説明

コア/シェルランタンセリウムテルビウムリン酸塩、前記リン酸塩を含有する蛍光体および調製方法

本発明は、無機コアならびに無機コアを300nm以上の厚さで均等に被覆するランタンセリウムテルビウムリン酸塩シェルからなる粒子を含有するリン酸塩であって、粒子が、3から6μmの平均直径を有することおよびランタンセリウムテルビウムリン酸塩が、以下の一般式(1):La(1−x−y)CeTbPO(1)(式中、xおよびyは、以下の条件:0.4≦x≦0.7および0.13≦y≦0.17に従う。)を有することを特徴とするリン酸塩に関する。本発明はまた、上記リン酸塩を含有する蛍光体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア/シェルタイプのランタンセリウムテルビウムリン酸塩、このリン酸塩を含む蛍光体およびこれらの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
混合ランタンセリウムテルビウムリン酸塩(以下、LaCeTbリン酸塩と示す。)は、このルミネセンス特性について周知である。このリン酸塩は、可視範囲の波長よりも短い波長を有するある高エネルギー放射線(照明またはディスプレイシステムのためにはUVまたはVUV放射線)により照射されたときに鮮緑色の光を放出する。この特性を利用する蛍光体は、例えば、三色蛍光ランプ、液晶ディスプレイ用背面照明システムまたはプラズマシステム中で工業規模で通常使用されている。
【0003】
この蛍光体は、コストが高い希土類を含有し、大きい変動にも供される。従って、この蛍光体のコストを低減することは、主要な課題を構成する。
【0004】
この目的のため、非蛍光体材料から作製されたコアを含み、シェルのみが希土類または最も高価な希土類を含有するコア/シェル蛍光体が開発された。この構造により、蛍光体中の希土類の量は低減される。このタイプの蛍光体は、WO2008/012266に記載されている。
【0005】
さらに、より低いコストの生成物についての必要性とは別に、微細蛍光体を提供することも求められている。なぜなら、微細生成物の処理が、少なくともある用途において、例えば、ある三色ランプにおいて、より容易であるという利点を有するからである。しかしながら、微細生成物サイズは、このような生成物のルミネセンス特性を妨げ、低減し得ることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/012266号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、サイズとルミネセンス特性との良好な折衷を示す蛍光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明のリン酸塩は、無機コアならびにランタンセリウムテルビウムリン酸塩を主成分とし、および無機コアを300nm以上の深さにわたり均一に被覆するシェルからなる粒子を含むタイプのリン酸塩であって、粒子が、3から6μmの平均直径を有することおよびランタンセリウムテルビウムリン酸塩が、以下の一般式(1):
La(1−x−y)CeTbPO(1)
(式中、xおよびyは、以下の条件:
0.4≦x≦0.7;および
0.13≦y≦0.17
を満たす。)を満たすことを特徴とするリン酸塩である。
【0009】
本発明はまた、上記タイプのリン酸塩を含むことを特徴とする蛍光体に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蛍光体は、この特徴の特有の組合せのため、微細粒度および公知のコア/シェル蛍光体のルミネセンス特性と一般に比較可能なルミネセンス特性を有する。
【0011】
本発明の他の特徴、詳細および利点は、以下の説明を理解することにより、および添付の図面から、よりいっそう完全に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による蛍光体の発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、特に記載のない限り、挙げられる値の範囲または限界の全てにおいて境界値が含まれ、従って、こうして定義される値の範囲または限界は、少なくとも下限以上および/または多くとも上限以下の任意の値を内包することにも着目されたい。
【0014】
用語「希土類」は、以下の説明において、イットリウムおよび周期表の原子番号57から71(両端を含む。)を有する元素により形成される群の元素を意味するものと解される。
【0015】
用語「比表面積」は、クリプトン吸着により測定されるBET比表面積を意味するものと解される。本説明中に挙げられる表面積は、粉末を200℃において8時間脱ガスした後にASAP2010機器により計測したものであった。
【0016】
上記の通り、本発明は、2種のタイプの生成物:以下の本説明において「前駆体」と称することができるリン酸塩;およびこのリン酸塩または前駆体から得られる蛍光体に関する。蛍光体自体は、所望の用途において蛍光体を直接使用可能とするのに十分なルミネセンス特性を有する。前駆体は、ルミネセンス特性を有さず、またはルミネセンス特性を有する可能性があるが、この特性はこの同一の用途において使用するには低すぎる。
【0017】
これら2種のタイプの生成物を、より詳細に目下説明する。本明細書において、一般に、同一の構造を有する生成物に関し、従ってより具体的に、またはより特定して示されない限り本説明に当てはまるWO2008/012266の教示を参照することが可能であることが挙げられる。
【0018】
リン酸塩または前駆体
本発明のリン酸塩は、第1に、以下に説明するこの特有のコア/シェル構造を特徴とする。
【0019】
無機コアは、特に酸化物またはリン酸塩であり得る材料を主成分とする。
【0020】
酸化物のうち、特に、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)および希土類の酸化物を挙げることができる。希土類の酸化物として、酸化ガドリニウム、酸化イットリウムおよび酸化セリウムをよりいっそう特定して挙げることができる。
【0021】
好ましく選択される酸化物は、酸化イットリウム、酸化ガドリニウムおよびアルミナであり得る。
【0022】
リン酸塩のうち、1種以上の希土類のリン酸塩(オルトリン酸塩)、例えば、オルトリン酸ランタン(LaPO)、オルトリン酸ランタンセリウム((LaCe)PO)、オルトリン酸イットリウム(YPO)、オルトリン酸ガドリニウム(GdPO)(これらの1種は、ドーパントとして作用する可能性がある。)および希土類またはアルミニウムポリリン酸塩を挙げることができる。
【0023】
1つの特定の実施形態によれば、コアの材料は、オルトリン酸ランタン、オルトリン酸ガドリニウムまたはオルトリン酸イットリウムである。
【0024】
アルカリ土類リン酸塩、例えば、Ca、リン酸ジルコニウムZrPおよびアルカリ土類ヒドロキシアパタイトも挙げることができる。
【0025】
他の無機化合物、例えば、バナジン酸塩、特に希土類バナジン酸塩(例えば、YVO)、ゲルマニウム酸塩、シリカ、ケイ酸塩、特にケイ酸亜鉛またはジルコニウム、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、硫酸塩(例えば、BaSO)、ホウ酸塩(例えば、YBO、GdBO)、炭酸塩およびチタン酸塩(例えば、BaTiO)、ジルコン酸塩ならびに場合により希土類によりドープされているアルカリ土類金属アルミン酸塩、例えば、アルミン酸バリウムおよび/またはマグネシウム、例えば、MgAl、BaAlまたはBaMgAl1017がさらに好適である。
【0026】
最後に、上記化合物から誘導される化合物、例えば、混合酸化物、特に希土類酸化物、例えば、混合ジルコニウムセリウム酸化物、混合リン酸塩、特に混合希土類リン酸塩、より特定すると、リン酸セリウム、イットリウム、ランタンおよびガドリニウムならびにホスホバナジン酸塩が好適であり得る。
【0027】
特に、コアの材料は、特定の光学特性、特にUV反射特性を有することができる。
【0028】
表現「無機コアは、〜を主成分とする」は、当該材料少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、さらには90重量%を含む組成物を示すものと解される。1つの特定の実施形態によれば、コアは、本質的に前記材料からなっていてよく(即ち、少なくとも95重量%、例えば、少なくとも98重量%、さらには少なくとも99重量%の含有率)、さらには完全にこの材料からなっていてよい。
【0029】
本発明の幾つかの有利な実施形態を以下に目下説明する。
【0030】
第1の実施形態によれば、コアは、実際には一般に十分に結晶化された材料、そうでなければ低比表面積を有する材料に対応する稠密材料から作製されている。
【0031】
表現「低比表面積」は、多くとも5m/g、より特定すると、多くとも2m/g、よりいっそう特定すると、多くとも1m/g、特に多くとも0.6m/gの比表面積を意味するものと解される。
【0032】
別の実施形態によれば、コアは温度安定性材料を主成分とする。この材料は、高温の融点を有し、この同一温度においては蛍光体としての適用について問題をはらむ副生物に分解されず、結晶質のままであり、従って同様にこの同一温度においては非晶質材料に転換されない材料を意味する。本明細書において意図される高温は、少なくとも900℃超、好ましくは少なくとも1000℃超、よりいっそう好ましくは少なくとも1200℃の温度である。
【0033】
第3の実施形態は、上記2つの実施形態の特徴を組み合わせた材料、従って低比表面積を有する温度安定性材料をコアに使用することである。
【0034】
上記実施形態の少なくとも1つによるコアを使用するという事実は、多くの利点を有する。第1に、前駆体のコア/シェル構造は特に該前駆体から得られる蛍光体においても十分に維持され、最大のコストの利点を達成することができる。
【0035】
さらに、製造において上記実施形態の少なくとも1つによるコアが使用された本発明の前駆体から得られる蛍光体は、同一組成であるがコア/シェル構造を有しない蛍光体の光ルミネセンス効率と同一であるだけでなく、ある場合にはこの蛍光体よりも優れた光ルミネセンス効率を有することを見出した。
【0036】
コアの材料は、特に公知の溶融塩技術を使用することにより稠密化することができる。この技術は、稠密化すべき材料を塩化物(例えば、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム)、フッ化物(例えば、フッ化リチウム)、ホウ酸塩(ホウ酸リチウム)、炭酸塩およびホウ酸から選択することができる融剤の存在下で、場合により還元雰囲気、例えば、アルゴン/水素混合物中で高温、例えば、少なくとも900℃にすることである。
【0037】
コアは、特に1から5.5μm、より特定すると、2から4.5μmの平均直径を有することができる。
【0038】
これらの直径は、少なくとも150個の粒子を統計的に計数してSEM(走査型電子顕微鏡)により測定することができる。
【0039】
コアの寸法および同様に以下に説明するシェルの寸法は、本発明の組成物/前駆体の切片のTEM(透過型電子顕微鏡)顕微鏡写真上で計測することもできる。
【0040】
本発明の組成物/前駆体の他の構造的特徴は、シェルである。
【0041】
このシェルは、コアを300nm以上の厚さにわたり均一に被覆する。用語「均一」は、コアを完全に被覆し、好ましくは300nm未満でない厚さを有する連続層を意味するものと解される。このような均一性は、特に走査型電子顕微鏡写真上で可視的である。さらにX線回折(XRD)計測値は、2種の別個の組成、即ち、コアの組成およびシェルの組成の存在を実証する。
【0042】
層厚は、より特定すると、少なくとも500nmであり得る。層厚は、2000nm(2μm)以下、より特定すると、1000nm以下でもあり得る。
【0043】
シェル中に存在するリン酸塩は、以下の一般式(1):
La(1−x−y)CeTbPO(1)
(式中、xおよびyは、以下の条件:
0.4≦x≦0.7;および
0.13≦y≦0.17
を満たす。)を満たす。
【0044】
より特定すると、シェルのランタンセリウムテルビウムリン酸塩は、xが条件0.43≦x≦0.60、より特定すると、0.45≦x≦0.60を満たす一般式(1)を満たすことができる。
【0045】
さらにまた特定すると、シェルのランタンセリウムテルビウムリン酸塩は、yが条件0.13≦y≦0.16、より特定すると、0.15≦y≦0.16を満たす一般式(1)を満たすことができる。
【0046】
本発明はまた、xおよびyが上述の2種の特定の条件を同時に満たすより特定の実施形態を内包する。
【0047】
シェルが他の残留リン酸塩含有種を含むことができることは除外されないことに留意されたい。
【0048】
シェルは、LaCeTbリン酸塩とともに、特にルミネセンス特性の促進剤もしくはルミネセンス特性のためのドーパントとして、またはセリウムおよびテルビウム元素の酸化状態を安定化させるための安定剤として慣用的に作用する他の元素を含むことができる。このような他の元素の例として、ホウ素ならびに他の希土類、特にスカンジウム、イットリウム、ルテチウムおよびガドリニウムをより特定して挙げることができる。上記希土類は、より特定すると、ランタン元素の代用物として存在し得る。これらのドーピング元素または安定化元素は、ホウ素の場合においては本発明のリン酸塩全重量に対して一般に多くとも1重量%の元素量で存在し、上記の他の元素の場合においては一般に多くとも30%の量で存在する。
【0049】
通常、前駆体粒子においては、実質的に全てのLaCeTbリン酸塩がコアを包囲する層中に局在していることに着目されたい。
【0050】
本発明のリン酸塩はまた、この粒度を特徴とする。
【0051】
具体的には、本発明のリン酸塩は、一般に、3μmから6μm、より特定すると、3μmから5μmの平均サイズを有する粒子からなる。
【0052】
言及される平均直径は、粒子集団の直径の体積平均である。
【0053】
本明細書および以下の説明に挙げられる粒度は、超音波(130W)により1分30秒間、水中に分散させた粒子の試料についてMalvernレーザー粒度分析器により計測される。
【0054】
さらに、粒子は、好ましくは、低分散指数、典型的には、多くとも0.6、好ましくは、多くとも0.5の分散指数を有する。
【0055】
粒子集団についての用語「分散指数」は、本説明の記載に関して以下に定義される比I
I=(φ84−φ16)/(2×φ50
(式中、φ84は、粒子の84%がφ84未満の直径を有する粒子の直径であり;φ16は、粒子の16%がφ16未満の直径を有する粒子の直径であり;φ50は、粒子の直径50%がφ50未満の直径を有する粒子の平均直径である。)を意味するものと解される。
【0056】
前駆体粒子について本明細書に挙げられるこの分散指数の定義は、以下の説明において蛍光体にも当てはまる。
【0057】
本発明によるリン酸塩/前駆体は、ある波長に対する曝露後にルミネセンス特性を有する可能性があり得るが、所望の用途においてこのまま直接使用することができる真の蛍光体を得るように、これらの生成物に後処理を実施することによりこれらのルミネセンス特性をさらに改善することが可能であり、さらには必要である。
【0058】
前駆体と実用の蛍光体との境界は任意性が残り、生成物を使用者が直接および許容して使用することができるとみなされるルミネセンス閾値にのみ依存すると解される。
【0059】
本発明の場合および全く一般に、約900℃超の熱処理に供されていない本発明によるリン酸塩は、蛍光体前駆体とみなし、同定することができる。なぜなら、このような生成物は、一般に、いかなる後続の転換も伴うことなくこのまま直接使用することができる市販の蛍光体についての最小輝度基準に適合しないと判断することができるルミネセンス特性を有するからである。反対に、適切な処理に供された後、例えば、ランプにおいて適用者により直接使用されるのに十分な好適な輝度を発現する可能性のある生成物を蛍光体と命名することができる。
【0060】
本発明による蛍光体を以下に説明する。
【0061】
蛍光体
本発明の蛍光体は、上記の本発明のリン酸塩からなり、または上記の本発明のリン酸塩を含む。
【0062】
従って、このリン酸塩に関する上記全ては、本発明による蛍光体の説明に関して本明細書において同様に当てはまる。特に、このことは、無機コアおよび均一シェルにより形成される構造、無機コアの性質、シェルの性質、特にLaCeTbリン酸塩の性質に関して上述された特徴の全て、さらには粒度の特徴に当てはまる。
【0063】
以下から理解される通り、本発明の蛍光体は、リン酸塩/前駆体から熱処理により得られ、この結果、上記のこのリン酸塩の特徴は実質的に改変されない。
【0064】
本発明のリン酸塩および蛍光体を調製する方法を以下に説明する。
【0065】
調製方法
本発明のリン酸塩を調製する方法は、以下の工程:
−(a)可溶性のランタン、セリウムおよびテルビウム塩の水溶液を、1から5の初期pHを有し、ならびに上記無機コアおよびリン酸イオンの分散状態の粒子を含む出発水性媒体に徐々に、および継続的に添加する一方、反応媒体のpHを実質的に一定の値に維持し、これにより、表面上に混合ランタンセリウムテルビウムリン酸塩が堆積している無機コアを含む粒子を得る工程;ならびに次いで
−(b)得られた粒子を反応媒体から分離し、および400から900℃の温度において熱処理する工程
を含むことを特徴とする。
【0066】
本発明の方法の極めて特有の条件は、工程(b)の終了時に、コア粒子の表面上で形成されたLaCeTbリン酸塩の優先的(および多くの場合において準排他的、さらには排他的)な局在化を均一なシェルの形態でもたらす。
【0067】
混合LaCeTbリン酸塩は沈殿して様々な形態を形成することができる。特に、調製条件に応じて、無機コア粒子の表面上の均一な被覆を形成する針状粒子の形成(「ウニ棘」形態として公知の形態)または球状粒子の形成(「カリフラワー」形態として公知の形態)を観察することができる。
【0068】
工程(b)の熱処理の効果のもと、形態は本質的に保持される。
【0069】
本発明の方法ならびに前駆体および蛍光体の種々の特徴および有利な実施形態を、より詳細に目下説明する。
【0070】
本発明の工程(a)において、可溶性のランタン、セリウムおよびテルビウム塩の溶液を、リン酸イオンを含有する出発水性媒体と反応させることによりLaCeTbリン酸塩を直接沈殿させる一方、pHを維持する。
【0071】
さらに、工程(a)の沈殿は、特徴的には、出発媒体中に初期に分散状態で存在する無機コア粒子の存在下で実施し、この表面上に、沈殿する混合リン酸塩が付着し、前記粒子は、一般に、工程(a)にわたり典型的には媒体を撹拌し続けることにより分散状態で維持する。
【0072】
等方性の、好ましくは、実質的に球状の形態を有する粒子を使用することが有利である。
【0073】
本発明の方法の工程(a)において、反応物質を導入する順序が重要である。
【0074】
特に、可溶性希土類塩の溶液は、リン酸イオンおよび無機コア粒子を初期に含有する出発媒体中に厳密に導入しなければならない。
【0075】
この溶液において、ランタン、セリウムおよびテルビウム塩の濃度は、広範な限度で変動し得る。典型的には、3種の希土類の全濃度は、0.01mol/リットルから3mol/リットルであり得る。
【0076】
溶液中の好適な可溶性のランタン、セリウムおよびテルビウム塩は、特に、水溶性塩、例えば、硝酸塩、塩化物、酢酸塩、カルボン酸塩など、またはこれらの塩の混合物である。本発明によれば、好ましい塩は硝酸塩である。これらの塩は、必要な化学量論量で存在する。
【0077】
溶液は、他の金属塩、例えば、上記のドーパント、促進剤または安定剤タイプの他の希土類、ホウ素または他の元素の塩などを付加的に含むことができる。
【0078】
出発媒体中に初期に存在し、溶液と反応することが意図されるリン酸イオンは、純粋な化合物または溶液中の化合物の形態で、例えば、リン酸、アルカリ金属リン酸塩または希土類と会合している陰イオンと可溶性化合物を形成する他の金属元素のリン酸塩などで出発媒体中に導入することができる。
【0079】
本発明の好ましい実施形態によれば、リン酸イオンは、リン酸アンモニウムの形態で出発混合物中に初期に存在する。この実施形態によれば、アンモニウム陽イオンは、工程(b)の熱処理の間に分解し、こうして高純度の混合リン酸塩を得ることが可能になる。リン酸アンモニウムのうち、リン酸二アンモニウムおよびリン酸一アンモニウムが本発明の実施に特に好ましい化合物である。
【0080】
リン酸イオンは、有利には、溶液中に存在するランタン、セリウムおよびテルビウムの全量に対して化学量論過剰で、即ち、初期リン酸塩/(La+Ce+Tb)モル比を1超、好ましくは、1.1から3として出発媒体中に導入し、この比は、典型的には2未満、例えば、1.1から1.5である。
【0081】
本発明の方法によれば、溶液は、出発媒体中に徐々に、および継続的に導入する。
【0082】
さらに、特にLaCeTbリン酸塩による無機コア粒子の均一な被覆を得ることを可能とする本発明の方法の別の重要な特徴によれば、リン酸イオンを含有する溶液の初期pH(pH)は1から5、より特定すると、1から2である。さらに、好ましくは、続いてこのpHを、溶液の添加の継続時間にわたり実質的にこのpH値に保持する。
【0083】
表現「pHを実質的に一定の値に維持する」は、媒体のpHが、設定された設定値から多くとも0.5pH単位だけ、より好ましくは、この値から多くとも0.1pH単位だけ変動することを意味するものと解される。
【0084】
これらのpH値を達成するため、および要求され得るpHを維持することができることを確保するため、塩基性もしくは酸性化合物または緩衝溶液を溶液の導入前および/または導入と同時に出発媒体に添加することが可能である。
【0085】
本発明による好適な塩基性化合物として、例として、金属水酸化物(NaOH、KOH、Ca(OH)など)、そうでなければ水酸化アンモニウムまたは構成する種が反応媒体へのこの添加の間にこの反応媒体中にさらに含有される種の1種と合わさることによってはいかなる沈殿物も形成せず、沈殿媒体のpHの維持を可能とする任意の他の塩基性化合物を挙げることができる。
【0086】
さらに、工程(a)における沈殿は、水性媒体中で、一般に水を唯一の溶媒として使用して実施することに留意されたい。しかしながら、別の想定される実施形態によれば、工程(a)の媒体は、場合により水性−アルコール性媒体、例えば、水/エタノール媒体であり得る。
【0087】
さらに、工程(a)の処理温度は、一般に、10℃から100℃である。
【0088】
工程(a)は、全ての溶液の添加の終了時であって工程(b)前に、熟成工程をさらに含むことができる。この場合において、熟成は、有利には、得られた媒体を反応温度において、有利には、溶液の添加終了後少なくとも15分間撹拌しておくことにより実施する。
【0089】
工程(b)において、工程(a)の終了時に得られた表面修飾粒子を最初に反応媒体から分離する。この粒子は、自体公知の任意の手段、特に単純濾過により、または場合により他のタイプの固液分離により工程(a)の終了時に容易に回収することができる。実際、本発明による方法の条件下で、担持されている混合LaCeTbリン酸塩は沈殿し、このリン酸塩はゼラチン状でなく容易に濾過することができる。
【0090】
次いで、有利には、考えられる不純物、特に吸着している硝酸塩および/またはアンモニウム基を回収された粒子から除去する目的のため、回収された粒子を例えば水により洗浄することができる。
【0091】
これらの分離および必要に応じて洗浄工程の終了時において、工程(b)は、400から900℃の温度における特有の熱処理工程を含む。この熱処理は、通常空気中でのか焼を含み、好ましくは、少なくとも600℃、有利には700から900℃の温度において実施する。
【0092】
この処理後、本発明によるリン酸塩または前駆体が得られる。
【0093】
本発明による蛍光体を調製する方法は、上記方法により得られたリン酸塩の900℃超、有利には少なくとも約1000℃の温度における熱処理を含む。
【0094】
前駆体粒子はこれ自体、固有のルミネセンス特性を有し得るが、この特性はこの熱処理により大幅に改善される。
【0095】
この熱処理の結果、特に、全てのCeおよびTb種がこれらの(+III)酸化状態に変換される。熱処理は、場合に応じて、還元雰囲気を用いてまたは用いず、融剤(「フラックス」としても公知)の存在下または不存在下で、蛍光体の熱処理について自体公知の手段を使用して実施することができる。
【0096】
本発明の前駆体粒子は、特に、か焼の間に塊状化しないという特に注目すべき特性を有し、即ち、この前駆体粒子は、一般に凝集する傾向を有さず、従って最終的に例えば0.1から数mmのサイズを有する粗凝集体からなる最終形態をなす傾向を有さず;従って、最終蛍光体を得るために意図される慣用の処理に粉末を供する前に粉末の事前の粉砕を実施する必要がなく、このことは、さらに別の本発明の利点を構成する。
【0097】
第1の変形例によれば、熱処理は、前駆体粒子をフラックスの存在下で熱処理に供することにより実施する。
【0098】
フラックスとして、フッ化リチウム、テトラホウ酸リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム、リン酸リチウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、酸化ホウ素、ホウ酸およびリン酸アンモニウム、さらにはこれらの混合物を挙げることができる。
【0099】
フラックスを、処理すべきリン酸塩粒子と混合し、次いで混合物を好ましくは1000℃から1300℃の温度に加熱する。
【0100】
熱処理は、還元雰囲気(例えば、H、N/HまたはAr/H)中でも、非還元雰囲気(N、Arまたは空気)中でも実施することができる
本方法の第2の変形例によれば、リン酸塩粒子をフラックスの不存在下で熱処理に供する。
【0101】
さらに、この変形例は還元雰囲気または非還元雰囲気、特に高価な還元雰囲気を使用する必要なく酸化雰囲気、例えば、空気中などで実施することができる。勿論、経済的でないが、この第2の変形例の範囲内でも還元または非還元雰囲気を使用することも十分可能である。
【0102】
蛍光体を調製する方法の1つの具体的実施形態は、前駆体をアルゴン/水素雰囲気中で1000から1300℃の温度において処理することである。
【0103】
このタイプの処理はこれ自体公知であり、慣用的には、特に蛍光体を所望の用途(例えば、粒子の形態、表面状態、輝度)に適応させるための蛍光体生成方法において使用する。
【0104】
処理後、有利には、粒子を洗浄し、可能な限り純粋であり、解凝集状態またはわずかに凝集している状態の蛍光体を得る。わずかに凝集している状態の場合において、蛍光体を穏やかな条件下で解凝集処理にかけることにより蛍光体を解凝集させることが可能である。
【0105】
上記熱処理により、コア/シェル構造および前駆体リン酸塩の粒子の粒度分布に非常に近い粒度分布を保持する蛍光体を得ることが可能になる。
【0106】
さらに、熱処理は、外側の蛍光体層からのCeおよびTb種のコアに向かう拡散に感受性である現象を誘発することなく実施することができる。
【0107】
本発明の想定される1つの具体的実施形態によれば、リン酸塩を蛍光体に変換するために工程(b)の熱処理を1つのおよび同一の工程において実施することが可能である。この場合において、蛍光体を前駆体段階において停止させることなく直接得る。
【0108】
本発明の蛍光体は、改善された光ルミネセンス特性を有する。
【0109】
本発明の蛍光体は、生成物の種々の吸収場に対応する電磁励起のために強いルミネセンス特性を有する。
【0110】
従って、本発明の蛍光体は、UV(200から280nm)範囲、例えば、約254nmに励起源を有する照明またはディスプレイシステム、とりわけ、特に、三色水銀蒸気ランプ、例えば、管状タイプのランプおよび管状または平面状形態の液晶システムの背面照明用ランプ(LCD背面照明)において使用することができる。本発明の蛍光体は、UV励起下で高い輝度を有し、熱による後処理後のルミネセンスの損失がない。本発明の蛍光体のルミネセンスは、特に、室温から300℃の比較的高温においてUV下で安定性である。
【0111】
本発明の蛍光体は、VUV(または「プラズマ」)励起システム、例えば、プラズマスクリーンおよび無水銀三色ランプ、特にキセノン励起ランプ(管状か平面状かを問わない。)などのための良好な緑色蛍光体である。本発明の蛍光体は、VUV励起(例えば、約147nmおよび172nm)下で強い緑色発光を有する。本蛍光体は、VUV励起下で安定性である。
【0112】
本発明の蛍光体は、LED(発光ダイオード)励起装置中で緑色蛍光体として使用することもできる。本発明の蛍光体は、特に近UVにおいて励起させることができるシステム中で使用することができる。
【0113】
本発明の蛍光体は、UV励起標識システム中で使用することもできる。
【0114】
本発明の蛍光体は、周知技術、例えば、スクリーン印刷、吹付、電気泳動または沈降を使用してランプおよびスクリーンシステム中に適用することができる。
【0115】
本発明の蛍光体は、有機マトリックス(例えば、プラスチック製マトリックスまたはUV下で透明なポリマーのマトリックスなど)、無機(例えば、シリカ)マトリックスまたは有機−無機ハイブリッドマトリックス中に分散させることもできる。
【0116】
別の態様によれば、本発明はまた、緑色ルミネセンス源として上記の蛍光体または同様に上記の方法から得られる蛍光体を含む上記のタイプのルミネセンス装置に関する。
【0117】
実施例を目下挙げる。
【0118】
以下の実施例において、調製された粒子を、粒度、形態および組成に関して以下の方法を使用して特性決定した。
【0119】
粒度計測
粒径を、超音波(130W)により1分30秒間、水中に分散させた粒子の試料についてレーザー粒度分析器(Malvern 2000)を使用して測定した。
【0120】
電子顕微鏡検査
顕微鏡写真を、高分解能JEOL 2010 FEG TEM顕微鏡を使用して粒子のミクロトーム切片について透過型電子顕微鏡検査を使用して得た。EDS(エネルギー分散分光法)による化学組成計測のための機器の空間分解能は、<2nmであった。観察された形態および計測された化学組成を相関づけることにより、コア/シェル構造を実証することおよびシェルの厚さを顕微鏡写真上で計測することが可能であった。
【0121】
化学組成計測は、HAADF−STEMにより作成した顕微鏡写真上でEDSにより実施した。計測値は、少なくとも2つのスペクトル上で取られた平均値に対応した。
【0122】
X線回折
X線回折図は、ブラッグ・ブレンターノ法により銅を対陰極としてKα線を使用して作成した。分解能は、LaPO:Ce,Tb線をLaPO線から分離するのに十分であるように選択し、好ましくは、この分解能はΔ(2θ)<0.02°であった。
【実施例】
【0123】
(実施例1)
本実施例は、LaPOコアの合成に関する。
【0124】
水酸化アンモニウムを添加することにより事前にpH1.9とし、60℃に加熱したリン酸(HPO)溶液(1.725mol/l)500mlに、硝酸ランタン溶液(1.5mol/l)500mlを添加した。沈殿の間のpHは、水酸化アンモニウムを添加することにより1.9に調整した。
【0125】
沈殿工程後、反応媒体を60℃において1時間再度保持した。次いで、沈殿物を濾過により回収し、水により洗浄し、次いで空気中で60℃において乾燥させた。次いで、得られた粉末を空気中で900℃において熱処理に供した。
【0126】
こうして得られた生成物をX線回折により特性決定すると、モナザイト構造のオルトリン酸ランタンLaPOであった。
【0127】
次いで、粉末をLiF粉末1重量%と混合し、次いで還元雰囲気中で1100℃において2時間か焼した。次に、得られた生成物を粉砕し、次いで80℃の湯中で3時間撹拌しながら再懸濁させることにより洗浄した。最後に懸濁液を濾過し、乾燥させた。
【0128】
次いで、このことは、Malvernレーザー粒度分析により計測された平均粒度D50が4.3μmであり、分散指数が0.4であるモナザイト相のリン酸ランタンをもたらした。このリン酸ランタンの比表面積は、0.5m/gであった。
【0129】
こうして得られたコアの平均直径は、SEMにより計測すると3.2μmであった。
【0130】
(比較例2)
本比較例は、従来技術による蛍光体に関する。
【0131】
最初に、前駆体を以下の様式において調製した。
【0132】
1リットルのビーカー中で、希土類硝酸塩の溶液(溶液A)を以下の通り調製した:La(NOの2.8M(d=1.678g/l)溶液29.37g、Ce(NOの2.88M(d=1.715g/l)溶液20.84gおよびTb(NOの2M(d=1.548)溶液12.38gならびに脱イオン水462mLを混合し、組成(La0.49Ce0.35Tb0.16)(NOの希土類硝酸塩合計0.1molを作製した。
【0133】
2リットルの反応器中に、Normapur 85%HPO(0.115mol)13.27gを添加した脱イオン水340ml(溶液B)を導入した。溶液を60℃に加熱し、28%の水酸化アンモニウムNHOHを添加してpHを1.5とした。次に、実施例1からのリン酸ランタン23.4gをこうして調製したストックに添加した。
【0134】
予め調製した溶液Aを、温度(60℃)において1.5のpH制御下で1時間にわたり撹拌しながら混合物に添加した。得られた混合物を60℃において1時間熟成させた。熟成工程の終了時、混合物を30℃に放冷し、生成物を回収した。次いで、生成物を焼結ガラス上で濾過し、水2容量により洗浄し、次いで乾燥させ、空気中で900℃において2時間か焼した。
【0135】
こうして、別個の組成、即ちLaPOおよび(La,Ce,Tb)POの2種のモナザイト結晶相を有するコア/シェルタイプのモナザイト相の希土類リン酸塩を得た。粒度(D50)は6.0μmであり、分散指数は0.5であった。
【0136】
超薄切片法(厚さ約100nm)により調製し、有孔膜上に載せた樹脂被覆生成物のTEM顕微鏡写真を撮影した。粒子を断面で観察した。この顕微鏡写真において、コアが球状であり、1.1μmの平均厚さを有するシェルにより包囲されている粒子切片を観察することができる。
【0137】
次いで、この前駆体をAr/H(5%の水素)還元雰囲気下で1200℃において4時間か焼して対照比較蛍光体を得た。
【0138】
この蛍光体の光ルミネセンス収率(PL)により計測された蛍光体の効率を、蛍光分光計を使用して254nmの励起下450から700nmの波長範囲において計測された発光スペクトルを統合することにより測定した。この効率を100%に正規化した。
【0139】
本発明の蛍光体の効率の計測値は、比較例の発光効率に関する相対値で計測したものであった。
【0140】
(実施例3)
本実施例は、本発明による前駆体の調製に関する。
【0141】
希土類硝酸塩の溶液(溶液A)を、1リットルの反応器中で以下の通り調製した:454g/lのLa(NO溶液203.4g、496g/lのCe(NO溶液215gおよび447g/lのTb(NO溶液100.3gを、脱イオン水114.4mlと混合し、組成(La0.40Ce0.43Tb0.17)(NOを有する希土類硝酸塩合計0.84molを作製した。
【0142】
2.5リットルの反応器中に、85%Normapur HPO 115.7gを添加した脱イオン水1.1l(溶液B)を導入した。溶液を60℃に加熱した。12Nの水酸化アンモニウムを添加してpH1.5を得た。次に、こうして調製したストックに実施例1からのリン酸ランタン131gを添加した。
【0143】
次いで、予め調製した溶液Aを、温度(60℃)において1.5のpH制御下で1時間にわたり撹拌しながら混合物に添加した。得られた混合物を60℃において1時間熟成させた。
【0144】
この混合物を30℃に放冷し、生成物を回収した。次いで、生成物を焼結ガラス上で濾過し、水2容量により洗浄し、次いで乾燥させ、空気中で900℃において2時間か焼した。
【0145】
こうしてモナザイト相のコア/シェルタイプ希土類リン酸塩を得た。XRD回折図は、異なる組成、即ちLaPOおよび(La,Ce,Tb)POの2種のモナザイト結晶相の存在を示した。
【0146】
生成物は、Malvernレーザー粒度分析により計測された平均サイズ(D50)が5.3μmであり、分散指数は0.3であった。
【0147】
(実施例4)
本実施例は、本発明による蛍光体に関する。
【0148】
実施例3において得られた前駆体粉末を、Ar/H(5%の水素)雰囲気中で1200℃において4時間か焼した。
【0149】
Malvernレーザー粒度分析により計測された平均粒度(D50)は5.3μmであり、分散指数は0.5であった。
【0150】
(実施例5)
本実施例は、本発明による前駆体の調製に関する。
【0151】
希土類硝酸塩溶液(溶液A)を、1リットルの反応器中で以下の通り調製した:454g/lのLa(NO溶液259.7g、496g/lのCe(NO溶液249.6gおよび447g/lのTb(NO溶液92.7gを、脱イオン水135mLと混合し、組成(La0.44Ce0.43Tb0.13)(NOを有する希土類硝酸塩合計0.98molを作製した。
【0152】
2.5リットルの反応器中に、85%Normapur HPO 135gを添加した脱イオン水1l(溶液B)を導入した。溶液を60℃に加熱し、12Nの水酸化アンモニウムを添加してpH1.7を得た。次に、こうして調製したストックに実施例1からのリン酸ランタン98gを添加した。
【0153】
予め調製した溶液Aを、温度(60℃)において1.7のpH制御下で1時間にわたり撹拌しながら混合物に添加した。得られた混合物を60℃において15分間熟成させた。
【0154】
この混合物を30℃に放冷し、生成物を回収した。次に、生成物を焼結ガラス上で濾過し、水2容量により洗浄してから、乾燥させ、空気中で900℃において2時間か焼した。
【0155】
こうしてモナザイト相のコア/シェルタイプ希土類リン酸塩を得た。XRD回折図は、異なる組成、即ちLaPOおよび(La,Ce,Tb)POを有する2種のモナザイト結晶相の存在を示した。
【0156】
生成物は、Malvernレーザー粒度分析により計測された平均サイズ(D50)が5.7μmであり、分散指数は0.3であった。
【0157】
実施例2に記載の条件と同一の条件下で撮影されたTEM顕微鏡写真を分析すると、シェルの厚さは0.8μmであった。
【0158】
(実施例6)
本実施例は、本発明による蛍光体に関する。
【0159】
実施例4から得られた前駆体粉末を、Ar/H(5%の水素)雰囲気中で1200℃において4時間か焼した。
【0160】
(実施例7)
本実施例は、本発明による前駆体の調製に関する。
【0161】
希土類硝酸塩溶液(溶液A)を、1リットルの反応器中で以下の通り調製した:454g/lのLa(NO溶液126.3g、496g/lのCe(NO溶液299.9gおよび447g/lのTb(NO溶液89.6gを、脱イオン水117mLと混合し、組成(La0.25Ce0.60Tb0.15)(NOを有する希土類硝酸塩合計0.98molを作製した。
【0162】
2.5リットルの反応器中に、85%Normapur HPO 115.7gを添加した脱イオン水1リットル(溶液B)を導入した。溶液を60℃に加熱し、12Nの水酸化アンモニウムを添加してpH1.8を得た。
【0163】
次に、こうして調製したストックに実施例1からのリン酸ランタン131gを添加した。
【0164】
予め調製した溶液Aを、温度(60℃)において1.8のpH制御下で1時間にわたり撹拌しながら混合物に添加した。得られた混合物を60℃において15分間熟成させた。
【0165】
この混合物を30℃に放冷し、生成物を回収した。次に、生成物を焼結ガラス上で濾過し、水2容量により洗浄してから、乾燥させ、空気中で900℃において2時間か焼した。
【0166】
こうしてモナザイト相のコア/シェルタイプ希土類リン酸塩を得た。XRD回折図は、異なる組成、即ちLaPOおよび(La,Ce,Tb)POを有する2種のモナザイト結晶相の存在を示した。
【0167】
生成物は、Malvernレーザー粒度分析により計測された平均サイズ(D50)が4.4μmであり、分散指数は0.3であった。
【0168】
実施例2に記載の条件と同一の条件下で撮影されたTEM顕微鏡写真を分析すると、シェルの厚さは0.5μmであった。
【0169】
(実施例8)
本実施例は、本発明による蛍光体に関する。
【0170】
実施例7から得られた前駆体粉末を、Ar/H(5%の水素)雰囲気中で1200℃において4時間か焼した。
【0171】
以下の表1は、上記実施例の蛍光体の特徴を挙げる。
【0172】
【表1】

表1において、xおよびyは、上述の式(1)の添え字xおよびyに対応する。従って、本発明による蛍光体は、比較生成物よりも小さい粒度を有するが、前記比較生成物よりも高い光ルミネセンス収率(PL)を有し、本明細書において実施された計測のタイプを考慮すると、この差は有意であることを理解することができる。
【0173】
図1は、254nm励起下での実施例4からの蛍光体の発光スペクトルである。このスペクトルは、生成物が緑色を強く発光することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機コアならびにランタンセリウムテルビウムリン酸塩を主成分とし、および無機コアを300nm以上の深さにわたり均一に被覆するシェルからなる粒子を含むリン酸塩であって、粒子が、3から6μmの平均直径を有することおよびランタンセリウムテルビウムリン酸塩が、以下の一般式(1):
La(1−x−y)CeTbPO(1)
(式中、xおよびyは、以下の条件:
0.4≦x≦0.7;および
0.13≦y≦0.17
を満たす。)を満たすことを特徴とするリン酸塩。
【請求項2】
ランタンセリウムテルビウムリン酸塩が、xが条件0.45≦x≦0.60を満たす一般式(1)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載のリン酸塩。
【請求項3】
ランタンセリウムテルビウムリン酸塩が、yが条件0.13≦y≦0.16を満たす一般式(1)を満たすことを特徴とする、請求項1または2に記載のリン酸塩。
【請求項4】
粒子の無機コアが、リン酸塩または無機酸化物、より特定すると、希土類リン酸塩または酸化アルミニウムを主成分とすることを特徴とする、請求項1から3の一項に記載のリン酸塩。
【請求項5】
請求項1から4の一項に記載のリン酸塩を含む蛍光体。
【請求項6】
請求項1から4の一項に記載のリン酸塩を調製する方法であって、以下の工程:
−(a)可溶性のランタン、セリウムおよびテルビウム塩の水溶液を、1から5の初期pHを有し、ならびに上記無機コアおよびリン酸イオンの分散状態の粒子を含む出発水性媒体に徐々に、および継続的に添加する一方、反応媒体のpHを実質的に一定の値に維持し、これにより、表面上に混合ランタンセリウムテルビウムリン酸塩が堆積している無機コアを含む粒子を得る工程;ならびに次いで
−(b)得られた粒子を反応媒体から分離し、および400から900℃の温度において熱処理する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
工程(a)において、リン酸イオンを、化学量論過剰で、初期リン酸塩/(La+Ce+Tb)モル比を1超、好ましくは、1.1から3として出発水性媒体中に導入することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項5に記載の蛍光体を調製する方法であって、請求項1から4に記載のリン酸塩または請求項6もしくは7に記載の方法により得られるリン酸塩を900℃超、有利には少なくとも1000℃の温度において熱処理することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項5に記載の蛍光体もしくは請求項8に記載の方法により得られる蛍光体を含むことまたは請求項5に記載の蛍光体もしくは請求項8に記載の方法により得られる蛍光体を使用して製造されることを特徴とする、以下のタイプの装置:プラズマシステム;三色水銀蒸気ランプ;液晶システム背面照明用ランプ;無水銀三色ランプ;LED励起装置;またはUV励起標識システム。

【図1】
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【公表番号】特表2012−521342(P2012−521342A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501242(P2012−501242)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053342
【国際公開番号】WO2010/108815
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(508183151)ロデイア・オペラシヨン (70)
【Fターム(参考)】