8.0mPa・sであった。
また、上記の「粒子の屈折率測定法A」に記載の方法に基づき、分光エリプソメーターを用いて測定された塗膜屈折率Nav’は、前記塗料組成物中に含まれる粒子の重量分率mが10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、55重量%であるとき、それぞれ1.523、1.554、1.576、1.595、1.626、1.633であった。さらに、前記塗膜屈折率Nav’と前記体積分率・重量分率の変換式およびマクスウェル−ガーネットの式から算出される塗膜屈折率Navとから求められる偏差平方和の最小値は0.000570であり、その最小値を示す粒子の屈折率は1.97であった。これにより、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の屈折率は1.97であるとみなすことができた。因みに、上記の屈折率測定法B(標準液法)で測定された前記コアシェル型複合酸化物の屈折率は1.97であった。
【0184】
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−5−M)の調製
実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)を調製する工程において、コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)(固形分含有量が30.0重量%)を用いるかわりに本実施例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−5)(固形分含有量が30.0重量%)を用いた以外は実施例1と同様な調製方法により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−5−M)0.83kgを得た。得られたメタノール分散液中に含まれる水分含有量は約0.3重量%であった。
また、このメタノール分散液の10倍希釈時のpHは5.3で、ヘーズは7.1%、粘度は2.8mPa・s、40℃で7日間加速試験を行った後の粘度は2.9mPa・sであった。
【0185】
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子の単位表面積あたりの負電荷量は0.62μeq/m2であった。
このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の光触媒活性試験を行ったところ、退色変化率は1%で、評価は○であった。このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の酸安定性試験を行ったところ、透過率変化は18%で、評価は○であった。
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−5−M)をロータリーエバポレーターにより固形分濃度40重量%に濃縮したときの粘度は54.0mPa・sであった。
【0186】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H8)の調製
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)502.3gを用いるかわりに本実施例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−5−M)512.6gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H8)を調製した。
【0187】
[実施例9]
コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−6)の調製
実施例1で調製したコア粒子の水分散液(CZ−1)を用いて、実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)を調製する工程において、工程(1)で使用したケイ酸液を3.24kgから14.60kgに変更し、アルミン酸ナトリウム水溶液を2.42kgから10.89kgに変更した以外は、実施例1と同様の工程により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−6)2.26kgを得た。
このとき、シェルの調製に用いたケイ酸液に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、アルミン酸ナトリウム水溶液に含まれるアルミニウム成分をAl23で表すとき、その酸化物換算基準でのSiO2/Al23重量比は4.0であった。また、シェル被覆量はコア粒子100重量部に対して60.0重量部であった。
【0188】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−6)に含まれるコアシェル型複合酸化物微粒子の金属成分の含有量は、各金属成分の酸化物換算基準で、ZrO248.93重量%、SiO243.70重量%、Al236.72重量%、Na2O0.54重量%およびK2O0.11重量%であった。なお、この金属含有量より求められる前記金属酸化物微粒子の比重は3.28、シェルのSiO2/Al23重量比は6.5であった。
さらに、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の平均粒子径は32nm、比表面積は312m2/g、負電荷量は0.74μeq/m2であった。
【0189】
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−6)のpHは4.1で、ヘーズは2.0%、粘度は7.6mPa・s、40℃で7日間加速試験を行った後の粘度は7.6mPa・sであった。
また、上記の「粒子の屈折率測定法A」に記載の方法に基づき、分光エリプソメーターを用いて測定された塗膜屈折率Nav’は、前記塗料組成物中に含まれる粒子の重量分率mが10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、55重量%であるとき、それぞれ1.515、1.538、1.558、1.566、1.567、1.574であった。さらに、前記塗膜屈折率Nav’と前記体積分率・重量分率の変換式およびマクスウェル−ガーネットの式から算出される塗膜屈折率Navとから求められる偏差平方和の最小値は0.000734であり、その最小値を示す粒子の屈折率は1.70であった。これにより、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の屈折率は1.70であるとみなすことができた。因みに、上記の屈折率測定法B(標準液法)で測定された前記コアシェル型複合酸化物の屈折率は1.70であった。
【0190】
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−6−M)の調製
実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)を調製する工程において、コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)(固形分含有量が30.0重量%)を用いるかわりに本実施例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−6)(固形分含有量が30.0重量%)を用いた以外は実施例1と同様な調製方法により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−6−M)2.24kgを得た。得られたメタノール分散液中に含まれる水分含有量は約0.3重量%であった。
また、このメタノール分散液の10倍希釈時のpHは6.2で、ヘーズは6.1%、粘度は2.5mPa・s、40℃で7日間加速試験を行った後の粘度は2.5mPa・sであった。
【0191】
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子の単位表面積あたりの負電荷量は0.74μeq/m2であった。
このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の光触媒活性試験を行ったところ、退色変化率は1%で、評価は○であった。このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の酸安定性試験を行ったところ、透過率変化は9%で、評価は○であった。
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子(CSZ−6)メタノール分散ゾルをロータリーエバポレーターにより固形分濃度40重量%に濃縮したときの粘度は4.1mPa・sであった。
【0192】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(H9)の調製
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)502.3gを用いるかわりに本実施例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−6−M)457.7gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(H9)を調製した。
【0193】
[比較例1]
コア粒子の水分散液(RCZ−1)の調製
実施例1で調製したコア粒子の水分散液(CZ−1)に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製ダイアイオンSK1BH)を投入してpHを3.5に調整したのち、樹脂を分離せず、攪拌下で80℃に保ちながら7時間熟成した。その後、前記陽イオン交換樹脂を除去して、室温まで冷却してから、限外ろ過膜を用いて濃縮して固形分濃度30重量%のコア粒子の水分散液(RCZ−1)1.07kgを調製したところ、数分後にはコア粒子が凝集沈降してしまった。
【0194】
[比較例2]
コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCSZ−2)の調製
実施例1で調製したコア粒子の水分散液(CZ−1)を用いて、実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)を調製する工程において、工程(1)で使用したケイ酸液を3.24kgから3.96kgに変更し、アルミン酸ナトリウム水溶液を2.42kgから0.28kgに変更した以外は、実施例1と同様の工程により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCSZ−2)0.98kgを得た。
このとき、シェルの調製に用いたケイ酸液に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、アルミン酸ナトリウム水溶液に含まれるアルミニウム成分をAl23で表すとき、その酸化物換算基準でのSiO2/Al23重量比は41.70であった。また、シェル被覆量はコア粒子100重量部に対して25.0重量部であった。
【0195】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCSZ−2)に含まれるコアシェル型複合酸化物微粒子の金属成分の含有量は、各金属成分の酸化物換算基準で、ZrO274.66重量%、SiO224.59重量%、Al230.23重量%、Na2O0.41重量%およびK2O0.11重量%であった。なお、この金属含有量より求められる前記金属酸化物微粒子の比重は4.05、シェルのSiO2/Al23重量比は107.4であった。
また、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の平均粒子径は82nm、比表面積は164m2/g、負電荷量は0.41μeq/m2であった。
【0196】
さらに、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCSZ−2)のpHは3.9で、ヘーズは18.0%、粘度は25.1mPa・sであった。またこの水分散液について40℃で7日間加速試験を行ったところ、ゲル化した。
また、上記の「粒子の屈折率測定法A」に記載の方法に基づき、分光エリプソメーターを用いて測定された塗膜屈折率Nav’は、前記塗料組成物中に含まれる粒子の重量分率mが10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、55重量%であるとき、それぞれ1.517、1.539、1.554、1.576、1.597、1.605であった。さらに、前記塗膜屈折率Nav’と前記体積分率・重量分率の変換式およびマクスウェル−ガーネットの式から算出される塗膜屈折率Navとから求められる偏差平方和の最小値は0.000132であり、その最小値を示す粒子の屈折率は1.80であった。これにより、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の屈折率は1.80であるとみなすことができた。因みに、上記の屈折率測定法B(標準液法)で測定された前記コアシェル型複合酸化物の屈折率は1.80であった。
【0197】
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RCSZ−2−M)の調製
実施例1のジルコニア系コア粒子(CSZ−1)有機溶剤分散ゾルを調製する工程において、ジルコニア系コアシェル型複合酸化物微粒子(CSZ−1)の水分散ゾル(固形分含有量が30.0重量%)をジルコニア系コアシェル型複合酸化物微粒子(RCSZ−2)の水分散ゾル(固形分含有量が30.0重量%)に変更する以外は同様な調製方法により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RCSZ−2−M)0.97kgを得た。得られたメタノール分散液中に含まれる水分含有量は約0.3重量%であった。
また、前記メタノール分散液の10倍希釈時のpHは6.0で、ヘーズは26.5%、粘度は34mPa・s、40℃で7日間加速試験を行った後の粘度は75mPa・sであった。
【0198】
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子の単位表面積あたりの負電荷量は0.41μeq/m2であった。
このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の光触媒活性試験を行ったところ、退色変化率は1%で、評価は○であった。このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の酸安定性試験を行ったところ、透過率変化は38%で、評価は△であった。
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RCSZ−2−M)をロータリーエバポレーターにより固形分濃度40重量%に濃縮しようとしたところ、ゲル化した。
【0199】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(C1)の調製
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)502.3gのかわりに本比較例で調製した固形分濃度30重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RCSZ−2−M)470.9gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(C1)を調製した。
【0200】
[比較例3]
コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCSZ−3)の調製
実施例1で調製したコア粒子の水分散液(CZ−1)を用いて、実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)を調製する工程において、工程(1)で使用したケイ酸液を3.24kgから1.80kgに変更し、アルミン酸ナトリウム水溶液を2.42kgから6.73kgに変更した以外は、実施例1と同様の工程により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCSZ−3)1.24kgを得た。
このとき、シェルの調製に用いたケイ酸液に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、アルミン酸ナトリウム水溶液に含まれるアルミニウム成分をAl23で表すとき、その酸化物換算基準でのSiO2/Al23重量比は0.80であった。また、シェル被覆量はコア粒子100重量部に対して25.0重量部であった。
【0201】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCSZ−3)中に含まれるコアシェル型複合酸化物微粒子中の金属成分の含有量は、各金属成分の酸化物換算基準で、ZrO274.21重量%、SiO215.49重量%、Al239.29重量%、Na2O0.87重量%およびK2O0.14重量%であった。なお、この金属含有量より求められる前記金属酸化物微粒子の比重は4.37、シェルのSiO2/Al23重量比は1.7であった。
また、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の平均粒子径は54nm、比表面積は198m2/g、負電荷量は0.27μeq/m2であった。
【0202】
さらに、このコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCSZ−3)のpHは4.2、ヘーズは24.1%、粘度は37.4mPa・sであった。またこの水分散液に40℃で7日間加速試験を行ったところ、ゲル化した。
また、上記の「粒子の屈折率測定法A」に記載の方法に基づき、分光エリプソメーターを用いて測定された塗膜屈折率Nav’は、前記塗料組成物中に含まれる粒子の重量分率mが10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、55重量%であるとき、それぞれ1.510、1.529、1.544、1.566、1.592、1.597であった。さらに、前記塗膜屈折率Nav’と前記体積分率・重量分率の変換式およびマクスウェル−ガーネットの式から算出される塗膜屈折率Navとから求められる偏差平方和の最小値は0.000041であり、その最小値を示す粒子の屈折率は1.79であった。これにより、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の屈折率は1.79であるとみなすことができた。因みに、上記の屈折率測定法B(標準液法)で測定された前記コアシェル型複合酸化物の屈折率は1.79であった。
【0203】
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RCSZ−3−M)の調製
実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)を調製する工程において、コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)(固形分含有量が30.0重量%)を用いるかわりに本実施例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCSZ−3)(固形分含有量が30.0重量%)を用いた以外は実施例1と同様な調製方法により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RCSZ−3−M)1.23kgを得た。得られたメタノール分散液中に含まれる水分含有量は約0.3重量%であった。
また、このメタノール分散液(RCSZ−3−M)の10倍希釈時のpHは5.8で、ヘーズは54.2%、粘度は84mPa・sであった。このメタノール分散液を40℃で7日間加速試験を行ったところ、ゲル化した。
【0204】
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子の単位表面積あたりの負電荷量は1.77μeq/m2であった。
このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の光触媒活性試験を行ったところ、退色変化率は1%で、評価は○であった。このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の酸安定性試験を行ったところ、透過率変化は62%で、評価は×であった。
また、このメタノール分散液(RCSZ−3−M)をロータリーエバポレーターにより固形分濃度40重量%に濃縮しようとしたところ、ゲル化した。
【0205】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(C2)の調製
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)502.3gのかわりに本比較例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RCSZ−3−M)508.1gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(C2)を調製した。
【0206】
[比較例4]
コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCST−1)の調製
実施例4で調製したコア粒子の水分散液(CT−2)を用いて、実施例4のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CST−2)を調製する工程において、工程(1)で使用したケイ酸液を3.24kgから3.10kgに変更し、アルミン酸ナトリウム水溶液を2.42kgから0.22kgに変更した以外は、実施例4と同様の工程により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCST−1)0.77kgを得た。
このとき、シェルの調製に用いたケイ酸液に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、アルミン酸ナトリウム水溶液に含まれるアルミニウム成分をAl23で表すとき、その酸化物換算基準でのSiO2/Al23重量比は41.70であった。また、シェル被覆量はコア粒子100重量部に対して25.0重量部であった。
【0207】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCST−1)に含まれるコアシェル型複合酸化物微粒子の金属成分の含有量は、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO266.38重量%、SnO28.30重量%、SiO224.57重量%、Al230.23重量%、Na2O0.40重量%およびK2O0.12重量%であった。なお、この金属含有量より求められる前記金属酸化物微粒子の比重は3.55、シェルのSiO2/Al23重量比は106.8であった。
また、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の平均粒子径は54nm、比表面積は198m2/g、負電荷量は0.27μeq/m2であった。
【0208】
さらに、このコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCST−1)のpHは3.5、ヘーズは33.4%、粘度は41.2mPa・sであった。またこの水分散液を40℃で7日間加速試験したところ、ゲル化した。
また、上記の「粒子の屈折率測定法A」に記載の方法に基づき、前記塗料組成物中に含まれる粒子の重量分率mが10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、55重量%のいずれの場合にも塗膜が白化したため、前記塗膜屈折率Nav’は測定しなかった。
【0209】
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RCST−1−M)の調製
実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)を調製する工程において、コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)(固形分含有量が30.0重量%)を用いるかわりに本実施例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCST−1)(固形分含有量が30.0重量%)を用いた以外は実施例1と同様な調製方法により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RCST−1−M)0.76kgを得た。得られたメタノール分散液中に含まれる水分含有量は約0.3重量%であった。
また、このメタノール分散液の10倍希釈時のpHは5.8で、ヘーズは54.2%、粘度は84mPa・sであった。さらに、このメタノール分散液を40℃で7日間加速試験したところ、ゲル化した。
【0210】
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子の単位表面積あたりの負電荷量は0.27μeq/m2であった。
このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の光触媒活性試験を行ったところ、退色変化率は48%で、評価は△であった。このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の酸安定性試験を行ったところ、透過率変化は43%で、評価は×であった。
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RCST−1−M)をロータリーエバポレーターにより固形分濃度40重量%に濃縮しようとしたところ、ゲル化した。
【0211】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(C3)の調製
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)502.3gを用いるかわりに本比較例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RCST−1−M)412.8gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(C3)を調製した。
【0212】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(C6)の調製
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)502.3gのかわりに本比較例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RCST−1−M)495.3gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(C6)を調製した。
【0213】
プライマー層膜形成用塗料組成物(CX−1)の調製
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CST−2−M)227.3gを用いるかわりにコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RCST−1−M)227.3gを用いた以外は実施例4に記載のプライマー層膜形成用塗料組成物(P1)の調製と同様の方法でプライマー層膜形成用塗料組成物(CX−1)を調製した。
【0214】
[比較例5]
コア粒子の水分散液(RCZ−1)の調製
実施例1のコア粒子の水分散液(CZ−1)を調製する工程において、ジルコニア系複合酸化物微粒子の前駆体スラリーをオートクレーブで150℃、11時間水熱処理を行うかわりに950℃で11時間水熱処理を行い、得られたジルコニア系複合酸化物微粒子の水分散液を噴霧乾燥して得られた乾燥粉末を焼成しないで用いた以外は実施例1と同様な方法で、ZrO2としての濃度10重量%のコア粒子の水分散液(RCZ−1)2.46kgを調製した。このとき、前記コア粒子(RCZ−1)の平均粒子径は4nm、比表面積は273m2/gであった。
さらに、このコア粒子の金属成分の含有量は、各金属成分の酸化物換算基準で、ZrO297.70重量%およびK2O2.30重量%であった。
【0215】
コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCSZ−4)の調製
実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)を調製する工程において、コア粒子の水分散液(CZ−1)(固形分含有量が10.0重量%)のかわりに本比較例で調製したコア粒子の水分散液(RCZ−1)(固形分含有量が10.0重量%)を用いた以外は実施例1と同様な調製方法により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCSZ−4)1.08kgを得たが、前記水分散液(RCSZ−4)は数分後にはゲル化した。
この工程において、シェルの調製に用いたケイ酸液に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、アルミン酸ナトリウム水溶液に含まれるアルミニウム成分をAl23で表したとき、酸化物換算基準でのSiO2/Al23重量比は4.0であった。また、シェル被覆量はコア粒子100重量部に対して25.0重量部であった。
【0216】
[比較例6]
コア粒子の水分散液(RCZ−2)の調製
実施例1のコア粒子の水分散液(CZ−1)を調製する工程において、ジルコニア系複合酸化物微粒子の乾燥粉体を500℃で2時間焼成するかわりに700℃で2時間焼成した以外は実施例1と同様な方法で、ZrO2としての濃度10重量%のコア粒子の水分散液(RCZ−2)2.36kgを調製した。前記コア粒子の水分散液(RCZ−2)に含まれるコア粒子の平均粒子径は89nm、比表面積は21m2/gであった。
このコア粒子に含まれる金属成分の含有量は、各金属成分の酸化物換算基準で、ZrO298.90重量%およびK2O1.10重量%であった。
【0217】
コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCSZ−5)の調製
実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)を調製する工程において、コア粒子の水分散液(CZ−1)(固形分含有量が10.0重量%)を用いるかわりに、本比較例で調製したコア粒子の水分散液(RCZ−5)(固形分含有量が10.0重量%)を用いた以外は実施例1と同様な調製方法により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCSZ−5)1.04kgを得た。
この時、シェルの調製に用いたケイ酸液に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、アルミン酸ナトリウム水溶液に含まれるアルミニウム成分をAl23で表したとき、その酸化物換算基準でのSiO2/Al23重量比は4.0であった。また、シェル被覆量はコア粒子100重量部に対して25.0重量部であった。
【0218】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCSZ−5)に含まれるコアシェル型複合酸化物微粒子の金属成分の含有量は、各金属成分の酸化物換算基準で、ZrO278.34重量%、SiO218.42重量%、Al232.78重量%、Na2O0.38重量%およびK2O0.08重量%であった。なお、この金属含有量より求められる前記金属酸化物微粒子の比重は4.32、シェルのSiO2/Al23重量比は6.1であった。
さらに、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の平均粒子径は90nm、比表面積は133m2/g、負電荷量は0.75μeq/m2であった。
【0219】
さらに、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液のpHは4.0、ヘーズは21.3%、粘度は6.8mPa・s、40℃で7日間加速試験後の粘度は6.9 mPa・sであった。
また、上記の「粒子の屈折率測定法A」に記載の方法に基づき、前記塗料組成物中に含まれる粒子の重量分率mが10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、55重量%のいずれの場合にも塗膜が白化したため、前記塗膜屈折率Nav’は測定しなかった。
【0220】
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RCSZ−5−M)の調製
実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)を調製する工程において、コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)(固形分含有量が30.0重量%)を用いるかわりに本比較例で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCSZ−5)(固形分含有量が30.0重量%)を用いた以外は実施例1と同様な調製方法により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RCSZ−5−M)メタノール分散ゾル1.03kgを得た。得られたメタノール分散液中に含まれる水分含有量は約0.3重量%であった。
また、このメタノール分散液の10倍希釈時のpHは6.1で、ヘーズは24.8%、粘度は2.0mPa・s、40℃で7日間加速試験を行った後の粘度は2.1mPa・sであった。
【0221】
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子の単位表面積あたりの負電荷量は0.41μeq/m2であった。
このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の光触媒活性試験を行ったところ、退色変化率は1%で、評価は○であった。このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液の酸安定性試験を行ったところ、透過率変化は9%で、評価は○であった。
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RCSZ−5−M)をロータリーエバポレーターにより固形分濃度40重量%に濃縮したときの粘度は3.5mPa・sであった。
【0222】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(C4)の調製
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)502.3gのかわりに本比較例で調製したコアシェル複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RCSZ−5−M)361.7gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(C4)を調製した。
【0223】
[比較例7]
コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCST−2)の調製
工程(1)
実施例3で調製したコア粒子の水分散液(CT−1)(固形分含有量が10.0重量%)1.87kgにイオン交換水7.48kgを加えて、撹拌しながら90℃の温度に加熱したのち、これに実施例1で調製したSiO2換算基準で2.0重量%のケイ酸液2.49kgを3時間かけて徐々に添加し混合した。ついで、Al23換算基準で0.67重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液1.86kgを1時間かけて徐々に添加し混合した。前記ケイ酸液に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、前記アルミン酸ナトリウム水溶液に含まれるアルミニウム成分をAl23で表したとき、酸化物換算基準の重量比はSiO2/Al23=4.0であった。また、シェルの被覆量はコア粒子100重量部に対して25重量部であった。
【0224】
工程(2)
次に、上記工程により調製された混合液を90℃の温度に保ちながら1時間攪拌することによって、チタニウムを主成分とするコア粒子をケイ素の酸化物とアルミニウムの酸化物で被覆したコアシェル型微粒子の水分散液を得た。
【0225】
工程(3)
次いで、上記工程により得られたコアシェル型微粒子の水分散液に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製ダイアイオンSK1BH)0.23kgを混合してpH3.5に調整した後、樹脂を分離せず、攪拌下で80℃に保ちながら7時間熟成した。その後、前記陽イオン交換樹脂を目開き44μmのステンレス製フィルターを用いて分離・除去したのち、固形分含有量が1.8重量%のコアシェル型微粒子の水分散液13.70kgを得た。
次に、得られたコアシェル型微粒子の水分散液を室温まで冷却してから、限外濾過膜(旭化成(株)製、SIP−1013)を用いて濃縮して固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型微粒子の水分散液(以下、「RCST−2」という。)0.82kgを調製した。
【0226】
上記コアシェル型微粒子の水分散液(RCST−2)に含まれるコアシェル型複合酸化物微粒子中の金属元素の含有量を測定したところ、各金属元素の酸化物換算基準で、TiO253.07重量%、SiO235.65重量%、Al234.03重量%、Na2O0.49重量%およびK2O0.13重量%であった。なお、この金属元素の含有量より求められる前記コアシェル型複合酸化物微粒子の比重は3.25、SiO2/Al23は6.9であった。また、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の平均粒子径は164nm、比表面積は268m2/g、単位表面積あたりの負電荷量は0.19μeq/m2であった。
このコアシェル型微粒子の水分散液(RCST−2)のpHは3.4で、ヘーズは72.0%、粘度は53.0mPa・sであった。またこの水分散液について40℃で7日間加速試験を行ったところ、ゲル化した。
【0227】
また、上記の「粒子の屈折率測定法A」に記載の方法に基づき、前記塗料組成物中に含まれる粒子の重量分率mが10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、55重量%のいずれの場合にも塗膜が白化したため、前記塗膜屈折率Nav’は測定しなかった。
因みに、上記の屈折率測定法B(標準液法)で測定された前記コアシェル型微粒子の屈折率は1.82であった。
【0228】
コアシェル型微粒子のメタノール分散液(RCST−2−M)の調製
実施例1のコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)を調製する工程において、コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CSZ−1)(固形分含有量が30.0重量%)を用いるかわりに本比較例で調製したコアシェル型微粒子の水分散液(RCST−2)(固形分含有量が30.0重量%)を用いた以外は実施例1と同様な調製方法により、固形分含有量が30.0重量%のコアシェル型微粒子のメタノール分散液(RCST−2−M)0.81kgを得た。得られたメタノール分散液中に含まれる水分含有量は約0.3重量%であった。
このコアシェル型微粒子のメタノール分散液(RCST−2−M)のpHは10倍希釈時で5.3で、ヘーズは76.2%、粘度は37.4mPa・sであった。またこの分散液について40℃で7日間加速試験を行ったところ、ゲル化した。
【0229】
また、このコアシェル型微粒子の単位表面積あたりの負電荷量は0.19μeq/m2であった。
このコアシェル型微粒子のメタノール分散液の光触媒活性試験を行ったところ、退色変化率は78%で、評価は×であった。このコアシェル型微粒子のメタノール分散液の酸安定性試験を行ったところ、透過率変化は48%で、評価は×であった。
また、このコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(RCST−2−M)をロータリーエバポレーターにより固形分濃度40重量%に濃縮しようとしたところ、ゲル化した。
【0230】
ハードコート層膜形成用塗料組成物(C5)の調製
コアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(CSZ−1−M)502.3gのかわりに本比較例で調製したコアシェル型微粒子のメタノール分散液(RCST−2−M)361.7gを用いた以外は実施例1に記載のハードコート層膜形成用塗料組成物(H1)の調製と同様の方法でハードコート層膜形成用塗料組成物(C5)を調製した。
【0231】
[比較例8]
コアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(RCST−3)の調製
実施例3で調製したコア粒子の水分散液(CT−1)を用いて、実施例3のコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液(CST−1)を調製する工程において、工程(1)で使用したケイ酸液3.24kgを、SiO2換算基準で2.0重量%含む水硝子溶液3.24kgに変更した以外は、実施例3と同様の方法でコアシェル型複合酸化物微粒子の水分散液を調製しようとしたところ、工程(2)が終了した時点で得られた水分散液は白濁しており凝集した沈殿物が存在したため、工程(3)は実施しなかった。また、メタノール分散液および塗料組成物も調製することができなかった。
このとき、水分散液のpHは12.2でありコア粒子が不安定なpH領域であった。また、シェルのSiO2/Al23重量比は4.0で、シェル被覆量はコア粒子100重量部に対して25.0重量部であった。
【0232】
実施例1〜9、比較例2〜4および比較例6〜7で調製したコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液(30重量%濃度)のpH、ヘーズ、前記粒子の単位表面積あたりの負電荷量、粘度(30重量%時、加速試験時、および40重量%時)、耐酸安定性、光触媒活性、および該粒子の屈折率(ただし、屈折率は水分散液にて測定した値)の評価結果を表1に示す。
これらの結果から、実施例で得られたコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液は、酸性のpH領域でも、安定で、たとえ高濃度であってもゲル化せず、さらに透明性が高いことがわかる。また、実施例のメタノール分散液の耐酸安定性が高いことから、コアに対するシェルの被覆率が高く、また耐候性の高いコアシェル型複合酸化物微粒子のメタノール分散液が得られていることがわかる。
【0233】
[実施例10]
試験用プラスチックレンズ基板(試験片)の作成
(1)プラスチックレンズ基材の前処理
市販のプラスチックレンズ基材「CR−39」(PPG社製モノマー使用、基材の屈折率1.50)、「モノマー名:MR−8」(三井化学(株)製、基材の屈折率1.60)および「モノマー名:MR−174」(三井化学(株)製、基材の屈折率1.74)を、40℃に保った10重量%濃度のKOH水溶液に2分間浸漬してエッチング処理を行った。更に、これらを取り出して水洗したのち、十分に乾燥させた。
【0234】
(2)プライマー層膜の形成
前処理を行ったプラスチックレンズ基材にプライマー層膜形成用塗料組成物をそれぞれ塗布して塗膜を形成した。なお、この塗料組成物の塗布は、ディッピング法(引き上げ速度120mm/分)を用いて行った。
次に、前記塗膜を100℃で10分間、加熱処理して、塗膜(プライマー層)の予備乾燥を行った。
このようにして形成された前記プライマー層の予備硬化後の膜厚は、概ね0.5〜0.7μmであった。
【0235】
(3)ハードコート層膜の形成
前記前処理を行ったプラスチックレンズ基材、またはプライマー層膜を形成したプラスチックレンズ基材の表面に、ハードコート層膜形成用の塗料組成物を塗布して塗膜を形成した。なお、この塗料組成物の塗布は、ディッピング法(引き上げ速度250mm/分)を用いて行った。
次に、前記塗膜を90℃で10分間、乾燥させた後、110℃で2時間、加熱処理して、塗膜(ハードコート層)の硬化を行った。この際、前記プライマー層の本硬化も同時に行った。
なお、このようにして形成された前記ハードコート層膜の硬化後の膜厚は、概ね3.0〜3.5μmであった。
【0236】
(4)反射防止膜層の形成
前記ハードコート層膜の表面に、以下に示す構成の無機酸化物成分を真空蒸着法によって蒸着させた。ここでは、ハードコート層側から大気側に向かって、SiO2:0.06λ、ZrO2:0.15λ、SiO2:0.04λ、ZrO2:0.25λ、SiO2:0.25λの順序で積層された反射防止層膜の層をそれぞれ形成した。また、設計波長λは、520nmとした。
【0237】
膜硬度の評価試験
実施例1〜9、比較例2〜4および比較例6〜7で調製したハードコート層膜形成用塗料組成物のH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、C1,C2,C3C5、およびC6を用いて、前処理を行ったプラスチックレンズ基材CR−39上にハードコート層膜をそれぞれ形成した。これらのハードコート層膜付き基材について、上記に記載した方法により膜硬度を測定した。得られた結果を表2に示す。
表2から明らかなように、実施例で作成した塗料組成物を塗布して得られたハードコート層膜付き基材は膜硬度が高いことがわかった。
【0238】
外観、耐擦傷性、密着性、耐候性の評価
実施例1〜9、比較例2〜4および比較例6〜7で得られたハードコート層膜形成用の塗料組成物H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、C1,C2,C3、C4、C5、およびC6と、プライマー層膜形成用塗料組成物P1およびCX−1を用いて、表3に示す組み合わせで前処理を行ったプラスチックレンズ基材上にプライマー層膜およびハードコート層膜を形成した。ついで、得られた膜付き基材の表面に反射防止層膜をそれぞれ形成して、試験片1〜16を作成した。
【0239】
なお、プライマー層膜形成用塗料組成物P1とハードコート層膜形成用塗料組成物H10を塗布し反射防止層膜を形成した試験片10の基材、および、プライマー層膜形成用塗料組成物CX−1とハードコート層膜形成用塗料組成物C6を塗布し反射防止層膜を形成した試験片16の基材としては「モノマー名:MR−174」(三井化学(株)製、基材の屈折率1.74)を用い、それ以外の試験片の基材には「モノマー名:MR−8」(三井化学(株)製、基材の屈折率1.60)を用いた。
【0240】
このようにして得られた試験片1〜16について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、密着性、耐候性を試験して評価した。その結果を表3に示す。
この結果から明らかなように、実施例で作成した塗料組成物を塗布して得られた試験片では耐擦傷性が高いとともに、曇りがなく透明度が高いことがわかった。また、密着性および耐候性が高いことがわかった。
【0241】
【表1】

【0242】
【表2】

【0243】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素および/またはアルミニウムを主成分として含まない酸化物微粒子または複合酸化物微粒子をコア粒子として、その表面をケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物からなるシェルで被覆したコアシェル型複合酸化物微粒子であって、前記シェルに含まれるケイ素とアルミニウムの含有量が酸化物換算基準の重量比でSiO2/Al23=2.0〜30.0の範囲にあることを特徴とするコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液。
【請求項2】
前記シェルが、ケイ素とアルミニウムとからなる複合酸化物であることを特徴とする請求項1に記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液。
【請求項3】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の単位表面積あたりに存在する表面負電荷量が、pH6で測定したときに、0.5〜1.5μeq/m2の範囲にあることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液。
【請求項4】
前記シェルに含まれるケイ素とアルミニウムの含有量が酸化物換算基準の重量比でSiO2/Al23=2.0〜15.0の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液。
【請求項5】
前記シェルの被覆量がコア粒子100重量部に対して5〜100重量部の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液。
【請求項6】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の平均粒子径が8〜60nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液。
【請求項7】
前記コア粒子が、ジルコニウム、スズ、チタニウム、ニオブ、タングステン、アンチモン、インジウムから選ばれた1種以上の元素を主成分として含む酸化物微粒子または複合酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液。
【請求項8】
前記コア粒子が、副成分としてチタニウム、スズ、ケイ素、ジルコニウム、アンチモン、バリウム、ストロンチウム、リチウム、インジウム、ランタニウム、カリウム、ナトリウムから選ばれる1種以上の元素を含む酸化物微粒子または複合酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液。
【請求項9】
固形分濃度が5〜60重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液。
【請求項10】
固形分濃度30重量%の時の粘度が0.8〜20mPa・sの範囲にあることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液。
【請求項11】
分散媒が水および/またはメタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン、γ−ブチロラクトン等のケトン類より選ばれたいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液。
【請求項12】
さらにコアシェル型複合酸化物微粒子の表面が有機ケイ素化合物またはアミン類により修飾されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液。
【請求項13】
pHが3.0〜7.0の範囲にあることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液とバインダー成分とを含む塗料組成物。
【請求項15】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の含有量が固形分濃度で0.1〜50重量%の範囲にあることを特徴とする請求項14に記載の塗料組成物。
【請求項16】
前記コアシェル型複合酸化物微粒子の含有量が固形分濃度で30重量%のときの粘度が1〜100mPa・sの範囲にあることを特徴とする請求項14〜15のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項17】
さらに、紫外線吸収剤を含むことを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれかに記載の塗料組成物を基材上に塗布して得られたことを特徴とする硬化性塗膜。
【請求項19】
請求項18に記載の硬化性塗膜を基材上に設けてなる塗膜付基材。
【請求項20】
コアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の製造方法であって、
(1)平均粒子径が5.0〜50.0nmの範囲にあるコア粒子の水分散液に、シリコンアルコキシドおよび/またはケイ酸を含むケイ素化合物溶液と、アルミン酸塩の水溶液とを、該ケイ素化合物溶液に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、さらに該アルミン酸塩の水溶液に含まれるアルミニウム成分をAl23で表したとき、その酸化物換算基準の重量比がSiO2/Al23=2.0〜40.0となるような割合で混合する工程、
(2)前記工程により得られた混合液を60〜200℃の温度に加温して、0.5〜20時間攪拌する工程、
を含むことを特徴とするコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の製造方法。
【請求項21】
さらに、下記工程
(3)前記工程(2)により得られた混合液を陽イオン交換樹脂と接触させて、該混合液中に含まれるアルカリ金属イオンをイオン交換により除去して、該混合液のpHを3.0〜7.0の範囲に調整する工程、
を含むことを特徴とする請求項20に記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の製造方法。
【請求項22】
前記ケイ素化合物溶液と、アルミン酸塩の水溶液とを、それぞれ同時にコア粒子の水分散液に添加することを特徴とする請求項20〜21のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の製造方法。
【請求項23】
前記ケイ素化合物溶液が、pH3以下のケイ酸液であることを特徴とする請求項20〜22のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の製造方法。
【請求項24】
前記コア粒子が、ジルコニウム、スズ、チタニウム、ニオブ、タングステン、アンチモンおよびインジウムから選ばれた1種以上の元素を主成分として含む酸化物微粒子または複合酸化物微粒子であることを特徴とする請求項20〜23のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の製造方法。
【請求項25】
前記コア粒子の比表面積が50〜250m2/gの範囲にあることを特徴とする請求項20〜24のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の製造方法。
【請求項26】
前記コア粒子がコア粒子を含む水分散液を噴霧乾燥して得られたもの、または噴霧乾燥したのち焼成して得られたものであることを特徴とする請求項20〜25のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の製造方法。
【請求項27】
さらに有機ケイ素化合物またはアミン類によりコアシェル型複合酸化物微粒子の表面処理を行うことを特徴とする請求項20〜26のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の製造方法。
【請求項28】
さらに濃縮工程および/または有機溶媒置換工程に処することを特徴とする請求項20〜27のいずれかに記載のコアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の製造方法。

【公開番号】特開2011−37659(P2011−37659A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185285(P2009−185285)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】