説明

コイルの汚れ防止用カバーとその装着方法

【課題】コイルの汚れ防止用カバーおよびその装着方法を提供する。
【解決手段】シート状の本体とシート状の本体に取り付けた着脱用部材を有し、前記本体は鋼板外周面で汚れ付着を防止したい領域を覆う面積を有する、前記鋼板外周面に沿って変形可能な素材からなり、前記鋼板外周面に沿わせた場合に両端部となる部分に当該本体を前記鋼板外周面に吸着させる磁石を有し、前記取り付け部材は、前記両端部間で非対称となる位置に取り付けられている。水平床に、コイルの一部が埋没することが可能な厚みを有する弾性体を敷いた後、前記汚れ防止用カバーを重ね、その後、上方より、コイル状に巻かれた鋼板を押し当てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル状に巻かれた鋼板の汚れ防止用カバーとその装着方法に関し、好適にはコイル状に巻かれた鋼板の外周部が、搬送時にリフトカーや搬送台車の、スキッドと接触することにより汚れることを防止するものに関する。
【背景技術】
【0002】
コイル状に巻いた鋼板(以下、コイル)の外周面に傷が付いたり、汚れたりすることを防止するため、紙などでコイル全面を梱包することが多い。しかし、梱包作業に時間を要するため、特許文献1のように紙管を展開可能な切断線で切断したものを被せる方法や十分な大きさの梱包シートを機械を用いて自動的に装着する方法が提案されている。
【0003】
また、特許文献2、3では汚れ防止用カバーとして応用することができる、プロテクターやフープ、粘着テープなどから構成されているコイル端部の打疵防止カバーを、特許文献4では、保管されているコイル同士が接触することを防止するための緩衝用保護具を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−80060号公報
【特許文献2】実開昭61−105667号公報
【特許文献3】実開昭62−54951号公報
【特許文献4】実開昭59−129756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コイルの外周面に汚れが付着する状況を詳細に調査すると、図5に示すように搬送時に利用するリフトカーや台車の、スキッドとの接触により汚れが付着し、一端付着するとコイル自重で圧下された汚れのため除去するのも困難であることが判明した。図5において(a)はコイル6がリフトカーや台車(図示しない)のスキッド7a,7bの上に載置されている状態を示し、(b)はコイル6の側面側から観察した外周面に付着した汚れ8a,8bを、(c)はリフトカーや台車(図示しない)のスキッド7a,7b側(図示しない)から汚れ8a,8bを観察した結果を示す。
【0006】
このような汚れの付着を防止しようとすると特許文献1記載の方法はコイル全面を梱包するもので、梱包材の端部同士を最終的に接合する必要があるため梱包及び開梱に時間を要し、短時間での着脱が要求されるリフトカーや台車による搬送時には適当でない。
【0007】
また、特許文献2、3記載のコイル端部の打疵防止カバーは複雑な構造で一時的に装着するカバーとしては高価で、特許文献4記載の保護具は、コイル外周面の汚れを防ぐことはできない。
【0008】
そこで、本発明は前記課題を解決した着脱容易な搬送時のコイル外周の汚れ防止カバー及びその装着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は以下の手段で達成可能である。
1.コイル状に巻かれた鋼板の外周面の汚れ防止用カバーであって、前記汚れ防止用カバーはシート状の本体とシート状の本体に取り付けた取り付け部材を有し、前記本体は鋼板の外周面で汚れ付着を防止したい領域を覆う面積を有する、前記鋼板の外周面に沿って変形可能な素材からなり、前記鋼板の外周面に沿わせた場合に両端部となる部分に当該本体の両端部を前記鋼板の外周面に密着させる磁石を有し、前記取り付け部材は、前記両端部間で非対称となる位置に取り付けられていることを特徴とする汚れ防止用カバー。
2.前記磁石が前記本体の両端部に、前記本体に重ねて、または前記両端部に接続して取り付けられていることを特徴とする1記載の汚れ防止用カバー。
3.前記本体が繊維状の素材からなることを特徴とする1または2記載の汚れ防止用カバー。
4.前記本体が弾性を有する素材からなることを特徴とする1乃至3のいずれか一つに記載の汚れ防止用カバー。
5.コイル状に巻かれた鋼板の外周面に1乃至4のいずれか一つに記載の汚れ防止用カバーを装着する汚れ防止用カバーの装着方法であって、水平床に、コイル状に巻かれた鋼板の一部が埋没することが可能な厚みを有する弾性体を敷いた後、前記汚れ防止用カバーを重ね、その後、上方より、コイル状に巻かれた鋼板を押し当てることを特徴とする汚れ防止用カバーの装着方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、着脱が容易で、コイル表面の汚れや疵の防止が可能なコイルの汚れ防止用カバーおよびその装着方法が得られ産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係る汚れ防止用カバーを説明する模式的斜視外観図。
【図2】図1に示した汚れ防止用カバーを弾性体に重ねた場合を示す模式的斜視外観図。
【図3】本発明の一実施例に係る汚れ防止用カバーの装着方法(a)〜(c)を示す模式図。
【図4】本発明の一実施例に係る汚れ防止用カバーをコイルから取り外す際((a)〜(c))における取っ手を非対称の位置に取り付けた効果を示す模式図。
【図5】コイル外周面に疵が生じたり、汚れが付着する状況を説明する図で、(a)はコイルがスキッドに接触する様子、(b)(c)はスキッドの汚れがコイル外周面に付着した状況で、(b)は端面側、(c)はコイルの上方(下方)から観察した付着状況を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は磁力によって、コイル状に巻かれた鋼板(以下、コイルと言う場合がある)の外周面(以下、鋼板外周面、コイル外周面と言う場合がある)に付着する汚れの付着を防止するシート状の汚れ防止用カバーである。以下、図面を用いて、本発明を詳細に説明する。説明は汚れ防止用カバーが矩形の場合について行うが、楕円形、多角形であっても良い。
【0013】
図1に本発明の一実施例に係る汚れ防止用カバーの模式的斜視外観図を示す。図において1は、汚れ防止用カバー、2はシート状の本体、3a,3bは本体2に取り付けられたゴム磁石などの磁石、4は本体2の片面に取り付けられた取り付け部材である取っ手を示す。
【0014】
図示した汚れ防止用カバー1は、コイル状の鋼板外周面を覆うために変形可能な繊維状または弾性体の素材からなる本体2と、本体2を鋼板外周面に沿って保持するために、本体2の両端部を鋼板外周面に密着させる磁石3a,3bと、汚れ防止用カバー1を鋼板外周面から取りはずすための取り付け部材である取っ手4を有する。本体2を弾性体とする場合は、例えば、エスシート(商品名:伊藤敏株式会社製)、磁石3a,3bをゴム磁石とする場合はメイコー磁石株式会社製のものを使用することができる。
【0015】
取っ手4は作業者が持ちやすい形状であればよく、特にその形状を規定しない。作業者が握りやすいようにカバンの取っ手のようなコの字型とし、開口側を本体2に向けて固定したものが好ましい。取っ手4を本体2に取り付ける位置は、汚れ防止用カバー1の全長Lの中心位置(中心線a)に対して非対称となる位置で、取りつけた位置で折りたたんだ場合に、磁石3a,3bが互いに吸着しないように、中心位置から距離dだけ離れた位置とする。
【0016】
シート状の本体2は、少なくとも鋼板外周面で汚れの付着を防止したい所望の領域を覆う面積を有すれば良く、面積の上限を規定しない。但し、後述する装着方法が適用できる面積とすることが好ましい。
【0017】
例えば、図5に示したスキッドによる汚れを防止する場合は、シート状の本体2は幅Wがコイル幅、長さ(磁石3a,3bの長さを含めた全長Lから磁石3aの長さLと,磁石3bの長さLを減算した長さ)を、スキッド7a,7bの外側の間隔以上とすれば良い。
【0018】
汚れ防止用カバー1をコイル外周面に取り付ける場合、図2に示すように水平床に置いた弾性体からなる台座5の上に、汚れ防止用カバー1を敷いた後、その上からコイル(図示しない)を押し当てる。図3は、汚れ防止用カバー1の磁石3a,3bをコイルの軸方向と平行に吸着させる場合の装着手順を説明する図で、汚れ防止用カバー1を敷いた台座5にその上方から、クレーン9でコイル6を降下させる(a)。
【0019】
弾性体からなる台座5にクレーン9で吊り下げた状態でコイル6をその一部が台座5に沈むように押し当てて、磁石3a,3bをコイル6の外周面に接触、吸着させ、シート状の本体2をコイル外周面に密着させる(b)。クレーン9で汚れ防止用カバー1が装着されたコイル6を吊り上げてリフトカーや台車(図示しない)に載置する(c)。
【0020】
台座5の寸法や弾性体の種類および汚れ防止用カバーの各部の寸法は、コイルの台座への沈み込みによって汚れ防止用カバーが装着され、且つ汚れの付着が防止されるように、コイルの寸法、重量を勘案して適宜設定する。
【0021】
最大幅や最大外径のコイルに対して、汚れ防止用カバー1を矩形とし、磁石3a,3bをコイルの軸方向と平行に吸着させる場合の各部の好ましい寸法は、全幅Wはコイル幅で2000mm、全長Lは2800mm、厚さtは10mm、磁石3a,3bの各々の長さLは300mm、取っ手4の中心線aからの距離dは500mmである。台座の素材として、例えばスポンジを用いた場合、その幅Kは3000mm、長さLは3500mm、厚みTは1000mmである。磁石3a,3bをコイルの軸方向と直角に吸着させる場合は、全幅Wは2800mm、全長Lはコイル幅で2000mmである。この場合、磁石3a,3bはゴム磁石とすることが好ましい。
【0022】
尚、クレーン9でコイル6を吊り上げておいて、作業員によって、コイルに磁石3a,3bを順次吸着、または複数の作業員により同時に吸着させても汚れ防止用カバー1をコイルに装着することが可能である。
【0023】
図4は、磁石3a,3bをコイルの軸方向と平行に吸着させた場合における、汚れ防止用カバーをコイルから取り外す際における取っ手を非対称の位置に取り付けた効果を示す図で、クレーン9でコイル6を吊り上げておいて(a)、取っ手4を作業員またはロボットで下方に引っ張ると(b)、取っ手4は汚れ防止用カバー1の全長において、取り付けた位置で折りたたんだ場合に磁石3a,3bが重ならない、非対称となる位置に取り付けられているので、互いに吸着しないで、再利用の際に磁石3a,3bを引き離す手間が省ける。
【0024】
本発明に係る汚れ防止用カバーはコイルヤードに置く際にヤードのスキッドとコイルの接触を防止するのに用いても良い。搬送時にカバーを使用することによって外周の汚れが防止されるため不良部カット削減による歩留向上や処置コスト削減という効果も得られる。
【符号の説明】
【0025】
1 汚れ防止用カバー
2 シート状の本体
3a,3b 磁石
4 取っ手
5 台座
6 コイル
7a,7b スキッド
8a,8b 汚れ
9 クレーン
W 汚れ防止用カバーの幅
1 汚れ防止用カバーの長さ
t 汚れ防止用カバーの厚さ
T 台座の厚み
K 台座の幅
L 台座の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル状に巻かれた鋼板の外周面の汚れ防止用カバーであって、前記汚れ防止用カバーはシート状の本体とシート状の本体に取り付けた取り付け部材を有し、前記本体は鋼板の外周面で汚れ付着を防止したい領域を覆う面積を有する、前記鋼板の外周面に沿って変形可能な素材からなり、前記鋼板の外周面に沿わせた場合に両端部となる部分に当該本体の両端部を前記鋼板の外周面に密着させる磁石を有し、前記取り付け部材は、前記両端部間で非対称となる位置に取り付けられていることを特徴とする汚れ防止用カバー。
【請求項2】
前記磁石が前記本体の両端部に、前記本体に重ねて、または前記両端部に接続して取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の汚れ防止用カバー。
【請求項3】
前記本体が繊維状の素材からなることを特徴とする請求項1または2記載の汚れ防止用カバー。
【請求項4】
前記本体が弾性を有する素材からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の汚れ防止用カバー。
【請求項5】
コイル状に巻かれた鋼板の外周面に請求項1乃至4のいずれか一つに記載の汚れ防止用カバーを装着する汚れ防止用カバーの装着方法であって、水平床に、コイル状に巻かれた鋼板の一部が埋没することが可能な厚みを有する弾性体を敷いた後、前記汚れ防止用カバーを重ね、その後、上方より、コイル状に巻かれた鋼板を押し当てることを特徴とする汚れ防止用カバーの装着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−103718(P2013−103718A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246136(P2011−246136)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】