説明

コイルワイヤ補強ゴム部材の製造方法及び装置

【課題】コイルワイヤのループ部間の寸法のバラツキを抑制し、寸法安定性を改善することが可能なコイルワイヤ補強ゴム部材の製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】未加硫ゴムシート2,3間に偏平コイル状に延在するコイルワイヤ4を挟み込んで構成したコイルワイヤ補強ゴム部材1を製造する方法であり、ガイドフランジ62をプレス面60の両側に突設した第1プレスロール18と、第1プレスロール18に対面して配置した第2プレスロール20を使用する。予め偏平コイル状に癖付けされた長尺のコイルワイヤ4を自重により順次落下させながら、第1プレスロール18のプレス面60上を搬送される一方の未加硫ゴムシート2上に載置し、次いで一方の未加硫ゴムシート2上に載置されたコイルワイヤ4上に他方の未加硫ゴムシート3を順次供給して第1プレスロール18と第2プレスロール20により圧着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫ゴムシート間に偏平コイル状に延在するコイルワイヤを挟み込んで構成したコイルワイヤ補強ゴム部材を製造する方法と装置に関し、更に詳しくは、コイルワイヤのループ部間の寸法のバラツキを抑制するようにしたコイルワイヤ補強ゴム部材の製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
未加硫ゴムシート間に偏平コイル状に延在するコイルワイヤを挟み込んで構成したコイルワイヤ補強ゴム部材として、例えば、タイヤ用ベルトが提案されている。このタイヤ用ベルトは、円筒コイル状に巻かれたスチールワイヤを一方の未加硫ゴムシート上に倒しながら他方の未加硫ゴムシートをその上に積層して圧着することにより製造される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上述した方法では、円筒コイル状に巻かれたスチールワイヤを一方のゴムシート上に均等に倒すことが難しく、倒したループ部間の寸法にバラツキが発生し、寸法が安定しない。特に、負荷荷重10N時における伸びが35%以上あるような低応力・高伸長のスチールワイヤを用いた際に顕著となる。
【特許文献1】特開平10−258609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、コイルワイヤのループ部間の寸法のバラツキを抑制し、寸法安定性を改善することが可能なコイルワイヤ補強ゴム部材の製造方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明のコイルワイヤ補強ゴム部材の製造方法は、未加硫ゴムシート間に偏平コイル状に延在するコイルワイヤを挟み込んで構成したコイルワイヤ補強ゴム部材を製造する方法であって、ガイドフランジをプレス面両側に突設した第1プレスロールと、該第1プレスロールに対面して配置した第2プレスロールとを使用し、予め偏平コイル状に癖付けされた長尺のコイルワイヤを自重により順次落下させながら、第1プレスロールのプレス面上を搬送される一方の未加硫ゴムシート上に載置し、該一方の未加硫ゴムシート上に載置されたコイルワイヤ上に他方の未加硫ゴムシートを順次供給して第1プレスロールと第2プレスロールにより圧着することを特徴とする。
【0006】
本発明のコイルワイヤ補強ゴム部材の製造装置は、未加硫ゴムシート間に偏平コイル状に延在するコイルワイヤを挟み込んで構成したコイルワイヤ補強ゴム部材を製造する装置であって、予め偏平コイル状に癖付けされた長尺のコイルワイヤを自重により順次落下させて供給するコイルワイヤ供給手段と、該コイルワイヤ供給手段の下方に設置され、ガイドフランジをプレス面両側に突設した回転可能な第1プレスロールと、該第1プレスロールに対して進退可能に配置した回転自在な第2プレスロールと、一方の未加硫ゴムシートを第1プレスロールのプレス面上に供給する第1ゴムシート供給手段と、他方の未加硫ゴムシートを第1プレスロールのプレス面上に供給する第2ゴムシート供給手段と、第1プレスロールのプレス面上で第2プレスロールにより圧着形成されたコイルワイヤ補強ゴム部材を引き出す引き出し手段を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述した本発明によれば、予め偏平コイル状に癖付けされた長尺のコイルワイヤを自重により順次落下させながら、第1プレスロールのプレス面上を搬送される一方の未加硫ゴムシート上に載置するようにし、供給されるコイルワイヤに機械的な引張り力が作用しないようにしたので、一方の未加硫ゴムシート上に載置されるコイルワイヤの各ループ部の間隔を略癖付けした状態に維持することができる。そのため、ループ部間の寸法のバラツキが抑制され、寸法安定性を改善することができる。
【0008】
また、ガイドフランジをプレス面の両側に備えた第1プレスロールの使用により、第1プレスロールのプレス面上で圧着される未加硫ゴムシート及びコイルワイヤをプレス面内に確実に導くことができるので、プレス面から未加硫ゴムシートやコイルワイヤが部分的に外れて圧着されるような不具合を招くことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明のコイルワイヤ補強ゴム部材の製造装置の一実施形態、図2はこの製造装置により製造されたコイルワイヤ補強ゴム部材の一例を示す。コイルワイヤ補強ゴム部材1は、2層の未加硫ゴムシート2,3間に偏平コイル状に延在するコイルワイヤ4を挟み込んた構造になっている。偏平コイル状に延在するコイルワイヤ4は、ループ部5を部分的に重ね合わせながら、所定の間隔で長手方向にずらして構成されている。
【0011】
このようなコイルワイヤ補強ゴム部材1を製造する装置10は、一方の未加硫ゴムシート2を供給する第1ゴムシート供給手段12、他方の未加硫ゴムシート3を供給する第2ゴムシート供給手段14、コイルワイヤ4を供給するコイルワイヤ供給手段16、一方の未加硫ゴムシート2に他方の未加硫ゴムシート3を圧着する一対の第1プレスロール18と第2プレスロール20を備えている。
【0012】
第1ゴムシート供給手段12は、立設した前後一対のフレーム22,24上の右側に設置され、一方の未加硫ゴムシート2を直接供給するための押出機26、押出機26から押し出された未加硫ゴムシート2にテンションを付与するテンションロール28、及びテンションロール28を経た未加硫ゴムシート2を第1プレスロール18に搬送するためのガイドロール30を有している。
【0013】
テンションロール28は、押出機26のシーティングヘッド27の前方に設置されている。フレーム22,24間に回転自在に支持された回転軸32が横設され、この回転軸32に固定された旋回アーム34の先端部に、テンションロール28が回転自在に取り付けられている。旋回アーム34が不図示のスプリングにより常時下方向に付勢され、それにより押出機26から押し出された未加硫ゴムシート2をテンションロール28が下方に押圧し、未加硫ゴムシート2にテンションを付与する。回転軸32の外周側には、押出機26から押し出された未加硫ゴムシート2をガイドするガイドロール36が回転自在に外装されている。
【0014】
テンションロール28に隣接して設置されるガイドロール30は、フレーム22,24上に設置された一対のベアリング38間に回転自在に支持された回転軸39に取り付けられ、回転軸39と共に回転自在になっている。
【0015】
第2ゴムシート供給手段14は、前後一対のフレーム22,24上の左側に設置され、他方の未加硫ゴムシート3を直接供給するための押出機40、押出機40から押し出された未加硫ゴムシート3にテンションを付与するテンションロール42、及びテンションロール42を経た未加硫ゴムシート3を第1プレスロール18に搬送するためのガイドロール44を具備している。
【0016】
テンションロール42は、押出機40のシーティングヘッド41の前方に設置されている。フレーム22,24間に回転自在に支持された回転軸46が横設され、この回転軸46に固定された旋回アーム48の先端部に、テンションロール42が回転自在に取り付けられている。旋回アーム46が不図示のスプリングにより常時下方向に付勢され、それにより押出機40から押し出された未加硫ゴムシート3をテンションロール42が下方に押圧し、未加硫ゴムシート3にテンションを付与する。回転軸46の外周側には、押出機40から押し出された未加硫ゴムシート3をガイドするガイドロール50が回転自在に外装されている。
【0017】
テンションロール42に隣接して設置されるガイドロール44は、フレーム22,24上に設置されたベアリング52間に回転自在に支持された回転軸54に取り付けられ、回転軸54と共に回転自在になっている。
【0018】
第1ゴムシート供給手段12と第2ゴムシート供給手段14との間に第1プレスロール18が設置されている。この第1プレスロール18は、フレーム22,24上に設置されたベアリング56間に回転自在に支持された回転軸58に取り付けられている。回転軸58は不図示のモーターなどからなる駆動手段に連結され、駆動手段の駆動により回転する回転軸58と共に第1プレスロール18が回転可能になっている。
【0019】
第1プレスロール18の外周面がプレス面60に形成され、このプレス面60の両側には、図3に示すように、リング状のガイドフランジ62が突設されている。このプレス面60の両側に設けたガイドフランジ62により、第1ゴムシート供給手段12と第2ゴムシート供給手段14から供給される未加硫ゴムシート2,3、及びコイルワイヤ供給手段16により供給されるコイルワイヤ4をプレス面60から脱落させることなく、プレス面60上に常に供給できるようにしている。プレス面60の幅は、未加硫ゴムシート2,3の幅と略同じである。
【0020】
第2ゴムシート供給手段14の下方で第1プレスロール18に対面して、第2プレスロール20が配置されている。フレーム22,24間に立設した支持部材64上に配設したエアシリンダ66のロッド68の先端にロール支持体70が固定され、このロール支持体70に一対のベアリング71を介して回転自在に支持された回転軸72に第2プレスロール20が固定され、回転軸72と共に回転自在になっている。
【0021】
エアシリンダ66の作動によりロッド68が伸縮し、それにより第2プレスロール20が第1プレスロール18のプレス面38に対して、待機位置(実線の位置)と圧着位置(2点鎖線の位置)との間を進退する。
【0022】
第1プレスロール18の上方にコイルワイヤ供給手段16が設置されている。このコイルワイヤ供給手段16は、予め偏平コイル状に癖付けされた長尺のコイルワイヤ4を自重により長手方向に沿って順次落下させながら、下方に設置された第1プレスロール18のプレス面60上に供給するように構成され、第1プレスロール18のプレス面60上に供給されるコイルワイヤ4に対して機械的な引張り力を作用させないようにしている。
【0023】
第1ゴムシート供給手段12の下方には、圧着形成されたコイルワイヤ補強ゴム部材1を複数のガイドロール74を介して引き出す引き出し手段76が設けられている。この引き出し手段76は、コイルワイヤ補強ゴム部材1を挟み込むようにして配置した上下一対の引き出し用ロール78,80を有し、不図示の駆動手段により引き出し用ロール78,80を矢印方向に回転させることにより、第1プレスロール18のプレス面60上で第2プレスロール20により圧着形成されたコイルワイヤ補強ゴム部材1を引き出して次の巻取り工程に搬送できるようにしている。引き出し手段76によりコイルワイヤ補強ゴム部材1を引き出して搬送する速度は、コイルワイヤ4が自重により落下する速度、及び第1プレスロール18上を搬送される速度と略同じ速度である。
【0024】
以下、上述したコイルワイヤ補強ゴム部材の製造装置10を用いて、本発明の製造方法を説明する。
【0025】
先ず、押出機26,40により押し出した未加硫ゴムシート2,3をテンションロール28,42、ガイドロール30,44、第1プレスロール18を介して引き出し手段76の引き出し用ロール78,80で挟み込む位置まで引き出して、セットする。
【0026】
引き出し用ロール78,80及び第1プレスロール18を回転させ、引き出す未加硫ゴムシート2,3の搬送速度がコイルワイヤ4を自重により落下させる速度と略同じ速度になると、コイルワイヤ供給手段16により予め偏平コイル状に癖付けされた長尺のコイルワイヤ4が順次供給される。供給されるコイルワイヤ4は、自重により長手方向に沿って順次落下しながら、押出機26から順次押し出されて第1プレスロール18のプレス面60上を搬送される一方の未加硫ゴムシート2上に順次載置される。
【0027】
この時、コイルワイヤ4には機械的な引張り力が作用しないので、コイルワイヤ4が変形することなく、偏平コイル状に略癖付けされた状態で一方の未加硫ゴムシート2上に載置される。
【0028】
続いて、一方の未加硫ゴムシート2上に順次載置されたコイルワイヤ4上に、押出機32から順次押し出された他方の未加硫ゴムシート3が直接供給される。テンションロール42、ガイドロール44を経て搬送供給される未加硫ゴムシート3は、2点鎖線で示す圧着位置にある第2プレスロール20と第1プレスロール18により、コイルワイヤ4を載置した未加硫ゴムシート2に順次圧着される。この圧着により長尺のコイルワイヤ補強ゴム部材1が順次形成される。圧着形成されたコイルワイヤ補強ゴム部材1は引き出し手段76により順次引き出されて、次の工程に搬送される。
【0029】
このように発明では、予め偏平コイル状に癖付けされた長尺のコイルワイヤ4を自重により順次落下させながら、第1プレスロール18のプレス面60上を搬送される一方の未加硫ゴムシート2上に載置するようにし、供給されるコイルワイヤ4に機械的な引張り力を作用させないようにしたので、一方の未加硫ゴムシート2上に載置されるコイルワイヤ4の各ループ部5の間隔を略癖付けした状態に維持することができる。そのため、ループ部5間の寸法に大きなバラツキが発生することがない。
【0030】
また、ガイドフランジ62をプレス面60の両側に備えた第1プレスロール18を使用することで、第1プレスロール18のプレス面60上で圧着される未加硫ゴムシート2,3及びコイルワイヤ4をプレス面60内に確実に導くことができるので、プレス面60から部分的に外れて圧着するような不具合を招くこともない。
【0031】
本発明は、低応力・高伸長のコイルワイヤ、特に負荷荷重10N時における伸びが35%以上あるコイルワイヤを使用した場合に好ましく用いることができるが、当然のことながらそれに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のコイルワイヤ補強ゴム部材の製造装置の一実施形態を、一部を切欠いた断面で示す正面図である。
【図2】コイルワイヤ補強ゴム部材の一例を、一部を切欠いて示す要部平面図である。
【図3】図1の第1プレスロールと第2プレスロールのみを拡大して示す平面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 コイルワイヤ補強ゴム部材
2,3 未加硫ゴムシート
4 コイルワイヤ
5 ループ部
10 コイルワイヤ補強ゴム部材の製造装置
12 第1ゴムシート供給手段
14 第2ゴムシート供給手段
16 コイルワイヤ供給手段
18 第1プレスロール
20 第2プレスロール
26 押出機
40 押出機
60 プレス面
62 ガイドフランジ
76 引き出し手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫ゴムシート間に偏平コイル状に延在するコイルワイヤを挟み込んで構成したコイルワイヤ補強ゴム部材を製造する方法であって、
ガイドフランジをプレス面両側に突設した第1プレスロールと、該第1プレスロールに対面して配置した第2プレスロールとを使用し、
予め偏平コイル状に癖付けされた長尺のコイルワイヤを自重により順次落下させながら、第1プレスロールのプレス面上を搬送される一方の未加硫ゴムシート上に載置し、該一方の未加硫ゴムシート上に載置されたコイルワイヤ上に他方の未加硫ゴムシートを順次供給して第1プレスロールと第2プレスロールにより圧着するコイルワイヤ補強ゴム部材の製造方法。
【請求項2】
一方の未加硫ゴムシート及び他方の未加硫ゴムシートをそれぞれ押出機から押し出して直接供給する請求項1に記載のコイルワイヤ補強ゴム部材の製造方法。
【請求項3】
コイルワイヤは、負荷荷重10N時における伸びが35%以上である請求項1または2に記載のコイルワイヤ補強ゴム部材の製造方法。
【請求項4】
未加硫ゴムシート間に偏平コイル状に延在するコイルワイヤを挟み込んで構成したコイルワイヤ補強ゴム部材を製造する装置であって、
予め偏平コイル状に癖付けされた長尺のコイルワイヤを自重により順次落下させて供給するコイルワイヤ供給手段と、該コイルワイヤ供給手段の下方に設置され、ガイドフランジをプレス面両側に突設した回転可能な第1プレスロールと、該第1プレスロールに対して進退可能に配置した回転自在な第2プレスロールと、一方の未加硫ゴムシートを第1プレスロールのプレス面上に供給する第1ゴムシート供給手段と、他方の未加硫ゴムシートを第1プレスロールのプレス面上に供給する第2ゴムシート供給手段と、第1プレスロールのプレス面上で第2プレスロールにより圧着形成されたコイルワイヤ補強ゴム部材を引き出す引き出し手段を具備するコイルワイヤ補強ゴム部材の製造装置。
【請求項5】
第1ゴムシート供給手段が一方の未加硫ゴムシートを押し出す押出機を有し、第2ゴムシート供給手段が他方の未加硫ゴムシートを押し出す押出機を有する請求項4に記載のコイルワイヤ補強ゴム部材の製造装置。
【請求項6】
コイルワイヤは、負荷荷重10N時における伸びが35%以上である請求項4または5に記載のコイルワイヤ補強ゴム部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−27201(P2006−27201A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212643(P2004−212643)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】