説明

コアレス電気機械装置及びコアレス電気機械装置の製造方法

【課題】磁気センサーの実装位置の調整を容易に行う。
【解決手段】(a)回転軸と、回転軸の円周方向に配置され、回転軸を中心とした放射方向に磁化された複数の永久磁石と、永久磁石の回転軸方向の両端部に配置された磁性体部材と、をローターに組み合わせる工程と、(b)永久磁石と対向する円周方向に配置された複数の電磁コイルで、リング状に形成され、リングの法線が回転軸を中心とした放射方向である電磁コイルと、回転軸に垂直な平面上に配置された基板と、基板上に配置され、永久磁石により生じる磁束の大きさを検知する磁気センサーと、をステーターに組み合わせる工程と、(c)ローターとステーターとを組み合わせる工程と、を備え、工程(b)は、(b−1)磁気センサーの出力信号が飽和しない範囲で磁気センサーの出力信号のピークの大きさが最も大きくなる位置に磁気センサー位置を調整する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアレス電気機械装置及びコアレス電気機械装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動コアレスモーターでは、ローターの回転方向の位置を検知するために、磁気センサーIC(磁気素子に増幅回路と温度補償回路を組み合わせて、受ける磁束密度の大きさをアナログ信号として出力可能なIC)を備えているものが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−267565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気センサーは、磁石の磁束を検知するために、磁石からの磁場により磁気センサーの出力が飽和しない位置に配置することが好ましい。一方、モーターは、出力に応じて電磁コイルにより生じる磁場の強さが変わる。従来は、磁気センサーの位置によっては、電磁コイルによる磁場の強さの変化により、磁気センサーの出力に歪みが生じる恐れがあった。また、電磁コイルにより生じる磁場の強さの影響を受けない位置に磁気センサーを配置した場合には、磁石と磁気センサーの距離が近くなって、磁気センサーの出力が飽和する恐れがあった。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、磁気センサーの出力における歪みや飽和の発生を抑制するための磁気センサーの実装位置の調整を容易に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
コアレス電気機械装置の製造方法であって、(a)回転軸と、前記回転軸の円周方向に配置され、前記回転軸を中心とした放射方向に磁化された複数の永久磁石と、前記永久磁石の回転軸方向の両端部に配置された磁性体部材と、をローターに組み合わせる工程と、(b)前記永久磁石と対向する円周方向に配置された複数の電磁コイルで、リング状に形成され、前記リングの法線が前記回転軸を中心とした放射方向である電磁コイルと、前記回転軸に垂直な平面上に配置された基板と、前記基板上に配置され、前記永久磁石により生じる磁束の大きさを検知する磁気センサーと、をステーターに組み合わせる工程と、(c)前記ローターと前記ステーターとを組み合わせる工程と、を備え、前記工程(b)は、(b−1)前記基板上において前記回転軸を中心とした放射方向に前記磁気センサーを移動させて位置を調整することにより、前記磁気センサーの出力信号が飽和しない範囲で前記磁気センサーの出力信号のピークの大きさが最も大きくなるように前記磁気センサーの実装位置を調整する工程を含む、コアレス電気機械装置の製造方法。
この適用例によれば、基板上において回転軸を中心とした放射方向に磁気センサーを移動させて位置を調整することにより、飽和しない範囲で磁気センサーの出力信号のピークの大きさが最も大きくなる位置に調整する工程を含むので、磁気センサーの出力信号における歪みや飽和の発生を抑制するための磁気センサーの実装位置の調整を容易に行うことが可能となる。
【0008】
[適用例2]
適用例1に記載のコアレス電気機械装置の製造方法において、前記磁性体部材は、円盤形状を有した一枚以上の板状部材で形成されており、前記工程(b)は、前記工程(b−1)の前に、(b−0)前記磁性体部材の枚数または前記磁性体部材の厚さを調整することにより、前記磁気センサーの出力信号の大きさを調整する工程を備える、コアレス電気機械装置の製造方法。
この適用例によれば、磁気センサーの出力信号を粗調整することが可能となる。
【0009】
[適用例3]
コアレス電気機械装置であって、ローターと、前記ローターと対向して配置されているステーターとを備え、前記ローターは、回転軸と、前記回転軸の円周方向に配置され、交互に前記回転軸を中心とした放射方向に磁化された複数の永久磁石と、前記永久磁石の前記回転軸方向の両端部に配置された磁性体部材と、を有し、前記ステーターは、前記永久磁石と対向する円周方向に沿って配置された複数の電磁コイルであって、リング状に形成され、前記リングの法線が前記回転軸を中心とした放射方向である電磁コイルと、前記回転軸に垂直な平面上に配置された基板と、前記基板上に配置され、前記永久磁石により生じる磁束の大きさを検知する磁気センサーと、を有し、前記磁気センサーは、前記磁気センサーを前記基板上に実装するための実装端子を有しており、前記基板は、前記磁気センサーの実装端子との実装に用いられる複数の導体パターンを有しており、前記導体パターンは、前記回転軸を中心とした放射方向と平行であり、前記導体パターンの放射方向の長さは、前記磁気センサーの実装端子の長さよりも長く形成されている、コアレス電気機械装置。
この適用例によれば、導体パターンの放射方向の長さが、磁気センサーの実装端子の長さよりも長く形成されているので、飽和しない範囲で磁気センサーの出力信号のピークの大きさが最も大きくなるように磁気センサーの実装位置を調整することが可能となるので、磁気センサーの出力における歪みや飽和の発生を抑制するための磁気センサーの実装位置の調整を容易に行うことが可能となる。
【0010】
[適用例4]
適用例3に記載のコアレス電気機械装置において、前記磁気センサーは、前記磁気センサーの出力信号が飽和しない範囲で前記磁気センサーの出力信号のピークの大きさが最も大きくなるように前記磁気センサーの実装位置が調整されている、コアレス電気機械装置。
この適用例によれば、磁気センサーの出力信号が飽和しない範囲で前記磁気センサーの出力信号のピークの大きさが最も大きくなるように前記磁気センサーの実装位置が調整されているので、磁気センサーの出力信号から、ローターの回転方向の位置を容易に確認することができる。
【0011】
[適用例5]
適用例3または4に記載のコアレス電気機械装置において、前記導体パターンの少なくとも1つは、磁気センサーの実装端子の実装位置を確認するためのマークを有している、コアレス電気機械装置。
この適用例によれば、磁気センサーの実装位置を容易に確認することが可能となる。
【0012】
[適用例6]
適用例3〜5のいずれか1つに記載のコアレス電気機械装置において、前記磁性体部材は、前記磁気センサーの出力信号が飽和しない範囲で前記磁気センサーの出力信号のピークの大きさが最も大きくなるように前記磁性体部材の厚さが調整されている、コアレス電気機械装置。
この適用例によれば、磁気センサーの出力信号が飽和しない範囲で前記磁気センサーの出力信号のピークの大きさが最も大きくなるように前記磁性体部材の厚さが調整されているので、磁気センサーの出力信号から、ローターの回転方向の位置を容易に確認することができる。
【0013】
[適用例7]
適用例6に記載のコアレス電気機械装置において、前記磁性体部材は、円盤形状を有した一枚以上の板状部材で形成されている、コアレス電気機械装置。
この適用例によれば、磁性体部材に枚数により、磁性体部材の全体の厚さを調整することが可能となる。
【0014】
[適用例8]
適用例6または7に記載のコアレス電気機械装置において、前記導体パターンの放射方向の長さは、前記磁気センサーの実装端子の長さの1.5〜2倍の長さである、コアレス電気機械装置。
この適用例によれば、磁性体部材により、磁気センサーの出力信号の大きさを調整できるので、磁気センサーの調整範囲を狭めることができる。その結果、導体パターンの放射方向の長さ前記磁気センサーの実装端子の長さの1.5〜2倍の長さにして、基板の大きさを小さくすることが可能となる。
【0015】
[適用例9]
適用例3〜8のいずれか一項に記載されたコアレス電気機械装置を備えるロボット。
【0016】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、モーターや発電装置などのコアレス電気機械装置のほか、それを用いた移動体、ロボット等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コアレスモーターの構成を示す説明図である。
【図2】磁気センサー近傍を拡大して示す説明図である。
【図3】図2の磁気センサー300の各位置における磁気センサー300の出力信号の波形を示す説明図である。
【図4】回路基板と磁気センサーを示す説明図である。
【図5】回路基板の導体パターンを示す説明図である。
【図6】磁気センサー300の回路基板上の配置位置を示す説明図である。
【図7】第2の実施例を示す説明図である。
【図8】第2の実施例における磁気センサー300の出力信号の例を示す説明図である。
【図9】本発明の変形例によるモーター/発電機を利用した移動体の一例としての電動自転車(電動アシスト自転車)を示す説明図である。
【図10】本発明の変形例によるモーターを利用したロボットの一例を示す説明図である。
【図11】本発明の変形例によるモーターを利用した双腕7軸ロボットの一例を示す説明図である。
【図12】本発明の変形例によるモーターを利用した鉄道車両を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施例]
図1は、コアレスモーターの構成を示す説明図である。図1(A)は、コアレスモーター10を回転軸230に平行な面で切った断面であり、図1(B)は、コアレスモーターを回転軸230に垂直な面(1B−1B切断面)で切った断面である。
【0019】
コアレスモーター10は、略円筒状のステーター15が外側に配置され、略円筒状のローター20が内側に配置されたインナーローター型モーターである。ステーター15は、電磁コイル100A、100Bと、ケーシング110と、コイルバックヨーク115と、磁気センサー300とを備えている。ローター20は、回転軸230と、永久磁石200と、磁性体部材215と、軸受け240と、コイルバネ260と、を備えている。
【0020】
ローター20は、中心に回転軸230を有しており、回転軸230の外周に6つの永久磁石200を有している。6個の永久磁石200は、回転軸230の中心から外部に向かう方向(放射方向)に磁化された永久磁石200と、中心から外部に向かう方向(中心方向)に磁化された永久磁石200とを含んでおり、磁化方向が中心方向である永久磁石200と、磁化方向が放射方向である永久磁石200は、円周方向に沿って交互に配置されている。永久磁石200の回転軸230方向の端部には、磁性体部材215が設けられている。磁性体部材215は、軟磁性体材料で形成された円盤状の部材である。永久磁石200からでた磁束のうち、回転軸230方向に漏れ出た磁束は、磁性体部材215を通りやすい。回転軸230は、ケーシング110の軸受け部240で支持されてケーシング110に取り付けられている。また、本実施例では、ケーシング110の内側に、コイルバネ260が設けられており、このコイルバネ260が永久磁石200を図の左方向に押すことによって、永久磁石200の位置決めを行っている。但し、コイルバネ260は省略可能である。
【0021】
ケーシング110は、略円筒形をした筐体である。ケーシングの内周に沿って、二相の電磁コイル100A、100Bが配列されている。電磁コイル100A、100Bは、有効コイル領域とコイルエンド領域とを有している。ここで有効コイル領域とは、電磁コイル100A、100Bに電流が流れたときに、ローター20に対して回転方向のローレンツ力を与える領域であり、コイルエンド領域は、電磁コイル100A、100Bに電流が流れたときに、ローター20に対して回転方向と異なる方向のローレンツ力を与える領域である。有効コイル領域においては、電磁コイル100A、100Bを構成する導体配線は、回転軸とほぼ平行な方向であり、コイルエンド領域では、電磁コイル100A、100Bを構成する導体配線は、回転方向と平行である。また、有効コイル領域では、電磁コイル100A、100Bは、永久磁石200と重なっているが、コイルエンド領域では、電磁コイル100A、100Bは、永久磁石200と重なっていない。なお、電磁コイル100A、100Bを合わせて電磁コイル100とも呼ぶ。電磁コイル100A、100Bとケーシング110との間には、コイルバックヨーク115が設けられている。コイルバックヨーク115の回転軸230方向の長さは、永久磁石200の回転軸230方向の長さとほぼ同じであり、回転軸230から永久磁石200に向かって放射方向に投射したとき、投射領域はコイルバックヨークと重なる。すなわち、コイルバックヨーク115と永久磁石200は、重なっている。
【0022】
ステーター15には、さらに、ローター20の位相を検出する位置センサーとしての磁気センサー300が、電磁コイル100A、100Bの各相に1つずつ配置されている。なお、図1(A)では、一方の磁気センサー300のみを表示している。磁気センサー300は、回路基板310の上に固定されており、回路基板310は、ケーシング110に固定されている。ここで、磁気センサー300は、コイルエンド領域から、回転軸230に垂線を降ろしたときの垂線上に配置されている。
【0023】
図2は、磁気センサー近傍を拡大して示す説明図である。図2(A)は、回路基板310の上の磁気センサー300を配置可能な位置のうち、最も永久磁石200に近い位置に磁気センサー300を配置した例である。図2(C)は、回路基板310の上の磁気センサー300を配置可能な位置のうち、最も永久磁石200から遠い位置に磁気センサー300を配置した例である。図2(B)は、磁気センサー300を、図2(A)における配置位置と、図2(C)における配置位置との中間に配置した例である。図3は、図2の磁気センサー300の各位置における磁気センサー300の出力信号の波形を示す説明図である。図3(A)〜(C)は、それぞれ図2(A)〜(C)に対応している。
【0024】
磁気センサー300の出力信号の波形は、永久磁石200と、磁気センサー300との相対的位置関係により変化する。すなわち、本実施例では、図2(B)に示す位置に配置した場合には、磁気センサー300の出力信号の波形は、ほぼ正弦波となる。これに対し、図2(A)に示す位置に配置した場合には、磁気センサー300の出力信号の波形は、飽和し、正弦波から歪む。また、図2(C)に示す位置に磁気センサー300を配置した場合には、磁気センサー300の出力信号は、ほぼ正弦波となるが、磁気センサー300の出力信号ピークの大きさは、図2(A)に示す位置に磁気センサー300を配置した場合における磁気センサー300の出力信号のピークの大きさよりも小さい。磁気センサー300の出力信号が飽和しない位置であって、最もピークの大きな出力信号を出力できる位置に磁気センサーを配置することが好ましい。すなわち、本実施例では、図2(B)の位置に磁気センサー300を配置することが好ましい。但し、このように、磁気センサー300の出力信号の波形は、永久磁石200と、磁気センサー300との相対的位置関係により変化するため、例えば、図2(A)に示す位置あるいは、図2(C)に示す位置において、磁気センサー300の出力信号が飽和せず、最もピークの大きな出力信号を出力できる場合はあり得る。したがって、回路基板310上で、磁気センサー300を中心―放射方向に移動可能な構成を採用し、実際の磁気センサー300の出力信号に基づいて、磁気センサーの設置位置を調整することが好ましい。
【0025】
本実施例のコアレスモーター10は、以下の工程により製造することができる。
(a)回転軸230と、回転軸230の周りの円筒面に沿って配置され、回転軸230を中心とした放射方向に磁化された複数の永久磁石200と、回転軸230の方向に沿った永久磁石200の端部に向かい合う位置に配置された磁性体部材215と、を有するローター20を準備する工程。
(b)永久磁石200と対向する円筒面に沿って配置された複数の電磁コイル100であって、リング状に形成され、リングの法線が回転軸230を中心とした放射方向である電磁コイル100と、回転軸に垂直な平面上に配置された回路基板310と、回路基板310上に配置され、永久磁石200により生じる磁束の大きさを検知する磁気センサー300と、を有するステーター15と、を準備する工程。
(c)ローター20とステーター15とを組み合わせる工程。
を備える。そして、工程(b)において、(b−1)回路基板310上において回転軸230を中心とした放射方向に磁気センサー300を移動させて位置を調整することにより、飽和しない範囲で磁気センサー300の出力信号のピークの大きさが最も大きくなる位置に調整する工程を含んでいる。なお工程(b−1)の工程について、以下に説明する。
【0026】
図4は、回路基板と磁気センサーを示す説明図である。本実施例では、磁気センサー300として、表面実装型の磁気センサー300を用いている。磁気センサー300は、3つの実装端子301(電源端子、接地端子、出力信号端子)を有している。表面実装型の磁気センサー300として、実装端子301がフラットなSOP(Small Outline Package)型、あるいは、実装端子301がJ字に曲げられたSOJ(mall Outline J−leaded)型の磁気センサー300を採用することができる。回路基板310は、磁気センサー300の実装端子を実装するための導体パターン311を備える。
【0027】
回路基板310への磁気センサー300の実装は以下のようにして行うことが出来る。まず、回路基板310の導体パターン311上にハンダ313を印刷により配置する。次に、回路基板310上に磁気センサー300を、導体パターン311上に磁気センサー300の実装端子301が接触するように配置する。この段階では、回路基板310と磁気センサー300とは、ハンダにより実装されていない。なお、磁気センサー300の実装端子301は、あらかじめハンダメッキをしておくことが好ましい。次に、磁気センサー300を載せた回路基板310を、リフロー炉を通すことにより加熱する。これにより、ハンダ313が溶けて、導体パターン311と磁気センサー300の実装端子301とが、ハンダ313により実装される。
【0028】
図5は、回路基板の導体パターンを示す説明図である。図5(A)は比較例の導体パターン311を示し、図5(B)は本実施例の導体パターン311を示している。本実施例では、導体パターン311は、比較例(図5(A))の導体パターン311の上下に調整パターン311a、311bを有している。すなわち、本実施例(図5(B))の導体パターン311は、比較例(図5(A))の導体パターン311よりも、上下方向に長く形成されている。なお、調整パターン311a、311bの材質は、導体パターン311の材質と同じである。このような構成を採用することにより、磁気センサー300の実装端子301を、調整パターン311a、311bあるいは、導体パターン311の調整パターン311a、311bの間の部分に接続することができるので、磁気センサー300の回路基板310への配置位置の調整を容易に行うことが出来る。
【0029】
図5(B)において、導体パターン311に隣接してマーク314が印刷されている。マーク314は、磁気センサー300の実装端子301の配置位置を確認するときに用いられる。すなわち、試作段階において、マーク314に基づいて磁気センサー300の実装端子301の位置を確認しておき、量産段階では、確認されたマーク314の位置にあわせて、磁気センサー300を配置すればよい。なおマーク314は、3つある導体パターン311の少なくとも1つにあればよい。なお、全ての導体パターン311に隣接してマーク314が設けられていてもよい。また、図5(B)に左下の導体パターン311のように、磁気センサー300の実装端子301の配置位置の決定後、その実装端子301の跡312が分かるようにマーク314aを付しても良い。そして、量産化用の回路基板310に試作で決定したマーク314aと同じ位置にマーク314aを打つことにより、量産時に磁気センサー300の配置位置を容易に確認することができる。
【0030】
図6は、磁気センサー300の回路基板上の配置位置を示す説明図である。図6(A)〜(C)は、それぞれ、図2(A)〜(C)に対応している。図6(A)に示す配置位置では、磁気センサー300の実装端子301は、回路基板310の導体パターン311の調整パターン311aに実装されている。図6(B)に示す配置位置では、磁気センサー300の実装端子301は、回路基板310の導体パターン311の、調整パターン311a及び調整パターン311bを除いた部分に実装されている。図6(C)に示す配置位置では、磁気センサー300の実装端子301は、回路基板310の導体パターン311の調整パターン311bに実装されている。このように、磁気センサー300の実装端子301のどの部分に実装するかにより、磁気センサー300の配置位置を移動させることができる。そして、磁気センサー300の位置において、磁気センサー300の出力信号を測定し、最も好ましい位置に磁気センサー300を実装することが好ましい。なお、磁気センサー300の位置の調整は、コアレス電気機械装置の製造準備段階、あるいは、試作段階で行うことが好ましい。
【0031】
図7は、第2の実施例を示す説明図である。図8は、第2の実施例における磁気センサー300の出力信号の例を示す説明図である。第2の実施例は、第1の実施例と比較すると、磁性体部材215の枚数が異なっている。すなわち、図7(A)に示す例は、磁性体部材215の枚数が1枚であり、図7(B)に示す例は2枚であり、図7(C)に示す例は3枚である。なお、図8(A)〜(C)は、それぞれ、図7(A)〜(C)に対応している。磁性体部材215は、上述したように、永久磁石200から回転軸230の軸方向に漏れた磁束を通しやすい。ここで、磁気センサー300は、永久磁石200から見て、磁性体部材215のさらに回転軸230方向に離れた位置に配置されている。すなわち、磁性体部材215は、永久磁石200と、磁気センサー300との間にあり、磁気センサー300は、磁性体部材215からさらに漏れた磁束の磁束密度を検出する。ここで、磁性体部材215の枚数が多いと(厚いと)、永久磁石200の磁束は、磁性体部材215を通り易くなる。すなわち、磁性体部材215からさらに漏れる磁束が少なくなる。その結果、図7(A)から、(B)、(C)の順に磁性体部材215の枚数が増えると、図8(A)から(B)、(C)の順に示すように、磁気センサー300の出力信号の波形は、ほぼ正弦波であるが、だんだんとピーク高さが小さくなっている。なお、本実施例では、磁性体部材215の枚数が1枚のときに、磁気センサー300の出力信号の波形が飽和しないように調整している。したがって、図7(A)に示す磁性体部材215を1枚にしたり、図7(A)に示す磁性体部材215よりも薄い磁性体部材を用いたりした場合には、磁気センサー300の出力信号の波形は、図3(A)に示すように、磁気センサー300の出力信号の波形は、飽和する。
【0032】
なお、本実施例において、磁性体部材215を出来る限り厚くし、磁気センサー300の高感度タイプを選択し、ハンダ実装位置を調整することで、磁気センサー300の出力信号の波形をより細かく調整できるのが好ましい。また、磁性体部材215の枚数ではなく、磁性体部材215の厚さを変えてもよい。さらに、全ての磁性体部材215は、同じ厚さである必要はなく、0.1mm、0.2mm、0.4mmのように、磁性体部材215ごとに厚さを変え、厚さの異なる磁性体部材を組み合わせてもよい。
【0033】
なお、上記第1、第2の実施例は、それぞれ単独で実施することが可能である。また、第1、第2の実施例を組み合わせて実施することも可能である。例えば、第1、第2の実施例を組み合わせる場合には、先に磁性体部材215の枚数、厚さによる調整を実行して、磁気センサー300の出力信号の大きさを大まかに調整(粗調整)し、その後、磁気センサー300の配置位置を調整することにより、磁気センサー300の出力信号の大きさを微調整してもよい。また、磁性体部材215による粗調整を行わない場合には、磁気センサー300の配置位置の調整範囲が大きくなるため、調整パターン311a、311bを含めた導体パターン311の長さが長くなり、回路基板310が大きくなる場合がある。本実施例にように磁性体部材215による粗調整を行う場合には、磁気センサー300の配置位置の調整範囲を狭くできるので、調整パターン311a、311bを含めた導体パターン311の長さを、磁気センサー300の実装端子301の長さの1.5〜2倍程度に短くすることができ、回路基板310を小さくすることが可能となる。
【0034】
図9は、本発明の変形例によるモーター/発電機を利用した移動体の一例としての電動自転車(電動アシスト自転車)を示す説明図である。この自転車3300は、前輪にモーター3310が設けられており、サドルの下方のフレームに制御回路3320と充電池3330とが設けられている。モーター3310は、充電池3330からの電力を利用して前輪を駆動することによって、走行をアシストする。また、ブレーキ時にはモーター3310で回生された電力が充電池3330に充電される。制御回路3320は、モーターの駆動と回生とを制御する回路である。このモーター3310としては、上述した各種のコアレスモーター10を利用することが可能である。
【0035】
図10は、本発明の変形例によるモーターを利用したロボットの一例を示す説明図である。このロボット3400は、第1と第2のアーム3410,3420と、モーター3430とを有している。このモーター3430は、被駆動部材としての第2のアーム3420を水平回転させる際に使用される。このモーター3430としては、上述した各種のコアレスモーター10を利用することが可能である。
【0036】
図11は、本発明の変形例によるモーターを利用した双腕7軸ロボットの一例を示す説明図である。双腕7軸ロボット3450は、関節モーター3460と、把持部モーター3470と、アーム3480と、把持部3490と、を備える。関節モーター3460は、肩関節、肘関節、手首関節に相当する位置に配置されている。関節モーター3460は、アーム3480と把持部3490とを、3次元的に動作させるため、各関節につき2つのモーターを備えている。また、把持部モーター3470は、把持部3590を開閉し、把持部3490に物を掴ませる。双腕7軸ロボット3450において、関節モーター3460あるいは把持部モーター3470として、上述した各種のコアレスモーターを利用することが可能である。
【0037】
図12は、本発明の変形例によるモーターを利用した鉄道車両を示す説明図である。この鉄道車両3500は、電動モーター3510と、車輪3520とを有している。この電動モーター3510は、車輪3520を駆動する。さらに、電動モーター3510は、鉄道車両3500の制動時には発電機として利用され、電力が回生される。この電動モーター3510としては、上述した各種のコアレスモーター10を利用することができる。
【0038】
以上、いくつかの実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【符号の説明】
【0039】
10…コアレスモーター
15…ステーター
20…ローター
100、100A、100B…電磁コイル
110…ケーシング
115…コイルバックヨーク
200…永久磁石
215…磁性体部材
230…回転軸
240…軸受け部
260…コイルバネ
300…磁気センサー
301…実装端子
310…回路基板
311…導体パターン
311a、311b…調整パターン
312…実装端子の跡
313…ハンダ
314、314a…マーク
3300…自転車
3310…モーター
3320…制御回路
3330…充電池
3400…ロボット
3410…第2のアーム
3420…第2のアーム
3430…モーター
3450…双椀7軸ロボット
3460…関節モーター
3470…把持部モーター
3480…アーム
3490…把持部
3500…鉄道車両
3510…電動モーター
3520…車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアレス電気機械装置の製造方法であって、
(a)回転軸と、前記回転軸の円周方向に配置され、前記回転軸を中心とした放射方向に磁化された複数の永久磁石と、前記永久磁石の回転軸方向の両端部に配置された磁性体部材と、をローターに組み合わせる工程と、
(b)前記永久磁石と対向する円周方向に配置された複数の電磁コイルで、リング状に形成され、前記リングの法線が前記回転軸を中心とした放射方向である電磁コイルと、前記回転軸に垂直な平面上に配置された基板と、前記基板上に配置され、前記永久磁石により生じる磁束の大きさを検知する磁気センサーと、をステーターに組み合わせる工程と、
(c)前記ローターと前記ステーターとを組み合わせる工程と、
を備え、
前記工程(b)は、(b−1)前記基板上において前記回転軸を中心とした放射方向に前記磁気センサーを移動させて位置を調整することにより、前記磁気センサーの出力信号が飽和しない範囲で前記磁気センサーの出力信号のピークの大きさが最も大きくなるように前記磁気センサーの実装位置を調整する工程を含む、コアレス電気機械装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコアレス電気機械装置の製造方法において、
前記磁性体部材は、円盤形状を有した一枚以上の板状部材で形成されており、
前記工程(b)は、前記工程(b−1)の前に、(b−0)前記磁性体部材の枚数または前記磁性体部材の厚さを調整することにより、前記磁気センサーの出力信号の大きさを調整する工程を備える、コアレス電気機械装置の製造方法。
【請求項3】
コアレス電気機械装置であって、
ローターと、
前記ローターと対向して配置されているステーターとを備え、
前記ローターは、
回転軸と、
前記回転軸の円周方向に配置され、交互に前記回転軸を中心とした放射方向に磁化された複数の永久磁石と、
前記永久磁石の前記回転軸方向の両端部に配置された磁性体部材と、を有し、
前記ステーターは、
前記永久磁石と対向する円周方向に沿って配置された複数の電磁コイルであって、リング状に形成され、前記リングの法線が前記回転軸を中心とした放射方向である電磁コイルと、
前記回転軸に垂直な平面上に配置された基板と、
前記基板上に配置され、前記永久磁石により生じる磁束の大きさを検知する磁気センサーと、を有し、
前記磁気センサーは、前記磁気センサーを前記基板上に実装するための実装端子を有しており、
前記基板は、前記磁気センサーの実装端子との実装に用いられる複数の導体パターンを有しており、
前記導体パターンは、前記回転軸を中心とした放射方向と平行であり、前記導体パターンの放射方向の長さは、前記磁気センサーの実装端子の長さよりも長く形成されている、コアレス電気機械装置。
【請求項4】
請求項3に記載のコアレス電気機械装置において、
前記磁気センサーは、前記磁気センサーの出力信号が飽和しない範囲で前記磁気センサーの出力信号のピークの大きさが最も大きくなるように前記磁気センサーの実装位置が調整されている、コアレス電気機械装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のコアレス電気機械装置において、
前記導体パターンの少なくとも1つは、磁気センサーの実装端子の実装位置を確認するためのマークを有している、コアレス電気機械装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載のコアレス電気機械装置において、
前記磁性体部材は、前記磁気センサーの出力信号が飽和しない範囲で前記磁気センサーの出力信号のピークの大きさが最も大きくなるように前記磁性体部材の厚さが調整されている、コアレス電気機械装置。
【請求項7】
請求項6に記載のコアレス電気機械装置において、
前記磁性体部材は、円盤形状を有した一枚以上の板状部材で形成されている、コアレス電気機械装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載のコアレス電気機械装置において、
前記各導体パターンの放射方向の長さは、前記磁気センサーの実装端子の長さの1.5〜2倍の長さである、コアレス電気機械装置。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれか一項に記載されたコアレス電気機械装置を備えるロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−244791(P2012−244791A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113195(P2011−113195)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】