コア・シェル材料、その製造法、目的物質の熱刺激生成のための用途
一種以上の酸化ケイ素を含む連続シェルとその内部に含まれる一種以上の脂肪相とから構成される固体粒子形態の材料であって、前記脂肪相は前記材料の保存温度で固体であり、100℃未満の融点を有する結晶化可能油と少なくとも一種の目的物質とを主成分量で含有し、前記粒子の直径が1μmから1cmである、固体粒子材料を提供する。本発明はまたかかる粒子材料の製造方法、熱刺激放出性材料またはそれを含有する組成物の利用を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワックスコア内蔵シリカシェル(silica shell)よりなる材料、その製造法、その材料の活性物質の熱刺激放出への利用、及び同材料を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤、染料、顔料、反応剤、断片、ペプチドなどの目的分子をカプセル化することは、それらを外的攻撃特に酸化から保護するため、それらを分与又は供給することができる場所へ供給するため、またはそれらを使用前に外部刺激の作用下にカプセルから釈放される条件下に保存するために、有用である。
マイクロカプセルの初期の用途の一つは、1960年代の終わりに販売されたカーボンレス複写用紙の開発である。この場合、インクを含有するマイクロカプセルは用紙の背面に存在し、筆記時にペン先へ加わる力でマイクロカプセルが破裂してインクが釈放される。今日では、カプセル化の用途は製薬、化粧、食品、繊維及び農業等の各分野で拡大している。カプセル及びマイクロカプセルは特に製薬の分野で益々洗練されており、活性主剤の制御された放出又は標的への供給が実施可能となってきた。
【0003】
カプセル及びマイクロカプセルの種々の種類及び形状は既に提案されていて、例えば、蛋白質カプセル、シクロデキストリン、リポソーム、濃縮ラメラ小胞体、二重エマルジョン、コロイドソーム、シリカシェルマイクロカプセル、シリカナノカプセル、感熱ポリマー例えばポリ(N−イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)、感熱ヒドロゲルマイクロ球、PNIPAMポリラクチドのマイクロ球等がある。これらの各種の形式のカプセル及びマイクロカプセルを製造することができる多くの方法、例えば相分離によるポリマーの製造、逐次積層電解法、層間重縮合による重合法などが開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来公知の方法の欠点は、提案されているカプセル及びマイクロカプセルからの対象物質分子の釈放が通常は遅く、長時間を要することである。
【0005】
今までのところ、穏和な条件下で外部刺激の影響下に目的物質を迅速かつ完全に釈放することができるシステムは存在しない。
【0006】
本発明の目的は、外部刺激特に温度上昇の影響下に、迅速かつ完全に放出できる一種以上の目的分子をカプセル化することができるカプセルを提供することである。
【0007】
本発明の一つの主題は、一種以上の酸化ケイ素を含む連続シェル(殻)とそれに含まれる脂肪相とから構成される固体粒子形態の材料であって、前記脂肪相が前記材料の保存温度で固体であり、100℃未満の融点(PM)を有する結晶化可能油と少なくとも一種の目的物質とを主成分量でに含有し、前記粒子の直径が1μmから1cmの範囲にある、固体粒子材料に関する。
【0008】
本書において、用語「材料の保存温度」とは本発明による材料がその使用前に保存される温度を意味する。この温度は常に脂肪層に含有される結晶化可能油の融点よりも低い。
【0009】
本発明の材料は次の特徴を示す。材料が結晶化可能油の融点よりも高温度にさらされると、脂肪層の熱膨張が起こり、それがシリカシェルの破壊を導き、溶融した脂肪層(液層中の脂肪層)の迅速かつ完全な釈放を導く。この結果は実に驚くべきことである。なぜならシェル中の組成に取り込まれている酸化ケイ素は熱絶縁体として知られているからである。
【0010】
本書において、用語「結晶化可能油」は、天然(動物性又は植物性)又は合成の脂肪物質及び脂肪物質の混合物であって、融点が15℃以上、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは20〜50℃であるものを意味する。本書に使用した融点の全ては大気圧で差分走査カロリー計(DSC)により決定されたものである。
【0011】
結晶化可能油は脂肪層の主成分量の部分を形成し、目的物質の他に、単独成分でさえありうる。一般に結晶化可能油は脂肪相の50〜99.9重量%、好ましくは75〜99.9重量%を構成しうる。
【0012】
結晶化可能油の選択は、当然材料の意図される用途に依存し、従って、脂肪相の熱膨張によるシリカシェルの破裂が観察されることが望まれる温度に依存する。本発明で使用可能な結晶化可能油の中でも、特にMerck社より市販されている融点42〜44℃、或いは46〜48℃[RN: 8002-74-2]の融点を有するパラフィン等のパラフィン、例えばトリグリセリド;脂肪酸;ロジン;エイコサン及びオクタデカン等のワックス(長鎖アルカン);ハロゲン化植物油、及びそれらの混合物;合成瀝青が使用できる。これらの油は単独又は混合物として使用できる。
【0013】
本発明の材料は好ましくは球状粒子、或いは実質的な球状粒子の形態を有する。
【0014】
粒子の直径は好ましくは約5〜500μm、さらに好ましくは約10〜200μmである。
【0015】
シリカシェルは脂肪相のカプセル化を可能にするに充分な機械強度を有するに充分な厚さを有しなければならない。一方厚さは材料のコアを構成する脂肪相の融点より高い温度まで昇温する間に破断しうるに充分な薄さを有する必要がある。シリカシェルの厚さは一般に約0.1〜2μm、好ましくは約0.2〜2μmで変化しうる。
【0016】
酸化ケイ素の他に、シェル(殻)はMeO2(ここにMeはZr、Ti、Th、Nb、Ta、V、W、Alから選択される金属)の一種以上を含みうる。この場合に、シェルは酸化ケイ素に比して小量のMeO2、好ましくはシェルの全重量に対して1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%のMeO2を含むSiO2−MeO2型の混合基質からなる。
【0017】
本発明による材料の脂肪相は親油性、親水性のいずれでも良い任意の種類の目的物質を含んでもよい。従って、目的物質が親油性なら、脂肪相は可溶化された形態のものを含むことができ、目的物質が親水性なら脂肪相はそれらを分散形態(結晶化可能油又は脂肪相中に水の一部が分散した形態(二重エマルジョン))を有しうる。それらは固体粒子であることも可能である。
【0018】
本発明に従って材料の脂肪相に混合できる目的物質は、特に薬剤(有効成分)、化粧品、化学反応原料、染料、顔料、インク等が使用できる。
【0019】
薬剤の例としては、防かび剤、抗生物質、抗炎症剤、鎮痛剤、通じ薬、ホルモン、蛋白質等がある。
【0020】
化粧品活性剤の例としては、ビタミン、日焼け止め、フリーラジカル捕捉剤のような酸化防止剤、例えば、スーパーオキシドジスムターゼ、香料、臭気吸収剤、デオドラント、制汗剤、染料、顔料、軟化剤、保湿剤等がある。
【0021】
化学反応剤の例としては、特に着色反応剤、pH指示剤のような色指示剤、触媒、重合開始剤、単量体、錯形成剤等がある。
【0022】
目的物質は脂肪相を100%としたときに、その一部又は全部であり得る。目的物質は好ましくは脂肪相全量の0.1〜50重量%、さらに好ましくは0.1〜25重量%を占めることができる。
【0023】
脂肪相はこれに加えて通常はエマルジョンで使用される一種以上の添加物を含みうる。中でも、目的物質を保護する保護剤例えば酸化防止剤、及び紫外線安定剤であり得る。
【0024】
本発明の他の主題は上記の材料を製造するための方法である。この方法は次の工程から成ることを特徴とする。
1)100℃未満の融点TMを有する固体の結晶化可能油(CO)を主成分として含む脂肪相を、TMより高い温度Tcoに加熱し、液状の結晶化可能油(CO)を取得する第1工程、
2)前記液状の結晶化可能油の脂肪相に少なくとも一種の目的物質を混合する第2工程、
3)前記液状の脂肪相を、予め前記融点TMよりも高い温度TAPにもたらしてある水性相(AP)であって、コロイド状固形粒子を含んでいる該水性相に接触させる第3工程、
4)前記第3工程から得られる液体混合物を機械的に撹拌して、連続な前記水性相とそこに分散している液状の脂肪相の液滴とから形成される水中油エマルジョン(O/W)であって、前記連続水性相と前記分散した脂肪相の液滴との間に形成された界面には前記コロイド状固形粒子が存在している当該エマルジョンを形成する第4工程、
5)前記O/Wエマルジョンを、融点TMよりも低い温度TO/Wにもたらして、前記脂肪相を固化することにより、固体の前記脂肪相の球体(globules)が前記水性相に分散されたO/Wエマルジョンを生成する第5工程、
6)前記エマルジョンの水性相に少なくとも一種の酸化ケイ素の少なくとも前駆体と少なくとも一種の酸を、前記水性相をpH4以下にもたらすに充分な量で添加して撹拌することにより、前記球体の周り少なくとも一種の酸化ケイ素を含むシェルを形成する第6工程、及び
7)前記水性相から前記材料を分離する第7工程、
から構成される。
【0025】
前記第3工程において前記水性相に存在するコロイド状固体粒子は鉱物でも良いし有機物でも良い。好ましくは鉱物粒子である。コロイド状固体粒子は好ましくは、金属の酸化物、水酸化物及び硫酸塩から成る群から選択される鉱物材料である。これらの酸化物としてはシリコン、チタン、ジルコニウム、酸化鉄、及びそれらの塩(例えば粘度)等のケイ酸塩が挙げられる。また炭素のコロイド状粒子も挙げられる。有機コロイド状固体粒子としては特に重合体粒子例えばラテックス粒子が挙げられる。
【0026】
コロイドであるためには、固体粒子は一般に数μm以下の寸法を有する。従って、粒子は一般に平均粒子径が5〜5000nm、好ましくは5〜500nmである。
【0027】
本発明の好ましい実施例に従うと、コロイド状固形粒子は酸化ケイ素ナノ粒子から選択される。例えば、このようなコロイド状粒子はEvonik Degussa社からAerosil(登録商標)として市販されている。
【0028】
コロイド状固体粒子の量は脂肪相の全量に対して一般に0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。有利には連続水性相中のコロイド状固体粒子の量は、エマルジョン中の脂肪相の所望される液滴の体積平均寸法の関数として変化し、その平均の粒子直径は1μmから1cm、好ましくは5〜500μm、さらに好ましくは10〜200μmの範囲である。
【0029】
さらに、コロイド状固体粒子は一般に親水性であり、また荷電した表面を有する。これは分散した脂肪相の液滴の表面に吸着しにくい。
【0030】
従って、本発明の好ましい実施形態では、コロイド状固体粒子は連続水性相と分散した脂肪相液滴の間に形成される界面での吸着を容易にするために、表面官能化される。
【0031】
コロイド粒子は従って共有結合を介して表面に結合された化学物質により官能化できる。これは特に親油基を有する化合物を化学グラフトすることによる前処理で可能になる。このような親油基を有する化合物としては式R−Si−(OR’)3を有するトリアルコキシシラン(ここにRは炭素数C1−C12特にC2−C10の線状又は分岐アルキル基、特にn−オクチル基で、アミノ基を有しても良い。R’はRと同一又は異なってもよく、線状又は分岐C1−C12、特にC1−C6アルキル基、特にはエチル基である)がある。
【0032】
コロイド状固体粒子はその表面をある程度親水性化することができる界面活性剤分子を表面に吸着することにより官能化されても良い。この場合表面活性剤の親水端は粒子の表面に吸着される。粒子の官能化に使用できる界面活性剤は好ましくは陽イオン又は陰イオン活性剤である。
【0033】
これらの表面活性剤のうち、アルキル硫酸ナトリウム、例えば特に硫酸ナトリウムドデシル(SDS)及び臭化アルキルトリメチルアンモニウムが好ましい。
【0034】
表面活性剤は好ましくはコロイド状固体粒子の表面の電荷とは反対の電荷を有する表面活性剤から選択する。この選択は粒子の表面への表面活性剤の吸着を可能にする。
【0035】
表面活性剤で官能化された粒子の例としては、特に第4級アンモニウム、たとえばEvonik Degussa社製のAerosil(登録商標) A380により表面が官能化され、また臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)により表面が官能化されたた直径7nmのナノシリカが挙げられる。
【0036】
表面活性剤によるコロイド状固体粒子の官能化は、現場で、すなわちコロイド状固体粒子をエマルジョンの連続した水性相に導入している間に実施できる。この場合に、エマルジョンの連続した水性相は表面活性剤も臨界ミセル濃度(CMC)以下の濃度で含有し、この表面活性剤は粒子がエマルジョンの水性相中に存在するときに粒子の表面に吸着される。好ましくは表面活性剤の量はCMCの200分の1から3分の1の範囲で変化する。
【0037】
連続水性相は主として水及び随意にアルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はブタノールなどのアルコール、好ましくはエタノール)を含みうる。
【0038】
第4工程で実施される機械的な撹拌は乳化用の装置、例えば商品名Ultra-Turrax(登録商標)又はRayneri(登録商標)で市販されている装置で実施できる。
【0039】
O/W中の脂肪相の液滴の寸法分布は一般に狭い(U<40%)。
【0040】
第6工程の間に、少なくとも一種の酸化ケイ素前駆物質の酸性pHでの添加は固体状態の脂肪相球体の界面で前記前駆物質の凝縮を生じ、シェルを形成する。
【0041】
酸化ケイ素の前駆物質はアルコキシシリカ、特に、テトラメトキシオルトシラン(TMOS)、テトラエトキシオルトシラン(TEOS)、ジメチルジエトキシシラン(DMDES)、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、それらの混合物から選択できる。TEOSは特に好ましい。これらの前駆物質は全部又は一部をケイ酸ゾルで置換されていてもよい
【0042】
シェルの厚さは第6工程で使用された酸化ケイ素前駆物質の量と、脂肪相球体の直径に依存する。この量はエマルジョンの分散相球体の全表面積(m2)に比例するように表現される。
【0043】
本発明の好ましい実施例によると、エマルジョンの分散相球体の酸化ケイ素前駆物質の量は、分散相球体の表面積で表して0.05〜4M/m2、より好ましくは0.2〜2.2M/m2の範囲で変わる。
【0044】
シェルの最大厚さを達成するには、第6工程が所望の厚さが得られるまで複数回実施することができる。
【0045】
本発明による材料のシェルが、酸化ケイ素の他に金属酸化物を含む場合には、式MeO2の金属酸化物の少なくとも一種の前駆物質が、このエマルジョンの水性相に添加される。この前駆物質はZr、Ti、Th、Nb、Ta、V、W及びAlから選択された金属のアルコキシド、塩化物、又は窒化物から選択される。
【0046】
それらが使用されるとき、これら式MeO2の金属酸化物の前駆物質の量はエマルジョンの分散相粒子の表面積あたり、0.001〜1M/m2、好ましくは0.01〜0.6M/m2である。
【0047】
第6工程における水性相のpHは好ましくは0.01〜4、より好ましくは0.1〜2.1である。
【0048】
水性相のpHを調節するのに使用される酸は鉱酸又は有機酸、特に塩酸、酢酸、硝酸、及び硫酸である。
【0049】
第7工程では、本発明による材料は水性相から分離され、濾過、遠心分離、ふるいの使用等の任意の公知の方法で回収される。次いで好ましくは水洗され、凍結乾燥等により乾燥されて粉末を得る。
【0050】
こうして得られる材料は、シェルに閉じこめられた脂肪相の温度TMよりも低い保存温度条件で数ヶ月間の保存安定性を有する。
【0051】
本発明による材料は、酸化ケイ素をベースにしたシェルに閉じ込められた固形脂肪相中に存在する物質を供給するために、溶剤中に分散した粉末又は分散体の形で使用できる。
【0052】
本発明の他の主題は、本発明の材料を先に述べたように少なくとも一種の目的物質を熱刺激により放出するために使用することである。
【0053】
目的物質の放出または供給は温度が放出温度TD(TD>TM)に上昇する作用でシェルが破裂することにより得られる。
【0054】
例示するに、目的物質が医薬の場合には、脂肪相中に存在する結晶性油は37℃未満の融点を有する結晶性油から選択される。従って、目的物質が薬剤組成物に混合され、その組成物が患者に例えば経口投与された場合には、摂取された組成物はその温度が、一般に体温である37度以上になり、脂肪相の融解を生じ、その体積は膨張し、シリカシェルの破裂が生じ、薬剤の供給が行われる。
【0055】
他の例では、目的物質は化粧活性主剤であり、この物質は局所塗布のための化粧組成物、例えばおしろい、クリーム、又はジェルのような成分となる。この物質の脂肪相は温度TM以上への加熱は、この場合、化粧組成物を肌に局所塗布する際の摩擦熱で起こり、この局部熱によりシェルの破裂が生じ、目的物質の局部的釈放が生じる。もしも化粧組成物が粉末形態なら、その塗布中に押し広げられることにより、きめの変化が生じる(粉末がシェルの破裂によりすべすべした感覚を与える組成物に変化する)。
【0056】
本発明の材料の使用の他の例として特に次のものが挙げられる。
・最大保存温度以下の温度で食品包装に収容された食品などの物品の保存制御への使用。この場合に、食品包装体は本発明による材料を含有する保存制御体を含んでおり、この材料には脂肪相と反応体が含まれ、この反応体は包装体が食品の最高保存温度以上の温度にさらされてシェルが破裂する間に変色又は発色する。ここに脂肪相の結晶化可能油は最高保存温度の直上の融点を有する油から選択される。
・空気、織物、皮膚等の温度が脂肪相の融点以上に達した時に、芳香剤を空気中(脱臭作用)、織物、皮膚等に供給するのに使用。
・温度上昇により誘起される重合反応の開始剤を供給するのに使用。
・化学反応中に反応体を熱刺激により供給するのに使用。
・工業施設、例えば換気又は空調ダクト、の温度がバクテリア増殖温度に達したときに、殺菌剤を工業施設に供給するための使用。
・対象分子の保存のための使用。
【0057】
本発明の他の主題は上記材料の、薬剤、化粧品又は食品の製造のための材料、或いは本発明の少なくとも1つの材料の薬剤、化粧品又は食品の成分としての使用である。
これらの組成は、周知の従来の薬剤、化粧品又は食品支持体や、カプセルの破裂の間に液体脂肪相の釈放に有効な一種以上の表面活性剤を含んでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による材料粒子の平均直径D(μm)の逆数1/D(μm-1)を、エマルジョンの調製(第2工程ii)中に使用された官能化シリカ粒子とエイコサンの重量比(シリカ粒子mg/エイコサンg)の関数として表したものである。
【図2】3種の官能化シリカ粒子/エイコサン重量比で得られた水中エイコサンエマルジョンの光学顕微鏡像を示す。
【図3】図2に示した画像に示した3種のエマルジョン粒子寸法分布を示す。
【図4】図3の官能化したシリカ粒子により安定化された3種のエイコサンエマルジョン(a)、(b)、(c)のミネラル化により得られた材料の光学顕微鏡像を示す。
【図5】図3のエマルジョン(a)と(c)のミネラル化の前(点線)と後(実線)の粒子寸法分布を示す。
【図6】エマルジョンP46-48のミネラル化により得られる本発明の材料のSEM写真を示す。
【図7】37℃以上に上昇した温度(エイコサンの融点以上)の影響で生じるシリカシェルの破裂の状態を示す。
【図8】エマルジョンP42-44を5℃/分の速度で60℃まで昇温しながら光学顕微鏡で観察した結果を示す画像である。
【図9】臨界ミセル濃度の60倍を達成するに充分な量の種々の表面活性剤の存在が油の釈放に及ぼす効果を示す。
【図10】図10はa)Suppocire(登録商標)DMエマルジョン、b)ミネラル化後の得られた材料、及びc)温度を55℃に上げる間のカプセル、の各光学顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下に本発明の実施例を説明するが、例示であって発明を限定するものではない。
実施例において使用される原料は次の通りである。
・いずれもMerck社から市販されている融点42−44℃、及び融点46−48℃を有するパラフィン(CAS No.8002−74−2)、
・Aldrich社から市販されている純度99%のエイコサン(融点37℃)、
・Suppocire(登録商標)DM の名称でGattefosse社から市販されている融点が27−48℃のトリグリセリド混合物から成る座薬賦形剤。
・Fluka社から市販されているテトラエトキシオルトシラン(TEOS)及びセ臭化トリメチルアンモニウム(CTAB)、
・Evonik Degussaから商品名Aerosil(登録商標)A380で市販されている直径7nmのシリカナノ粒子、
・Aldrich社から市販されているナトリウムドデシルサルフェート(SDS)、
・IfraChem社から商品名Ifralan(登録商標)D205で市販されている、5モルのエチレンオキサイドを含有するC12及びC10ポリオキシエチレンの混合物よりなる非イオン性表面活性剤。
【0060】
これらの原料は追加の精製を行わないで製造者から購入したままのものを使用した。
【0061】
得られた材料はZeiss 社から市販されているAxiovert(登録商標)X100反転光学顕微鏡に、温度の測定と加熱・冷却速度の調整が可能なMettler社製の加熱ステージを装備したもので特性評価した。
【0062】
エマルジョンの粒子分布はMalvern Instrument社からMastersizer Hydro MS2000の名で市販されている粒子寸法分析器を使用して測定した。粒子寸法の測定は純水中25℃で実施した。収集した角度の関数である散乱強度をLorenz-Mieの理論に従って変換した。粒子の粒度分布は直径の重み付き平均Dで表し、多分散Pは次式(1)、(2)を適用することにより表した。
【数1】
【数2】
ここに、Diは粒子の直径、
Niは直径Diを有する粒子の全数、
はメディアン値(大きい方の直径が50重量%、小さい方の直径が50重量%となる理論ふるい開口)。
これらの式はMalvern Instrument社から市販されている粒子寸法分析に適用した。
測定を行った温度では、粒子は固体であり実質的に球形であった。
【0063】
材料は日立社よりTM−1000の参照番号で市販されている走査電子顕微鏡(SEM)を使用して観察した。より良好な解像度とシリカシェルの厚さの見積もりを得るため、試料をJeol社のJSM-840A及びJeol 6700Fの名で市販されている走査顕微鏡でも測定した。これを実施するために、粒子を先ず室温で乾燥するか又はChrist社から商品名Alpha2-4 LD Plusで市販されている親液化装置を使用して親液化した。全ての粒子を走査顕微鏡測定の前に金で被覆した。
【実施例】
【0064】
実施例1:本発明の材料の調製、特性評価、及び考察
この例では、結晶化可能油を収容するシリカシェルから構成された本発明の材料の調製、特性評価、及び考察を例示する。
1)材料の調製
i)第1工程(シリカ粒子の官能化)
超音波浴を利用して1.38gのAerosil(登録商標)A380シリカナノ粒子を300mlの蒸留水中に分散した。この分散に続いて、24mgの臭化トリメチルアンモニウム(CTAB)を追加した。この量は臨界ミセル濃度(CMC=0.9×10-3mol/l)の約5分の1である。シリカナノ粒子の表面は負に帯電しているので、CTAB(陽イオン表面活性剤)はシリカ粒子の表面に吸着され、そのため、粒子は両親媒性となり、表面官能化シリカナノ粒子の分散体を含有する水性相が得られた。
【0065】
ii)第2工程(エマルジョンの調製)
表1に示したエマルジョンの組成に依存して、第1工程で官能化した所定量のシリカナノ粒子分散体を水で希釈した。この水性相を温度65℃に加熱し、次いで表1に記載した可変量の結晶化可能油(パラフィン42−44,パラフィン46−48又はエイコサン)であって予め加熱により液状にしたものを強烈な撹拌しながら、シリカナノ粒子分散体に導入した。この撹拌はJanke & Kunkel社から市販されている商品名Ultra-Turrax(登録商標)T25攪拌器であって撹拌具としてS25を備えたものにより行った。撹拌は9000rpmで1分間で終了した。得られたエマルジョンを撹拌しないで放置し、室温に戻した。エマルジョンを結晶化可能油の融点以下の温度まで冷却した後、ワックス粒子の凝集を防ぎ且つエマルジョンの保存を可能にするために、臨界ミセル濃度を達成するに充分な量のCTABを添加した。
【0066】
【表1】
【0067】
iii)第3工程(シリカシェルの形成)
この工程では、ワックス粒子の周りにシリカシェルを形成した。
上記ワックス粒子エマルジョンに、塩酸37体積%の溶液とCTABを1重量%を含む溶液の両者を加えることにより、7重量%まで希釈し、またそのpHを約0.2に、つまりシリカの等電界点以下の値に調節した。これらのエマルジョンを複数の10mlの試験管に分配した。
【0068】
次に、前記エマルジョンにテトラエトキシオルトシラン(TEOS)を滴下により添加し、表1の量を得た。すなわちエマルジョンE0.17、E0.67、E1.45及びP42-44に対しては安定化したワックス粒子の表面のTEOS量は1M/m2、エマルジョンP46-48に対しては1.7M/m2であった。
【0069】
次いで、温度25℃に恒温制御したチャンバー内において、回転数25rpmのホイールで連続撹拌状態に放置することによりシリカシェルを形成(ミネラル化)した。
【0070】
ミネラル化の終点で、シリカ粒子を遠心分離と蒸留水により数回洗浄して回収した。得られた材料は蒸留水中で数ヶ月間保存したが、カプセルの劣化は観察されなかった。
【0071】
2)特性評価の結果
添付図1は本発明による材料粒子の平均直径D(μm)の逆数1/D(μm-1)を、エマルジョンの調製(第2工程ii)中に使用された官能化シリカ粒子とエイコサンの重量比(シリカ粒子mg/エイコサンg)の関数として表したものである。
【0072】
図2は種々の官能化シリカ粒子/エイコサン重量比で得られた水中エイコサンエマルジョンの光学顕微鏡像を示す。図2aはエマルジョンE0.17の、図2bはエマルジョンE0.67の図2cはエマルジョンE1.45のものを示す。添え字は重量%を示す。図2a、2b、2cのスケールバーの長さは100μmである。
【0073】
図3は図2に示した画像に示した3種のエマルジョン図2a:E0.17、図2b:E0.67、図2c:E1.45の粒子寸法分布を示す。これらの平均直径はそれぞれ(a)17.4μm、(b)39μm及び(c)121μmであり、多分散係数はそれぞれ(a)0.26、(b)0.26及び(c)0.19である。この図において似通った(comparable)直径を有するエマルジョン粒子の累積体積(%)は、粒子直径(μm)の関数(粒子の体積による粒子寸法分布)となることが報告される。図3はエマルジョン(a)、(b)、(c)の粒子寸法分布曲線を示している。
【0074】
これらの図に示されている結果は本発明の製造方法が、粒子寸法分布が狭い(低い多分散性を有する)エマルジョンを生じることを示している。図3は約10から数百μmの範囲の平均直径を有する粒子を示す。
【0075】
図4は図3の官能化したシリカ粒子により安定化されたエイコサンエマルジョン(a)、(b)及び(c)のミネラル化により得られた材料の光学顕微鏡像を示す。これらの図のスケールバーの長さは100μmである。
【0076】
図5は図3のエマルジョン(a)と(c)のミネラル化の前(点線)と後(実線)の粒子寸法分布を示す。この図において似通った直径を有するエマルジョンの粒子の累積体積(%)は、粒子直径(μm)の関数であることが報告される。図4〜図5に示した全ての結果は、ミネラル化の工程が粒子寸法の分布を広げないこと、粒子を凝集させないことを示している。
【0077】
図6はエマルジョンP46-48のミネラル化により得られる本発明の材料のSEM写真を示す。この写真は電子ビームをカプセル上に収束させることにより温度上昇をさせてシェルを破裂させた後の写真である。この図では白抜スケールバーの長さは10μmであり、白矢印で示す領域はワックスの膨張により生じる破裂帯域を示す。
【0078】
図3bのエマルジョンE0.67を次にMettler熱ステージを備えた顕微鏡により観察して、37℃以上に上昇した温度(エイコサンの融点以上)の影響で生じるシリカシェルの破裂を観察した。対応する影像は図7に示す。白い矢印はシェルの破裂により水中に放出されたエイコサンの液滴を示す。スケールバーは60μmに相当する。
【0079】
また、エマルジョンP42-44は、5℃/分の速度で60℃まで昇温しながら光学顕微鏡で観察した。相当する画像は図8に示す。画像8aは温度35℃(パラフィン42−44の融点より低い温度)で撮影したものであり、画像8bは温度50℃(パラフィン42−44の融点よりも高い温度)で撮影したものであり、画像8cは温度55℃で撮像したものであり、画像8dは温度60℃で撮像したものである。この図では、スケールバーの長さは20μmを表し、白い矢印はシリカシェルから放出された油の粒を示し、黒い矢印は油が抜けた後の空のシリカシェルを示す。この図は温度がシリカシェルの内部の結晶化可能油の融点よりも高くなったときに、油の熱膨張により起きるシリカシェルの破裂が起こり、油の釈放が起きることを示している。
【0080】
最後に(臨界ミセル濃度の60倍を達成するに充分な量の)種々の表面活性剤の存在が油の釈放に及ぼす効果を、エマルジョンE0.67のミネラル化により得られた材料により考察した。その結果は温度を昇温速度5℃/minで33℃から53℃に上昇したときに得られた結果を図9に示す。図9aは表面活性剤を添加しないでエイコサンを釈放する間のもの、図9bは陰イオン表面活性剤SDSを添加した同様のもの、図9cは陽イオン表面活性剤CTABを添加した同様のもの、図9dは非イオン表面活性剤Ifralan(登録商標)D205の存在下の同様なものである。図9においてスケールバーの長さはは60μmに相当する。
【0081】
表面活性剤の存在は、水と油の間の表面張力を減じるので、さらに小さい粒子の形のさらに多くの油の放出を促進する。液体油(例えばオクタン)と水の間の界面張力はその臨界ミセル濃度(CMC)以上の濃度でIfralan D205の存在下に約0.75mN/mに等しく、またその臨界ミセル濃度(CMC)以上の濃度でCTABの存在下に約3.81mN/mに等しく、またその臨界ミセル濃度(CMC)以上の濃度でSDSの存在下に約10mN/mに等しくすることが知られている。
【0082】
撹拌や水力学的流れは油をシリカシェルから引き外すのに役立つ。
【0083】
以上のように、シリカシェルの破裂の間に本発明に従って材料を包囲する媒体中における表面活性剤の存在・不存在に依存して油粒子の寸法を変えることができ、また材料の釈放の方法を変えることができる。
【0084】
実施例2:Suppocire(登録商標)DM芯とシリカシェルよりなる粒子材料の製造
この実施例では、Gattefosse社からSuppocire(登録商標)DMの商品名で市販されているトリグリセリド混合物からなる生物親和性の油を収容しているシリカシェルにより構成された本発明の材料の調製と、特性評価と考察を行う。
【0085】
実施例1で調製された材料の調製法を、下記の成分を使用するこの実施例で使用した。
・Suppocire(登録商標)DM 12.4g
・水性相 87.00g
・実施例1で製造された官能化シリカ粒子 0.046g
・粒子/油の重量比 0.0037
・CATB 0.008g
・TEOS 1M/m2
【0086】
図10はa)Suppocire(登録商標)DMエマルジョン、b)ミネラル化後の得られた材料、及びc)温度を55℃に上げる間のカプセル、の各光学顕微鏡画像である。これらの画像のスケールバーの長さは60μmを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明はワックスコア内蔵シリカシェル(silica shell)よりなる材料、その製造法、その材料の活性物質の熱刺激放出への利用、及び同材料を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤、染料、顔料、反応剤、断片、ペプチドなどの目的分子をカプセル化することは、それらを外的攻撃特に酸化から保護するため、それらを分与又は供給することができる場所へ供給するため、またはそれらを使用前に外部刺激の作用下にカプセルから釈放される条件下に保存するために、有用である。
マイクロカプセルの初期の用途の一つは、1960年代の終わりに販売されたカーボンレス複写用紙の開発である。この場合、インクを含有するマイクロカプセルは用紙の背面に存在し、筆記時にペン先へ加わる力でマイクロカプセルが破裂してインクが釈放される。今日では、カプセル化の用途は製薬、化粧、食品、繊維及び農業等の各分野で拡大している。カプセル及びマイクロカプセルは特に製薬の分野で益々洗練されており、活性主剤の制御された放出又は標的への供給が実施可能となってきた。
【0003】
カプセル及びマイクロカプセルの種々の種類及び形状は既に提案されていて、例えば、蛋白質カプセル、シクロデキストリン、リポソーム、濃縮ラメラ小胞体、二重エマルジョン、コロイドソーム、シリカシェルマイクロカプセル、シリカナノカプセル、感熱ポリマー例えばポリ(N−イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)、感熱ヒドロゲルマイクロ球、PNIPAMポリラクチドのマイクロ球等がある。これらの各種の形式のカプセル及びマイクロカプセルを製造することができる多くの方法、例えば相分離によるポリマーの製造、逐次積層電解法、層間重縮合による重合法などが開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来公知の方法の欠点は、提案されているカプセル及びマイクロカプセルからの対象物質分子の釈放が通常は遅く、長時間を要することである。
【0005】
今までのところ、穏和な条件下で外部刺激の影響下に目的物質を迅速かつ完全に釈放することができるシステムは存在しない。
【0006】
本発明の目的は、外部刺激特に温度上昇の影響下に、迅速かつ完全に放出できる一種以上の目的分子をカプセル化することができるカプセルを提供することである。
【0007】
本発明の一つの主題は、一種以上の酸化ケイ素を含む連続シェル(殻)とそれに含まれる脂肪相とから構成される固体粒子形態の材料であって、前記脂肪相が前記材料の保存温度で固体であり、100℃未満の融点(PM)を有する結晶化可能油と少なくとも一種の目的物質とを主成分量でに含有し、前記粒子の直径が1μmから1cmの範囲にある、固体粒子材料に関する。
【0008】
本書において、用語「材料の保存温度」とは本発明による材料がその使用前に保存される温度を意味する。この温度は常に脂肪層に含有される結晶化可能油の融点よりも低い。
【0009】
本発明の材料は次の特徴を示す。材料が結晶化可能油の融点よりも高温度にさらされると、脂肪層の熱膨張が起こり、それがシリカシェルの破壊を導き、溶融した脂肪層(液層中の脂肪層)の迅速かつ完全な釈放を導く。この結果は実に驚くべきことである。なぜならシェル中の組成に取り込まれている酸化ケイ素は熱絶縁体として知られているからである。
【0010】
本書において、用語「結晶化可能油」は、天然(動物性又は植物性)又は合成の脂肪物質及び脂肪物質の混合物であって、融点が15℃以上、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは20〜50℃であるものを意味する。本書に使用した融点の全ては大気圧で差分走査カロリー計(DSC)により決定されたものである。
【0011】
結晶化可能油は脂肪層の主成分量の部分を形成し、目的物質の他に、単独成分でさえありうる。一般に結晶化可能油は脂肪相の50〜99.9重量%、好ましくは75〜99.9重量%を構成しうる。
【0012】
結晶化可能油の選択は、当然材料の意図される用途に依存し、従って、脂肪相の熱膨張によるシリカシェルの破裂が観察されることが望まれる温度に依存する。本発明で使用可能な結晶化可能油の中でも、特にMerck社より市販されている融点42〜44℃、或いは46〜48℃[RN: 8002-74-2]の融点を有するパラフィン等のパラフィン、例えばトリグリセリド;脂肪酸;ロジン;エイコサン及びオクタデカン等のワックス(長鎖アルカン);ハロゲン化植物油、及びそれらの混合物;合成瀝青が使用できる。これらの油は単独又は混合物として使用できる。
【0013】
本発明の材料は好ましくは球状粒子、或いは実質的な球状粒子の形態を有する。
【0014】
粒子の直径は好ましくは約5〜500μm、さらに好ましくは約10〜200μmである。
【0015】
シリカシェルは脂肪相のカプセル化を可能にするに充分な機械強度を有するに充分な厚さを有しなければならない。一方厚さは材料のコアを構成する脂肪相の融点より高い温度まで昇温する間に破断しうるに充分な薄さを有する必要がある。シリカシェルの厚さは一般に約0.1〜2μm、好ましくは約0.2〜2μmで変化しうる。
【0016】
酸化ケイ素の他に、シェル(殻)はMeO2(ここにMeはZr、Ti、Th、Nb、Ta、V、W、Alから選択される金属)の一種以上を含みうる。この場合に、シェルは酸化ケイ素に比して小量のMeO2、好ましくはシェルの全重量に対して1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%のMeO2を含むSiO2−MeO2型の混合基質からなる。
【0017】
本発明による材料の脂肪相は親油性、親水性のいずれでも良い任意の種類の目的物質を含んでもよい。従って、目的物質が親油性なら、脂肪相は可溶化された形態のものを含むことができ、目的物質が親水性なら脂肪相はそれらを分散形態(結晶化可能油又は脂肪相中に水の一部が分散した形態(二重エマルジョン))を有しうる。それらは固体粒子であることも可能である。
【0018】
本発明に従って材料の脂肪相に混合できる目的物質は、特に薬剤(有効成分)、化粧品、化学反応原料、染料、顔料、インク等が使用できる。
【0019】
薬剤の例としては、防かび剤、抗生物質、抗炎症剤、鎮痛剤、通じ薬、ホルモン、蛋白質等がある。
【0020】
化粧品活性剤の例としては、ビタミン、日焼け止め、フリーラジカル捕捉剤のような酸化防止剤、例えば、スーパーオキシドジスムターゼ、香料、臭気吸収剤、デオドラント、制汗剤、染料、顔料、軟化剤、保湿剤等がある。
【0021】
化学反応剤の例としては、特に着色反応剤、pH指示剤のような色指示剤、触媒、重合開始剤、単量体、錯形成剤等がある。
【0022】
目的物質は脂肪相を100%としたときに、その一部又は全部であり得る。目的物質は好ましくは脂肪相全量の0.1〜50重量%、さらに好ましくは0.1〜25重量%を占めることができる。
【0023】
脂肪相はこれに加えて通常はエマルジョンで使用される一種以上の添加物を含みうる。中でも、目的物質を保護する保護剤例えば酸化防止剤、及び紫外線安定剤であり得る。
【0024】
本発明の他の主題は上記の材料を製造するための方法である。この方法は次の工程から成ることを特徴とする。
1)100℃未満の融点TMを有する固体の結晶化可能油(CO)を主成分として含む脂肪相を、TMより高い温度Tcoに加熱し、液状の結晶化可能油(CO)を取得する第1工程、
2)前記液状の結晶化可能油の脂肪相に少なくとも一種の目的物質を混合する第2工程、
3)前記液状の脂肪相を、予め前記融点TMよりも高い温度TAPにもたらしてある水性相(AP)であって、コロイド状固形粒子を含んでいる該水性相に接触させる第3工程、
4)前記第3工程から得られる液体混合物を機械的に撹拌して、連続な前記水性相とそこに分散している液状の脂肪相の液滴とから形成される水中油エマルジョン(O/W)であって、前記連続水性相と前記分散した脂肪相の液滴との間に形成された界面には前記コロイド状固形粒子が存在している当該エマルジョンを形成する第4工程、
5)前記O/Wエマルジョンを、融点TMよりも低い温度TO/Wにもたらして、前記脂肪相を固化することにより、固体の前記脂肪相の球体(globules)が前記水性相に分散されたO/Wエマルジョンを生成する第5工程、
6)前記エマルジョンの水性相に少なくとも一種の酸化ケイ素の少なくとも前駆体と少なくとも一種の酸を、前記水性相をpH4以下にもたらすに充分な量で添加して撹拌することにより、前記球体の周り少なくとも一種の酸化ケイ素を含むシェルを形成する第6工程、及び
7)前記水性相から前記材料を分離する第7工程、
から構成される。
【0025】
前記第3工程において前記水性相に存在するコロイド状固体粒子は鉱物でも良いし有機物でも良い。好ましくは鉱物粒子である。コロイド状固体粒子は好ましくは、金属の酸化物、水酸化物及び硫酸塩から成る群から選択される鉱物材料である。これらの酸化物としてはシリコン、チタン、ジルコニウム、酸化鉄、及びそれらの塩(例えば粘度)等のケイ酸塩が挙げられる。また炭素のコロイド状粒子も挙げられる。有機コロイド状固体粒子としては特に重合体粒子例えばラテックス粒子が挙げられる。
【0026】
コロイドであるためには、固体粒子は一般に数μm以下の寸法を有する。従って、粒子は一般に平均粒子径が5〜5000nm、好ましくは5〜500nmである。
【0027】
本発明の好ましい実施例に従うと、コロイド状固形粒子は酸化ケイ素ナノ粒子から選択される。例えば、このようなコロイド状粒子はEvonik Degussa社からAerosil(登録商標)として市販されている。
【0028】
コロイド状固体粒子の量は脂肪相の全量に対して一般に0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。有利には連続水性相中のコロイド状固体粒子の量は、エマルジョン中の脂肪相の所望される液滴の体積平均寸法の関数として変化し、その平均の粒子直径は1μmから1cm、好ましくは5〜500μm、さらに好ましくは10〜200μmの範囲である。
【0029】
さらに、コロイド状固体粒子は一般に親水性であり、また荷電した表面を有する。これは分散した脂肪相の液滴の表面に吸着しにくい。
【0030】
従って、本発明の好ましい実施形態では、コロイド状固体粒子は連続水性相と分散した脂肪相液滴の間に形成される界面での吸着を容易にするために、表面官能化される。
【0031】
コロイド粒子は従って共有結合を介して表面に結合された化学物質により官能化できる。これは特に親油基を有する化合物を化学グラフトすることによる前処理で可能になる。このような親油基を有する化合物としては式R−Si−(OR’)3を有するトリアルコキシシラン(ここにRは炭素数C1−C12特にC2−C10の線状又は分岐アルキル基、特にn−オクチル基で、アミノ基を有しても良い。R’はRと同一又は異なってもよく、線状又は分岐C1−C12、特にC1−C6アルキル基、特にはエチル基である)がある。
【0032】
コロイド状固体粒子はその表面をある程度親水性化することができる界面活性剤分子を表面に吸着することにより官能化されても良い。この場合表面活性剤の親水端は粒子の表面に吸着される。粒子の官能化に使用できる界面活性剤は好ましくは陽イオン又は陰イオン活性剤である。
【0033】
これらの表面活性剤のうち、アルキル硫酸ナトリウム、例えば特に硫酸ナトリウムドデシル(SDS)及び臭化アルキルトリメチルアンモニウムが好ましい。
【0034】
表面活性剤は好ましくはコロイド状固体粒子の表面の電荷とは反対の電荷を有する表面活性剤から選択する。この選択は粒子の表面への表面活性剤の吸着を可能にする。
【0035】
表面活性剤で官能化された粒子の例としては、特に第4級アンモニウム、たとえばEvonik Degussa社製のAerosil(登録商標) A380により表面が官能化され、また臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)により表面が官能化されたた直径7nmのナノシリカが挙げられる。
【0036】
表面活性剤によるコロイド状固体粒子の官能化は、現場で、すなわちコロイド状固体粒子をエマルジョンの連続した水性相に導入している間に実施できる。この場合に、エマルジョンの連続した水性相は表面活性剤も臨界ミセル濃度(CMC)以下の濃度で含有し、この表面活性剤は粒子がエマルジョンの水性相中に存在するときに粒子の表面に吸着される。好ましくは表面活性剤の量はCMCの200分の1から3分の1の範囲で変化する。
【0037】
連続水性相は主として水及び随意にアルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はブタノールなどのアルコール、好ましくはエタノール)を含みうる。
【0038】
第4工程で実施される機械的な撹拌は乳化用の装置、例えば商品名Ultra-Turrax(登録商標)又はRayneri(登録商標)で市販されている装置で実施できる。
【0039】
O/W中の脂肪相の液滴の寸法分布は一般に狭い(U<40%)。
【0040】
第6工程の間に、少なくとも一種の酸化ケイ素前駆物質の酸性pHでの添加は固体状態の脂肪相球体の界面で前記前駆物質の凝縮を生じ、シェルを形成する。
【0041】
酸化ケイ素の前駆物質はアルコキシシリカ、特に、テトラメトキシオルトシラン(TMOS)、テトラエトキシオルトシラン(TEOS)、ジメチルジエトキシシラン(DMDES)、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、それらの混合物から選択できる。TEOSは特に好ましい。これらの前駆物質は全部又は一部をケイ酸ゾルで置換されていてもよい
【0042】
シェルの厚さは第6工程で使用された酸化ケイ素前駆物質の量と、脂肪相球体の直径に依存する。この量はエマルジョンの分散相球体の全表面積(m2)に比例するように表現される。
【0043】
本発明の好ましい実施例によると、エマルジョンの分散相球体の酸化ケイ素前駆物質の量は、分散相球体の表面積で表して0.05〜4M/m2、より好ましくは0.2〜2.2M/m2の範囲で変わる。
【0044】
シェルの最大厚さを達成するには、第6工程が所望の厚さが得られるまで複数回実施することができる。
【0045】
本発明による材料のシェルが、酸化ケイ素の他に金属酸化物を含む場合には、式MeO2の金属酸化物の少なくとも一種の前駆物質が、このエマルジョンの水性相に添加される。この前駆物質はZr、Ti、Th、Nb、Ta、V、W及びAlから選択された金属のアルコキシド、塩化物、又は窒化物から選択される。
【0046】
それらが使用されるとき、これら式MeO2の金属酸化物の前駆物質の量はエマルジョンの分散相粒子の表面積あたり、0.001〜1M/m2、好ましくは0.01〜0.6M/m2である。
【0047】
第6工程における水性相のpHは好ましくは0.01〜4、より好ましくは0.1〜2.1である。
【0048】
水性相のpHを調節するのに使用される酸は鉱酸又は有機酸、特に塩酸、酢酸、硝酸、及び硫酸である。
【0049】
第7工程では、本発明による材料は水性相から分離され、濾過、遠心分離、ふるいの使用等の任意の公知の方法で回収される。次いで好ましくは水洗され、凍結乾燥等により乾燥されて粉末を得る。
【0050】
こうして得られる材料は、シェルに閉じこめられた脂肪相の温度TMよりも低い保存温度条件で数ヶ月間の保存安定性を有する。
【0051】
本発明による材料は、酸化ケイ素をベースにしたシェルに閉じ込められた固形脂肪相中に存在する物質を供給するために、溶剤中に分散した粉末又は分散体の形で使用できる。
【0052】
本発明の他の主題は、本発明の材料を先に述べたように少なくとも一種の目的物質を熱刺激により放出するために使用することである。
【0053】
目的物質の放出または供給は温度が放出温度TD(TD>TM)に上昇する作用でシェルが破裂することにより得られる。
【0054】
例示するに、目的物質が医薬の場合には、脂肪相中に存在する結晶性油は37℃未満の融点を有する結晶性油から選択される。従って、目的物質が薬剤組成物に混合され、その組成物が患者に例えば経口投与された場合には、摂取された組成物はその温度が、一般に体温である37度以上になり、脂肪相の融解を生じ、その体積は膨張し、シリカシェルの破裂が生じ、薬剤の供給が行われる。
【0055】
他の例では、目的物質は化粧活性主剤であり、この物質は局所塗布のための化粧組成物、例えばおしろい、クリーム、又はジェルのような成分となる。この物質の脂肪相は温度TM以上への加熱は、この場合、化粧組成物を肌に局所塗布する際の摩擦熱で起こり、この局部熱によりシェルの破裂が生じ、目的物質の局部的釈放が生じる。もしも化粧組成物が粉末形態なら、その塗布中に押し広げられることにより、きめの変化が生じる(粉末がシェルの破裂によりすべすべした感覚を与える組成物に変化する)。
【0056】
本発明の材料の使用の他の例として特に次のものが挙げられる。
・最大保存温度以下の温度で食品包装に収容された食品などの物品の保存制御への使用。この場合に、食品包装体は本発明による材料を含有する保存制御体を含んでおり、この材料には脂肪相と反応体が含まれ、この反応体は包装体が食品の最高保存温度以上の温度にさらされてシェルが破裂する間に変色又は発色する。ここに脂肪相の結晶化可能油は最高保存温度の直上の融点を有する油から選択される。
・空気、織物、皮膚等の温度が脂肪相の融点以上に達した時に、芳香剤を空気中(脱臭作用)、織物、皮膚等に供給するのに使用。
・温度上昇により誘起される重合反応の開始剤を供給するのに使用。
・化学反応中に反応体を熱刺激により供給するのに使用。
・工業施設、例えば換気又は空調ダクト、の温度がバクテリア増殖温度に達したときに、殺菌剤を工業施設に供給するための使用。
・対象分子の保存のための使用。
【0057】
本発明の他の主題は上記材料の、薬剤、化粧品又は食品の製造のための材料、或いは本発明の少なくとも1つの材料の薬剤、化粧品又は食品の成分としての使用である。
これらの組成は、周知の従来の薬剤、化粧品又は食品支持体や、カプセルの破裂の間に液体脂肪相の釈放に有効な一種以上の表面活性剤を含んでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による材料粒子の平均直径D(μm)の逆数1/D(μm-1)を、エマルジョンの調製(第2工程ii)中に使用された官能化シリカ粒子とエイコサンの重量比(シリカ粒子mg/エイコサンg)の関数として表したものである。
【図2】3種の官能化シリカ粒子/エイコサン重量比で得られた水中エイコサンエマルジョンの光学顕微鏡像を示す。
【図3】図2に示した画像に示した3種のエマルジョン粒子寸法分布を示す。
【図4】図3の官能化したシリカ粒子により安定化された3種のエイコサンエマルジョン(a)、(b)、(c)のミネラル化により得られた材料の光学顕微鏡像を示す。
【図5】図3のエマルジョン(a)と(c)のミネラル化の前(点線)と後(実線)の粒子寸法分布を示す。
【図6】エマルジョンP46-48のミネラル化により得られる本発明の材料のSEM写真を示す。
【図7】37℃以上に上昇した温度(エイコサンの融点以上)の影響で生じるシリカシェルの破裂の状態を示す。
【図8】エマルジョンP42-44を5℃/分の速度で60℃まで昇温しながら光学顕微鏡で観察した結果を示す画像である。
【図9】臨界ミセル濃度の60倍を達成するに充分な量の種々の表面活性剤の存在が油の釈放に及ぼす効果を示す。
【図10】図10はa)Suppocire(登録商標)DMエマルジョン、b)ミネラル化後の得られた材料、及びc)温度を55℃に上げる間のカプセル、の各光学顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下に本発明の実施例を説明するが、例示であって発明を限定するものではない。
実施例において使用される原料は次の通りである。
・いずれもMerck社から市販されている融点42−44℃、及び融点46−48℃を有するパラフィン(CAS No.8002−74−2)、
・Aldrich社から市販されている純度99%のエイコサン(融点37℃)、
・Suppocire(登録商標)DM の名称でGattefosse社から市販されている融点が27−48℃のトリグリセリド混合物から成る座薬賦形剤。
・Fluka社から市販されているテトラエトキシオルトシラン(TEOS)及びセ臭化トリメチルアンモニウム(CTAB)、
・Evonik Degussaから商品名Aerosil(登録商標)A380で市販されている直径7nmのシリカナノ粒子、
・Aldrich社から市販されているナトリウムドデシルサルフェート(SDS)、
・IfraChem社から商品名Ifralan(登録商標)D205で市販されている、5モルのエチレンオキサイドを含有するC12及びC10ポリオキシエチレンの混合物よりなる非イオン性表面活性剤。
【0060】
これらの原料は追加の精製を行わないで製造者から購入したままのものを使用した。
【0061】
得られた材料はZeiss 社から市販されているAxiovert(登録商標)X100反転光学顕微鏡に、温度の測定と加熱・冷却速度の調整が可能なMettler社製の加熱ステージを装備したもので特性評価した。
【0062】
エマルジョンの粒子分布はMalvern Instrument社からMastersizer Hydro MS2000の名で市販されている粒子寸法分析器を使用して測定した。粒子寸法の測定は純水中25℃で実施した。収集した角度の関数である散乱強度をLorenz-Mieの理論に従って変換した。粒子の粒度分布は直径の重み付き平均Dで表し、多分散Pは次式(1)、(2)を適用することにより表した。
【数1】
【数2】
ここに、Diは粒子の直径、
Niは直径Diを有する粒子の全数、
はメディアン値(大きい方の直径が50重量%、小さい方の直径が50重量%となる理論ふるい開口)。
これらの式はMalvern Instrument社から市販されている粒子寸法分析に適用した。
測定を行った温度では、粒子は固体であり実質的に球形であった。
【0063】
材料は日立社よりTM−1000の参照番号で市販されている走査電子顕微鏡(SEM)を使用して観察した。より良好な解像度とシリカシェルの厚さの見積もりを得るため、試料をJeol社のJSM-840A及びJeol 6700Fの名で市販されている走査顕微鏡でも測定した。これを実施するために、粒子を先ず室温で乾燥するか又はChrist社から商品名Alpha2-4 LD Plusで市販されている親液化装置を使用して親液化した。全ての粒子を走査顕微鏡測定の前に金で被覆した。
【実施例】
【0064】
実施例1:本発明の材料の調製、特性評価、及び考察
この例では、結晶化可能油を収容するシリカシェルから構成された本発明の材料の調製、特性評価、及び考察を例示する。
1)材料の調製
i)第1工程(シリカ粒子の官能化)
超音波浴を利用して1.38gのAerosil(登録商標)A380シリカナノ粒子を300mlの蒸留水中に分散した。この分散に続いて、24mgの臭化トリメチルアンモニウム(CTAB)を追加した。この量は臨界ミセル濃度(CMC=0.9×10-3mol/l)の約5分の1である。シリカナノ粒子の表面は負に帯電しているので、CTAB(陽イオン表面活性剤)はシリカ粒子の表面に吸着され、そのため、粒子は両親媒性となり、表面官能化シリカナノ粒子の分散体を含有する水性相が得られた。
【0065】
ii)第2工程(エマルジョンの調製)
表1に示したエマルジョンの組成に依存して、第1工程で官能化した所定量のシリカナノ粒子分散体を水で希釈した。この水性相を温度65℃に加熱し、次いで表1に記載した可変量の結晶化可能油(パラフィン42−44,パラフィン46−48又はエイコサン)であって予め加熱により液状にしたものを強烈な撹拌しながら、シリカナノ粒子分散体に導入した。この撹拌はJanke & Kunkel社から市販されている商品名Ultra-Turrax(登録商標)T25攪拌器であって撹拌具としてS25を備えたものにより行った。撹拌は9000rpmで1分間で終了した。得られたエマルジョンを撹拌しないで放置し、室温に戻した。エマルジョンを結晶化可能油の融点以下の温度まで冷却した後、ワックス粒子の凝集を防ぎ且つエマルジョンの保存を可能にするために、臨界ミセル濃度を達成するに充分な量のCTABを添加した。
【0066】
【表1】
【0067】
iii)第3工程(シリカシェルの形成)
この工程では、ワックス粒子の周りにシリカシェルを形成した。
上記ワックス粒子エマルジョンに、塩酸37体積%の溶液とCTABを1重量%を含む溶液の両者を加えることにより、7重量%まで希釈し、またそのpHを約0.2に、つまりシリカの等電界点以下の値に調節した。これらのエマルジョンを複数の10mlの試験管に分配した。
【0068】
次に、前記エマルジョンにテトラエトキシオルトシラン(TEOS)を滴下により添加し、表1の量を得た。すなわちエマルジョンE0.17、E0.67、E1.45及びP42-44に対しては安定化したワックス粒子の表面のTEOS量は1M/m2、エマルジョンP46-48に対しては1.7M/m2であった。
【0069】
次いで、温度25℃に恒温制御したチャンバー内において、回転数25rpmのホイールで連続撹拌状態に放置することによりシリカシェルを形成(ミネラル化)した。
【0070】
ミネラル化の終点で、シリカ粒子を遠心分離と蒸留水により数回洗浄して回収した。得られた材料は蒸留水中で数ヶ月間保存したが、カプセルの劣化は観察されなかった。
【0071】
2)特性評価の結果
添付図1は本発明による材料粒子の平均直径D(μm)の逆数1/D(μm-1)を、エマルジョンの調製(第2工程ii)中に使用された官能化シリカ粒子とエイコサンの重量比(シリカ粒子mg/エイコサンg)の関数として表したものである。
【0072】
図2は種々の官能化シリカ粒子/エイコサン重量比で得られた水中エイコサンエマルジョンの光学顕微鏡像を示す。図2aはエマルジョンE0.17の、図2bはエマルジョンE0.67の図2cはエマルジョンE1.45のものを示す。添え字は重量%を示す。図2a、2b、2cのスケールバーの長さは100μmである。
【0073】
図3は図2に示した画像に示した3種のエマルジョン図2a:E0.17、図2b:E0.67、図2c:E1.45の粒子寸法分布を示す。これらの平均直径はそれぞれ(a)17.4μm、(b)39μm及び(c)121μmであり、多分散係数はそれぞれ(a)0.26、(b)0.26及び(c)0.19である。この図において似通った(comparable)直径を有するエマルジョン粒子の累積体積(%)は、粒子直径(μm)の関数(粒子の体積による粒子寸法分布)となることが報告される。図3はエマルジョン(a)、(b)、(c)の粒子寸法分布曲線を示している。
【0074】
これらの図に示されている結果は本発明の製造方法が、粒子寸法分布が狭い(低い多分散性を有する)エマルジョンを生じることを示している。図3は約10から数百μmの範囲の平均直径を有する粒子を示す。
【0075】
図4は図3の官能化したシリカ粒子により安定化されたエイコサンエマルジョン(a)、(b)及び(c)のミネラル化により得られた材料の光学顕微鏡像を示す。これらの図のスケールバーの長さは100μmである。
【0076】
図5は図3のエマルジョン(a)と(c)のミネラル化の前(点線)と後(実線)の粒子寸法分布を示す。この図において似通った直径を有するエマルジョンの粒子の累積体積(%)は、粒子直径(μm)の関数であることが報告される。図4〜図5に示した全ての結果は、ミネラル化の工程が粒子寸法の分布を広げないこと、粒子を凝集させないことを示している。
【0077】
図6はエマルジョンP46-48のミネラル化により得られる本発明の材料のSEM写真を示す。この写真は電子ビームをカプセル上に収束させることにより温度上昇をさせてシェルを破裂させた後の写真である。この図では白抜スケールバーの長さは10μmであり、白矢印で示す領域はワックスの膨張により生じる破裂帯域を示す。
【0078】
図3bのエマルジョンE0.67を次にMettler熱ステージを備えた顕微鏡により観察して、37℃以上に上昇した温度(エイコサンの融点以上)の影響で生じるシリカシェルの破裂を観察した。対応する影像は図7に示す。白い矢印はシェルの破裂により水中に放出されたエイコサンの液滴を示す。スケールバーは60μmに相当する。
【0079】
また、エマルジョンP42-44は、5℃/分の速度で60℃まで昇温しながら光学顕微鏡で観察した。相当する画像は図8に示す。画像8aは温度35℃(パラフィン42−44の融点より低い温度)で撮影したものであり、画像8bは温度50℃(パラフィン42−44の融点よりも高い温度)で撮影したものであり、画像8cは温度55℃で撮像したものであり、画像8dは温度60℃で撮像したものである。この図では、スケールバーの長さは20μmを表し、白い矢印はシリカシェルから放出された油の粒を示し、黒い矢印は油が抜けた後の空のシリカシェルを示す。この図は温度がシリカシェルの内部の結晶化可能油の融点よりも高くなったときに、油の熱膨張により起きるシリカシェルの破裂が起こり、油の釈放が起きることを示している。
【0080】
最後に(臨界ミセル濃度の60倍を達成するに充分な量の)種々の表面活性剤の存在が油の釈放に及ぼす効果を、エマルジョンE0.67のミネラル化により得られた材料により考察した。その結果は温度を昇温速度5℃/minで33℃から53℃に上昇したときに得られた結果を図9に示す。図9aは表面活性剤を添加しないでエイコサンを釈放する間のもの、図9bは陰イオン表面活性剤SDSを添加した同様のもの、図9cは陽イオン表面活性剤CTABを添加した同様のもの、図9dは非イオン表面活性剤Ifralan(登録商標)D205の存在下の同様なものである。図9においてスケールバーの長さはは60μmに相当する。
【0081】
表面活性剤の存在は、水と油の間の表面張力を減じるので、さらに小さい粒子の形のさらに多くの油の放出を促進する。液体油(例えばオクタン)と水の間の界面張力はその臨界ミセル濃度(CMC)以上の濃度でIfralan D205の存在下に約0.75mN/mに等しく、またその臨界ミセル濃度(CMC)以上の濃度でCTABの存在下に約3.81mN/mに等しく、またその臨界ミセル濃度(CMC)以上の濃度でSDSの存在下に約10mN/mに等しくすることが知られている。
【0082】
撹拌や水力学的流れは油をシリカシェルから引き外すのに役立つ。
【0083】
以上のように、シリカシェルの破裂の間に本発明に従って材料を包囲する媒体中における表面活性剤の存在・不存在に依存して油粒子の寸法を変えることができ、また材料の釈放の方法を変えることができる。
【0084】
実施例2:Suppocire(登録商標)DM芯とシリカシェルよりなる粒子材料の製造
この実施例では、Gattefosse社からSuppocire(登録商標)DMの商品名で市販されているトリグリセリド混合物からなる生物親和性の油を収容しているシリカシェルにより構成された本発明の材料の調製と、特性評価と考察を行う。
【0085】
実施例1で調製された材料の調製法を、下記の成分を使用するこの実施例で使用した。
・Suppocire(登録商標)DM 12.4g
・水性相 87.00g
・実施例1で製造された官能化シリカ粒子 0.046g
・粒子/油の重量比 0.0037
・CATB 0.008g
・TEOS 1M/m2
【0086】
図10はa)Suppocire(登録商標)DMエマルジョン、b)ミネラル化後の得られた材料、及びc)温度を55℃に上げる間のカプセル、の各光学顕微鏡画像である。これらの画像のスケールバーの長さは60μmを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種以上の酸化ケイ素を含む連続シェルとその内部に含まれる一種以上の脂肪相とから構成される固体粒子形態の材料であって、前記脂肪相は前記材料の保存温度で固体であり、100℃未満の融点(TM)を有する結晶化可能油と少なくとも一種の目的物質とを主成分量で含有し、前記粒子の直径が1μmから1cmである、固体粒子材料。
【請求項2】
結晶化可能油が、15℃以上の融点を有する天然又は合成の脂肪物質及び脂肪物質の混合物から選択される請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記融点が20−50℃の範囲で変わる請求項2に記載の材料。
【請求項4】
結晶化可能油は脂肪相の50〜99.9重量%を構成する請求項1〜3の何れか一項に記載の材料。
【請求項5】
前記結晶化可能油はパラフィン、トリグリセリド、脂肪酸、ロジン、ワックス、ハロゲン化植物油及びそれらの混合物、合成瀝青及びそれらの混合物から選択される請求項1〜4の何れか一項に記載の材料。
【請求項6】
球状又はほぼ球状粒子の粉末形態を有する請求項1〜5の何れか一項に記載の材料。
【請求項7】
粒子の直径が5〜500μmである請求項6に記載の材料。
【請求項8】
前記シリカシェルが厚さが0.1〜2μmである請求項1〜7の何れか一項に記載の材料。
【請求項9】
前記シリカシェルがさらにMeO2(ここにMeはZr、Ti、Th、Nb、Ta、V、W及びAlから選択した金属である)の一種以上の金属酸化物である請求項1〜8の何れか一項に記載の材料。
【請求項10】
目的物質が医薬、化粧料、化学反応体、染料、顔料及びインクから選択されるものである請求項1〜9の何れか一項に記載の材料。
【請求項11】
目的物質が、防かび剤、抗炎症剤、鎮痛剤、通じ薬、ホルモン、蛋白質等の薬剤;ビタミン、日焼け止め、酸化防止剤、香料、臭気吸収剤、デオドラント、制汗剤、染料、顔料、軟化剤、保湿剤等の化粧活性成分;着色反応剤、色指示剤、触媒、重合開始剤、単量体、錯形成剤等の化学剤から選択される請求項10に記載の材料。
【請求項12】
前記目的物質は、脂肪相全重量の0.1〜50重量%を占める請求項1〜11のいずれか一項に記載の材料。
【請求項13】
1)100℃未満の融点TMを有する固体の結晶化可能油(CO)を主成分量で含む脂肪相を、TMより高い温度Tcoに加熱し、液状の結晶化可能油(CO)を生成する第1工程、
2)前記液状の前記脂肪相に少なくとも一種の目的物質を混合する第2工程、
3)前記液状の前記脂肪相を、予め前記融点TMよりも高い温度TAPにもたらしてある水性相(AP)であって、コロイド状固形粒子を含んでいる該水性相に接触させる第3工程、
4)前記第3工程から得られる液体混合物を機械的に撹拌して、連続な前記水性相とそこに分散している液状の脂肪相の液滴とから形成される水中油エマルジョン(O/W)であって、前記連続水性相と前記分散した脂肪相の液滴との間に形成された界面には前記コロイド状固形粒子が存在している当該エマルジョンを形成する第4工程、
5)前記O/Wエマルジョンを、融点TMよりも低い温度TO/Wにもたらして、前記脂肪相を固化することにより、固体の前記脂肪相の球体が前記水性相に分散されたO/Wエマルジョンを生成する第5工程、
6)前記エマルジョンの水性相に少なくとも一種の酸化ケイ素の少なくとも前駆体と少なくとも一種の酸を、前記水性相をpH4以下にもたらすに充分な量で添加して機械的に撹拌することにより、前記球体の周りに少なくとも一種の酸化ケイ素を含むシェルを形成した材料を得る第6工程、及び
7)前記水性相から前記材料を分離する第7工程、
から構成される。請求項1〜12の何れか一項の材料を製造するための方法。
【請求項14】
コロイド状固体粒子が金属の酸化物、水酸化物、及び硫酸塩より成る群から選択されるミネラル粒子である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
金属の酸化物はシリコン、チタン、ジルコニウム、酸化鉄、及びそれらの塩から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
粒子はシリコン酸化物ナノ粒子から選択される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
コロイド状固体粒子の量は脂肪相の全重量を基準にして0.01〜10%の範囲にある請求項13〜16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
コロイド状固体粒子は表面活性剤分子の吸着により官能化されている請求項13〜17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
シリカ前駆物質がシリカアルコキシドから選択される請求項13〜18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
シリカアルコキシドは、テトラメトキシオルトシラン、テトラエトキシオルトシラン、ジメチルジエトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、及びそれらの混合物から選択される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
酸化ケイ素前駆物質の量はエマルジョンの分散相の球体の表面積で表して0.05〜4M/m2の範囲にある請求項13〜20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第6工程における水性相のpHは0.1〜2.1である請求項13〜21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1〜12の何れか一項に記載の材料を使用して、粉末又は溶媒中分散体の形態で、少なくとも一種の目的物質を熱刺激により放出する方法。
【請求項24】
前記目的物質の放出は温度が放出温度TD(ここにTD>TM)に上昇する作用で前記シェルが破裂することにより得られるものである請求項23に記載の方法。
【請求項25】
薬剤、化粧品、食品の製造のための成分として請求項1〜12の何れか一項に記載の材料を使用する方法。
【請求項26】
請求項1〜12の何れか一項に記載の材料の少なくとも一種を前記薬剤、化粧品、食品の成分として使用する使用方法。
【請求項1】
一種以上の酸化ケイ素を含む連続シェルとその内部に含まれる一種以上の脂肪相とから構成される固体粒子形態の材料であって、前記脂肪相は前記材料の保存温度で固体であり、100℃未満の融点(TM)を有する結晶化可能油と少なくとも一種の目的物質とを主成分量で含有し、前記粒子の直径が1μmから1cmである、固体粒子材料。
【請求項2】
結晶化可能油が、15℃以上の融点を有する天然又は合成の脂肪物質及び脂肪物質の混合物から選択される請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記融点が20−50℃の範囲で変わる請求項2に記載の材料。
【請求項4】
結晶化可能油は脂肪相の50〜99.9重量%を構成する請求項1〜3の何れか一項に記載の材料。
【請求項5】
前記結晶化可能油はパラフィン、トリグリセリド、脂肪酸、ロジン、ワックス、ハロゲン化植物油及びそれらの混合物、合成瀝青及びそれらの混合物から選択される請求項1〜4の何れか一項に記載の材料。
【請求項6】
球状又はほぼ球状粒子の粉末形態を有する請求項1〜5の何れか一項に記載の材料。
【請求項7】
粒子の直径が5〜500μmである請求項6に記載の材料。
【請求項8】
前記シリカシェルが厚さが0.1〜2μmである請求項1〜7の何れか一項に記載の材料。
【請求項9】
前記シリカシェルがさらにMeO2(ここにMeはZr、Ti、Th、Nb、Ta、V、W及びAlから選択した金属である)の一種以上の金属酸化物である請求項1〜8の何れか一項に記載の材料。
【請求項10】
目的物質が医薬、化粧料、化学反応体、染料、顔料及びインクから選択されるものである請求項1〜9の何れか一項に記載の材料。
【請求項11】
目的物質が、防かび剤、抗炎症剤、鎮痛剤、通じ薬、ホルモン、蛋白質等の薬剤;ビタミン、日焼け止め、酸化防止剤、香料、臭気吸収剤、デオドラント、制汗剤、染料、顔料、軟化剤、保湿剤等の化粧活性成分;着色反応剤、色指示剤、触媒、重合開始剤、単量体、錯形成剤等の化学剤から選択される請求項10に記載の材料。
【請求項12】
前記目的物質は、脂肪相全重量の0.1〜50重量%を占める請求項1〜11のいずれか一項に記載の材料。
【請求項13】
1)100℃未満の融点TMを有する固体の結晶化可能油(CO)を主成分量で含む脂肪相を、TMより高い温度Tcoに加熱し、液状の結晶化可能油(CO)を生成する第1工程、
2)前記液状の前記脂肪相に少なくとも一種の目的物質を混合する第2工程、
3)前記液状の前記脂肪相を、予め前記融点TMよりも高い温度TAPにもたらしてある水性相(AP)であって、コロイド状固形粒子を含んでいる該水性相に接触させる第3工程、
4)前記第3工程から得られる液体混合物を機械的に撹拌して、連続な前記水性相とそこに分散している液状の脂肪相の液滴とから形成される水中油エマルジョン(O/W)であって、前記連続水性相と前記分散した脂肪相の液滴との間に形成された界面には前記コロイド状固形粒子が存在している当該エマルジョンを形成する第4工程、
5)前記O/Wエマルジョンを、融点TMよりも低い温度TO/Wにもたらして、前記脂肪相を固化することにより、固体の前記脂肪相の球体が前記水性相に分散されたO/Wエマルジョンを生成する第5工程、
6)前記エマルジョンの水性相に少なくとも一種の酸化ケイ素の少なくとも前駆体と少なくとも一種の酸を、前記水性相をpH4以下にもたらすに充分な量で添加して機械的に撹拌することにより、前記球体の周りに少なくとも一種の酸化ケイ素を含むシェルを形成した材料を得る第6工程、及び
7)前記水性相から前記材料を分離する第7工程、
から構成される。請求項1〜12の何れか一項の材料を製造するための方法。
【請求項14】
コロイド状固体粒子が金属の酸化物、水酸化物、及び硫酸塩より成る群から選択されるミネラル粒子である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
金属の酸化物はシリコン、チタン、ジルコニウム、酸化鉄、及びそれらの塩から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
粒子はシリコン酸化物ナノ粒子から選択される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
コロイド状固体粒子の量は脂肪相の全重量を基準にして0.01〜10%の範囲にある請求項13〜16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
コロイド状固体粒子は表面活性剤分子の吸着により官能化されている請求項13〜17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
シリカ前駆物質がシリカアルコキシドから選択される請求項13〜18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
シリカアルコキシドは、テトラメトキシオルトシラン、テトラエトキシオルトシラン、ジメチルジエトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、及びそれらの混合物から選択される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
酸化ケイ素前駆物質の量はエマルジョンの分散相の球体の表面積で表して0.05〜4M/m2の範囲にある請求項13〜20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第6工程における水性相のpHは0.1〜2.1である請求項13〜21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1〜12の何れか一項に記載の材料を使用して、粉末又は溶媒中分散体の形態で、少なくとも一種の目的物質を熱刺激により放出する方法。
【請求項24】
前記目的物質の放出は温度が放出温度TD(ここにTD>TM)に上昇する作用で前記シェルが破裂することにより得られるものである請求項23に記載の方法。
【請求項25】
薬剤、化粧品、食品の製造のための成分として請求項1〜12の何れか一項に記載の材料を使用する方法。
【請求項26】
請求項1〜12の何れか一項に記載の材料の少なくとも一種を前記薬剤、化粧品、食品の成分として使用する使用方法。
【図1】
【図2a)】
【図2b)】
【図2c】
【図3】
【図4a)】
【図4b)】
【図4c)】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a)】
【図8b)】
【図8c)】
【図8d)】
【図9a)】
【図9b)】
【図9c)】
【図9d)】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図10(c)】
【図2a)】
【図2b)】
【図2c】
【図3】
【図4a)】
【図4b)】
【図4c)】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a)】
【図8b)】
【図8c)】
【図8d)】
【図9a)】
【図9b)】
【図9c)】
【図9d)】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図10(c)】
【公表番号】特表2013−500844(P2013−500844A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522228(P2012−522228)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051604
【国際公開番号】WO2011/012813
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(506369944)サントル ナスィオナル ド ラ ルシェルシュ スィアンティフィク (45)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051604
【国際公開番号】WO2011/012813
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(506369944)サントル ナスィオナル ド ラ ルシェルシュ スィアンティフィク (45)
【Fターム(参考)】
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