コイルを有する駆動源の駆動制御回路

【課題】ボイスコイルモータのようなコイルを有する駆動源を高精度に駆動制御することができる駆動制御用半導体集積回路を提供する。
【解決手段】コイル駆動回路121,122と、コイルに流れる電流を検出する電流検出回路123と、電流指令値をアナログ信号に変換するAD変換回路150と、電流検出回路123の出力とAD変換回路150の出力に基づいて駆動回路121,122を駆動制御するための信号を生成する電圧入力−電流出力型の増幅回路125とを備えた駆動制御回路120において、AD変換回路150に所定の電流指令値を与えて上記コイルの端子に所定の電圧を印加しかつコイルに電流が流れないようにした状態で、電流検出回路123の出力とAD変換回路150の出力に基づいて、電流検出回路123の出力のずれを判定し、電流検出回路123の電流値もしくは抵抗値を調整して制御系のオフセットをキャンセルする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルを有する駆動源の駆動制御さらにはボイスコイルモータの駆動制御に適用して有効な技術に関し、例えばハードディスク装置において磁気ディスク上の記憶トラックに対して情報のリード/ライトを行なう磁気ヘッドを移動させるボイスコイルモータの駆動制御装置に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク記憶装置は、磁気ディスクを回転駆動させるスピンドルモータの他に、磁気ディスク上の記憶トラックに対して情報のリード/ライトを行なう磁気ヘッドを上記ディスクの表面に沿って径方向へ移動(シーク動作)させるボイスコイルモータを備えている。ハードディスク装置においては、磁気ヘッドがディスクの回転に伴って生じる風圧でディスク表面を滑空するように構成されており、ディスクの回転が停止すると磁気ヘッドはディスク表面に接触して傷をつけてしまうおそれがある。さらに、磁気記録の高密度が進んでディスク表面が鏡面状態になると、停止したヘッドがディスク表面に吸着してディスクの回転が阻害されるおそれがある。
【0003】
そこで、ディスクの回転停止時には、磁気ヘッドをディスクの外側の待機位置にあるランプと呼ばれる支持台へ退避させる動作(本明細書ではアンロードと称する)が行なわれる。一方、ヘッドのシーク開始時には、磁気ヘッドをランプ位置からディスク上へ移動(以下、ランプロードと称する)させる必要がある。このとき、ボイスコイルモータによる磁気ヘッドの移動速度が速過ぎると磁気ヘッドがディスク表面に接触して傷をつけてしまうおそれがある。そのため、ボイスコイルモータの逆起電圧を監視して磁気ヘッドの移動速度を制御することが一般に行なわれている。ボイスコイルモータの駆動制御に関する発明としては、例えば特許文献1に記載の発明がある。
【特許文献1】特開2004−086982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハードディスク装置においては、ボイスコイルモータを駆動するドライバ(以下、VCMドライバと称する)がオフセットを持っていると、上述した磁気ヘッドのランプロード時にドライバに電源を供給した際に、ボイスコイルモータのコイルに電流が流れてヘッドがディスク上に落ちてヘッドが破損したりディスク表面に傷がついたりするおそれがある。特に、2.5インチ以下の小型ハードディスク装置のボイスコイルモータにおいては、ヘッドが非常に軽いためドライバの僅かなオフセットによってヘッドが移動してディスク上に落ちてしまうおそれがある。
【0005】
本発明者が本発明に先立って考えた形態においては、かかる事故を防止するため、VCMドライバにオフセットを調整するトリミング回路を設けてプロセスの最終工程でプローブ検査によってオフセットを検出して、そのオフセットをキャンセルするようにトリミングが行なわれている。しかしながら、トリミング回路を設けたVCMドライバにあっては、プローブによりトリミングのための回路に通電を行なうためのパッドが必要であるためチップサイズが大きくなるとともに、製造工程でオフセットの検出およびトリミング作業のための時間がかかるためチップコストの上昇の要因となる。
【0006】
また、トリミング時と実使用時とではチップの温度が異なるためオフセットを完全にキャンセルすることが困難であるとともに、トリミング後にチップをパッケージに組み立てたり制御ボードに実装したしたりしたときに新たにオフセットが発生することがある。そのため、従来のトリミング回路によるオフセットキャンセルのみでは、ヘッドがディスク上に落ちる事故を完全に防止することはできないという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、ボイスコイルモータのようなコイルを有する駆動源を高精度に駆動制御することができる駆動制御用半導体集積回路を提供することにある。
本発明の他の目的は、ボイスコイルモータのようなコイルを有する駆動源の駆動制御用半導体集積回路を安価に提供できるようにすることにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、磁気ディスク記憶装置において、磁気ヘッドをディスク上へ移動させる際に安全にヘッドを移動させることができるボイスコイルモータの駆動制御技術を提供することにある。
本発明の上記ならびにそのほかの目的と特徴は、本明細書の記述および添付図面からあきらかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
すなわち、コイルに電流を流すコイル駆動回路と、前記コイルと直列に接続された抵抗の端子間電圧に基づいて前記コイルに流れる電流を検出する電流検出回路と、前記コイルに電流を流すべき電流指令値をアナログ信号に変換するAD変換回路と、前記電流検出回路の出力と前記AD変換回路の出力に基づいて前記駆動回路を駆動制御するための信号を生成する電圧入力−電流出力型の増幅回路とを備えた駆動制御回路において、上記AD変換回路に所定の電流指令値を与えて上記コイルの端子に所定の電圧を印加しかつコイルに電流が流れないようにした状態で、上記電流検出回路の出力と前記AD変換回路の出力に基づいて、前記電流検出回路の出力のずれを判定し、該判定結果に基づいて前記電流検出回路の電流値もしくは抵抗値を調整して制御系のオフセットをキャンセルするように構成したものである。
【0010】
上記した手段によれば、制御系の有するオフセットがキャンセルされるため、コイルを有する駆動源を高精度に駆動制御することができるとともに、駆動制御回路をシステムに組み込んだ状態でオフセットのキャリブレーションを行なうことができるため、製造工程のプローブ検査の段階でトリミングによるオフセット調整を行う必要がないのでコストの低減が可能になる。
【0011】
しかも、本発明を適用した場合には、システム組み立て後に使用するコイルの特性やボンディングのアンバランス等によって制御系のオフセットがチップ単体の場合からずれたとしても、そのずれを含んだ状態でオフセットのキャリブレーションを行なうため、プローブ検査の段階でのトリミングによるオフセット調整よりも精度の高い調整が行なえる。そのため、本発明を磁気ディスク記憶装置のボイスコイルモータの駆動制御に適用した場合には、磁気ヘッドをディスク上へ移動させる際にヘッドがディスク上に落ちる事故を防止し安全にヘッドを移動させることができるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
すなわち、本発明に従うと、ボイスコイルモータのようなコイルを有する駆動源を高精度に駆動制御することができる駆動制御用半導体集積回路を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施態様を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明を適用した磁気ディスク記憶装置におけるボイスコイルモータおよびスピンドルモータの駆動制御系の概略構成を示す。
図1に示されているように、この実施例の磁気ディスク記憶装置は、磁気ディスク300と、該磁気ディスク300を高速回転駆動させるスピンドルモータ310と、磁気ディスク300上の記憶トラックに対して情報のリード/ライトを行なう磁気ヘッドHDを先端に有するアーム320と、このアームを介して磁気ヘッドHDを上記磁気ディスク300上にて移動させるボイスコイルモータ340、このボイスコイルモータ340を駆動する半導体集積回路化されたモータ駆動回路100、磁気ヘッドHDを駆動して磁気ディスク300に対する書込みを行なったり読出し信号に基づいて位置情報を検出したりする信号処理回路230、磁気ディスク記憶装置全体の動作を制御するとともにヘッドの位置指令情報(トラック位置)出力するコントローラ260、該コントローラ260からの位置指令情報と上記信号処理回路230が検出した位置情報(サーボ信号)に基づいてその差に応じた値を駆動電流指令値として上記モータ駆動回路100に送る補償器280、などを有する。350は、磁気ディスク300の外側に配置されディスク回転停止時にアーム320を支持するランプである。
【0014】
上記コントローラ260はマイクロコンピュータ(MC)などで構成される。この場合、補償器280の機能もコントローラ260に取り込むことができる。上記補償器280から出力された駆動電流指令値は、上記モータ駆動回路100へ送られ、ボイスコイルモータ340が駆動制御される。このモータ駆動回路100内には、スピンドルモータドライバ110、VCMドライバ120、停電発生時にVCMドライバ120を制御してヘッドをランプ350へ退避させるリトラクト制御回路130、電源電圧を昇圧するブースト回路140が設けられている。
【0015】
さらに、このモータ駆動回路100には、補償器280から供給されるデジタルデータ形式の駆動電流指令値をアナログ形式の駆動電流指令値に変換するD/A変換器150と、補償器280からシリアルに供給される駆動電流指令値を受けてパラレルデータに変換してD/A変換器150に入力するシリアルI/O(入出力ポート)160、上記コントローラ260から該シリアルI/O160へ供給されたコマンドに応じてモータ駆動回路100内の各回路を順次動作させる制御信号を生成するシーケンサ170、停電発生を検出する電源モニタ回路180などが設けられている。
【0016】
図2は、上記VCMドライバ120の一実施例とこれを含むボイスコイルモータの駆動制御系の構成例を示す。図2に示されているように、この実施例のボイスコイルモータの駆動制御系においては、ボイスコイルモータ340のコイルLvcmと直列にコイルに流れる電流を電圧に変換するセンス抵抗Rsnsが設けられている。
【0017】
VCMドライバ回路120は、コイルLvcmに電流を流すコイル駆動アンプ121,122と、上記センス抵抗Rsnsの両端子の電圧が抵抗R13,R15を介して入力され抵抗Rsnsの端子間電圧を増幅することでコイルの電流を検出する電流センス用アンプ123と、D/A変換器150の出力電流を電圧に変換しかつ2.25Vのような出力中心電位Vcを基準にした電圧を出力するI-Vアンプ124と、該I-Vアンプ124と上記電流センス用アンプ123の出力とを入力とする電圧入力−電流出力型の差動増幅回路(以下、Gmアンプと称する)125と、該Gmアンプ125の出力をインピーダンス変換して前記コイル駆動アンプ121,122に与えるボルテージフォロワからなるバッファアンプ126と、該電流制御ループの位相補償を行なう位相補償回路127とにより構成されている。
【0018】
コイル駆動アンプ121,122と電流センス用アンプ123の一方の入力端子には、それぞれ抵抗R7,R9,R14を介して1.65Vのような入力中心電位となる基準電圧Vrefが印加され、該基準電圧Vrefと各入力電圧との電位差に応じた電圧を出力する。そして、コイル駆動アンプ121,122は、2.25Vを基準に一方の出力を2.25Vよりも高くし他方の出力を2.25Vよりも低くすることで、コイルLvcmに双方向の電流を流すことができるように構成されており、駆動電流の流れる向きに応じて磁気ヘッドはディクスの内側方向または外側方向のいずれかに任意の方向に移動されるようになっている。
【0019】
上記アンプ121〜126は、それぞれアンプの入力抵抗や帰還抵抗、トランジスタなどの素子の定数を最適に決定することによって、利得などの回路動作特性がそれぞれ所望の特性となるように設定される。また、これらのアンプ121〜126は、スピンドルモータの逆起電圧を整流した電圧Vspnおよびそれを昇圧したブースタ電圧Vbstを電源としており、停電発生時にもアンプの動作が継続されるように構成されている。
【0020】
さらに、この実施例のVCMドライバ回路120においては、前記Gmアンプ125とバッファアンプ126との間にGmアンプ125の出力または基準電圧Vrefを選択的にバッファアンプ126に供給する切替えスイッチSW1が設けられているとともに、コイル駆動アンプ122がシーケンサ170からのオン/オフ制御信号ON/OFFによって通常動作状態または出力ハイインピーダンス状態のいずれかに設定可能に構成されている。そして、コイル駆動アンプ122がオン/オフ制御信号ON/OFFによって出力ハイインピーダンス状態にされるときに切替えスイッチSW1が基準電圧Vrefを選択するように制御される。切替えスイッチSW1は、コイル駆動アンプ121の出力端子とコイル接続端子VCM+との間に設けても良い。
【0021】
出力ハイインピーダンス状態を取り得るつまり出力がトライステートであるコイル駆動アンプは、例えば特開2004-86982号公報の図6に示されているアンプのように、出力段として電源電圧端子と接地点との間に2個のMOSトランジスタを直列に接続してなるプッシュプル型の出力段を有するものを使用し、それらのMOSトランジスタのゲート端子と接地点との間にプルダウン用MOSトランジスタを設けて、これらのトランジスタを上記オン/オフ制御信号ON/OFFもしくはこれと連動した信号によってオンさせることでコイル駆動アンプ122の出力トランジスタを同時にオフ状態にさせることができるように構成することで実現できる。オン/オフ制御信号ON/OFFは、ヘッドをディスク上へロードする直前にコントローラ260から供給される所定のコマンドに基づいてシーケンサ170により生成される。
【0022】
また、電流センス用アンプ123の一方の入力端子にはオフセット調整回路OFTが設けられているとともに、Gmアンプ125の出力または基準電圧Vrefとを比較するコンパレータ128と該コンパレータ128の出力によって動作されオフセット調整回路OFTの制御信号を生成するカウンタ回路129が設けられている。このカウンタ回路129は、シーケンサ170からのキャリブレーション開始信号CLSにより動作を開始し、コンパレータ128の出力がハイレベルの期間だけカウントアップ動作してオフセット調整回路OFTの電圧を徐々に増加させて、電流センス用アンプ123のオフセットがゼロになるとコンパレータ128の出力がロウレベルに変化してカウンタ回路129のカウント動作が停止するように構成されている。キャリブレーション開始信号CLSは、前記オン/オフ制御信号ON/OFFと同様に、ヘッドをディスク上へロードする直前にコントローラ260から供給される所定のコマンドに基づいてシーケンサ170により生成される。
【0023】
図3には、カウンタ回路129と電流センス用アンプ123の具体的な回路構成例が示されている。
図3に示されているように、電流センス用アンプ123は、差動入力トランジスタQ1,Q2を有するGmアンプ型の差動増幅段と、出力トランジスタQ5および定電流源CS3からなる出力段とを備え、差動入力トランジスタQ1,Q2のソース端子に接続された定電流源CS1,CS2のうち反転入力側のトランジスタQ1と直列に接続されている定電流源CS1と並列にオフセット調整用の電流源Iadj1〜Iadj4が設けられている。電流源Iadj1〜Iadj4は2のべき乗の重み電流を流せるように構成され、最大調整電流をIadjmax、定電流源CS1の電流をI1、CS2の電流をI2とすると、I2≒I1+Iadjmax/2となるように、I1,I2が設定されている。
【0024】
カウンタ回路129は、シーケンサ170からのキャリブレーション開始信号CLSをデータ端子に受け所定の周期のクロック信号CLKをクロック端子に受けるD型フリップフロップFF1と、該フリップフロップFF1の後段に接続されたD型フリップフロップFF2と、FF1の出力QとFF2の反転出力/Qを入力とするANDゲートG1と、ゲートG1の出力とコンパレータ128の出力を入力とするNANDゲートG2,G3からなるRSフリップフロップFF3と、該フリップフロップFF3の出力とクロック信号CLKを入力とするANDゲートG4と、4個のD型フリップフロップFF11〜FF14がシリーズに接続されたカウンタ部CNTとから構成されている。
【0025】
このカウンタ回路129においては、D型フリップフロップFF1とFF2とANDゲートG1とによりワンショットパルス生成回路が構成されており、キャリブレーション開始信号CLSがハイレベルに変化されるとワンショットパルスφrが生成され、生成されたパルスφrがフリップフロップFF3とFF11〜FF14のリセット端子にリセット信号として供給される。クロック信号CLKは、その周期がオフセット調整制御ループの遅延量すなわちクロック信号CLKによりフリップフロップFF11の出力が変化してからオフセット調整用の電流源Iadj1〜Iadj4の電流が切り替わり、Gmアンプ125−コンパレータ128−フリップフロップFF3の出力の変化として戻ってくるまでの応答時間よりも若干長いものが選択される。
【0026】
次に、この実施例のカウンタ回路129による電流センス用アンプ123のオフセット調整動作を、図4のタイミングチャートを用いて説明する。
前述したように、電流センス用アンプ123のオフセット調整は、ヘッドをディスク上へロードする直前にコントローラ260から供給される所定のコマンドに基づいて開始される(図4のタイミングT2)。このコマンド供給の前にスピンドルモータの回転が開始される(図4のタイミングT1)。また、オフセット調整開始コマンドの供給と前後してDA変換回路150には電流指令値としてI−Vアンプ124の出力電圧を、コイルの出力中心電位を与える定電圧Vcと同じ2.25Vにさせるような値がコントローラ260から供給される。
【0027】
特に制限されるものでないが、本実施例では、電流指令値として"0"が与えられるとDA変換回路150の出力が出力中心電位である2.25Vとなり、電流指令値として"+"の値が与えられるとDA変換回路150の出力(正確にはI−Vアンプ124の出力)が2.25Vよりも高い電圧に、また電流指令値として"−"の値が与えられるとDA変換回路150の出力が2.25Vよりも低い電圧になるように設定されている。
【0028】
コントローラ260からオフセット調整開始コマンドが供給されると、シーケンサ170により先ずオン/オフ制御信号ON/OFFが有効レベル(例えばハイレベル)に変化された後、キャリブレーション開始信号CLSが有効レベルに変化される(図4のタイミングT2,T3)。すると、スイッチSW1が基準電圧Vref側に切り替わり、コイルの出力端子VCM+とVCM−がそれぞれ2.25Vに固定され、電流センス用アンプ123の差動入力端子には同一の電位が入力されるとともに、カウンタ回路129においてはANDゲートG1よりクロックCLKに同期してパルスφrが生成されてフリップフロップFF3とFF11〜FF14がリセットされる。
【0029】
これにより、電流センス用アンプ123の調整用電流源Iadj1〜Iadj4の電流はゼロにされ、差動入力トランジスタQ1の電流は定電流源CS1からの電流I1のみとされる。そのため、電流センス用アンプ123の出力は振幅中心の電位(ここでは2.25V)よりも低いレベルになり、Gmアンプ125には基準となる電圧Vcよりも低い電圧が入力され、コンパレータ128の出力はハイレベルとなる(図4のタイミングT4)。また、フリップフロップFF3は上記リセット動作によりゲートG3側の出力がハイレベルの状態にされており、コンパレータ128からハイレベルの信号が入ってきても出力はハイレベルを維持する。
【0030】
この状態でクロックCLKがハイ/ロウ交互に変化すると、それに応じてフリップフロップFF11〜FF14からなるカウンタがカウントアップ動作する。そして、このカウントアップ動作に呼応して調整用電流源Iadj1〜Iadj4はその電流が段階的に上昇するように制御される。これにより、電流センス用アンプ123の出力は徐々に高くなり、所定の中心電位(1.65V)に達するとGmアンプ125の出力は基準電圧Vref(1.65V)と同一レベルになり、それを若干超えるとコンパレータ128の出力がロウレベルに変化する(図4のタイミングT5)。その結果、フリップフロップFF3がセットされてゲートG3側の出力がロウレベルに変化するため、クロックCLKが入ってきてもフリップフロップFF11〜FF14からなるカウンタがカウントアップ動作を停止するとともに、直前の計数値を保持する状態に移行する。
【0031】
以上の動作によって、電流センス用アンプ123にオフセットがあったとしてもそのオフセットがキャンセルされる。その後、シーケンサ170によりオン/オフ制御信号ON/OFFとキャリブレーション開始信号CLSがそれぞれ無効レベル(ロウレベル)に変化され、スイッチSW1が基準電圧Vref側からGmアンプ125側に切り替えられるとともに、コイル駆動アンプ122が出力ハイインピーダンス状態から動作状態に移行されて、電流指令値に応じた電流がコイルに流されるようになるとともに、カウンタ回路129には直前の値(キャリブレーションの結果)が保持される。
【0032】
なお、図2の実施例のボイスコイルモータ駆動制御回路においては、電流センス用アンプ123以外にも、DA変換回路150のオフセット、Gmアンプ125のオフセットがあり、抵抗R1:R3やR2:R4、R13:R14、R15:R16のずれによっても制御系にオフセットが生じるが、前記実施例ではD/A変換器150−IVアンプ124−Gmアンプ125−バッファアンプ126−コイル駆動アンプ121−電流センス用アンプ123の制御系を動作させてオフセットキャンセル動作を行なっているため、DA変換回路150等のオフセットも上記オフセットキャンセル動作によって同時にキャンセルされる。
【0033】
ここで、厳密に考えると、コイル駆動アンプ121と122の特性ずれによってもオフセットが発生するが、前記実施例では一方のアンプ122を出力ハイインピーダンス状態にしてその増幅動作を停止させた状態でオフセットキャンセルを行なっているので、コイル駆動アンプ121と122によるオフセットはキャンセルできない。ただし、実施例のボイスコイルモータ駆動制御回路においては、コイル駆動アンプ121と122の前段にGmアンプ125を設けており、Gmアンプ125はDCゲインが理想的な無限大に近いという特性を持つため、コイル駆動アンプ121と122によるオフセットは無視できる程度に小さくなる。従って、前記実施例のようなオフセットキャンセル動作によって、VCMコイルの駆動制御系全体のオフセットを充分に低減することができる。
【0034】
また、実施例では、Gmアンプ125の後段にコンパレータ128が設けられておりそのオフセットが問題になるように見えるが、Gmアンプ125はDCゲインが理想的な無限大に近いという特性を持つため、コンパレータ128にオフセットがあってもその影響は小さいので、正しいキャリブレーションが行なえる。
【0035】
本発明の実施例によると、ボイスコイルモータのようなコイルを有する駆動制御用半導体集積回路を安価に提供できる。さらに、磁気ディスク記憶装置のボイスコイルモータの駆動制御回路に適用した場合には、磁気ヘッドをディスク上へ移動させる際に安全にヘッドを移動させることができるという効果が得られる。
【0036】
以上、本発明者によってなされた発明を実施態様にもとづき具体的に説明したが、本発明は上記実施態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前記実施例では、VCMコイルの駆動制御系のオフセットを調整するため、電流センス用アンプ123の差動入力トランジスタQ1に電流を流す電流源CS1と並列に複数の調整用電流源Iadj1〜Iadj4を設けているが、オフセットの調整方法はこれに限定されず、差動入力トランジスタQ1,Q2のソース端子間の抵抗Reとして複数の抵抗を設けるとともに各抵抗を接続したり切り離したりするスイッチを設けて、Reの抵抗値を可変に構成することでオフセットを調整できるようにしても良い。また、実施例では電流センス用アンプ123のオフセットを16段階に調整できるようにしているが、それ以下またはそれ以上の段階に調整できるようにしても良い。
【0037】
さらに、前記実施例においては、電流センス用アンプ123の出力をDA変換回路150の出力電流を電圧に変換するアンプ124の出力と合成してGmアンプ125に入力させているが、Gmアンプ125の一方の入力端子に電流センス用アンプ123の出力を入力し、Gmアンプ125の他方の入力端子にアンプ124の出力を入力して、Gmアンプを誤差アンプとして動作させるようにすることができ、この場合にも前記実施例のオフセット調整回路を適用することができる。
【0038】
また、前記実施例においては、電流センス用アンプ123のオフセットキャンセル時に、コイル駆動アンプ121,122のうち122のみをオン/オフ制御信号ON/OFFによって出力ハイインピーダンス状態にしているが、コイル接続端子VCM+またはVCM−のいずかに出力中心電位を与える定電位Vcを供給可能な切替えスイッチを設けるとともに、コイル駆動アンプ121,122の両方をオン/オフ制御信号ON/OFFによって出力ハイインピーダンス状態にして、コイル接続端子VCM+またはVCM−のいずかに定電位Vcを印加してオフセットキャンセル動作を行なうように構成しても良い。
【0039】
さらに、DA変換回路150またはGmアンプ125あるいは両方に専用のオフセットキャンセル回路を設け、該オフセットキャンセル回路によるキャリブレーションを先に行なってから、前記実施例のコンパレータおよびカウンタ回路によるキャリブレーションを行なうように構成することができ、それによって制御系全体のオフセットをさらに低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上の説明では主として本発明者によってなされた発明をその背景となった利用分野であるハードディスク記憶装置のボイスコイルモータを駆動制御する回路に適用した場合について説明したが、本発明にそれに限定されるものでなく、スピンドルモータやソレノイドなどコイルに電流を流して磁石を移動させる駆動装置を駆動制御する回路一般に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る磁気ディスク記憶装置におけるボイスコイルモータおよびスピンドルモータの駆動制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る磁気ディスク記憶装置におけるボイスコイルモータのドライバ回路の一実施例とこれを含む駆動制御系の構成例を示すブロック図である。
【図3】実施例のボイスコイルモータのドライバ回路における電流センス用アンプとカウンタ回路の具体的な回路構成例を示す回路図である。
【図4】実施例のボイスコイルモータのドライバ回路における電流センス用アンプのオフセットキャンセル動作時における各部の信号のタイミングを示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0042】
Lvcm ボイスコイルモータの駆動コイル
Rsns 電流検出用抵抗
100 モータ駆動制御回路(IC)
110 スピンドルモータドライバ
120 ボイスコイルモータのドライバ
121,122 コイル駆動アンプ
123 電流センス用アンプ
124 電流-電圧変換用アンプ
125 Gmアンプ
126 バッファアンプ
127 位相補償回路
128 コンパレータ
129 カウンタ回路
130 リトラクト制御回路
140 ブースト回路(昇圧回路)
150 DA変換回路
160 シリアル入出力ポート
170 シーケンサ
180 電源モニタ回路(停電監視回路)
210,220 出力アンプ
300 磁気ディスク
310 スピンドルモータ
320 ヘッド保持用アーム
330 キャリッジ
340 ボイスコイルモータ
350 ヘッド退避位置(ランプ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルに電流を流すコイル駆動回路と、前記コイルと直列に接続された抵抗の端子間電圧に基づいて上記コイルに流れる電流を検出する電流検出回路と、上記コイルに電流を流すべき電流指令値をアナログ信号に変換するAD変換回路と、上記電流検出回路の出力と上記AD変換回路の出力に基づいて上記駆動回路を駆動制御するための信号を生成する電圧入力−電流出力型の増幅回路と、を備えた駆動制御回路であって、
上記AD変換回路に所定の電流指令値を与えかつ上記コイルの端子に所定の電圧を印加しかつコイルに電流が流れないようにした状態で、上記電流検出回路の出力と上記AD変換回路の出力に基づいて上記電流検出回路の出力の所望の値からのずれを判定し、該判定の結果に基づいて上記電流検出回路の電流値もしくは抵抗値を調整して上記駆動制御回路の制御系のオフセットをキャンセルするように構成されていることを特徴とする駆動制御回路。
【請求項2】
上記コイル駆動回路は出力がトライステートの回路であって、オフセットのキャンセル動作時に出力がハイインピーダンスの状態にされることを特徴とする請求項1に記載の駆動制御回路。
【請求項3】
上記駆動源はボイスコイルモータであることを特徴とする請求項1または2に記載の駆動制御回路。
【請求項4】
上記AD変換回路および上記電圧入力−電流出力型の増幅回路は各々オフセットキャンセル回路を備え、該オフセットキャンセル回路によるキャリブレーション実行後に上記電流検出回路の上記電流値もしくは上記抵抗値の調整による上記駆動制御回路の制御系全体の上記オフセットのキャンセルを実行するように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の駆動制御回路。
【請求項5】
上記電流検出回路の出力と上記AD変換回路の出力に基づいて上記電流検出回路の出力のずれを判定する比較回路を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の駆動制御回路。
【請求項6】
カウンタ回路を備え、上記電流検出回路の上記電流値もしくは上記抵抗値は該カウンタ回路の計数値によって可変に構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の駆動制御回路。
【請求項7】
上記カウンタ回路は、上記電流検出回路の上記電流値もしくは上記抵抗値の切替えのたびに更新され、上記比較回路の出力が変化したときに更新を止めそのときの計数値を保持することを特徴とする請求項6に記載の駆動制御回路。
【請求項8】
上記オフセットのキャンセルを上記駆動制御回路の動作開始ごとに行なうことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の駆動制御回路。
【請求項9】
コイルに電流を流すコイル駆動回路と、前記駆動回路を駆動制御するための信号を生成する電圧入力−電流出力型の増幅回路と、を備えた駆動制御回路であって、
上記電圧入力−電流出力型の増幅回路と上記コイル駆動回路との間に、上記電圧入力−電流出力型の増幅回路の出力または所定の定電位のいずれかを選択して上記コイル駆動回路へ供給する切替え手段を備え、
キャリブレーションを上記切替え手段を上記定電位に切り替えかつ上記コイルに電流が流れないようにした状態で行う事により上記駆動制御回路の制御系のオフセットをキャンセルし、
上記駆動源の動作時に上記切替え手段を上記電圧入力−電流出力型の増幅回路の出力側に切り替え、上記コイル駆動回路を動作させることを特徴とする駆動制御回路。
【請求項10】
上記コイル駆動回路は、上記コイルの一方の端子に接続された第1の駆動回路と上記コイルの他方の端子に接続された第2の駆動回路とを有し、前記第2の駆動回路は出力がトライステートの回路であって、上記切替え手段が上記定電位側に切り替えられている時に出力がハイインピーダンスの状態にされることを特徴とする請求項9に記載の駆動制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−87249(P2006−87249A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270667(P2004−270667)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】