説明

コア層と1又は複数のバリヤー層を含む徐放性経口投与用配合剤

1日に一回処置するための配合剤であって、1種又は複数種の活性成分を含有する徐放性経口投与用配合剤、及び該配合剤の製造方法が提供される。該配合剤は、コア層又は中心層及び1又は複数のバリヤー層を含む三層錠剤の形態にすることができる。コア層は、活性剤の放出を調整する腸溶性物質又はポリマー物質を含有していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、米国仮出願第60/824043号(出願日:2006年8月30日)及び同第60/824054号(出願日:2006年8月30日)に基づく優先権を主張する。
この発明は、一般的には、薬学的な活性剤(active agent )を含有する配合剤を制御又は調整された状態で放出させる分野に属する。
【背景技術】
【0002】
徐放性配合剤(controlled release formulation)は、投与後の薬剤が予め決められた速度及び/又は予め決められた時間で放出されることによって、所望の薬理学的活性が所望の時間にわたって維持されるようにする薬学的組成物である。この種の製剤は、薬剤を予め決められた時間にわたって体内へ供給するか、又は予め決められた吸収部位へ供給することによって、治療範囲内における薬剤濃度を、常套の配合剤(例えば、即時放出性配合剤)の場合よりも長い時間にわたって維持する。
【0003】
放出制御性材料中に分散された薬剤を保有するコア(core)を含有する剤型の調製法は、徐放出配合剤の調製手段としては一般的手段である。この目的のために最も一般的に使用されている材料は親水性材料、例えば、生理学的媒体と接触したときに膨潤してゲル化する親水性ポリマーである。このような投与形態の製剤が生理学的媒体に曝されると、該製剤の外部層が水和を開始してゲルマトリックスを形成する。生理学的媒体の該形態内への浸透が持続して行われると、ゲルマトリックスの厚さは増加する。薬剤の放出は、マトリックスを通る拡散及び/又はマトリックスの侵食によって行われる。親水性材料の種類、及び組成物の投与形態の寸法と幾何学的形態を適宜選択することによって、多様な所望の放出態様を実現することができる。しかしながら、時間が経過すると、ゲルマトリックスの厚さの増加に伴い、剤型内部の薬剤濃度が減少すると共に、剤型の表面積が減少し、その結果、薬剤の放出速度が低下する。
【0004】
多くの活性剤においては、吸収速度又は吸収度は、該活性剤が胃腸管を通過するに伴って、一次的には変化しない。多くの活性剤は、所謂「吸収窓(absorption window)」を有する。吸収窓は、胃腸管の他の領域に比べて、薬剤がより効率的に又はより高速度で吸収される胃腸管の領域を示すために用いられる用語である。一部の活性剤は、胃腸管の特定の領域においては、他の領域に比べて、崩壊されるか又は代謝される傾向が強い。このような場合、徐放性剤型が所定の活性剤に対して特定の吸収窓へ薬剤をほとんど専用的に供給するか、又は活性剤の崩壊又は代謝が速くおこなわれる胃腸管領域における放出の回避又は放出速度の低下が優先的に行われるならば、有利である。さらに、吸収窓への活性剤の供給能は、薬剤成分の効能の増大及び/又は不利な副作用の低減若しくは除去をもたらす。
【0005】
徐放性剤型であって、投与されると、活性剤を最初は低速度で放出するが、経時的に放出速度を増大させることによって、該剤型から薬剤を主として胃腸管の下部領域へ放出させる該剤型が要請されている。特に、pHが約5.5よりも低い条件下では低い薬剤放出速度を示すが、pHがより高い条件下では高い薬剤放出速度を示す剤型が要請されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、吸収窓へ到達するまでは、1種又は複数種の活性剤の放出を遅延させる徐放性配合剤、該配合剤の製造法、及び該配合剤の使用法を提供することである。
【0007】
また、本発明が解決しようとする課題は、徐放性剤型であって、投与されると、活性剤を最初は低速度で放出するが、経時的に放出速度を増大させることによって、該剤型から薬剤を主として胃腸管の下部領域へ放出させる該剤型が要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願明細書においては、活性剤を送給する徐放性配合剤、該配合剤の製造法及び該配合剤の使用法が記載される。1つの実施態様においては、該配合剤は、活性剤、腸溶性物質及び所望による親水性物質を含有するコア層、及び所望による1又は複数のバリヤー層を保有する。該配合剤はいずれかの固体状の剤型、例えば、錠剤又は小キャップ(caplet)等として投与することができる。1つの実施態様においては、徐放性配合剤は、ジヒドロピリジンカルシウムチャンネル遮断薬(例えば、ニソルジピン)及び腸溶性物質を含有するコア層、及び1種又は複数種の侵食性、膨潤性及び/又はゲル化性ポリマー物質を含有する中心層の上部又は下部に配置される少なくとも1つのバリヤー層を具有する錠剤である。
【0009】
コア層中の腸溶性物質の濃度は、当該配合剤の重量に基づいて、約0.1〜約20重量%、好ましくは約1〜15重量%、より好ましくは約5〜10重量%である。バリヤー層中の1種又は複数種のポリマーの濃度は、バリヤー層の重量に基づいて、約5〜約90重量%、好ましくは約50〜約90重量%である。好ましい実施態様においては、錠剤は1つのコア層と該コア層の上部と下部に配置された2つのバリヤー層を具有する三層錠である。これらのバリヤー層は、組成と厚さの点で同一又は異なっていてもよい。コア層及び/又はバリヤー層は、薬学的に許容される1種又は複数種の添加剤、賦形剤又はキャリヤーを含有していてもよい。
【0010】
コア層は、活性剤の放出速度を調整する(即ち、遅延及び/又は促進させる)1種又は複数種のポリマー物質を含有していてもよい。ポリマー物質の濃度は約1〜約95重量%である。中心層及び/又はバリヤー層は、ポリマー物質と協働して活性物質の放出をさらに調整する1種又は複数種の補助薬を含有していてもよい。補助剤の濃度は、当該配合剤の重量に基づいて約1〜約25重量%、好ましくは約5重量%〜約15重量%である。
【0011】
配合剤は、1種又は複数種の調整された放出能を有する被覆剤によって被覆されていてもよく、これによって、コア層からの活性成分の放出はさらに調整される。適当な被覆剤には、即時放出性被覆剤、味覚隠蔽性被覆剤、腸溶性被覆剤、持続放出性又は延長放出性被覆剤、及び遅延放出性被覆剤が包含される。美的観点から、例えば、剤型を着色してもよく、又は、剤型を表面仕上げ処理に付してもよい。
剤型は、患者へ投与されると、胃腸路を下降するときのpHの変化に応答して、活性成分を上昇性の放出速度で放出させる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
I.定義
本明細書において使用する「腸溶性物質」という用語は、一般的には腸溶性被覆剤において用いられる物質を意味する。腸溶性物質は、胃内の酸性pHの条件下においては実際上溶解しないが、腸管路内のより高いpH条件下においては高い溶解性を示す。
【0013】
本明細書において使用する「味覚隠蔽性被覆剤」という用語は、pHに左右される被覆剤であって、口の中では不溶であるが、胃の中の酸性pHの環境下では溶解する被覆剤を意味する。
【0014】
本明細書において使用する「延長放出性被覆剤」という用語は、pHに左右されない被覆剤であって、バリヤーとして作用することによって、コア複合体から胃腸液中への薬剤の拡散を抑制する被覆剤を意味する。
【0015】
本明細書において使用する「遅延放出性被覆剤」という用語は、pHに左右される被覆剤であって、胃内の酸性pHの環境下及び小腸の上部から中部におけるpHの環境下においては不溶であるが、小腸の下部又は大腸の上部においては溶解する被覆剤を意味する。
【0016】
本明細書において使用する「Cmax」という符号は、血漿中における最大濃度を示す。特に言及しない限り、「Cmax」は、血漿中におけるカルシウムチャンネル遮断薬の最大濃度を示す。
【0017】
本明細書において使用する「Tmax」という符号は、血漿中における最大濃度に達するまでの時間を示す。特に言及しない限り、「Tmax」は、血漿中におけるカルシウムチャンネル遮断薬が最大濃度に達するまでの時間を示す。
【0018】
本明細書において使用する「λ」という符号は、排泄速度定数(elimination rate constant)を示し、また、本明細書において使用する「T1/2」という符号は、末期の半減期を示す。
【0019】
本明細書において使用する「AUClast」という符号は、時間0から定量可能な最後の濃度に達するまでの時間にわたる濃度−時間曲線の下部の面積を示す。また、本明細書において使用する「AUCinf」という符号は、時間0から無限大へ外挿したときの血漿濃度−時間曲線の下部の面積を示す。
【0020】
本明細書において使用する「生体内利用率(bioavailability)」という用語は、薬剤製品から吸収される活性成分又は活性剤の摂取速度と摂取量を示す。また、本明細書において使用する「生体内利用率等価性(bioequivalence)」という用語は、2種又はそれよりも多くの薬剤製品又は配合剤からの同じ薬剤成分の等価な放出を示し、これによって、これらの配合剤からの等価な吸収速度と吸収の程度がもたらされる。
【0021】
本明細書において使用する化合物の「類似体」という用語は、構造が異なる類似化合物を意味するが、必ずしも異性体である必要はない(例えば、5−フルオロウラシルはチミンの類似体である)。
【0022】
本明細書において使用する化合物の「誘導体」という用語は、類似の構造を有する別の化合物から1段階又は複数段階で調製してもよい化合物を意味する。誘導体には、一般的には、親化合物における1又は複数の官能基の付加及び/又は変性によって誘導される化合物が含まれる。
【0023】
本明細書において使用する「徐放性成分(controlled release element)」という用語な、配合剤からの活性剤放出を調整する物質を示す。徐放性素成分は、コア層及び/又はバリヤー層へ含有させてもよい。徐放性物質は、有機又は無機の天然物又は合成物であってもよく、この種の物質には、特に限定的ではないが、ポリマー物質、トリグリセリド、トリグリセリドの誘導体、脂肪酸、脂肪酸塩、タルク、小さな有機分子、該有機分子の塩、ホウ酸及びコロイドシリカ等が含まれる。
【0024】
本明細書において使用する「コート−コア(coat-core)ニソルジピン40mg錠剤」という用語は、「スラー(登録商標)」として市販されている薬剤の改良品に関する薬物動態と投与量を比較するための錠剤を示すもので、該錠剤は、そのコア中に8mgのニソルジピンを含有し、そのコート中に32mgのニソルジピンを含有する。
【0025】
II. 組成
A.コア
i)活性剤
コア又は中心層は、特に限定的ではないが、下記の群から選択される1種又は複数種の活性剤を含有する:
睡眠薬、鎮静薬、精神安定薬、鎮痙薬、筋弛緩薬、鎮痛薬、抗炎症薬、麻酔薬、抗痙攣薬、抗潰瘍薬、駆虫薬、抗菌薬、抗真菌薬、心臓血管薬、利尿薬、細胞増殖抑制剤、抗腫瘍薬、抗ウイルス薬、抗緑内障薬、抗鬱薬、交感神経刺激薬、血糖低下薬、診断薬、抗咳薬、医学的精神賦活薬、抗パーキンソン病薬、局所麻酔薬、筋収縮薬、抗マラリア薬、ホルモン薬、避妊薬、食欲抑制薬、抗関節炎薬、抗糖尿病薬、抗高血圧薬、解熱薬、抗コリン作用薬、気管支拡張薬、中枢神経系薬、陽性変力薬、血管拡張薬、血管収縮薬、充血除去薬、造血薬、電解質補充剤、殺菌薬、副交感神経遮断薬、副交感神経興奮薬、制吐薬、精神刺激薬、ビタミン、ベータ遮断薬、H-2遮断薬、ベータ−2作動薬、反対刺激薬、凝固調節薬、興奮薬、抗ホルモン、薬物−拮抗薬、脂質−調節薬、尿酸排泄薬、強心薬グリコシド、バッカク及びその誘導体、去痰薬、筋弛緩薬、抗ヒスタミン薬、下剤、造影剤、放射性医薬、撮像剤、抗アレルギー剤、及びこれらの混合物。
【0026】
適当な活性剤としては、特に限定的ではないが、下記の活性剤が例示される:
コデイン、エチルモルフィン、デキストロメトルファン、ノスカピン、ペントキシヴェリン、アセチルシステイン、ブロムヘキシン、エピネフリン、イソプレナリン、オルシプレナリン、エフェドリン、フェノテロール、リミテロール、イプラトロピウム、コリネテオフィリネート、プロキシフィリン、ベクロメタソン、ブデソニド、デスラノシド、ジゴキシン、ジギトキシン、ジソピラミド、プロシラリジン、キニジン、プロカイナミド、メキシレチン、フレカイニド、アルプレノロール、プロプロアノロール、ナドロール、ピンドロール、オクスプレノロール、ラベタロール、チモロール、アテノロール、ペンタエリトリチルテトラニトレート、イソソルビドジニトレート、イソソルビドモノニトレート、ニフェジピン、フェニルアミン、ヴェラパミル、サイクランデラル、ニコチニルアルコール;
【0027】
イノシトールニコチネート、アルプロスタットジル、エチレフリン、プレナルテロール、ドプタミン、ドーパミン、ジヒドロエルゴタミン、グアネチジン、ベタニジン、メチルドーパ、レセルピン、グアンファシン、トリメタファン、ヒドララジン、ジヒドララジン、プラゾシン、ジアゾキシド、カプトプリル、ニフェジピン、ニソルジピン、エナラプリル、ニトロプルシド、ベンドロフルメチアジエド、ヒドロクロルチアジド、メチクロチアジド、ポリチアジド、クロルタリドン、シネタゾン、クロパミド、メフルシド、メトラゾン、ブメタニド、エタクリルナシド、スピロノラクトン、アミロリド、クロフィブレート、ニコチン酸、ニケリトロール、ブロムフェニラミン、シンナリジン、デキスクロルフェニラミン、クレマスチン、アンタゾリン、シプロヘプタジン、プロメタジン、シメチジン、ラニチジン、スクラルフェート、パパヴェリン、モキサヴェリン、アトロピン、ブチルスコポラミン、エメプロン、グルコピロン、ヒオスチアミン、メペンソラール、メチルスコポラミン、オキシフェンサイクリミン、プロバンテリン、テロジリン、センナグリコシド;
【0028】
サグラダエキストラクト、ダントロン、ビサコジル、ナトリウムピコスルフェート、エチュロス、ジフェノールキシレート、ロペラミド、サラゾスルファピリジン、ピルヴィン、メベンダゾール、ジメチコン、フェロフマレート、フェロサクシネート、フェリテトラセミナトリウム、シアノコバラミン、葉酸ヘパリン、ヘパリン補因子、ジクルマロール、ワルファリン、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、因子VIII、因子IX 、ビタミンK、チオテパ、ブスルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、カルムスチン、メルカプトプリン、チオグアニン、アザチオプリン、シタラビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、プロカルバジン、ダカルバジン、ロムスチン、エストラムスチン、テニポシド、エトポシド、シスプラチン、アムサクリン、アミノグルテチミド、ホスフェストロール、メドロキシプログレステロン、ヒドロキシプログレステロン、メゲステロール、ノレチステロン、タモキシフェン、シクロスポリン、スルフィソミジン、ベンシルペニシリン、フェノキシメチルペニシリン、ジクロキサシリン、クロキサシリン、フルクロキサシリン、アンピシリン、アモキシリン、ピバムピシリン、バカムピシリン、ピペラシリン、メズロシリン、メシリナム、ピブメシリナム、セファロチン、セファレキシン、セフラジン、セファドロキシル、セファクロル、セフロキシム、セフォタキシム、セフタジジム、セフォキシチン、アズトレオナム、イミペネム、シラスタチン;
【0029】
テトラサイクリン、リメサイクリン、デメクロサイクリン、メタサイクリン、オキシテトラサイクリン、ドキシサイクリン、クロルアンフェニコール、スピラマイシン、フシジン酸、リンコマイシン、クリンダマイシン、スペクチノマイシン、リファムピシン、アンフォテリシンB、グリセオフルビン、ニスタチン、バンコマイシン、メトロニダゾール、チニダゾール、トリメトプリム、ノルフロキサシン、サラゾスルファピリジン、アミノサリル、イソニアジド、エタンブトール、ニトロフラントイン、ナリジクス酸、メテナミン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、チニダゾール、ケトコナゾール、アシクロビル、インターフェロン、イドクスウリジン、レチノール、チアミン、デキスパンテノール、ピリドキシン、葉酸、アスコルビン酸、トコフェロール、フィトミナジオン、フェンフルナミン、コルチコトロピン、テトラコサクチド、チロトロピン、ソマトトロピン;
【0030】
ソマトレム、バソプレシン、リプレシン、デスモプレシン、オキシトシン、クロリオンゴナドトロピン、コルチソン、ヒドロコルチソン、フルドロコルチソン、プレドニソン、プレドニソロン、フルオキシメステロン、メステロロン、ナンドロロン、スタノゾロール、オキシメトロン、シプロテロン、レボチロキシン、リオチロニン、プロピルチオウラシル、カルビマゾール、チアマゾール、ジヒドロタキステロール、アルファカルシドール、カルシチロール、インスリン、トルブタミド、クロルプロパミド、トラズアミド、グリピジド、グリベンクラミド、フェノバルビタル、メチプリロン、ピリチルジオン、メプロバメート、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、ニトラゼパム、オキサゼパム、ジカリウムクロルアゼペート、ロラゼパム、フルニトラゼパム、アルプラゾラム、ミダゾラム、ヒドロキシジン、クロメチアゾール、プロピオンマジン、アリメマジン、クロルプロマジン、レボメプロマジン、アセトフェナジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペナジン、トリフルオペナジン、ジキシラジン、チオリダジン、ペリシアジン;
【0031】
クロプロチキセン、ズクロペンチゾール、フルペンチゾール、チチキセン、ハロペリドール、トリミプラミン、オピプラモール、クロミプラミン、デシプラミン、ロフェプラミン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、マプトロチリン、コフェイン、シンナリジン、サイクリジン、ジメンヒジネート、メクロジン、プロメタジン、チエチルペラジン、メトクロプラミド、スコポラミン、フェノバルビタール、フェニトイン、エトスキシミド、プリミドン、カルバマゼピン、クロナゼパム、オルフェナドリン、アトロピン、ベンサトロピン、ビペリデン、メチキセン、プロシリジン、レボドーパ、ブロモクリプチン、アマンタジン、アンベノン、ピリドスチグミン、シンスチグミン、ジスルフィラム、モルフィン、コデイン、ペンタゾシン、ブプレノルフィン、ペチジン、フェノペリジンフェンタニル、メタドン、ピリトラミド、デキストロプロポキシフェン、ケトベミドン、アセチルサリチル酸、フェナゾン、フェニルブタゾン、アザプロパゾン;
【0032】
ピロキシカム、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、シプロヘプタジン、ピジチフェン、フルメドロキソン、アロプリノール、プロベネシド、ナトリウムマウロチオマレート、アウロノフィン、ペニシルアミン、エストロジオール、エストロジオールバレリアネート、エストリオール、エチニルエストラジオール、ジヒドロゲステロン、リネストレノール、メドロキシプログレステロン、ノレチステロン、シクロフェニル、クロミフェン、レボノルゲストレル、メストラノール、オルニダゾール、チニダゾール、エコナゾール、クロトリマゾール、ナタマイシン、ミコナゾール、スルベンチン、メチルエルゴタミン、ジノプロスト、ジノプロストン、ジェメプロスト、ブロモクリプチン、フェニルプロパノールアミン、ナトリウムクロモグリケート、アゼタゾールアミド、ジクロフェナミド、ベータカロテン、ナロキソン、カルシウムフォリネート、特にクロニジン、テオフィリン、ジピラダモール、ヒドロクロルチアジド、スコポルアミン、インドメタシン、フロセミド、塩化カリウム、モルフィン、イブプロフェン、サルブタモール、テルブタリン;
及びこれらの混紡物。
【0033】
活性剤はキラル又はアキラルであってもよい。キラル分子は単一のエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、又はラセミ混合物として存在していてもよい。本明細書において使用する「立体異性体」という用語は、同じ結合次数を有する同じ原子から構成される化合物であって、相互に交換できない原子の異なる三次元的配置を有する化合物を意味する。三次元的な構造は立体配置(configuration)と呼ばれる。本明細書において使用する「エナンチオマー」という用語は、相互に重ね合わすことができない鏡像関係示す2種の立体異性体を意味する。本明細書において使用する「光学異性体」という用語は、「エナンチオマー」という用語と等価である。
【0034】
本明細書において使用する「ジアステレオマー」という用語は、鏡像の関係になく、重ね合わすことができない2つの立体異性体を意味する。「ラセミ化合物」、「ラセミ混合物」、「ラセミ体」という用語は、等量部のエナンチオマーの混合物を意味する。「キラル中心」という用語は、4つの異なる基が結合した炭素原子を意味する。一対のエナンチオマーを分離するために必要な適当なキラル用のカラム、溶離液及び条件の選択は、標準的な技法を使用する当業者にとっては周知の技術的事項である。この点に関しては、例えば、次の文献を参照されたい:J.ジャッケスら、「エナンチオマー、ラセミ化合物及び分割」、ジョン・ウィレイ・アンド・サンズ社発行、1981年。
【0035】
本明細書において使用する「薬学的に許容される塩」という用語は、前述の化合物の誘導体であって、親化合物の酸付加塩又は塩基付加塩を形成させることによって親化合物を変性させた誘導体を意味する。薬学的に許容される塩には、特に限定的ではないが、アミンのような塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩、及びカルボン酸のような酸性残基のアルカリ塩又は有機塩等が包含される。薬学的に許容される塩には、例えば、非毒性の無機酸又は有機酸から形成される親化合物の常套の非毒性塩又は第四アンモニウム塩が包含される。この種の常套の非毒性塩には、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、及び硝酸等)から誘導される塩、及び有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸(pamoic acid)、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸及びイセチオン酸等)から誘導される塩が包含される。
【0036】
前記化合物の薬学的に許容される塩は、塩基性部分又は酸性部分を有する親化合物から常套の化学的方法によって合成することができる。一般的には、この種の塩は、これらの化合物の遊離の酸性形態又は塩基性形態の化合物を化学量論量の適当な塩基又は酸と水中、有機溶剤中又はこれらの混合物中で反応させることによって調製することができる。この場合、反応媒体としては、一般的には非水性媒体、例えば、ジエチルエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリル等が好ましい。適当な塩のリストは下記の文献に記載されている:
1)「レミングトン製薬化学」第20版、リッピンコット・ウイリアムズ&ウィルキンス、バルチモア、MD、2000年、第704頁、及び
2)「製薬用塩類のハンドブック;特性、選択及び用法」、P.ハインリッヒ・スタール及びカミルG.ウェルムス編、ウィレイ−VCH、ヴァインハイム、2002年。
【0037】
本明細書において一般的に使用される「薬学的に許容される」という用語は、化合物、材料、組成物及び/又は剤型であって、健全な医療的判断の範囲内において、過度の毒性、刺激、アレルギー性反応、又は合理的な便益/危険比に対応するその他の問題又は併発症を伴うことなくヒト又はその他の動物の組織と接触した状態で使用するために適した該化合物や材料等に関連して使用される。
【0038】
剤型中における活性剤の使用量は、使用されるべき活性成分、及び処置されるべき条件の特質と厳格性によって左右される。活性剤の濃度は、一般的には、錠剤の重量に基づいて約0.1〜約90重量%、好ましくは約0.5〜約20重量%、より好ましくは約1〜約10重量%である。あるいは、活性剤の濃度は、一般的には、コアの重量に基づいて約0.1〜約90重量%、好ましくは約0.5〜約20重量%、より好ましくは約1〜約10重量%である。
【0039】
好ましい実施態様においては、活性剤はジヒドロピリジンカルシウムチャンネル遮断薬、例えば、ニソルジピン又はその誘導体、類似体又は多形体(polymorph)等である。ニソルジピンは黄色の結晶性物質であって、水には実際上は不溶であるが、エタノールには溶解する。ニソルジピンの誘導体、例えば、m−ニソルジピン等は、次の文献に記載されている:
ワンら、J.Chrom. B 、第835巻、第71頁〜第76頁(2006年)。
【0040】
B.徐放性成分
1.腸溶性物質
コア又は中心層は腸溶性物質を含有しており、該腸溶性物質は、配合剤が吸収窓へ達するまでは1種又は複数種の活性剤の放出を遅延させる。適当な腸溶性物質としては、特に限定的ではないが、下記のものが例示される:
1)セルロースポリマー、例えば、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート;
2)ポリビニルアセテートフタレート、アクリル酸のポリマー及びコポリマー、及び「ユードラジット(Eudragit)」(登録商標)の商品名で市販されているメタクリル樹脂(ローム・ファーマ社製)、例えば、ポリ(エチルアクリレート−メチルメタクリレート−トリエチルアンモニオエチル−メタクリレートクロリド)(ユードラジットRS及びユードラジットRL)及びポリ(エチルアクリレート−メチルメタクリレート)(ユードラジットNE);
3)アルギネート、アルカリ−溶解性アクリル樹脂、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリレート−メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセテートフタレート、スチロール−マレイン酸コポリマー等;
4)これらの混合物。
【0041】
1つの実施態様においては、腸溶性物質はセルロースアセテートフタレートである。腸溶性物質の濃度は、組成物の重量に基づいて約0.1〜約20重量%、好ましくは約1〜15重量%、より好ましくは約5〜10重量%である。
【0042】
2.親水性物質
コアは、活性剤の放出を調整する(即ち、遅延及び/又は促進する)1種又は複数種の親水性物質を含有していてもよい。親水性物質は、当該分野においてマトリックス形成性の放出調整剤として剤型に使用されている既知のいずれの物質であってもよい。この種の物質としては、特に限定的ではないが、下記の物質が例示される:
メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、メタクリル酸カリウム−ジビニルベンゼンコポリマー、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、アルブミン、ゼラチン、架橋ポリビニルピロリドン、可溶性デンプン及びその誘導体、ポリエステル、酸無水物ポリマー、ポリメチルビニルエーテル/酸無水物コポリマー、グルカン、スクレログルカン、マンナン、β−シクロデキストリン、及び線状及び/又は分枝状ポリマー鎖を有するシクロデキストリン誘導体、並びにこれらの混合物。
【0043】
上記の種々のタイプの物質は市販されており、この種の物質は化学物理的特性(例えば、溶解性及びゲル形成性等)の相違によって特徴付けることができる。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの侵食性、ゲル化性及び膨潤性はポリマーの分子量と置換度に基づいて変化させることができる。従って、当業者であれば、活性剤の所望の放出挙動(release profile)に基づいて、分子構造は同一であるが分子量及び/又は粘度が異なるポリマーから所望のポリマーを適宜選択することができる。
【0044】
1つの実施態様においては、コアは、カラーコン社(ウェストポイント、PA)製の市販品である「メトセル(Methocel)(登録商標)K4M」を含有する。該市販品は、次の特性を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースである:メトキシ含有量19〜24%、ヒドロキシプロポキシル含有量7〜12%、見掛け粘度2308〜3755mPa(2%水溶液について回転式粘度計を用いて測定した値)。
【0045】
別の実施態様においては、コアは、カラーコン社(ウェストポイント、PA)製の市販品である「メトセルK100LV」を含有する。該市販品は、次の特性を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースである:メトキシ含有量19〜24%、ヒドロキシプロポキシル含有量7〜12%、見掛け粘度78〜117mPa(2%水溶液について回転式粘度計を用いて測定した値)。
【0046】
親水性物質の濃度は、当該組成物の重量に基づいて約1〜約90重量%、好ましくは約10〜約50重量%、より好ましくは約10〜45重量%である。
【0047】
活性剤、腸溶性物質及び親水性物質を含有するコアは、生理的媒体と接触すると、ゲルマトリックスを形成する。ゲルマトリックスは、薬剤の放出期間中を通して、構造的完全性を維持するために十分な強度を有していなければならない。pHの値が低い胃内においては、腸溶性物質は溶解しない。しかしながら、当該剤型が胃腸路をさらに下るにつれて、腸溶性物質の溶解性が次第に高くなり、これによって、マトリックス中には次第に多くの孔と溝が形成され、薬剤はこれらの孔と溝を通して高い拡散速度で拡散する。腸溶性物質は水性媒体中においては膨潤化及び/又はゲル化しないので、ゲルマトリックスの機械的強度には寄与しない。
【0048】
放出速度に対する腸溶性物質の所望の効果が、ゲルマトリックスの構造的完全性の時期尚早の破壊という意図しない効果によって相殺されないことが重要である。所望の放出速度が再現性よく得られることを保証するためには、腸溶性物質の使用量を、親水性物質の使用量に比べて、少なくする態様が好ましい。最も好ましい実施態様においては、腸溶性物質に対する親水性物質の量比は約1.5:1〜約10:1、特に約1.9:1〜約5:1にする。
【0049】
C.バリヤー層
バリヤー層は、コア又は中心層に含まれる活性剤の放出を、予め設定された時間にわたって阻害する作用をする。錠剤は1個又は複数個のバリヤー層を具有する。2個のバリヤー層が存在する場合、両方のバリヤー層は同一の組成若しくは異なる組成及び/又は同一の厚さ若しくは異なる厚さを有していてもよい。
【0050】
1つの実施態様においては、バリヤー層は1種又は複数種の膨潤性、侵食性及び/又はゲル化性のポリマーを含有する。好ましい実施態様においては、膨潤性、侵食性及び/又はゲル化性のポリマーはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの重量平均分子量は約1000〜約4000000、より好ましくは約2000〜約2000000である。
【0051】
1つの実施態様においては、バリヤー層は、カラーコン社(ウェストポイント、PA)製の市販品である「メトセルE5」を含有する。該市販品は、次の特性を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースである:メトキシ含有量28〜30%、ヒドロキシプロポキシル含有量7〜12%、見掛け粘度4.2〜6.1mPa(回転式粘度計を用いて測定した値)。
【0052】
別の実施態様においては、バリヤー層は、カラーコン社(ウェストポイント、PA)製の市販品である「メトセルE50」を含有する。該市販品は、次の特性を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースである:メトキシ含有量28〜30%、ヒドロキシプロポキシル含有量7〜12%、見掛粘度39〜59mPa(回転式粘度計を用いて測定した値)。
【0053】
好ましい実施態様においては、第1のバリヤー層は「メトセルE5」を含有し、第2のバリヤー層は「メトセルE50」を含有する。
【0054】
上記以外の適当なポリマーとしては、特に限定的ではないが、下記のポリマーが例示される:
カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、グルカン、スクレログルカン、マンナン、キサンタン、アルギニン酸とその誘導体、酸無水物ポリマー、ポリアミノ酸、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー、カルボキシメチルセルロースとその誘導体、エチルセルロース、メチルセルロース、及びその他のセルロース系ポリマー。
【0055】
この種のポリマーの含有量は、バリヤー層の重量に基づいて約5〜約90重量%、好ましくは約25〜約75重量%である。
【0056】
D.その他の放出調整剤
コア層及び/又はバリヤー層は、活性剤の所望の放出挙動に基づいて、上記のポリマー物質と協働して活性剤の放出をさらに調整する1種又は複数種の補助剤を含有していてもよい。適当な補助剤としては、特に限定的ではないが、次のものが例示される:
グリセリルモノステアレート、トリグリセリド誘導体、半合成グリセリド、水素化ヒマシ油、グリセリルパルミトステアレート、セチルアルコール、ポリビニルピロリドン、グリセロール、エチルセルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、当業者には周知のその他の天然物又は合成物、及びこれらの混合物。その他の適当な補助剤には、特に限定的ではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、安息香酸ナトリウム、ホウ酸、ポリオキシエチレングリコール、及びコロイドシリカ等が包含される。
【0057】
補助剤の濃度は、当該組成物の重量に基づいて、約1〜約25重量、好ましくは約5〜約15重量%である。
【0058】
E.添加剤、賦形剤及びキャリヤー
配合剤は、安全で有効であると考えられる物質であって、望ましくない生物学的副作用又は望ましくない相互作用をもたらすことなく患者へ投与できる物質から構成される薬学的に許容されるキャリヤーを使用することによって調製してもよい。キャリヤーは、薬学的配合剤中に包含される活性剤以外の全ての成分である。本発明において一般的に使用される「キャリヤー」としては、特に限定的ではないが、次のものが例示される:
可塑剤、希釈剤、結合剤、潤滑剤、界面活性剤、pH調整剤、付着防止剤、崩壊剤、充填剤、顔料、着色剤、安定剤、調味剤、滑剤(glidant)及びこれら混合物。
【0059】
可塑剤としては、特に限定的ではないが、次のものが例示される:
水素化ヒマシ油、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、脂肪酸、グリセリドとトリグリセリド及びこれらの誘導体、並びにポリオキシエチレングリコール及びその誘導体。
【0060】
希釈剤(充填剤とも呼ばれる)は、固体状剤型のバルクを増大させることによって、錠剤の圧縮成形又はビーズや顆粒の成形のために実用的なサイズの剤型が得られるようにするために必要である。適当な希釈剤としては、特に限定的ではないが、下記のものが例示される:
リン酸ジカルシウム二水和物、硫酸カルシウム、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、微晶質セルロース、カオリン、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、加水分解デンプン、予備ゼラチン化デンプン、二酸化ケイ素、酸化チタン、マグネシウムアルミニウムシリケート、及び粉状糖。
【0061】
最初の投与段階において放出される活性成分の量は、同じ活性成分の溶解度によって明らかに左右される層マトリックスの構成成分と露出表面が調整されるように設定してもよい。
【0062】
結合剤は、固体状の投与配合剤へ凝集性を賦与することによって、錠剤又はビーズ若しくは顆粒が、剤型が形成された後においても確実に保持されるようにするために使用される。適当な結合剤としては、特に限定的ではないが、次のものが例示される:
デンプン、予備ゼラチン化デンプン、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、デキストロース、ラクトース及びソルビトールを含む)、ポリエチレングリコール、ワックス、天然ゴム及び合成ゴム(例えば、アラビアゴム、トラガカントゴム等)、アルギン酸ナトリウム、セルロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロースを含む)、ヴィーガム(veegum)、及び合成ポリマー(例えば、アクリル酸−メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリアクリル酸/ポリメタクリル酸及びポリビニルピロリドン等)。
【0063】
滑剤は、錠剤の製造を促進するために使用される。適当な滑剤としては、特に限定的ではないが、次のものが例示される:
ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、グリセロールベヘネート、ポリエチレングリコール、タルク及び鉱油。
【0064】
崩壊剤は、投与後の剤型の崩壊又は「分解(breakup)」を促進させるために使用される。一般的には、このような崩壊剤としては、特に限定的ではないが、次のものが例示される:
デンプン、ナトリウムデンプングリコレート、ナトリウムカルボキシメチルデンプン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、予備ゼラチン化デンプン、クレー、セルロース、アルギニン、ゴム又は架橋ポリマー、例えば、架橋PVP(GAFケミカル社製の「ポリプラスドンXL」)。
【0065】
安定剤は、薬剤の分解反応(例えば、酸化反応を含む)を抑制又は遅延させるために使用される。
【0066】
界面活性剤はアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤又はノニオン界面活性剤であってもよい。適当なアニオン界面活性剤には、特に限定的ではないが、カルボキシレートイオン、スルホネートイオン、又はスルフェートイオンを含有するアニオン界面活性剤が包含され、この種の界面活性剤としては下記のものが例示される:
長鎖アルキルスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩、アルキルアリールスルホネート(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、ジアルキルナトリウムスルホスクシネート(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、ジアルキルナトリウムスルホスクシネート(例えば、ナトリウムビス−(2−エチルチオキシル)−スルホスクシネート)、及びアルキルスルフェート(例えば、ナトリウムラウリルスルフェート)。
【0067】
カチオン界面活性剤としては、特に限定的ではないが、次のものが例示される:
第四アンモニウム化合物、例えば、ベンズアルコニウムクロリド、ベンズエトニウムクロリド、セトリモニウムブロミド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ポリオキシエチレン及びココナツアミン。
【0068】
ノニオン界面活性剤としては、次のものが例示される:
エチレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールミリステート、グリセリルモノステアレート、グリセリルステアレート、ポリグリセリル−4−オレエート、ソルビタンアシレート、スクロースアシレート、PEG−150ラウレート、PEG−400モノラウレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリソルベート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、PEG−1000セチルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリプロピレングリコールブチルエーテル、「ポロキサマー(Poloxamer)(登録商標)401」、ステアロイルモノイソプロパノールアミド、及びポリオキシエチレン水素化獣脂アミド。
【0069】
両性界面活性剤としては、次のものが例示される:
ナトリウムN−ドデシル−β−アラミン、ナトリウムN−ラウリル−β−イミノジプロピオネート、ミリストアンフォアセテート、ラウリルベタイン、及びラウリルスルホベタイン。
【0070】
所望により、錠剤は、少量の非毒性助剤、例えば、湿潤剤、乳化剤、染料、pH緩衝剤又は防腐剤等も含有していてもよい。
【0071】
F.放出調整被覆剤
本明細書に記載の固体状剤型としての組成物は、1種又は複数種の即時放出性被覆剤及び/又は放出調整性被覆剤によって被覆されていてもよい。この種の被覆剤は、コア層又は中心層からの活性剤の放出をさらに調整する。この種の被覆剤としては、特に限定的ではないが、下記のものが例示される:
1)胃内の酸性媒体に溶解するか、又は該酸性媒体を透過させる被覆剤(即ち、味覚隠蔽性被覆剤及び即時放出性被覆剤)、
2)胃内の酸性媒体には溶解しないが、小腸内の中性環境下においては溶解する被覆剤(即ち、腸溶性被覆剤)、
3)胃の内部及び小腸の上部から中間部における環境下においては溶解しないが、小腸の下部又は大腸の上部の環境下においては溶解する被覆剤(即ち、遅延放出性被覆剤)
4)上記の被覆剤の混合被覆剤。
このようにして調製される剤型は美的観点から、例えば、着色処理に付してもよく、あるいは、表面仕上げ処理に付してもよい。
【0072】
1.即時放出性被覆剤
即時放出性被覆剤は、口腔内の唾液と接触したときに溶解するか、又は口腔内の中性のpH領域内においては溶解しないが、胃内の低いpH領域内においては溶解するようなポリマーから形成される。
【0073】
口の中で溶解する被覆剤は、粘膜に付着するような特性を有していてもよく、このような特性に起因して、頬側表面、舌下表面又はその他の口腔内表面と薬剤粒子との接触時間が延長されて活性剤の吸収量が増大する。多数の粘膜付着性ポリマーが知られており、この種のポリマーは高密度のカルボキシル基によって特徴付けられる。この点に関しては、例えば、マチオビッツらによる次の米国特許の明細書を参照されたい:第6235313号及び第5955096号。
【0074】
胃内で溶解する被覆剤は、味覚隠蔽性のような特性を賦与するために一般的に使用されている。カチオン性ポリマーである「ユードラジット(Eudragit)(登録商標)E100」(ローム・ファーマ社の市販品)はアミノ基を有する。従って、該ポリマーから調製される膜は唾液の中性媒体中では溶解しないが、胃内の酸性環境下においては塩形成によって溶解する。この種の膜状被覆剤(厚さ:約10μm)は、薬剤の摂取又は飲み込みに際して該薬剤が口の中で溶解することによってもたらされる苦み又は不快な味を伴う投薬から保護する。この保護膜は胃内での酸性条件下において迅速に溶解し、剤型から活性剤を放出させる。被覆剤組成物は常套の添加剤、例えば、可塑剤、顔料、着色剤、安定剤及び滑剤等を含有していてもよい。
【0075】
2.持続放出性又は遅延放出性被覆剤
活性剤の持続放出又は遅延放出は、薬剤−樹脂複合体粒子上に拡散に対して障壁となる被覆層を設けることによって可能となる。適当な被覆剤としては、特に限定的ではないが、下記のものが例示される:
1)セルロースポリマー、例えば、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート;
2)ポリビニルアセテートフタレート、アクリル酸のポリマー及びコポリマー、及び「ユードラジット」の商品名で市販されているメタクリル樹脂(ローム・ファーマ社製);
3)アルギネート、アルカリ−溶解性アクリル樹脂、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリレート−メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセテートフタレート、スチロール−マレイン酸コポリマー等;
4)「ユードラジット」の商品名で市販されているコポリマー、例えば、ポリ(エチルアクリレート−メチルメタクリレート−トリエチルアンモニオエチル−メタクリレートクロリド)(ユードラジットRS及びユードラジットRL)及びポリ(エチルアクリレート−メチルメタクリレート)(ユードラジットNE);
5)これらの混合物。
この種の水性分散液は「ユードラジットRS30D」、「ユードラジットRL30D」及び「ユードラジットNE30D」の商品名で市販されている。
【0076】
この種のポリマーは単独又は混合物として使用してもよく、あるいは、可塑剤(例えば、トリエチルシトレート等)、顔料及びその他の成分との混合物として使用することによって被覆材の特性を改変してもよい。一般に、被覆剤の大部分の成分は水中では溶解しないが、水を透過させるべきである。しかしながら、水溶性成分(例えば、メチルセルロース等)を配合することが望ましいこともある。
【0077】
被覆剤は水性懸濁液として適用してもよい。被覆剤組成物は常套の添加剤(例えば、可塑剤、顔料、着色剤、安定剤及び滑剤等)を含有していてもよい。可塑剤は、通常は被覆剤の脆性を低減させるために使用され、その配合量は、一般的には、ポリマーの乾燥重量に基づいて約10〜50重量%である。代表的は可塑剤としては、特に限定的ではないが、下記のものが例示される:
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリアセチン、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジブチルセバケート、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、トリエチルアセチルシトレート、ヒマシ油、及びアセチル化モノグリセリド。
【0078】
安定剤は、分散液中の粒子を安定化させるために使用してもよい。代表的な安定剤はノニオン性乳化剤、例えば、ソルビタンエステル、ポリソルベート、及びポリビニルピロリドン等である。滑剤は、フィルム形成中又は乾燥中の粘着効果を低減させるために推奨され、その使用量は、一般的には、被覆溶液中のポリマーの重量に基づいて約25〜100重量%である。1つの有効な滑剤はタルクである。その他の滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム及びグリセロールモノステアレート等を使用してもよい。二酸化チタンのような顔料を使用してもよい。少量の消泡剤、例えば、シリコン(例えば、シメチコン等)も被覆組成物へ添加してもよい。
【0079】
3.腸溶性被覆剤
腸溶性の被覆剤型は下記の文献等に記載されている方法によって調製することができる:
1)「薬学的剤型である錠剤」、リバーマンら編、(ニュウヨーク、マルセル・デッカー社発行;1989年)
2)「レミングトン:薬学の科学とプラクティス」、第20版、リッペンコット・ウイリアムズ&ウィルキンス編、バルチモア、MD、2000年
3)「薬学的剤型と薬剤輸送系」、第6版、アンセルら編(メジア、PA;ウイリアムズ&ウィルキンス、1995年)。
【0080】
適当な被覆剤としては、特に限定的ではないが、下記のものが例示される:
1)セルロースポリマー、例えば、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート;
2)ポリビニルアセテートフタレート、アクリル酸のポリマー及びコポリマー、及び「ユードラジット」の商品名で市販されているメタクリル樹脂(ローム・ファーマ社製)。
【0081】
さらに、被覆剤は常套のキャリヤー、例えば、可塑剤、顔料、着色剤、滑剤、安定剤及び界面活性剤等を含有していてもよい。
【0082】
III. 製造方法
本明細書に記載の組成物は、当該分野において周知の技法を用いて製造することができる。多層錠剤は、圧縮成形法によって製造してもよい。圧縮成形法においては、コア層及び1個又は複数個のバリヤー層を別々に調製した後、多層錠剤プレスを用いてこれらの層を圧縮する。あるいは、別々に調製したコアへバリヤー層をブレンドとして添加して得られる組成物を圧縮することによって錠剤を形成させてもよい。
【0083】
本明細書に記載の剤型の幾何学的形態は、所望の放出挙動のタイプに応じて変化させてもよい。最も簡単な形態においては、剤型は一体構造のコアから成る。あるいは、コアは、1種又は複数種の薬学的活性成分を各層中に含有する多層のうちの1層から成っていてもよい。この種のタイプの剤型は、コントらによる次の米国特許の明細書に記載されている:第5626874号、第5422123号及び第6027748号。
【0084】
あるいは、1個又は複数個の層は活性剤を含有していなくてもよい。各層は、同一又は異なる徐放調整性成分と賦形剤を含有していてもよい。別の実施態様においては、剤型は多重粒子系であってもよい。各粒子は、同一又は異なる薬学的活性成分及び同一又は異なる徐放調整性成分と補助薬を含有していてもよい。好ましい剤型においては、コアは多層である。例えば、2層又は3層を有するコアにおいては、1又は複数の層は活性剤を含有し、他の層は活性剤を含有しない。特に好ましい実施態様においては、剤型は3層から成るコアを具有し、このうちの内層は活性剤を含有するが、他の2つの外層は活性剤を含有しない。
【0085】
上記の配合剤は、当該分野において周知の技法を用いて、コアを少なくとも部分的に覆う膜状コートで被覆することができる。被覆剤は固体として適用するか、又は水性懸濁液若しくは有機溶液として適用することができる。被覆剤の適当な適用法としては、特に限定的ではないが、噴霧被覆法、パン(pan)被覆法、流動床被覆法、及び圧縮被覆法等が例示される。
【0086】
IV. 投与方法
本明細書に記載の剤型は、種々の疾患又は障害を処置するために投与することができる。好ましい適用対象はヒトであるが、一般的には、家畜を含む哺乳類、例えば、イヌやネコ等へ投与してこれらの動物を処置してもよい。剤型は、一般的には、錠剤又は小キャップ形態で投与される。剤型は一回投与量又は漸増的投与量で投与することができ、又は高投与量で投与し、次いで活性剤の循環血液中の濃度が特定の値に達した後は低投与量で投与することができる。当業者であれば、投与されるべき薬学的活性成分の生体内利用率と半減期に基づいて、投与プロトコルを選定し、適当な投与計画を決定することができる。当業者であれば、活性成分の適当な投与量は、一般的行われている実験手法及び現在認可されている投与量を利用する標準的技法を使用することによって決定することができる。当該分野においては、症状の苛酷性に応じた患者自身の変動制は知られており、投与量は、特定の患者において特定の治療効果が得られるように一般的に調整される。
【0087】
開示された活性剤の多くに対する適当な投与量の範囲は、活性成分の循環血液中の濃度を最大にすると共に副作用を最小にするように確立されている。一般的には、活性剤は、患者の体重1kgあたり約0.001〜100mg、好ましくは0.01〜10mg、より好ましくは0.1〜10mgの濃度で投与することができる。カルシウムチャンネル遮断薬に関する特別な場合においては、該遮断薬は、患者の体重1kgあたり、約0.001〜100mg、好ましくは0.01〜10mg、より好ましくは0.1〜1.0mgの濃度で投与することができる。心臓血管障害(例えば、高血圧症、アンギナ及び不整脈等)を処置するためのカルシウムチャンネル遮断薬の1日あたりの好ましい投与量は約1〜100mg、好ましくは2.5〜50mgである。
【0088】
徐放性マトリックスを形成させるために、腸溶性物質と親水性物質との混合物を使用することによって、初期段階では薬剤はゆっくりと放出されるが、剤型が経時的に胃腸管を下降するにつれて、薬剤の放出速度はpHの変化に応答して増大するということによって特徴付けられる放出挙動が得られる。このような放出挙動は、投与される活性成分の大部分を胃腸管の下方部において放出させる必要があるときには非常に望ましい。胃腸管の下方部は。回腸と大腸を意味する。「回腸」は、十二指腸と空腸まで続く小腸の第3部分を意味する。「大腸」は、盲腸、結腸及び直腸から成る部位を意味する。「盲腸」は、大腸から出発する盲嚢を意味し、その一端においては回腸が開口する。
【0089】
本明細書に記載の剤型は、下方の胃腸管の特定の部位において活性成分を高放出速度で放出させるように設計される種々の薬物動態学的放出挙動をもたらすように配合することができる。また、このような剤型を使用することによって多くの活性剤の望ましくない副作用を低減させるか、又は排除してもよい。さらに、このような剤型を使用することによって、活性剤の効能を、この種の活性剤の既知の配合剤に比べて少ない投与量で発揮させることができる。
【0090】
当業者であれば、単に通常の実験操作を実施するだけで、本明細書に記載の特定の実施態様と等価な多くの実施態様を認識するか、又は確認することができる。このような等価な実施態様も本願の特許請求の範囲に包含される。
【0091】
A.薬物動態学的パラメーター
1つの実施態様においては、本明細書に記載の組成物は、放出の遅いコアと即時放出性コートを含む対照配合剤(コート−コア)におけるカルシウムチャンネル遮断薬(例えば、ニソルジピン)の同じ投与量に比べて、高い生体内利用率(血漿中の薬剤濃度−時間曲線の下の面積(AUC)によって測定される)をもたらす。好ましい実施態様においては、本明細書に記載の組成物は、「スラー」における同じ薬剤の投与量に比べて、ニソルジピンの生体内利用率の増大をもたらす。別の実施態様においては、本明細書に記載の組成物は、低投与量のニソルジピンを含有するが、「スラー」と類似の薬物動態学的挙動を示す。
【0092】
例えば、ニソルジピンを40mg含有する三層錠(配合剤A)は、「スラー40mg」に比べて、「AUClast」を約16%増大させる。このことは、三層錠中のニソルジピンの投与量を約15〜17%又は16%低減させることができ(即ち、34mgまで)、しかも有効量の該薬剤が投与されることを示す。従って、10mg、20mg、30mg及び40mgの「スラー」の投与濃度は、生体内利用率が等価な低減化投与濃度(例えば、8.5mg、17mg、25.5mg及び34mg)で置き換えることができる。これによって、所望の治療効果を得るために必要な投与量の低減化に起因して、製造コストの低下がもたらされる。
【0093】
別の実施態様においては、本願明細書に記載の配合剤は1種又は複数種の徐放性成分を、カルシウムチャンネル遮断薬を徐放させるために有効な量で含有し、該配合剤は、空腹条件下において、投与量を40mgとしたときに、カルシウムチャンネル遮断薬に関して、約9〜約20時間のTmax 及び約48〜約63hrng/mlのAUClastをもたらす。
【0094】
別の実施態様においては、本願明細書に記載の配合剤は1種又は複数種の徐放性成分を、カルシウムチャンネル遮断薬を徐放させるために有効な量で含有し、該配合剤は、空腹条件下において、投与量を40mgとしたときに、カルシウムチャンネル遮断薬に関して、約9〜約20時間のTmax 及び約2.75〜約4ng/mlのCmaxをもたらす。
本発明を、以下の非制限的な実施例によってさらに説明する。
【実施例1】
【0095】
ニソルジピンを40mg含有する三層錠
各々が40mgのニソルジピンを含有する3種類の異なる配合剤を調製した。これらの配合剤は、配合剤A、配合剤B及び配合剤Cと命名し、以下の表1〜表3に示す。配合剤Cは腸溶性被覆剤で被覆した(重量増加:5%)。該腸溶性被覆剤は「ユードラジットS100」(メタクリル酸コポリマーB型)及び「ユードラジットL100」(メタクリル酸コポリマーA型)を含有する。配合剤A及びBは、カラーコン社(ウェストポイント、PA)の市販品「オパドライ(OPADRY)(登録商標)IIシールコート」を用いて被覆した。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
前記の配合剤は以下のようにして調製した。
コア又は中心層
1.高剪断ミキサーを用いてニソルジピン及びナトリウムラウリルスルフェートを2分間混合した。ラクトース1水和物、ポビドン、メタクリル酸コポリマー(B型)及びハイプロメロース2208型(「メトセルK4M」)を該高剪断ミキサー内へ添加し、混合処理を10分間おこなった。
2.ポビドンを純水中へ溶解させ、該溶液中へナトリウムラウリルスルフェートを添加することによって、結合溶液を調製した。この混合物を適当なタンク内において、脱泡が完結するまで放置した。
3.ステップ1において得られた混合物を保有する高剪断ミキサー内へ結合溶液を添加し、混合処理を2分間おこなった。得られた粗砕物を混練した後、流動床乾燥機内へ移し、2.5%未満のLODが得られるまで乾燥処理に付した。乾燥後、粗砕物を、振動ミルを用いる微粉砕処理に付した。
【0100】
4.粗砕物の微粉砕処理物の半分を拡散ブレンダー内へ移した。コロイド状の二酸化ケイ素を該ブレンダー内へ添加した後、残りの微粉砕処理物を添加した。得られた混合物を混合処理に20分間付した。
5.ステアリン酸マグネシウムを、ステップ4で得られた混合物5%と手動によって予め混合した。このプレミックスを拡散ブレンダー内に存在する粗砕物の微粉砕処理物へ添加し、混合処理を10分間おこなった。
【0101】
バリヤー層
1.ラクトース1水和物、グリセリルベヘネート、酸化第二鉄(イエロー)、ポビドン、ハイプロメロース2910型(「メトセルE4M」)及び所望によるハイプロメロースフタレートを高剪断ミキサー内へ導入し、混合処理を6分間おこなった。
2.ステップ1で得られた混合物中へ純水を添加し、混練処理を約2分間おこなった。
3.得られた粗砕物を流動床乾燥機内へ移し、2.5%未満のLODが得られるまで乾燥処理に付した。乾燥後、粗砕物を、振動ミルを用いる微粉砕処理に付した。
【0102】
4.微粉砕処理後、粗砕物の微粉砕処理物の半分を拡散ブレンダー内へ移した。コロイド状の二酸化ケイ素を該ブレンダー内へ添加した後、残りの微粉砕処理物を添加した。得られた混合物を混合処理に20分間付した。
5.ステアリン酸マグネシウムを、ステップ4で得られた混合物5%と手動によって予め混合した。このプレミックスを拡散ブレンダー内に存在する粗砕物の微粉砕処理物へ添加し、混合処理を10分間おこなった。
【0103】
錠剤化
中心層とバリヤー層をハタ社(HATA)製の多層錠剤プレス内へ導入してプレス処理をおこなうことによって、三層錠を調製した。
【0104】
膜コート(配合剤A及びB)
563mgの錠剤上に膜コートを形成させた(重量増:5%)。オパドライII 膜コート組成物は、カラーコン社(ウェストポイント、ペンシルヴァニア)から入手した。次の4種の異なる被覆組成物を使用した:「49B97383ベージュ」、「49B97382ベージュ」、「49B92439イエロー」及び「49B97379ベージュ」。これらの全ての膜コート組成物は、ポリデキストロースFCC、HPMC2910/ハイプロメロース3cP、HPMC2910/ハイプロメロース6cP、二酸化チタン、HPMC2910/ハイプロメロース15cP、マクロゴル/PEG、酸化鉄イエロー、及びカルナウバワックスを含有する。これらのコート組成物は、酸化鉄ブラック、酸化鉄レッド及びFD&Cイエロー#5/タルトラジンアルミニウムレーキが存在するか、又は存在しないかによって異なる。メーカーによる指示に従って、錠剤を被覆した。
【0105】
腸溶性被覆剤(配合剤C)
1.水酸化カリウムを、撹拌下において純水中へ溶解させることによって1N溶液を調製した。
2.メタクリル酸コポリマーB型(ユードラジットS100)を、渦流状態の純水中へゆっくりと添加し、該コポリマーが溶解するまで混合処理を続行した。
3.ステップ1で調製した水酸化カリウムの1N溶液を、ステップ2で調製した溶液中へ添加し、得られた混合物を穏やかに撹拌した。
4.トリエチルシトレートを、ステップ3で調製した溶液中へ添加し、得られた混合物が均一になるまで撹拌処理をおこなった。
【0106】
5.メタクリル酸コポリマーA型(ユードラギットL100)を用いて上記のステップ1〜4を繰り返しておこなうことによって、均一な混合物を調製した。
6.ステップ4で調製した溶液を撹拌容器内へ導入してゆっくりと撹拌した。ステップ5で調製した溶液を該混合容器内へ導入し、得られた混合物を所望の時間にわたって混合した。
7.配合剤Cから調製された錠剤を、グラット社製のパンコーター(pan coater)を使用することにより、被副層で被覆した。
【実施例2】
【0107】
ニソルジピンを40mg含有する延長放出性錠剤に関する空腹条件下での相対的生体内
利用率の検討
実施例1に記載の配合剤A〜Cの薬物動態学的パラメーターを、対照配合剤(配合剤D)の薬物動態学的パラメーターと比較した。対照配合剤としては、「スラー」(ニソルジピンを40mg含有するニソルジピン延長放出性配合剤)を使用した。「スラー」は、ニソルジピンを含有するコアを、ニソルジピン含有即時放出性被覆剤で被覆して成るコート−コア配合剤である。「スラー」の配合成分とこれらの濃度を以下の表4に示す。
【0108】
単一投与による開放ラベル(open-label)を用いる無作為化試験(randomized study)の目的は、健康な被検者に対して空腹条件下において、実施例1に記載の延長放出性錠剤(ニソルジピン40mg含有)である試験配合剤を投与したときの吸収速度と経口的生体内利用率を、市販の対照配合剤(「スラー40mg延長放出性錠剤」)を等価量で経口投与したときの対応するパラメーターと比較することである。
【0109】
【表4】

【0110】
32人の健康な成人が、実施例1に記載のニソルジピンを40mg含有する錠剤である3種の配合剤と「スラー」を比較するための試験に参加した。31人の被検者が試験の最初から最後まで参加した。無作為化計画に従って、被検者は第1の期間中において指定された処置を受け、その後の期間中においては別の処置を受けた。投与日の間には、少なくとも7日間の洗浄期間を介在させることによって間隔を設定した。同じ数の被検者を無作為に指定し、各人に対して可能な順序の処置をおこなった。薬剤の投与は、実施例1に記載の配合剤及び「スラー」を空腹条件下で経口投与することによっておこなった。
【0111】
血液試料は、投与の前(前投与)と投与から1時間後、1.5時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、7.5時間後、9時間後、10.5時間後、12時間後、14時間後、16時間後、18時間後、20時間後、21時間後、23時間後、24時間後、26時間後、28時間後、30時間後、36時間後、及び48時間後に採取した。
【0112】
血漿試料は、セドラ・コーポレーション(CEDRA Corporation)によって分析された。この場合、認定されているLC−MS−MS手法を使用した(ニソルジピンの定量下限:0.0150ng/ml)。データはワトソンLIMSシステム(サーモ・エレクトロン・コーポレーションヴァージョン6.4.0.02)に保存した。
【0113】
当該試験に最初から最後まで参加した全被検者から得られたデータは薬物動態学的分析と統計的分析に供した。濃度−時間データはワトソンLIMSシステムから「ウィンノンリン」(エンタープライズヴァージョン4.0;ケアリー、NC)へ直接的に変換させた。この場合、分析用のカスタム・ケリー・ビルダーオプションを使用した。データは「ウィンノンリン」における非区画化法によって分析した。データの合計化と記述統計においては、濃度−時間データ(BLQ:<0.0150ng/ml)はゼロ(0.00ng/ml)として処理した。薬物動態学的分析においては、0時間から最初の定量化濃度が測定されて組み込まれる時までのBLQ濃度はゼロとして処理し、及び/又は最後のBLQ濃度は「ミッシング(missing)」として処理した。全ての薬物動態学的分析と統計的分析においては、完全に正確な濃度に関するデータを使用した。
【0114】
各々の被検者と試験段階に関して、以下の薬物動態学的パラメーターを計算し、次のデータを下記の表5に示す:血漿中の最大濃度(Cmax)、最大濃度に達するまでの時間(Tmax)、排泄速度定数(λ)、末期の半減期(T1/2)、0時間から最後の濃度定量時間までの濃度−時間曲線の下部面積(AUClast)、及び0時間から無限大へ外挿させたときの血漿濃度−時間曲線の下部面積(AUCinf)。配合剤Aはさらなる試験のために選択した。
【0115】
【表5】

【0116】
配合剤Aと対照配合剤(配合剤D)に関する薬物動態学的パラメーターの比較データを以下の表6に示す。
【0117】
【表6】

【0118】
配合剤A及び対照配合剤(配合剤D)を投与した後の変換しない薬物動態学的パラメーターの統計的分析に関するデータを以下の表7に示す。
【0119】
【表7】

【0120】
5%の有意水準におけるシュアマンの2つの片側t−検定法及び分散分析法(ANOVA;analysis of variance)を、対数変換した薬物動態学的な暴露パラメーター(exposure parameter)であるCmax、AUClast、及びAUCinfに適用した。試験配合剤と対照配合剤に関する平均値間の差に対する90%信頼区間を計算した。対数変換したパラメーターの下方と上方の信頼区間が80〜125%の範囲内にあるときには、生体内利用率があるとした。
【0121】
【表8】

【実施例3】
【0122】
ニソルジピンを40mg含有する延長放出性錠剤についての給食条件下での相対的生体
内利用率に関する試験
この試験の目的は、実施例に記載の配合剤Aに対する食物効果と市販の配合剤「スラー」に対する食物効果を比較することである。配合剤Aと「スラー」に対する食物効果を測定するために、これらの2種の配合剤に関して実施例2において空腹条件下で得られた薬物動態学的データを対照として使用した。実施例2における試験に参加した被検者と同じ32人の被検者が、食物効果に関する試験に参加した。
【0123】
26人の被検者が当該試験に最初から最後まで参加した。無作為化計画に従って、被検者は第1の期間中において指定された処置を受け、その後の期間中においては別の処置を受けた。投与日の間には、少なくとも7日間の洗浄期間を介在させることによって間隔を設定した。同じ数の被検者を無作為に指定し、各人に対して可能な順序の処置をおこなった。血液試料の採取と分析は、実施例2に記載のようにしておこなった。
【0124】
配合剤A(処置剤E)及び対照配合剤(ニソルジピンを40mg含有する延長放出性配合剤「スラー」)に関する給食条件下での薬物動態学的データを以下の表9に示す。
【0125】
【表9】

【0126】
給食条件下において、試験配合剤Aを投与した後(処置剤E)又は対照配合剤を投与した後(処置剤F)におけるニソルジピンに関する薬物動態学的パラメーターの非変換データを表10に示す。
【0127】
【表10】

【0128】
給食条件下において、試験配合剤Aを投与した後(処置剤E)又は対照配合剤を投与した後(処置剤F)におけるニソルジピンに関する系統的なパラメーターの対数変換データの統計的分析データを以下の表11に示す。
【0129】
【表11】

【実施例4】
【0130】
ニソルジピ含有コア層と2つのバリヤー層を具有する三層錠
表5に示すデータによれば、配合剤Aに関するAUClastは、ニソルジピンを同量含有する対照配合剤のAUClastよりも約17%高い。このことは、配合剤A中のニソルジピンの配合量を約16%低減させることができるにもかかわらず、対照配合剤の場合と類似の薬物動態学的挙動を発揮するということを示す。
【0131】
コア層中にニソルジピンを8.5mg、17mg、25.5mg又は34mg含有する配合剤を実施例1に記載の手順に基づいて調製した。これらの投与量はそれぞれ、10mg、20mg、30mg及び40mgの投与量に比べて約16%少ない。各々の配合剤の配合成分と該配合成分の濃度を前記の表10〜表11及び以下の表12及び表13に示す。
【0132】
【表12】



【0133】
【表13】

【実施例5】
【0134】
低投与量「スラー・ゲオマトリックス」(ニソルジピン34mg含有)及び「スラー 」(ニソルジピン40mg含有)との生体内利用率等価性
ニソルジピンを34mg含有する「スラー・ゲオマトリックス」(即ち、ゲオマトリックス)及びニソルジピンを40mg含有する「スラー」との生体内利用率等価性は、一回投与/開放−ラベル/無作為化/4段階/二回処置/二回反復を含むようにデザインされたクロスオーバー試験(crossover study)によって確認された。この試験においては、少なくとも10時間の一夜断食後、経口投与された試験配合剤「ゲオメトリックス16−E」(34mg錠剤)(処置剤E)の吸収速度と経口的生体内利用率を、経口投与された対照配合剤「スラー」(40mg錠剤)(処置剤F)の吸収速度と経口的生体内利用率と比較した。
【0135】
試験デザイン
この試験は、一回投与/開放−ラベル/無作為化/4段階/二回処置/二回反復を含むようにデザインされた重要なクロスオーバー試験である。この試験においては、52人の健康な成人被検者には、少なくとも10時間の一夜断食後、4つの試験段階において、ニソルジピンを延長放出する錠剤を4回にわたって別々に単一投与する処置を受けさせた。また、この試験においては、等しい人数の男性と女性を被検者として参加させた。選抜過程を首尾よく通過した被検者は、薬剤投与の前夜は、試験センターに宿泊させた。投与日の朝において、参加/除外基準に引き続き適合する被検者には、この試験のプロトコルに規定されている選抜過程と手順に首尾よく適合した順序に基づいて、被検者番号が付与された。投与日には、少なくとも7日間の洗浄期間を介在させることによって間隔を設けた。
【0136】
被検者には、4つの処置段階において、次に示す処置の各々を二回反復する無作為化方式で2回受けさせた。試験配合剤「処置剤E」は、1個の34mg錠剤として投与される「ゲオマトリックス16−E」(ニソルジピンを延長放出する錠剤)である。対照配合剤「処置剤F」は、1個の40mg錠剤として投与される延長放出性錠剤「スラー」である。
【0137】
臨床的手順の概要
各々の試験段階においては、薬剤の各投与前及び薬剤の各投与後の36時間にわたり選定された時間において、6mlの血液試料を採取した。2種の6mlの血液試料は、投与から48時間後、60時間後及び72時間後に採取した。各々の被検者からは、全体で96パックの血液試料を採取した。4つの別々の試験段階の各段階においては24種の血液試料を採取した。
【0138】
さらに、臨床的な実験室規模での試験(血液の化学的検査、血液学的検査及び尿検査)のために、スクリーニングのベースライン(段階1の開始時)及び試験の終了時(段階4における72時間の手順後)において、血液を採取すると共に尿を採取した。さらに、ヘマトクリット法及びヘモグロビン評価のために(これらの事項は、これらの3つの段階の各段階において投与を開始する前に、試験者によって再検査された)、段階2、3及び4の各段階における投与前の夕方における試験開始時に血液を採取した。52人の被検者のうちの49人は、試験の少なくとも2つの段階において最初から最後まで参加した。
【0139】
薬物動態学的分析のための試料の採取手順
血液試料(1×6ml;2×6ml)は、防腐剤としてK−EDTAを保有するヴァキュテーナー管(vacutainer tube)内へ採取した。該血液試料は、各試験段階において、投与前(0時間)及び投与から1.0時間後、2.0時間後、3.0時間後、4.0時間後、5.0時間後、6.0時間後、7.5時間後、9.0時間後、10.5時間後、12.0時間後、14.0時間後、18.0時間後、24.0時間後、26.0時間後、28.0時間後、30.0時間後、36.0時間後、48.0時間後、60.0時間後、及び72.0時間後に採取した。
【0140】
生体分析の概要
血漿試料中のニソルジピンの分析は、有効性が確認されているLC−MS−MS法を採用するセドラ・コーポレーションによって行われた。該分析法の有効性は、0.250ml及び1.00mlの血漿の分析に基づいて、それぞれ0.0150〜10.0ng/ml及び1.00〜100pg/mlの範囲で確認されている。
【0141】
薬物動態学的分析
試験のプロトコルに違反せずに少なくとも2つの試験段階(1つの試験と1つの対照試験)での処置を首尾よく受けた49人の被検者からのデータには、薬物動態学的分析と統計的分析におけるデータが含まれる。3人の被検者は試験を完全に遂行しなかったので、これらの被検者からの試料は分析しなかった。2人の被検者においては、試験中に嘔吐がみられたので、ニソルジピンを延長放出する配合剤を用いる比較試験中に嘔吐が発生した段階に関しては、これらの被検者は評価の対象から除外した。濃度−時間に関するデータを集めてデータリストに掲載したが、段階2(処理剤E)における1人の被検者からのデータ及び段階4(処理剤E)における1人の被検者からのデータは、薬物動態学的分析データのセットからは除外した。
【0142】
濃度−時間データはワトソンLIMSから「ウィンノンリン・エンタープライズ・エディション(ヴァージョン4.0;ファーサイト・コーポレーション)へ直接的に変換させた。この場合、分析用のカスタム・ケリー・ビルダーオプションを使用した。データは「ウィンノンリン」における非区画化法によって分析した。データの合計化と記述統計においては、定量化の限界値未満(BLQ;below the limit of quantification)の濃度−時間データはゼロとして処理した。薬物動態学的分析においては、0時間から最初の定量化濃度が測定されて組み込まれる時までのBLQ濃度はゼロとして処理し、及び/又は最後のBLQ濃度は「ミッシング」として処理した。全ての薬物動態学的分析と統計的分析においては、完全に正確な濃度に関するデータ(3つの有意な数値への概数化処理に付さないデータ)及び実際の試料採取時間を採用した。
【0143】
以下の薬物動態学的パラメーターを計算した:血漿中の最大濃度(Cmax)、最大濃度に達するまでの時間(Tmax)、排泄速度定数(λ)、末期の半減期(T1/2)、0時間から最後の濃度定量時間までの濃度−時間曲線の下部面積(AUClast)、及び0時間から無限大へ外挿させたときの血漿濃度−時間曲線の下部面積(AUCinf)。
【0144】
線形混合効果(linear mixed effect)及び5%の有意水準におけるシュアマンの2つの片側t−検定法の解析手法を、対数変換した薬物動態学的暴露パラメーター(Cmax、AUClast及びAUCinf)へ適用した。相乗平均の比(試験配合剤/対照配合剤)に対する90%信頼区間を計算した。対数変換したパラメーターの下方と上方の信頼区間が80〜125%の範囲内にあるときには、生体内利用率等価性があるとした。
【0145】
結果
血漿に関する濃度−時間データ及び薬物動態学的パラメーターは数値処理によってまとめた。被検者は2つの機会において各処置を受けるように規定されていたので、処置による記述的統計は、93〜95回の観察に基づいたものである。投与前の定量化可能な濃度は一部の被検者において測定した。しかしながら、投与前濃度は、所定の処置語の当該被検者のCmaxの値の5%よりも十分低かったので、投与前濃度は、調整することなく、全ての薬物動態学的分析のデータに含めた。
【0146】
薬物動態学的データ及び統計的分析データを表13及び表14に示す。二次的ピークの存在及び一部の被検者のプロフィールにおける変動性に起因して、λは、「ウィンノンリン」における対数濃度対時間の線形回帰を介して評価した。計算に含めたデータポイントは、最大調整R値を用いる回帰に基づいた。λのこの省略時評価(default estimation)は全ての薬物動態学的分析に対するこの試験を通して使用した。
【0147】
結論
「ln(Cmax)」に基づく最大暴露(maximum exposure)を比較するための90%信頼区間は、許容されている80%〜125%の限界内にある。「ln(AUClast)」と「ln(AUCinf)」に基づく全体の全身的暴露(systemic exposure)を比較するための90%信頼区間は、許容されている80%〜125%の限界以内である。従って、空腹条件下においては、試験配合剤「ゲオマトリックス16−E」(34mg錠剤)は、対照配合剤「スラー」(40mg錠剤)と生体内利用率等価性がある。
【0148】
【表14】

【0149】
図2は、試験配合剤16−E(「スラー・ゲオマトリックス」(配合剤E);ニソルジピン34mg)又は対照配合剤(「スラー」(配合剤F);ニソルジピン40mg)を投与した後のニソルジピンの平均濃度の経時変化を示すグラフである。
【実施例6】
【0150】
低投与量「スラー・ゲオマトリックス」(ニソルジピン8.5mg含有)及び「スラー 」(ニソルジピン10mg含有)との生体内利用率等価性
ニソルジピンを8.5mg含有する「スラー・ゲオマトリックス」及びニソルジピンを10mg含有する「スラー」との生体内利用率等価性は、一回投与/開放−ラベル/無作為化/4段階/二回処置/二回反復を含むようにデザインされたクロスオーバー試験によって確認された。この試験においては、少なくとも10時間の一夜断食後、経口投与された試験配合剤「ゲオマトリックス16−E」(ニソルジピンを8.5mg含有する錠剤)(処置剤G)の吸収速度と経口的生体内利用率を、経口投与された対照配合剤「スラー」(ニソルジピンを10mg含有する錠剤)(処置剤H)の吸収速度と経口的生体内利用率と比較した。
【0151】
この試験は、一回投与/開放−ラベル/無作為化/4段階/二回処置/二回反復を含むようにデザインされた重要なクロスオーバー試験である。この試験においては、52人の健康な成人被検者には、少なくとも10時間の一夜断食、4つの試験段階において、ニソルジピンを延長放出する錠剤を4回にわたって別々に単一投与する処置を受けさせた。また、この試験においては、等しい人数の男性と女性を被検者として参加させた。投与日の朝において、参加/除外基準に引き続き適合する被検者には、この試験のプロトコルに規定されている選抜過程と手順に首尾よく適合した順序に基づいて、被検者番号が付与された。投与日には、少なくとも7日間の洗浄期間を介在させることによって間隔を設けた。
【0152】
被検者には、4つの処置段階において、次に示す処置の各々を二回反復の無作為化方式で2回受けさせた。試験配合剤「処置剤G」は、1個の8.5mg錠剤として投与される「ゲオマトリックス」(ニソルジピンを延長放出する錠剤)である。対照配合剤「処置剤H」は、1個の10mg錠剤として投与される延長放出性錠剤「スラー」である。
【0153】
臨床的手順の概要
各々の試験段階においては、薬剤の各投与前の60分以内及び薬剤の各投与後の36時間にわたり選定された時間において、1種の6mlの血液試料を採取した。2種の6mlの血液試料は、投与から48時間後、60時間後及び72時間後に採取した。各々の被検者からは、全体で96パックの血液試料を採取した。4つの別々の試験段階の各段階においては24種の血液試料を採取した。52人の被検者のうちの49人は、試験の少なくとも2つの段階において最初から最後まで参加した。
【0154】
薬物動態学的分析のための試料の採取手順
血液試料(1×6ml;2×6ml)は、防腐剤としてK−EDTAを保有するヴァキュテーナー管内へ採取した。該血液試料は、各試験段階において、投与前(0時間)及び投与から1.0時間後、2.0時間後、3.0時間後、4.0時間後、5.0時間後、6.0時間後、7.5時間後、9.0時間後、10.5時間後、12.0時間後、14.0時間後、18.0時間後、24.0時間後、26.0時間後、28.0時間後、30.0時間後、36.0時間後、48.0時間後、60.0時間後、及び72.0時間後に採取した。
【0155】
生体分析の概要
血漿試料中のニソルジピンの分析は、有効性が確認されているLC−MS−MS法を採用するセドラ・コーポレーションによって行われた。該分析法の有効性は、0.250ml及び1.00mlの血漿の分析に基づいて、それぞれ0.0150〜10.0ng/ml及び1.00〜100pg/mlの範囲で確認されている。
【0156】
薬物動態学的分析
試験のプロトコルに違反せずに少なくとも最初の2つ又は少なくとも最後の2つの試験段階(1つの試験と1つの対照試験)での処置を首尾よく受けた49人の被検者からのデータには、薬物動態学的分析と統計的分析におけるデータが含まれる。3人の被検者は試験を完全に遂行しなかったので、これらの被検者からの試料は分析しなかった。被検者「501」は、1つの試験段階において嘔吐の症状を示した。濃度−時間に関するデータを集めてデータリストに掲載したが、この被検者のデータは全ての試験段階に対して評価せず、嘔吐が発生した段階に関する薬物動態学的分析データのセットからは除外した。
【0157】
濃度−時間データはワトソンLIMSから「ウィンノンリン・エンタープライズ・エディション(ヴァージョン4.0;ファーサイト・コーポレーション)へ直接的に変換させた。この場合、分析用のカスタム・ケリー・ビルダーオプションを使用した。データは「ウィンノンリン」における非区画化法によって分析した。データの合計化と記述統計においては、定量化の限界値未満(BLQ)の濃度−時間データはゼロとして処理した。薬物動態学的分析においては、0時間から最初の定量化濃度が測定されて組み込まれる時までのBLQ濃度はゼロとして処理し、及び/又は最後のBLQ濃度は「ミッシング」として処理した。全ての薬物動態学的分析と統計的分析においては、完全に正確な濃度に関するデータ(3つの有意な数値への概数化処理に付さないデータ)及び実際の試料採取時間を採用した。
【0158】
以下の薬物動態学的パラメーターを計算した:血漿中の最大濃度(Cmax)、最大濃度に達するまでの時間(Tmax)、排泄速度定数(λ)、末期の半減期(T1/2)、0時間から最後の濃度定量時間までの濃度−時間曲線の下部面積(AUClast)、及び0時間から無限大へ外挿させたときの血漿濃度−時間曲線の下部面積(AUCinf)。
【0159】
線形混合効果及び5%の有意水準におけるシュアマンの2つの片側t−検定法の解析手法を、対数変換した薬物動態学的暴露パラメーター(Cmax、AUClast及びAUCinf)へ適用した。相乗平均の比(試験配合剤/対照配合剤)に対する90%信頼区間を計算した。対数変換したパラメーターの下方と上方の信頼区間が80〜125%の範囲内にあるときには、生体内利用率等価性があるとした。
【0160】
結果
血漿に関する濃度−時間データ及び薬物動態学的パラメーターは数値処理によってまとめた。被検者は2つの機会において各処置を受けるように規定されていたので、処置による記述的統計は、96回又は94回の観察に基づいたものである。血漿中のニソルジピンの平均濃度の経時変化を図3に示す。薬物動態学的データ及び統計的分析データを以下の表15及び表16に示す。
【0161】
【表15】

【0162】
【表16】

【0163】
結論
「ln(Cmax)」に基づく最大発現を比較するための90%信頼区間は、許容されている80%〜125%の限界内にある。「ln(AUClast)」と「ln(AUCinf)」に基づく全体の全身的暴露を比較するための90%信頼区間は、許容されている80%〜125%の限界以内である。従って、空腹条件下においては、試験配合剤「ゲオマトリックス」(8.5mg錠剤)は、対照配合剤「スラー」(延長放出性の10mg錠剤)と生体内利用率等価性がある。
【0164】
本願明細書に記載の方法は、前記の特定の方法論、プロトコル及び試薬には限定されない。何故ならば、これらの要件は適宜変化させてもよいからである。また、本願明細書において使用する用語は、特定の実施態様を説明するために使用されるものであって、後記の特許請求の範囲によって制限される本願発明の範囲を限定するものではない。
【0165】
特に言及しない限り、本願明細書において使用される技術的用語と化学的用語は、本願発明が属する技術分野の当業者によって普通に理解されている意味と同じ意味に解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1種又は複数種の活性剤及び1種又は複数種の腸溶性物質を含有するコア層、及び所望による(b)1種又は複数種の膨潤性、侵食性又はゲル化性ポリマーを含有する1又は複数のバリヤー層を含有する固体状の徐放性経口投与用配合剤であって、患者へ投与されて胃腸管へ達したときのpHの変化に応答して、活性剤を上昇性放出速度で放出させる該配合剤。
【請求項2】
1種又は複数種の活性剤が、下記の群から選択される活性剤である請求項1記載の配合剤。:
睡眠薬、鎮静薬、精神安定薬、鎮痙薬、筋弛緩薬、鎮痛薬、抗炎症薬、麻酔薬、抗痙攣薬、抗潰瘍薬、駆虫薬、抗菌薬、抗真菌薬、心臓血管薬、利尿薬、細胞増殖抑制剤、抗腫瘍薬、抗ウイルス薬、抗緑内障薬、抗鬱薬、交感神経刺激薬、血糖低下薬、診断薬、抗咳薬、医学的精神賦活薬、抗パーキンソン病薬、局所麻酔薬、筋収縮薬、抗マラリア薬、ホルモン薬、避妊薬、食欲抑制薬、抗関節炎薬、抗糖尿病薬、抗高血圧薬、解熱薬、抗コリン作用薬、気管支拡張薬、中枢神経系薬、陽性変力薬、血管拡張薬、血管収縮薬、充血除去薬、造血薬、電解質補充剤、殺菌薬、副交感神経遮断薬、副交感神経興奮薬、制吐薬、精神刺激薬、ビタミン、ベータ遮断薬、H-2遮断薬、ベータ−2作動薬、反対刺激薬、凝固調節薬、興奮薬、抗ホルモン、薬物−拮抗薬、脂質−調節薬、尿酸排泄薬、強心薬グリコシド、バッカク及びその誘導体、去痰薬、筋弛緩薬、抗ヒスタミン薬、下剤、造影剤、放射性医薬、撮像剤、抗アレルギー剤、及びこれらの混合物。
【請求項3】
1種又は複数種の活性剤の濃度が、配合剤の重量の約0.1〜約90重量%、約0.5〜約20重量%、又は約1〜約10重量%である請求項1記載の配合剤。
【請求項4】
1種又は複数種の腸溶性物質が下記の群から選択される請求項1記載の配合剤:
セルロースアセテートフタレート、アルギネート、アルカリ可溶性アクリル樹脂、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリレート−メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセテートフタレート、スチロール−マレイン酸コポリマー、及びこれらの混合物。
【請求項5】
1種又は複数種の腸溶性物質の濃度が、配合剤の重量の約0.1〜約20重量%、約1〜約15重量%、又は約5〜約10重量%である請求項1記載の配合剤。
【請求項6】
コア層又は中心層が、カルシウムチャンネル遮断薬の放出を調整する1種又は複数種の非腸溶性ポリマー物質をさらに含有する請求項1記載の配合剤。
【請求項7】
1種又は複数種の非腸溶性ポリマー物質が下記の群から選択されるポリマーである請求項6記載の配合剤:
架橋ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプンアクリル酸とメタクリル酸のポリマーとコポリマー、ポリエステル、酸無水物ポリマー、ポリメチルビニルエーテル/酸無水物コポリマー、メタクリル酸カリウム−ジビニルベンゼンコポリマー、ポリビニルアルコール、グルカン、スクレログルカン、マンナン、デンプンとその誘導体、β−シクロデキストリン、線状及び/又は分枝状ポリマー鎖を有するシクロデキストリン誘導体、及びこれらの混合物。
【請求項8】
カルシウムチャンネル遮断薬の放出を調整する1種又は複数種のポリマー物質が、コア層の重量の約1〜約90重量%、又は約10〜約45重量%の濃度で存在する請求項7記載の配合剤。
【請求項9】
1種又は複数種の膨潤性、侵食性又はゲル化性ポリマーが下記の群から選択されるポリマーである請求項1記載の配合剤:
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、グルカン、スクレログルカン、マンナン、キサンタン、アルギネートとその誘導体、酸無水物ポリマー、ポリアミノ酸、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー、カルボキシメチルセルロースとその誘導体、エチルセルロース、メチルセルロース、その他のセルロース誘導体、及びこれらの混合物。
【請求項10】
1種又は複数種の膨潤性、侵食性及び/又はゲル化性ポリマーが、バリヤー層の重量の約5〜約90重量%、又は約25〜約75重量%の濃度で存在する請求項1記載の配合剤。
【請求項11】
ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項10記載の配合剤。
【請求項12】
コア層及び/又はバリヤー層が下記の群から選択される1種又は複数種の賦形剤をさらに含有する請求項1記載の配合剤:
可塑剤、希釈剤、結合剤、潤滑剤、界面活性剤、pH調整剤、付着防止剤、崩壊剤、充填剤、顔料、着色剤、安定剤、調味剤、滑剤及びこれら混合物。
【請求項13】
錠剤又は小キャップの形態を有する請求項1記載の配合剤。
【請求項14】
中心層及び/又はバリヤー層が、活性剤の放出をさらに調整する補助剤であって、下記の群から選択される1種又は複数種の該補助剤をさらに含有する請求項1記載の配合剤:
グリセリルモノステアレート、トリグリセリド誘導体、半合成グリセリド、水素化ヒマシ油、グリセリルパルミトステアレート、セチルアルコール、ポリビニルピロリドン、グリセロール、エチルセルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、安息香酸ナトリウム、ホウ酸、ポリオキシエチレングリコール、コロイドシリカ、及びこれらの混合物。
【請求項15】
活性剤の放出を調整する1種又は複数種の被覆剤をさらに含有する請求項1記載の配合剤。
【請求項16】
1種又は複数種の被覆剤が、即時放出性被覆剤、味覚隠蔽性被覆剤、持続放出性被覆剤、腸溶性被覆剤、遅延放出性被覆剤、及びこれらの混合被覆剤から成る群から選択される被覆剤である請求項15記載の配合剤。
【請求項17】
心臓血管障害を処置する方法であって、該処置を必要とする患者へ請求項1から16いずれかに記載の配合剤を投与することを含む該方法。

【公表番号】特表2010−501609(P2010−501609A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525976(P2009−525976)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007549
【国際公開番号】WO2008/025535
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(500322826)ヤゴテック アーゲー (16)
【Fターム(参考)】