説明

コア処理方法

【課題】 本発明は、コアを収納するコアチューブの取扱を、無酸素状態を中断せず全操作を作業デッキ上で行うコア処理方法の提供を目的する。
【解決手段】 コアチューブを掘削孔に貯水した無酸素水下で仮包装し、切分密封槽201に移動する。切分密封槽201には予め無酸素水を貯水し、切分密封槽201の無酸素水面204下にコア取扱チューブ205を配置する。コアチューブを切分密封槽の無酸素水面下に沈め、コアBをコアチューブからコア取扱チューブ205内に取り出す。さらにコア取扱チューブ205内に不活性ガスを供給して無酸素空間206を形成する。コア取扱チューブ205内で無酸素水面204下から無酸素空間206にコアBを引き上げて、ダイヤモンドブレード212によりコアBを切分けて切分けコアCを生成し不透気性袋214に収容する。不透気性袋214に収容された切分けコアCを三次元加圧保存用セルに収容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地質調査や水文特性調査、環境汚染調査、地化学試験調査、地下微生物調査用に無酸素水を使用して採取した無酸素コアを、加工保存等の処理を行うコア処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力施設の立地・設計における環境安全事前評価用のコアとしては、酸素汚染のないものを採取し、供試体を調製する必要がある。また、一般環境調査においても、地下水汚染の原因とされるクローム、砒素、マンガン等は、酸化によって化合物(イオン)の形・溶解度・地中移行速度等が異なってしまうため、酸素存在下において採取されたコアサンプルでは、高精度な環境調査を行うことができないので、酸素汚染のないものを採取し、供試体を調製する必要がある。さらに地下微生物調査においては、嫌気性・好気性の別を問わず、試料採取に伴う地下環境中の酸素濃度あるいは有機物濃度に対する撹乱を避けなければ、高精度の試料採取・環境調査を行うことができない。
【0003】
このため、試料に対する還元剤の添加や水素添加によって還元的雰囲気を再現しようという努力は、無益であるばかりか、試験・調査に対して有害である。従って、酸素汚染のないものを採取し、さらに空気に触れないよう留意してコアサンプルを所定形状に調製・無酸素状態を維持したまま保管・輸送する必要がある。
【0004】
第1の従来技術として、本出願人は、先ず清水に不活性ガスを吹込んでボーリング用水に使用し掘進を行い、一方ビニルスリーブに収納されているとの理由から不用意にコアチューブを地上大気中で取扱ってコアを取出して、ケース中に収納し、減圧排気後不活性ガスを注入する等を検討したことがある。
【0005】
第2の従来技術として、コアサンプルを低酸素環境下でボーリングにより採取するため、昇温脱気システムや、さらに不活性ガスを吹き込んだ水を掘削水として使用することが考えられてきた。即ち、このシステムは、水を加熱して密封チャンバ内に供給し、密封チャンバの上部に位置する気層から気体を強制脱気することにより、一定の温度で一定量の液体に溶解する気体の量はその気体の圧力(分圧)に比例するというヘンリーの原則を利用して、水に溶存する酸素を気相に追い出して低酸素水を作成し、この低酸素水を錐冠(例えばダイヤモンドビットやメタルクラウン)付きのコアチューブに連結されるロッド内へ圧送してコアサンプル周辺を低酸素環境にするというものである。
【0006】
さらに、第3の従来技術として、本出願人による特許文献1に記載されたように、採取したビニルスリーブ入り無酸素状態のコア(以下「コア」という)収納コアチューブを無酸素水中で取扱う、掘削孔上部に表層水と縁を切るためのケーシングを設け、これを内蔵する形で設けられた無酸素水を湛水した大型水槽中で、コアチューブ及びコアを取扱うという方法がとられていた。
【特許文献1】特開2002−295169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、第1の従来技術では、幾つかの不備があり無酸素コアの取得や取扱に関して現実的ではなかった。即ち、掘削水に関しては、清水に単純に不活性ガスを吹込むだけでは、不活性ガスは水中から直に気泡として逸脱し、不活性ガスを浪費するばかりで、十分に溶存酸素濃度が低下した無酸素水を得ることが出ないので、所期のコアを得ることができない。
【0008】
しかも、採取コアを地上で取扱う操作において、コアを収納・取扱うためのコアチューブとホィスティングスイベルには通気・通水孔がついており、さらにビニルスリーブの両端が開放状態であるので、コアチューブの地上取出し操作にともない、必然的にビニルスリーブ中の掘削水は逸脱し、空気と置換した状態に達し、空気中酸素による酸化の進行、好気性菌の爆発的増殖、嫌気性菌の壊滅等の現象をもたらすという問題があり、品質の良い調査を望むべくも無かった。このような不注意な操作後に、例え空気で満された容器中に収納して脱気しても、容器中の酸素は完全に除去することができず、さらに、コア中の残留応力と含水比低下をもたらし、その結果コアが一旦経験した空気による酸化影響を減圧除去できないという矛盾が生じている。
【0009】
さらに、第2の従来技術に係る方法では、水温をある程度高めに上昇させないと、水中に溶存している酸素を十分に取り除くことができず、しかも100℃においてすら酸素は水に対する溶解度から、常温に比較して1/3量に低減するに留まっている。さらに、これを実現するためには、大量の水を、高めの水温になるように加熱するのに大量のエネルギーを必要とするため、コスト高になってしまう。
【0010】
また、密封チャンバ内から温水を下流側に送水ポンプで送る際に、送水ポンプの上流側で気泡を生じがちであるため、キャビテーションの問題が生じる。従って、これを防止するために送水ポンプを密封チャンバに対して相対的に低い位置に設置しなければならず、そのためにボーリングシステム全体の設備設置にも追加の費用と時間がかかるという問題がある。しかもこの方法では、採取した無酸素状態のコアを収納したコアチューブを空気中で取扱うという点に関しては解決するに至らない。
【0011】
第3の従来技術に係る特許文献1に記載の方法では、ボーリング工事の操業開始に先立ち、本格的土木工事を伴う水槽の半地下式埋設や、この水槽と掘削孔のケーシングの水密一体化を行う必要がある等の作業があり、その後に初めて、掘削コア採取装置を設置する仮設(架台のことで以下デッキという)を組み立てることができるようになる。従って、本格的土木工事を必要とするので、経費的にも、環境負荷としても、工期的にも負担が大きくこの技術の実用化に多くの問題点を残していた。
【0012】
しかもその操作に当たっては、ビニルスリーブ入りの無酸素コアを収納するコアチューブをケーシングから取出して作業台へ移動する場合に、作業者が無酸素水槽中で半身を水に漬かって移動作業を実施し、さらにコアの適切な試料長への切分けと不透気袋への封込操作等を、全てデッキの下の無酸素水中で実施する必要があった。このように試料調製の重要部分が、デッキの下の無酸素水槽中の操作を主体としていたため、厳冬季における作業は困難であった。
【0013】
さらに、微生物試験用試料調製のために、無酸素コアを不活性ガス中で切分ける作業や、引続き不透気性袋に収納する作業を水中ではなく、不活性ガス中で実施することは、事実上不可能であった。
【0014】
以上の通り、既存技術である減酸素コア採取・加工法や、無酸素状態の中断を防止するばかりか、無酸素水中で切分けその他の操作を実施したために微生物試験・研究のようなケースでは、無酸素水に微生物が含まれており、無酸素水中でコアの切分け等を行っていたため、無酸素水に含まれる微生物に基くコアの汚染が避けられないという欠点を克服することが課題であった。
【0015】
そこで本発明は、上記既存技術の無酸素コアを収納するコアチューブの取扱、このコアチューブからの無酸素コアの取出しという全操作を無酸素状態を中断することなく、さらに全操作をデッキ上で実施し、さらに無酸素コアを不活性ガス雰囲気で切分け、不透気性袋中に収納することを可能とするコア処理方法の提供を目的としている。
【0016】
一方必要に応じてこの不透気性袋に封入された無酸素コアを、力学試験や透水試験に供するためには、地下応力を復元する三次元加圧保存用セル中への封入操作についても、平行して可能ならしめることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のコア処理方法は上記課題を解決するものであって、請求項1記載の発明は、無酸素水中で掘削コア採取装置300により採取されたコアを無酸素状態で処理するコア処理方法であって、無酸素水中で前記コアを採取するコア採取工程と、掘削孔に配置されるケーシング604の地表側上部に可撓製パイプ606を取り付ける可撓製パイプ取付工程と、前記可撓製パイプ606に無酸素水供給パイプ608を経由して無酸素水を供給し貯水する可撓製パイプ貯水工程と、前記可撓製パイプの無酸素水面616下で、前記コアを収容しているコアチューブ(以下コアバレルの総称として使用)614を支持具612により支持するコアチューブ支持工程と、前記コア採取工程の無酸素水状態を維持しつつ、前記可撓製パイプ606の無酸素水面616下で、前記コアチューブ614からロッドを切離し、当該コアチューブ614を酸素の混入を防止する可撓製スリーブ622で覆って仮包装する仮包装工程と、仮包装された前記コアチューブを切分密封槽に移送する移送工程370と、前記切分密封槽201に無酸素水を貯水する切分密封槽貯水工程と、前記切分密封槽201の無酸素水面204下に、コア取扱チューブ205を配置するコア取扱チューブ配置工程と、前記切分密封槽201の無酸素水面204下で、前記コアBを前記コアチューブからコア取扱チューブ205内に取り出すコア取出工程と、前記切分密封槽201の無酸素水面204下で、前記コア取扱チューブ205内に不活性ガスを供給して無酸素空間206を形成する空間形成工程と、前記コア取扱チューブ205内で無酸素水面204下から前記無酸素空間206に前記コアBを引き上げて、切分装置210、212により前記コアBを切分けて切分けコアCを生成する切分け工程と、前記無酸素空間206内で、前記切分けコアCを不透気性袋214に収容する切分けコア収容工程と、前記不透気性袋214に収容された前記切分けコアCを三次元加圧保存用セル400に収容する三次元加圧保存用セル収容工程とを備える。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のコア処理方法において、前記仮包装工程では、前記可撓製パイプ606の無酸素水面616下で、前記コアチューブ614からロッドを切離し、前記コアチューブ614を気密型ホイスティングスイベル618に接続し、さらに前記コアチューブ614を酸素の混入を防止する可撓製スリーブ622で覆って仮包装することを特徴とする。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のコア処理方法において、前記切分密封槽201は、前記可撓製パイプ606の周囲に設けられた作業デッキ610上に配置されることを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載のコア処理方法において、前記空間形成工程で供給される不活性ガスは、不活性ガスで懸濁された懸濁気泡水から供給されることを特徴とする。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一項に記載のコア処理方法において、前記不活性ガスは、窒素又はアルゴン、微量水素含有するアルゴンの少なくとも一つであることを特徴とする。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項5記載のコア処理方法において、前記可撓製パイプ貯水工程又は前記切分密封槽貯水工程に、無酸素水又は不活性ガスで懸濁した懸濁気泡水を供給するために、無酸素水又は不活性ガスの懸濁気泡水を選択的に生成する懸濁気泡水及び無酸素水を生成する工程(懸濁気泡水生成装置100)を備える。
【0023】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6の何れか一項に記載のコア処理方法において、前記切分装置は、前記コア処理チューブの外部から駆動されるブレード212であることを特徴とする。
【0024】
請求項8記載の発明は、請求項1乃至7の何れか一項に記載のコア処理方法において、前記コア処理チューブ205は不透気性手袋208を備える。
さらに、請求項9記載の発明は、無酸素水中で掘削コア採取装置300により採取されたコアを無酸素状態で処理するコア処理方法であって、無酸素水中で前記コアを採取するコア採取工程と、前記コア採取工程の無酸素水状態を維持しつつ、地表602の無酸素水面616下で前記コアを収容するコアチューブ614を、酸素の混入を防止するように仮包装する仮包装工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明は、ケーシング内の無酸素水雰囲気を維持しつつ、地表でコアチューブへの酸素の侵入を可撓製スリーブによって防止しつつ切分密封槽への移送を可能にできる。さらに、切分密封槽では、無酸素空間内で、コアチューブからコアを取り出して加工し、三次元加圧保存用セル中に収容することが可能となった。このように、コアがケーシングから切分密封水槽を介して三次元加圧保存用セルに移動する際に、純度の高い不活性ガスを用いることにより無酸素コア周辺の酸素濃度を上昇させずに、しかもコアの加工処理を迅速に実施することも可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明に係るコア処理方法の実施の形態を、以下図1乃至図7を参照して説明する。
〔コア採取及び処理システム〕
図1は本発明のコア処理方法の実施の形態を含むコア採取及び処理システムの全体工程を示す概略図である。図1の全体工程は、大きく分けて、水中酸素濃度が無酸素状態の懸濁気泡水を生成する懸濁気泡水生成装置100と、地層からコアを採取するためのコア採取システムである掘削コア採取装置300と、地表付近に設けられた掘削コア採取装置300から採取されたコアを無酸素水中で密封して仮包装する密封仮包装部600と、密封仮包装部600により密封仮包装されたコアを加工する切分密封部200と、切分密封部200により加工されたコアを無酸素状態で加圧保存する三次元加圧保存用セル400と、三次元加圧保存用セル400を接続しコアを最終加工する手袋付き無酸素コア加工ボックス500とから構成される。
〔懸濁気泡水生成装置〕
本発明に用いる懸濁気泡水生成装置100を、図2を用いて説明する。懸濁気泡水生成装置100は、無酸素水又は不活性ガスで懸濁された水中酸素濃度が無酸素状態の懸濁気泡水を生成して、無酸素水又は懸濁気泡水を選択的に、掘削コア採取装置300、密封仮包装部600、コア取扱装置200に供給する。
【0027】
この懸濁気泡水生成装置100は、原水に不活性ガスを混合して懸濁気泡水を生成する第1気液混合器108と、第1気液混合器108が生成した懸濁気泡水から気体を分離して無酸素水を生成する気液分離器112と、気液分離器112が生成した無酸素水に不活性ガスを混合して懸濁気泡水を生成する第2気液混合器126とを備える。従って、不活性ガスで懸濁された無酸素の懸濁気泡水は第2気液混合器126から接続部Aに供給される。なお、本発明においては、使用される不活性ガスとして、窒素、アルゴン、微量水素含有するアルゴン等の少なくとも何れか一つがそれぞれ不活性ガスボンベ110、128中に保管され、不活性ガスボンベ110から第1気液混合器108に、不活性ガスボンベ128から第2気液混合器126に不活性ガスが供給される。
〔コア採取システム〕
コア採取システムの掘削コア採取装置300は、図3、図4に示す構造を備えている。以下、図3及び図4を用いて掘削コア採取装置300によるコア採取工程を説明する。
【0028】
図3(a)に示すダブルコアチューブ式382の構造を備えた掘削コア採取装置300では、先端に錐冠337たとえばダイヤモンド製のビット又はメタルクラウンを有するアウターチューブ340と、アウターチューブ340の内側下端に設けられたインナーチューブ386と、インナーチューブ386の内側下端に設けられ、その内側にコアを収納することができる内蔵包装部361とを備えている。ダブルコアチューブ式382の場合にはアウターチューブ340が回転部345に接続されている。
【0029】
掘削時には、懸濁気泡水を供給ポンプにより圧力をかけた状態で、泡水供給ノズル355からアウターチューブ340内に供給する。図3(a)中、矢印で示すように、懸濁気泡水はアウターチューブ340の上端に接続された掘削水供給ノズル355からアウターチューブ340内に供給され、インナーチューブ386とアウターチューブ340の内壁との間を通った後、錐冠337を介してアウターチューブ340の外側へ回り込み、アウターチューブ340の外面に沿って上昇し、最終的にスライムと共に地上へ排出される。なお、掘削水供給ノズル355の給水管は、図2の接続部Aに接続され、第2気液混合器126で生成した懸濁気泡水、または、必要に応じて管130を介して気液分離器112で生成した無酸素水が供給される。
【0030】
また掘削コア採取装置300でコアを採取する際、孔壁保護のため、ケーシング380を必要に応じて挿入する。
図4はビット先端部(ボーリング孔底面)に懸濁気泡水を供給している状態を示すビット周辺の拡大図である。内蔵包装部361は、採取されたコアを大気から隔離された状態で包装することができるものであり、内蔵包装部361としては、例えば、ビニルスリーブやアクリル給水管などを用いることができる。
【0031】
一方、図3(b)に示す三重管式を適用した掘削コア採取装置300は、先端に錐冠337を有し回転可能なインナーチューブ(三重管式)339と、該インナーチューブ(三重管式)339の外側に位置し先端に錐冠338を備えるアウターチューブ341と、インナーチューブ(三重管式)339の内側下端に設けられたコアケースチューブ343と、コアケースチューブ343の内側下端に設けられ、その内側にコアを収納することができる内蔵包装部361(図4参照)とを備えている。
【0032】
さらに図3(b)において、インナーチューブ339及びアウターチューブ341には回転部345が接続されており、該回転部345はインナーチューブ339及びアウターチューブ341を回転駆動する。
【0033】
本発明では上述したような懸濁気泡水をインナーチューブ339とコアケースチューブ343との間からビット337に導入するため、懸濁気泡水の潤滑性と自動スライム排除機能によりコアの緩みや締堅めが生じず、良好なコアサンプルを採取することが可能となる。
【0034】
このように、コアは無酸素水または懸濁気泡水を掘削水として用い掘削コア採取装置300により採取される。さらに、掘削されたコアは地下の内蔵包装部361でビニルスリーブに収容され、さらにコアチューブに収容された後、吊上げ機構である気密型ホイスティングスイベルにより地下から地表付近まで吊上げられ、地表付近に設けられた密封仮包装部600に収容される。
【0035】
なお、本発明では、コアチューブと言う場合には、コアバレルの総称として使用、ダブルコアチューブ方式ではダブルコアチューブを指し、三重管方式では三重管式コアチューブを指す。
〔密封仮包装部〕
密封仮包装部600におけるコアチューブの密封仮包装工程を、図5、図6を参照して説明する。図5において、地表602に形成された掘削孔には表層水を遮断するための管状のケーシング604が配置されており、ケーシング604の地表側上部は地表602から突出している。さらにケーシング604の上端部には水密に可撓製パイプ606が取り付けられている。また、ケーシング604の地表側上部には、無酸素水を供給するための供給管608が接続され、供給管608には接続部Aを介して懸濁気泡水生成装置100から無酸素水又は懸濁気泡水が供給される。これによって、ケーシング604及び可撓製パイプ606内部が、供給管608から供給された無酸素水によって湛水される。
【0036】
可撓製パイプ606の上方で、地表602からほぼ150cm程度の高さに作業デッキ610が設置されており、作業デッキ610に形成された開口613下に、可撓製パイプ606の上端部が位置している。可撓製パイプ606の上部は作業デッキ610の下面に固定材611で固定されており、さらに可撓製パイプ606の上端開口縁607には鋼線等の形状保持材が一体化されているため、可撓製パイプ606内に無酸素水が湛水されても、可撓製パイプ606が変形して、無酸素水が流出することはない。
【0037】
さらに、図5に示すように、無酸素水が湛水されたケーシング604内には、地下から吊上げられたコアチューブ614が位置しており、コアチューブ614内にはビニルスリーブで密封仮包装されたコアが収容されている。また、無酸素水面616はコアチューブ614を密封仮包装する作業を行うために、コアチューブ614の上端部を無酸素水面616より下になるように配置している。
【0038】
なお、地下から引き上げられたコアチューブ614からは、予め無酸素水面616下で掘削動力を伝達するロッド388を切り離し、さらにスライム除去用のマッドチューブを使用していた場合にはこの切り離しも行った上で、気密型ホイスティングスイベル618を接続する。
【0039】
このような作業を行って、コアチューブ614の上端部に気密型ホイスティングスイベル618が接続された状態が図5に示されている。ホイスティングスイベル618は吊上げ機構(不図示)に接続されている。気密型ホイスティングスイベル618は気密型であるため、コアチューブ614と気密型ホイスティングスイベル618との接続部分から空気がコアチューブ614内に進入することが防止されている。コアチューブ614は作業デッキ610上でコアチューブ支持具620により把持されて、可撓製パイプ606内でその位置が固定されている。これによって、上記切り離し作業や気密型ホイスティングスイベル618の装着作業が円滑に行われる。
【0040】
さらに、図5に示した状態では、無酸素水面616下のコアチューブ614の上端部には、密閉移動用のビニルスリーブ622が環状に折り畳まれた状態で装着される。その後、無酸素水面616下で、ビニルスリーブ622を上下に広げて筒状にしてコアチューブ614の上部及び気密型ホイスティングスイベル618を覆う。このようにビニルスリーブ622で覆った後、コアチューブ614を無酸素水面616から上に引き上げる。この仮包装状態が図6に示されており、ビニルスリーブ622によって、コアチューブ614の上部が水密・気密状態に仮包装される。この状態で吊上げ機構により気密型ホイスティングスイベル618を結合したコアチューブ614を吊上げるが、この時コアチューブ614を無酸素水中においてビニルスリーブ622で覆いながらコアチューブ614の下部全体を覆い、さらにビニルスリーブ622下端を無酸素水中で閉鎖する。
【0041】
これによって、ビニルスリーブ622の密封仮包装が完了する。このようにコアチューブ614の仮包装を行うことにより、密閉型ホイスティングスイベル618やコアチューブ614のコア収容端といった酸素が進入しやすいコアチューブ614上部から酸素の進入を効果的に防止しつつ、コアチューブ614をコア取扱装置200に移送することが可能となる。なお、密封仮包装部600で仮包装されたコアチューブ614のコア取扱装置200への移送工程370は、図1に示すようにコアチューブ614を作業員が抱えて移送するか、又はコアチューブを所定のクレーン等で吊上げて移送してもよい。
〔コア取扱装置〕
本発明のコア取扱装置200を、図7を参照して説明する。コア取扱装置200は、密封仮包装部600近傍の作業デッキ610上に設置されており、コア切分密閉槽201と、コア切分密閉槽201内に配置されるコア取扱チューブ205とから構成されている。コア切分密閉槽201は上面が外気に開放した箱体であり、適宜その側面にガラスやアクリル板等の覗き窓を形成しても良い。また、コア取扱チューブ205は、両端が開放した円筒であり、透明な可撓性部材で形成することが好ましい。コア取扱チューブ205の長さとしては、特に制限するものではないが、コアチューブの長さが通常1m、2m、3mであるので、それらを取扱うに足る長さを要するので、コア取扱チューブ205の長さは1m乃至4mが好ましい。
【0042】
また、コア取扱チューブ205の直径は、特に制限するものではないが、コアチューブ下端の錐冠たとえばダイヤモンドビット又はメタルクラウンを工具を使用して取り外すために、少なくとも直径1m程度あることが好ましい。なお、コア取扱チューブ205の材質としては、折り畳みが可能で、水中で折り畳んだ状態で内部に巻き込まれている空気の追出操作が容易な円筒状透明ビニルシートが好ましい。
【0043】
コア切分密閉槽201には、給水管202及び排水管216が接続されており、給水管202は接続部Aを介して懸濁気泡水生成装置100から懸濁気泡水又は無酸素水が選択的に供給され、さらに給水管202には電磁弁203が設けられ、懸濁気泡水又は無酸素水の供給が制御される。一方、排水管216はコア切分密閉槽201内部から懸濁気泡水又は無酸素水を排水するものであり、排水管216からの排水は電磁弁217により制御される。なお、図7において、給水管202の右端部は、コア取扱チューブ205の左端開口からその内側に配置され、排水管216の左端部は、コア取扱チューブ205の右端開口からその内側に配置されている。
【0044】
また、コア取扱チューブ205に形成した一対の開口には、一対の不透気性手袋208が気密水密に取り付けられている。コア取扱チューブ205内の作業性を考慮すると、不透気性手袋208はコア取扱チューブ205の上面側に取り付けることが好ましい。
【0045】
さらに、フレキシブルシャフト210がコア取扱チューブ205を貫通するように配置されており、フレキシブルシャフト210とコア取扱チューブ205の貫通孔との間は気密水密に接続されている。また、フレキシブルシャフト210の先端に、回転式のダイヤモンドブレード212(または回転特殊鋼ブレード)が装着されている。さらに、ダイヤモンドブレード212は、コア取扱チューブ205の外部からモーター(図に示されていない)によりフレキシブルシャフト210を介して回転される。なお、コア取扱チューブ205内には、無酸素水面204からコアチューブやコア引き上げて加工するために支持台を配置しても良い。
【0046】
次に、コア取扱装置200における無酸素下でのコア切分・密閉動作を説明する。コア切分密閉槽201内には、予め清水状で懸濁していない無酸素水が懸濁気泡水生成装置100から給水管202を介して供給されており、その水面204はコア切分密閉槽201底部にコアチューブ614を載置した場合に、コアチューブ614が完全に無酸素水中に沈む程度としている。
【0047】
コアチューブ614全体をコア切分密閉槽201の無酸素水の水面204下に潜らせて、コア取扱チューブ205内に収納する。次いで、給水管202から供給される無酸素水を不活性ガスで懸濁した懸濁気泡水に切替えて供給すると、コア取扱チューブ205内に供給された懸濁気泡水から不活性ガスが発生し、不活性ガスがコア取扱チューブ205を膨らませてその内部に不活性ガスが溜められた無酸素空間206を形成する。
【0048】
コア取扱チューブ205内の無酸素雰囲気中、好ましくは無酸素水面204下で、不透気性手袋208を介してコアチューブ614(図7中に図示していない)から、ビニルスリーブ622、錐冠337、気密型ホイスティングスイベル618をそれぞれ取り外し、コアチューブ614内部からコアBを抜き取る。次に、無酸素水からコアBをコア取扱チューブ205の無酸素空間206に引き上げ、ダイヤモンドブレード212により、円柱状のコアBから所定の長さのコアCに切分ける。
【0049】
その後、切分けコアCは、保存中にコアに対する水の供給を絶つために、図示しないシリコンスリーブに収容した後、弾性を有する不透気性袋214に無酸素水とともに収納する。
【0050】
以上説明した通り、密封仮包装部600によって、コアチューブ614中の無酸素コアBを空気に接触させずに、コア取扱装置200まで移動することが可能になった。また、コア取扱装置200によりデッキ610上においてコアチューブ614からコアを無酸素環境中で引抜き、さらに無酸素空間206内で切断加工することが可能になったため、コアBの切分け時に無酸素水に含まれる微生物によって、切分けコアCの切分け面が汚染されることを防止できた。
〔保存輸送及び最終加工〕
前記コア取扱装置200で不透気性袋214に封入された切分けコアCは、応力緩和を避けるために、三次元加圧無酸素水保存用セル収容工程として、図1に示す三次元加圧保存用セル400に速やかに収納される。三次元加圧保存用セル400は、切分けコアCに対して無酸素水と不活性ガス加圧の併用により地下応力を復元しつつ切分けコアCを保存するとともに、切分けコアCの輸送に供される。コアの最終加工工程に際しては、三次元加圧保存用セル400から切分けコアCを取り出すことなく、三次元加圧保存用セル400を無酸素コア加工ボックス500に接続した後、三次元加圧保存用セル400から無酸素コア加工ボックス500内にコアを移動して、切分けコアCを室内試験に供するための最終加工が行われる。
【0051】
以上説明したように本発明は、ケーシング内の無酸素水雰囲気を維持しつつ、作業デッキ上面まで上昇させ、コアチューブ上昇に伴う空気の侵入対策を施し、最終的には、無酸素水中で掘進用回転動力を伝導するロッドの無酸素水中切離し、マッドチューブの無酸素水中切離し、無酸素水中で気密型ホイスティングスイベルのコアチューブ接続、コアチューブの無酸素水中における水密・気密仮包装等を、無酸素雰囲気を維持しつつ、しかも全て作業デッキ上の操作により実施することが可能となった。さらに、無酸素雰囲気中でコアチューブから無酸素コアを取出し、分け、不透気性袋に封入し三次元加圧保管用セルに貯蔵・輸送を可能にし、所定形状に加工するなど、一連の工程を空気中酸素の汚染を受けずに、しかも迅速に実施することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のコア処理方法を含むコア処理加工システムの全体工程を示す概略図である。
【図2】本発明の懸濁気泡水生成装置を示す構成図である。
【図3】本発明の掘削コア採取装置に用いる無酸素水の流通経路に関し、(a)はダブルコアチューブ式の説明図、(b)は三重管式の説明図である。
【図4】本発明の掘削コア採取装置に用いる錐冠周辺の拡大図である。
【図5】本発明の密封仮包装部のビニルスリーブ展開前の状態を示す概念図である。
【図6】本発明の密封仮包装部のビニルスリーブ展開後の状態を示す概念図である。
【図7】本発明のコア取扱装置を示す概念図である。
【符号の説明】
【0053】
A 接続部
B コア
C 切分けコア
100 懸濁気泡水生成装置
300 掘削コア採取装置
400 三次元加圧保存用セル
500 無酸素コア加工ボックス
600 密封仮包装部
604 ケーシング
606 可撓製パイプ
610 作業デッキ
612 コアチューブ支持具
614 コアチューブ(コアバレル)
618 気密型ホイスティングスイベル
622 ビニルスリーブ
200 コア取扱装置
201 コア切分密閉槽
205 コア取扱チューブ
208 不透気性手袋
210 フレキシブルシャフト
212 ダイヤモンドブレード
214 不透気性袋
343 コアケースチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無酸素水中で掘削コア採取装置により採取されたコアを無酸素状態で処理するコア処理方法であって、
無酸素水中で前記コアを採取するコア採取工程と、
掘削孔に配置されるケーシングの地表側上部に可撓製パイプを取り付ける可撓製パイプ取付工程と、
前記可撓製パイプに無酸素水を貯水する可撓製パイプ貯水工程と、
前記可撓製パイプの無酸素水面下で、前記コアを収容しているコアチューブを支持具により支持するコアチューブ支持工程と、
前記コア採取工程の無酸素水状態を維持しつつ、前記可撓製パイプの無酸素水面下で、前記コアチューブからロッドを切離し、当該コアチューブを酸素の混入を防止する可撓製スリーブで覆って仮包装する仮包装工程と、
仮包装された前記コアチューブを切分密封槽に移送する移送工程と、
前記切分密封槽に無酸素水を貯水する切分密封槽貯水工程と、
前記切分密封槽の無酸素水面下に、コア取扱チューブを配置するコア取扱チューブ配置工程と、
前記切分密封槽の無酸素水面下で、前記コアを前記コアチューブからコア取扱チューブ内に取り出すコア取出工程と、
前記切分密封槽の無酸素水面下で、前記コア取扱チューブ内に不活性ガスを供給して無酸素空間を形成する空間形成工程と、
前記コア取扱チューブ内で無酸素水面下から前記無酸素空間に前記コアを引き上げて、切分装置により前記コアを切分けて切分けコアを生成する切分け工程と、
前記無酸素空間内で、前記切分けコアを不透気性袋に収容する切分けコア収容工程と、
前記不透気性袋に収容された前記切分けコアを無酸素三次元加圧保存用セルに収容する三次元加圧保存用セル収容工程とを備えることを特徴とするコア処理方法。
【請求項2】
請求項1記載のコア処理方法において、前記仮包装工程では、前記可撓製パイプの無酸素水面下で、前記コアチューブからロッドを切離し、前記コアチューブを気密型ホイスティングスイベルに接続し、さらに前記コアチューブを酸素の混入を防止する可撓製スリーブで覆って仮包装することを特徴とするコア処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のコア処理方法において、前記コア切分密封槽は、前記可撓製パイプの周囲に設けられた作業デッキ上に配置されることを特徴とするコア処理方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のコア処理方法において、前記空間形成工程で供給される不活性ガスは、不活性ガスで懸濁された懸濁気泡水から供給されることを特徴とするコア処理方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のコア処理方法において、前記不活性ガスは、窒素又はアルゴン、微量水素含有するアルゴンの少なくとも一つであることを特徴とするコア処理方法。
【請求項6】
請求項5記載のコア処理方法において、前記可撓製パイプ貯水工程又は前記切分密封槽貯水工程に、無酸素水又は不活性ガスで懸濁した懸濁気泡水を供給するために、無酸素水又は不活性ガスの懸濁気泡水を選択的に生成する懸濁気泡水及び無酸素水生成工程を備えることを特徴とするコア処理方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のコア処理方法において、前記切分装置は、前記コア処理チューブの外部から駆動されるブレードであることを特徴とするコア処理方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のコア処理方法において、前記コア処理チューブは不透気性手袋を備えることを特徴とするコア処理方法。
【請求項9】
無酸素水中で掘削コア採取装置により採取されたコアを無酸素状態で処理するコア処理方法であって、
無酸素水中で前記コアを採取するコア採取工程と、
前記コア採取工程の無酸素水状態を維持しつつ、地表の無酸素水面下で前記コアを収容するコアチューブを、酸素の混入を防止するように仮包装する仮包装工程とを備えることを特徴とするコア処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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